JP3853919B2 - 樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気・電子分野、自動車分野、その他の各種工業材料分野で利用できる耐油性、耐薬品性、耐熱性、耐衝撃性、剛性に優れた樹脂組成物に関し、さらには、耐熱材料としての耐久性(耐衝撃性)に優れた樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリフェニレンエーテルは、機械的特性、電気特性、耐熱性、低温特性、吸水性が低くかつ寸法安定性に優れるものの、成形加工性や耐衝撃性に劣る欠点を有するため、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレンとブレンドすることによりこれらの問題点を改良し、例えば電気・電子部品、事務機器ハウジング、自動車部品、精密部品、各種工業部品などの樹脂組成物として広く利用されている。
【0003】
しかしながら、このポリフェニレンエーテルとハイインパクトポリスチレンからなる古典的なポリフェニレンエーテル樹脂組成物(米国特許第3383435号明細書に開示されている)は、耐衝撃性が改善されるものの、耐薬品性に劣る欠点を有している。
このため、例えば、米国特許第3361851号明細書では、ポリフェニレンエーテルをポリオレフィンとブレンドすることにより、耐溶剤性、耐衝撃性を改良する提案がなされ、米国特許第3994856号明細書には、ポリフェニレンエーテルまたはポリフェニレンエーテルおよびスチレン系樹脂を水添ブロック共重合体とブレンドすることによる耐衝撃性、耐溶剤性の改良に関する記載があり、米国特許第4145377号明細書には、ポリフェニレンエーテルまたはポリフェニレンエーテルおよびスチレン系樹脂をポリオレフィン/水添ブロック共重合体=20〜80重量部/80〜20重量部からなる予備混合物および水添ブロック共重合体とブレンドすることによる耐衝撃性、耐溶剤性の改良に関する記載があり、さらに米国特許第4166055号明細書および米国特許第4239673号明細書には、ポリフェニレンエーテルを水添ブロック共重合体およびポリオレフィンとブレンドすることによる耐衝撃性の改良が記載されている。
【0004】
そして、米国特許第4383082号明細書およびヨーロッパ公開特許第115712号明細書ではポリフェニレンエーテルをポリオレフィンおよび水添ブロック共重合体とブレンドすることにより耐衝撃性を改良するという記載がなされている。
また、特開昭63−113058号公報、特開昭63−225642号公報、米国特許第4863997号明細書および特開平3−72512号公報、特開平4−183748号公報、特開平5−320471号公報には、ポリオレフィン樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂からなる樹脂組成物の改質に特定の水添ブロック共重合体を配合し、耐薬品性、加工性に優れた樹脂組成物が提案されている。
【0005】
また、この発明の出願人は、特開昭62−20551号公報、特開昭62−25149号公報、特開昭62−48757号公報、特開昭62−48758号公報、特開昭62−199637号公報ならびに米国特許第4772657号明細書で、ポリフェニレンエーテル、ポリオレフィンおよび水添ブロック共重合体からなるゴム弾性に優れたゴム組成物を提案し、また、特開平2−225563号公報、特開平3−185058号公報、特開平5−70679号公報、特開平5−295184号公報、特開平6−9828号公報、特開平6−16924号公報、特開平6−57130号公報、特開平6−136202号公報ではポリフェニレンエーテルとポリオレフィンおよび特定の水添ブロック共重合体からなる相溶性、剛性と耐熱性に優れ、耐溶剤性に優れた樹脂組成物を提案した。また、特開平4−28739号公報、特開平4−28740号公報ではポリフェニレンエーテルとポリオレフィンおよび水添ブロック共重合体またはゴム状重合体からなる、機械的物性、特に衝撃強度と剛性のバランスに優れた樹脂組成物の製造方法を提案している。また、特開平7−166026号公報ではポリフェニレンエーテル系樹脂とポリオレフィン系樹脂の相溶性が良好で、優れた機械特性、特に耐衝撃性を有する樹脂組成物の製造方法が提案されている。
【0006】
上記の技術にはポリフェニレンエーテル系樹脂としてポリフェニレンエーテル樹脂単独もしくはポリフェニレンエーテル樹脂にポリスチレン系樹脂を併用したものが提案されている。しかし、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリスチレン系樹脂の併用した樹脂組成物は、剛性は高くなるものの耐衝撃性が著しく低下する傾向にあった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ゴム補強耐衝撃性ポリスチレン樹脂を用いた、耐衝撃性に優れた樹脂組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、このような現状に鑑み、ポリプロピレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂および混和剤を含む組成物に高いレベルの耐衝撃性、成形流動性を付与させるため、ドメイン材料となるポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン系樹脂に関して鋭意検討を重ねた結果、平均分散粒径0.14〜0.70μmのゴム分散粒径を有するゴム補強耐衝撃性ポリスチレン樹脂がポリプロピレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂及び混和剤と共に溶融混練された樹脂組成物は、耐衝撃性・流動性が改良され、耐熱材料としての耐久性に優れることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は、
(a)成分、ポリプロピレン系樹脂 45〜95重量%、
(b)成分、ポリフェニレンエーテル系樹脂 55〜 5重量%、
上記(a)、(b)成分の合計100重量部に対して、
(c)成分として、共役ジエン化合物の1,2−ビニル結合もしくは3,4−ビニル結合量の合計量が30〜90%である少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBと、少なくとも1個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAとからなるブロック共重合体を、水素添加してなる水添ブロック共重合体 1〜30重量部、
上記(a)成分100重量部に対して、
(d)成分平均分散粒径0.14〜0.70μmのゴム分散粒径を有するゴム補強耐衝撃性ポリスチレン樹脂 1〜400重量部、
を含む耐衝撃性に優れた樹脂組成物、である。
【0010】
本発明で(a)成分として用いるポリプロピレン系樹脂は、結晶性プロピレンホモポリマーおよび、重合の第一工程で得られる結晶性プロピレンホモポリマー部分と重合の第二工程以降でプロピレン、エチレンおよび/もしくは少なくとも1つの他のα−オレフィン(例えば、ブテン−1、ヘキセン−1等)を共重合して得られるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分を有する結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体であり、さらにこれら結晶性プロピレンホモポリマーと結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体の混合物であってもかまわない。
【0011】
本発明で(a)成分として用いる、ポリプロピレン系樹脂は、通常、三塩化チタン触媒または塩化マグネシウムなどの担体に担持したハロゲン化チタン触媒等とアルキルアルミニウム化合物の存在下に、重合温度0〜100℃の範囲で、重合圧力3〜100気圧の範囲で重合して得られるものである。重合の際、重合体の分子量を調製するために水素等の連鎖移動剤の添加も可能であり、また重合方法としてバッチ式、連続式いずれの方法で得られるものでもよく、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の溶媒下での溶液重合、スラリー重合等の方法も選択でき、さらには無溶媒下モノマー中での塊状重合、ガス状モノマー中での気相重合方法などで重合されたものが用いられる。
【0012】
また、さらには、上記した重合触媒の他に得られるポリプロピレン系樹脂のアイソタクティシティおよび重合活性を高めるため、第三成分として電子供与性化合物を内部ドナー成分または外部ドナー成分として用いられたものを用いることができる。
これらの電子供与性化合物としては公知のものが使用でき、例えば、ε−カプロラクトン、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル、トルイル酸メチルなどのエステル化合物、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリブチルなどの亜リン酸エステル、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどのリン酸誘導体などや、アルコキシエステル化合物、芳香族モノカルボン酸エステルおよび/または芳香族アルキルアルコキシシラン、脂肪族炭化水素アルコキシシラン、各種エーテル化合物、各種アルコール類および/または各種フェノール類などが挙げられる。
【0013】
本発明に供するポリプロピレン系樹脂は、上記した方法で得られるものであれば、いかなる結晶性や融点を有するものでも単独でも併用でも用いることができる。また、本発明に供するポリプロピレン系樹脂は、メルトフローレート(MFR)(230℃、荷重2.16kg)が、0.01〜300g/10分であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜100g/10分、特に好ましくは0.3〜50g/10分の範囲である。また、これらの範囲のMFRであれば、単独でも、併用しても用いることができる。
【0014】
つぎに、本発明で用いる(b)成分のポリフェニレンエーテル系樹脂(以下、単にPPEと略記)は、下記(1)式の構造を有するポリフェニレンエーテルである。ポリフェニレンエーテルは、それ自体公知の化合物である。
結合単位:
【0015】
【化1】
【0016】
(ここで、R1,R2,R3,およびR4はそれぞれ、水素、ハロゲン、炭素数1〜7までの第一級または第二級低級アルキル基、フェニル基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基または少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを隔てているハロ炭化水素オキシ基からなる群から選択されるものであり、互いに同一でも異なっていてもよい)
からなり、還元粘度(0.5g/dl,クロロホルム溶液,30℃測定)は、0.15〜2.5の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.30〜2.00、特に好ましくは0.35〜2.00の範囲にあるホモ重合体および/または共重合体である。
【0017】
本発明で用いるPPEは、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられ、さらに2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6−トリメチルフェノールや2−メチル−6−ブチルフェノール)との共重合体のごときポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。中でもポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、さらにポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)が好ましい。
【0018】
本発明で用いるPPEは、公知の製造方法で得られるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、米国特許第3306874号明細書記載の、Hayによる第一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒として用い、例えば2,6−キシレノールを酸化重合することにより容易に製造できるもので、その他にも米国特許第3306875号明細書、米国第3257357号明細書および米国第3257358号明細書、特公昭52−17880号公報および特開昭50−51197号公報および特開昭63−152628号公報等に記載された方法で容易に製造できるものである。
【0019】
また、本発明で用いるPPEは、上記したPPEの他に、該PPEとスチレン系モノマーおよび/もしくはα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体とをラジカル発生剤の存在下、非存在下で溶融状態、溶液状態、スラリー状態で80〜350℃の温度下で反応させることによって得られる公知の変性(該スチレン系モノマーおよび/もしくはα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体が0.01〜10重量%グラフトまたは付加)PPEであってもよく、さらに上記したPPEと該変性PPEの任意の割合の混合物であってもかまわない。
【0020】
つぎに本発明で(c)成分として用いることができる水添ブロック共重合体は、(a)成分のポリプロピレン系樹脂と(b)成分のPPE混和剤および耐衝撃性付与剤として作用し、共役ジエン化合物の1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合量の合計量が30〜90%である共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBと、ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAとからなるブロック共重合体を50%以上水素添加してなる水添ブロック共重合体であり、例えばA−B、A−B−A、B−A−B−A、(A−B−)4−Si、A−B−A−B−A等の構造を有するビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物である。
【0021】
この(c)成分の水添ブロック共重合体は、その水素添加する前のブロック共重合体が結合したビニル芳香族化合物を20〜95重量%含むものが好ましく、さらに好ましくは30〜80重量%含む。
またブロック構造に言及すると、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBは、共役ジエン化合物のホモ重合体ブロックまたは共役ジエン化合物を50重量%を超えて含有するものが好ましく、さらに好ましくは70重量%以上含有する共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物との共重合体ブロックの構造を有しているもので、そしてさらにビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAは、ビニル芳香族化合物のホモ重合体ブロックまたはビニル芳香族化合物を50重量%を超えて含有するものが好ましく、さらに好ましくは70重量%以上含有するビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体ブロックの構造を有するものである。
【0022】
また、これらの共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックB、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAは、それぞれの重合体ブロックにおける分子鎖中のビニル芳香族化合物または共役ジエン化合物の分布がランダム、テーパード(分子鎖に沿ってモノマー成分が増加または減少するもの)、一部ブロック状またはこれらの任意の組み合わせでなっていてもよく、該共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBおよび該ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAがそれぞれ2個以上ある場合は、各重合体ブロックはそれぞれ同一構造であってもよく、異なる構造であってもよい。
【0023】
このブロック共重合体を構成する共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等のうちから1種または2種以上が選ばれ、中でもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組み合わせが好ましい。そして共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックは、そのブロックにおけるミクロ構造(共役ジエン化合物の結合形態)は1,2ービニル結合量と3,4ービニル結合量の合計量(以下ビニル結合量と略す)が、30〜90%である。例えばブタジエンを主体とする重合体ブロックにおいてはビニル結合量が30〜90%である。また、イソプレンを主体とする重合体ブロックにおいては、ビニル結合量が45〜90%である。これらの共役ジエン化合物の結合形態は通常、赤外分光光度計やNMR等で知ることができる。
【0024】
なお、かかる共役ジエンの結合形態として、ビニル結合量が30%未満である場合、混和性が発揮されず層剥離の発生が起こり好ましくない。一方、90%を越えても混和性に差が見られない。
また、ビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−tert−ブチルスチレン、ジフェニルエチレン等のうちから1種または2種以上が選択でき、中でもスチレンが好ましい。
【0025】
また、上記の構造を有するブロック共重合体の数平均分子量は5,000〜1,000,000が好ましく、さらに好ましくは10,000〜800,000、特に好ましくは30,000〜500,000の範囲であり、分子量分布〔ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比〕は10以下であることが好ましい。さらに、このブロック共重合体の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状あるいはこれらの任意の組み合わせのいずれであってもよい。
【0026】
このような構造を持つブロック共重合体は、上記したブロック共重合体の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの脂肪族系二重結合を水素添加した水添ブロック共重合体として、本発明の(c)成分として用いることができる。上記脂肪族系二重結合の水素添加率は、50%以上が好ましく、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。この水素添加率は通常、赤外分光光度計やNMR等によって知ることができる。
【0027】
これらの上記した(c)成分の水添ブロック共重合体は、上記した構造を有するものであればどのような製造方法で得られるものであってもかまわない。公知の製造方法の例としては、例えば、特開昭47−11486号公報、特開昭49−66743号公報、特開昭50−75651号公報、特開昭54−126255号公報、特開昭56−10542号公報、特開昭56−62847号公報、特開昭56−100840号公報、特開平2−300218、英国特許第1130770号明細書および米国特許第3281383号明細書および米国特許第3639517号明細書に記載された方法や英国特許第1020720号明細書および米国特許第3333024号明細書および米国第4501857号明細書に記載された方法がある。
【0028】
つぎに、本発明で(d)成分として用いるゴム補強耐衝撃性ポリスチレン樹脂とは、ゴム状重合体存在下にスチレンモノマーをラジカル重合(塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合のいずれを用いてもよい)して得られる共重合体であり、ポリスチレンをマトリクス相とし、ゴム状重合体が島状に平均分散粒径0.14〜0.70μmで分散したものである。
【0029】
また、ゴム状重合体としては共役ジエン系ゴムあるいはエチレン−プロピレン共重合体系ゴム等が挙げられ、例えば、ポリブタジエン(ローシスポリブタジエン及びハイシスポリブタジエン)、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン−イソプレン共重合体、天然ゴム等であり、さらにこれらの共役ジエン系ゴムの結合した共役ジエン部を水素添加反応(水添率5〜100%)して得られる水添ポリマーも好適に使用できる。
【0030】
本発明においては(d)成分のゴム補強耐衝撃性ポリスチレン樹脂中のゴム状重合体は、ポリスチレン相に平均分散粒径0.14〜0.7μmで分散しているものが最も良好で、得られる樹脂組成物は耐衝撃性に優れる。分散粒径が、0.14μm未満で分散している場合は十分にゴム補強効果が発揮されず耐衝撃性の低下が起こり、一方0.70μmを超えたものでは得られる樹脂組成物の剛性および耐熱性が低下し好ましくない。
【0031】
また、ゴム状重合体の平均分散粒径が本発明の範囲外のものを複数種使用したものであっても、ゴム補強耐衝撃性ポリスチレン樹脂成分としてのゴム状重合体の平均分散粒径が本発明の範囲内であれば問題なく使用できる。
ここで、平均分散粒径とは、分散ゴム状重合体粒子の全周囲長から平均化した1個当たりの相当径を指し、具体的には(d)成分のペレットの切断面と平行方向の面をオスミウム酸またはルテニウム酸染色法により染め、ウルトラミクロトーム(ライヘルト社製 ウルトラカットE)により超薄切片を作成、それを透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製 1200EX)により観察し、10,000倍の写真として得る。
【0032】
この写真をもとに画像解析装置(旭化成工業(株)製 IP1000)を用いて分散相の周囲長から円相当径として平均分散粒径を求めることができる。
本発明の樹脂組成物は、上記した(a)〜(d)成分を基本成分として構成される。本発明において、(a)成分の配合量は45〜95重量%である。45重量%未満の場合、得られる樹脂組成物の耐熱性は優れるものの、流動性、耐溶剤性が劣り好ましくない。また、95重量%を超える場合は流動性、耐溶剤性は優れるものの、耐熱性が劣り耐熱材料として利用できない。
【0033】
次に、(b)成分の配合量は55〜5重量%である。配合量が55重量%を超える場合、得られる樹脂組成物の耐熱性は極度に優れるものの、流動性、耐溶剤性が劣り好ましくない。また、5重量%未満では流動性、耐溶剤性に優れるものの耐熱性が劣り耐熱材料として利用できない。
次に、(c)成分の配合量は(a)成分と(b)成分との合計量100重量部に対して1〜30重量部である。1重量部未満では混和剤としての効果が見られず好ましくない。また、30重量部を超える場合、(a)成分、(b)成分が示す作用効果の耐熱性、耐溶剤性、剛性および機械的強度の低下が著しく、好ましくない。
【0034】
次に(d)成分の配合量は(b)成分100重量部に対し1〜400重量部、好ましくは5〜350重量部、特に好ましくは10〜300重量部である。
(d)成分の含有量が1重量部未満である場合、耐衝撃性および流動性の顕著な向上が見られず好ましくない。一方、400重量部を超えて添加すると耐熱性の低下が起こり、好ましくない。
【0035】
本発明では、上記の成分の他に本発明の特徴及び効果を損なわない範囲で必要に応じて他の付加的成分、例えば、酸化防止剤、金属不活性化剤、難燃剤(有機リン酸エステル系化合物、ポリリン酸アンモニウム系化合物、芳香族ハロゲン系難燃剤、シリコーン系難燃剤など)、フッ素系ポリマー、可塑剤(低分子量ポリエチレン、エポキシ化大豆油、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)、三酸化アンチモン等の難燃助剤、耐候(光)性改良剤、ポリオレフィン用造核剤、スリップ剤、無機または有機の充填材や強化材(ガラス繊維、カーボン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ウィスカー、マイカ、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、ワラストナイト、導電性金属繊維、導電性カーボンブラック等)、各種着色剤、離型剤等が添加されていてもかまわない。
【0036】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、上記した(a)、(b)、(c)、(d)成分のうち少なくとも(b)成分と(d)成分の溶融混練状態下に(a)成分と(c)成分を供給し、さらに溶融混練を続けて行うことにより、容易に得ることが出来る。
また、その他の製法は、(b)成分と(d)成分及び(a)成分の半量以下、およびまたは(c)成分の半量以下の溶融混練状態下に、残りの(a)成分と(c)成分を供給し、さらに溶融混練を続けて行う製造方法を挙げることができる。
【0037】
本発明の樹脂組成物は、種々の溶融混機及び混練押出機を用いて製造することができ、溶融混錬機として、例えば、単軸押出機、二軸押出機を含む多軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等による加熱溶融混練機が挙げられるが、中でも二軸押出機を用いた溶融混練方法が最も好ましい。具体的には、WERNER&PFLEIDERER社製のZSKシリーズ、東芝機械(株)製のTEMシリーズ、日本製鋼所(株)製のTEXシリーズなどが挙げられる。
【0038】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、押出機を用いた以下に述べる態様が好ましい。押出機のL/D(バレル有効長/バレル内径)は、20以上60以下の範囲であり、好ましくは30以上50以下の範囲である。押出機は原料の流れ方向に対し上流側に第1原料供給口、これより下流に第1真空ベント、その下流に第2原料供給口を設け、さらにその下流に第2真空ベントを設けたものが好ましい。なかでも、第1真空ベントの上流にニーディングセクションを設け、第1真空ベントと第2原料供給口の間にニーディングセクションを設け、また第2原料供給口と第2真空ベントの間にニーディングセクションを設けたものがより好ましい。第2供給口への原材料供給方法は、特に限定されるものでは無いが、押出機第2供給口開放口よりの単なる添加供給よりも、押出機サイド開放口から強制サイドフィーダーを用いて供給する方が安定で好ましい。特に、粉体、フィラー等が含まれる場合は、押出機サイドから供給する強制サイドフィーダーの方がより好ましく、押出機第2供給口の上部開放口は同搬する空気を抜くため開放とすることもできる。この際の溶融混練温度、スクリュー回転数は特に限定されるものではないが、通常溶融混練温度200〜370℃、スクリュー回転数100〜1200rpmの中から任意に選ぶことができる。
【0039】
このようにして得られる、本発明の樹脂組成物は、従来より公知の種々の方法、例えば、射出成形、押出成形、押出異形成形、中空成形により各種部品の成形体として成形できる。これら各種部品としては、例えば自動車部品が挙げられ、具体的には、バンパー、フェンダー、ドアーパネル、各種モール、エンブレム、エンジンフード、ホイールキャップ、ルーフ、スポイラー、各種エアロパーツ等の外装品や、インストゥルメントパネル、コンソールボックス、トリム等の内装部品等に適している。さらに、電気機器の内外装部品としても好適に使用でき、具体的には各種コンピューターおよびその周辺機器、その他のOA機器、テレビ、ビデオ、各種ディスクプレーヤー等のキャビネット、シャーシ、冷蔵庫等の部品用途に適している。
【0040】
【発明の実施の形態】
本発明を実施例によって、さらに詳細に説明する。(a)〜(d)の成分、及び物性の評価は以下の通り。
成分:
(a)成分のポリプロピレン系樹脂
ホモ−ポリプロピレン、融点が169℃、MFRが0.5のものを用いた。
ポリプロピレンのMFR(メルトフローレート)はASTM Dー1238に準拠し、230℃、2.16Kgの荷重で測定した。
(b)成分のPPE
2,6−キシレノールを酸化重合して得た還元粘度0.43のものを用いた。
(c)成分の水添ブロック共重合体
(c1);ポリスチレン−水素添加されたポリブタジエン−ポリスチレンの構造を有し、結合スチレン量48%、数平均分子量88,000、分子量分布1.05、水素添加前のポリブタジエンの1,2−ビニル結合量が38%、ポリブタジエン部の水素添加率が99.9%の水添ブロック共重合体。
(c2);ポリスチレン−水素添加されたポリブタジエン−ポリスチレンの構造を有し、結合スチレン量48%、数平均分子量85.000、分子量分布1.04、水素添加前のポリブタジエンの1,2−ビニル結合量が75%、ポリブタジエン部の水素添加率が99.9%の水添ブロック共重合体。
(c3);ポリスチレン−水素添加されたポリイソプレン−ポリスチレンの構造を有し、結合スチレン量48%、数平均分子量86,000、分子量分布1.15、水素添加前のポリブタジエンの1,2−ビニル結合量が50%、ポリイソプレン部の水素添加率が85.4%の水添ブロック共重合体。
(c4);ポリスチレン−水素添加されたポリブタジエン−ポリスチレンの構造を有し、結合スチレン量47%、数平均分子量 86,000、分子量分布1.05、水素添加前のポリブタジエンの1,2−ビニル結合量が20%、ポリブタジエン部の水素添加率が99.9%の水添ブロック共重合体
(d)成分のゴム補強耐衝撃性ポリスチレン樹脂
(d1);ポリブタジエンの1,2−ビニル結合量が12%のポリブタジエンが平均分散粒径0.12μmでポリスチレンに分散した状態で含む構造を有し、含有ポリブタジエン量12%であるゴム補強耐衝撃性ポリスチレン樹脂。
(d2);ポリブタジエンの1,2−ビニル結合量が12%のポリブタジエンが平均分散粒径0.16μmでポリスチレンに分散した状態で含む構造を有し、含有ポリブタジエン量12%であるゴム補強耐衝撃性ポリスチレン樹脂。
(d3);同様にポリブタジエンの1,2−ビニル結合量が12%のポリブタジエンが平均分散粒径0.29μmでポリスチレンに分散した状態で含む構造を有し、含有ポリブタジエン量12%であるゴム補強耐衝撃性ポリスチレン樹脂。
(d4);ポリブタジエンの1,2−ビニル結合量が12%のポリブタジエンが平均分散粒径0.54μmでポリスチレンに分散した状態で含む構造を有し、含有ポリブタジエン量12%であるゴム補強耐衝撃性ポリスチレン樹脂。
(d5);ポリブタジエンの1,2−ビニル結合量が12%のポリブタジエンが平均分散粒径0.74μmでポリスチレンに分散した状態で含む構造を有し、含有ポリブタジエン量12%であるゴム補強耐衝撃性ポリスチレン樹脂。
(d6);ポリブタジエンの1,2−ビニル結合量が12%のポリブタジエンが平均分散粒径0.92μmでポリスチレンに分散した状態で含む構造を有し、含有ポリブタジエン量12%であるゴム補強耐衝撃性ポリスチレン樹脂。
物性:
(1)アイゾット(ノッチ付き)衝撃強度(Kg・ cm/cm)
試験用テストピースを用い、ASTM D−256に準拠して23℃で測定 した。
(2)曲げ弾性率(Kg/cm 2 )
テストピースを用い、ASTM Dー790に準拠して測定した。
(3)熱変形温度(℃)
テストピースを用い、ASTM D−648に準拠して、18.6Kg/cm2 荷重で測定した。
(4)引張強さ
テストピースを用い、ASTM D−638に準拠して23℃で測定した。
(5)層剥離
引張強さ測定試験後のテストピースの破断面を観察し、層剥離の有無を確認した。
【0041】
【実施例1〜5および比較例1〜4】
ポリプロピレン系樹脂、PPE、混和剤を表1に示した組成で配合し、真空ベント口を設けた二軸押出機ZSK−25(WERNER&PFLEIDERER社製)を用いて、押出温度280℃、スクリュー回転数300rpm、吐出量12kg/時間の条件にて溶融混練しペレットとして得た。
【0042】
得られた樹脂組成物のペレットを用いて240〜280℃に設定したスクリューインライン型射出成形機に供給し、金型温度60℃の条件で、引張強さ測定試験用テストピース、アイゾット衝撃試験用テストピース、曲げ弾性率測定用テストピースおよび熱変形温度測定用テストピースを射出成形した。
組成割合、物性の評価の結果を表1に示す。
【0043】
本発明の平均分散粒径0.14〜0.70μmのゴム分散粒径を有するゴム補強耐衝撃性ポリスチレン樹脂を用いた樹脂組成物は、耐衝撃性に優れるが、本発明の範囲外にあるゴム分散粒径を有するゴム補強耐衝撃性ポリスチレン樹脂を用いた場合、耐衝撃性の改良が見られないことが明らかになった。
また、水添ブロック共重合体においては、水素添加前の共役ジエン化合物の1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量が30〜90%であるものは、得られる樹脂組成物に層剥離が認められず、かかるビニル結合量の合計量が30%未満である場合、耐衝撃性には優れるものの層剥離が顕著に発現し好ましくない事が判った。
【0044】
【表1】
【0045】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物は、平均分散粒径0.14〜0.70μmのゴム分散粒径を有するゴム補強耐衝撃性ポリスチレン樹脂を用いることにより、従来のものと比較して、耐衝撃性に優れるものである。
Claims (1)
- (a)成分、ポリプロピレン系樹脂 45〜95重量%、(b)成分、ポリフェニレンエーテル系樹脂 55〜 5重量%、(c)成分、共役ジエン化合物の1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合量の合計量が30〜90%である共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBと、ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAとからなるブロック共重合体を、水素添加してなる水添ブロック共重合体を上記(a)成分と(b)成分との合計100重量部に対して1〜30重量部、(d)成分、平均分散粒径0.14〜0.70μmのゴム状重合体が分散したゴム補強耐衝撃性ポリスチレン樹脂を上記(b)100重量部に対して1〜400重量部、を含むことを特徴とする樹脂組成物。
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