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JP3707119B2 - 車両用空調装置 - Google Patents

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JP3707119B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車室内の冷房を行うクーラユニット、または車室内の暖房を行うヒータユニットを制御する車両用空調装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車室内後席の冷房はリアクーラユニットにて行い、車室内後席の暖房はリアヒータユニットにて行うように、それぞれのユニットを制御する車両用空調装置が特開平2−58126号公報に開示されている。具体的には、まず後席室温を後席設定温度にするための必要熱量QR を決定し、この必要熱量QR が負の場合は、リアヒータユニットを停止するとともにリアクーラユニットにて後席冷房を行い、上記必要熱量QR が正の場合は、リアクーラユニットを停止するとともにリアヒータユニットにて後席暖房を行う。
【0003】
そして、後席冷房時には、後席室温と後席設定温度との偏差に基づいて、後席への必要風量WRCを決定し、この必要風量WRCのもとで上記必要熱量QR を得るのに必要な吹出温度TAOR を算出する。そして、リアクーラユニット内のリア蒸発器をフロストさせることなく上記必要吹出温度TAOR を得るように、リア蒸発器への冷媒流れを制御する冷媒バルブをオンオフさせる。
【0004】
また、後席暖房時には、後席室温と後席設定温度との偏差に基づいて必要風量WRHを決定し、この必要風量WRHのもとで上記必要熱量QR を得るのに必要な吹出温度TAOR を算出する。そして、上記必要吹出温度TAOR を得るように、リアヒータユニット内のリアヒータコアへの温水流れを制御するウォータバルブをオンオフさせる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような車両用空調装置においては、特に外気温度が例えば10〜20(℃)といった中間期においては、以下のような問題が発生する。
つまり、後席冷房時において、上記必要吹出温度TAOR が例えば15(℃)以上となるときがある。この場合、この温度の風をリア蒸発器にて作ると、リア蒸発器のゴミやカビ、あるいはリア蒸発器の腐食による酸化物が原因となる異臭が発生し、車室内乗員に不快感を与えてしまう。
【0006】
もちろん、このような問題は、クーラユニットを前席側に設けて上記と同様の制御を行った場合にも発生する。
また、後席暖房時において、上記必要吹出温度TAOR がリアヒータユニットの吸込温度以下となるときがある。しかし、実際には、リアヒータユニット内のリアヒータコアは、吸込温度以上の風を作るものなので、リアヒータユニットでは、上記のように吸込温度以下の風は作れない。
【0007】
もちろん、このような問題は、ヒータユニットを前席側に設けて上記と同様の制御を行った場合にも発生する。
そこで、本発明は上記各問題を解決することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、車室内への必要吹出温度が所定温度より高いときは、冷却用熱交換器による空気冷却温度が上記所定温度となるように冷却能力調節手段を制御し、かつ上記必要吹出温度が上記所定温度以下のときに比べて、車室内への単位時間当たりの吹出風量が少なくなるようにしたことを特徴としている。
【0009】
これによると、必要吹出温度が所定温度より高いときでも、冷却用熱交換器による空気冷却温度は上記所定温度で一定となる。従って、冷却用熱交換器のゴミやカビが原因となる異臭の発生を防止することができる。ここで、上記のように、必要吹出温度が所定温度より高いにも係わらず、上記空気冷却温度を所定温度で一定とすると、温度の面では車室内への供給熱量が過剰となる。
【0010】
しかし、本発明では、車室内への単位時間当たりの吹出風量を、必要吹出温度が所定温度以下のときに比べて少なくするので、上記過剰となる熱量を相殺でき、車室内へ所望の熱量を供給することができる。また、請求項記載の発明は、車室内への必要吹出温度が、加熱用熱交換器の吸込側空気温度(以下、吸込温度という)より低いときは、上記必要吹出温度が上記吸込温度以上のときに比べて、車室内への単位時間当たりの吹出風量が少なくなるようにしたことを特徴としている。
【0011】
ここで、加熱用熱交換器は吸込空気を加熱するものであり、吸込温度よりも低い温度の空気は作れないため、必要吹出温度が上記吸込温度より低いときは、車室内へは吸込温度と同じ温度の空気が吹き出される。つまり、必要吹出温度が吸込温度より低いにも係わらず、車室内への吹出温度は吸込温度で一定となるため、温度の面では車室内への供給熱量が過剰となる。
【0012】
しかし、本発明では、車室内への単位時間当たりの吹出風量を、必要吹出温度が吸込温度以上のときに比べて少なくするので、上記過剰となる熱量を相殺でき、車室内へ所望の熱量を供給することができる。また、請求項2、6記載の発明は、送風手段の作動と停止を繰り返すことによって、車室内への単位時間当たりの吹出風量を少なくするようにしたことを特徴としている。
【0013】
ところで、送風手段として一般的に用いられるものは、直流モータにてファンを駆動して空気流を発生するタイプのものである。このように直流モータを使ってファンを駆動する場合、モータの特性上、最低でも所定電圧(例えば4V)を印加してやらないとファンを作動状態とすることができない。つまり、ファンが回転して得られる最低風量は、上記所定電圧に相当する風量であり、この風量以下の風量は得られない。
【0014】
従って、送風手段が上記最低風量にて作動状態にあるときに、必要吹出温度が上記所定温度より高くなったり、あるいは必要吹出温度が上記吸込温度より低くなって、車室内への単位時間当たりの吹出風量を少なくする場合、単純にその絶対風量を下げることは、上記した理由からできない。その点、本発明は、送風手段の作動と停止を繰り返すという方法なので、上記のように送風手段が上記最低風量にて作動状態にあるときでも、簡単に車室内への単位時間当たりの吹出風量を少なくすることができる。
【0015】
また、請求項10記載の発明は、送風手段の作動と停止を繰り返す周期を、時間的に変化させるようにしたことを特徴としている。これによると、上記周期が時間的に変化するので、車室内乗員に風量ゆらぎの感覚を与えることができ、送風と停止が繰り返されることによる乗員の違和感を無くすことができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を、ワンボックス型自動車に搭載した第1実施形態について、図1〜16を用いて説明する。
図1に示すように、車両前席側に、前席側空間を冷暖房する前席エアコンユニット1が設けられ、車両後席側に、後席側空間を冷房する後席クーラユニット2と、後席側空間を暖房する後席ヒータユニット3がそれぞれ設けられている。
【0017】
上記前席エアコンユニット1は、車両前席側に設けられた車室内インストルメントパネル内部に設けられており、この位置から、前席乗員の上半身、足元、およびフロントガラス内面に向けて風を吹き出す。
上記後席クーラユニット2は、後席側の車室内壁と車両外板との間のスペースに設けられており、天井ダクト4を介して、車両天井から後席乗員の主に頭に向けて風を吹き出す。
【0018】
上記後席ヒータユニット3は、助手席シートの下方部に設けられており、この位置から後席乗員の主に足元に向けて温風を吹き出す。
そして、これらのユニット1〜3における各空調手段を、ECU5(電子制御装置、図3参照)によって独立に制御するように構成されている。
次に、図2(a)を用いて前席エアコンユニット1の構成を説明する。
【0019】
空調ケース6の空気上流側部位には、車室内気を吸入するための内気吸入口7と外気を吸入するための外気吸入口8とが形成されるとともに、これらの吸入口7、8から、内気と外気との吸入割合を切り換える内外気切換ドア9が設けられている。この内外気切換ドア9は、その駆動手段としてのサーボモータ44(図3参照)によって駆動される。
【0020】
上記内外気切換ドア9の下流側部位には、送風手段としてのファン10が配設されている。このファン10は、その駆動手段としてのブロワモータ49(図3参照)によって駆動され、ファン10の回転数、すなわち車室内への送風量は、ブロワモータ49に印加されるブロワ電圧によって制御される。なお、このブロワ電圧はECU5(図3参照)によって決定される。
【0021】
ファン10の下流側には、冷却用熱交換器としての前席蒸発器11が配設されている。この前席蒸発器11は、自動車のエンジンによって駆動される図示しない圧縮機の他に、図示しない凝縮器や減圧手段等とともに冷媒配管で接続された周知の冷凍サイクルを構成するものである。この前席蒸発器11の冷媒上流側における上記冷媒配管には、前席蒸発器11への冷媒流れを制御する電磁弁12が設けられている。
【0022】
前席蒸発器11よりも空気下流側部位には、加熱用熱交換器としての前席ヒータコア13が配設されている。この前席ヒータコア13は、内部にエンジン冷却水が流れ、この冷却水を熱源として前席ヒータコア13を通過する空気を再加熱するものである。また、空調ケース6内には、前席蒸発器11からの冷風が前席ヒータコア13をバイパスするバイパス通路14が形成されている。
【0023】
また、空調ケース6内には、前席ヒータコア13を通る冷風量とバイパス通路14を通る冷風量との割合を調節する、温度調節手段および風量割合調節手段としてのエアミックスドア15が配設されている。このエアミックスドア15は、その駆動手段としてのサーボモータ45(図3参照)によって駆動される。
また、空調ケース6の空気下流側部位には、フロントガラス内面に空気を吹き出すデフロスタ開口部16、前席乗員の上半身に空気を吹き出す前席フェイス開口部17、および前席乗員の足元に空気を吹き出す前席フット開口部18が形成されている。
【0024】
そして、空調ケース6内には、デフロスタ開口部16を開閉するデフロスタドア19、および前席フェイス開口部17と前席フット開口部18とを選択的に開閉するフェイス・フット切換ドア20が設けられている。これらのドア19、20は、その駆動手段としてのサーボモータ46、47(図3参照)によって駆動される。
【0025】
次に、図2(b)を用いて後席クーラユニット2の構成を説明する。
空気通路としてのクーラケース21の空気上流側部位には、後席乗員足元近辺に開口した内気吸込口22が形成されている。
また、クーラケース21内には、送風手段としてのファン23が配設されている。このファン23は、その駆動手段としてのブロワモータ50(図3参照)によって駆動され、ファン23の回転数は、ブロワモータ50に印加されるブロワ電圧によって制御される。なお、このブロワ電圧はECU5(図3参照)によって決定される。
【0026】
ファン23の下流側には、空気冷却用熱交換器としての後席蒸発器24が配設されている。この後席蒸発器24は、上述した前席蒸発器11とともに同一の冷凍サイクルを構成するものであり、この後席蒸発器24の冷媒上流側における冷媒配管には、後席蒸発器24への冷媒流れを制御する冷却能力調節手段としての電磁弁25が設けられている。
【0027】
また、クーラケース21の空気下流側部位には、天井ダクト4(図1)が接続される後席フェイス開口部26が形成されている。
次に、図2(c)を用いて後席ヒータユニット3の構成を説明する。
空気通路としてのヒータケース27の空気上流側部位には、助手席足元近辺に開口した内気吸込口28が形成されている。
【0028】
また、ヒータケース27内には、送風手段としてのファン29が配設されている。このファン29は、その駆動手段としてのブロワモータ51(図3参照)によって駆動され、ファン29の回転数は、ブロワモータ51に印加されるブロワ電圧によって制御される。なお、このブロワ電圧はECU5(図3参照)によって決定される。
【0029】
ファン29の下流側には、加熱用熱交換器としての後席ヒータコア30が配設されている。この後席ヒータコア30は、内部にエンジン冷却水が流れ、この冷却水を熱源として後席ヒータコア30を通過する空気を加熱するものである。また、ヒータケース27内には、ファン29からの風が後席ヒータコア30をバイパスするバイパス通路31が形成されている。
【0030】
また、ヒータケース27内には、後席ヒータコア30を通る風量とバイパス通路31を通る風量との割合を調節する、温度調節手段および風量割合調節手段としてのエアミックスドア32が配設されている。このエアミックスドア32は、その駆動手段としてのサーボモータ48(図3参照)によって駆動される。
また、ヒータケース27の空気下流側部位には、後席フット開口部33が形成されている。この後席フット開口部33には、空調風を後席乗員足元に向けて吹き出すための図示しない後席フットダクトが接続される。
【0031】
次に、図3を用いて本実施形態の制御系の構成を説明する。
上記各ユニット1〜3における各空調手段を制御するECU5は、CPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータ等を備え、車両のイグニッションスイッチが閉じたときに、図示しないバッテリから電源が供給される。
ECU5の入力端子には、前席側の車室内温度を検出する前席内気温センサ34と、後席側の車室内温度を検出する後席内気温センサ35と、外気温度を検出する外気温センサ36と、車室内に照射される日射量を検出する日射センサ37と、前席蒸発器11による空気冷却温度(具体的は前席蒸発器11を通過した直後の空気温度)を検出する前席蒸発器温度センサ38と、後席蒸発器24による空気冷却温度(具体的には後席蒸発器24を通過した直後の空気温度)を検出する後席蒸発器温度センサ39と、エンジン冷却水温度を検出する水温センサ40と、内気吸入口28からヒータケース27内に吸い込まれる空気温度を検出する吸込温度検出手段としての吸込温度センサ41と、前席側の目標温度を設定する前席温度設定器42と、後席側の目標温度を設定する後席温度設定器43とが電気的接続されている。
【0032】
このうち、上記各センサ34〜41からの信号は、ECU5内の図示しないA/D変換回路にてA/D変換された後、上記マイクロコンピュータへ入力されるように構成されている。
また、ECU5の出力端子には、上記電磁弁12、25、上記サーボモータ44〜48、および上記ブロワモータ49〜51が電気的接続されている。
【0033】
なお、上記前席温度設定器42は、前席側のインストルメントパネルに設けられた前席空調パネル上に配設され、この前席空調パネルには、さらに吹出口モードを切り換えるスイッチ、内外気モードを切り換えるスイッチ、吹出風量を調節するスイッチ、前席エアコンユニット1の各空調手段を自動制御させるオートスイッチ等が配設されている。
【0034】
また、上記後席温度設定器43は、後席側天井部に設けられた後席空調パネル上に配設され、この後席空調パネルには、さらに吹出風量を調節するスイッチ、後席クーラユニット2および後席ヒータユニット3の各空調手段を自動制御させるオートスイッチ等が配設されている。
次に、上記マイクロコンピュータの制御処理について図4を用いて説明する。
【0035】
イグニッションスイッチがオンされて、ECU5に電源が供給されると、図4のルーチンが起動され、ステップS10にて初期化処理を行い、次のステップS20にて、上記各温度設定器42、43にて設定された設定温度(Tset (Fr)、Tset (Rr))を読み込む。
そして、次のステップS30にて、上記各センサ34〜41の値をA/D変換した信号(Tr (Fr)、Tr (Rr)、Tam、Ts 、Te (Fr)、Te (Rr)、Tw 、Tin(Rr))を読み込む。
【0036】
そして、次のステップS40にて、予めROMに記憶された下記数式1に基づいて、前席側の必要吹出温度TAO(Fr)を算出する。
【0037】
【数1】
Figure 0003707119
なお、上記Kset (Fr)、Kr (Fr)、Kam(Fr)、およびKs (Fr)は、それぞれ補正ゲインであり、C(Fr)は補正定数である。
【0038】
そして、次のステップS50にて、前席エアコンユニット1の内外気モードを、上記TAO(Fr)と、予めROMに記憶された図5のマップとに基づいて決定する。なお、図5のSWIは内外気切換ドア9の目標開度であり、SWI=100(%)のときに完全外気導入モード、SWI=0(%)のときに完全内気循環モードとなる。
【0039】
そして、次のステップS60にて、前席エアコンユニット1の吹出口モードを、上記TAO(Fr)と、予めROMに記憶された図6のマップとに基づいて決定する。
ここで、フェイスモード(FACE)とは、前席フェイス開口部17を介して前席乗員の上半身に向けて風を吹き出すモードであり、バイレベルモード(B/L)とは、前席フェイス開口部17および前席フット開口部18を介して、前席乗員の上半身と足元の両方に向けて風を吹き出すモードであり、フットモード(FOOT)とは、前席フット開口部18を介して前席乗員の足元に向けて風を吹き出すモードである。
【0040】
そして、次のステップS70にて、前席エアコンユニット1のブロワモータ49に印加する前席ブロワ電圧を、上記TAO(Fr)と、予めROMに記憶された図7のマップとに基づいて決定する。
そして、次のステップS80にて、予めROMに記憶された下記数式2に基づいて、後席側の必要吹出温度TAO(Rr)を算出する。
【0041】
【数2】
Figure 0003707119
なお、上記Kset (Rr)、Kr (Rr)、Kam(Rr)、およびKs (Rr)は、それぞれ補正ゲインであり、C(Rr)、β、およびαは補正定数である。なお、上記補正定数βは、前席エアコンユニット1が外気導入モードのときの後席への影響度合いを示す定数である。
【0042】
また、上記数式2の最終項である「−β×α×((SWI+r)/(100+r))×(Tr (Fr)−Tr (Rr))」は、前席エアコンユニット1による影響を打ち消すためのものである。
そして、次のステップS90にて、後席クーラユニット2と後席ヒータユニット3の作動モードを、上記TAO(Rr)と、予めROMに記憶された図8のマップとに基づいて決定する。
【0043】
ここで、後席クーラユニット2のみが作動するモードはフェイスモードに相当し、後席ヒータユニット3のみが作動するモードはフットモードに相当し、両ユニット2、3がともに作動するモードはバイレベルモードに相当する。以下、上記各作動モードを、FACE(Rr)、FOOT(Rr)、B/L(Rr)という。
そして、次のステップS100にて、後席クーラユニット2における必要吹出温度TAO(Rc)と、後席ヒータユニット3における必要吹出温度TAO(Rh)を算出する。
【0044】
具体的には、上記TAO(Rc)については、上記作動モードがB/L(Rr)のときは、予めROMに記憶された下記数式3に基づいて算出し、B/L(Rr)以外のときは、予めROMに記憶された下記数式4に基づいて算出する。
また、上記TAO(Rh)については、上記作動モードがB/L(Rr)のときは、予めROMに記憶された下記数式5に基づいて算出し、B/L(Rr)以外のときは、予めROMに記憶された下記数式6に基づいて算出する。
【0045】
【数3】
TAO(Rc)=TAO(Rr)−10 (℃)
【0046】
【数4】
TAO(Rc)=TAO(Rr) (℃)
【0047】
【数5】
TAO(Rh)=TAO(Rr)+10 (℃)
【0048】
【数6】
TAO(Rh)=TAO(Rr) (℃)
このように、上記作動モードがB/L(Rr)のときに、TAO(Rc)とTAO(Rh)とに差を持たせているのは、後席への吹出風に上下温度差を持たせて、後席乗員の頭寒足熱を実現するためである。
【0049】
そして、次のステップS110に移ると、図9のサブルーチンがコールされ、後席クーラユニット2のブロワモータ50に印加する後席クーラブロワ電圧Va (Rc)、および後席ヒータユニット3のブロワモータ51に印加する後席ヒータブロワ電圧Va (Rh)が決定される。以下、この図9の処理について説明する。
ステップS111では、上記ステップS90にて決定した作動モードがFOOT(Rr)であるか否かを判定する。ここで、YESと判定されたときは、後席クーラユニット2を停止させるときなので、ステップS115にジャンプして、後席クーラブロワ電圧Va (Rc)を0にする。
【0050】
また、ステップS111にてNOと判定されたときは、後席クーラユニット2を作動させるときなので、ステップS112にて、予めROMに記憶された図10のマップに基づいて、ブロワモータ50のベースとなるブロワ電圧Vab(Rc)を決定する。なお、図10のマップでは、TAO(Rr)≧15(℃)のときには、上記ベースブロワ電圧Vab(Rc)は最低電圧(V1 またはV2 )となるように設けられている。
【0051】
ここで、上記作動モードがB/L(Rr)のときのベースブロワ電圧Vab(Rc)が、FACE(Rr)のときのベースブロワ電圧Vab(Rc)に比べて小さいのは、B/L(Rr)のときには後席ヒータユニット3からも風を吹き出すためである。つまり、B/L(Rr)のときには、後席ヒータユニット3のブロワモータ51には、図10のFACE(Rr)のときのVab(Rc)とB/L(Rr)のときのVab(Rc)との差に相当するブロワ電圧が印加される。
【0052】
そして、次のステップS113にて、予めROMに記憶された図11のマップに基づいて、ブロワモータ50をオンオフさせるデューティ比を決定する。このデューティ比とは、図12に示すように、ブロワモータ50をオンオフさせる周期T1 (本実施形態では2分)に対して、ブロワモータ50をオンする時間T2 のことである。
【0053】
なお、図11のマップは、上記作動モードがFACE(Rr)のときなら、TAO(Rr)≦15(℃)のときにデューティ比が100(%)となり、TAO(Rr)≧15(℃)のときは、TAO(Rr)が高くなるに応じてデューティ比が小さくなるように設けてあり、上記作動モードがB/L(Rr)のときなら、TAO(Rr)≦25(℃)のときにデューティ比が100(%)となり、TAO(Rr)≧25(℃)のときは、TAO(Rr)が高くなるに応じてデューティ比が小さくなるように設けてある。
【0054】
そして、次のステップS114にて、最終的な後席クーラブロワ電圧Va (Rc)を決定する。ここでは、図10から求まる上記ベースブロワ電圧Vab(Rc)と、図12に示すブロワ電圧Vad(Rc)とのうちの小さい方を後席クーラブロワ電圧Va (Rc)として決定する。
そして、次のステップS116にて、上記ステップS90にて決定した作動モードがFACE(Rr)であるか否かを判定する。ここで、YESと判定されたときは、後席ヒータユニット3を停止させるときなので、ステップS120にジャンプして、後席ヒータブロワ電圧Va (Rh)を0にする。
【0055】
また、ステップS116にてNOと判定されたときは、後席ヒータユニット3を作動させるときなので、ステップS117にて、予めROMに記憶された図13のマップに基づいて、ブロワモータ51のベースとなるブロワ電圧Vab(Rh)を決定する。
なお、上記作動モードがB/L(Rr)のときのベースブロワ電圧Vab(Rh)が、FOOT(Rr)のときのベースブロワ電圧Vab(Rh)に比べて小さくしている理由は、上述した通りである。
【0056】
そして、次のステップS118にて、予めROMに記憶された図14のマップに基づいて、ブロワモータ51をオンオフさせるデューティ比を決定する。このデューティ比とは、図15に示すように、ブロワモータ51をオンオフさせる周期T1 (本実施形態では2分)に対して、ブロワモータ51をオンする時間T2 のことである。
【0057】
なお、図14のマップは、吸込温度Tin(Rr)と必要吹出温度TAO(Rh)との偏差が0(℃)以下のとき、すなわちTin(Rr)≦TAO(Rh)のときには上記デューティ比を100(%)とし、上記偏差が0(℃)以上のとき、すなわちTin(Rr)≧TAO(Rh)のときは、この偏差が大きくなるに応じて上記デューティ比を小さくするように設けてある。
【0058】
そして、次のステップS119にて、最終的な後席ヒータブロワ電圧Va (Rh)を決定する。ここでは、図13から求まる上記ベースブロワ電圧Vab(Rh)と、図15に示すブロワ電圧Vad(Rh)とのうちの小さい方を後席ヒータブロワ電圧Va (Rh)として決定する。
そして、図4のステップS130にて、後席クーラユニット2からの吹出温度を制御する。具体的には、まず上記数式3または数式4にて算出したTAO(Rc)と、予めROMに記憶された図16のマップとに基づいて、目標蒸発器温度TEO(Rr)を決定する。そして、後席蒸発器温度センサ39が検出した蒸発器後温度Te (Rr)が、上記目標温度TEO(Rr)となるように、電磁弁25(図2(b))をオンオフ制御する。この制御は周知のものである。
【0059】
なお、図16のマップは、TAO(Rc)≦0(℃)のときはTEO(Rr)=0(℃)で一定としている。これは、後席蒸発器24のフロスト防止のためである。また、0≦TAO(Rc)≦15(℃)のときは、TEO(Rr)=TAO(Rc)としている。また、TAO(Rc)≧15(℃)のときは、TEO(Rr)=15(℃)で一定としている。これは、15(℃)以上の風を後席蒸発器24にて作ると、この蒸発器24から異臭が発生する恐れがあるためである。
【0060】
そして、次のステップS140にて、エアミックスドア15、32の各目標開度θ(Fr)、θ(Rr)を、予めROMに記憶された下記数式7、8に基づいて決定する。
【0061】
【数7】
θ(Fr)=100×(TAO(Fr)−Te (Fr))/(Tw −Te (Fr)) (%)
【0062】
【数8】
θ(Rr)=100×(TAO(Rh)−Tin(Rr))/(Tw −Tin(Rr)) (%)
そして、次のステップS150にて、上記ステップS50〜S70、S110、S140にて決定した各モードが得られるように、各アクチュエータへ制御信号を出力する。
【0063】
そして、次のステップS160にて、所定の制御周期時間τが経過したか否かを判定し、YESの場合はステップS20に戻り、NOの場合は制御周期時間τの経過を待つ。
上記の制御を繰り返すと、後席クーラユニット2の作動時においては、TAO(Rc)≧15(℃)のときでも、後席蒸発器24による空気冷却温度は15(℃)で一定となる。従って、後席蒸発器24のゴミやカビが原因となる異臭の発生を防止することができる。
【0064】
ここで、上記のように、TAO(Rc)≧15(℃)であるにも係わらず、上記空気冷却温度を15(℃)で一定とすると、温度の面では車室内への供給熱量が過剰となる。しかし、本実施形態では、このとき、風量をオンオフさせて、車室内への単位時間当たりの吹出風量を少なくするので、上記過剰となる熱量を相殺でき、車室内へ所望の熱量を供給することができる。
【0065】
また、後席ヒータユニット3の作動時においては、Tin(Rr)≧TAO(Rh)のときには、上記数式8から、エアミックスドア32の目標開度θ(Rr)がθ(Rr)≦0となるので、車室内への吹出温度はTin(Rr)で一定となり、温度の面では車室内への供給熱量が過剰となる。しかし、本実施形態では、このとき、風量をオンオフさせて、車室内への単位時間当たりの吹出風量を少なくするので、上記過剰となる熱量を相殺でき、車室内へ所望の熱量を供給することができる。
【0066】
このように本実施形態では、前席エアコンユニット1のように、蒸発器とヒータコアの両方を備えたタイプのユニットを用いなくても、後席クーラユニット2と後席ヒータユニット3とで、必要な熱量を作り出して、後席を所望の温度に制御できる。
また、本実施形態では、ファン23、29をオンオフさせることによって、車室内への単位時間当たりの吹出風量を少なくするので、ブロワ電圧が最低電圧(図10のV1 またはV2 、図13のV3 またはV4 )であるときでも、簡単に車室内への単位時間当たりの吹出風量を少なくすることができる。
【0067】
(他の実施形態)
上記実施形態では、図12または図15の周期T1 を固定したが、この周期T1 を、例えば1/fランダムやM系列ランダム等、所定のルールにのっとって変化させるようにしても良い。こうすることによって、後席乗員に風量ゆらぎの感覚を与えることができ、風量の変化に対する乗員の不快感を解消することができる。
【0068】
また、上記実施形態では、前席側に、前席蒸発器11と前席ヒータコア13をそれぞれ有する前席エアコンユニット1を設けた例について説明したが、この前席エアコンユニット1の代わりに、クーラユニットとヒータユニットをそれぞれ設け、各ユニットにて前席の冷房と暖房をそれぞれ行うようにしても良い。また、クーラユニットとヒータユニットの両方を設ける必要は無く、これらのうちの一方のみを設けた場合にも適用できる。
【0070】
また、上記実施形態では、請求項1記載の発明でいう所定温度を15(℃)としたが、要は、この所定温度の意味は、後席蒸発器24による空気冷却温度をこの所定温度以下にしておけば、乗員が後席蒸発器24からの異臭が気にならない程度の温度ということであるので、そのような温度の範囲内で適宜選択できるものである。
【0071】
また、上記実施形態では、電磁弁25をオンオフさせることによって、後席蒸発器24における空気冷却能力を調節するようにしたが、圧縮機をオンオフさせることによって上記空気冷却能力を調節するようにしても良い。
また、上記実施形態では、後席ヒータユニット3を、エアミックスドア32の開度を調節して吹出風温度を調節する、いわゆるエアミックスタイプのものとしたが、後席ヒータコア30内へ流れる温水の流量または温度を調節して吹出風温度を調節する、いわゆるリヒートタイプのものとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施形態の各ユニットの車両内での搭載位置を示す概略図である。
【図2】図2(a)は上記実施形態の前席エアコンユニット1の概略図、図2(b)は上記実施形態の後席クーラユニット2の概略図、図2(c)は上記実施形態の後席ヒータユニット3の概略図である。
【図3】上記実施形態の制御系のブロック図である。
【図4】上記実施形態のマイクロコンピュータによる制御処理のフローチャートである。
【図5】上記実施形態の前席側の内外気モードについてのマップである。
【図6】上記実施形態の前席側の吹出口モードについてのマップである。
【図7】上記実施形態の前席側のブロワ電圧についてのマップである。
【図8】上記実施形態の後席クーラユニット2と後席ヒータユニット3の作動モードについてのマップである。
【図9】図4のステップS110の詳細を示すフローチャートである。
【図10】上記実施形態の後席クーラユニット2のベースブロワ電圧Vab(Rc)についてのマップである。
【図11】上記実施形態の後席クーラユニット2のブロワ電圧のデューティ比についてのマップである。
【図12】上記実施形態の後席クーラユニット2のブロワ電圧のタイミングチャートである。
【図13】上記実施形態の後席ヒータユニット3のベースブロワ電圧Vab(Rh)についてのマップである。
【図14】上記実施形態の後席ヒータユニット3のブロワ電圧のデューティ比についてのマップである。
【図15】上記実施形態の後席ヒータユニット3のブロワ電圧のタイミングチャートである。
【図16】上記実施形態の後席クーラユニットの目標蒸発器温度TEO(Rr)についてのマップである。
【符号の説明】
1…前席エアコンユニット、2…後席クーラユニット、3…後席ヒータユニット21…クーラケース(空気通路)、23…ファン(送風手段)、
24…後席蒸発器(冷却用熱交換器)、25…電磁弁(冷却能力調節手段)、
27…ヒータケース(空気通路)、29…ファン(送風手段)、
30…後席ヒータコア(加熱用熱交換器)、31…バイパス通路、
32…エアミックスドア(温度調節手段、風量割合調節手段)、
41…吸込温度センサ(吸込温度検出手段)。

Claims (10)

  1. 空気流を発生する送風手段(23、50)と、
    この送風手段(23、50)が発生した空気を車室内に導く空気通路(21)と、
    この空気通路(21)内に設けられ、前記空気通路(21)内の空気を冷却する冷却用熱交換器(24)と、
    前記冷却用熱交換器(24)における空気冷却能力を調節する冷却能力調節手段(25)とを備え、前記冷却用熱交換器(24)による空気冷却温度が車室内への必要吹出温度となるように前記冷却能力調節手段(25)を制御する車両用空調装置において、
    前記必要吹出温度が所定温度より高いときは、前記冷却用熱交換器(24)による空気冷却温度が前記所定温度となるように前記冷却能力調節手段(25)を制御し、かつ前記必要吹出温度が前記所定温度以下のときに比べて、車室内への単位時間当たりの吹出風量が少なくなるように前記送風手段(23、50)を制御するようにしたことを特徴とする車両用空調装置。
  2. 前記送風手段(23、50)の作動と停止を繰り返すことによって、前記車室内への単位時間当たりの吹出風量が少なくなるようにしたことを特徴とする請求項1記載の車両用空調装置。
  3. 前記必要吹出温度が前記所定温度より高いときは、前記送風手段(23、50)を作動、停止させるデューティ比が前記必要吹出温度の上昇に伴って減少するように前記送風手段(23、50)を制御するようにしたことを特徴とする請求項記載の車両用空調装置。
  4. 冷房を行うクーラユニットと暖房を行うヒータユニットとを有し、前記送風手段(23、50)、前記空気通路(21)および前記冷却用熱交換器(24)は、前記クーラユニットを構成していることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1つ記載の車両用空調装置。
  5. 空気流を発生する送風手段(29、51)と、
    この送風手段(29、51)が発生した空気を車室内に導く空気通路(27)と、
    この空気通路(27)内に設けられ、前記空気通路(27)内の空気を加熱する加熱用熱交換器(30)と、
    車室内への吹出風の温度を調節する温度調節手段(32)と、
    前記加熱用熱交換器(30)の吸込側空気温度を検出する吸込温度検出手段(41)とを備え、前記温度調節手段(32)によって温度調節された空気の温度が車室内への必要吹出温度となるように前記温度調節手段(32)を制御する車両用空調装置において、
    前記必要吹出温度が、前記吸込温度検出手段(41)が検出した吸込温度より低いときは、前記必要吹出温度が前記吸込温度以上のときに比べて、車室内への単位時間当たりの吹出風量が少なくなるように前記送風手段(29、51)を制御するようにしたことを特徴とする車両用空調装置。
  6. 前記送風手段(29、51)の作動と停止を繰り返すことによって、前記車室内への単位時間当たりの吹出風量が少なくなるようにしたことを特徴とする請求項5記載の車両用空調装置。
  7. 前記必要吹出温度が前記吸込温度より低いときは、前記送風手段(23、50)を作動、停止させるデューティ比が前記必要吹出温度の低下に伴って減少するように前記送風手段(29、51)を制御するようにしたことを特徴とする請求項記載の車両用空調装置。
  8. 冷房を行うクーラユニットと暖房を行うヒータユニットとを有し、前記送風手段(29、51)、前記空気通路(27)、前記加熱用熱交換器(30)、前記温度調節手段(32)および前記吸込温度検出手段(41)は、前記ヒータユニットを構成していることを特徴とする請求項5ないし7いずれか1つ記載の車両用空調装置。
  9. 前記空気通路内(27)には、前記加熱用熱交換器(30)をバイパスするバイパス通路(31)が設けられ、
    前記温度調節手段(32)は、前記加熱用熱交換器(30)を通過する風量と前記バイパス通路(31)を通過する風量との割合を調節する風量割合調節手段(32)であることを特徴とする請求項ないしいずれか1つ記載の車両用空調装置。
  10. 前記作動と停止を繰り返す周期を、時間的に変化させるようにしたことを特徴とする請求項2、3、6、7いずれか1つ記載の車両用空調装置。
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