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JP3796077B2 - 二方向クラッチおよびリクライニングシート - Google Patents

二方向クラッチおよびリクライニングシート Download PDF

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JP3796077B2
JP3796077B2 JP28929099A JP28929099A JP3796077B2 JP 3796077 B2 JP3796077 B2 JP 3796077B2 JP 28929099 A JP28929099 A JP 28929099A JP 28929099 A JP28929099 A JP 28929099A JP 3796077 B2 JP3796077 B2 JP 3796077B2
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政治 堀
正浩 川合
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、車輌用のリクライニングシート等に用いられる二方向クラッチおよびその二方向クラッチを用いたリクライニングシートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
シートクッションの後部にシートバックを起伏自在に連結し、その連結部にシートバックを起立方向に付勢する渦巻きばねと、シートバックを起伏させた調整位置でロックするロック機構を設けた自動車用のマニュアル式のリクライニングシートにおいては、ロック機構として、普通、シートバックに取付けられたセクタギヤに操作レバーの端部に設けた爪を係合および係合解除させるようにしたラチェット機構から成るものが用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ロック機構がラチェット機構から成るリクライニングシートにおいては、セクタギヤの歯に爪を係合させるため、シートバックの傾き角度は段階的になり、シートバックを任意の角度でロックすることができず、疲労の少ない適切な姿勢をとることができないという不都合がある。
【0004】
また、シートバックを角度調整する際に、爪がセクタギヤに対して不完全に噛み合い解除される場合があり、このとき、爪がセクタギヤの歯に段階的に当接するため、異音が発生するという不都合がある。
【0005】
上記の不都合を解消するため、シートバックを任意の角度に傾き調整することができるようにした二方向クラッチを本件出願人は既に提案している(特願平9−354944号明細書)。
【0006】
上記二方向クラッチにおいては、シートクッションに取付けられる内輪の外周面にV溝から成るカム面を設け、シートバックに取付けられる外輪の内周面に円筒面を形成し、この円筒面とカム面との間に円筒ころを組込み、その円筒ころがカム面の中央に位置する中立状態において外輪の回転を自由とし、前記円筒ころがカム面の一方の斜面と円筒面のそれぞれに係合する状態において外輪をロックするようにしている。
【0007】
ところで、上記二方向クラッチにおいては、外輪のロック状態において、円筒ころとカム面の他方の斜面との間に微小な間隙が形成されるため、例えば車輌の振動によって外輪に加わる負荷の方向が切り換った場合に、外輪は上記の間隙内でがたつくことになり、異音を発生させるおそれがあった。
【0008】
上記の異音の発生を防止するため、V溝から成るカム面上において円筒ころをスキューさせることにより、その円筒ころを内輪のカム面の相反する方向に傾斜する二つの斜面と外輪の円筒面のそれぞれに係合させて外輪をロックするようにした二方向クラッチを本件出願人はさらに提案している(特願平10−232816号明細書)。
【0009】
ところで、改良された二方向クラッチにおいては、外輪に一定のトルクが加わると、円筒ころのスキューは無くなり、その円筒ころは外輪の円筒面および内輪のカム面にそれぞれ線接触するため、剛性が大きくなるが、円筒ころのスタンバイ状態において、その円筒ころは外輪の円筒面および内輪のカム面における二つの斜面に点接触しているだけであるため、低トルク伝達時の剛性が小さく、改良すべき点が残されている。
【0010】
この発明の課題は、スタンバイ状態において遊び角がなく、トルク負荷に対して大きな剛性をもつ二方向クラッチおよびリクライニングシートを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、この発明に係る二方向クラッチにおいては、外輪と内輪とを相対的に回転自在に支持し、外輪の内周面と内輪の外周面における一方に、円周方向の中央部で深く、両端に至るに従って次第に浅くなると共に、他方の周面との間で軸方向の一端に向けて次第に狭くなるくさび形空間を形成するカム溝を設け、前記外輪と内輪間に保持器を組込み、その保持器を軸方向に移動させる手段を設け、前記保持器には前記カム溝と対応する位置にポケットを形成し、そのポケット内には前記くさび形空間の狭小部に向けての移動時に、カム溝の底面とこれに対応する周面の双方に係合する係合子を組込んだ構成を採用している。
【0012】
ここで、係合子は、円すいころであってもよく、ボールであってもよい。
【0013】
また、カム溝は、底面の左右が相反する方向に傾斜するV溝から成るものであってもよく、あるいは、底面が円弧面から成るものであってもよい。
【0014】
上記二方向クラッチのクラッチ係合および係合解除を確実に行わせるため、外輪と内輪のうち、カム溝が形成された側の部材と保持器の相互間に、カム溝の幅中心をポケットの幅中心に一致させる位相合わせ手段を設けておくのが好ましい。
【0015】
上記の構成から成る二方向クラッチにおいて、係合子がくさび形空間の狭小部に向けて移動する方向に保持器を軸方向に移動させると、係合子がカム溝の底面およびこれに対応する周面の双方に係合して、二方向クラッチはスタンバイ状態となり、外輪と内輪の一方が回転すると、係合子がカム溝の底面およびこれに対応する周面に直ちに係合して、その回転が他方に伝達される。
【0016】
また、この発明に係る二方向クラッチにおいては、外輪と内輪とを相対的に回転自在に支持し、内輪の外周面には円周方向の中央で深く、両端に至るに従って次第に浅くなると共に、外輪の円筒形内周面との間で軸方向の一端に向けて対向間隔が次第に狭くなるくさび形空間を形成するカム溝を設け、前記外輪と内輪間に組込まれた保持器にはカム溝と対応する位置にポケットを設け、そのポケット内にはくさび形空間の狭小部に向けての移動時に、カム溝の底面と外輪の円筒形内周面の双方に線接触する円すいころを組込み、前記内輪と保持器との間にはカム溝の幅中心をポケットの幅中心に一致させる位相合わせ手段を設け、前記円すいころがくさび形空間の狭小部に向けて移動する方向に保持器を軸方向に押圧する弾性手段と、その弾性手段の弾性に抗して保持器を軸方向に移動させる操作手段とを設けた構成を採用している。
【0017】
ここで、前記位相合わせ手段として、前記保持器の端面にワッシャを衝合し、そのワッシャの外周および内周のそれぞれに回り止め片を設け、外側回り止め片を保持器の端部外周に形成された係合凹部に挿入し、内側回り止め片を内輪の内周面に形成された軸方向の係合溝にスライド自在に挿入した構成のものを採用することができる。
【0018】
また、前記弾性手段として、保持器の端部に形成された内向きフランジと内輪の端面を相反する方向に押圧するばね部材を用いることができる。
【0019】
さらに、前記操作手段として、レバーを有する円板状の操作部材を保持器の端面に対向配置して、保持器の軸心を中心として回転自在に支持し、前記操作部材の回転時に前記保持器を軸方向に押圧する傾斜カムをその操作部材に設けた構成から成るものを採用することができる。
【0020】
上記の構成から成る二方向クラッチにおいて、操作手段を操作して保持器を軸方向に押圧すると、円すいころは大端面を前側として軸方向に移動し、その円すいころとカム溝との間に回転方向すきまが形成される。このため、外輪と内輪とを相対的に回転させることができる。
【0021】
また、操作手段によって保持器の押圧を解除すると、弾性手段の押圧によって保持器が戻され、円すいころが円筒面とカム溝と接触してスタンバイ状態とされる。このとき、円すいころは、外輪の内周面およびカム溝の底面にそれぞれに線接触し、かつ弾性手段の押圧により予圧が付与されるため、遊び角がなく、トルク負荷に対して剛性の大きい二方向クラッチを得ることができる。
【0022】
ここで、円すいころが円筒面とカム溝に線接触する状態において、内輪の係合溝とワッシャに設けた内側回り止め片との間に回転方向すきまを形成し、その内側回り止め片の先端と内輪側係合溝の閉塞端部をV形とし、前記ワッシャに設けた外側回り止め片と保持器の係合凹部とをV形とすると、外輪に高トルクが負荷されたとき、ワッシャが保持器から逃げると共に保持器が回転して、ワッシャと保持器の相互間に位相ずれが生じ、その位相ずれによって円すいころと保持器、および保持器と回り止め片の干渉が吸収される。
【0023】
このため、ワッシャと保持器に無理な力が加わらず、ワッシャや保持器が変形してクラッチとしての機能が損なわれるのを防止することができる。
【0024】
さらに、この発明に係るリクライニングシートにおいては、シートクッションに対してシートバックを起伏自在に連結したリクライニングシートにおいて、前記シートバックの起伏中心軸上に前記発明の二方向クラッチを設け、そのクラッチにおける外輪と内輪のいずれか一方をシートクッションに取付け、他方をシートバックに取付けた構成を採用している。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1乃至図6は、この発明に係る二方向クラッチ1を示し、図7は、その二方向クラッチ1を用いたリクライニングシート30を示す。
【0027】
リクライニングシート30はシートクッション31と、そのシートクッション31の後端部から起立するシートバック32とを有する。シートクッション31の両側後部にはブラケット33が設けられ、そのブラケット33に支持軸34が支持されている。
【0028】
シートバック32は、上記支持軸34を中心として起伏自在に支持され、ばね部材35によって起立する方向に付勢されている。36は、シートバック32の両側下部に設けられたブラケットを示す。
【0029】
図1乃至図3に示すように、二方向クラッチ1は、外輪2と、内輪3と、その両輪2、3間に組込まれた保持器4とを有し、前記外輪2の一端には内向きフランジ5が形成され、その内向きフランジ5は内輪3の一端部外周に設けられた小径の軸受面6に嵌合されて回転自在に支持されている。
【0030】
また、外輪2の他端には外向きフランジ7が形成され、その外向きフランジ7がシートバック32に設けられた前記ブラケット36に固定されている。
【0031】
内輪3は前記支持軸34と同軸上に配置され、その一端に設けられた端壁3aがシートクッション31のブラケット33に衝合され、複数のリベット8によって前記ブラケット33に固定されている。
【0032】
前記外輪2の内周は円筒面9とされ、一方、内輪3の外周は、一端が小径となるテーパ面10とされている。テーパ面10には複数のカム溝11が周方向に間隔をおいて設けられている。
【0033】
カム溝11は、図4(II)に示すように、周方向中央が深く、周方向両端に至るに従って次第に浅くなるV形とされている。また、カム溝11の周方向中央の深さは内輪3の軸方向全長にわたって同一とされ、外輪2の円筒面9との間でくさび形空間を形成している。
【0034】
なお、内輪3の外周を円筒面とし、その円筒面に、内輪3の一端で深く、他端に向けて次第に浅くなるV形のカム溝11を設けるようにしてもよい。
【0035】
前記保持器4には前記カム溝11と対向する位置にポケット12が形成され、各ポケット12に円すいころ13が収納されている。
【0036】
円すいころ13は円錐角が10°以下とされ、その円すいころ13とポケット12との間にころ直径の1/100以下のポケットすきまが形成されている。
【0037】
また、円すいころ13は、その小端面が内輪3の他端側に位置する組込みとされ、その小端面を前側として軸方向に移動したとき、外輪2の円筒面9に線接触し、かつ内輪3のカム溝11における底面と二箇所で線接触するようになっている。
【0038】
また、円すいころ13は、その大端面を前側として軸方向に移動したとき、カム溝11の底面と接触する状態で円筒面9との間に、図5(II)に示すように、微小な半径方向すきまδ1 が形成されるようになっている。
【0039】
図2に示すように、内輪3と保持器4の相互間には、ポケット12の幅中心をカム溝11の溝幅中心に一致させる位相合わせ機構14が設けられている。
【0040】
図2乃至図4(I)に示すように、位相合わせ機構14は、保持器4の他端に設けられた内向きフランジ4aにワッシャ15を衝合し、そのワッシャ15の外周および内周のそれぞれに保持器側に向く複数の回り止め片16、17を設け、外側回り止め片16を保持器4の他端部外周に形成された係合凹部18に挿入し、かつ、内側回り止め片17を内輪3の内周に形成された軸方向の係合溝19にスライド自在に挿入している。
【0041】
図2に示すように、保持器4は、その内向きフランジ4aと内輪3の他端面間に組込まれたばね部材20によって円すいころ13が小端面を前側として軸方向に移動する方向に押圧されている。
【0042】
ここで、ばね部材20は、図3に示すように波形ばねであってもよく、あるいは皿ばねであってもよい。
【0043】
また、保持器4は、図1および図2に示す操作機構21を操作することによって、円すいころ13が大端面を前側として軸方向に移動する方向に動かされるようになっている。
【0044】
操作機構21は、支持軸34の先端部に円板状の操作部材22を回転自在に取付け、その操作部材22の外周にレバー22aを設け、このレバー22aの操作による操作部材22の回転時に、その操作部材22の片面外周部に設けた複数の傾斜カム23によりワッシャ15に形成された複数の突出部24を押圧して保持器4を軸方向に移動させるようにしている。
【0045】
ここで、操作部材22は支持軸34の外周中途に設けられた段部34aと、支持軸34の先端部に取付けた位置決め板25とによって軸方向に移動するのが防止されている。また、操作部材22は図示省略した引張りばね等のばね部材によって復帰回動されるようになっている。
【0046】
実施の形態で示すリクライニングシート30は上記の構造から成り、図7はレバー22aが中立位置にある状態を示し、操作部材22の傾斜カム23は、図6(I)に示すように、ワッシャ15の突出部24に対して周方向に位置がずれている。
【0047】
また、保持器4は図4(I)に示すように、ばね部材20によって軸方向に押圧され、図4(II)に示すように、円すいころ13が外輪2の円筒面9に線接触し、かつ内輪3のカム溝11の底面に二箇所で線接触してスタンバイ状態とされている。
【0048】
ここで、シートバック32は図7に示すばね部材35によって起立する方向に付勢されているため、円すいころ13は円筒面9およびカム溝11の底面それぞれに噛み込み、その噛み込みによってシートバック32はロックされ、起立する方向に揺動するのが防止される。
【0049】
上記のような状態において、図7に示すレバー22aの引き上げによって操作部材22を図1の矢印方向に回転すると、図6(II)に示すように、操作部材22に設けられた傾斜カム23がワッシャ15に設けられた突出部24を押圧する。その押圧によってワッシャ15および保持器4が軸方向に移動する。
【0050】
図5(I)、(II)はワッシャ15および保持器4が軸方向に移動した状態を示し、円すいころ13と外輪2の円筒面9間に半径方向すきまδ1 が形成され、シートバック32は起立する方向および倒れる方向の二方向に揺動し得る状態とされる。
【0051】
このため、シートバック32に上半身の体重をあずけると、シートバック32が後方に倒れ、また、シートバック32から上半身を離すと、ばね部材35の弾性力によってシートバック32が起立する方向に揺動し、シートバック32の傾きを任意に調整することができる。
【0052】
シートバック32の傾き調整後において、レバー22aの引き上げを解除し、図示省略したばね部材の弾性力によって操作部材22を中立位置に戻すと、図6(I)に示すように、操作部材22の傾斜カム23はワッシャ15の突出部24に対して周方向に位置がずれ、保持器4は、ばね部材20の押圧によって操作部材22に向けて移動し、図4(II)に示すように、円すいころ13が外輪2の円筒面9および内輪3のカム溝11の底面と線接触するスタンバイ状態に戻される。
【0053】
このため、シートバック32に上半身の体重をあずけることにより、円すいころ13は外輪2の円筒面9および内輪3のカム溝11の底面にかみ込み、シートバック32は角度調整位置においてロックされる。
【0054】
このように、シートバック32を任意の傾き調整位置でロックすることができるため、疲労の少ない適切な姿勢を確保することができ、ハンドルの操作性や安全性の向上を図ることができる。
【0055】
また、シートバック32のロック状態において、円すいころ13は外輪2の円筒面9と線接触していると共に、内輪3のカム溝11底面と二箇所で線接触し、しかも、円すいころ13にはばね部材20によって予圧が付与されているため、回転方向の遊びが全くなく、車輌の振動によってシートバック32から外輪2に付与される負荷の方向が切り換っても、シートバック32はガタつくことがない。
【0056】
このため、異音の発生のない安定性、および安全性に優れたリクライニングシート30を得ることができる。
【0057】
ここで、円すいころ13の円錐角が大きい場合、トルク負荷を受けた時に、円すいころ13はその分力で軸方向に押し出され、円筒面9およびカム溝11に対する係合が解除されるおそれがあるが、上記円すいころ13の円錐角は10°以下であるため、そのような問題が発生することはない。
【0058】
図8乃至図12は、この発明に係る二方向クラッチの他の例を示す。図8および図9に示す二方向クラッチ1においては、内輪3の内側に渦巻ばね40を設け、その渦巻ばね40の内端を支持軸34に連結している。
【0059】
また、外輪2の外向きフランジ7に支持片41を固定し、その支持片41に支持されたピン42を操作部材22に形成された円弧状長孔43に挿入し、そのピン42に前記渦巻ばね40の外端を連結して、渦巻ばね40によりシートバック32を起立方向に付勢している。
【0060】
他の構成は、図1乃至図6に示す二方向クラッチと同一であるため、同一部品には同一の符号を付して説明を省略する。
【0061】
上記のように、内輪3の内部にシートバック32を起立方向に付勢する渦巻ばね40を設けることにより、シートバック32の付勢用ばねを図7に示すように外部に設ける場合に比較して、リクライニングシート30の全幅を小さくすることができ、車体構造の設計自由度が向上し、また、車内の居住性の向上を図ることができる。
【0062】
図10乃至図12に示す二方向クラッチ1においては、ワッシャ15の外周に設けられた外側回り止め片16および保持器4の他端部外周に形成された係合凹部18をV形としている。また、ワッシャ15の内周に設けられた内側回り止め片17と内輪3の内周に形成された係合溝19との間に、図12(I)、(II)に示すように回転方向すきまδ2 を形成し、その内側回り止め片17の先端部および係合溝19の閉塞端部をV形としている。
【0063】
他の構成は、図1乃至図6に示す二方向クラッチと同一であるため、同一部品に同一の符号を付して説明を省略する。
【0064】
上記のように、ワッシャ15に設けられた内側回り止め片17の先端部をV形とし、その回り止め片17が挿入された内輪3の係合溝19の先端部をV形とすることによって、ワッシャ15が操作部材22の傾斜カム23で押された軸方向に移動すると、図12(II)に示すように、内側回り止め片17の先端のV形部17aは係合溝19のV形部19aに係合するため、保持器4のポケット12の幅中心と内輪3のカム溝11の幅中心の相対的な位置規制を正確に行なうことができる。
【0065】
また、操作部材22の傾斜カム23がワッシャ15の押圧を解除する状態では、保持器4およびワッシャ15はばね部材20に押圧されて操作部材22の方向に移動し、このとき、図12(I)に示すように、内側回り止め片17と係合溝19との間には回転方向すきまδ2 が形成されているため、トルクの負荷によって外輪2の傾き角度が大きくなっても、保持器4に加わる円すいころ13の干渉量は図1および図2に示す二方向クラッチ1に比較して大幅に軽減することができる。
【0066】
さらに、ワッシャ15の外側回り止め片16と係合凹部18をV形としたことにより、外輪2に大きな負荷が作用すると、保持器4が回転してワッシャ15が軸方向に逃げ、保持器4とワッシャ15が相対回転して位相がずれる。
【0067】
このため、外輪2への負荷によって生じるワッシャ15と保持器4の干渉をワッシャ15と保持器4の位相ずれによって吸収することができると共に、円すいころ13と保持器4の干渉も吸収することができ、保持器4およびワッシャ15が変形し、あるいは破損するのを防止することができる。
【0068】
各実施の形態においては、外輪2の内周を円筒面9とし、内輪3の外周にカム溝11を設けたが、逆に、外輪2の内周にカム溝を形成し、内輪3の外周に円筒面を設けてもよい。
【0069】
また、カム溝11としてV形のものを示したが、底面が円弧面から成るものであってもよい。さらに、係合子として円すいころから成るものを示したが、ボールを用いるようにしてもよい。
【0070】
【発明の効果】
以上のように、この発明における二方向クラッチにおいては、スタンバイ状態において、係合子はカム溝の底面とこれに対応する周面に接触するため遊び角が無く、外輪に付与される負荷の方向の切り換わり時に異音が発生するのを防止することができる。
【0071】
また、係合子として円すいころを用いると、その円すいころは外輪および内輪のそれぞれと線接触するため、低トルク伝達時の剛性の向上を図ることができる。
【0072】
この発明に係るリクライニングシートにおいては、バックシートを任意に角度調整することができると共に、角度調整においてがたつきのない安定した姿勢を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る二方向クラッチの一部切欠正面図
【図2】図1のII−II線に沿った断面図
【図3】図1に示すクラッチの分解斜視図
【図4】(I)は図1に示すクラッチのスタンバイ状態における断面図、(II)は縦断正面図
【図5】(I)は図1に示すクラッチのロック解除状態を示す断面図、(II)は縦断正面図
【図6】(I)は図1に示すクラッチの操作部材の押圧解除状態を示す展開図、(II)は押圧状態を示す展開図
【図7】この発明に係るリクライニングシートを示す側面図
【図8】この発明に係る二方向クラッチの他の例を示す一部切欠正面図
【図9】図8のIX−IX線に沿った断面図
【図10】この発明に係る二方向クラッチのさらに他の例を示す縦断側面図
【図11】図10に示す二方向クラッチの保持器とワッシャを示す分解斜視図
【図12】(I)は図10に二方向クラッチのワッシャに形成された内側回り止め片と内輪の係合溝の挿入状態を示す平面図、(II)は内側回り止め片と係合溝の係合状態を示す平面図
【符号の説明】
1 二方向クラッチ
2 外輪
3 内輪
4 保持器
4a 内向きフランジ
9 円筒面
11 カム溝
12 ポケット
13 円すいころ
14 位相合わせ機構
15 ワッシャ
16 外側回り止め片
17 内側回り止め片
18 係合凹部
19 係合溝
20 ばね部材
21 操作機構
22 操作部材
22a レバー
23 傾斜カム
31 シートクッション
32 シートバック

Claims (7)

  1. 外輪と内輪とを相対的に回転自在に支持し、外輪の内周面と内輪の外周面における一方に、円周方向の中央部で深く、両端に至るに従って次第に浅くなると共に、他方の周面との間で軸方向の一端に向けて次第に狭くなるくさび形空間を形成するカム溝を設け、前記外輪と内輪間に保持器を組込み、その保持器を軸方向に移動させる手段を設け、前記保持器には前記カム溝と対応する位置にポケットを形成し、そのポケット内には前記くさび形空間の狭小部に向けての移動時に、カム溝の底面とこれに対応する周面の双方に係合する係合子を組込んだ二方向クラッチ。
  2. 外輪と内輪とを相対的に回転自在に支持し、内輪の外周面には円周方向の中央で深く、両端に至るに従って次第に浅くなると共に、外輪の円筒形内周面との間で軸方向の一端に向けて対向間隔が次第に狭くなるくさび形空間を形成するカム溝を設け、前記外輪と内輪間に組込まれた保持器にはカム溝と対応する位置にポケットを設け、そのポケット内にはくさび形空間の狭小部に向けての移動時に、カム溝の底面と外輪の円筒形内周面の双方に線接触する円すいころを組込み、前記内輪と保持器との間にはカム溝の幅中心をポケットの幅中心に一致させる位相合わせ手段を設け、前記円すいころがくさび形空間の狭小部に向けて移動する方向に保持器を軸方向に押圧する弾性手段と、その弾性手段の弾性に抗して保持器を軸方向に移動させる操作手段とを設けた二方向クラッチ。
  3. 前記位相合わせ手段が、前記保持器の端面にワッシャを衝合し、そのワッシャの外周および内周のそれぞれに回り止め片を設け、外側回り止め片を保持器の端部外周に形成された係合凹部に挿入し、内側回り止め片を内輪の内周面に形成された軸方向の係合溝にスライド自在に挿入した構成から成る請求項2に記載の二方向クラッチ。
  4. 前記円すいころが前記カム溝と前記外輪の円筒形内周面のそれぞれに線接触するスタンバイ状態において、内輪の係合溝と内側回り止め片との間に回転方向すきまを形成し、その内側回り止め片の先端と内輪側係合溝の閉塞端部をV形とし、前記外側回り止め片と保持器の係合凹部とをV形とした請求項3に記載の二方向クラッチ。
  5. 前記弾性手段が、保持器の端部に形成された内向きフランジと内輪の端面を相反する方向に押圧するばね部材から成る請求項2乃至4のいずれかに記載の二方向クラッチ。
  6. 前記操作手段が、レバーを有する円板状の操作部材を保持器の端面に対向配置して、保持器の軸心を中心として回転自在に支持し、前記操作部材の回転時に前記保持器を軸方向に押圧する傾斜カムをその操作部材に設けた請求項2乃至5のいずれかに記載の二方向クラッチ。
  7. シートクッションに対してシートバックを起伏自在に連結したリクライニングシートにおいて、前記シートバックの起伏中心軸上に請求項1乃至6のいずれかに記載の二方向クラッチを設け、その二方向クラッチにおける外輪と内輪のいずれか一方をシートクッションに取付け、他方をシートバックに取付けたことを特徴とするリクライニングシート。
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