JP3724614B2 - インクジェット記録方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録方法に関するものであり、さらに複数色のインク液滴を記録媒体に付着して画像を形成するインクジェット記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、静電吸引方式、空気圧送方式、加熱発泡時の圧力を利用した方式、圧電素子の電気的変形を利用した方式などのインクを吐出する方法によりインク小滴を発生させ、さらにこのインク小滴を記録紙に付着して画像形成を行なっている。この記録方式は、静かな動作、低コスト、印字品質、カラー対応性等の特徴により、近年急速に普及している。
【0003】
普及に伴って、黒インク単色の印字品質や黒インクとカラーインク間の混色ブリードは、更なる品質向上が求められている。
【0004】
単色の印字品質を向上する方法として紙の多価カチオンによりゲル化するアルギン酸塩を添加する手法が特開平6−184477号公報、ペクチン酸やペクチンをインクに添加する手法が特開平1−203483号公報等に提案されている。また、これらのゲル化成分を添加したインクの混色ブリードを低減する方法が、特開平8−209049号公報に提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特開平8−209049号公報に記載されている方法は、ゲル形成種として0.1〜1wt%のアルギン酸ナトリウムを含む組成物とゲル化開始剤として0.1〜10wt%のカルシウムカチオンを含む組成物を組み合わせている。これらの2種の組成物が接すると、界面でゲル化反応が生じて組成物同士の混合が抑えられて、混色ブリードが低減する。
【0006】
ゲル化開始剤を含む組成物は、カルシウムカチオン等の多価カチオンと共にC.I.Acid Red 18、C.I.Acid Yellow 23等のアニオン性解離基を有する染料を溶解して含んでいる。しかしならが、アニオン性解離基を有する染料は、多価カチオンと共存すると多くの場合は不溶性塩を形成して水に不溶になる。これらの不溶性塩は、例えばC.I.Pigment Red 57のようにカルシウムレーキの水不溶性顔料として利用されている。
【0007】
このように、ゲル化開始剤を含む組成物に用いることができる染料は多価カチオンと共存しても不溶化しないことが求められ、材料の選択範囲が極めて狭いという問題点がある。
【0008】
従って本発明はこれらの課題を解決するもので、混色ブリードを防止する為のインクに多くの種類の着色剤を使用することを可能にするものであり、更に単色の印字品質と混色ブリードの品質を両立して向上したインクジェット記録方法と提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のインクジェット記録方法は、複数色のインク液滴を記録媒体に付着して画像を形成するインクジェット記録方法において、カルボキシル基を有する水溶性多糖類としての、分子量が3,500〜50,000である低メトキシペクチン類若しくはペクチン酸類、インク中に溶解あるいは分散する着色剤、保湿剤、水とを少なくとも含んでなる第一のインクと、水溶性の浸透性有機溶剤、1価カチオンを含む水溶性樹脂、インク中に溶解あるいは分散する着色剤、保湿剤、水とを少なくとも含んでなる第二のインクを少なくとも含むインクセットを用いることを特徴とする。
【0011】
本発明のインクジェット記録方法は、前記着色剤がアルカリ可溶性の水溶性染料から選ばれることを特徴とする。
【0012】
本発明のインクジェット記録方法は、前記着色剤がアルカリ性で分散した顔料から選ばれることを特徴とする。
【0013】
本発明のインクジェット記録方法は、前記保湿剤が、蒸気圧が純水よりも小さい水溶性有機溶剤および、または尿素誘導体、糖類から選ばれることを特徴とする。
【0014】
本発明のインクジェット記録方法は、低級モノおよびポリオール類、モノおよびポリグリコールエーテル類のいずれから選ばれる化合物を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明のインクジェット記録方法は、前記第二のインクに、更にノニオン性界面活性剤を添加することを特徴とする。
【0016】
本発明のインクジェット記録方法は、前記第一のインクに、さらに浸透促進剤を含むことを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のインクジェット記録方法は、複数色のインク液滴を記録媒体に付着して画像を形成するインクジェット記録方法において、カルボキシル基を有する水溶性多糖類、インク中に溶解あるいは分散する着色剤、保湿剤、水とを少なくとも含んでなる第一のインクと、水溶性の浸透性有機溶剤、1価カチオンを含む水溶性樹脂、インク中に溶解あるいは分散する着色剤、保湿剤、水とを少なくとも含んでなる第二のインクを少なくとも含むインクセットを用いることを特徴としている。
【0018】
従来、カルボキシル基を有する水溶性多糖類、例えばアルギン酸塩やペクチン類を含む第一のインクに対しては、混合により急激にゲル化する多価カチオンを第二のインクに添加してインク同士の混合を抑え、混色ブリードを低減していた。しかし、第二のインクに1価カチオンを添加しても、混色ブリードを抑える事はまったく出来なかった。これは、1価カチオンは水溶性多糖類と水溶性の塩を作り、不溶化しないことによっている。
【0019】
これに対して本発明は、カルボキシル基を有する水溶性多糖類を添加した第一のインクに対して、第二のインクに1価カチオンと共に水溶性の浸透性有機溶剤を同時に添加する事により、インク同士の混合を抑えることが可能となったものである。
【0020】
本発明に用いるカルボキシル基を有する水溶性多糖類は、分子中にカルボキシル基を含んだ5もしくは6炭糖類の重合体であり、好ましくは、アルギン酸類、ペクチン類である。
【0021】
水溶性多糖類の分子量は、3,500〜50,000の範囲にあるものが好ましい。分子量がこの範囲にあることで、十分なゲル化形成能とインクジェット記録に利用可能な適度な粘度、例えば20℃で15センチポイズ以下のインク組成物を得る事ができる。
【0022】
水溶性多糖類の添加量は、0.05%〜0.75%の範囲が好ましい。添加量がこの範囲であれば、十分なゲル化形成能とインクジェット記録に利用可能な適度な粘度のインク組成物を得る事ができる。
【0023】
水溶性多糖類は、具体的にはアルギン酸類としてAlginic acid sodium salt(Aldrich chemical社製、カタログ番号18094−7)、ダックアルギンNSPLL(商品名、紀文フードケミファ(株)製)、ダックアルギンSL−20(商品名、紀文フードケミファ(株)製)、低メトキシペクチン類あるいはペクチン酸類としてLM−104AS(商品名、The Copenhagen Pectin Factory社製)、Purple Ribbon Pure(商品名、Obipektin社製)、Polygalacturon acid(Sigma Chemical社、カタログ番号P3889)等が挙げられる。なお、本発明に用いることが可能な水溶性多糖類は、ここに記載したものに限定されるものでなく、本要件に該当するものであれば、いずれも用いることができる。
【0024】
本発明のインク中に溶解あるいは分散する着色剤は、インク組成物中では溶解あるいは分散しており、かつインクジェト記録装置にて印刷した後は記録媒体上で印刷物に多数の色を与えるものである。
【0025】
着色剤は、インク組成物全重量に対して0.5〜20wt%の範囲で添加することが望ましい。0.5wt%以上であれば、インクジェット記録方式により印刷した印刷物は充分な光学濃度を示すことができる。20wt%以下であれば、インクジェット記録方式に適当な粘度に調整しやすい。
【0026】
本発明の好ましい形態によれば、インク中に溶解する着色剤として、アルカリ可溶性の水溶性染料が用いられる。ここで、アルカリ可溶性とは、アルカリ性の媒体に溶解する有色物質を指しており、分子中に含まれる水溶性基が酸性または塩基性の解離性基、あるいは非解離性の官能基、さらにそれらを複数種含むものであっても良い。また、アルカリに溶解するのであれば酸性溶液に溶解する有色物質であってもよい。
【0027】
これらの中で染料は、水に溶解する有機性有色物質であり、カラーインデックスにおいて酸性染料、直接染料、反応染料、可溶性建染染料または食品用色素に分類されているものが有用である。また、中性の水に不溶であってもアルカリ水に可溶であれば、カラーインデックスにおいて油溶染料、塩基性染料に分類される着色剤を用いることもできる。
【0028】
さらには、カラーインデックスにおいて顔料に分類されるものであっても、アルカリ可溶であれば染料と同様に用いることができる。
【0029】
染料およびアルカリ可溶性顔料は、具体的には黄色系としては、C.I.アシッドイエロー1、3、11、17、19、23、25、29、36、38、40、42、44、49、59、61、70、72、75、76、78、79、98、99、110、111、127、131、135、142、162、164、165、C.I.ダイレクトイエロー1、8、11、12、24、26、27、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、110、132、142、144、C.I.リアクティブイエロー1、2、3、4、6、7、11、12、13、14、15、16、17、18、22、23、24、25、26、27、37、42、C.I.フードイエロー3、4、C.I.ソルベントイエロー15、19、21、30、109、C.I.ピグメントイエロー23等が挙げられる。
【0030】
また、赤色系としては、C.I.アシッドレッド1、6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、37、42、51、52、57、75、77、80、82、85、87、88、89、92、94、97、106、111、114、115、117、118、119、129、130、131、133、134、138、143、145、154、155、158、168、180、183、184、186、194、198、209、211、215、219、249、252、254、262、265、274、282、289、303、317、320、321、322、C.I.ダイレクトレッド1、2、4、9、11、13、17、20、23、24、28、31、33、37、39、44、46、62、63、75、79、80、81、83、84、89、95、99、113、197、201、218、220、224、225、226、227228、229、230、231、C.I.リアクティブレッド1、2、3、4、5、6、7、8、11、12、13、15、16、17、19、20、21、22、23、24、28、29、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、45、46、49、50、58、59、63、64、C.I.ソルビライズレッド1、C.I.フードレッド7、9、14、C.I.ピグメントレッド41、48、54、57、58、63、68、81等が挙げられる。
【0031】
また、青色系としては、C.I.アシッドブルー1、7、9、15、22、23、25、27、29、40、41、43、45、54、59、60、62、72、74、78、80、82、83、90、92、93、100、102、103、104、112、113、117、120、126、127、129、130、131、138、140、142、143、151、154、158、161、166、167、168、170、171、182、183、184、187、192、199、203、204、205、229、234、236、249、C.I.ダイレクトブルー1、2、6、15、22、25、41、71、76、77、78、80、86、87、90、98、106、108、120、123、158、160、163、165、168、192、193、194、195、196、199、200、201、202、203、207、225、226、236、237、246、248、249、C.I.リアクティブブルー1、2、3、4、5、7、8、9、13、14、15、17、18、19、20、21、25、26、27、28、29、31、32、33、34、37、38、39、40、41、43、44、46、C.I.ソルビライズバットブルー1、5、41、C.I.バットブルー29、C.I.フードブルー1、2、C.I.ベイシックブルー9、25、28、29、44、C.I.ピグメントブルー1、17等が挙げられる。
【0032】
更に、黒色系としては、C.I.アシッドブラック1、2、7、24、26、29、31、48、50、51、52、58、60、62、63、64、67、72、76、77、94、107、108、09、110、112、115、118、119、121、122、131、132、139、140、155、156、157、158、159、191、C.I.ダイレクトブラック17、19、22、32、38、51、56、62、71、74、75、77、94、105、106、107、108、112、113、117、118、132、133、146、154、168、C.I.リアクティブブラック1、3、4、5、6、8、9、10、12、13、14、18、C.I.ソルビライズバットブラック1C.I.フードブラック2等が挙げられる。
【0033】
また、インク中に分散する着色剤として、アルカリ性で分散した顔料が用いられる。これらは、カラーインデックスにおいて顔料に分類されるものを、分散剤によりアルカリ性のpH域で分散安定化したもの、あるいは、顔料表面に官能基を付与する処理を行って分散したものから用いられる。
【0034】
ここで、分散剤はスチレン−アクリル酸樹脂、スチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−マレイン酸半エステル樹脂、アクリル酸−アクリル酸エステル樹脂、イソブチレン−マレイン酸樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂等を用いることができる。
【0035】
顔料の分散は、従来から知られている方法にて行うことができる。上述の分散剤と顔料をアルカリ性の水中に混合して、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテーターミル、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、ジェットミル、オングミルなどの分散機を用いて分散し、顔料の平均粒子径を25〜1000nm、好ましくは50〜250nmに調製する。さらに、目詰まりの原因となる粗大粒子や異物を取り除くために、金属フィルターやメンブランフィルターなどを用いた濾過あるいは遠心分離を行なうのが好ましい。
【0036】
顔料は、具体的には黒色系としては、カーボンブラック類、C.I.ピグメントブッラク1が挙げられる。黄色系としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、65、83が挙げられる。また、赤色系としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、49、50、51、52、53、55、60、64、83、87、88、89、90、112、114、123、163等が挙げられる。青色系としては、C.I.ピグメントブルー2、3、15、16、22、25等が挙げられる。更に、顔料表面に官能基を付与する処理を行って分散したものとして、マイクロジェットC−type CW1およびCW2(商品名、オリヱント化学工業株式会社製)等を用いることもできる。
【0037】
これらの着色剤は単独、あるいは複数種混合して用いることができる。なお、本発明に用いることが可能な着色剤は、ここに記載したものに限定されるものでなく、本要件に該当するものであれば、いずれも用いることができる。
【0038】
本発明に用いる保湿剤は、インク組成物の水分の蒸発を抑制して、吐出安定性を向上するために用いられ、強い親水性の化合物や吸湿性、潮解性を有する化合物から選ばれる。より好ましくは、蒸気圧が純水よりも小さい水溶性有機溶剤および、または尿素誘導体、糖類から選ばれる。
【0039】
蒸気圧が純水よりも小さい水溶性有機溶剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類、アセトニルアセトン等のケトン類、γ−ブチロラクトン、リン酸トリエチル等のエステル類、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、チオジグリコール、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン等が望ましい。
【0040】
また、尿素誘導体としては、尿素、メチル尿素類、エチル尿素類、エチレン尿素類、プロピレン尿素類、チオ尿素類等を添加することができる。
【0041】
さらに糖類としては、マルチトール、ソルビトール、グルコノラクトン、マルトース等が好ましい。
【0042】
保湿剤は、インク組成物全量に対して5〜50%の範囲で添加することがより好ましい。5%以上であれば、インクジェット記録に用いることが可能な保湿性を得ることができる。また、50%以下であれば、インクジェット記録に利用可能な適度な粘度以下のインク組成物を得る事ができる。
【0043】
本発明の第二のインクに用いる水溶性の浸透性有機溶剤は、インクの表面張力を低下して記録媒体へのインクの浸透を促進し、インク乾燥時間を短縮するために用いられるものである。更に、1価カチオンとの併用により、第一のインクのカルボキシル基を有する水溶性多糖類のゲル化を生じさせ、第一のインクと第二のインクの混合を抑制して混色ブリードを低減する為に添加される。
【0044】
本発明の浸透性有機溶剤は、好ましくは低級モノおよびポリオール類、モノおよびポリグリコールエーテル類のいずれから選ばれる。これらであれば、1価カチオンとの併用により、本発明のインクセットにおいて十分なゲル化形成能をえることができる
具体的には、低級モノおよびポリオール類としてエタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−ペンタノール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等が用いられる。また、モノおよびポリグリコールエーテル類としてエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0045】
浸透性有機溶剤の添加量は、好ましくは3〜30%の範囲である。この範囲であれば、インクジェット記録に利用可能な適度な粘度以下のインク組成物を得る事ができる。
【0046】
本発明の第二のインクには、更にノニオン性界面活性剤としてサーフィノール61、82、104、440、465、485(以上いずれも商品名、エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ社製)、ニッサンノニオンK−211、K−220、P−213、E−215、E−220、S−215、S−220、HS−220、NS−212、NS−220(以上いずれも商品名、日本油脂株式会社製)等を添加する事も可能である。これらは、浸透性有機溶剤と併用する事により、わずかな粘度上昇のみで浸透性を大幅に増すことが可能となる。
【0047】
ノニオン性界面活性剤の添加量は特に限定されないが、好ましくは0.05〜2.5%の範囲である。この範囲であれば、インクジェット記録に利用可能な適度な粘度以下のインク組成物を得る事ができる。
【0048】
本発明の第二のインクに添加する1価カチオンを含む水溶性樹脂は、浸透性有機溶剤との併用により、第一のインクのカルボキシル基を有する水溶性多糖類のゲル化を生じさせ、第一のインクと第二のインクの混合を抑制して混色ブリードを低減する為に添加される。
【0049】
具体的な1価カチオンとしては、ナトリウム、カリウム、アンモニウムカチオン等が挙げられる。十分なゲル化をより少ない添加量で得るために、ナトリウムあるいはカリウムカチオンを含む水溶性樹脂をもちいることがより好ましい。
【0050】
1価カチオンを含む水溶性樹脂としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩などのイオン解離性を有する親水基をその構造中に含有する単量体からなるホモポリマーや、前記単量体とそれとは異なるイオン解離性親水基を構造中に含有する単量体との組み合わせからなるコポリマー、前記単量体と非イオン解離性単量体との組み合わせからなるコポリマー等を用いることができる。前記コポリマーの形態としては、ランダムコポリマー、交互コポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマーのいずれをも用いることができる。
【0051】
1価カチオンを含む水溶性樹脂の分子量は、300〜50,000の範囲にあるものが好ましい。分子量がこの範囲にあることで、インク組成物の粘度をインクジェット記録に利用可能な適度な粘度に合わせやすくなる。
【0052】
1価カチオンを含む水溶性樹脂の添加量は、全インク重量に対して0.05%〜10%が好ましい。この範囲であれば、インク組成物の粘度をインクジェット記録に利用可能な適度な粘度に合わせやすく、かつ浸透性有機溶剤と併用することにより十分なゲル化形成能を得ることができる。
【0053】
1価カチオンを含む水溶性樹脂としては、具体的にはホモポリマーとしてポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸カリウム、ポリマレイン酸ナトリウム、ポリマレイン酸ナトリウム半アルキルエステル、ポリビニルスルホン酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸カリウム、ポリ−2−アクリロイルアミノ−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム、ポリビニル硫酸ナトリウム等が、コポリマーとしてアクリル酸ナトリウム−メタクリル酸ナトリウムコポリマー、メタクリル酸カリウム−メチルメタクリレートコポリマー、スチレンスルホン酸ナトリウム−酢酸ビニルコポリマー等が挙げられる。なお、本発明に用いることが可能な1価カチオンを含む水溶性樹脂はここに記載したものに限定されるものではなく、本用件に該当するものであればいずれも用いることができる。また本発明の第二のインクには、1価カチオンを含む水溶性樹脂の溶解性を促進させる、粘度を調整する、塩の解離度を調整するなどの目的で、塩化ナトリウム等の電解質等を更に添加しても良い。
【0054】
本発明に用いる水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水をいずれも用いることができる。また、紫外線照射、又は過酸化水素添加などにより滅菌した水を用いると、インク組成物を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
【0055】
本発明の第一のインクには、さらに浸透促進剤を含むことも可能である。
【0056】
浸透促進剤は、上述の水溶性の浸透性有機溶剤を用いることができる。
【0057】
第一のインクに対する浸透性有機溶剤の添加量は、数秒以上の長い乾燥時間のインク、いわゆる緩浸透インクとする場合は、0〜4%の範囲で添加することができる。乾燥時間が1秒未満のインク、いわゆる超浸透インクでは5〜15%の範囲で添加することができる。また、超浸透インクの場合は、浸透性有機溶剤が着色剤の対イオンと共同でインク中の水溶性多糖類をゲル化させないために、着色剤の対イオンをアンモニウムあるいはリチウムカチオン、あるいは2−アミノエタノール、2−(ジメチルアミノ)エタノール、2−(ジエチルアミノ)エタノール、ジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、またはトリイソプロパノールアミン等のモノ−、ジ−あるいはトリ−低級ヒドロキシアルキルアミン類等の有機アミン類にすることが好ましい。
【0058】
インクには、さらに必要に応じてインクジェット記録用水性インクに一般的に用いられている助剤を添加することもできる。
【0059】
必要に応じて加える助剤としては、グアニジン酸塩、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム等のヒドロトロピー剤、防カビ剤、EDTA等のキレート剤、防腐剤、防錆剤等が挙げられる。インクを帯電するインクジェット記録方式に使用する場合は、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム等の無機塩類から選ばれる比抵抗調製剤を添加する。
【0060】
【実施例】
<顔料分散液の調整>
(イエロー顔料分散液)
着色剤としてダイニチファストイエローGR(商品名、大日精化工業株式会社、C.I.ピグメントイエロー2)20gと分散剤としてジョンクリル682(商品名、ジョンソンポリマー株式会社、スチレン−アクリル酸樹脂)5g、水酸化リチウム1.5g、超純水73.5gを混合して、コロイドミルにて4時間分散して、イエロー顔料分散液を調整した。
【0061】
(マゼンタ顔料分散液)
着色剤としてピンク6G(商品名、野間化学工業株式会社、C.I.ピグメントレッド81)20gと分散剤としてジョンクリル682(商品名、ジョンソンポリマー株式会社、スチレン−アクリル酸樹脂)5g、水酸化リチウム1.5g、超純水73.5gを混合して、コロイドミルにて4時間分散して、マゼンタ顔料分散液を調整した。
【0062】
(シアン顔料分散液)
着色剤としてダイニチシアニンブルーB(商品名、大日精化工業株式会社、C.I.ピグメントブルー15)20gと分散剤としてジョンクリル682(商品名、ジョンソンポリマー株式会社、スチレン−アクリル酸樹脂)5g、水酸化リチウム1.5g、超純水73.5gを混合して、コロイドミルにて4時間分散して、シアン顔料分散液を調整した。
【0063】
<評価方法>
(単色印字品質)
インクジェット記録方式のプリンターとしてMJ−930C(商品名、セイコーエプソン株式会社製)にインクを充填して、中性普通紙としてゼロックス−P、ゼロックス−4024(いずれも商品名、富士ゼロックス株式会社製)、酸性普通紙としてEPP(商品名、セイコーエプソン株式会社製)、再生紙としてゼロックス−R(商品名、富士ゼロックス株式会社製)、やまゆり(商品名、本州製紙株式会社製)に印刷を行った。10ポイントの文字をスーパーファインモードで印刷して、その滲みの度合いから印字品質レベルを判定した。
【0064】
判断基準は、表1に示す通りである。
【0065】
【表1】
【0066】
(混色ブリード)
インクジェット記録方式のプリンターとしてMJ−930C(商品名、セイコーエプソン株式会社製)にインクを充填して、普通紙としてゼロックス−P、ゼロックス−4024(いずれも商品名、富士ゼロックス株式会社製)、再生紙としてゼロックス−R(商品名、富士ゼロックス株式会社製)、やまゆり(商品名、本州製紙株式会社製)に印刷を行った。カラーのベタ印刷上に黒インクの文字をスーパーファインモードで印刷して、黒インクの滲みの度合いから印字品質レベルを判定した。判断基準は、表1に示す通りである。
【0067】
<インクセットの調製>
(実施例1)
第一のインクの調整
超純水50gにカルボキシル基を有する水溶性多糖類としてペクチン酸のPolygalacturon acid,Potassium salt(Sigma Chemical社、カタログ番号P7276)0.3gとペクチン酸の溶解を促進する為にアミノメチルプロパノール2gを混合して、攪拌しながら溶解した。続いて、保湿剤としてグリセリン10gとジエチレングリコール5gを溶解して、さらに着色剤としてカーボンブラック分散液#0542(商品名、御国色素製、着色剤濃度20wt%)25gを加えて攪拌しながら分散した。さらに超純水を全量が100gになるまで加え、水酸化リチウムにより分散液のpHを9に調整した。この溶液を2時間攪拌した後、孔径約5μmのステンレス製メッシュフィルターにて濾過して第一のインクを調製した。
【0068】
第二のインクの調整
着色剤としてプロジェトイエロー1G(商品名、ゼネカ株式会社製、C.I.ダイレクトイエロー132、着色剤濃度7.5wt%)40gに保湿剤としてグリセリン10gとジエチレングリコール10g、および浸透剤としてトリエチレングリコールモノブチルエーテル10gを加えて攪拌しながら溶解した。1価カチオンを含む水溶性樹脂としてポリアクリル酸ナトリウム(分子量2,000)1gを加え、さらに超純水を全量が100gになるまで加えた。水酸化ナトリウムにより水溶液のpHを9.5に調整した。この溶液を2時間攪拌した後、孔径約5μmのステンレス製メッシュフィルターにて濾過して第二のインクを調製した。
【0069】
(実施例2)
実施例1に対して第二のインクの着色剤をニッポンファストレッドBB(商品名、住友化学工業株式会社製、C.I.ダイレクトレッド31)3.5gに変更する以外は同様な方法でインクを調製した。
【0070】
(実施例3)
実施例1に対して第二のインクの着色剤をカヤラスターコイズブルーGL(商品名、日本化薬株式会社製、C.I.ダイレクトブルー86)3.5gに変更する以外は同様な方法でインクを調製した。
【0071】
(実施例4)
第一のインクの調整
超純水50gにカルボキシル基を有する水溶性多糖類としてペクチン酸のPolygalacturon acid(Sigma Chemical社、カタログ番号P3889)0.6gを加え、アンモニア水によりpHを9に調整しながら、攪拌・溶解した。続いて、保湿剤としてグリセリン10gと2−ピロリドン10gを溶解して、さらに着色剤としてダイレクトファストブラックAB(商品名、住友化学工業株式会社製、C.I.ダイレクトブラック32)2gを加えて、攪拌しながら溶解した。さらに超純水を全量が100gになるまで加え、アンモニア水により水溶液のpHを9に調整した。この溶液を2時間攪拌した後、孔径約5μmのステンレス製メッシュフィルターにて濾過して第一のインクを調製した。
【0072】
第二のインクの調整
超純水50gに保湿剤としてグリセリン15g、浸透剤としてトリエチレングリコールモノブチルエーテル3gとtert−ペンタノール2g、1価カチオンを含む水溶性樹脂としてポリスチレンスルホン酸ナトリウム(分子量3,000)0.6gを加えて、攪拌しながら水溶液を調整した。前記水溶液に着色剤としてダイニチファストイエローGR(商品名、大日精化工業株式会社、C.I.ピグメントイエロー2)を含むイエロー顔料分散液25gを2時間かけて攪拌しながら徐々に加えて、さらに超純水を全量が100gになるまで加え、水酸化ナトリウムにより分散液のpHを9.5に調整した。この溶液を2時間攪拌した後、孔径約5μmのステンレス製メッシュフィルターにて濾過して第二のインクを調製した。
【0073】
実施例1から4のインクセットについて、インクジェット記録方式のプリンターとしてMJ−930C(商品名、セイコーエプソン株式会社製)を用いて印刷して、第一のインクの単色印字品質と第一のインクと第二のインク間の混色ブリードのレベルを判定した。結果は、いずれも特に良好から限度内であった。
【0074】
(実施例5)
実施例1に対して第一のインクのカルボキシル基を有する水溶性多糖類をアルギン酸としてダックアルギンNSPLL(商品名、紀文フードケミファ(株)製)0.3g、着色剤をカーボンブラック表面に官能基を付与する処理を行って分散したマイクロジェットC−type CW2(商品名、オリヱント化学工業株式会社製)3gに変更する以外は同様な方法でインクを調製した。
【0075】
(実施例6)
実施例1に対して第一のインクのカルボキシル基を有する水溶性多糖類を低メトキシペクチンとしてLM−104AS(商品名、The Copenhagen Pectin Factory社製)0.2g、着色剤をマイクロジェットC−type CW2(商品名、オリヱント化学工業株式会社製)3gに変更する以外は同様な方法でインクを調製した。
【0076】
(実施例7)
実施例1に対して第一のインクのペクチン酸添加量を0.1g、着色剤をマイクロジェットC−type CW2(商品名、オリヱント化学工業株式会社製)3gに変更する以外は同様な方法でインクを調製した。
【0077】
実施例5から7のインクセットについて、インクジェット記録方式のプリンターとしてMJ−930C(商品名、セイコーエプソン株式会社製)を用いて印刷して、第一のインクの単色印字品質と第一のインクと第二のインク間の混色ブリードのレベルを判定した。結果は、いずれも特に良好から限度内であり、カルボキシル基を有する水溶性多糖類が、アルギン酸類あるいはペクチン類であれば、いずれも本発明のインクの要件に好ましいインクセットを調製できた。結果を表2にまとめて示す。
【0078】
(実施例8)
第一のインクの調整
超純水50gにカルボキシル基を有する水溶性多糖類としてペクチン酸のPolygalacturon acid(Sigma Chemical社、カタログ番号P3889)0.7gを加え、アンモニア水によりpHを9に調整しながら、攪拌・溶解した。続いて、保湿剤としてグリセリン10gと2−ピロリドン10gを溶解して、さらに着色剤としてダイレクトファストブラックAB(商品名、住友化学工業株式会社製、C.I.ダイレクトブラック32)2gを加えて、攪拌しながら溶解した。さらに超純水を全量が100gになるまで加え、アンモニア水により水溶液のpHを9に調整した。この溶液を2時間攪拌した後、孔径約5μmのステンレス製メッシュフィルターにて濾過して第一のインクを調製した。
【0079】
第二のインクの調整
超純水50gに着色剤としてカヤラスターコイズブルーGL(商品名、日本化薬株式会社、C.I.ダイレクトブルー86)3.5gを加えて、攪拌しながら溶解した。さらに、保湿剤としてグリセリン10gとジエチレングリコール10g、および浸透剤としてトリエチレングリコールモノブチルエーテル10gを加えて攪拌しながら溶解した。1価カチオンを含む水溶性樹脂としてポリビニル硫酸ナトリウム(分子量2,000)1.2gを加え、さらに超純水を全量が100gになるまで加えた。水酸化ナトリウムにより水溶液のpHを9.5に調整した。この溶液を2時間攪拌した後、孔径約5μmのステンレス製メッシュフィルターにて濾過して第二のインクを調製した。
【0080】
(実施例9)
実施例8に対して第一のインクの着色剤をニグロシンNB(商品名、住友化学工業株式会社製、C.I.アシッドブラック2)2gに、第二のインクの着色剤をニッポンファストレッドBB(商品名、住友化学工業株式会社製、C.I.ダイレクトレッド31)3.5gに変更する以外は同様な方法でインクを調製した。
【0081】
実施例8と9のインクセットについて、インクジェット記録方式のプリンターとしてMJ−930C(商品名、セイコーエプソン株式会社製)を用いて印刷して、第一のインクの単色印字品質と第一のインクと第二のインク間の混色ブリードのレベルを判定した。結果は、いずれも良好から限度内であり、第一のインクあるいは第二のインクの着色剤が染料であっても本発明のインクの要件に好ましいインクセットを調製できた。結果を表2にまとめて示す。
【0082】
(実施例10)
第一のインクの調整
実施例5の第一のインクと同様に調製した。
【0083】
第二のインクの調整
超純水50gに保湿剤としてグリセリン15g、浸透剤としてトリエチレングリコールモノブチルエーテル3gとtert−ペンタノール2g、1価カチオンを含む水溶性樹脂としてポリスチレンスルホン酸ナトリウム(分子量3,000)0.6gを加えて、攪拌しながら水溶液を調整した。前記水溶液に着色剤としてピンク6G(商品名、野間化学工業株式会社、C.I.ピグメントレッド81)を含むマゼンタ顔料分散液25gを2時間かけて攪拌しながら徐々に加えて、さらに超純水を全量が100gになるまで加え、水酸化ナトリウムにより分散液のpHを9.5に調整した。この溶液を2時間攪拌した後、孔径約5μmのステンレス製メッシュフィルターにて濾過して第二のインクを調製した。
【0084】
(実施例11)
実施例10に対して、第二のインクの着色剤にダイニチシアニンブルーB(商品名、大日精化工業株式会社、C.I.ピグメントブルー15)を含むシアン顔料分散液を用いる以外は同様な方法でインクを調製した。
【0085】
実施例10と11のインクセットについて、インクジェット記録方式のプリンターとしてMJ−930C(商品名、セイコーエプソン株式会社製)を用いて印刷して、第一のインクの単色印字品質と第一のインクと第二のインク間の混色ブリードのレベルを判定した。結果は、いずれも特に良好であり、第一のインクあるいは第二のインクの着色剤が顔料であっても本発明のインクの要件に好ましいインクセットを調製できた。結果を表2にまとめて示す。
【0086】
(実施例12)
第一のインクの調整
実施例1に対して、保湿剤をグリセリン10gとジエチレングリコール5gからグリセリン15gに変更する以外は同様な方法でインクを調製した。
【0087】
第二のインクの調整
実施例1に対して、保湿剤をグリセリン10gとジエチレングリコール10gからグリセリン20gに変更する以外は同様な方法でインクを調製した。
【0088】
(実施例13)
実施例12に対して、保湿剤をグリセリン10gと尿素10gに変更する以外は同様な方法でインクを調製した。
【0089】
(実施例14)
実施例12に対して、保湿剤をグリセリン10gとマルチトール5g、マルトース5gに変更する以外は同様な方法でインクを調製した。
【0090】
実施例12から14のインクセットについて、インクジェット記録方式のプリンターとしてMJ−930C(商品名、セイコーエプソン株式会社製)を用いて印刷して、第一のインクの単色印字品質と第一のインクと第二のインク間の混色ブリードのレベルを判定した。結果は、いずれも特に良好から限度内であり、保湿剤が蒸気圧が純水よりも小さい水溶性有機溶剤、尿素誘導体、糖類から選ぶことにより本発明のインクの要件に好ましいインクセットを調製できた。結果を表2にまとめて示す。
【0091】
(実施例15)
第一のインクの調整
実施例5の第一のインクと同様に調製した。
【0092】
第二のインクの調整
着色剤としてプロジェトイエロー1G(商品名、ゼネカ株式会社製、C.I.ダイレクトイエロー132、着色剤濃度7.5wt%)40gに保湿剤としてグリセリン10gとジエチレングリコール10g、および浸透剤としてtert−ペンタノール5gを加えて攪拌しながら溶解した。1価カチオンを含む水溶性樹脂としてポリマレイン酸ナトリウム(分子量3,000)0.6gを加え、さらに超純水を全量が100gになるまで加えた。水酸化ナトリウムにより水溶液のpHを9.5に調整した。この溶液を2時間攪拌した後、孔径約5μmのステンレス製メッシュフィルターにて濾過して第二のインクを調製した。
【0093】
(実施例16)
実施例15に対して、浸透剤を1,5−ペンタンジオール15gに変更する以外は同様な方法でインクを調製した。
【0094】
実施例15と16のインクセットについて、インクジェット記録方式のプリンターとしてMJ−930C(商品名、セイコーエプソン株式会社製)を用いて印刷して、第一のインクの単色印字品質と第一のインクと第二のインク間の混色ブリードのレベルを判定した。結果は、いずれも特に良好から良好であり、浸透剤が低級モノおよびポリオール類、モノおよびポリグリコールエーテル類のいずれかであれば本発明のインクの要件に好ましいインクセットを調製できた。結果を表2にまとめて示す。
【0095】
(実施例17)
第一のインクの調整
実施例5の第一のインクと同様に調製した。
【0096】
第二のインクの調整
実施例1に対して、浸透剤のトリエチレングリコールモノブチルエーテル10gを5gに減らし、さらにノニオン性界面活性剤としてサーフィノール465(商品名、エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ社製)0.8gを加える以外は同様な方法でインクを調製した。
【0097】
(実施例18)
実施例17に対して、ノニオン性界面活性剤としてニッサンノニオンNS−212(商品名、日本油脂株式会社製)1%に変更する以外は同様な方法でインクを調製した。
【0098】
実施例17と18のインクセットについて、インクジェット記録方式のプリンターとしてMJ−930C(商品名、セイコーエプソン株式会社製)を用いて印刷して、第一のインクの単色印字品質と第一のインクと第二のインク間の混色ブリードのレベルを判定した。結果は、いずれも特に良好から良好であり、第二のインクにさらにノニオン性界面活性剤を添加しても本発明のインクの要件に好ましいインクセットを調製できた。結果を表2にまとめて示す。
【0099】
(実施例19)
着色剤としてダイレクトファストブラックD(商品名、日本化薬株式会社製、C.I.ダイレクトブラック17)10%水溶液を調製して、塩酸を滴下して染料を沈殿させた。沈殿した染料を遠心分離して、水酸化リチウム1%溶液100gに溶解した。この溶液に塩酸を加えて染料を沈殿させる工程と、水酸化リチウム水溶液に溶解する工程を3回繰り返して対イオンをリチウム化したC.I.ダイレクトブラック17を得た。
【0100】
第一のインクの調整
超純水30gにカルボキシル基を有する水溶性多糖類としてペクチン酸のPolygalacturon acid(Sigma Chemical社、カタログ番号P3889)0.7gを加え、ペクチン酸の溶解を促進する為に水酸化リチウム0.05gを混合して、攪拌しながら溶解した。続いて、保湿剤としてグリセリン10gと浸透剤としてtert−ペンタノール6gを加えて樹脂水溶液を調製した。超純水40gにリチウム化したC.I.ダイレクトブラック17を6g加え、攪拌しながら溶解して染料水溶液を作成した。樹脂水溶液に染料水溶液を30分かけて徐々に加え、攪拌しながら溶解した。さらに超純水を全量が100gになるまで加え、水酸化リチウムにより水溶液のpHを9.5に調整した。この溶液を2時間攪拌した後、孔径約5μmのステンレス製メッシュフィルターにて濾過して第一のインクを調製した。
【0101】
第二のインクの調整
実施例1の第二のインクと同様に調製した。
【0102】
(実施例20)
第一のインクの調整
超純水30gにカルボキシル基を有する水溶性多糖類としてペクチン酸のPolygalacturon acid(Sigma Chemical社、カタログ番号P3889)0.7gを加え、ペクチン酸の溶解を促進する為に水酸化リチウム0.05gを混合して、攪拌しながら溶解した。続いて、保湿剤としてグリセリン10gと浸透剤としてtert−ペンタノール6gを加えて樹脂水溶液を調製した。超純水40gに着色剤としてカーボンブラックのマイクロジェットC−type CW2(商品名、オリヱント化学工業株式会社製)6gと水酸化リチウム0.05gを加えて、攪拌しながら顔料分散液を調製した。樹脂水溶液に顔料分散液を2時間かけて徐々に加え、攪拌しながら分散した。さらに超純水を全量が100gになるまで加え、水酸化リチウムにより分散液のpHを9.5に調整した。この溶液を2時間攪拌した後、孔径約5μmのステンレス製メッシュフィルターにて濾過して第一のインクを調製した。
【0103】
第二のインクの調整
実施例1の第二のインクと同様に調製した。
【0104】
実施例19と20のインクセットについて、インクジェット記録方式のプリンターとしてMJ−930C(商品名、セイコーエプソン株式会社製)を用いて印刷して、第一のインクの単色印字品質と第一のインクと第二のインク間の混色ブリードのレベルを判定した。結果は、いずれも特に良好から良好であり、第一のインクにさらに浸透剤を添加して、いわゆる超浸透インクとしても本発明のインクの要件に好ましいインクセットを調製できた。結果を表2にまとめて示す。
【0105】
<比較例>
(比較例1)
実施例1の第二のインクのポリアクリル酸ナトリウムを硝酸マグネシウム六水和物に変更する以外は同様な方法で調製した。
【0106】
(比較例2)
実施例4の第二のインクのポリスチレンスルホン酸ナトリウムを硝酸マグネシウム六水和物に変更する以外は同様な方法で調製した。
【0107】
比較例1と2のインクは、1価カチオンを含む水溶性樹脂の代わりに多価カチオンを含む水溶性塩類を添加したものである。いずれのインク共に、硝酸マグネシウムを添加した段階で着色剤と推定される析出物が発生して、インクを作成する事ができなかった。
【0108】
上記実施例及び比較例の結果を表2にまとめて示す。
【0109】
【表2】
【0110】
【発明の効果】
以上述べた様に本発明によれば、複数色のインク液滴を記録媒体に付着して画像を形成するインクジェット記録方法において、カルボキシル基を有する水溶性多糖類、インク中に溶解あるいは分散する着色剤、保湿剤、水とを少なくとも含んでなる第一のインクと、水溶性の浸透性有機溶剤、1価カチオンを含む水溶性樹脂、インク中に溶解あるいは分散する着色剤、保湿剤、水とを少なくとも含んでなる第二のインクを少なくとも含むインクセットを用いることにより、混色ブリードを防止する為のインクに多くの種類の着色剤を使用することが可能となり、単色の印字品質と混色ブリードの品質を両立して向上したインクジェット記録方法と提供することが可能となった。
Claims (7)
- 複数色のインク液滴を記録媒体に付着して画像を形成するインクジェット記録方法において、カルボキシル基を有する水溶性多糖類としての、分子量が3,500〜50,000である低メトキシペクチン類若しくはペクチン酸類、インク中に溶解あるいは分散する着色剤、保湿剤、水とを少なくとも含んでなる第一のインクと、水溶性の浸透性有機溶剤、1価カチオンを含む水溶性樹脂、インク中に溶解あるいは分散する着色剤、保湿剤、水とを少なくとも含んでなる第二のインクを少なくとも含むインクセットを用いることを特徴とするインクジェット記録方法。
- 前記着色剤がアルカリ可溶性の水溶性染料から選ばれることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録方法。
- 前記着色剤がアルカリ性で分散した顔料から選ばれることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録方法。
- 前記保湿剤が、蒸気圧が純水よりも小さい水溶性有機溶剤および、または尿素誘導体、糖類から選ばれることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記浸透性有機溶剤が、低級モノおよびポリオール類、モノおよびポリグリコールエーテル類のいずれから選ばれる化合物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記第二のインクに、更にノニオン性界面活性剤を添加することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記第一のインクに、さらに浸透促進剤を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
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