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JP3798676B2 - 輸送機器用アルミニウム合金の半溶融成型ビレットの製造方法 - Google Patents

輸送機器用アルミニウム合金の半溶融成型ビレットの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、輸送機器用として用いるアルミニウム合金の半溶融成型ビレットの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半溶融ビレットを用いるチクソキャスト法は、従来の金型鋳造法と比較し鋳造偏析・欠陥が少なく、金型寿命が長いなどの利点があり最近注目されている技術である。これに用いるビレットの鋳造方法としては、ペネシー・アルマックス方式として知られているビレット段階で初晶α(Al)相を球状化するため、半溶融温度域で電磁・機械撹拌を行う方法(方式A)や、鋳造時に通常添加されている量よりも多量のAl−Ti−Bを添加し、その後半溶融温度域まで昇温し初晶α(Al)相を球状化させる方法(方式B)がある。また、押出・圧延にて歪みを導入後、方式Bのように昇温し球状化させる方法(方式C)が広く知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の半溶融製造法の場合、方式Aでは工程が非常に煩雑で、製造コストが高くつく不具合があった。
また、方式Bでは、多量のAl−Ti−Bを添加するため溶融炉内でのTiB 沈降による品質不安定が発生し、更に方式Cの圧延により歪みを導入する方法は均一な歪みの導入が難しく、また押出では常温押出により作業工程が煩雑で、しかも均一な歪み導入が難しいし、両歪み導入法とも加工後の製品加工が必要となり、量産化や低コスト化が図れないという問題があった。
【0004】
特許第2976073号には、改良された方法が開示されている。即ち、そこには第1項中に「完全に固化した金属または金属合金材料をその再結晶温度未満の温度で変形する工程、該材料の微小構造の再結晶を起こさせるために変形材料を加熱する工程、および該材料の温度をその固相線温度を上回る温度に上昇させることによりチキソトロピック的な挙動を呈する液状マトリックス中に独立した粒子を形成させるために、再結晶構造を部分的に融解させる工程を備えた方法」である。
この方法は、該材料の微小構造の再結晶を起こさせるために変形材料を加熱する工程、および該材料の温度をその固相線温度を上回る温度に上昇させるといういわば2段階加熱とも言うべき加熱が行われる。このような方法は、従来の技術に比べれば、改善された技術と言えるが、やはり2段階の加熱を必要とし、工程が複雑で加熱制御が難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来技術の欠点を解消し、工程が簡素で低コスト化を促進でき、得られる製品が均質な輸送機器用アルミニウム合金の半溶融成型ビレットの製造方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本願の輸送機器用アルミニウム合金の半溶融成型ビレットの製造方法は、Cu1.0〜7.0wt%、Zn0.35wt%以下、Fe1.5wt%以下と、Ti0.001〜0.5wt%及びB0.0001〜0.5wt%の少なくとも1種以上と、Mg0.2〜2.0wt%、Mn0.15〜1.5wt%、Si0.15〜1.5wt%、Ni0.3〜3.0wt%、Zr0.03〜0.35wt%及びV0.03〜0.25wt%の中の少なくとも1種以上を含み、残部が実質的にAlの組成から成り、デンドライト枝間隔(DAS)が200μm以下であるアルミニウム合金を製造し、次いで歪み率5〜50%、加工導入速度50mm/sec.以下で再結晶温度未満の温度で、冷間型枠鍛造にて加工歪みを導入し、その後固相線温度又は共晶温度以上に昇温し、液相率が20〜80%となる温度で保持して半溶融加工する方法である。
【0007】
この場合に、成分偏析の均質化及び鋳造応力の解放のために、加工歪みを導入する前に、450〜550℃の温度で1〜15時間の均質化処理を行うと好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下本発明で用いるアルミニウム合金成分量の数値限定等種々の数値限定理由について詳述する。
【0009】
Cu成分は、固溶体硬化によりマトリックスの強化に寄与するが、1.0wt%未満ではその効果は少なく、一方7.0wt%を超えると強度は飽和し、耐食性が悪くなるので7.0wt%以下とした。
【0010】
Si成分は、Mgの存在下でMg Siを析出し強度を向上させることができるが、その量が0.15wt%未満ではその効果は少なく、一方1.5wt%を超えると伸び・靭性が劣化し冷間加工性が悪くなるので0.15〜1.5wt%とした。
【0011】
Mg成分は、Mg SiやAl−Cu−Mg系の析出物を析出し強度の向上に寄与するが、0.2wt%未満ではその効果が少なく、一方2.0wt%を超えると、Mg Si析出量が過多となり靭性の低下をまねくので0.2〜2.0wt%とした。
【0012】
Zn成分は、耐食性を劣化させるため0.35wt%を上限とした。
【0013】
Fe成分は、Alと金属間化合物をつくり、金属間化合物を分散させることにより耐熱性を向上に寄与するが、多く含有されるとAl−Fe−Si系化合物を生成し伸び・靭性・耐食性に悪影響を及ぼすため、1.5wt%以下とした。
【0014】
Ti成分は、鋳塊の組織を微細化し、鋳塊割れの発生を防止するが、0.001wt%未満ではその効果が少なく、一方0.5wt%を超えると、TiAl の巨大な晶出物の発生を促進させ、冷間鍛造加工時の割れや輸送機器部品の機械的性質の低下をまねくので、0.001〜0.5wt%とした。
【0015】
B成分もまたTi成分と共に鋳塊の組織を微細化し、鋳塊割れの発生を防止するが、0.0001wt%未満ではその効果は小さく、0.5wt%を超えると冷間鍛造加工時の割れや輸送機器部品の機械的性質の低下をまねくので、0.0001〜0.5wt%とした。
【0016】
Mn成分は、強度・伸び・靭性を向上させるが、0.15wt%未満ではその効果は小さく、一方1.5wt%を超えるとAl−Fe−Si−Mn系化合物の脆い金属間化合物が多くなり、加工性に悪影響を及ぼすので上限を1.5wt%とした。
【0017】
Ni成分は、Fe成分と同様にAlと金属間化合物をつくり、金属間化合物を分散させることにより耐熱性向上に寄与するが、0.3wt%未満ではその効果は小さく、一方3.0wt%を超えると耐食性が劣化するため0.3〜3.0wt%とした。
【0018】
Zr成分は、Fe、Niと同様に耐熱性を向上させるが、その量が0.03wt%未満ではその効果が小さく、一方0.35wt%を超えるとZrAl の巨大金属間化合物を晶出し、冷間鍛造加工時の割れや輸送機器部品の機械的性質の低下をまねくので、0.03〜0.35wt%とした。
【0019】
V成分は、Ni,Zrと同様に耐熱性を向上させるが、その量が0.03wt%未満ではその効果が小さく、一方0.25wt%を超えると巨大金属間化合物を晶出し、冷間鍛造加工時の割れや輸送機器部品の機械的性質の低下をまねくので、0.03〜0.25wt%とした。
【0020】
デンドライト枝間隔(DAS)が200μm以下であるビレットを鋳造するが、デンドライト枝間隔(DAS)が200μmを超えると、半溶融温度域に加熱した際に初晶α(Al)相の均一微細球状化が難しくなるし、また均質化処理を行う場合には均質化処理に時間を要するので、デンドライト枝間隔(DAS)を200μm以下とした。
【0021】
鋳造で得られたビレットを均質化処理することにより、鋳造時に結晶粒界に晶出したAl CuMg Si等の晶出物がマトリックスに固溶する。均質化処理温度が450℃未満や1時間に達しない加熱時間では、固溶化が充分得られず、鋳造歪の除去も不充分である。しかし550℃を超える処理温度では、共晶融解が発生し、鍛造時の加工性を損う。また、15時間を超える加熱時間では、加熱時間の長時間に見合った均質化の効果上昇が見られず、加熱エネルギーの損失となる。このため、均質化処理条件は450〜550℃の温度で1〜15時間加熱とした。
【0022】
次に加工歪みの導入は、工程が簡素化でき、かつ少ない加工率で歪みが有効に導入されるように冷間鍛造で行い、なおかつ鍛造用ビレットの全体に均一に歪みが導入されるように型枠鍛造とする。歪み率は、5%未満の場合には歪み導入が少ないため半溶融温度域まで昇温しても初晶α(Al)相の均一な球状化は図れず、一方50%を超えると初晶α(Al)相サイズに変化は見られないのみならず冷間鍛造時に割れが発生するため、5〜50%とした。ここでの歪み率は、鍛造用ビレットの元の長さを とし、鍛造後のビレットの長さを とした時、( )/ ×100(%)で定義した。
【0023】
加工導入速度は、ビレット鋳塊の結晶粒微細化と均質化処理を加えることにより大幅にアップできる。生産性から言えば加工導入速度はできるだけ早い方が好ましい。しかしながら、50mm/sec.を超えると鍛造時に割れが生じたり、鍛造デッドゾーンが発生し、歪みが均一に導入されないため50mm/sec.以下とした。また冷間型枠鍛造の際のビレット温度は、再結晶温度以上では所定の加工率に対する歪み導入が不充分となり、半溶融温度に昇温しても初晶α(Al)相が粒状組織とならないため再結晶温度未満とした。
【0024】
その後、ビレットを固相線温度又は共晶温度以上に昇温し、液相率が20〜80%となる温度で保持して半溶融成型するが、液相率が20%未満では初晶α(Al)の均一な球状化は図れず、半溶融成型の変形抵抗が大きく加圧成型が困難となる。また、80%を超えると均一な組織を有する成型品が得られない。このため固相線温度又は共晶温度以上の半溶融温度域での液相率は20〜80%とした。
【0025】
【実施例】
以下本発明の具体的な実施例を示す。
図1は本発明方法で用いる冷間型枠鍛造の模式図であり、図中符号1は鍛造用金型、2は鍛造用金型ポンチ、3はアルミニウム合金ビレットを示す。
【0026】
Cu、Si、Mg、Zn、Fe、Mn、Ti、B、Ni及びZrをそれぞれ下記表1に示すような組成となるように溶湯を調製し、連続鋳造にてアルミニウム合金ビレットを鋳造した。
【0027】
【表1】
Figure 0003798676
【0028】
上記表1に示すアルミニウム合金ビレットを、表2に示す条件で処理し、半溶融成型の成型性、半溶融成型後の初晶α(Al)相の形状を評価した結果も表2に併記した。
【0029】
【表2】
Figure 0003798676
【0030】
表2に示した加工歪導入時の成型性は、表2で示す成型条件で成型した際に割れが発生せず成型性が良好なものを○とし、割れが見られるものを×で判定した。半溶融成型の成型性は、良好なものを○とし、成型性の悪いものを×と判定した。半溶融成型後の初晶α(Al)相の形状は、球状化が認められるものを○とし、球状化が不充分であるものを×と判定した。半溶融成型後の初晶α(Al)相の微細均一化では初晶α(Al)相のサイズが100μm以下を○とし、100μmを越えるサイズのものを×と判定した。
【0031】
図2は、初晶α(Al)相の微細均一化が○評価の代表例写真を示す。
【0032】
【発明の効果】
以上述べて来た如く、本発明方法によれば、従来の半溶融ビレットよりも工程が簡素化され低コスト化が図れる。また、得られる組織も初晶α(Al)相サイズが平均100μm以下で、かつ初晶α(Al)相の面積率50%の均一球状化組織となっており、自動車部材等の輸送機器用として使用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】冷間型枠鍛造の模式図である。
【図2】初晶α(Al)相の微細均一化が○評価の代表例の顕微鏡組織写真であり、倍率は50倍である。
【符号の説明】
1 鍛造用金型
2 鍛造用金型ポンチ
3 アルミニウム合金ビレット

Claims (2)

  1. Cu1.0〜7.0wt%、Zn0.35wt%以下、Fe1.5wt%以下と、Ti0.001〜0.5wt%及びB0.0001〜0.5wt%の少なくとも1種以上と、Mg0.2〜2.0wt%、Mn0.15〜1.5wt%、Si0.15〜1.5wt%、Ni0.3〜3.0wt%、Zr0.03〜0.35wt%及びV0.03〜0.25wt%の中の少なくとも1種以上を含み、残部が不可避的不純物及びAlの組成から成り、デンドライト枝間隔が200μm以下であるアルミニウム合金を製造し、次いで歪み率5〜50%、加工導入速度50mm/sec.以下で再結晶温度未満の温度で、冷間型枠鍛造にて加工歪みを導入し、その後固相線温度又は共晶温度以上に昇温し、液相率が20〜80%となる温度で保持して半溶融加工することを特徴とする輸送機器用アルミニウム合金の半溶融成型ビレットの製造方法。
  2. アルミニウム合金を製造し、加工歪みを導入する前に、450〜550℃の温度で1〜15時間均質化処理を行うことを特徴とする請求項1記載の輸送機器用アルミニウム合金の半溶融成型ビレットの製造方法。
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