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JP3852256B2 - インクジェット記録装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録装置に関し、一層詳細には、移動キャリッジ上に配設されたインクタンクに対して移動キャリッジ外部のメインタンクからインクを供給するインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録装置では、移動キャリッジ上に配設されたインクタンクに対して移動キャリッジ外部にメインタンクを設け、メインタンクからインクを供給(補充)する構成が従来から開示されている。
【0003】
例えば、特公昭54−31898号公報(以下、従来例1という)には、印刷ヘッド内に液体吸収剤が充填された液体溜めが設けられており、液体溜めに設けられた充填用開口から液体充填装置に設置された燈心が挿入され、液体吸収剤に当接されることで、毛細管力によって液体充填装置から液体溜めにインクを供給する構成が開示されている。
【0004】
また、特公昭60−9903号公報((以下、従来例2という)には、キャリッジ上のインクタンク内のインク残量を検知し、所定量以下の場合には、印字待機位置に移動し、上方に設けられたベースタンクからインク液を落下させることでインクタンクにインクを補充する構成が開示されている。
【0005】
さらに、特公昭63−51868号公報(以下、従来例3という)には、キャリッジ上に搭載されたサブタンクとメインインクタンクの間を供給管によって接続し、サブタンク内のインクが減少するとメインインクタンクを押圧することによってサブタンク内にインクを圧送し、サブタンク内の空気が排出管から袋状の容器に収納される構成が開示されている。
【0006】
さらにまた、特公平7−51356号公報(以下、従来例4という)には、キャリッジ上に設けられた第1タンクとキャリッジ外に配設された第2タンクを2本の連結管で接続し、一方の連結管で第2タンクから第1タンクにインクを圧送し、他方の連結管でオーバーフロー分を第2タンクに回収する構成が開示されている。
【0007】
さらに、特許2772014号(以下、従来例5という)には、キャリッジ上の第1インクタンクの残量検出電極がインク残量の低下を検出すると、第1インクタンクとキャリッジ外の第2インクタンクを連結しているチューブのメカニカル弁が開放され、第1インクタンクより高い位置に配置されている第2インクタンクから自動的にインクを補給する構成が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようなインクジェット記録装置では、以下のような不都合がある。
【0009】
従来例1では、液体溜め内部の液体分布状況によっては、良好なインク移動ができないことや、燈心が常に露出しているためにインクの蒸発や変性を生じ易いという不都合がある。
【0010】
また、従来例2では、落下したインクが壁面などに付着して変性や固化を生じ、印字に不具合を生ずることがある。
【0011】
さらに、従来例3では、インクをサブタンクに圧送するためサブタンクが正圧になり、記録ヘッドのオリフィスにも正圧が作用してフェースフラッド等のインク漏れを生じてしまう。
【0012】
さらにまた、従来例4では、第1タンクを記録ヘッドよりも下方に配置する必要があり、増粘したインクを記録ヘッドから排出するために加圧するため、結合部からインク漏れしやすい。
【0013】
またさらに、従来例5では、メカニカル弁が劣化すると、インク漏れを生じてしまうという不都合があった。
【0014】
本発明は、上記不都合を解決すべく成されたもので、キャリッジ外のメインタンクとキャリッジ上のインクタンクとの接続部分からのインク漏れを防止して、安定したインク供給を可能としたインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1記載の本発明は、印字用記録ヘッドが設置された移動キャリッジ上に保持され、インクが自由表面を有する状態で保持されると共に、第1の被接続部および第2の被接続部が同一面に設けられたインクタンクと、前記移動キャリッジの外部に配置されインクが貯留されたメインタンクと、前記メインタンクと連通した開口部を有する第1接続部と、空気吸引手段によって外部に排気する第2接続部と、前記第1接続部および前記第2接続部を相対的に固定する保持部材と、前記保持部材と前記インクタンクとを相対的に近接・離間させて前記第1接続部および前記第2接続部を前記インクタンクの前記第1の被接続部および前記第2の被接続部と接続・分離させる接続手段と、を備え、前記インクタンクが、インクを保持する毛細管部材が収納され、大気連通口が形成された第1インク室と、インクが自由表面を有する状態で保持し、記録ヘッドにインクを供給するインク供給口が形成されると共に、前記第1の被接続部および前記第2の被接続部が設けられた第2インク室と、前記第1インク室と前記第2インク室の連通部分に設けられたメニスカス形成部材と、から構成されることを特徴とする。
【0016】
請求項1記載の発明の作用について説明する。
【0017】
本発明では、移動キャリッジ外部に配置されたメインタンクから移動キャリッジ上に配置されたインクタンクにインクを供給する場合、以下のように行なう。先ず、接続手段によって第1、第2接続部をインクタンクの被接続部にそれぞれ接続する。次に、空気吸引手段(例えば、ポンプ)によってインクタンク内部の空気を第2接続部から外部に排出し、インクタンク内部の負圧を増大させる。この結果、メインタンクから第1接続部を介してインクタンクにインクを補充する。このように、インクの補充はインクタンクの負圧によってメインタンクから吸引して行なうため、第1接続部とインクタンクの被接続部の接続部分からインクが外部に漏れることはない。
また、保持部材によって、第1接続部と第2接続部の被接続部に対する接続・分離を一括して行うことができるので、接続手段を簡易に構成できると共に、誤って一方のみが接続された状態とならずにインク補充を確実に実施できる。さらに、インクタンクの同一面から接続されるので装置の小型化に適している。
また、印字時には、記録ヘッドからのインク滴の吐出によって生ずる負圧によって、第1インク室の毛細管部材に含有されるインクが第2インク室に移動する。第1インク室のインクが枯渇すると第2インク室のインクが消費されるが、メニスカス形成部材に形成されたインクメニスカス膜を破って第1インク室から第2インク室へ気泡が移動して第2インク室の負圧を所定範囲に制御し、記録ヘッドのインク滴吐出状態を良好に保つ。
このように、通常の印字時には、記録ヘッド側の負圧制御をインクタンクのみで独立して行なっているため、メインタンクの設置場所がインクタンク(記録ヘッド)に対して自由になり、部品配置の自由度が高くなる。
請求項2記載の本発明は、請求項1記載の発明において、前記第1接続部は、非接続時は前記開口部を覆い、接続時には開口部を開放するシール部材を有することを特徴とする。
請求項2記載の発明の作用について説明する。
第1接続部の開口部は、非接続時にはシール部材によって覆われているが、接続時には、開口部がシール部材の外部に露出する。よって、非接続時はメインタンクと第1接続部を連通するインク供給路が封止されるので、インク供給路がインク乾燥や異物混入等によって詰まることがない。また、接続時にインクタンク内部に挿入される部材を保護して異物の付着を防止し、インクタンク内に異物が混入することが防止できる。
【0022】
請求項3記載の本発明は、請求項1または2記載の発明において、前記メインタンクから前記インクタンクにインクを補充する際、前記第1インク室の大気連通口を閉塞する閉塞手段を設けたことを特徴とする。
【0023】
請求項3記載の発明の作用について説明する。
【0024】
メインタンクからインクタンクにインクを供給する際、閉塞手段によって第1インク室の大気連通口を閉塞する。したがって、第2インク室の空気を外部に吸引排出して第2インク室の負圧を増大させる際、大気連通口を有する第1インク室から第2インク室に空気が流入して第2インク室の負圧を低下させることはない。すなわち、メインタンクからインクタンクに効率的にインク補充を行なうことができる。
【0025】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記保持部材は、前記接続手段によって前記第1及び第2接続部が前記第1及び第2の被接続部とそれぞれ接続されたときに、前記大気連通口を閉塞するように、前記閉塞手段を保持することを特徴とする。
【0026】
請求項4記載の発明の作用について説明する。
【0027】
保持部材によって、第1、第2接続部を被接続部に接続すると共に、大気連通口を閉塞することを一動作で完了することができる。よって、効率的にインク供給動作を行なうことができる。
【0028】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項記載の発明において、前記第2インク室のインク残量を検知するインク残量検知手段と、前記インク残量検知手段によってインク残量が所定量以下と検知された場合に、接続手段を駆動して前記第1、第2接続部をそれぞれ前記第1、第2の被接続部に接続し、空気吸引手段を駆動することにより前記メインタンクから前記インクタンクにインクを補充させる制御手段と、を設けたことを特徴とする。
【0029】
請求項5記載の発明の作用について説明する。
【0030】
インク残量検知手段によってインク残量が所定量以下であると検知された場合には、インク滴の吐出を中止して制御手段が接続手段を駆動して第2インク室の被接続部に第1、第2接続部をそれぞれ接続し、空気吸引手段を駆動して第2インク室の空気を排出し、メインタンクからインクを補充する。
【0031】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、インク残量検知手段は、インクの有無による光反射率の変化に基づいて液面を検知する光学式センサであることを特徴とする。
【0032】
請求項6記載の発明の作用について説明する。
【0033】
インクタンクの光学式センサが設置されている位置(高さ)までインクが有るか無いかによって光反射率が異なる。したがって、光反射率の変化に基づいて確実に液面を検知して、適切なタイミングでメインタンクからインクタンクにインクを補充することができる。
【0034】
請求項7記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項記載の発明において、前記第1及び第2の被接続部、及び前記大気連通口が前記インクタンクの上面に設けられていることを特徴とする。
【0035】
請求項7記載の発明の作用について説明する。
【0036】
第1、第2の被接続部及び大気連通口がインクタンクの上面に設けられているため、第2インク室に対するインクの供給は、インク液中(液面下)ではなくインク液面の上部から行なうことができる。したがって、接続部に付着するインクの量が減少し、付着したインクの固化が抑制される。
【0037】
請求項8記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記インクタンクのインク液面が第1の高さを下回ったことを検知する第1の検知手段と、前記インクタンクのインク液面が前記第1の高さよりも高い第2の高さに到達したことを検知する第2の検知手段と、前記インクタンクのインク液面が前記第1の高さを下回ったことを前記第1の検知手段が検知したときに、前記メインタンクから前記インクタンクに前記インクを供給するように前記接続手段および前記空気吸引手段を駆動し、前記インクタンクのインク液面が前記第2の高さに到達したことを前記第2の検知手段が検知したときに、前記メインタンクから前記インクタンクへの前記インクの供給を停止するように前記接続手段および前記空気吸引手段を制御する制御手段と、を有し、前記第1接続部は、接続時において前記開口部が前記第1の高さよりも鉛直下方位置に位置するように構成されていることを特徴とする。
【0038】
請求項8記載の発明の作用について説明する。
【0039】
インクタンクのインク液面が第1の高さを下回ったことを第1の検知手段が検知したときに、接続手段および空気吸引手段を駆動してメインタンクからインクタンクにインクを供給する。そして、インクタンクのインク液面が、第1の高さよりも高い第2の高さに到達したことを第2の検知手段が検知したときに、接続手段および空気吸引手段を制御してメインタンクからインクタンクへのインクの供給を停止する。また、この第1接続部は、接続時において第1接続部の開口部が第1の高さよりも鉛直下方位置に位置するように構成されている。
よって、第1の高さ及び第2の高さよりも下側からインクが供給されるので、インクを供給するときに、第1の高さ及び第2の高さのインク液面検知位置にインクが極力触れない構成であり、第1及び第2の検知手段の誤検知が防止されてインク供給の誤動作を防止できる。
請求項9記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記インクタンクのインク液面が第1の高さを下回ったことを検知する第1の検知手段と、前記インクタンクのインク液面が前記第1の高さよりも高い第2の高さに到達したことを検知する第2の検知手段と、前記インクタンクのインク液面が前記第1の高さを下回ったことを前記第1の検知手段が検知したときに、前記メインタンクから前記インクタンクに前記インクを供給するように前記接続手段および前記空気吸引手段を駆動し、前記インクタンクのインク液面が前記第2の高さに到達したことを前記第2の検知手段が検知したときに、前記メインタンクから前記インクタンクへの前記インクの供給を停止するように前記接続手段および前記空気吸引手段を制御する制御手段と、を有し、前記第1接続部は、接続時において前記開口部が前記第2の高さよりも鉛直下方位置に位置するように構成されていることを特徴とする。
請求項9記載の発明の作用について説明する。
インクタンクのインク液面が第1の高さを下回ったことを第1の検知手段が検知したときに、接続手段および空気吸引手段を駆動してメインタンクからインクタンクにインクを供給する。そして、インクタンクのインク液面が、第1の高さよりも高い第2の高さに到達したことを第2の検知手段が検知したときに、接続手段および空気吸引手段を制御してメインタンクからインクタンクへのインクの供給を停止する。また、この第1接続部は、接続時において第1接続部の開口部が第2の高さよりも鉛直下方位置に位置するように構成されている。
よって、インクが満タンになったときを除いて、インクを供給するときに、第2の高さ(満タン位置)を検知するインク液面検知位置にインクが極力触れない構成であり、第2の検知手段の誤検知が防止されてインク供給の誤動作を防止できる。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置について詳細に説明する。
【0041】
図2に示すように、インクジェット記録装置10には、搬送ローラ12によって搬送される用紙14の上部に、用紙14の搬送方向(副走査方向、矢印A方向)と交差する主走査方向(矢印B方向)に移動可能とされたキャリッジ16が配置されている。キャリッジ16には、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各インクを用紙14に向かって吐出する記録ヘッド18および記録ヘッド18と一体的に形成されたインクタンク20が備えられている。また、インクジェット記録装置10の主走査方向端部(ホームポジション)に、インクタンク20に対してインクを供給する補充ステーション22が配設されると共に、インクジェット記録装置10の下部にメインタンク24が配設されている。
【0042】
インクタンク20は、図1および図3に示すように、筐体21の内部に、インクを保持するための毛細管部材26が配設され大気連通口28が形成された第1インク室30と、自由状態でインクを保持する第2インク室32と、インク吐出口が形成されたヘッドチップを内部に持つヘッド液室34とから構成されている。
【0043】
筐体21は、透湿性、気体透過性を十分に抑制できるポリプロピレンで形成されている。ただし、その他の樹脂であっても耐インク性があり、透湿性、気体透過性を十分に抑制できるものであれば、使用可能である。また、第1インク室30内に配設される毛細管部材26としては、ポリエステルフェルトが使用されている。ポリエステルフェルトは、密度の変化によって毛細管力を調整でき、また、耐インク性にも優れているので好適である。もちろん、多孔質な高分子フォーム(ポリウレタン、メラミン)等や、ポリエステル繊維以外のポリプロピレン、アクリルなどのフェルトでも、適度な毛細管力をインクとの間に発揮し、耐インク性のあるものなら使用可能である。
【0044】
インクタンク20は記録ヘッド18と一体にカートリッジ化されており、記録ヘッド18に寿命がきた場合にはカートリッジ毎交換される。新品のカートリッジには、第1インク室30、第2インク室32、ヘッド液室34の全てにインクが充填されている。
【0045】
第1インク室30の底面には、微小な開口を有する多孔質体からなるメニスカス形成部材36が配置されており、当該開口を介して第1インク室30と第2インク室32が連通している。また、メニスカス形成部材36の底面には、インク誘導部材38が配置されており、第2インク室32内のインクを常にメニスカス形成部材36に供給している。
【0046】
このように形成されるため、印字によってインクが消費されると第1インク室30の大気連通口28から空気が第1インク室30に流入し、毛細管部材26に含浸されているインクが第2インク室32に流入する。さらに、毛細管部材26に含浸されたインクが枯渇すると、空気がメニスカス形成部材36の開口に到達する。開口にはインクメニスカス膜が形成されており、第1インク室30と第2インク室32との差圧によって第2インク室32の内部に凸状に膨張し、ついには破膜することで空気を第2インク室32の内部に供給し、負圧状態を一定に保つ。一方、インクメニスカス膜が破膜された開口には、インク誘導部材38からインクが供給されているため、すぐにインクメニスカス膜が再生されて、空気が連続的に第2インク室32に導入されて負圧状態が損なわれることを防止する。
【0047】
ヘッド液室34は、フィルタ39を介して第2インク室32と連通している。フィルタ39は、ヘッド液室34の側面部に鉛直方向に沿って設置されている。ヘッド液室34からインクを吐出することによって消費されるインクは、第2インク室32からフィルタ39を介してヘッド液室34に供給される。ヘッド液室34は、記録ヘッド18の熱によって生ずる気泡を蓄積するため、本実施形態では2ml程度の容積を有している。また、本実施形態では、記録ヘッド部分はシリコンウエハを微細加工することで作成し、ノズル部分は約600dpiの解像度を有している。
【0048】
なお,第2インク室32の側面には、光学式液面センサ41、43用のプリズム40、42が上下2個所に配設されている。液面センサ41、43は、インクジェット記録装置10に設置されており、キャリッジ16で移動する各色のインクタンク20のプリズム40、42に対して発光ダイオードからの光を照射し、反射光をフォトトランジスタに入射させることによって液面検知を行なっている。すなわち、プリズム40、42の反射面にインクが存在するときは、入射光はインクタンク内に透過し、反射しない。一方、プリズム40、42の反射面にインクがない場合には、反射面が入射光に対して全反射するように設計されており、反射光がフォトトランジスタに入射することによってインク液面がプリズム40、42よりも低下したことを検知する。なお、プリズム40は、後述するインク補充時のインク液面の上限を検知するため、プリズム42は、インク補充が必要なインク液面高さまでインク残量が減少したことを検知するために配設されている。
【0049】
また、第2インク室32の側面には、後述するポート50、52がそれぞれ挿入されるスリットバルブ44、46が設けられている。スリットバルブ44、46は、ゴムなどの弾性部材を用いたスリット構造をしており、後述する補充ステーション22のパイプ56が挿入された場合のみ外周面に密着してシールしつつ開口する。挿入時以外はスリットが閉塞しており、第2インク室32が気密状態とされ、負圧を一定範囲に制御することができる。スリットバルブ44はプリズム40よりも上方、スリットバルブ46はプリズム42よりも下方に配置されている。これは、スリットバルブ44に挿入されるポート50から必ず空気が排出されるためにインク液面の上限よりも上部に、またスリットバルブ46に挿入されるポート52からインク中にインクを供給するためにインク液面の下限よりも下に配設したものである。
【0050】
このように構成されるインクタンク20に対してインクを供給するインク供給(補充)系について説明する。
【0051】
補充ステーション22は、インクタンク20接続用の二つのポート50、52を有する。ポート50は、図1に示すように、基台54と、基台54の内部を貫通しているパイプ56と、パイプ56に巻回されるスプリング58およびパイプ56に沿って移動可能な支持部材60および支持部材60に支持される保護カバー62とから構成される。
【0052】
パイプ56は、内部に図示しない通路が形成されており、先端近傍に形成された横孔64によって外部と連通している。パイプ56の先端は、保護カバー62の先端に円錐状のシール部66によって外部から遮蔽され、横孔64においてインクの蒸発や変性が生じないようにされている。
【0053】
スプリング58は基台54と支持部材60の間に配設されているため、保護カバー62に矢印C方向の力が作用することによってスプリング58が縮み、支持部材60および保護カバー62がC方向に移動してパイプ56が外部に露出する。
【0054】
また、ポート50のパイプ56は、大気開放される排気管84に接続されており、途中に排気用のポンプ86が配設されている。
【0055】
ポート52もポート50と同様の構成であり、パイプ56はメインタンク24の底部に形成された供給口70と供給管72を介して接続されている。
【0056】
このようなポート50、52を有する補充ステーション22は、アクチュエータ90によってインクタンク20の側面に対して接近離間(矢印D、C方向)可能に構成されている。したがって、補充ステーション22をインクタンク20の側面に対して接近させると、保護カバー62が側面に当接し、スプリング58が圧縮される。この結果、保護カバー62から露出したパイプ56の先端(横孔64)がスリットバルブ44、46から第1インク室32に進入する(図4参照)。
【0057】
メインタンク24は、ポリプロピレン樹脂の筐体74内に自由状態でインクを貯留する方式を採用している。メインタンク24は、インクジェット記録装置10に装填される際に、大気開放口を大気に連通する構造とされている。具体的には、インクジェット記録装置10側に形成された大気に連通するパイプ78が備えられ、インクジェット記録装置10に装填することによって、メインタンク24を外部から密閉しているゴムなどの弾性部材からなるスリットバルブ79にパイプ78が挿入され、メインタンク24が大気開放される構成である。したがって、スリットバルブ79は出荷時には閉塞されており、運送中等のインク漏れを防止する。スリットバルブ79の内側には、ラビリンス構造の通路80を介して設けられ、インク漏れや蒸発を防止している。
【0058】
また、供給管72の途中には、メインタンク24の残量を検知するためのインク残量検知センサ82が配設されている。インク残量検知センサ82が供給管72内のインク無しを検知した場合には、メインタンク24の残量が僅かであると判断し、メインタンク24の交換メッセージを表示することができる。
【0059】
なお、供給管72内のインクの透過光を検出するインク適正検出手段を設け、透過光の減衰率からインクの同定を行ない、不適正なインクが検出された場合にはメインタンク24およびインクタンク20の交換を促す構成とすることもできる。
【0060】
なお、インクジェット記録装置10には、液面センサ41、43やインク残量検知センサ82から出力信号に基づいてメインタンク24からインクタンク20にインク供給を行なうためにアクチュエータ90およびポンプ86に駆動信号を出力する制御部94が設けられている。
【0061】
このように構成されたインクジェット記録装置10の作用について説明する。
【0062】
先ず、通常の印字状態においては、インク消費によって、第1インク室30の毛細管部材26から第2インク室32にインクが供給される。さらに、毛細管部材26のインクが枯渇すると、第1インク室30の空気がメニスカス形成部材36の開口に形成されるインクメニスカス膜を破裂させて第2インク室32に進入して第2インク室32の負圧状態を一定に保つ。これによってヘッド液室34から安定したインク吐出が行なわれる。さらに、インクが消費されるに従って第2インク室32のインク液面が低下してプリズム42を下回ると、液面センサ43の発光ダイオードから照射された入射光が反射面で全反射してフォトレジスタに入射する。この結果、液面低下が検知され、検知信号が液面センサ43から制御部94に出力される。制御部94ではインク補充が必要と判断して、記録ヘッド18の印字動作を終了してキャリッジ16をホームポジションに戻す。さらに、制御部94からアクチュエータ90に駆動信号が出力され、ホームポジションに位置したインクタンク20の側面に補充ステーション22が接近し、保護カバー62が側面に当接する。さらに、補充ステーション22が矢印D方向に移動することにより、スプリング58が圧縮されてパイプ56が保護カバー62から露出すると共に、先端(横孔64)がスリットバルブ44、46から第2インク室32の内部に挿入される(図4参照)。この結果、ポート50のパイプ56は第2インク室32の空気中に、ポート52のパイプ56は第2インク室32のインク中に挿入される。ここで、制御部94はアクチュエータ90の駆動を停止し、ポンプ86を駆動する。この結果、第2インク室32内の空気が排気管84を介して外部に排出される。したがって、第2インク室32の負圧が増加し、メインタンク24から供給管72、パイプ56、横孔64を介してインクが第2インク室32に供給される。
【0063】
インクの充填により第2インク室32のインク液面がプリズム40の位置まで到達すると、液面センサ41が検知して検知信号を制御部94に出力する。この検知信号に基づいて制御部94はポンプ86に停止信号を出力し、ポンプ86の駆動を停止する。さらに、アクチュエータ90を駆動させてインクタンク20から補充ステーション22を離間させる。これによってポート50、52の各パイプ56がスリットバルブ44、46からそれぞれ抜き出され、スプリング58の復帰とともに保護カバー62が横孔64を閉塞する。したがって、パイプ56(横孔64)からインクが蒸発すること、あるいは付着したインクが固化することを防止できる。なお、インクタンク20の側面に形成されたスリットバルブ44、46もパイプ抜出後、素早く弾性力によって開口部をシールし、インク漏れを防止する。
【0064】
このように、本実施形態のインクジェット記録装置10では、メインタンク24からインクタンク20にインクを補充するのに、ポート50、52をインクタンク20の第2インク室32に接続させ、ポンプ86を用いてポート50から第2インク室32の空気を排出して第2インク室32の負圧を増加させることによって、メインタンク24から第2インク室32にインクを吸引する。すなわち、負圧によってインクを供給するため、ポート52のパイプ56が挿入されたスリットバルブ46からインクが漏れることはない。
【0065】
なお、ポート50、52の各パイプ56がスリットバルブ44、46に挿入される際、第1インク室30の大気連通口28を閉塞すると共に、記録ヘッド18のノズルオリフィスをキャッピングすることも可能である。このように構成することにより、ポンプ86の駆動による第2インク室32の負圧増大に伴なって大気連通口28や記録ヘッド18のノズルオリフィスから空気が進入することを防止できる。ただし、たとえ空気が進入したとしても、供給管72、パイプ56などの流路抵抗を十分に低くすることで、インク補充は十分に可能である。進入した空気は、ポンプ86によって外部に排出される。
【0066】
また、インクタンク20の圧力制御は、メインタンク24との水頭圧によって制御されるのではなく、メインタンク24とは独立に行なわれているため、メインタンク24の設置場所が規制されず、部材配置の自由度が高まる。
【0067】
ところで、本実施形態では、インク補充をホームポジションで行なう構成としたが、補充位置はホームポジションに限定されず、他の位置で行なう構成としても良い。
【0068】
次に、本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置について図5を参照して説明する。第1実施形態と同様の構成要素には同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0069】
本実施形態では、スリットバルブ44、46がインクタンク20の上面に形成されており、補充ステーション22がインクタンク20の上部から接近離間する点が第1実施形態と異なる。
【0070】
また、補充ステーション22に第1インク室30の大気連通口28を閉塞する閉塞部材92が設けられている。
【0071】
このように構成することにより、第1実施形態と同様の作用効果を奏すると共に、インク補充時に第2インク室32の負圧の増大によって大気連通口28から第1インク室30を介して第2インク室32に空気が供給されることを防止できる。この結果、メインタンク24からのインク供給効率を向上させることができる。
【0072】
また、補充ステーション22に閉塞部材92が設けられているため、補充ステーション22をインクタンク20の上面に接近させる一動作によって、ポート50、52のパイプ56をスリットバルブ44、46にそれぞれ挿入すると共に、閉塞部材92が大気連通口28を閉塞することができる。
【0073】
さらに、インク供給時にインクが供給されるパイプ56がインクに浸からないため、パイプ56に付着するインクを最小限に抑制することができ、付着したインクの固化によるパイプ56の目詰まりなどを防止できる。
【0074】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のインクジェット記録装置では、キャリッジ外のメインタンクからキャリッジ上のインクタンクにインクを供給する際、インク漏れを確実に阻止して安定的にインクを補充することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置のインク供給系を示す概略図である。
【図2】 本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置を示す斜視図である。
【図3】 本発明の第1実施形態に係るインクタンクの概略斜視図である。
【図4】 本発明の第1実施形態に係るインクタンクに対するポートの接続状態を示す断面図である。
【図5】 本発明の第2実施形態に係るインクタンクの概略斜視図である。
【符号の説明】
10 インクジェット記録装置
18 記録ヘッド
20 インクタンク
22 補充ステーション(接続手段)
24 メインタンク
44 スリットバルブ(被接続部)
46 スリットバルブ(被接続部)
50 ポート(第1接続部)
52 ポート(第2接続部)
86 ポンプ(空気吸引手段)

Claims (9)

  1. 印字用記録ヘッドが設置された移動キャリッジ上に保持され、インクが自由表面を有する状態で保持されると共に、第1の被接続部および第2の被接続部が同一面に設けられたインクタンクと、
    前記移動キャリッジの外部に配置されインクが貯留されたメインタンクと、
    前記メインタンクと連通した開口部を有する第1接続部と、
    空気吸引手段によって外部に排気する第2接続部と、
    前記第1接続部および前記第2接続部を相対的に固定する保持部材と、
    前記保持部材と前記インクタンクとを相対的に近接・離間させて前記第1接続部および前記第2接続部を前記インクタンクの前記第1の被接続部および前記第2の被接続部と接続・分離させる接続手段と、
    を備え、
    前記インクタンクが、
    インクを保持する毛細管部材が収納され、大気連通口が形成された第1インク室と、
    インクが自由表面を有する状態で保持し、記録ヘッドにインクを供給するインク供給口が形成されると共に、前記第1の被接続部および前記第2の被接続部が設けられた第2インク室と、
    前記第1インク室と前記第2インク室の連通部分に設けられたメニスカス形成部材と、
    から構成されることを特徴とするインクジェット記録装置。
  2. 前記第1接続部は、非接続時は前記開口部を覆い、接続時には開口部を開放するシール部材を有することを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
  3. 前記メインタンクから前記インクタンクにインクを補充する際、前記第1インク室の大気連通口を閉塞する閉塞手段を設けたことを特徴とする請求項1または2記載のインクジェット記録装置。
  4. 前記保持部材は、前記接続手段によって前記第1及び第2接続部が前記第1及び第2の被接続部とそれぞれ接続されたときに、前記大気連通口を閉塞するように、前記閉塞手段を保持することを特徴とする請求項3記載のインクジェット記録装置。
  5. 前記第2インク室のインク残量を検知するインク残量検知手段と、
    前記インク残量検知手段によってインク残量が所定量以下と検知された場合に、接続手段を駆動して前記第1、第2接続部をそれぞれ前記第1、第2の被接続部に接続し、空気吸引手段を駆動することにより前記メインタンクから前記インクタンクにインクを補充させる制御手段と、
    を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のインクジェット記録装置。
  6. インク残量検知手段は、インクの有無による光反射率の変化に基づいて液面を検知する光学式センサであることを特徴とする請求項5記載のインクジェット記録装置。
  7. 前記第1及び第2の被接続部、及び前記大気連通口が前記インクタンクの上面に設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のインクジェット記録装置。
  8. 前記インクタンクのインク液面が第1の高さを下回ったことを検知する第1の検知手段と、
    前記インクタンクのインク液面が前記第1の高さよりも高い第2の高さに到達したことを検知する第2の検知手段と、
    前記インクタンクのインク液面が前記第1の高さを下回ったことを前記第1の検知手段が検知したときに、前記メインタンクから前記インクタンクに前記インクを供給するように前記接続手段および前記空気吸引手段を駆動し、
    前記インクタンクのインク液面が前記第2の高さに到達したことを前記第2の検知手段が検知したときに、前記メインタンクから前記インクタンクへの前記インクの供給を停止するように前記接続手段および前記空気吸引手段を制御する制御手段と、を有し、
    前記第1接続部は、接続時において前記開口部が前記第1の高さよりも鉛直下方位置に位置するように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載のインクジェット記録装置。
  9. 前記インクタンクのインク液面が第1の高さを下回ったことを検知する第1の検知手段と、
    前記インクタンクのインク液面が前記第1の高さよりも高い第2の高さに到達したことを検知する第2の検知手段と、
    前記インクタンクのインク液面が前記第1の高さを下回ったことを前記第1の検知手段が検知したときに、前記メインタンクから前記インクタンクに前記インクを供給するように前記接続手段および前記空気吸引手段を駆動し、
    前記インクタンクのインク液面が前記第2の高さに到達したことを前記第2の検知手段が検知したときに、前記メインタンクから前記インクタンクへの前記インクの供給を停止するように前記接続手段および前記空気吸引手段を制御する制御手段と、を有し、
    前記第1接続部は、接続時において前記開口部が前記第2の高さよりも鉛直下方位置に位置するように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載のインクジェット記録装置。
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