JP3795747B2 - 透湿防水性シートおよび壁構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、透湿性、防水性、および機械的強度を兼ね備えた複合シートに関し、さらに詳しくは、構築物の外壁側と内壁側との湿度差に応じて壁構造内の湿度を調整することができる透湿防水性シート、および外壁と内壁との間の防湿層としてその透湿防水性シートを使用した壁構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
住宅等の壁構造は、柱と、柱の内側に配された内壁と、柱の外側に配された外壁構造とから基本的に形成され、外壁構造は、柱の外側に配されたハウスラップ材と、ハウスラップ材の外側に配され、最外側に外壁仕上層を備えた外壁材から基本的に形成されている。
【0003】
そして、このような外壁構造は、外壁材から内壁内部への漏水を防止するとともに、特に、寒冷地で冬季に起こる現象である、室内で発生する湿気が内壁を通過し、外壁構造内部に入り込み、冷たい外気の影響で結露する現象を防止すること、および蒸暑地で夏季に起こる壁構造内の結露現象を防止することを目的とした構造となっている。
【0004】
具体的には、透湿抵抗値の高い防湿防水性シート、例えば、厚さ50〜200μm、JIS−A−6930に基づく透湿抵抗値が170m2/h/mmHg/g以上(A種)であるか300m2/h/mmHg/g(B種)であるポリエチレンシートなどを外壁構造内の内壁側に貼り付け、室内に全く湿気を通さないようにした外壁構造が使用されている。
【0005】
また、ハウスラップ材と外壁材との間に、通常約18mm程度の幅を有する通気層を形成することによって、1)外気と内壁とを断熱し、2)空気(室内から発生する湿気を含む)の流通を可能にし、3)漏水の内壁内部への侵入を防ぐことができる外壁構造も使用されている。具体的には、ハウスラップ材の外面に棒材を用いて形成された横方向に適宜間隔を有する複数列の胴縁を介して外壁材を取り付けることによって、通気層を形成することが広く行われている(例えば、実開昭63−53412号公報参照)。また、実開昭63−53412号公報および実公平6−27400号公報には、通気防水シート表面に網材を取付したハウスラップ材が記載されている。さらにまた、実開昭60−152709号公報には、通気性を有する壁シートの表面に通気孔を設けたホットメルト樹脂層を形成した壁シートが記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の透湿抵抗値の高い防湿防水性シートを防湿層に使用した外壁構造は、依然として蒸暑地で梅雨期から夏季の高温高湿時には壁構造内に結露が生じるという問題がある。
【0007】
また、従来の通気層を備えた外壁構造にあっては、外壁材とハウスラップ材との間に所定の間隔を設けるために、その間隔に応じた突起部材をハウスラップ材に別個に取り付けなければならず、したがって施工性が悪いという問題がある。
【0008】
したがって、簡単な施工で、しかも要求される機能を効率的かつ効果的に達成できる外壁構造が強く望まれている。
【0009】
本発明の課題は、周囲の温度変化にもかかわらず、室内と屋外との湿度差に応じて壁構造内で湿度を調整して、壁構造内の結露の発生を防止することができる壁構造を、簡単な施工で形成するために利用できる透湿防水性シートを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、このような課題を解決するために、透湿抵抗値が低い無孔樹脂フィルムと、その無孔樹脂フィルムの透湿抵抗値よりもはるかに低い透湿抵抗値および優れた機械的強度を有する補強材シートを積層することにより、室内と屋外との湿度差が徐々に平衡になるように、室内から屋外へと壁構造内で水蒸気圧を徐々に下げて湿度勾配を形成できる透湿防水性シートを提供でき、このような透湿防水性シートを使用することにより、周囲の温度変化にもかかわらず、結露の発生を防止することができ、しかも施工が簡単な壁構造を形成できることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明の透湿防水性シートは、壁構造を構成する内壁材の室外側面に接するように配置されるJIS−A−6930に基づき測定された透湿抵抗値が2〜20m2・h・mmHg/gであり、厚みが10〜50μmである無孔樹脂フィルムと、当該フィルムの他の面に接するように配置した、該無孔樹脂フィルムの透湿抵抗値より低い透湿抵抗値を有する補強材シートとが積層されて成る透湿防水性シートであって、JIS−Z−0208(修正法)により、40℃および90%RHの条件下で測定された透湿度が100〜200g/(m2・24hr)であることを特徴とする。
【0012】
また、他の形態の透湿防水性シートは、壁構造を構成する内壁材の室外側面に接するように配置されるJIS−A−6930に基づき測定された透湿抵抗値が2〜20m2・h・mmHg/gであり、厚みが10〜50μmである無孔樹脂フィルムと、当該フィルムの他の面に接するように配置される、JIS−A−6930に基づき測定された透湿抵抗値が実質的に0m2・h・mmHg/gである補強材シートとが積層されて成ることを特徴とする。
【0013】
さらに、他の形態の透湿防水性シートは、上記いずれかの透湿防水性シートにおいて、その無孔樹脂フィルムがポリビニルアルコールフィルムであることを特徴とする。
【0014】
さらにまた、他の形態の透湿防水性シートは、上記いずれかの透湿防水性シートにおいて、その補強材シートが熱可塑性樹脂フィラメントから成るスパンボンド不織布であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の他の形態である壁構造は、内壁材と外壁材との間に防湿層を具える壁構造であって、その防湿層は、無孔樹脂フィルムが内壁材に対向して配置された上記のいずれかの透湿防水性シートであることを特徴とする。
【0016】
さらにまた、他の形態の壁構造は、上記の壁構造において、外壁材が、断熱材を具え、補強材シートがその断熱材に接して配置されたことを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の透湿防水性シートに用いられる樹脂フィルムは、防水性および透気性を兼ね備え、さらにJIS−A−6930に基づき測定された透湿抵抗値が2〜20m2/h/mmHg/gであり、厚みが15〜30μmである無孔の樹脂フィルムである。
【0018】
フィルムの透湿抵抗値が上記の範囲外になると、壁構造内で適当な湿度勾配を形成することができない。本発明により特定した透湿抵抗値の範囲内であって、壁構造の具体的な構造、組み合わせる補強材シートの透湿抵抗値および厚さなどを考慮して、壁構造内で湿度勾配を形成できるように適当な透湿抵抗値を有するフィルムが選択されるが、好ましくは、透湿抵抗値が10m2/h/mmHg/gである。
【0019】
また、フィルムの厚さは10〜50μmであり、好ましくは15〜30μmである。厚さが10μmより薄いと、外壁構造に使用するときに均一性及び強度が不十分で破れが生じ易い。一方、50μmを超えると補強材シートを積層して得られるシートとしての透湿性を損ない、また作業性およびコストの面からも好ましくない。
【0020】
フィルムの耐水度は、JIS−L1092における耐水度試験方法A法(低水圧法)静水圧法により測定され、好ましくは300mmH2O以上、さらに好ましくは500mmH2O以上である。
【0021】
フィルムを構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂であり、具体的には、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂などを挙げることができる。このような熱可塑性樹脂から公知の製膜技術によりフィルム化され、ついで延伸されることにより製造される。市販のフィルムとしては、日本合成化学工業株式会社製ボブロン(商品名)などを例示できるが、これに限定されるものではない。
【0022】
本発明の透湿防水性シートに用いられる補強材シートは、無孔樹脂フィルムが有する透気性および防水性を阻害せず、機械的強度に優れたシートであり、さらに、JIS−A−6930に基づき測定された透湿抵抗値が、無孔樹脂フィルムのそれよりも低い。その透湿抵抗値が無孔樹脂フィルムの透湿抵抗値より低くないと、壁構造内に湿度勾配を形成することができない。補強材シートは、無孔樹脂フィルムの透湿抵抗値が上記の範囲内であり、得られた透湿防水性シートの透湿度が、JIS−Z−0208(修正法)により、40℃および90%RHの条件下で測定されたときに、100〜200g/m3・24hrとなるように、選択される。補強材シートの透湿抵抗値は、低いほど好ましく、実質的に0m2/h/mmHg/gであることが最も好ましい。
【0023】
具体的には、透湿抵抗値が上記の要求を満足する不織布、合成繊維紙、織物、および樹脂含浸された織物、編物、不織布などの樹脂含浸繊維体が挙げられる。
【0024】
不織布としては、短繊維を用いて抄紙し、エマルジョンタイプの結合剤または熱カレンダーによる熱接着によって繊維同士を結合した化合繊維、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリアクリロニトリル等の合成繊維、レーヨン、アセテート等の化学繊維、および綿、麻等の天然繊維などからなるステープルから製造された乾式不織布および紡糸直結不織布のいずれも本発明において使用することができる。乾式不織布は、ステープルからウエブを形成し、形成されたウエブを樹脂接着、ニードルパンチ、ステッチボンド、サーマルボンドまたはスパンレース法のいずれかによって接着して布帛とした不織布である。紡糸直結不織布は、ステープルを形成すると同時に不織布を作る直接紡糸法によって押し出されたフィラメントやフィルムを延伸あるいはフラッシュしながらウエブとした不織布であり、その具体的な方法としては、スパンボンド法、フラッシュ法、メルトブロー法を挙げることができる。不織布の目付は、外壁用材料としての強度を左右し、目付が不足すると破れ易くなり、一方、多すぎると厚みが増して作業性が悪くなる。したがって、20〜100g/m2が好ましく、45〜90g/m2がさらに好ましい。
【0025】
スパンレース不織布としては、例えば、ポリエステル短繊維を用いて、高圧水流で繊維を絡み合わせて機械的に結合させた、引張強度、引裂強度および耐水圧は小さいが、吸水性、透湿性および柔軟性に優れた特徴を有するスパンレース不織布が特公平3−73665号公報に記載されている。
【0026】
スパンボンド不織布としては、例えば、ポリプロピレンフィラメントを用いた自己接着で結合された、引張強度、引裂強度および透気性が大きいが、耐水圧、吸水性および柔軟性について他の不織布と比べ相対的に劣る特徴を有するスパンポンド不織布が特公昭55−421175号公報に記載されている。本発明において使用する補強材シートとしては、スパンボンド不織布が好ましく、リサイクル性、化学安定性、廃棄処理の問題を考慮すると、ポリプロピレンから成るスパンボンド不織布がさらに好ましい。市販のスパンボンド不織布としては、イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー製の「ザーバン(登録商標)」、「タイベック(登録商標)」などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0027】
フラッシュ紡糸不織布としては、例えば、繊維形成性ポリマーのポリオレフィンと紡糸時にガス化する溶剤を用いて、ポリマーを延伸しながら固化することにより極細の繊維要素からなる網状の連続繊維を結合した、高強度で強靭、高耐水圧、透湿性、通気性を有するフラッシュ紡糸不織布が特公昭40−28125号公報、特公昭41−6215号公報、特公昭42−19520号公報および特公昭43−21112号公報に記載されている。
【0028】
メルトブロー紡糸不織布の具体例は、疎水性重合体組成物を通常のメルトブロー紡糸装置を用いて溶融し、溶融重合体の一定量をダイから吐出させ、その溶融重合体を高圧気体流で平均繊維直径約0.1〜5.0μmの極細繊維流として紡出・搬送し、その繊維流を捕集体に集積することにより製造されたメルトブロー極細繊維不織布である。この不織布の重量は、単一不織布で使用する場合は平均重量30〜500g/m2であり、他の高通気性シートと積層して使用する場合は平均重量15〜200g/m2である。得られた不織布は少なくとも一面をカレンダー掛け、プレスあるいは熱プレスなどの処理を施して緻密化あるいは部分融着し、必要に応じて耐水度を高めるための処理剤を付与して高耐水性不織布シートとする。
本発明において、透湿防水性シートとして使用される合成繊維紙とは、直径0.1〜5.0mmの極細短繊維あるいはパルプ状物と合成繊維とからなるものであって、抄紙後、熱圧カレンダー加工により製造されたシート材である。さらに、合成繊維紙には、そのようなシート材に、防水性を向上させる撥水剤および樹脂剤、耐候性を向上させる紫外線吸収剤および光安定剤、耐久性を向上させる酸化防止剤、表面保護剤等の薬剤や樹脂を塗布してなるもの、およびシート材を構成する成分にこのような添加剤を含有させて製造したシート材も含まれる。
【0029】
本発明において、透湿防水性シートとして使用される樹脂含浸繊維体の例としては、特公昭60−47955号公報に透湿性、防水性コーティング生地が、特公平5−85672号公報には不織布にフィラーを含んだ熱可塑性樹脂をコーティングし、成膜後カレンダー加工して得られる通気性防水性不織布が開示されている。
【0030】
無孔樹脂フィルムと補強材シートとは、両者の組み合わせによって決定される透湿抵抗特性を損なわない公知の方法によって接合されて透湿防水性シートが形成される。接合の一般的方法としては、縫製、ドット接着、全面接着、超音波接着、熱融着等がある。さらにまた、ホットメルト剤の押し出し筋ラミネート法、スプレー法、押し出しポーラスコート法、ホットメルト剤の粉体散布・熱固着法なども利用することができる。好ましい接合方法は、ホットメルト剤をドット接着するスプレー法である。
【0031】
樹脂フィルムと補強材シートとは、補強材シート上に、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂を公知の方法により直接塗工することにより、積層されて、透湿防水性シートが形成されてもよい。
【0032】
本発明の透湿防水性シートの厚さは、好ましくは150〜400μmである。150μmより薄いと破れが生じやすく、400μmを超えると重ね合わせ部分の気密性の確保が困難により、高気密性住宅を実現に適さない。
【0033】
本発明の透湿防水性シートの透湿性は、JIS−Z−0208(修正法)により、40℃および90%RHの条件下で測定された透湿度が100〜200g/m2・24hrである。この範囲から外れると、壁構造の防湿層として利用した場合には、室内から屋外へと湿度勾配を形成することができず、したがって、湿度が徐々に平衡になるように水蒸気圧を下げることができなくなり、特に蒸し暑い夏季には壁構造内で結露が生じてしまう。
【0034】
本発明の透湿防水性シートを外壁構造に使用する場合には、直接雨に曝されることがないため、耐水度は特に制限されないが、直接雨に曝されるような用途に使用する場合には、耐水度試験JIS L−1092A法(低水圧法)により測定される耐水度は2000mmH2Oであることが必要となる。
【0035】
本発明の透湿防水性シートは、その使用目的に応じて適当な強度を有することが必要である。外壁構造に使用する場合には、JIS−A−6930により測定されたつづら針保持強さが2.5/1.9Kgfであることが好ましい。さらに、アルカリ浸漬後にJIS−A−6930により測定された強度の、当初のつづら針保持強さに対する保持率も80%以上であることが好ましい。
【0036】
本発明の他の形態である壁構造は、内壁材と外壁材との間に防湿層として上記の透湿防水性シートを具える。透湿防水性シートは、その無孔樹脂フィルムが内壁材に対向して配置される。好ましくは、外壁材が断熱材を具え、そして透湿防水性シートの補強材シートをその断熱材に接して配置する。
【0037】
好ましい壁構造は次のとおりである。柱、門柱などによって形成される壁空間にグラスウールなどの断熱材を充填し、その内面側に内装材を貼る際に、内装材の裏面に無孔樹脂フィルムが接するように透湿防水性シートを配置し、ついで透湿防水性シートの補強材シートが断熱材に接するように配置し、断熱材の表面に、順次、防風紙、モルタル下地材を張設し、さらにラス網を取り付けた後にモルタルを塗ることにより壁構造が形成される。この壁構造を一体的に固着する方法は、タッカー止めまたは接着止めが一般的に採用されている。また、断熱材に予め断熱材より大きいサイズの透湿防水性シートを上述のように配置し、取り付け、先に述べた壁空間に断熱材を充填する際に、そのシートがその端部で重なるように配置した後、タッカーなどの方法で壁構造に固定する方法を使用することもできる。モルタル下地材としては、吸水性がなく、モルタルとの接着強度が大きく、そして優れた針穴シール性を有して、外壁構造全体の防水性を高めることができるものであれば、公知のいかなるものを使用してもよい。また、窓開口部の回りは、防水テープ貼りにミスがあった場合等、雨水の浸入が起こり易い場所であるため、公知の市販されている3次元対応防水シートを使用して、水漏れを完全に防ぐことが好ましい。
【0038】
本発明の透湿防水性シートは、これによって隔てられた温度および湿度の異なる内側と外側との間で湿度勾配を形成し、湿度が高い側から低い側へと湿度が徐々に平衡するように水蒸気圧を下げることができる。したがって、壁構造に限られず、このような機能を必要とする構造物、例えば、屋根構造において、本発明の透湿防水性シートを使用することもできる。
【0039】
【実施例】
本発明を以下に実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明は本実施例にのみ限定されるものではない。
【0040】
以下の例において使用された無孔樹脂フィルム、補強材シート、および透湿防水性シートの物性の測定方法は次のとおりである。
A.耐水圧
JIS L−1092 4.1.1.A法(低水圧法)により測定した。
B.透湿度
JIS Z−02081法により測定条件40℃、90%RHの下で測定した。
C.透湿抵抗値
JIS A−6930法により測定した。
D.つずら針保持強さ
JIS A−6930法により測定した。
E.アルカリ浸漬後の強度
JIS A−6930法により測定した。
【0041】
(実施例1〜2)
無孔樹脂フィルムとして透湿度が100〜200g/m2・24hrである日本合成化学工業株式会社製のポリビニルアルコールフィルム(15μm厚)を用い、そして補強材シートとしてデュポン社製のポリプロピレンスパンボンド不織布「ザバーン(登録商標)」(秤量45g/m2)を用いて、ポリウレタン系ホットメルト剤のドット状接着(固形分付着量5〜10g/m2)により両者を接合して積層体(透湿防水性シート)を製造した。得られた複合シートの目付は84g/m2であり、柔軟性および強靭性を兼ね備えていた。また、透湿抵抗値は10m2/h/mmHg/gであり、透湿度は127.5g/m2/24hrであり、耐水圧は2000mmH2O以上であった。透湿防水性シートの物性を表1に示す。
【0042】
このようにして得られた透湿防水性シートを防湿層として用い、表2に示す内装材、100mm厚のグラスウール断熱材、防風紙、外装材と順次組み合わせて、約25mm程度の幅を有する通気層を防風紙と外装材との間に設けた壁構造を形成した。
【0043】
形成された壁構造を、1998年7月から2000年3月までの期間、茨城県土浦市に建築した木造住宅において使用し、夏型結露および冬型結露の発生を観察した結果、いずれの結露も全く起こらなかった。
【0044】
(実施例3〜4)
実施例1と同様に複合シートを製造した。得られた複合シートを防湿層として用い、表3に示す内装材、100mm厚のグラスウール断熱材、防風紙、外装材と順次組み合わせて、通気層を有さない壁構造を形成した。
【0045】
形成された壁構造を用いて、実施例1と同様に、夏型結露および冬型結露の発生を観察した結果、いずれの結露も全く起こらなかった。
【0046】
(比較例1〜3)
防湿層として15μm、透湿度9.4g/m2/24hrであるポリエチレンフィルムを使用した以外は、実施例1と同様に通気層を有する外壁構造を形成した。
【0047】
形成された壁構造を用いて、実施例1と同様に、夏型結露および冬型結露の発生を観察した結果、夏型の結露も冬型の結露も観察された。
【0048】
(比較例4〜6)
防湿層として15μm、透湿度9.4g/m2/24hrであるポリエチレンフィルムを使用した以外は、実施例3と同様に通気層を有さない壁構造を形成した。
【0049】
形成された壁構造を用いて、実施例1と同様に、夏型結露および冬型結露の発生を観察した結果、夏型の結露も冬型の結露も観察された。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
表中に記載した記号または商品名、およびその製造者は以下のとおりである。
PV−100:(株)マグ製グラスウール、商品名マグシルバーポリカット
タイベック:商品名、デュポン社製フラッシュスパン不織布「タイベック(登録商標)」
センチュリボード:商品名、三井木材工業(株)製硬質木片セメント板
ニチハボード:商品名、ニチハ製硬質繊維板
ダイライト:商品名、大建工業製火山性ガラス質複層板
【0054】
【発明の効果】
本発明による透湿防水性シートは、これによって隔てられた温度および湿度の異なる内側と外側との間で湿度勾配を形成し、湿度が高い側から低い側へと湿度が徐々に平衡するように水蒸気圧を下げることができる。したがって、内壁材と外壁材との間に、この透湿防水性シートから成る防湿層を設けることにより、工法や地域の気候にかかわらず結露の問題が生じない、施工も簡単な壁構造を提供することができる。
Claims (6)
- 壁構造を構成する内壁材の室外側面に接するように配置されるJIS−A−6930に基づき測定された透湿抵抗値が2〜20m2・h・mmHg/gであり、厚みが10〜50μmである無孔樹脂フィルムと、当該フィルムの他の面に接するように配置される、該無孔樹脂フィルムの透湿抵抗値より低い透湿抵抗値を有する補強材シートとが積層されて成る透湿防水性シートであって、JIS−Z−0208(修正法)により、40℃および90%RHの条件下で測定された透湿度が100〜200g/(m2・24hr)であることを特徴とする透湿防水性シート。
- 壁構造を構成する内壁材の室外側面に接するように配置されるJIS−A−6930に基づき測定された透湿抵抗値が2〜20m2・h・mmHg/gであり、厚みが10〜50μmである無孔樹脂フィルムと、当該フィルムの他の面に接するように配置される、JIS−A−6930に基づき測定された透湿抵抗値が実質的に0m2・h・mmHg/gである補強材シートとが積層されて成ることを特徴とする透湿防水性シート。
- 前記無孔樹脂フィルムがポリビニルアルコールフィルムであることを特徴とする請求項1または2に記載の透湿防水性シート。
- 前記補強材シートが熱可塑性樹脂フィラメントから成るスパンボンド不織布であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透湿防水性シート。
- 内壁材と外壁材との間に防湿層を具える壁構造であって、
前記防湿層は、前記無孔樹脂フィルムが内壁材に対向して配置された請求項1〜4のいずれかに記載の透湿防水性シートであることを特徴とする壁構造。 - 前記外壁材は、断熱材を具え、前記補強材シートが該断熱材に接して配置されたことを特徴とする請求項5に記載の壁構造。
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