JP3724412B2 - 中空糸膜の製造方法および中空糸膜モジュール - Google Patents
中空糸膜の製造方法および中空糸膜モジュール Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、中空糸膜の製造方法に関する。さらに詳しくは、飲料水製造、浄水処理、廃水処理などの水処理に用いられる中空糸精密ろ過膜や中空糸限外ろ過膜の製造方法および該製法により製造された中空糸膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
中空糸膜は逆浸透膜や限外ろ過膜や精密ろ過膜等が製品化されている。精密ろ過膜や限外ろ過膜などの中空糸膜は浄水処理、廃水処理、医療用途や食品工業分野等をはじめとして様々な方面で利用されている。中空糸分離膜に求められる性能は一般に、高透水量、優れた分離特性、化学的強度および物理的強度である。中空糸膜が用いられる理由は単位体積あたりの有効膜面積が大きいからである。そのなかで飲料水製造分野、すなわち浄水処理用途においては、従来の砂濾過、凝集沈殿過程の代替に分離膜が用いられるようになっている。これらの分野では処理しなければならない水量が大きいため、中空糸膜の透水性能が優れていれば、膜面積を減らすことが可能となり、装置がコンパクトになるため設備費が節約でき、膜交換費や設置面積の点からも有利になってくる。また、さらに分離膜には耐薬品性能が求められている。浄水処理では透過水の殺菌や膜のバイオファウリング防止の目的で次亜塩素酸ナトリウムなどの殺菌剤を膜モジュール部分に添加したり、膜の薬液洗浄として、酸、アルカリ、塩素、界面活性剤などで膜を洗浄することがある。そのため近年では耐薬品性の高い素材としてポリフッ化ビニリデン系樹脂を用いた分離膜が開発され、使われている。また、浄水処理分野では、家畜の糞尿などに由来するクリプトスポリジウムなどの塩素に対して耐性のある病原性微生物が浄水場で処理しきれず処理水に混入する事故が1990年代から顕在化している。このことから中空糸膜には十分な分離特性と膜が切れて原水が混入しないような高い強伸度特性が要求されている。
【0003】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂を素材にする分離膜の製造方法にはいくつかの技術が開示されているがこれらの殆どが、特公平1−22003号公報で開示されているようにポリフッ化ビニリデン系樹脂を良溶媒に溶解したポリマー溶液を、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の融点よりかなり低い温度で、口金から押出したり、ガラス板上にキャストしたりして成型した後、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の非溶媒を含む液体に接触させて非溶媒誘起相分離により非対称多孔構造を形成させる湿式溶液法である。しかしながら湿式溶液法では、膜厚方向に均一に相分離を起こすことが困難であり、マクロボイドを含む非対称膜となるため機械的強度が十分でないという問題がある。また、膜構造や膜性能に与える製膜条件因子が多く、製膜工程の制御が難しく、再現性も乏しいといった欠点がある。また、比較的近年では特許第2899903号で開示されているようにポリフッ化ビニリデン系樹脂に無機微粒子と有機液状体を溶融混練し、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の融点以上の温度で口金から押し出したり、プレス機でプレスしたりして成型した後、冷却固化し、その後有機液状体と無機微粒子を抽出することにより多孔構造を形成する溶融抽出法が開示されている。溶融抽出法の場合、空孔性の制御が容易で、マクロボイドは形成せず比較的均質で高強度の膜が得られるものの、無機微粒子の分散性が悪いとピンホールのような欠陥を生じる可能性がある。さらに、溶融抽出法は、製造コストが極めて高くなるといった欠点を有している製造方法である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の課題を解決せんとするものであり、耐薬品性が高いポリフッ化ビニリデン系樹脂を用いて、高強度で空孔性が高く高透水性能を有する中空糸膜を、低コストで製造することが可能になる中空糸膜の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、少なくとも30〜50重量%のポリフッ化ビニリデン系樹脂、1〜30重量%の親水性多孔化剤、および該樹脂の貧溶媒を含有し、紡糸温度が80〜175℃の範囲であるポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液を冷却浴に吐出し凝固させる中空糸膜の製造方法であって、該冷却浴の冷却液体は、温度が0〜50℃の範囲内であり、かつ、該冷却液体は濃度が60〜100重量%の範囲で貧溶媒を含有する液体であることを特徴とする中空糸膜の製造方法により達成される。さらに本発明は、上記製造方法で製造された中空糸膜を有する中空糸膜モジュール、上記中空糸膜モジュールを具備する水の分離装置を含む。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0007】
本発明におけるポリフッ化ビニリデン系樹脂とは、フッ化ビニリデンホモポリマーおよび/またはフッ化ビニリデン共重合体を含有する樹脂のことである。複数の種類のフッ化ビニリデン共重合体を含有しても構わない。フッ化ビニリデン共重合体としては、フッ化ビニリデン残基構造を有するポリマーならば特に限定されず、典型的にはフッ化ビニリデンモノマーとそれ以外のフッ素系モノマーとの共重合体であり、例えば、フッ化ビニル、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、三フッ化塩化エチレンから選ばれた1種類以上のフッ素系モノマーとフッ化ビニリデンとの共重合体が挙げられる。場合によっては、フッ素系モノマー以外の例えばエチレン等のモノマーが含まれていても良い。またポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量は、要求される中空糸膜の強度と透水性能によって適宜選択すれば良いが10万〜100万の範囲が好ましい。中空糸膜への加工性を考慮した場合は25万〜60万の範囲が好ましく、さらに35万〜45万の範囲が好ましい。
【0008】
本発明において貧溶媒とは、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を60℃未満の低温では5重量%以上溶解させることができないが、60℃以上かつポリフッ化ビニリデン系樹脂の融点以下(例えばポリフッ化ビニリデン系樹脂が、フッ化ビニリデンホモポリマー単独で構成される場合は178℃程度)の高温領域で5重量%以上溶解させることができる溶媒のことである。貧溶媒に対し、60℃未満の低温でもポリフッ化ビニリデン系樹脂を5重量%以上溶解させることが可能な溶媒を良溶媒、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の融点または液体の沸点まで、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解も膨潤もさせない溶媒を非溶媒と定義する。ここで貧溶媒としては、シクロヘキサノン、イソホロン、γ−ブチロラクトン、メチルイソアミルケトン、フタル酸ジメチル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレンカーボネート、ジアセトンアルコール、グリセロールトリアセテート等の中鎖長のアルキルケトン、エステル、グリコールエステル及び有機カーボネート等が挙げられる。また良溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、テトラメチル尿素、リン酸トリメチル等の低級アルキルケトン、エステル、アミド等が挙げられる。さらに非溶媒としては、水、ヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、四塩化炭素、o−ジクロルベンゼン、トリクロルエチレン、低分子量のポリエチレングリコール等の脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、塩素化炭化水素、またはその他の塩素化有機液体等が挙げられる。
【0009】
本発明の親水性多孔化剤とは、親水性を有していて当該中空糸膜の多孔化を促す性質を有するものならば、なんら限定されるものではなく、好適には、親水性有機物の高分子乃至は低分子物質である。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸などの水溶性ポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル(モノ、トリエステル体等)等の多価アルコールのエステル体、ソルビタン脂肪酸エステルのエチレンオキサイド低モル付加物、ノニルフェノールのエチレンオキサイド低モル付加物、プルロニック型エチレンオキサイド低モル付加物等のエチレンオキサイド低モル付加物、ポリオキシエチレンアルキルエステル、アルキルアミン塩、ポリアクリル酸ソーダ等の界面活性剤、グリセリンなどの多価アルコール類、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのグリコール類である。これらは1種類で用いても2種類以上の混合物で用いても良い。これらの親水性多孔化剤は重量平均分子量50,000以下のものが良い(より好ましくは30,000以下)。これよりも分子量の大きなものは、抽出性が悪く、紡糸原液へも均一溶解しにくいために好ましくない場合がある。
【0010】
この親水性多孔化剤は中空糸膜が口金から吐出され冷却浴中で溶媒抽出され構造凝集が起こる時に溶媒に比べ比較的長時間中空糸膜中に残留すると考えられる。溶媒抽出に伴う構造凝集が緩やかになってから、親水性多孔化剤が抽出されるので、得られた中空糸膜は空孔性が高いものになる。構造的には親水性多孔化剤の種類、分子量、添加量等に依存するが、球状構造が連結された構造を有し、球状構造と球状構造の境界、隙間に細孔が分布する、あるいは球状構造間の隙間自体が大きくなる、または球状構造自体に5μm以下の細孔が多数分布した構造、あるいはこれらが複合した構造になり、空孔性が高く透水性の高いものになる。
【0011】
なお、球状構造とは、専ら、球晶であると推定される。球晶とは、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液が相分離して多孔構造を形成する際に、ポリフッ化ビニリデン系樹脂が球形に析出、固化した結晶のことである。このような構造を有する中空糸膜は、従来の湿式溶液法で得られる網目構造を有する中空糸膜と比べて、強度を高くでき、しかも透水性能も高くすることができる。
【0012】
本発明では、まずポリフッ化ビニリデン系樹脂(以下、単にポリマーとも表記する)を30〜50重量%の濃度範囲で、親水性多孔化剤を1〜30重量%、好ましくは1〜20重量%、さらに好ましくは1〜10重量%の濃度範囲で、該樹脂の貧溶媒に80〜175℃、好ましくは100〜150℃の温度範囲で溶解し、該ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液を調製する。
【0013】
前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂のポリマー濃度は高くなれば高い強伸度特性を有する中空糸膜が得られるが、高すぎると製造した中空糸膜の空孔率が小さくなり、透水性能が低下する。また、調製したポリマー溶液の粘度が適正範囲に無ければ、中空糸状に成型することが困難である。なお、前記ポリマー溶液の調製において、複数の貧溶媒を用いても良い。また、ポリマーの溶解性に支障が生じない範囲内で、前記貧溶媒に良溶媒や非溶媒が混在していても良い。従来法の湿式溶液法では、透水性能を発現させるためポリマー濃度は10〜20重量%程度であり、強伸度が大きい膜は得られていなかった。本発明では、ポリマー濃度を前記の通り高濃度にすることで、高い強伸度特性を発現している。
【0014】
また、本発明において、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液中に、親水性多孔化剤が含まれないもしくは低いと得られた中空糸膜が十分な空孔性をもたず、透水性が得にくく、また、あまり多く親水性多孔化剤を含むと紡糸原液に均一に溶解できず、中空糸状に成型できない。また、中空糸膜にピンホール状の欠陥を与え、分離特性が低下し、強伸度も弱くなる。本発明では紡糸原液である前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液中の親水性多孔化剤濃度を前記の通りにすることで高透水性能を発現している。
【0015】
また、貧溶媒を用いることで湿式溶液法で得られる網目構造よりも、球状の結晶よりなると推定される球状構造の膜構造が優先して形成するが、貧溶媒でない場合、あるいは、貧溶媒に貧溶媒以外の溶媒を加えすぎて、前記貧溶媒的溶解特性から逸脱した溶媒系である場合、以下の通りの問題が発生する。即ち、溶媒乃至は溶媒系が良溶媒である乃至は良溶媒的特性を有する場合、紡糸原液のポリマーに対する溶解能が低温においても高くなる。その結果、紡糸時に低温にクエンチしても降温により熱相分離した球状構造が凝固析出しにくく、球状構造の球がより大きく成長する。これにより得られる膜は少ない点で球状構造同士がむすびついており、強度的に弱いものになり不都合である。一方、非溶媒である乃至は非溶媒的特性を有する場合、ポリマーが紡糸原液に均一に溶解しにくく紡糸安定性上不都合である。
【0016】
また、本発明では、該ポリマー溶液を80〜175℃の温度範囲から、冷却液体などを用いて冷却固化させることで、球状構造が連結されて、その間に空隙を有する構造の中空糸膜を得ることができる。
【0017】
さらに、発明者らは鋭意検討した結果、ポリマー溶液温度とともにその冷却方法で、この球状構造を制御できることを見出した。すなわち、(1)ポリマー溶液の温度が低すぎると、球状構造が発達する以前にゲル化し、固化するため、多孔構造を発現せず、透水性が得られないこと、(2)ポリマー溶液温度が高すぎると、冷却、ゲル化、固化に時間を要し、球状構造が充分発達してしまうため、球状構造が大きくなり、また、球状構造と球状構造を連結するポリマー分子の凝集体が減るため、強度的に低下する膜構造になることを見出した。
【0018】
本発明の中空糸膜の製造方法においては、ポリマー溶液を調製した後、該ポリマー溶液を吐出して中空糸状に成形するものである。例えば中空糸膜紡糸用の二重管式口金から吐出し、必要に応じて所定の長さの乾式部を通過させた後、冷却浴中等に導いて凝固させる。二重管式口金を用いる場合、口金から吐出する前に、ポリマー溶液を、5〜100μmのステンレス製フィルター等で濾過することが好ましい。使用する前記口金の寸法は、製造する中空糸膜の寸法と膜構造により適宜選択すればよいが、おおよそスリット外径0.7〜10mm、スリット内径0.5〜4mm、注入管内径0.25〜2mmの範囲であることが好ましい。また、紡糸ドラフト(引取り速度/原液の口金吐出線速度)は好ましくは0.8〜100、より好ましくは0.9〜50、更に好ましくは1〜30、乾式長は好ましくは10〜1000mm、より好ましくは10〜500mm、更に好ましくは10〜300mmの範囲である。
【0019】
また口金の温度すなわち紡糸温度は、溶解温度と同様、80〜175℃、好ましくは100〜170℃の範囲にあれば良く、口金温度と溶解温度が異なっても構わない。溶解温度については、溶解を短時間に均一に行うという点から、口金温度より高い温度に設定することも好ましく採用できる。
【0020】
前記の通り、中空糸状に成形されたポリマーは、冷却浴中に吐出され、凝固して中空糸膜となる。この際、冷却浴には、温度が0〜50℃、好ましくは5〜30℃であり、濃度が60〜100重量%、好ましくは75〜90重量%の範囲で貧溶媒を含有する液体を用いて、凝固させることが好ましい。冷却浴がこの温度範囲にあることにより、凝固工程において、球晶が発達しやすい冷却凝固が支配的となる。貧溶媒は、複数のものを混合して用いても良い。また、前記の濃度範囲を外れない限りにおいて、貧溶媒に、貧溶媒以外の溶媒が混合されてもよい。好ましくは非溶媒が混合されるが、場合によっては良溶媒を混合しても良い。ポリマー溶解温度から大きい温度差を与えて急冷することで、球状構造が微小になると同時に、適度に球状構造間にポリマー分子の凝集体が存在し、透水性と高い強伸度特性を有する膜構造を発現する。また、冷却液体にある程度高い濃度の貧溶媒を含有させることで、非溶媒誘起相分離を抑制し、膜表面に緻密層を形成することなく、中空糸膜状に成型することが可能となる。冷却液体に水等の非溶媒を高い濃度で含有する液体を用いると、膜表面に緻密層を形成してしまい、例え延伸しても透水性能は発現しない。
【0021】
なお、前記冷却浴の形態としては、冷却液体と中空糸状に成形されたポリマー溶液とが十分に接触して冷却等が可能であるならば、特に限定されるものではなく、文字通り冷却液体が貯留された液槽形態であっても良いし、さらに必要により前記液槽は、温度や組成が調製された液体が循環乃至は更新されても良い。前記液槽形態が最も好適ではあるが、場合によっては、冷却液体が管内を流動している形態であっても良いし、空中に走向等している中空糸膜に冷却液体が噴射される形態であっても良い。
【0022】
また、中空糸膜の中空部形成には、通常気体もしくは液体をポリマー溶液に随伴させるが、本発明においては、濃度が60〜100重量%の範囲で貧溶媒を含有する液体を中空部形成用液体として用いることが好ましく採用できる。中空部形成用液体の貧溶媒の濃度は、より好ましくは70〜100重量%、更に好ましくは80〜100重量%の範囲である。冷却浴の冷却液体同様、中空部形成用液体に高い濃度の貧溶媒を含有させることで、非溶媒誘起相分離を抑制し、微細な球状構造を形成することが可能となる。中空部形成用液体において、貧溶媒は、複数のものを混合して用いても良い。また、前記の濃度範囲を外れない限りにおいて、貧溶媒に、良溶媒や非溶媒を混合しても良い。
【0023】
冷却液体として、さらに、濃度が1〜40重量%の範囲で親水性多孔化剤を含有する液体を用いて、凝固させる方法も好ましく採用される。親水性多孔化剤は、紡糸原液に含まれるものと同種の1種又は複数種のものを用いることが望ましいが、それ以外の親水性多孔化剤を用いてもよい。冷却浴に親水性多孔化剤を含有することにより、吐出した中空糸膜が冷却浴中で溶媒抽出され凝固析出するときに紡糸原液の溶媒抽出速度に比べて、濃度勾配により親水性多孔化剤の抽出速度が低下する。その結果溶媒抽出に伴う構造収縮時もより長期間構造中に親水性多孔化剤が構造中に留まり、空孔性が高く透水性が高い膜が発現する。
【0024】
また、中空糸膜の中空部形成に、さらに、濃度が1〜40重量%の範囲で親水性多孔化剤を含有する液体を中空部形成用液体として用いることが好ましく採用できる。中空部形成用液体の親水性多孔化剤の濃度は、より好ましくは1〜30重量%の範囲である。冷却浴同様、中空部形成用液体に親水性多孔化剤を含有させることで、凝固析出時の親水性多孔化剤の抽出速度を抑制し、空孔性が高く透水性が高い膜を形成することが可能となる。中空部形成用液体には、親水性多孔化剤は、複数のものを混合して用いても良い。
【0025】
冷却浴に用いる冷却液体と中空部形成用液体は、同一であっても良いし、異なっていても良く、目的とする中空糸膜の特性等に応じて適宜選択すればよい。製造工程の観点からは、ポリマー溶液、冷却浴に用いる液体、および中空部形成用の液体に用いる溶媒が同一種である場合、製造過程における溶媒の回収等で利便性が高いが特に限定されるものではない。
【0026】
以上までの製造方法で水処理用分離膜として十分な透水性と高強伸度特性を有する中空糸膜を得ることが出来るが、さらに透水性を高めるために該中空糸膜を延伸する工程を設けても良い。具体的には50〜140℃(より好ましくは50〜120℃、更に好ましくは50〜100℃)の温度範囲で1.1〜5倍(より好ましくは1.1〜4倍、更に好ましくは1.1〜3倍)の範囲の延伸倍率に延伸することで、目的の中空糸膜が得られる。50℃未満の低温条件で延伸した場合、安定して均質に延伸することが困難であり、構造的に弱い部分のみが破断する。50〜140℃の温度で延伸した場合、球状構造の一部および球状構造と球状構造を連結するポリマー分子の凝集体が均質に延伸され、微細で細長い細孔が多数形成され、強伸度特性を維持したまま透水性能が向上する。また、親水性多孔化剤の種類、添加量にもよるが部分的に親水性多孔化剤抽出後の孔が引き裂かれて細長い細孔がより大きく成長する。この部分的な細孔肥大化は膜全体として見た場合スケールが非常に小さいので、透水性向上には寄与しても分離性能には影響を与えない。140℃を超える温度で延伸した場合、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の融点に近くなるため、球状構造が融解してしまい、あまり細孔が形成されずに延伸されるため、透水性能が向上しない。また、延伸は液体中で行う方が温度制御が容易であり好ましいが、スチームなどの気体中で行っても構わない。液体としては水が簡便で好ましいが、90℃程度以上で延伸する場合には、低分子量のポリエチレングリコールなどを用いることも好ましく採用できる。さらに水とポリエチレングリコールの混合液体等、複数の液体の混合液体中で延伸することも採用できる。
【0027】
これら親水性多孔化剤は冷却浴中で抽出されてもよいが、例えば100℃のグリセリン浴中でポリビニルアルコールを抽出するなど、特別な抽出工程を加えても良く、前述の延伸を行う場合も延伸中、延伸前後に抽出を行っても良い。抽出には親水性多孔化剤に対して溶解性があり、ポリフッ化ビニリデン系樹脂に対して溶解性が低い溶媒、例えば水、高級アルコール、グリコール、グリセリン、ベンゼン、トルエン、上記貧溶媒などの単独或いは混合溶媒を用い、0〜140℃の温度範囲の液温に調整し浸漬することが好ましいが、これに限定されない。また、親水性多孔化剤はポリフッ化ビニリデン系樹脂表面の親水性向上を目的に中空糸中に残留し続けても良い。
【0028】
中空糸膜の外径と膜厚は、膜の強度を損なわない範囲で、中空糸膜内部長手方向の圧力損失を考慮し、膜モジュールとして透水量が目標値になるように決めればよい。即ち、外径が、太ければ圧力損失の点で有利になるが、充填本数が減り、膜面積の点で不利になる。一方、外径が細い場合は充填本数を増やせるので膜面積の点で有利になるが、圧力損失の点で不利になる。また、膜厚は強度を損なわない範囲で薄い方が好ましい。従って、おおよその目安を示すならば、中空糸膜の外径は、おおよそ好ましくは0.3〜3mm、より好ましくは0.4〜2.5mm、更に好ましくは、0.5〜2mmである。また、膜厚は、好ましくは外径の0.08〜0.4倍、より好ましくは0.1〜0.35倍、更に好ましくは0.12〜0.3倍である。
【0029】
さらに上記製造方法で製造された中空糸膜は、中空糸膜モジュールとして用いることができる。モジュールとは、中空糸膜を複数本束ねて円筒状の容器に納め、両端または片端をポリウレタンやエポキシ樹脂等で固定し、透過水を集水できるようにしたものや、平板状に中空糸膜の両端を固定して透過水を集水できるようにしたもののことである。この中空糸膜モジュールの原水側にポンプや水位差などの加圧手段を設けたり、透過水側にポンプまたはサイフォン等による吸引手段を設けたりすることにより、原水の膜ろ過を行う水の分離装置として用いることができる。この水の分離装置を用いて、原水から、精製された透過水を製造することができる。原水とは、河川水、湖沼水、地下水、海水、下水、排水およびこれらの処理水等である。
【0030】
以下に具体的実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0031】
【実施例】
以下実施例の透水性能は、逆浸透膜処理水を25℃で1.5mの水位差を駆動力に小型モジュール(長さ約20cm、中空糸膜の本数1〜10本程度)に送液し、一定時間の透過水量を測定して得た値を、100kPa当たりに換算して算出した。但し、透水性能は、ポンプ等で一定の圧力に加圧して得た値を100kPa当たりに換算して求めてもよい。水温についても、25℃以外で測定し、評価液体の粘性から25℃での値に換算してもよい。破断強伸度は、引張試験機を用いて、試験長50mmでフルスケール2000gの加重をクロスヘッドスピード50mm/分で測定し、求めた。空孔率は中空糸膜壁容積中の空孔容積の割合で、湿潤状態と乾燥状態の中空糸重量から換算して求めた。
【0032】
実施例1
分子量28.4万のフッ化ビニリデンホモポリマーと分子量4,000ポリエチレングリコール、イソホロンを、それぞれ55重量%と、5重量%、40重量%の割合で混合し、160℃の温度で溶解して、ポリマー溶液を調製した。このポリマー溶液を、100%イソホロンを中空部形成用液体として中空部に随伴させながら、160℃の口金から中空糸状に吐出し、温度30℃のイソホロン90重量%水溶液からなる冷却液体を有する冷却浴中で固化した後、90℃水中で2.0倍に延伸した。得られた中空糸膜は、外径1.55mm、内径0.95mm、透水性能は2.7m3/(m2・hr)(差圧100kPa、25℃の条件)で、破断強力が730g/本、破断伸度が53%であった。
【0033】
実施例2
分子量41.7万のフッ化ビニリデンホモポリマーと分子量21,000のポリビニルアルコール、γ−ブチロラクトンを、それぞれ40重量%と10重量%50重量%の割合で混合し、140℃の温度で溶解した。このポリマー溶液を、100%γ−ブチロラクトンを中空部形成用液体として中空部に随伴させながら、110℃の口金から中空糸状に吐出し、温度25℃のシクロヘキサノン85重量%水溶液からなる冷却液体を有する冷却浴中で固化した後、80℃熱水中でポリビニルアルコールを抽出し、110℃のポリエチレングリコール(分子量400)中で2倍に延伸した。得られた中空糸膜は、外径1.45mm、内径0.95mm、透水性能は2.8m3/(m2・hr)(差圧100kPa、25℃の条件)で、破断強力が1130g/本、破断伸度が52%、空孔率70%であった。
構造は、粒径1μm程度の球状構造が連結した構造になっていた。
【0034】
比較例1
分子量41.7万のフッ化ビニリデンホモポリマーとγ−ブチロラクトンを、それぞれ40重量%、60重量%の割合で混合し、140℃の温度で溶解した。このポリマー溶液を、100%γ−ブチロラクトンを中空部形成用液体として中空部に随伴させながら、110℃の口金から中空糸状に吐出し、温度25℃のシクロヘキサノン85重量%水溶液からなる冷却液体を有する冷却浴中で固化した後、110℃のポリエチレングリコール(分子量400)中で2倍に延伸した。得られた中空糸膜は、外径1.42mm、内径0.95mm、透水性能は1.5m3/(m2・hr)(差圧100kPa、25℃の条件)で、破断強力が1130g/本、破断伸度が52%、空孔率65%であった。構造は、粒径1μm程度の球状構造が連結した構造になっていたが、球状構造間の隙間の比率が実施例2に比べ小さくなっていた。
【0035】
比較例2
分子量41.7万のフッ化ビニリデンホモポリマーと、分子量21,000のポリビニルアルコール、γ−ブチロラクトンを、それぞれ40重量%、0.5重量%、59.5重量%の割合で混合し、120℃の温度で溶解した。このポリマー溶液を100%γ−ブチロラクトンを中空部形成用液体として中空部に随伴させながら120℃の口金から中空糸状に吐出し、温度25℃のシクロヘキサノン85重量%水溶液からなる冷却液体を有する冷却浴中で固化した後、110℃のポリエチレングリコール(分子量400)中で2倍に延伸した。得られた中空糸膜は、外径1.44mm、内径0.96mm、透水性能は1.6m3/(m2・hr)(差圧100kPa、25℃の条件)で、破断強力が1050g/本、破断伸度が51%、空孔率51%であった。
【0036】
実施例3
分子量35.8万のフッ化ビニリデンホモポリマーと分子量35,000のポリビニルピロリドン、シクロヘキサノンを、それぞれ40重量%と10重量%、50重量%の割合で混合し、130℃の温度で溶解した。このポリマー溶液を、100%シクロヘキサノンを中空部形成用液体として中空部に随伴させながら、130℃の口金から中空糸状に吐出し、温度20℃のシクロヘキサノン80重量%水溶液からなる冷却液体を有する冷却浴中で固化した後、85℃水中で3.0倍に延伸した。得られた中空糸膜は、外径1.02mm、内径0.65mm、透水性能は3.8m3/(m2・hr)(差圧100kPa、25℃の条件)で、破断強力が880g/本、破断伸度が44%であった。
【0037】
比較例3
分子量41.7万のフッ化ビニリデンホモポリマーとテトラエチレングリコール、シクロヘキサノンを、それぞれ20重量%と30重量%、50重量%の割合で混合し、100℃の温度で溶解した。このポリマー溶液を、95重量%のシクロヘキサノン水溶液を中空部形成用液体として中空部に随伴させながら、100℃の口金から中空糸状に吐出し、温度10℃のシクロヘキサノン80重量%水溶液からなる冷却液体を有する冷却浴中で固化した後、85℃水中で3.5倍に延伸した。得られた中空糸膜は、外径1.10mm、内径0.73mm、透水性能は5.2m3/(m2・hr)(差圧100kPa、25℃の条件)で、破断強力が600g/本、破断伸度が30%であった。
【0038】
実施例4
分子量57.2万のフッ化ビニリデンホモポリマーとポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(Tween80)、シクロヘキサノンを、それぞれ35重量%と1重量%、64重量%の割合で混合し、155℃の温度で溶解した。このポリマー溶液を、100%シクロヘキサノンを中空部形成用液体として中空部に随伴させながら、155℃の口金から中空糸状に吐出し、温度15℃のシクロヘキサノン80重量%水溶液からなる冷却液体を有する冷却浴中で固化した後、85℃水中で4.0倍に延伸した。得られた中空糸膜は、外径1.38mm、内径0.86mm、透水性能は2.5m3/(m2・hr)(差圧100kPa、25℃の条件)で、破断強力が1420g/本、破断伸度が47%であった。
【0039】
実施例5
分子量35.8万のフッ化ビニリデンホモポリマーおよび四フッ化エチレンとフッ化ビニリデンの共重合体およびグリセリン、シクロヘキサノンを、それぞれ30重量%、10重量%、2重量%、58重量%の割合で混合し、165℃の温度で溶解した。このポリマー溶液を、100%シクロヘキサノンを中空部形成用液体として中空部に随伴させながら、160℃の口金から中空糸状に吐出し、温度30℃のシクロヘキサノン90重量%水溶液からなる冷却液体を有する冷却浴中で固化した後、80℃水中で1.5倍に延伸した。得られた中空糸膜は、外径1.52mm、内径0.90mm、透水性能は1.5m3/(m2・hr)(差圧100kPa、25℃の条件)で、破断強力が1600g/本、破断伸度が58%であった。
【0040】
比較例4
分子量41.7万のフッ化ビニリデンホモポリマーと分子量21,000のポリビニルアルコール、γ−ブチロラクトンを、それぞれ20重量%と32重量%、48重量%の割合で混合し、170℃の温度で12時間攪拌したが、均一に溶解しなかった。
【0041】
比較例5
分子量41.7万のフッ化ビニリデンホモポリマーと分子量400のポリエチレングリコール、シクロヘキサノンを、それぞれ18重量%と5重量%、77重量%の割合で混合し、90℃の温度で溶解した。このポリマー溶液を、90重量%のシクロヘキサノン水溶液を中空部形成用液体として中空部に随伴させながら、90℃の口金から中空糸状に吐出したところ、ポリマー溶液の粘性が低すぎて中空糸状に成型できなかった。
【0042】
比較例6
分子量41.7万のフッ化ビニリデンホモポリマーと分子量400のポリエチレングリコール、シクロヘキサノンを、それぞれ61重量%と1重量%、38重量%の割合で混合し、165℃の温度で溶解した。このポリマー溶液を、100%のシクロヘキサノンを中空部形成用液体として中空部に随伴させながら、165℃の口金から中空糸状に吐出したところ、ポリマー溶液の粘性が高すぎて中空糸状に成型できなかった。
【0044】
比較例7
分子量28.4万のフッ化ビニリデンホモポリマーと分子量21,000のポリビニルアルコール、シクロヘキサノンを、それぞれ20重量%と10重量%、80重量%の割合で混合し、150℃の温度で溶解した。口金温度78℃で紡糸しようとしたが、紡糸機のホッパー中でゲル化してしまい、紡糸できなかった。
【0048】
実施例6
分子量28.4万のフッ化ビニリデンホモポリマーと分子量2,1000のポリビニルアルコール、γ−ブチロラクトンを、それぞれ45重量%と10重量%、45重量%の割合で混合し、155℃の温度で溶解した。このポリマー溶液を、100%γ−ブチロラクトンを中空部形成用液体として中空部に随伴させながら、155℃の口金から中空糸状に吐出し、温度30℃のγ−ブチロラクトン80重量%水溶液からなる冷却液体を有する冷却浴中で固化した後、88℃水中で1.8倍に延伸した。延伸後100℃ポリエチレングリコール浴中に浸漬し水置換した。得られた中空糸膜は、外径1.36mm、内径1.03mm、透水性能は2.8m3/(m2・hr)(差圧100kPa、25℃の条件)で、破断強力が980g/本、破断伸度が50%、空孔率が54%であった。構造は、球状構造中にポリビニルアルコールが抽出された後と思われる空孔があいていた。
【0049】
実施例7
分子量35.8万のフッ化ビニリデンホモポリマーと分子量3,000のポリプロピレングリコール、γ−ブチロラクトンを、それぞれ45重量%と10重量%、45重量%の割合で混合し、140℃の温度で溶解した。このポリマー溶液を、100%γ−ブチロラクトンを中空部形成用液体として中空部に随伴させながら、140℃の口金から中空糸状に吐出し、温度25℃のγ−ブチロラクトン85重量%水溶液からなる冷却液体を有する冷却浴中で固化した後、120℃のポリエチレングリコール(分子量400)中で1.5倍に延伸した。得られた中空糸膜は、外径1.34mm、内径0.83mm、透水性能は4.0m3/(m2・hr)・100kPa,25℃で、破断強力が980g/本、破断伸度が52%であった。
【0050】
実施例8
分子量41.7万のフッ化ビニリデンホモポリマーとポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタモノオレート(Tween80)、γ−ブチロラクトンを、それぞれ40重量%、9重量%、1重量%、50重量%の割合で混合し、130℃の温度で溶解した。このポリマー溶液を、100%γ−ブチロラクトンを中空部形成液体として中空部に随伴させながら、130℃の口金から中空糸状に吐出し、温度20℃のγ−ブチロラクトン80重量%水溶液からなる冷却液体を有する冷却浴中で固化した後、85℃水中で2.0倍に延伸した。得られた中空糸膜は、外径1.35mm、内径0.82mm、透水性能は4.4m3/(m2・hr)(差圧100kPa、25℃の条件)で、破断強力が1420g/本、破断伸度が41%であった。
【0051】
比較例8
分子量41.7万のフッ化ビニリデンホモポリマーと分子量4,000のポリエチレングリコール、γ−ブチロラクトンを、それぞれ25重量%と10重量%、65重量%の割合で混合し、100℃の温度で溶解した。このポリマー溶液を、95重量%のγ−ブチロラクトン水溶液を、中空部形成用液体として中空部に随伴させながら95℃の口金から中空糸状に吐出し、温度10℃のγ−ブチロラクトン80重量%水溶液からなる冷却液体を有する冷却浴中で固化した後、85℃水中で4.0倍に延伸した。得られた中空糸膜は、外径1.08mm、内径0.73mm、透水性能は4.4m3/(m2・hr)(差圧100kPa、25℃の条件)で、破断強力が470g/本、破断伸度が30%であった。
【0053】
比較例9
分子量41.7万のフッ化ビニリデンホモポリマーと分子量3、000のポリプロピレングリコール、γ−ブチロラクトンを、それぞれ18重量%と3重量%、79重量%の割合で混合し、90℃の温度で溶解した。このポリマー溶液を、90重量%のγ−ブチロラクトン水溶液を中空部形成用液体として中空部に随伴させながら、90℃の口金から中空糸状に吐出したところ、ポリマー溶液の粘性が低すぎて中空糸状に成型できなかった。
【0054】
比較例10
分子量41.7万のフッ化ビニリデンホモポリマーと分子量4,000のポリエチレングリコール、γ−ブチロラクトンを、それぞれ65重量%と1重量%、34重量%の割合で混合し、170℃の温度で溶解した。ポリマー溶液の粘性が高すぎて中空糸状に成型できなかった。
【0058】
実施例9
分子量41.7万のフッ化ビニリデンホモポリマーと分子量400のポリエチレングリコール、γ−ブチロラクトンを、それぞれ38重量%と5重量%、57重量%の割合で混合し、140℃の温度で溶解した。このポリマー溶液を、100%γ−ブチロラクトンを中空部形成用液体として中空部に随伴させながら、100℃の口金から中空糸状に吐出し、温度20℃のγ−ブチロラクトン80重量%水溶液からなる冷却液体を有する冷却浴中で固化した後、85℃水中で1.3倍に延伸した。得られた中空糸膜は、外径1.85mm、内径1.15mm、透水性能は1.6m3/(m2・hr)(差圧100kPa、25℃の条件)で、破断強力が1310g/本、破断伸度が54%であった。
【0059】
実施例10
実施例9における冷却浴の冷却液体を温度20℃のγーブチロラクトン80重量%、分子量400のポリエチレングリコール5重量%溶解した水溶液に変更したところ、得られた中空糸膜は、外径1.86mm、内径1.15mm、透水性能は1.8m3/(m2・hr)(差圧100kPa,25℃の条件)で、破断強力が1180g/本、破断伸度が54%であった。また、そのうえ中空部形成用液体を95重量%γーブチロラクトン、5重量%分子量400のポリエチレングリコール混合液に変更したところ、得られた中空糸膜は、外径1.86mm、内径1.15mm、透水性能は1.9m3/(m2・hr)(差圧100kPa,25℃の条件)で、破断強力が1160g/本、破断伸度が53%であった。
【0062】
実施例11
分子量41.7万のフッ化ビニリデンホモポリマーと分子量20,000のポリエチレングリコール、イソホロンを、それぞれ40重量%と10重量%、50重量%の割合で混合し、155℃の温度で溶解した。このポリマー溶液を、100%のイソホロンを中空部形成用液体として中空部に随伴させながら、155℃の口金から中空糸状に吐出し、温度30℃のイソホロン80重量%水溶液からなる冷却液体を有する冷却浴中で固化した後、85℃水中で2.0倍に延伸した。得られた中空糸膜は、外径1.60mm、内径1.00mm、透水性能は2.9m3/(m2・hr)(差圧100kPa、25℃の条件)で、破断強力が970g/本、破断伸度が52%であった。
【0063】
実施例12
分子量41.7万のフッ化ビニリデンホモポリマーと分子量20,000のポリエチレングリコール、フタル酸ジメチルを、それぞれ40重量%と5重量%、55重量%の割合で混合し、165℃の温度で溶解した。このポリマー溶液を、フタル酸ジメチル70重量%とポリエチレングリコール(分子量400)30重量%とからなる溶液を中空部形成用液体として中空部に随伴させながら、165℃の口金から中空糸状に吐出し、フタル酸ジメチル60重量%とポリエチレングリコール(分子量400)40重量%とからなる温度40℃の冷却液体を有する冷却浴中で固化した後、120℃エチレングリコール(分子量400)中で2.0倍に延伸した。得られた中空糸膜は、外径1.35mm、内径0.75mm、透水性能は2.0m3/(m2・hr)(差圧100kPa、25℃の条件)で、破断強力が1250g/本、破断伸度が31%であった。
【0064】
実施例13
分子量41.7万のフッ化ビニリデンホモポリマーと分子量3,000のポリエチレングリコール、γーブチロラクトンを、それぞれ38重量%と5重量%、57重量%の割合で混合し、120℃の温度で溶解した。このポリマー溶液を、100重量%のγーブチロラクトンを中空部形成液体として中空部に随伴させながら、120℃の口金から中空糸状に吐出し、温度0℃のγーブチロラクトン80重量%水溶液からなる冷却液体を有する冷却浴中で固化した後、水洗した。得られた中空糸膜は、外径1.32mm、内径0.86mm、透水性能は1.6m3/(m2・hr)(差圧100kPa、25℃の条件)で、破断強力が1620g/本、破断伸度が68%であった。
【0065】
【発明の効果】
本発明では、耐薬品性が高いポリフッ化ビニリデン系樹脂を用いて、高強度で高透水性能を有する中空糸膜を、低コストで製造することが可能になる中空糸膜の製造方法が提供される。
Claims (8)
- 少なくとも30〜50重量%のポリフッ化ビニリデン系樹脂、1〜30重量%の親水性多孔化剤、および該樹脂の貧溶媒を含有し、紡糸温度が80〜175℃の範囲であるポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液を冷却浴に吐出し凝固させる中空糸膜の製造方法であって、該冷却浴の冷却液体は、温度が0〜50℃の範囲内であり、かつ、該冷却液体は濃度が60〜100重量%の範囲で貧溶媒を含有する液体であることを特徴とする中空糸膜の製造方法。
- 中空糸膜の中空部の形成に用いる中空部形成用液体として、濃度が60〜100重量%の範囲で貧溶媒を含有する液体を用いる請求項1に記載の中空糸膜の製造方法。
- 前記冷却液体は、さらに、親水性多孔化剤を含有してなり、該冷却液体中における該親水性多孔化剤の濃度が1〜40重量%の範囲である請求項1または2に記載の中空糸膜の製造方法。
- 前記中空糸膜の中空部の形成に用いる中空部形成用液体は、さらに、親水性多孔化剤を含有してなり、該冷却液体中における該親水性多孔化剤の濃度が1〜40重量%の範囲である請求項2または3に記載の中空糸膜の製造方法。
- 凝固された該中空糸膜を50〜140℃の温度の範囲で1.1〜5倍の範囲に延伸するものである請求項1〜4のいずれかに記載の中空糸膜の製造方法。
- 該親水性多孔化剤を抽出する工程を含む請求項1〜5のいずれかに記載の中空糸膜の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法で製造された中空糸膜を有する中空糸膜モジュール。
- 請求項7に記載の中空糸膜モジュールを具備する水の分離装置。
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