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JP3846272B2 - 蓄圧式燃料噴射装置 - Google Patents

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JP3846272B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、蓄圧室内に蓄圧された高圧燃料をインジェクタを介して多気筒エンジンの各気筒の燃焼室内に噴射供給する蓄圧式燃料噴射装置に関するもので、特に蓄圧室内の圧力が限界設定圧を超えた際に開弁して燃料圧を限界設定圧以下に抑えるための圧力安全弁と、入口より高圧供給ポンプ内に吸入される燃料の吸入量を調整する入口調量弁とを備えた蓄圧式燃料噴射装置に係わる。
【0002】
【従来の技術】
従来より、高圧供給ポンプによってコモンレール(蓄圧室)に高圧燃料を加圧圧送して蓄圧すると共に、そのコモンレール内に蓄圧した高圧燃料を多気筒エンジンの各気筒毎に取り付けられた複数個のインジェクタに分配し、複数個のインジェクタから多気筒エンジンの各気筒の燃焼室内へ高圧燃料を噴射供給するコモンレール式燃料噴射装置が公知である。なお、高圧供給ポンプの入口には、高圧供給ポンプの入口に吸入される燃料の吸入量を調整することで、高圧供給ポンプからコモンレールへの燃料の吐出量を変更する入口調量弁が設けられている。
【0003】
また、高圧供給ポンプの入口調量弁が全開異常になると、多気筒エンジンにより回転駆動される高圧供給ポンプが過剰圧送する等の非常時には、高圧供給ポンプとインジェクタとを結ぶ燃料配管およびコモンレール内の圧力が限界設定圧を超える可能性がある。このような入口調量弁の全開異常時に備えて、コモンレール圧が限界設定圧を超えた際に開弁するプレッシャリミッタ(圧力安全弁)を、高圧供給ポンプとインジェクタとを結ぶ燃料配管およびコモンレールに搭載し、コモンレール式燃料噴射装置の信頼性を保証していた。
【0004】
すなわち、多気筒エンジンの回転速度がアイドル回転速度になった時に、入口調量弁が全開異常を生起している状態では、プレッシャリミッタはコモンレール圧が限界設定圧を超えるために開弁し、燃料配管およびコモンレール内の燃料圧を低圧側に逃がし燃料圧を限界設定圧以下に抑えることで、コモンレール式燃料噴射装置の信頼性を保証している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来のコモンレール式燃料噴射装置においては、ポンプ圧送量が小のアイドル状態になった時には、プレッシャリミッタが開弁と閉弁とを繰り返すことにより、コモンレール圧および燃料噴射量が不安定となるので、多気筒エンジンの回転不安定を生ずるという問題があった。それと同時に、プレッシャリミッタの開閉作動の増加によって、プレッシャリミッタに内蔵さたスプリングのヘタリやシールシート面のシート不良を招き、プレッシャリミッタの信頼性を確保できないという問題があった。
【0006】
また、高圧供給ポンプの入口側に設置される入口調量弁にノーマリクローズタイプ(常閉型)の電磁弁を採用した場合には、ポンプ駆動回路と入口調量弁とを結ぶワイヤリングハーネス(W/H)の断線により無吐出となり、多気筒エンジンを作動させるために必要なコモンレール圧および燃料噴射量を維持することができず、エンジン・ストール(以下エンストと言う)してしまうという問題があった。
【0007】
【発明の目的】
本発明の目的は、圧力安全弁の開弁と閉弁との繰り返しによるアイドル性能の不安定をなくし、圧力安全弁の信頼性を確保することのできる蓄圧式燃料噴射装置を提供することにある。また、エンストを回避することができ、且つ高圧供給ポンプが過剰圧送する時に車両をスムーズにリンプホーム走行させることのできる蓄圧式燃料噴射装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明によれば、高圧供給ポンプが高圧燃料を蓄圧室内に過剰圧送する時、あるいは蓄圧室内の圧力の異常上昇を検出した時には、圧力安全弁が限界設定圧以下に燃料圧を抑えるために開弁し、その後、圧力安全弁が閉弁状態とならないように、アイドル回転速度を定常時よりも上昇させることにより、高圧供給ポンプの吐出性能を向上させて、一旦蓄圧室内の圧力を過剰圧力よりも下げるために開弁した圧力安全弁が再び閉弁しないようにすることができる。
【0009】
それによって、圧力安全弁が開弁と閉弁とを繰り返すことによる蓄圧室内の圧力の不安定および燃料噴射量の不安定によるエンジンの制御不良を防止し、且つアイドル性能の不安定をなくすことにより、圧力安全弁の信頼性の低下を改善することができるので、蓄圧式燃料噴射装置の信頼性を向上させることができる。ここで、アイドル回転速度を定常時よりも上昇させるとは、定常時のアイドル回転速度よりも所定値以上燃料噴射量を大きくすることである。あるいは、定常時のアイドル回転速度よりも所定値以上インジェクタ駆動パルス時間またはインジェクタ駆動パルス幅を長くすることである。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、高圧供給ポンプの入口側に吸入量調整用電磁弁を設けることにより、高圧供給ポンプの入口に吸入される燃料の吸入量を調整することで、高圧供給ポンプから蓄圧室への燃料の吐出量を変更することができる。また、吸入量調整用電磁弁の全開異常時に、アイドル回転速度を定常時よりも上昇させることにより、請求項1に記載の効果を達成することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、高圧供給ポンプの出口側に吐出量調整用電磁弁を設けることにより、高圧供給ポンプの出口から蓄圧室への燃料の吐出量を調整することで、高圧供給ポンプから蓄圧室への燃料の吐出量を変更することができる。また、吐出量調整用電磁弁の全開異常時に、アイドル回転速度を定常時よりも上昇させることにより、請求項1に記載の効果を達成することができる。
【0012】
請求項4または請求項5に記載の発明によれば、弁開度が通電停止時に全開となるノーマリオープンタイプの電磁弁よりなる吸入量調整用電磁弁または吐出量調整用電磁弁と、この吸入量調整用電磁弁または吐出量調整用電磁弁の全開異常時に、蓄圧室内の圧力をレギュレート圧力に維持することが可能な圧力レギュレート機能を備えた圧力安全弁とを組み合わせることにより、吸入量調整用電磁弁の全開異常時に、一旦圧力安全弁が開弁した後は、蓄圧室内の圧力がレギュレート圧力に維持されるため、退避走行(リンプホーム走行)が可能となる。
【0013】
ここで、レギュレート圧力とは、高圧供給ポンプが高圧燃料を蓄圧室内に過剰圧送する等の緊急避難時に車両をリンプホーム走行させるのに必要な圧力であり、インジェクタの作動圧力よりも高い圧力で、且つ異音やノッキング等が生じない低い圧力である。また、吸入量調整用電磁弁または吐出量調整用電磁弁の全開異常時とは、高圧供給ポンプが高圧燃料を蓄圧室内に過剰圧送する時、あるいは蓄圧室内の圧力の異常上昇を検出した時のことである。
【0014】
【発明の実施の形態】
[実施例の構成]
発明の実施の形態を実施例に基づき図面を参照して説明する。ここで、図1はコモンレール式燃料噴射装置の全体構造を示した図で、図2はプレッシャリミッタの構造を示した図である。
【0015】
本実施例のコモンレール式燃料噴射装置は、多気筒ディーゼルエンジン等の多気筒内燃機関(以下多気筒エンジンと言う)1の各気筒毎に搭載された複数個(本例では4個)のインジェクタ2と、多気筒エンジン1により回転駆動される高圧供給ポンプ3と、この高圧供給ポンプ3より吐出された高圧燃料を蓄圧する蓄圧室を形成するコモンレール4と、高圧供給ポンプ3からコモンレール4への燃料の吐出量を変更する入口調量弁7と、複数個のインジェクタ2および入口調量弁7を電子制御する電子制御ユニット(以下ECUと呼ぶ)10とを備えている。さらに、コモンレール4内の圧力(蓄圧室内の圧力:以下コモンレール圧と言う)が限界設定圧を超えた際に開弁して燃料圧を限界設定圧以下に抑えるための圧力安全弁としてのプレッシャリミッタ6を備えている。
【0016】
各気筒のインジェクタ2は、コモンレール4より分岐する複数の分岐管15の下流端に接続され、コモンレール4に蓄圧された高圧燃料を多気筒エンジン1の各気筒の燃焼室内に噴射供給する燃料噴射ノズルである。これらのインジェクタ2から多気筒エンジン1への燃料の噴射は、分岐管15の途中に設けられた電磁式アクチュエータとしての噴射制御用電磁弁(図示せず)への通電および通電停止(ON/OFF)により電子制御される。つまり、各気筒のインジェクタ2は、噴射制御用電磁弁が開弁している間、コモンレール4に蓄圧された高圧燃料を多気筒エンジン1の各気筒の燃焼室内に噴射供給される。
【0017】
高圧供給ポンプ3は、多気筒エンジン1のクランク軸(クランクシャフト)11の回転に伴ってポンプ駆動軸12が回転することで燃料タンク9内の燃料を汲み上げる周知の低圧供給ポンプ(フィードポンプ:図示せず)と、ポンプ駆動軸12により駆動されるプランジャ(図示せず)と、このプランジャの往復運動により燃料を加圧する加圧室(プランジャ室)とを有している。
【0018】
そして、高圧供給ポンプ3は、低圧供給ポンプにより吸い出されて燃料配管13より吸入した燃料を加圧して吐出口からコモンレール4へ高圧燃料を吐出するサプライポンプである。この高圧供給ポンプ3の加圧室への燃料流路の入口側には、その燃料流路を開閉する電磁式アクチュエータとしての入口調量弁7が取り付けられている。
【0019】
コモンレール4には、連続的に噴射圧力に相当する高い圧力(コモンレール圧)が蓄圧される必要があり、そのために燃料配管(高圧通路)16を介して高圧燃料を吐出する高圧供給ポンプ3の吐出口と接続されている。なお、インジェクタ2からのリーク燃料およびプレッシャリミッタ6からのリーク燃料、および高圧供給ポンプ3からのオーバフロー燃料は、リーク配管(低圧通路)14を経て燃料タンク9にリターンされる。
【0020】
プレッシャリミッタ6は、図2に示したように、コモンレール4の図示左端部とリーク配管14の図示上端側の端部との間に液密的に接続されるハウジング20、このハウジング20の先端側(コモンレール4側)に固定されるバルブボディ(弁本体)21、このバルブボディ21に形成された弁孔22を開閉するバルブニードル(弁体)23、このバルブニードル23が弁座24に着座する側(閉弁側)に所定の付勢力で付勢するスプリング25等から構成されている。
【0021】
ハウジング20の内部には、入口側燃料孔27、小径孔29および出口側燃料孔30が形成され、入口側燃料孔27の図示上端に設けられたスプリングシート(開弁圧調整用シム)26内には燃料孔28が形成されている。そして、ハウジング20の先端側(図示下端側)の外周には、コモンレール4の継手部(図示せず)に螺合する雄ネジ部31が形成され、また、ハウジング20の後端側(図示上端側)の出口側燃料孔30の内周には、リーク配管14の継手部(図示せず)に螺合する雌ネジ部32が形成されている。
【0022】
バルブボディ21の弁孔22よりも下流側には、バルブニードル23の軸状部37を摺動自在に支持する摺動孔33が形成されている。なお、摺動孔33の内周面には、バルブニードル23の軸状部37が弁座24よりリフトした際に、燃料が軸状部37と摺動孔33との間を通過することができるように軸方向溝(または切欠き部)34が2箇所以上等間隔、あるいは対称的な位置に形成されている。
【0023】
バルブニードル23の軸状部37の先端側は、円錐形状に形成されており、その円錐形状の外周面が弁座24に着座(シート)して閉弁する。そして、バルブニードル23の軸状部37よりも図示上方側には、軸状部37よりも外径の大きいフランジ部35、およびこのフランジ部35よりも外径の小さい軸状部36が一体的に形成されている。スプリング25は、一端がバルブニードル23のフランジ部35の後端面に保持され、他端がスプリングシート26の先端面に保持されている。
【0024】
そして、バルブニードル23のシート径とスプリング25のセット荷重とでプレッシャリミッタ6の開弁圧が決定されている。また、プレッシャリミッタ6は、コモンレール圧が限界設定圧を超えた際に開弁した後に、コモンレール圧が所定値以下に低下すると閉弁してしまうが、本実施例のプレッシャリミッタ6は、圧力レギュレート機能を備えている。すなわち、プレッシャリミッタ6は、一旦開弁した後に、高圧供給ポンプ3が過剰圧送する等の緊急避難時に車両を退避走行(リンプホーム)させる目的で、車両を継続走行させるのに必要な圧力(レギュレート圧力)を維持できるように閉弁圧を規制している。
【0025】
なお、上記のような車両をリンプホームさせるためには、車両を継続走行される時の燃料圧を、インジェクタ2の作動圧力よりも高い圧力にしてインジェクタ2から多気筒エンジン1の各気筒への燃料噴射を可能にして、且つエンジン振動、車両挙動、異音やノッキング等の発生しない低い圧力にして安定した走行状態を確保する必要がある。この圧力をレギュレート圧力とすると、このレギュレート圧力は、バルブニードル23の軸状部37の外径とバルブニードル23を閉弁方向に付勢するスプリング25の付勢力とで決まる。すなわち、プレッシャリミッタ6の開弁圧を決めるバルブニードル23の軸状部37のシート径の二乗比で閉弁圧は規制される。
【0026】
入口調量弁7は、図示しないポンプ駆動回路(EDU)を介してECU10からの制御信号(ポンプ駆動信号)によって電子制御されることにより、高圧供給ポンプ3の加圧室内に吸入される燃料の吸入量を調整する吸入量調整用電磁弁で、各インジェクタ2から多気筒エンジン1へ噴射供給する噴射圧力(燃料圧)、つまりコモンレール圧を変更する。その入口調量弁7は、通電が停止されると弁状態が全開状態となるノーマリオープンタイプのポンプ流量制御弁(電磁弁)である。
【0027】
ECU10には、制御処理、演算処理を行うCPU、各種プログラムおよびデータを保存するROM、RAM、入力回路、出力回路、電源回路、インジェクタ駆動回路およびポンプ駆動回路等の機能を含んで構成される周知の構造のマイクロコンピュータが設けられている。そして、各種センサからのセンサ信号は、A/D変換器でA/D変換された後にマイクロコンピュータに入力されるように構成されている。
【0028】
そして、ECU10は、多気筒エンジン1の運転条件に応じた最適な噴射時期(噴射開始時期)、燃料噴射量(=噴射期間)を決定する噴射量、噴射時期決定手段と、多気筒エンジン1の運転条件および燃料噴射量に応じた噴射パルス時間(噴射パルス幅)のインジェクタ噴射パルスを演算する噴射パルス幅決定手段と、インジェクタ駆動回路(EDU)を介して各気筒のインジェクタ2の噴射制御用電磁弁にインジェクタ噴射パルスを印加するインジェクタ駆動手段とを備えている。
【0029】
すなわち、ECU10は、回転速度センサ41によって検出されたエンジン回転速度(以下実エンジン回転数と言う:NE)およびアクセル開度センサ42によって検出されたアクセル開度(ACCP)等のエンジン運転情報に基づいて燃料噴射量を算出し、多気筒エンジン1の運転条件および燃料噴射量から算出された噴射パルス幅に応じて各気筒のインジェクタ2の噴射制御用電磁弁にインジェクタ噴射パルスを印加するように構成されている。これにより、多気筒エンジン1が運転される。
【0030】
また、ECU10は、多気筒エンジン1の運転条件に応じた最適な燃料噴射圧力、つまりコモンレール圧を演算し、ポンプ駆動回路(EDU)を介して高圧供給ポンプ3の入口調量弁7を駆動する吐出量制御手段でもある。すなわち、ECU10は、回転速度センサ41によって検出された実エンジン回転数(NE)およびアクセル開度センサ42によって検出されたアクセル開度(ACCP)等のエンジン運転情報、更には冷却水温センサ43によって検出されたエンジン冷却水温(THW)の補正を加味して目標コモンレール圧(Pt)を算出し、この目標コモンレール圧を達成するために、高圧供給ポンプ3の入口調量弁7に制御信号を出力するように構成されている。
【0031】
ここで、本実施例では、多気筒エンジン1の運転条件を検出する運転条件検出手段として回転速度センサ41、アクセル開度センサ42および冷却水温センサ43を用いて燃料噴射量、噴射時期、目標コモンレール圧を演算するようにしているが、運転条件検出手段としてのその他のセンサ類(例えば吸気温センサ、燃料温センサ、吸気圧センサ、気筒判別センサ、噴射時期センサ等)44からの検出信号(エンジン運転情報)を加味して燃料噴射量、噴射時期、目標コモンレール圧を補正するようにしても良い。
【0032】
さらに、より好ましくは、各気筒のインジェクタ2から多気筒エンジン1へ噴射供給する実際の燃料噴射圧力、つまり実コモンレール圧(Pc)を検出する噴射圧力検出手段としてのコモンレール圧センサ(燃料圧センサ)45をコモンレール4に取り付けて、そのコモンレール圧センサ45によって検出される実コモンレール圧(Pc)が多気筒エンジン1の運転条件によって決定される目標コモンレール圧(Pt)と略一致するように高圧供給ポンプ3の入口調量弁7をフィードバック制御することが望ましい。
【0033】
さらに、本実施例のECU10は、高圧供給ポンプ3の入口調量弁7が故障して、実コモンレール圧(Pc)の異常上昇を検出した時には、アイドル回転速度(以下アイドル回転数と言う)を所定値以上に持ち上げて、プレッシャリミッタ6のバルブニードル23の開弁状態を維持するようにアイドルアップ制御を行うエンジン制御手段を備えている。
【0034】
[実施例の制御方法]
次に、本実施例のコモンレール式燃料噴射装置の制御方法を図1ないし図4に基づいて簡単に説明する。ここで、図3および図4は本発明の噴射量制御の概略を示したフローチャートである。
【0035】
先ず、エンジンパラメータ(多気筒エンジン1の運転条件)である実エンジン回転数(NE)、アクセル開度(ACCP)、エンジン冷却水温(THW)等を取り込む(ステップS1)。次に、エンストしたか否かを判定する(ステップS2)。この判定結果がYESの場合、つまりエンストした場合には、圧力過大判定フラグ(ダイアグフラグ:XPC)を倒す(ステップS3)。
【0036】
また、ステップS2の判定結果がNOの場合には、エンジンパラメータをベースに燃料噴射量(Q)を演算する。具体的には、前述の実エンジン回転数(NE)および前述のアクセル開度(ACCP)から燃料噴射量(Q)を求める(ステップS4)。次に、エンジンパラメータをベースに噴射時期(T)を演算する。具体的には、前述の実エンジン回転数(NE)および前述の燃料噴射量(Q)から噴射時期(T)を求める(ステップS5)。次に、ダイアグフラグ(XPC)が立っているか否かを判定する(ステップS6)。この判定結果がYESの場合には、圧力の過大異常を判定しているので、直接ステップS15に進む。
【0037】
また、ステップS6の判定結果がNOの場合には、エンジンパラメータをベースに目標コモンレール圧(Pt)を演算する。具体的には、前述の実エンジン回転数(NE)および前述の燃料噴射量(Q)から目標コモンレール圧(Pt)を求める(ステップS7)。次に、コモンレール圧センサ45の出力信号(検出値)である実コモンレール圧(Pc)を取り込む(ステップS8)。次に、前述の実コモンレール圧(Pc)と前述の目標コモンレール圧(Pt)との圧力偏差(Pc−Pt)に応じて高圧供給ポンプ3のコモンレール圧制御用入口調量弁7の制御指令値(Duty)を演算する(ステップS9)。次に、エンジン冷却水温(THW)に基づき、基本アイドル目標回転数(NFb)を演算する(ステップS10)。
【0038】
次に、前述の実コモンレール圧(Pc)と前述の目標コモンレール圧(Pt)との圧力偏差(Pc−Pt)が所定値(α)よりも大きいか否かを判定する(ステップS11)。この判定結果がYESの場合、つまり圧力偏差(Pc−Pt)が所定値(α)よりも大きい場合には、この状態の継続時間が所定時間(例えば1秒間)以上継続しているか否かを判定する(ステップS12)。
【0039】
ステップS11またはステップS12の判定結果がNOの場合、つまり圧力偏差が所定値以下の場合または所定時間未満の場合には、アイドル目標回転数(NF)を、エンジン冷却水温(THW)に応じて演算された基本アイドル目標回転数(NFb)とする(ステップS13)。また、ステップS12の判定結果がYESの場合、つまり圧力偏差が所定値よりも大きい状態の継続時間が所定時間以上継続している場合には、圧力(燃料圧、実コモンレール圧)の過大異常を判定し、ダイアグフラグ(XPC)を立てる(ステップS14)。
【0040】
次に、アイドル目標回転数(NF)を異常値に設定変更する。つまり、異常処理としてアイドル目標回転数を(NFb+NFoff)に持ち上げる(ステップS15)。ここで、NFbはステップS10で決定される基本アイドル目標回転数で、NFoffは異常時にベースに加える所定値(例えば200rpm)以上のエンジン回転数である。
【0041】
次に、前述の実エンジン回転数(NE)と目標値(NF)との差から噴射量補正量(dQisc)を算出する(ステップS16)。次に、前回の噴射量補正値(Qisc)に今回の噴射量補正量(dQisc)を積算して今回の噴射量補正値(Qisc)を求める(ステップS17)。次に、前述の燃料噴射量(Q)に今回の噴射量補正値(Qisc)を積算して最終噴射量(Qfin)を求める(ステップS18)。
【0042】
次に、実コモンレール圧(Pc)および最終噴射量(Qfin)に応じた噴射パルス時間(噴射パルス幅:Tq)を算出する(ステップS19)。次に、前述のステップS19で設定された噴射パルス幅(Tq)のインジェクタ噴射パルスをECU10の出力段にセットする(ステップS20)。次に、前述のステップS9で設定されたコモンレール圧制御用入口調量弁7の制御指令値(Duty)をECU10の出力段にセットする(ステップS21)。以降、上記制御を繰り返す。
【0043】
[実施例の特徴]
ここで、アイドル時の入口調量弁7の全開異常時には、図7のタイミングチャートに示したように、高圧供給ポンプ3が高圧燃料をコモンレール4内に過剰圧送することにより実コモンレール圧(Pc)と目標コモンレール圧(Pt)との圧力偏差(Pc−Pt)が所定値よりも大きい状態、つまり実コモンレール圧(Pc)が圧力異常検出レベル以上の状態が所定時間以上継続することにより、ECU10は圧力の過大異常を検出する。
【0044】
そして、更に実コモンレール圧(Pc)が上昇して限界設定圧(プレッシャリミッタ開弁圧)を超えると、プレッシャリミッタ6のバルブニードル23の軸状部37が弁座24よりリフト(開弁)して、コモンレール4内の高圧燃料を弁孔22、入口側燃料孔27、燃料孔28、小径孔29、出口側燃料孔30、リーク配管(低圧通路)14を経て燃料タンク(低圧側)9に逃がし、コモンレール4、分岐管(高圧部配管)15および燃料配管(高圧部配管)16等の高圧配管経路内の燃料圧を限界設定圧以下に抑えるようにしている。
【0045】
しかし、高圧供給ポンプ3からコモンレール4へ吐出される燃料の吐出量(燃料供給流量)が少ない通常のアイドル回転数で多気筒エンジン1が運転されている場合には、プレッシャリミッタ6のバルブニードル23は開弁状態を維持することができず、実コモンレール圧(Pc)がプレッシャリミッタ閉弁圧まで低下するためプレッシャリミッタ6のバルブニードル23は弁座24に着座する。つまり、プレッシャリミッタ6が閉弁し、その後に高圧供給ポンプ3からコモンレール4への燃料の吐出によって燃料がコモンレール4内に蓄積されてくると、実コモンレール圧(Pc)は再度限界設定圧を超えるため、プレッシャリミッタ6が開弁状態となる。
【0046】
以降、この状態を繰り返すことによって、プレッシャリミッタ6のバルブニードル23が開弁と閉弁とを繰り返すことになる。これにより、多気筒エンジン1のアイドル性能が不安定となり、且つプレッシャリミッタ6のバルブニードル23の開閉作動の増加によって、プレッシャリミッタ6に内蔵さたスプリング25のヘタリやシールシート面のシート不良を招くため、プレッシャリミッタ6の信頼性を確保できないという問題があった。
【0047】
そこで、上記の問題を解決するために、本実施例のコモンレール式燃料噴射装置においては、圧力の異常上昇を検出した時には、図5および図6に示したように、目標アイドル回転数を定常時(通常値)よりも上昇させる。つまり、アイドル時の通常値よりも高い異常値にアイドル回転数を設定変更する(アイドル回転数アップ)。これにより、多気筒エンジン1により回転駆動される高圧供給ポンプ3の吐出性能が上がるため、一旦実コモンレール圧(Pc)が限界設定圧を超えて開弁したプレッシャリミッタ6のバルブニードル23を閉弁状態とならないようになる。したがって、プレッシャリミッタ6のバルブニードル23の開弁と閉弁との繰り返しによるアイドル性能の不安定をなくし、プレッシャリミッタ6の信頼性を確保できるようにしている。
【0048】
また、高圧供給ポンプ3の入口側に設置される入口調量弁にノーマリクローズタイプ(常閉型)の電磁弁を採用した場合には、ポンプ駆動回路(EDU)と入口調量弁とを結ぶワイヤリングハーネス(W/H)の断線またはショートにより無吐出となり、多気筒エンジン1を作動させるために必要なコモンレール圧および燃料噴射量を維持することができず、エンストしてしまう。逆に、本実施例のように、ノーマリオープンタイプ(常開型)の電磁弁よりなる入口調量弁7を採用した場合には、ポンプ駆動回路(EDU)と入口調量弁7とを結ぶワイヤリングハーネス(W/H)の断線またはショートにより入口調量弁7が全開異常となり、高圧供給ポンプ3が過剰圧送となる(全吐出)。
【0049】
これにより、実コモンレール圧(Pc)が上昇して限界設定圧を超えるため、プレッシャリミッタ6のバルブニードル23が開弁となって、上述したように、高圧燃料が低圧側に逃げることにより、実コモンレール圧が限界設定圧よりも下がるが、そのノーマリオープンタイプの入口調量弁7と圧力レギュレート機能を備えたプレッシャリミッタ6とを組み合わせれば、一旦、プレッシャリミッタ6のバルブニードル23が開弁した後は、燃料の噴射圧力およびコモンレール圧が、緊急非難時に車両の退避走行(リンプホーム走行)させるのに必要な圧力(レギュレート圧力)に維持できるため、エンストを回避できると共に、リンプホーム品質を向上させることができる。
【0050】
[変形例]
本実施例では、コモンレール圧センサ45をコモンレール4に直接取り付けて、コモンレール4内に蓄圧される燃料圧力(実コモンレール圧)を検出するようにしているが、燃料圧力検出手段を高圧供給ポンプ3のプランジャ室(加圧室)からインジェクタ2内の燃料通路までの間の燃料配管等に取り付けて、高圧供給ポンプ3の加圧室より吐出された燃料圧力を検出するようにしても良い。
【0051】
本実施例では、高圧供給ポンプ3のプランジャ室(加圧室)内に吸入される燃料の吸入量を変更(調整)する入口調量弁(吸入量調整用電磁弁)7を設けた例を説明したが、高圧供給ポンプ3のプランジャ室(加圧室)からコモンレール4への燃料の吐出量を変更(調整)する吐出量調整用電磁弁を設けても良い。
【0052】
本実施例では、吐出量調整用電磁弁または吸入量調整用電磁弁の弁開度がその電磁弁への通電を停止した時に全開となるノーマリオープンタイプ(常開型)の電磁弁を用いたが、吐出量調整用電磁弁または吸入量調整用電磁弁の弁開度がその電磁弁を通電した時に全開となるノーマリクローズタイプ(常閉型)の電磁弁を用いても良い。この場合の吐出量調整用電磁弁または吸入量調整用電磁弁の全開異常時、つまり高圧供給ポンプ3が高圧燃料をコモンレール4の蓄圧室内に過剰圧送する時、あるいはコモンレール4の蓄圧室内の圧力の異常上昇を検出した時とは、ECU10またはポンプ駆動回路(EDU)からの制御電圧の過大異常時が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】コモンレール式燃料噴射装置の全体構造を示した概略図である(実施例)。
【図2】プレッシャリミッタの構造を示した断面図である(実施例)。
【図3】コモンレール式燃料噴射装置の制御方法を示したフローチャートである(実施例)。
【図4】コモンレール式燃料噴射装置の制御方法を示したフローチャートである(実施例)。
【図5】エンジン回転数とコモンレール圧と燃料供給流量との関係を示した説明図である(実施例)。
【図6】入口調量弁の全開異常時の圧力異常検出、アイドル回転数、走行状態、実コモンレール圧の推移を示したタイミングチャートである(実施例)。
【図7】入口調量弁の全開異常時の圧力異常検出、走行状態、実コモンレール圧の推移を示したタイミングチャートである(従来の技術)。
【符号の説明】
1 多気筒エンジン
2 インジェクタ
3 高圧供給ポンプ
4 コモンレール
6 プレッシャリミッタ(圧力レギュレート機能を備えた圧力安全弁)
7 ノーマリオープンタイプの入口調量弁(吸入量調整用電磁弁)
10 ECU(エンジン制御手段)
21 バルブボディ(プレッシャリミッタの弁本体)
23 バルブニードル(プレッシャリミッタの弁体)

Claims (5)

  1. (a)エンジンにより回転駆動されて、吸入した燃料を加圧して高圧化する高圧供給ポンプと、
    (b)この高圧供給ポンプより吐出された高圧燃料を蓄圧する蓄圧室と、
    (c)この蓄圧室内に蓄圧された高圧燃料を前記エンジンの気筒内に噴射供給するインジェクタと、
    (d)前記蓄圧室内の圧力が限界設定圧を超えた際に開弁して燃料圧を前記限界設定圧以下に抑えるための圧力安全弁と、
    (e)前記高圧供給ポンプが高圧燃料を前記蓄圧室内に過剰圧送する時、あるいは前記蓄圧室内の圧力の異常上昇を検出した時、前記圧力安全弁が前記限界設定圧以下に燃料圧を抑えるために開弁し、その後、前記圧力安全弁が閉弁状態とならないように、アイドル回転速度を定常時よりも上昇させるエンジン制御手段と
    を備えた蓄圧式燃料噴射装置。
  2. 請求項1に記載の蓄圧式燃料噴射装置において、
    前記高圧供給ポンプには、前記高圧供給ポンプの入口に吸入される燃料の吸入量を調整することで、前記高圧供給ポンプから前記蓄圧室への燃料の吐出量を変更する吸入量調整用電磁弁が設けられ、
    前記エンジン制御手段は、前記吸入量調整用電磁弁の全開異常時に、アイドル回転速度を定常時よりも上昇させることを特徴とする蓄圧式燃料噴射装置。
  3. 請求項1に記載の蓄圧式燃料噴射装置において、
    前記高圧供給ポンプには、前記高圧供給ポンプの出口から前記蓄圧室への燃料の吐出量を調整することで、前記高圧供給ポンプから前記蓄圧室への燃料の吐出量を変更する吐出量調整用電磁弁が設けられ、
    前記エンジン制御手段は、前記吐出量調整用電磁弁の全開異常時に、アイドル回転速度を定常時よりも上昇させることを特徴とする蓄圧式燃料噴射装置。
  4. 請求項1に記載の蓄圧式燃料噴射装置において、
    記高圧供給ポンプの入口に吸入される燃料の吸入量を調整することで、前記高圧供給ポンプから前記蓄圧室への燃料の吐出量を変更する吸入量調整用電磁弁を備え、
    前記吸入量調整用電磁弁は、弁開度が通電停止時に全開となるノーマリオープンタイプの電磁弁であり、
    前記圧力安全弁は、前記吸入量調整用電磁弁の全開異常時に、前記蓄圧室内の圧力を、レギュレート圧力に維持することが可能な圧力レギュレート機能を備えたことを特徴とする蓄圧式燃料噴射装置。
  5. 請求項1に記載の蓄圧式燃料噴射装置において、
    記高圧供給ポンプの出口から前記蓄圧室への燃料の吐出量を調整することで、前記高圧供給ポンプから前記蓄圧室への燃料の吐出量を変更する吐出量調整用電磁弁を備え、
    前記吐出量調整用電磁弁は、弁開度が通電停止時に全開となるノーマリオープンタイプの電磁弁であり、
    前記圧力安全弁は、前記吐出量調整用電磁弁の全開異常時に、前記蓄圧室内の圧力を、レギュレート圧力に維持することが可能な圧力レギュレート機能を備えたことを特徴とする蓄圧式燃料噴射装置。
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