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JP3712550B2 - チェーンテンショナ - Google Patents

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JP3712550B2
JP3712550B2 JP00011799A JP11799A JP3712550B2 JP 3712550 B2 JP3712550 B2 JP 3712550B2 JP 00011799 A JP00011799 A JP 00011799A JP 11799 A JP11799 A JP 11799A JP 3712550 B2 JP3712550 B2 JP 3712550B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、カム軸駆動用チェーンの張力を一定に保持するチェーンテンショナに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
カム軸駆動用のチェーンの張力を一定に保つチェーンテンショナとして、図5に示したものが知られている。このチェーンテンショナはハウジング40に形成されたシリンダ室41内にプランジャ42と、スプリング43とを組み込み、上記スプリング43によって突出性が付与されたプランジャ42によりチェーン44を押圧するようにしている。
【0003】
また、プランジャ42の背部に形成された圧力室45に給油通路46を連通し、その給油通路46にチェックバルブ47を設け、上記プランジャ42が外方向に移動して圧力室45の圧力が低下したとき、チェックバルブ47を開放させ、給油ポンプの駆動により給油通路46から圧力室45に油を流動させるようにしている。
【0004】
ところで、カム軸駆動用のチェーンにおいては、エンジンを停止すると、カム軸に設けられたカムの停止位置の関係から、チェーン44が緊張状態に保持されることがある。この場合、上記チェーンテンショナのプランジャ42は緊張状態のチェーン44により押し込まれるため、圧力室45の油はプランジャ42とシリンダ室41の摺動面からリークし、プランジャ42は後退して、チェーン44の弾力とスプリング43の張力とが釣り合う位置に保持される。
【0005】
このため、エンジンの再始動によりチェーン44に弛みが生じると、プランジャ42は外方向に大きく移動する。このとき、油圧ポンプは始動直後であって吐出量が少ないため、圧力室45に充分な油を供給することができず、圧力室45に空気が侵入してダンピング特性が低下し、異音が発生することがある。
【0006】
また、低温始動時には、油の粘度が高く、流動性が悪いため、上記と同様の問題が生じる。
【0007】
上記のような問題点を解決するため、前記プランジャにその後端面で開口するロッド挿入孔を形成し、このロッド挿入孔の開口部内周に設けられた雌ねじにスクリューロッドの外周に形成された雄ねじをねじ係合し、その雄ねじと雌ねじのねじ山を鋸歯状とすると共に、プランジャとスクリューロッドの対向部間にスプリングを組込んで両部材を相反する方向に押圧したチェーンテンショナを本件出願人は既に提案している(特願平9−71947号明細書)。
【0008】
上記チェーンテンショナにおいては、エンジンが停止し、カムの停止位置の関係によりチェーンが緊張してプランジャに押し込み力が作用したとき、その押し込み力を鋸歯状ねじ山の圧力側フランクにより受けてプランジャが後退動するのを防止している。このため、エンジンが再始動されて弛みが生じても、その弛み量は小さいため、プランジャは外方向に大きく移動せず、圧力室に空気が侵入するのを防止することができるという特徴を有している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、既に提案したチェーンテンショナにおいては、チェーンを取外すエンジン回りのメンテナンス時に、スプリングの弾力によりプランジャがシリンダ室から飛び出し、スクリューロッド、スプリング等の部品が分解状態となり、再組立て時に部品の組込みを忘れたり、組付けの間違いが生じたりするおそれがあり、チェーンテンショナを正確に再組立てするうえにおいて改善すべき点が残されている。
【0010】
この発明の課題は、チェーンを取外すようなエンジン回りのメンテナンス時において、既に提案したチェーンテンショナの構成部品がバラバラに分解されるのを防止することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、この発明においては、ハウジングに、シリンダ室と、そのシリンダ室の閉塞端部において開口する給油通路とを設け、上記シリンダ室内にチェーン押圧用のプランジャをスライド自在に挿入し、そのプランジャに後端面から軸方向に延びるロッド挿入孔を設け、このロッド挿入孔の後端部内周に形成された雌ねじにスクリューロッドをねじ係合し、そのスクリューロッドとプランジャとの間に両部材を相反する方向に押圧するスプリングを組込み、前記スクリューロッドの前記ロッド挿入孔内に位置する先端部外周に環状溝を形成し、この環状溝に前記雌ねじの内端面に対する係合によってプランジャとスクリューロッドの分離を防止する止め輪を取付けた構成を採用している。
【0012】
上記のように、スクリューロッドの先端部外周に形成された環状溝に雌ねじの内端面と係合可能な止め輪を取付けることにより、チェーンを取外すエンジン周りのメンテナンス時に、スプリングの押圧によってプランジャが外方向に移動しても、止め輪に対する雌ねじの内端面の係合によりプランジャがスクリューロッドから分離して外部に飛び出すのを防止することができる。このため、シリンダ室内に組込まれた部品が外部に飛び出してバラバラに分解するのを防止することができる。
【0013】
ここで、前記給油通路の油出口とスクリューロッドとの間に、シリンダ室内の油が給油通路側に逆流するのを防止するチェックバルブを設けておくと、運転中のプランジャの後退時に圧力室の圧力が上昇し、油圧によりチェーンから作用する力を支持することができる。
【0014】
また、環状溝に取付ける止め輪の外形をコーナ部に丸みある略三角形等の多角形としておくと、プランジャの雌ねじに対するスクリューロッドのねじ込み時、スクリューロッドを軸方向に押し込みつつねじ込むことによって、止め輪のコーナ部が雌ねじの外端面との接触により内方向に押圧されて止め輪が縮径するため、雌ねじに対してスクリューロッドを簡単にねじ込むことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図1乃至図4に基づいて説明する。
【0016】
図1に示すように、クランクシャフト1の端部に取付けられたスプロケット2とカムシャフト3の端部に取付けられたスプロケット4間にチェーン5がかけ渡され、そのチェーン5の弛み側チェーン5aにスリッパ6が接触されている。スリッパ6は軸7を中心として揺動自在に支持されている。このスリッパ6はチェーンテンショナ10により押圧され、その押圧によってチェーン5は一定の張力に保持される。
【0017】
図2乃至図4はチェーンテンショナ10の詳細を示す。このチェーンテンショナは、エンジンブロックにねじ止めされるハウジング11を有する。
【0018】
ハウジング11にはシリンダ室12と、そのシリンダ室12の閉塞端において開口する給油通路13とが設けられている。
【0019】
シリンダ室12にはプランジャ14がスライド自在に挿入されている。プランジャ14には後端面から軸方向に延びるロッド挿入孔15が形成され、そのロッド挿入孔15の開口部内周に設けられた雌ねじ16にスクリューロッド17の外周に形成された雄ねじ18がねじ係合されている。
【0020】
スクリューロッド17には、先端から軸方向に延びるスプリング収納孔19と、後端からそのスプリング収納孔19に貫通する連通孔20とが形成され、上記スプリング収納孔19とロッド挿入孔15の閉塞端間にスプリング21と、スプリングシート22とが組込まれている。スプリングシート22は、浸炭焼入れされ、先端に形成された球形表面23がロッド挿入孔15の閉塞端と点接触している。
【0021】
プランジャ14に形成された前記雌ねじ16とスクリューロッド17に設けられた雄ねじ18のねじ山は、プランジャ14が軸方向に押された際の押し込み力を受ける圧力側フランク24のフランク角が遊び側フランク25のフランク角より大きい鋸歯状とされている。その鋸歯状ねじ山にスプリング21の押圧によってスクリューロッド17が回転しつつシリンダ室12の閉塞端に向けて移動するリード角が設けられている。
【0022】
前記シリンダ室12の閉塞端部にはシリンダ室12内の油が給油通路13内に逆流するのを防止するチェックバルブ26が組込まれている。
【0023】
チェックバルブ26は、シリンダ室12内に圧入されたロッドシート27に給油通路13とシリンダ室12とを連通する通路28を設け、その通路28内に球形の弁体29と、その弁体29の開閉量を制限するリテーナ30とを組み込んでいる。
【0024】
前記スクリューロッド17のプランジャ14内に位置する先端部外周には環状溝31が形成され、その環状溝31に一部が切り離された縮径可能な止め輪32が取付けられている。
【0025】
止め輪32は線材の折曲げから成り、その外形は略三角形とされてコーナ部に丸み33を有し、各丸み33を通る外接円径は雌ねじ16の内径より大きく、上記止め輪32と雌ねじ16の内端面の係合によって、プランジャ14の外方向への突出量が制限され、プランジャ14とスクリューロッド17とが分離するのが防止される。
【0026】
また、止め輪32をコーナ部に丸み33を有する略三角形とすると、プランジャ14に形成されたロッド挿入孔15の開口内にスクリューロッド17の先端部を挿入し、そのスクリューロッド17を押し込みつつ回転させることによって、止め輪32のコーナ部は雌ねじ16の外端面に対する当接により内方向に押圧されるため、止め輪32は縮径し、雌ねじ16に対してスクリューロッド17を簡単にねじ係合することができる。
【0027】
なお、止め輪32は略三角形のものに限定されず、四角形や五角形等の多角形の形状を採ることができる。
【0028】
上記の構成から成るチェーンテンショナは、プランジャ14をシリンダ室12内に押し込み、ハウジング11の先端部に設けたピン挿入孔34からプランジャ14の先端部外周に形成された係合溝35にセットピン(図示省略)を挿入してプランジャ14を押し込み状態に保持し、その保持状態でエンジンブロックに対する取付けを行なう。そして、取付け後、セットピンを引き抜き、スプリング21の弾力によりプランジャ14を突出させて、図1に示すようにチェーン5aを押圧する。
【0029】
上記のようなチェーンテンショナの取付け状態において、エンジンを始動し、クランクシャフト1の端部に取付けたスプロケット2の矢印方向の回転によってチェーン5の弛み側チェーン5aに弛みが生じると、給油通路13から通路28に送り込まれる油の圧力によってプランジャ14およびスクリューロッド17が外方向に移動し、その移動によってスクリューロッド17がロッドシート27から離れ、シリンダ室12内に油が供給される。
【0030】
また、プランジャ14の外方向への移動によって、そのプランジャ14はスリッパ6を押圧するため、チェーン5の弛みは吸収されると共に、スプリング21の弾力により、スクリューロッド17は回転しつつシリンダ室12の閉塞端に向けて移動してロッドシート27に当接し、プランジャ14とスクリューロッド17の停止によってチェーン5は所定の弾力に保持される。
【0031】
エンジンが温度上昇し、熱膨張によりクランクシャフト1とカムシャフト3の心間距離が大きくなり、チェーン5の張力増大によってプランジャ14が押圧されると、その押圧力はシリンダ室12内に封入された油によって受けられると共に、雌ねじ16と雄ねじ18の圧力側フランク24によって受けられ、プランジャ14は後退しない。プランジャ14を押圧するチェーンからの変動荷重の最小値がスプリング21の弾力と油圧力の合力より強くなると、スクリューロッド17が回転し、プランジャ14が後退する。
【0032】
このとき、シリンダ室12内の油は、シリンダ室12とプランジャ14の摺動面間からリークし、プランジャ14は、押圧力とスプリング21の弾力と供給油圧力との合力とが釣り合う位置までゆっくりと後退動する。
【0033】
エンジンを停止すると、カムシャフト3に設けられたカムの停止位置の関係からチェーン5の弛み側チェーン5aが緊張する場合がある。この場合は、プランジャ14はチェーン5によって押圧され、その押圧力は雌ねじ16と雄ねじ18のねじ係合部における圧力側フランク24により受けられる。
【0034】
ここで、上記押圧力は振動を伴わない静的な荷重であるため、上記押圧力がスプリング21の弾力より大きい場合でもスクリューロッド17は回転せず、プランジャ14は後退しない。
【0035】
このため、エンジンが再始動されてチェーン5の弛み側チェーン5aに弛みが生じても、その弛み量はきわめて小さく、プランジャ14の突出量も小さい。したがって、シリンダ室12における圧力低下も少ないため、シリンダ室12に空気が侵入することもない。
【0036】
なお、エンジンの低温始動時、ポンプから給油通路13に送られる油の粘度が高く、シリンダ室12への油の流入が悪いが、この場合でも、プランジャ14の外方向への移動量が少ないため、シリンダ室12内に空気が侵入するのを防止することができる。
【0037】
図2に示すようなチェーンテンショナ10の使用状態において、プランジャ14はスプリング21により常に外方向に向けて押圧されているため、エンジン回りのメテンナンスのため、チェーン15が取り外しされると、プランジャ14は外方向に突出し、雌ねじ16の内端面が止め輪32と対向する位置までプランジャ14が移動すると、上記止め輪32に対する雌ねじ16の内端面の係合によってプランジャ14が抜け止めされる。
【0038】
このため、スクリューロッド17やスプリング21等の部品がバラバラに分解されることはなく、再組立ての必要がないため、部品の組込み忘れや誤った組込みを未然に防止することができる。
【0039】
なお、止め輪32と雌ねじ16内端面の係合によるプランジャの抜け止め構造は、ねじを用いた油圧式のオートテンショナにも適用することができる。
【0040】
【発明の効果】
以上のように、この発明においては、チェーンを取外すと、プランジャはスプリングの弾性力によって外方向に移動するが、所定量移動すると止め輪に雌ねじの内端面が係合してプランジャは抜け止めされるため、シリンダ室内に組込まれたスクリューロッドやスプリング等の部品がバラバラに分解するのを防止することができる。
【0041】
このため、再組立ての必要がなく、部品の組み忘れや誤った組込みを未然に防止することができる。
【0042】
また、止め輪の外形をコーナ部に丸みのある略三角形等の多角形とすると、スクリューロッドを押し込みつつ回転させると、止め輪が雌ねじ端面に対する当接により縮径してプランジャの雌ねじにスクリューロッドがねじ係合するため、雌ねじに対してスクリューロッドを簡単にねじ係合することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係るチェーンテンショナの使用状態を示す正面図
【図2】同上チェーンテンショナの縦断正面図
【図3】同上チェーンテンショナのプランジャの抜け止め状態を示す縦断正面図
【図4】図3のIV−IV線に沿った断面図
【図5】従来のチェーンテンショナを示す断面図
【符号の説明】
11 ハウジング
12 シリンダ室
13 給油通路
14 プランジャ
15 ロッド挿入孔
16 雌ねじ
17 スクリューロッド
18 雄ねじ
21 スプリング
31 環状溝
32 止め輪
33 丸み

Claims (4)

  1. ハウジングに、シリンダ室と、そのシリンダ室の閉塞端部において開口する給油通路とを設け、上記シリンダ室内にチェーン押圧用のプランジャをスライド自在に挿入し、そのプランジャに後端面から軸方向に延びるロッド挿入孔を設け、このロッド挿入孔の後端部内周に形成された雌ねじにスクリューロッドをねじ係合し、そのスクリューロッドとプランジャとの間に両部材を相反する方向に押圧するスプリングを組込み、前記スクリューロッドの前記ロッド挿入孔内に位置する先端部外周に環状溝を形成し、この環状溝に前記雌ねじの内端面に対する係合によってプランジャとスクリューロッドの分離を防止する止め輪を取付けたチェーンテンショナ。
  2. 前記給油通路の油出口とスクリューロッドとの間に、シリンダ室内の油が給油通路側に逆流するのを防止するチェックバルブを設けた請求項1に記載のチェーンテンショナ。
  3. 前記止め輪の外形がコーナ部に丸みのある多角形とされた請求項1又は2に記載のチェーンテンショナ。
  4. 前記止め輪の外形がコーナ部に丸みのある略三角形とされた請求項1乃至3のいずれかに記載のチェーンテンショナ。
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