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JP3853706B2 - 車両用伝動装置 - Google Patents

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JP3853706B2
JP3853706B2 JP2002177025A JP2002177025A JP3853706B2 JP 3853706 B2 JP3853706 B2 JP 3853706B2 JP 2002177025 A JP2002177025 A JP 2002177025A JP 2002177025 A JP2002177025 A JP 2002177025A JP 3853706 B2 JP3853706 B2 JP 3853706B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両用伝動装置に関し、特に回転電機によるエンジンの始動時とエンジンによる補機駆動時において、それぞれ適切な変速比を得られる車両用伝動装置の衝撃トルク緩衝機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、特開平2−264153号公報には、始動電動機の回転軸に設けられたプーリと、エンジンのクランク軸に遊星歯車機構を介して連結されたクランクプーリとをベルトで連結して相互に駆動力の伝達を行ない、かつ、キャリアとサンギヤ間に設けられた一方向クラッチと、インターナルギヤを係止、開放するラチェット機構とそれを付勢するアクチュエータにより、始動時と発電時とで変速比を変化させる技術が提案されている。
【0003】
特開平2−264153号公報に示される従来の車両用伝動装置においては、始動時、始動電動機の回転動力が、始動電動機のプーリ、ベルト、クランクプーリに伝達され、次に、クランクプーリから遊星歯車機構を介してクランクシャフトに減速して伝達されてエンジンが始動される。
【0004】
この時、クランクプーリに連結されたサンギヤはクランクシャフトに連結したキャリアに対して回転速度が高く、相対回転しているが、エンジン始動後は、ラチェット機構に係止されていたインターナルギヤが開放され、かつ、始動電動機が発電機に切り換えられるので、クランクプーリに連結されたサンギヤは回転速度が下がり、逆にクランクシャフトに連結されたキャリアは回転速度が上昇し、そしてキャリアの回転速度がサンギヤの回転速度を上回ろうとした時点でキャリアとサンギヤ間に設けられた一方向クラッチが結合し、一体に回転する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、特開平2−264153号公報に示される従来の車両用伝動装置においては、始動時に、インターナルギヤをラチェット機構で係止する場合には、何らかの原因によりインターナルギヤに過大なトルクが加わった場合の衝撃を吸収あるいは逃がす部分が無く、ギヤが破損するという問題があった。
【0006】
また、何らかの条件により、一方向クラッチの結合時に過大な衝撃トルクが加わり、一方向クラッチが致命的なダメージを受けるという問題があった。
【0007】
この発明は、上述のような問題点を解決するためになされたものであり、インターナルギヤに過大な衝撃トルクが加わった場合でも、電磁クラッチのフィールドコアとエンジンブラケットへの固定部間に弾性緩衝体を設けて、衝撃トルクを吸収緩和するようにして耐久寿命を向上させた車両用伝動装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明による車両用伝動装置は、電動機または発電機として動作する回転電機と、
前記回転電機を電動機および発電機に切り換える回転電機切換制御手段と、
前記回転電機の回転軸に取り付けられた回転電機用プーリと、
補機の回転軸に連結されて補機に動力を伝達する補機用プーリと、
エンジンのクランクシャフトに対して相対回転および一体回転可能に切り換えられて動力を入出力可能に伝達するクランクプーリと、
前記回転電機用プーリ、前記補機用プーリ、および前記クランクプーリと相互に連結し、回転動力を伝達する動力伝達手段と、
前記クランクプーリと連結され、かつベアリングを介して回転自在に支持されたサンギヤと、
前記サンギヤの外周をベアリングを介して自転および公転可能に支持されたプラネタリーギヤと、
前記プラネタリーギヤを自転および公転可能に支持し、かつ前記クランクシャフトに連結されたキャリアと、内周側で前記プラネタリーギヤと噛み合うインターナルギヤと、
前記インターナルギヤを拘束状態および非拘束状態に切り換える電磁クラッチと、
前記電磁クラッチをオン/オフする電磁クラッチ切換制御手段と、
前記インターナルギヤと前記キャリアと前記サンギヤのいずれか2ヶ所間に設けられた一方向クラッチとを備えた車両用伝動装置において、
前記電磁クラッチが少なくとも一個以上のベアリングを介して前記クランクシャフトに対して同軸に装着され、かつ前記電磁クラッチのフィールドコアが、弾性緩衝体を介してエンジンブラケットに対して円周方向に拘束されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の発明による車両用伝動装置は、請求項1の発明において、
前記インターナルギヤまたは前記キャリアと、前記一方向クラッチの外輪との嵌合部で、所定以上の回動トルクが作用した場合に滑るようなトルクリミッター機能を持たせるか、あるいは、前記キャリアまたは前記サンギヤと、前記一方向クラッチの内輪との嵌合部で、所定以上の回動トルクが作用した場合に滑るようなトルクリミッター機能を持たせたことを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1はこの発明の車両用伝動装置を含むエンジンの周辺機器のシステム構成図である。
【0011】
図1において、エンジン1の出力軸側(図示せず)に、ロックアップ機構付のトルクコンバータ2、及びオートマチックトランスミッション(以下A/Tと略す)3が設置されている。電動発電機4は回転センサ4aが装着され電動機および発電機として動作する回転電機である。
【0012】
エンジン1の他方の出力軸(クランクシャフト24)側には、変速伝動装置5が設けられている。この変速伝動装置5は、エンジン1の始動時に、電動発電機用プーリ(回転電機用プーリ)14、ベルト(動力伝達手段)17、クランクプーリ15を介して伝達された電動発電機4の回転動力を減速してクランクシャフト24に伝えてエンジン1を始動し、一方、エンジン1の始動後は、エンジン1の回転動力を等速でクランクプーリ15に伝える役割を果す。そして、伝達されたエンジン1の回転動力は、クランクプーリ15、ベルト17、補機用プーリ16あるいは電動発電機用プーリ14を介して、それぞれ補機6、電動発電機4を駆動する。
【0013】
エンジン1の近傍に設けられたスタータ7は、この発明においては、所定時間エンジン1の停止が連続して続いた後の最初のエンジン始動、あるいはエンジン冷却水が所定値以下の時のエンジン1の始動の時のみに使用される。スタータ7の動作指令に関しては、エンジン冷却水および連続エンジン停止時間を検知する図示しない検知手段が設けられ、その出力に基づいてスタータ7が動作する。
【0014】
インバータ8は、エンジン1の始動時、高圧バッテリ9の直流電力を三相交流電力に変換して電動発電機4に給電し、電動発電機4を電動機として駆動制御する。一方、エンジン始動後は、エンジン1の回転動力で発電機として駆動された電動発電機4が発電した交流電力を直流電力に変換して高圧バッテリ9に充電する。
【0015】
DC/DCコンバータ10は、12Vバッテリ11と高圧バッテリ9の間の電力を電圧変換してやり取りするためのものである。
【0016】
電動オイルポンプ12は、エンジン1の停止時に、機械式オイルポンプの替わりにトルクコンバータ2の油圧又はA/T3を駆動制御する油圧を供給する役割を果し、油圧制御部13は上記供給された油圧を必要部位に分配するためのものである。
【0017】
A/T用ECU60は電動オイルポンプ12および油圧制御部13を制御するためのものであり、電動発電機用ECU70(切換制御手段)は、回転センサ4aからの回転位置情報と、高圧バッテリ9の温度、充放電電流量情報に基づいて充電状態(SOC=State of charge)を検出し、インバータ8を制御する。エンジン用ECU80はエンジンを最適に制御するためのものであり、ECU90は、エンジン用ECU80、A/T用ECU60、電動発電機用ECU70を統合制御する役割を果す。
【0018】
次に、この発明の実施の形態による車両用伝動装置の具体的構造について説明する。図2は実施の形態1の車両用伝動装置の側面断面図であり、図3は車両用伝動装置の正面図である。
【0019】
図において、クランクプーリ15の中心孔は、略円筒状のサンギヤ18のシャフト部18bに挿嵌されている。クランクプーリ15の内側端面は、サンギヤ18のシャフト部18bに嵌合されたベアリング36の内輪の一端面に当接している。クランクプーリ15の外側端面は、サンギヤ18のネジ部18cにネジ嵌合したナット26によって軸方向に締め付け固定されている。このような構成により、クランクプーリ15、サンギヤ18、ベアリング36の内輪およびナット26は一体的に回転する。なお、サンギヤ18のシャフト部18bのベアリング36が嵌合された側の反対側の端面には、ベアリング38の内輪が嵌合されており、かつ、ベアリング36、38の各外輪はそれぞれキャリア23の内周面に嵌合支承されている。
【0020】
プラネタリーギヤ19は、ベアリング19cを介してキャリア23に嵌合固定されたシャフト19bに自転可能に支承されている。更に、このプラネタリーギヤ19は、サンギヤ18のシャフト部18bとキャリア23の内周面に嵌合されたベアリング36、38を介して、サンギヤ18の外周をシャフト部18bと同軸的に公転可能に支持されている。
【0021】
キャリア23は、一端に設けられた円筒孔とクランクシャフト24の結合シャフト部24aとが挿嵌され、キー34で円周方向に固定され、ボルト40でクランクシャフト24に軸方向に固定されている。つまり、キャリア23はクランクシャフト24に一体に固定され、キャリア23とクランクシャフト24は相互に回転動力を伝達することができる。
【0022】
キャリア23のクランクプーリ15側の外周面にはベアリング37の内輪が嵌合され、その外輪には外周ブラケット27の内周面が嵌合される。その外周ブラケット27の内周面には、インターナルギヤ20が挿嵌され、一体に固定されている。
【0023】
エンドブラケット29の内周面はベアリング39の外輪に圧入され、外周面は外周ブラケット27の内周面に嵌合され、かつ止め輪30によって軸方向に固定されているので、外周ブラケット27は、ベアリング39、エンドブラケット29を介してキャリア23に対して回転可能に支承されている。
【0024】
エンドブラケット29の内周面とキャリア23の外周面には一方向クラッチ22が接続されている。すなわち、一方向クラッチ22の外輪22aはエンドブラケット29の内周に嵌合され、内輪22bはキャリア23の外周面に圧入されている。ここで、前記内輪22bとキャリア23の外周面の回動摩擦力が一定の範囲に収まるように、締め代、面粗度、真円度等を管理すると共に、圧入圧も管理しているので、前記内輪22bとキャリア23の外周面が滑り始める最大回動トルクを所定値に調整管理することができる。
【0025】
一方向クラッチ22は、外輪22aと内輪22bとの間に、ローラ22cおよびリティナ22dを有し一方向にのみ回転力を伝達する。そして、一方向クラッチ22は、図示のナット26側から見て、内輪22bに対して外輪22aが相対的に時計回り方向に回転した場合に結合状態となり、逆に、反時計回りに回転する場合は非結合状態(すなわち空回り状態)になる。
【0026】
電磁クラッチ21の励磁回路部は、フィールドコア21aに界磁コイル21cが巻回され、磁路を形成するための端面コア21bがフィールドコア21aの一端面側に圧嵌固定された構造になっている。フィールドコア21aの端面コア21b側には、わずかなギャップを介してアマチュア21dが対峙しており、このアマチュア21dは、弾性体としての板バネ31の外周端にリベット32で固定されている。、一方、この板バネ31の内周端は外周ブラケット27のフランジ部27aとボルト28で固定されている。板バネ31は、アマチュア21dをフィールドコア21aから離間する方向に付勢している。
【0027】
電磁クラッチ21の励磁回路がオンすると、アマチュア21dはフィールドコア21aに吸引される。一方、電磁クラッチ21の励磁回路がオフすると、アマチュア21dは板バネ31の弾性力でフランジ部27a側に引き戻される。アマチュア21dとフランジ部27aの間には、例えばゴムで作製された緩衝材33が設けられている。緩衝材33は、電磁クラッチ21の励磁回路がオフしたとき、アマチュア21dが板バネ31の弾性力でフランジ部27a側に引き戻されることにより発生する、アマチュア21dとフランジ部27aの衝突音を防止する。
【0028】
また、フィールドコア21aの内周にベアリング35の外輪が圧入固定され、ベアリング35の内輪はエンドブラケット29の外周にスペーサ43およびワッシャ44を介して軸方向に挿嵌されている。更に、このベアリング35の内輪のワッシャ44の反対側端面は、エンドブラケット29のネジ部29aに締め込まれたナット45によって軸方向に固定されている。ここで、スペーサ43は止め輪30の外れ止めの機能を有し、ワッシャ44はアマチュア21dとフィールドコア21aとのギャップ調整を行なうものである。
【0029】
フィールドコア21aの端面コア21bの反対側端面には、取付けプレート46が抵抗溶接あるいはネジ止めなどの結合手段により一体に固定されている。そして、取付けプレート46の外周端に形成された固定用ポケット46a内には、弾性緩衝体25が嵌合固定され、さらに弾性緩衝体25の内周面にはブッシュ47が摺動可能に圧入されている。ボルト50は前記ブッシュ47をカバーブラケット1bに締め付け固定している。
【0030】
カバーブラケット1bに設けたシール部材室101bには、シール部材52が嵌合固定され、そのシール部材52にクランクシャフト24が挿嵌されている。スプロケット53は、図示しないチェーンによって図示しないカムシャフトを回転駆動するためのものであり、クランクシャフト24にキーなどを介して固定されている。
【0031】
なお、図1において説明した電動発電機用ECU70は、インバータ8を介して電動発電機4を電動機および発電機に切り換える回転電機切換制御手段としての動作をするとともに、上述の電磁クラッチ21をオン/オフ制御してインターナルギヤ20を拘束状態(係止状態すなわち回転不可能状態)および非拘束状態(開放状態すなわち回転可能状態)に切り換える電磁クラッチ切換制御手段としての動作をする。
【0032】
次に、本実施の形態1の車両用伝動装置の動作について説明する。
まず、エコラン動作を開始する条件が成立すると、エンジン用ECU80は、エンジン1の各気筒への燃料の噴射を停止させる信号を出力し、エンジンを停止させる。ここで、エコラン動作を開始する条件としては、車速がゼロで、かつ、シフトレバーのレンジがR(後進)にないこと、さらに、アクセルペダルの踏み込み量がゼロであることなどが一例として考えられる。
【0033】
エコラン動作によりエンジンを停止した場合には、電動発電機4を電動機として動作させ、電動発電機用プーリ14、ベルト17、補機用プーリ16を介して、補機6が負荷に応じた回転速度とトルクで最適に駆動される。
この時の変速伝動装置5の電磁クラッチ21はオフされており、アマチュア21dは非拘束状態となっている。
なお、この場合の補機6としては、車両停止時でも使用が必要とされるA/Cコンプレッサーやパワーステアリング用オイルポンプなどが当てはまる。
【0034】
図1の電動発電機用プーリ14の主面側から見て、時計回り方向に電動発電機4が回転するならば、ベルト17で連結されたクランクプーリ15も時計回りに回転し、さらにクランクプーリ15と一体に固定されたサンギヤ18も時計回りに回転する。
【0035】
一方、サンギヤ18と噛み合っているプラネタリーギヤ19は反時計回りに自転するが、停止しているエンジン1のクランクシャフト24に一体に連結されているキャリア23は停止したままでサンギヤ18の周りを公転しないので、非拘束状態にあるアマチュア21dに連結している外周ブラケット27に嵌合固定されているインターナルギヤ20は反時計回りに回転する。
【0036】
この場合、キャリア23に嵌合している一方向クラッチ22の内輪22bに対して、エンドブラケット29と外周ブラケット27とインターナルギヤ20に連結されている一方向クラッチ22の外輪22aは反時計回りに相対回転するので、一方向クラッチ22は非結合状態となり空回りする。
【0037】
すなわち、エンジン停止時に電磁クラッチ21をオフし、電動発電機4を電動機として作動させても、その回転動力はベルト17を介して補機6にのみ伝達され、クランクプーリ15、変速伝動装置5は空回りしてクランクシャフト24には電動発電機4の回転動力は伝達されない。
【0038】
次に、エコラン動作によるエンジン停止状態から、電動発電機4によってエンジン1を再始動させる場合の動作について説明する。
【0039】
エンジン再始動条件が成立すると、まず、変速伝動装置5の電磁クラッチ21がオンされ、次に電動発電機4が電動機として時計回りに回転し、電動発電機用プーリ14、ベルト17を介してクランクプーリ15に回転動力が伝達される。
【0040】
そして、電磁クラッチ21がオンしているため、アマチュア21dがフィールドコア21aに吸着されて拘束されるので、板バネ31、外周ブラケット27を介してインターナルギヤ20が拘束され、その結果、クランクプーリ15に伝達された回転動力は、サンギヤ18、プラネタリーギヤ19、キャリア23を介して減速されてクランクシャフト24に伝達され、エンジンが始動される。
なお、この時、インターナルギヤ20は拘束されており、キャリア23は時計回りに回転するので、一方向クラッチ22は非結合状態となり空回りしている。
【0041】
このような電動発電機4によるエンジン1の再始動においては、電動発電機4の回転動力は、まず、電動発電機用プーリ14とクランクプーリ15のプーリ比で減速され、さらに変速伝動装置5によりさらに減速されるので、比較的小型な電動発電機4でもエンジン始動に必要な大きなトルクを発生させることができる。
【0042】
エンジン始動後、エンジン回転速度が所定回転速度に達したことを検知して電磁クラッチ21がオフされると、アマチュア21dが非拘束となるのでインターナルギヤ20も非拘束状態となり、サンギヤ18とキャリア23はそれぞれ独立した回転が可能となり、相互に動力を伝達することは無い。
【0043】
しかしながら、本発明においては、インターナルギヤ20とキャリア23の間に、一方向クラッチ22を設けているので、電磁クラッチ21がオフされた直後は、キャリア23の回転速度は、連結しているクランクシャフト24の回転速度と同じであり、一方、サンギヤ18はキャリア23の回転速度の減速比倍で回転しているので、インターナルギヤ20はキャリア23に対して反時計回りに相対回転することになり、一方向クラッチ22は非結合状態になる。
【0044】
そして、サンギヤ18の回転はキャリア23とは独立した状態で減速し続け、逆に、キャリア23の回転速度がサンギヤ18の回転速度を上回った時点で、キャリア23に対してインターナルギヤ20が時計回りに相対回転しはじめる。このとき、一方向クラッチ22は結合し、インターナルギヤ20とキャリア23が一体に結合するので、プラネタリーギヤ19およびサンギヤ18も一体に固定されて、その結果、クランクシャフト24とサンギヤ18、クランクプーリ15は1:1の等速で回転することになる。そして、電動発電機4は発電機として動作するように切り換えられる。
【0045】
その後もエンジン1の回転動力は、変速伝動装置5の変速比が1の状態で、クランクシャフト24からキャリア23、プラネタリーギヤ19、サンギヤ18の経路と、キャリア23、一方向クラッチ22、エンドブラケット29、外周ブラケット27、インターナルギヤ20、プラネタリーギヤ19、サンギヤ18の経路の2経路に分散されて伝達され、サンギヤ18、クランクプーリ15、ベルト17、補機用プーリ16あるいは電動発電機用プーリ14を介して補機6あるいは電動発電機4(この場合は発電機として動作している)を駆動する。
【0046】
ここで、上述のような電動発電機4によるエンジン始動時において、変速電動装置5のインターナルギヤを拘束する手段として電磁クラッチ21を用いたので、インターナルギヤ20に何らかの過大な衝撃トルクが加わったときには電磁クラッチ21の吸着面が滑り、ギヤが破損するという不具合を回避できる。
さらに、電磁クラッチ21の界磁コイル21cに供給する界磁電流値を調整することにより、滑りの許容限界を任意に設定できる。
【0047】
また、上述のように、電磁クラッチ21がオフされた後に一方向クラッチ22が結合することになるが、何らかの条件によって一方向クラッチ結合時に過大な衝撃トルクが加わることがある。
その場合、前記一方向クラッチ22の内輪22bとキャリア23の外周面が滑り始める最大回動トルクを調整管理してあるので、許容できない程の過大な衝撃トルクが一方向クラッチ22に作用した場合に前記内輪22bとキャリア23の外周面が滑り、衝撃を緩和するために、一方向クラッチ22は致命的なダメージを受けることが回避されるという効果がある。
なお、同様に前記一方向クラッチ22の外輪22aとエンドブラケット29の内周面において、滑り始める最大回動トルクの調整管理を行なっても同等の効果が得られる。
【0048】
さらに、通常、始動時のクランキング期間は、エンジン回転数が大きく変動し負荷も変動するので、変速伝動装置の遊星ギヤ減速部であるところのサンギヤ18、プラネタリーギヤ19およびインターナルギヤ20の噛み合い歯面に断続的な衝撃が加わり、耐久寿命に甚大な悪影響を及ぼすが、本実施の形態のように、フィールドコア21aが、フィールドコア21aに結合された取付けプレート46の外周端に形成された固定用ポケット46a内の弾性緩衝体25を介してエンジンブラケットに対して円周方向に拘束されているので、前記弾性緩衝体25が前記断続的な衝撃トルクを吸収緩和してサンギヤ18、プラネタリーギヤ19およびインターナルギヤ20の噛み合い歯面の衝撃を緩和するため、耐久寿命が向上するという効果がある。
【0049】
実施の形態2.
図4はこの発明の実施の形態2による車両用伝動装置の側面断面図であり、図5は同じく実施の形態2による車両用伝動装置の正面図である。なお、実施の形態1と同一部分については、同一符号をつけて示しており、ここでは説明を省略する。
【0050】
フィールドコア21aの端面コア21bの反対側端面には固定プレート54が抵抗溶接あるいはネジ止めなどの結合手段により一体に固定され、前記固定プレート54の外周にはフランジ部54aが形成されている。
【0051】
また、取付けプレート46は固定用ポケット46aにブッシュ47が圧入嵌合されており、前記ブッシュ47はボルト50によってカバーブラケット1bに締め付け固定されている。
【0052】
前記取付けプレート46にはフランジ部46bが形成されており、前記固定プレート54のフランジ部54aと対峙して設けている。これらフランジ部46bとフランジ部54aの間にはスプリング56が設置されており、さらに前記フランジ部46bに圧入固定されているピン55によって支持されている。これら取付けプレート46、固定プレート54、スプリング56及びピン55により弾性緩衝ユニット25を形成しており、この弾性緩衝ユニット25は取付けプレート46の取付け固定部であるボルト50の両側に設けている。
【0053】
次に、実施の形態2の車両用伝動装置の動作と効果について述べる。
弾性緩衝ユニット25の動作としては、フィールドコア21aに加わった断続的な衝撃トルクをスプリング56で吸収緩和するものである。
弾性緩衝ユニット25は取付けプレート46の取付け固定部であるボルト50の両側に設けてあるので、両回転の衝撃トルクに対して対応できる。
実施の形態2の効果は、本実施の形態1の場合と同じである。
【0054】
実施の形態3.
図6はこの発明の実施の形態3による車両用伝動装置の一部正面図である。
【0055】
実施の形態3は、上記実施の形態2のスプリング56を弾性緩衝体57に置き換えたものであり、同一部分については、同一符号をつけて示しており、動作および効果も上記実施の形態2と同じであり、ここでは説明を省略する。
【0056】
なお、上記実施の形態2あるいは実施の形態3におけるスプリング56または弾性緩衝体57の替わりに、スプリング56と弾性緩衝体57を組み合わせたものでも同様な効果が得られる。
【0057】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、下記の様な効果を達成する。
【0058】
通常、始動時のクランキング期間は、エンジン回転数が大きく変動し負荷も変動するので、車両用伝動装置の遊星ギヤ減速部であるところのサンギヤ、プラネタリーギヤおよびインターナルギヤの噛み合い歯面に断続的な衝撃が加わり、耐久寿命に甚大な悪影響を及ぼすが、本発明のように、フィールドコアが弾性緩衝体を介してエンジンブラケットに対して円周方向に拘束されているので、前記弾性緩衝体が断続的な衝撃トルクを吸収緩和して、前記サンギヤ、プラネタリーギヤおよびインターナルギヤの噛み合い歯面の衝撃を緩和することができ、耐久寿命が向上するという効果がある。
【0059】
また、この発明によれば、許容できない程の過大な衝撃トルクが一方向クラッチに作用した場合に、インターナルギヤまたはキャリアと、一方向クラッチの外輪との嵌合部で滑らせるか、あるいは、キャリアまたはサンギヤと、一方向クラッチの内輪との嵌合部で滑らせて衝撃トルクを緩和し、一方向クラッチが致命的なダメージを受けることを回避させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の車両用伝動装置を含むエンジンの周辺機器のシステム構成図である。
【図2】 この発明の実施の形態1による車両用伝動装置の側面断面図である。
【図3】 この発明の実施の形態1による車両用伝動装置の正面図である。
【図4】 この発明の実施の形態2による車両用伝動装置の側面断面図である。
【図5】 この発明の実施の形態2による車両用伝動装置の正面図である。
【図6】 この発明の実施の形態3による車両用伝動装置の一部正面図である。
【符号の説明】
1 エンジン、2 トルクコンバータ(トルコン)、
3 A/T(オートマチックトランスミッション)、4 電動発電機(回転電機)、
4a 回転センサ
5 変速伝動装置、6 補機、7 スタータ、8 インバータ、9 高圧バッテリ、
10 DC/DCコンバータ、11 12Vバッテリ、12 電動オイルポンプ、
13 油圧制御部、14 電動発電機用プーリ(回転電機用プーリ)、
15 クランクプーリ、16 補機用プーリ、17 ベルト、18 サンギヤ、
19 プラネタリーギヤ、20 インターナルギヤ、21 電磁クラッチ、
22 一方向クラッチ、23 キャリア、24 クランクシャフト、
25 弾性緩衝体(または弾性緩衝ユニット)、27 外周ブラケット、
27a フランジ部、28 ボルト、29 エンドブラケット、30 止め輪、
31 板バネ(弾性体)、32 リベット、33 緩衝材、34 キー、
35〜39 ベアリング、40 ボルト、41,42 シール部材、
46 取付けプレート、46a 固定用ポケット、46b フランジ部、
47 ブッシュ、50,51 ボルト、52 シール部材、53 スプロケット、
56 スプリング、57 弾性緩衝体、60 A/T用ECU、
70 電動発電機用ECU(回転電機切換制御手段、電磁クラッチ切換制御手段)、
80 エンジン用ECU、90 ECU。

Claims (2)

  1. 電動機または発電機として動作する回転電機と、
    前記回転電機を電動機および発電機に切り換える回転電機切換制御手段と、
    前記回転電機の回転軸に取り付けられた回転電機用プーリと、
    補機の回転軸に連結されて補機に動力を伝達する補機用プーリと、
    エンジンのクランクシャフトに対して相対回転および一体回転可能に切り換えられて動力を入出力可能に伝達するクランクプーリと、
    前記回転電機用プーリ、前記補機用プーリ、および前記クランクプーリと相互に連結し、回転動力を伝達する動力伝達手段と、
    前記クランクプーリと連結され、かつベアリングを介して回転自在に支持されたサンギヤと、
    前記サンギヤの外周をベアリングを介して自転および公転可能に支持されたプラネタリーギヤと、
    前記プラネタリーギヤを自転および公転可能に支持し、かつ前記クランクシャフトに連結されたキャリアと、内周側で前記プラネタリーギヤと噛み合うインターナルギヤと、
    前記インターナルギヤを拘束状態および非拘束状態に切り換える電磁クラッチと、
    前記電磁クラッチをオン/オフする電磁クラッチ切換制御手段と、
    前記インターナルギヤと前記キャリアと前記サンギヤのいずれか2ヶ所間に設けられた一方向クラッチとを備えた車両用伝動装置において、
    前記電磁クラッチが少なくとも一個以上のベアリングを介して前記クランクシャフトに対して同軸に装着され、かつ前記電磁クラッチのフィールドコアが、弾性緩衝体を介してエンジンブラケットに対して円周方向に拘束されていることを特徴とする車両用伝動装置。
  2. 前記インターナルギヤまたは前記キャリアと、前記一方向クラッチの外輪との嵌合部で、所定以上の回動トルクが作用した場合に滑るようなトルクリミッター機能を持たせるか、あるいは、前記キャリアまたは前記サンギヤと、前記一方向クラッチの内輪との嵌合部で、所定以上の回動トルクが作用した場合に滑るようなトルクリミッター機能を持たせたことを特徴とする請求項1に記載の車両用伝動装置。
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