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JP3798136B2 - 基盤熱処理用支持治具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶、太陽電池、半導体ウエーハ等の矩形、円形の基盤の熱処理に使用される熱処理用支持治具に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶や太陽電池及びLSI等は、ガラスやシリコン、化合物等の基盤の表面に、特定の作用物質のドープや打ち込み、化学蒸着(以下、CVDという)等による積層等の薄膜形成処理を行った後に、発色素子、起電素子、整流、増幅、蓄電等の回路素子を形成して製造されるが、これらの薄膜形成処理は、一般に円筒またはドーム状の熱処理容器内で400〜1300℃の高温下で行われている。
【0003】
これらの熱処理は、複数の基盤を支持治具に載置して行われるが、このような支持治具には、耐熱性に優れ、また基盤上に欠陥の少ない均質な薄膜を形成するために不可欠な、金属不純物の少ない石英ガラス等の素材が使用されている。
この支持治具は、複数の基盤を垂直に立てて横に並べたものもあるが、近年の基盤の大型化から、現在では複数の基盤を上下方向に略水平に間隔を空けて支持する縦型の支持治具が多用されている。この縦型の支持治具は、熱処理用容器の床面積を小さくでき、かつ容器の構造を簡単にできるという利点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
近年、基盤から製造される装置、例えばLSI等の半導体では、集積度があがり、より精密な薄膜形成が必要となってきているため、使用する熱処理用容器や支持治具等から放出される不純物の外に、微細な塵埃等の基盤への付着による欠陥が問題となっている。
これらの塵埃は、基盤上に薄膜を形成する際に、石英ガラス等の支持治具の表面に、同じかあるいは類似の薄膜が形成され、この薄膜の熱膨張の大きさ(1〜10×10-6/℃)に比較して、支持治具の素材である石英ガラスの熱膨張(0.5×10-6/℃)が小さすぎることから生ずる熱膨張の差により、支持治具の表面に形成された薄膜にひび割れが生じ、それが破損、飛散して発生するものと考えられている。
【0005】
そこで、これらの薄膜との熱膨張の差が小さく、耐熱性に優れた焼結炭化珪素製の支持治具の使用が試みられていたが、焼結炭化珪素の表面はポーラス(多孔質)であるため、ここから塵埃が発生したり、不純物が放出されたりする問題があった。その後、この問題は、ポーラスな炭化珪素表面に緻密なCVD膜を形成することにより改善することが可能になった。
【0006】
しかしながら、炭化珪素からなる支持治具には、尚、以下の問題点が残されている。
大型基盤を処理するため支持治具も大型化し、さらに生産性をあげるため、熱処理の前後で支持治具の急熱、急冷を行うが、この温度変化に熱膨張率が大きく、熱衝撃に弱い炭化珪素製の支持治具は対応できず破損する可能性がある。
特に、縦型の支持治具を炭化珪素で作ろうとすると、基盤を積重ね状に支持する複雑な構造となるため、熱歪みや形状の歪みが生じやすいため製造が難しく、また支持治具自体が極めて高価なものとなる。
さらに、縦型の支持治具は構造が複雑なため、CVD膜を全体に均質に形成しにくく、またCVD膜のピンホール部分から塵埃や不純物による汚染の可能性があるので、特に高度なCVD膜形成技術が必要となり、支持治具のコストがさらに高価なものとなる。
【0007】
本発明の課題は、急熱、急冷にも形状が安定していて破損がなく、また不純物の放出や、薄膜生成にも塵埃が発生することなく、製造が容易で低価格な縦型の基盤熱処理用支持治具を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の熱処理用支持治具では、複数の被熱処理基盤の周縁部を受け入れて支持する少なくとも二本以上の支柱と、各支柱の端部を連結固定する固定部材から構成されている。
支柱と固定部材を別体とすることにより、それぞれの形状が単純になるため、製造が容易になり、製品コストを下げることができる。
【0009】
また、各支柱に、基盤の熱処理中に支持治具表面に形成される薄膜(例えばポリシリコン、窒化珪素、シリケートガラス等)と同等の熱膨張率である1〜10×10-6/℃の熱膨張率を有する素材を使用することで、熱膨張差による薄膜の剥離等による塵埃の発生や破損を防止している。
このような熱膨張率が薄膜に近い素材としては、炭化珪素、シリコン、窒化珪素等が挙げられる。
【0010】
さらに、固定部材には熱膨張率が0.2〜0.8×10-6/℃の素材を使用している。固定部材を、熱膨張率の小さい素材で形成することにより、急激な温度変化に対しても基盤の支持手段を有する支柱の位置関係に狂いを生じにくくし、安定した熱処理が可能となる。
固定部材は、支柱に比べて温度分布や炉の開放時の温度変化が生じやすい炉の均熱範囲境界付近に配置されるため、熱膨張率の小さな素材を使用することにより破損を防止できる。
固定部材の素材としては、上記範囲の熱膨張率を有し、耐熱性に優れ、有害な金属不純物を含まず、加工性に優れた石英ガラス、焼結石英等が挙げられる。
【0011】
基盤の支持手段としては、各支柱の対向面に、個々の基盤の周縁部を受け入れ支持する溝を上下方向に間隔を空けて形成すると良い(請求項2)。
支柱を、上記した炭化珪素、シリコン、窒化珪素等の素材で形成した場合、複雑な形状を正確に作るのは難しく、高精度の必要な基盤支持部を形成しにくい。
そこで、ダイヤモンドカッターなどを用いて、機械的に溝を形成することにより、例えば焼結時に基盤支持用の突起などを形成するよりも精度の高い(支持ピッチや支持部の面積など)基盤支持部が得られる。
【0012】
支柱は、炭化珪素膜にてCVDコートされた炭化珪素で形成し、かつ固定部材は、石英ガラスで形成すると良い(請求項3)。
支柱には、上記のように炭化珪素、シリコン等の素材が用いられるが、その中でも、薄膜(シリコン膜やガラス膜)の洗浄を行った際に浸食されない素材が望ましい。これは、支柱の溝の内面に薄膜が付着して厚くなり、溝幅が狭くなって基盤が載置できなくなったり、対向する支柱の溝幅の広狭により段差ができて、載置した基盤ががたついたりするため、定期的な洗浄が必要となるからである。
その点で炭化珪素は、HFを含んだ薬液(例えば、HF4〜20%)による膜の除去洗浄にも浸食されず、最初の精度と形状を維持することができるので、最も適切な素材といえる。
【0013】
支柱に炭化珪素を用いる場合、炭化珪素のCVD膜を表面コートすることにより、炭化珪素内部からの不純物や塵埃等の放出を防止できる。
また、固定部材に、石英ガラスを用いると、ダイヤモンド砥石やカッターによる研削切断加工の他、火炎等の熱による溶接、成形加工もできるため、加工が容易で後述の嵌合構造が容易に作製できる。
このように、本発明の基盤熱処理用支持治具では、支柱に炭化珪素膜でCVDコートされた炭化珪素を用い、固定部材に石英ガラスを用いるのが最も好ましい組み合わせである。
【0014】
支柱と固定部材の連結固定手段を、支柱の端部に形成した凹部に対応する固定部材の凸状の接続部(以下、凸部という。)を挿嵌する嵌合構造とすると良い(請求項4)。
熱膨張率の大きい支柱に凹部を設け、熱膨張率の小さい固定部材に凸部を設けた構成とすることにより、急激な温度上昇の際に嵌合部内方の膨張による破損を防止できる。また、常温での嵌合組立時に遊びを最小にすることができるので精度の良い支持治具が得られる。
上記嵌合構造は、着脱が可能な構造とするのが望ましい。洗浄などの際に分解して別々に洗浄でき、修理交換も容易となるからである。また、支柱と固定部材の連結手段を上記嵌合構造とすることにより、連結時の支柱の位置精度が維持しやすくなる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の基盤熱処理用支持治具の一実施の形態を、図面に基づいて具体的に説明する。
図1は、本発明の基盤熱処理用支持治具の一例の斜視図であり、図2は、図1の部分拡大断面図である。図3は、本発明の基盤熱処理用支持治具の他の例の斜視図であり、図4は、本発明の基盤熱処理用支持治具の別の例の組立手順を示す斜視図である。また、図5の(a)、(b)及び図6の(a)、(b)は、固定部材の別の例の平面図と側面図である。
【0016】
図1、図2に示す本発明の基盤熱処理用支持治具は、4本の同形の長尺円筒状の支柱1と、各支柱の上端部と下端部をそれぞれ連結固定する円板状の固定部材2、2’から構成され、各支柱1の対向面には、載置する複数の基盤3の周縁部を受け入れ支持する溝4が上下方向に等間隔に形成されている。
上記4本の支柱は、基盤の出し入れに支障がないように固定部材2、2’の半円領域内の周縁にそって等間隔に立設されている。
【0017】
支柱1は、いずれも熱膨張率1〜10×10-6/℃の素材で形成され、上下の固定部材2、2’は、熱膨張率が0.2〜0.8×10-6/℃の素材で形成されている。
また、支柱1と固定部材2、2’の連結固定手段は、下側の固定部材2の支柱連結部に形成された凸部に支柱の中心孔6を嵌め込み、上側の固定部材2’に形成された凸部5を、支柱1の中心孔6に挿嵌して固定する。
【0018】
図3に示す基盤熱処理用支持治具は、固定部材22、22’の中央に大きな貫通孔23を有する円輪板で形成され、その固定部材には、円筒状の支柱21の中心孔24に挿嵌し得る凸部25が等間隔に形成された構成である。
【0019】
図4は、支柱と固定部材の別の例の連結固定手段を示している。
この連結固定手段では、円筒状の支柱31の中心孔に挿嵌し得る4本の軸棒35が、円板状の下側の固定部材32に一体に立設され、この軸棒35に支柱31の中心孔を挿嵌し、支柱31の中心孔からはみ出た軸棒35の先端部36に、対応する上側の固定部材32’に開けられた孔37を嵌合した後、溶接38して連結固定している。
【0020】
また、図5、図6で示す連結固定手段は、固定部材42、43を棒状に形成しており、図5は五角形状に、図6は、大の字形に形成し、支柱との連結部には支柱の中心孔に挿嵌し得る凸部44、45がそれぞれ形成されている。
固定部材をこのような棒状に形成することにより、支持治具の軽量化が図られ、また支持治具全体の熱容量を小さくして処理の高速化が図れる。
【0021】
【実施例】
次に、本発明の基盤熱処理用支持治具を用いた実施例及び比較例をあげる。
[実施例1]
(支柱の作製)
既存の反応焼結法で得られた、直径20mm、肉厚6mm、長さ640mmの円筒状のSiC管に、幅3mm、深さ4mm、ピッチ6mmの溝を、ダイヤモンドカッターで100溝切った。
溝カットしたSiC管を25%HClにて1時間洗浄し、14MΩの純水ですすぎ洗浄した後、10%HF溶液にて30分の洗浄を行い、さらに14MΩの純水ですすいだ後、真空乾燥機にて120℃、1時間の乾燥を行った。
次いで、CH3 SiCl3 を、H2 ガスをキャリヤガスとして用いて、減圧状態で蒸着する既存のCVD法により、前記溝付きのSiC管を約80μmの炭化珪素膜にてCVDコートして、支柱を4本作製した。
【0022】
(固定部材の作製)
天然の珪砂を、純化後電気加熱により溶融した天然石英ガラスを用い、酸素−水素バーナーやダイヤモンド砥石にてガラス細工加工を行い、肉厚10mm、中央に直径150mmの貫通穴を有する外径233mmの石英ガラス円輪板を作製し、さらに上記支柱の内径に挿嵌し得るφ7.95mm、高さ15mmの4カ所の凸部を有する固定部材を2個作製した。
上記によって作製した支柱と固定部材を、支柱の中心孔に固定部材の凸部を挿嵌させて組立て、図3に示すような本発明の基盤熱処理用支持治具を得た。
【0023】
[比較例1]
実施例1と同様な方法で、同一の形状の溝付きSiC管を約80μmの炭化珪素膜にてCVDコートした支柱を4本作製した。
また、同様に既存の反応焼結法を用い、実施例1と同形状の炭化珪素質の固定部材を2個作製し、これらを実施例1と同様な方法で組立て、図3に示す基盤熱処理用支持治具を得た。
【0024】
[比較例2]
天然の珪砂を純化した後、電気加熱により溶融して天然石英ガラスを作製し、これを用いて、酸素−水素バーナーやダイヤモンド砥石にてガラス細工加工を行い、図3に示す実施例1と同形状で、支柱と固定部材がともに石英ガラスからなる基盤熱処理用支持治具を得た。
【0025】
[実施例2]
実施例1と同じ素材で、凹凸の嵌合構造を逆にした図7に示す支柱と固定部材を作製した。まず、実施例1と同様な方法で同一の形状の溝付きSiC管を約80μmの炭化珪素膜にてCVDコートした支柱51を4本作製した。
次に天然の珪砂を、純化後電気加熱により溶融した天然石英ガラスを用い、酸素−水素バーナーやダイヤモンド砥石にてガラス細工加工を行い、肉厚10mm、中央に直径150mmの貫通穴を有する外径233mmの円輪板に成形した後、その平板上に支柱の端部を挿嵌し得るφ20.05mm、高さ8mmの4カ所の座グリを有する凹部55を有する固定部材52[図7(a) ]を2個作製した。これらを組立て、図7(b) に示す、基盤熱処理用支持治具を得た。
【0026】
(作用の確認)
実施例1、2、比較例1、2のそれぞれの基盤熱処理用治具に、φ200mmウエハーを搭載して、既存のポリシリコンのCVD処理を繰り返し行い、膜を堆積させた。
【0027】
(結果)
比較例1の支持治具は、数度のCVD処理後、炭化珪素の連結手段の下側円輪板に、クラックが入っているのが確認された。
このため、その後の処理では、円輪板がクラックの伸長に伴いゆがみ、搭載したウエハーが脱落する、あるいは傷が発生するなどのトラブルがあり、10μmの処理で使用を中止した。
また、クラック発見後、ウエハー上にはパーティクルが見られ、これらは電子顕微鏡等による表面探査では主成分がCやSi、Feであることが確認された。
上記パーティクルは、クラックが発生したSiC部分の内部から飛散したものと考えられる。
【0028】
比較例2の支持治具では、約25μmの膜付けを行った時点で、支柱の膜に細かなクラックが見られ、一部剥離が確認された。また、その後のウエハーの80%に何らかのパーティクルに起因する欠陥が見られた。これらのパーティクルは、主にSiやSiO、SiO2 等からなっていることがわかった。また、40μmの膜厚の処理後、降温時に治具は支柱部分から破損した。
【0029】
実施例2の支持治具では、80μmの処理まで使用することが出来たが、石英ガラスの円輪板にSiCの支柱が嵌合している部分にクラックが見られたので、そこで使用を中止した。
実施例1では、100μmの膜付けまで試験を行ったが、特にパーティクルやクラックなどの異常は見られなかった。
【0030】
以上のように本発明の実施例1による支持治具では、急熱、急冷にも形状が安定して破損が無く、また不純物の放出も無く、さらには薄膜形成時に塵埃も発生しないので、結果として支持治具を長時間使用できる。
また、固定部材の比較例1のように連結手段などの複雑な部分が炭化珪素等の高価な部品でないので、安く、容易に作製することができる。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、急熱、急冷にも形状が安定して、破損や不純物の放出が無く、薄膜生成にも塵埃が発生することなく、また構造が簡単で製造が容易かつ低価格な縦型の基盤熱処理用治具が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基盤熱処理用支持治具の一例の斜視図である。
【図2】図1の部分拡大断面図である。
【図3】本発明の基盤熱処理用支持治具の他の例の分解した状態の斜視図である。
【図4】本発明の基盤熱処理用支持治具の別の例の分解斜視図である。
【図5】(a)は、固定部材の他の例の平面図、(b)は、その側面図である。
【図6】(a)は、固定部材の別の例の平面図、(b)は、その側面図である。
【図7】(a)は、固定部材の別の例を示す斜視図、(b)は、この固定部材を用いた本発明の基盤熱処理用支持治具の斜視図である。
【符号の説明】
1、21、31、51 支柱
2,2’、22,22’、32,32’、42、43、52 固定部材
3 基盤
4 溝
5、25 凸部
6 中心孔
23 貫通孔
24 中心孔
35 軸棒
36 軸棒の先端部
37 孔
44、45 凸部
55 凹部

Claims (4)

  1. 複数の被熱処理基盤を上下方向に略水平に間隔を空けて保持する熱処理用の支持治具において、基盤の周縁部を受け入れて支持する少なくとも二本以上の支柱と各支柱の端部を連結固定する固定部材からなり、前記各支柱が熱膨張率1〜10×10-6/℃の素材からなり、前記固定部材が熱膨張率0.2〜0.8×10-6/℃の素材からなり、前記各支柱と固定部材が凹凸の嵌合構造により連結され、かつ支柱の端部に凹部を、固定部材の対応箇所に凸状の接続部を形成してなることを特徴とする基盤熱処理用支持治具。
  2. 各支柱の対向面に、個々の基盤の周縁部を受け入れ支持する溝を上下方向に間隔を空けて形成してなる請求項1記載の基盤熱処理用支持治具。
  3. 支柱が炭化珪素膜で化学蒸着された炭化珪素からなり、固定部材が石英ガラスからなる請求項1又は2に記載の基盤熱処理用支持治具。
  4. 複数の被熱処理基盤を上下方向に略水平に間隔を空けて保持した熱処理用の支持治具において、基盤の周縁部を支持する溝を有し、炭化珪素膜で化学蒸着された円筒状の炭化珪素からなる少なくとも二本以上の円筒状の支柱と、該支柱の端部に形成された凹部に挿嵌し支柱同士を連結固定する凸状の接続部を有する石英ガラス製の固定部材からなることを特徴とする基盤熱処理用支持治具。
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