JP3711196B2 - スパッタリングターゲット用チタンの製造方法およびその製造に用いるチタンスラブ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高純度チタンターゲット材に用いる高純度チタン展伸材の原素材(スラブ)、並びに原素材および展伸材の製造方法に関するものである。特に半導体デバイス製造用および液晶等の表示素子製造用の高純度チタンスパッタリングターゲット材に用いる均一なマクロ模様を有する高純度チタン展伸材(熱延厚板)の製造方法並びに該展伸材用のスラブに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
VLSIや液晶等の表示素子の急激な高集積化に伴い、ゲート電極材、拡散バリア材料、配線材等として高融点・低抵抗の金属である高純度チタンの実用化が進められている。これら電子材料としてのチタンは主としてスパッタリング用ターゲット材として供給される。このために、ターゲット用の高純度チタン材の需要が急増している。
【0003】
従って、これらの材料に使用する材料中の純度は非常に重要である。例えば、Fe,Ni,Cu等の不純物金属元素は半導体素子のリーク電流増大を惹起し、U,Th等の放射性元素はソフトエラーの原因となることから、厳しく制限されており、上記の用途に使用する材料は高純度のものが要求されている。
【0004】
また、これら高純度チタン材は、通常次のような工程で製造される。先ず、原料となる高純度の素材は、Mg還元法(クロール法)による高純度スポンジ、沃化物法あるいは溶融塩電解精製法で得られた高純度析出物を、真空アーク溶解炉(VAR)あるいは電子ビーム溶解炉(EBR)で溶解して蒸気圧の高いアルカリ金属類を蒸散除去したのちインゴットとする。このインゴットを使用形状に合わせて熱間加工を施し、ビレット、棒材、板材、線材等に加工する方法(特開昭63−212061号公報)、およびインゴットを鍛造加工および圧延加工して形状を整える方法(特開平8−232061号公報,特開平5−255843号公報)が知られている。さらに、加工中のコンタミネーションを防止するため、室温近傍の温度における冷間加工によって所定の形状に加工する方法(特開平3−130339号公報)、また、上述の高純度析出物を圧縮容器に封入した後、HIP(熱間静水圧加工装置)で加熱・加工して直接所望の形状を得る方法もある(特開平8−277427号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の方法は主として、高純度の原料をその純度を損ねずにターゲット材料として望ましい形状に近いまで成形することにその技術的主眼が置かれてきた。一方、技術革新の激しいVLSI分野では、ターゲット材料に対する要求品質水準が高くなる一方であり、それらに十分に応えられない事態も発生している。このような事態の発生には、例えば、圧延加工組織の残存、粗大結晶粒の混在、不均一な結晶粒径分布、好ましくない集合組織の存在、集合組織のバラツキ等が影響していると考えられるが、十分な検討は行われておらず、必ずしも需要家の要求に応えられないのが現状である。
【0006】
高純度チタン材料を製造するための原素材(すなわち、溶解して製造したインゴットや粗加工を施したスラブやビレットなど)を、さらに鍛造、圧延、熱処理等を行って展伸材にする場合、原素材からの加工工程を経て引き継いできた模様が存在するのが普通である。この模様(以下、「マクロ模様」と呼ぶ)の存在は、光学顕微鏡下での高倍率の観察では看過されることも多く、従来は十分には把握されていなかった。
【0007】
ここで、マクロ組織とマクロ模様の差異について述べる。通常、金属組織学でいうマクロ組織は鋳造組織や加工組織の現出に使用されるもので、適当な金属組織現出用酸液(例えば、硝弗酸)を用いてエッチングすることで得られる。鋳造組織や加工組織の場合、酸液の腐食作用を受けて、加工歪が集中するメタルフロー部、格子欠陥密度の高い結晶粒界、結晶粒の内部におけるコロニーと呼ばれる結晶方位がほぼ揃った領域の間の境界などが優先的に侵食されて、模様として肉眼で認識される。
【0008】
一方、マクロ模様とは原素材、すなわちインゴット若しくはそれを途中まで加工した材料中に存在する比較的粗大な結晶粒およびそれに含まれていたコロニーが、展伸加工途中の塑性変形と熱履歴を受けて、形状、大きさ、それらの分布を変化させた名残として、展伸材(本発明の場合は熱延厚板製品)をマクロエッチングすると痕跡程度の模様として存在するものを指す。マクロ模様の内部には通常の光学顕微鏡で観察されるミクロ組織を含んでいるものの、マクロ模様の境界が、上述のマクロ組織におけるような明瞭な金属組織的特徴との対応が困難な場合が多い。
【0009】
ミクロ組織の大部分は、その先祖であるマクロ組織の結晶学的な配向性を継承しているので、限られた狭い領域で観察した場合、一見ミクロ組織が均一に見えても、実際は個々のマクロ模様の内部においてミクロ組織が均一になっているだけという恐れが存在する。
【0010】
発明者らは、このマクロ模様が不均一であるとスパッタリング法により生成した膜厚の不均一性や配向性の不均一性を惹起させるとの認識から検討を行い、熱延厚板製品のマクロ模様の程度(均一性)と原素材のインゴット若しくはそれを途中まで加工した材料中に存在するマクロ組織との関連を詳細に検討することにより、本発明を成すに至ったものである。
【0011】
このようなマクロ模様が不均一に存在している熱延製品から製造したターゲット材を用いてスパッタリングすると、スパッタ粒子の放出方位分布、放出速度分布、放出エネルギー分布がマクロ模様の持つ結晶学的配向性に左右され、基盤に付着するスピードに差が出てきて、付着膜厚の不均一性や配向性の不均一性の原因となる。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、高純度チタン展伸材のマクロ模様の不均一性の原因を、原素材、すなわち分塊鍛造・分塊圧延スラブに含まれているいわゆるマクロ組織に起因するものとして捉え、高純度チタンターゲット材を展伸加工して製造する際の原素材中に存在するマクロ組織を均一化する試験を行った結果得られたものである。すなわち、分塊鍛造・分塊圧延スラブのマクロ組織不均一性、熱延条件および高純度ターゲット素材としての厚板製品のマクロ模様不均一性の関係を詳細に調査した。
【0013】
このような調査の結果成し得た本発明は、高純度チタン展伸材の製造工程の中で、特に、原素材の製造工程、例えば、インゴットの分塊鍛造・分塊圧延工程に着目して分塊鍛造・分塊圧延工程における再結晶分率を全板厚に亘って制御した原素材を製造し、それ以降の加工工程を経てターゲット素材として使用される厚板に至るまでに引き継いできたマクロ模様が均一であることを可能とする高純度ターゲット材の原素材を提供するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は、基本的には以下の製造工程を前提として構築されたものである。通常、高純度チタン展伸材の製造工程は、真空アーク溶解炉(VAR)や電子ビーム再溶解炉(EBR)において高純度原料を溶解後、金属状態の円柱状インゴットまたは矩形断面インゴットに鋳造される。以下、これらを「VARインゴット」および「EBRインゴット」と呼ぶ。
【0015】
VARインゴットは、その形状のため直接厚板圧延の素材とされることは稀で、鍛造機、大型プレス機あるいは分塊圧延機と呼ばれる専用施設で円柱の形状を扁平な矩形断面状のスラブに成形することが多い。また、EBRインゴットは、円柱状や矩形断面のインゴットであり、やはり鍛造機や分塊圧延機などで後工程の厚板熱延機で操業しやすい矩形断面スラブに成形される。このようにインゴットを分塊鍛造または分塊圧延して製造したスラブ状の中間素材を本発明では「分塊鍛造・分塊圧延スラブ」、あるいは単に「スラブ」と呼ぶ。
【0016】
本発明では、鋳造ままインゴットを半径方向に加工を加えて扁平化して矩形スラブを作る方法や、場合によってはインゴットの長手方向に加工を加えて扁平化して矩形スラブを作る方法、インゴットの長手方向に加工を加えて長手方向に扁平化してインゴットの直径を増やしてから再度半径方向に加工を加えて扁平化する方法等を併用して分塊鍛造・分塊圧延を実施した。
【0017】
ここでは分塊鍛造・分塊圧延スラブのマクロ組織不均一性を、スラブ表面、板厚1/4部、板厚1/2部におけるスラブ板面(厚板製品の板面になる面)に平行な断面およびそれに直角な断面にて切出したブロック状のサンプルをマクロエッチした後、直接拡大鏡にかけて(倍率×1〜×5)で判定した。
【0018】
判定は、(1)分塊鍛造・圧延段階でできた延伸したメタルフローが明瞭で、粒界がゆがんでいることを特徴とする加工変形組織の残存量、(2)スラブ表面部で特に観察される事が多い微細再結晶組織の量、(3)スラブの板厚の大部分を占め、延伸した痕跡が無く、比較的粗粒・等軸で粒界が直線状であることを特徴とするような完全再結晶組織の量を測定した。
【0019】
これらの組織毎の総量を板厚方向の厚みで表し、全スラブ厚に対する(3)の完全再結晶組織の量の比率を再結晶分率(%)として表した。なお、ここで用いた完全再結晶組織はβ域において得られたもので、(2)に分類されるα域で得られた再結晶組織とは異なるものである。前者は、β域で再結晶した材料がβ域からα域への冷却途中で変態を起こしたもので、高倍率で光学顕微鏡観察すると、結晶粒界が笹の葉状にギザギザを呈していることで後者と容易に区別できる。後者は、基本的には微細で粒界が滑らかであることが特徴である。
【0020】
分塊鍛造・分塊圧延スラブから製造した厚板製品のマクロ模様不均一性を、板面に平行に厚板表面の黒皮部を含めて深さ0.5mm〜4mm研削し、さらに#320研磨を行って通常の硝沸酸系のマクロ腐食液でエッチングして判定した。なお、マクロ模様不均一性の判定を容易にするため、その程度の軽度のものについては#600〜#1000の研磨を行った。マクロ模様不均一性は、種々の程度のマクロ模様不均一性を有する標準サンプルを用いて、評点×(均一性不良)、△(均一性やや不良)、○(均一性やや良好)、◎(均一性良好)の4段階評価で○以上を合格と判定した。
【0021】
すなわち、 4N5 (99.995%)レベルの種々の円柱型VARインゴット(80〜500mmφ)および円形断面または矩形断面のEBRインゴットを、厚さ17〜443mmの分塊鍛造・分塊圧延スラブとした後の再結晶分率、これらの原素材をさらに厚板熱延して製造する場合の、熱延時の加工量の指標として総圧下比(圧延前厚さ/圧延後厚さ)および厚板(板厚=8mm)のマクロ模様不均一性の関係を整理した。
【0022】
厚板はいずれも通常の焼鈍(大気中焼鈍,VCF焼鈍)を経て製造されたものである。
ここで、「VCF焼鈍」とは、熱間で形状矯正と焼鈍を同時に行わせる炉内で焼鈍することを指し、厚板・中板などレベラー矯正が困難な材料を、単独あるいは積層して炉内を雲母粉などで充填した後、加熱しながら真空引きすると、大気圧が板材に作用して微小なクリープ変形が生じて、形状が矯正されて平坦な板材を製造できる。
【0023】
上記判定の結果、マクロ模様均一性に優れる厚板は次の2条件を共に満足する場合に得られることが判明した。すなわち、(1)厚板熱延時の総圧下比(圧延前厚さ/圧延後厚さ)が2.7超であること、(2)分塊鍛造・分塊圧延スラブに含まれる不均一マクロ組織の量が22%未満であることである。
【0024】
表1は、熱延が総圧下比(圧延前厚さ/圧延後厚さ)が2.7超である場合について、分塊鍛造・分塊圧延スラブの再結晶分率とマクロ模様不均一性の関係を示したもので、再結晶分率が低い場合はマクロ模様の均一性の程度が悪く、再結晶分率の増加に従ってマクロ模様の均一性が顕著に改善される様子を示している。さらに、マクロ模様の均一性評点が◎点となるときは、再結晶分率が100%の場合に限定されることが判明した。これらのデータには、円柱状VARインゴットおよび円断面EBRインゴットを大型プレス機や鍛造機で鍛造スラブとしたものおよび分塊圧延機でスラブとしたものが含まれている。なお、上記データは分塊鍛造・分塊圧延スラブを直接熱延したもので、粗熱延と仕上熱延を連続一貫して行い、仕上熱延前の再加熱は行わなかった。
【0025】
また、分塊鍛造若しくは分塊圧延は、インゴットを700℃〜1300℃で最大12時間加熱して行い、厚さ16mm〜440mmの矩形断面スラブを得た。熱延は上記スラブをα域の820℃〜880℃に2〜6時間加熱したのち行い、厚さ8mmの厚板とし、製品寸法(厚さと幅、長さ)に合わせてクロス圧延比率を(0.3〜3)の間で変動させて行った。厚板の焼鈍は、板厚と加熱炉装入量に合わせて大気炉では220℃〜800℃で10〜60分、VCF炉では200℃〜700℃で0.5時間〜4時間の均熱時間を確保して行った。
ここで、「クロス圧延比率」とは、あるサイズのスラブから所定の製品寸法の熱延製品を製造するために、熱延中に適宜圧延方向を90度変更して行う圧延方法(クロス圧延)において、熱延開始時の圧延方向(L)およびそれに対して直角な方向(C)の二つの方向へ圧延した時の各圧下量の総和の比(Σ圧下量(L)/Σ圧下量(C))で表す。
【0026】
【表1】
【0027】
なお、前述のように本発明はVARインゴットおよびEBRインゴットを分塊鍛造・分塊圧延して厚板熱延機で操業しやすい形状にした後、厚板熱延機で厚板製品を製造する工程を前提にしているが、分塊工程を経由しないでも、鋳造ままで本発明にいう高位のマクロ組織の均一性を有し、熱延用素材として形状的に合致したインゴットが使用でき、熱延時の総圧下比(圧延前厚さ/圧延後厚さ)が2.7超にできる場合は、分塊鍛造・分塊圧延工程を省略できることはいうまでもない。
【0028】
本発明において、分塊鍛造・分塊圧延スラブの仕上温度はスラブ表面を放射温度計で測定したものを指し、いわゆる材料そのものの温度ではない。過去の実測試験結果から経験的には、スラブ中央部の平均的温度は表面温度より185℃程高くなっている事が分かっている。この仕上温度は、純技術的には加工素材内部の温度を使用すべきであるが、実際の製造現場において品質管理上、実用的な管理指標であり、本発明では一貫してこの指標を使用することとした。
【0029】
本発明で扱う高純度チタンとは、純度が 4N5 (99.995%)以上のものを指す。なお、このときガス成分のO,N,Hについては純度表示にカウントしないものとする。
【0030】
【実施例】
以下に、本発明を実施例に基づいてさらに説明する。
[実施例1(大型インゴット)]
純度 4N5 (99.995%)のVAR円柱型インゴット(310mmφ,500mmφ)を分塊圧延機で分塊圧延し、さらに再加熱して熱延を行い、板厚8mmの厚板とした。分塊圧延条件、熱延条件および厚板に製造してから行うVCF焼鈍条件は、表2に示す通りである。熱延の総圧下比はいずれの場合も2.7超である。各分塊圧延スラブの端部から切出したマクロサンプルを用いてマクロ組織不均一性と、それらに対応する各厚板のマクロ模様不均一性を判定した。その結果、表2に示すように、分塊圧延スラブのマクロ組織の不均一なもの(再結晶分率が低いもの)は、それを用いて製造した厚板のマクロ模様の均一性評点が低い結果となった。
【0031】
【表2】
【0032】
[実施例2(小形インゴット)]
純度 4N5 (99.995%)〜 5N5 (99.9995%)のEBRインゴット(80mmφ,135mmφ)およびVAR円柱型インゴット(100mmφ)を鍛造機で分塊した後、再加熱して熱延を行い、板厚8mmの厚板とした。分塊鍛造条件、熱延条件および厚板に製造してから行う大気焼鈍条件は、表3に示す通りである。熱延の総圧下比はいずれの場合も2.7超である。実施例1と同様の評価を行った結果、分塊鍛造スラブのマクロ組織の不均一なもの(再結晶分率が低いもの)は、それを用いて製造した厚板のマクロ模様の均一性評点が低い結果となった。
【0033】
【表3】
【0034】
[実施例3(スラブβ域再加熱)]
実施例1および2で再結晶分率の低かった鍛造・分塊スラブの一部を、加工変形組織および微細再結晶組織の解消を狙って加熱炉に装入して、α域およびβ域で再加熱(加熱温度での保持時間は30〜60分間)した。850℃で加熱した場合は、加工変形組織および微細再結晶組織はほぼ解消されて均一なα域焼鈍組織となった。
【0035】
一方、β域の950〜1190℃に加熱した場合は、これらの不均一組織が解消された上に、β域での完全再結晶組織が得られた。加熱後スラブを放冷し、表4の熱延条件で熱延し、さらにVCF焼鈍を行って厚板製品とした。厚板製品のマクロ模様均一性を評価したところ、熱延素材であるスラブのマクロ組織が完全再結晶組織となっている発明例の場合は、得られた厚板のマクロ模様の均一性は全ての場合において◎の評価となった。
【0036】
また、比較例のように加工変形組織が解消されてもβ域での完全再結晶組織が得られない場合は、マクロ模様の均一性は劣悪なものとなった。
【0037】
【表4】
【0038】
[実施例4(圧延率の影響)]
5N(99.999%)のEBRインゴット(80mmφ,135mmφ)および 4N5 (99.995%)のVARインゴット(100mmφ,310mmφ,500mmφ)を分塊鍛造機または分塊圧延機で分塊し、スラブとした。分塊圧延条件、熱延条件および厚板に製造してから行うVCF焼鈍条件は、表5に示す通りである。発明例(15)以降、比較例(12)以降では、それぞれ200mm厚さの鍛造・分塊スラブを先ず製造し、これらからさらに種々の厚さの熱延用素材を切出し、熱延に供した。
【0039】
いずれのスラブもマクロ組織の均一性の点からはほぼ均一と見なせるものである。しかしながら、このようなスラブを用いる場合であっても熱延時の総圧下比が2.7を越えない場合は、例え、それらの分塊圧延スラブの再結晶分率が非常に高い場合でもβ結晶粒の痕跡が残り、マクロ模様均一性判定結果は良くなかった。
【0040】
なお、本実施例では、主として鋳造ままインゴットを半径方向に加工を加えて扁平化し、矩形スラブを作る方法を用いたが、発明例(11,13,14)では、インゴットの長手方向に加工を加えて長手方向に扁平化してインゴットの直径を増やしてから、再度半径方向に加工を加えて扁平化する方法で鍛造・分塊圧延を実施した。
【0041】
【表5】
【0042】
[実施例5(研削)]
実施例1および2で完全再結晶分率の低かった鍛造・分塊スラブの一部を採取し、表面に存在していた加工変形組織および微細再結晶組織等の不均一マクロ組織を機械研削により切削し、熱延に供した。熱延時のスラブ加熱温度は700℃とし、総圧下比はいずれの場合も2.7超とした。厚板に製造してから行うVCF焼鈍条件は、全て500℃×4時間保持で行った。スラブの切削を行っても不均一組織を十分に除去しない場合は、やはりマクロ模様の均一性の評価は悪くなる。
【0043】
【表6】
【0044】
[実施例6(直接圧延)]
鋳造ままの 4N5 (99.995%)のEBR矩形断面スラブ(300mm幅)をそのまま厚板熱延機で熱延した。熱延条件および厚板に製造してから行う大気焼鈍条件は、表7に示す通りである。鋳造ままのスラブであるので、このスラブの完全再結晶分率は100%で、加工組織等の不均一なマクロ組織を含んでいなかった。
【0045】
【表7】
【0046】
【発明の効果】
本発明は、スパッタリングターゲット用高純度チタン展伸材の製造方法並びその製造方法に用いるスラブであり、特に半導体デバイス製造用高純度チタンターゲット材に用いる均一なマクロ模様を有する高純度チタン展伸材(熱延厚板)を提供するものである。
【0047】
さらに、高純度チタン展伸材を製造する際の中間素材である分塊鍛造・分塊圧延スラブにおけるマクロ組織不均一性に着目し、これらと熱延条件、展伸材のマクロ模様均一性との関係を明らかにし、マクロ模様が均一な高純度チタン厚板を製造するための分塊鍛造・分塊圧延スラブを提供するものである。
【0048】
以上のことから本発明は、高純度チタン展伸材、高純度ターゲット材、ターゲット材の品質、生産効率および歩留りを向上させる経済的な効果が大きいばかりでなく、急激な技術革新が進む半導体や表示素子の高集積化に寄与することができ、その工業的価値は極めて大きい。
Claims (2)
- 純度99.995%以上の高純度チタンであって、β域で完全再結晶した組織の全スラブ厚に対する分率が78%超であることを特徴とする、スパッタリングターゲット材に使用する均一なマクロ模様を有する高純度厚板熱延用のチタンスラブ。
- 純度99.995%以上の高純度チタンの鋳造インゴットを、β変態点温度以上で分塊鍛造もしくは分塊圧延して、または該分塊鍛造もしくは分塊圧延をすることなく鋳造ままで、β域で完全再結晶した組織の全スラブ厚に対する分率が78%超となる厚板熱延用のスラブとし、該スラブを、厚板熱延の総圧下比(圧延前厚さ/圧延後厚さ)2.7超で熱延し、焼鈍を行うことを特徴とする、マクロ模様が均一な高純度チタン展伸材(熱延厚板)の製造方法。
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