JP3791246B2 - 窒化物半導体の成長方法、及びそれを用いた窒化物半導体素子の製造方法、窒化物半導体レーザ素子の製造方法 - Google Patents
窒化物半導体の成長方法、及びそれを用いた窒化物半導体素子の製造方法、窒化物半導体レーザ素子の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は窒化物半導体(InXAlYGa1-X-YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)の成長方法に係り、特に転位の少ない窒化物半導体よりなる基板の成長方法に関する。また、本発明は、前記窒化物半導体よりなる基板を用い発光ダイオード、レーザダイオード等の発光素子、あるいは太陽電池、光センサー等の受光素子に使用される窒化物半導体(InXAlYGa1-X-YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)よりなる窒化物半導体素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、サファイア、スピネル、炭化ケイ素のような窒化物半導体と異なる異種基板の上、又は異種基板上に成長された窒化物半導体上に、窒化物半導体が成長しないかあるいは成長しにくい材料からなるSiO2等の保護膜を成長させ、この上に窒化物半導体を選択成長させることにより、転位を低減できる種々の窒化物半導体の成長方法[ELOG(Epitaxially laterally overgrown GaN)の成長方法]が知られている。
【0003】
例えば、SiO2等の保護膜を用いる場合のELOGの成長方法としては、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.37(1998)pp.L309−L312(以下単にJ.J.A.P.の文献とする。)に、サファイア上に成長させた窒化物半導体上にSiO2等のマスクを部分的(例えばストライプ形状)に形成し、その後、この上に窒化物半導体を成長させることにより、転位の少ない窒化物半導体を得ることが記載されている。
このELOG成長は、マスクを形成しこのマスクを覆うように意図的にGaNを横方向に成長させることにより、マスク上方部に成長した窒化物半導体には転位がほとんど見られなくなるものである。つまり、マスクを覆うように窒化物半導体が横方向に成長すると、この窒化物半導体の成長に伴って転位も横方向に伝播し、一旦横方向に伝播した転位は、再び縦方向(窒化物半導体の成長方向)に伝播しなくなり、これによって、マスク上方部に成長する窒化物半導体には転位がほとんど見られなくなる。
そして、マスクを形成していない部分に成長したGaNの表面には、ほぼ1×107/cm2の転位があるが、マスクの上方部に成長したGaNの表面には転位がほとんど見られなくなる。このように、転位の少ない窒化物半導体の基板を得ることが可能となったことから、窒化物半導体素子の寿命特性を向上させることができる。
【0004】
しかし、上記J.J.A.P.の文献に記載のELOGの成長方法は、転位を低減でき、寿命特性の良好な素子を得ることができるものの、成長時の熱によってSiO2が分解する可能性がある。SiO2が分解すると、SiO2上から窒化物半導体が異常成長したり、分解したSiやO等が窒化物半導体に入りGaNを汚染したりして、結晶性の低下を招くことがある。
【0005】
これに対して、SiO2等の保護膜を用いない場合のELOGの成長方法としては、特開平8−64791号公報に、異種基板上にアモルファス状のGaN膜を成長させた後、このアモルファス状のGaN膜をストライプ状にエッチングし、この上にさらに窒化物半導体を成長させることにより、アモルファスGaN膜部分以外から成長する窒化物半導体の転位が、アモルファスGaN膜上部に成長する特定の窒化物半導体部分に集中し、アモルファス膜上部以外に成長する窒化物半導体の転位を低減できることが記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平8−64791号公報に記載の方法では、転位がアモルファスGaN膜の上部に成長する特定の部分に集中する傾向があるが、十分に転位をアモルファス膜に集中させることができず、ストライプ状のアモルファス以外から成長する窒化物半導体の転位の低減が十分ではない。
このようなSiO2等の保護膜を用いないELOGの成長方法では、十分満足できる程度に転位の低減された窒化物半導体を得ることができない。寿命特性の良好な窒化物半導体素子を作製するには、転位の少ない窒化物半導体の基板を得ることが望ましいが、上記従来の方法では十分な寿命特性を有する程度に転位を低減させることが難しい。
【0007】
そこで、本発明の目的は、SiO2等の保護膜を用いずとも、転位の低減された、結晶性が良好な窒化物半導体を得ることができる窒化物半導体の成長方法を提供することである。
更に、本発明は、結晶性が良好で且つ転位の少ない窒化物半導体を基板とする窒化物半導体素子の製造方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の目的は、下記(1)〜(9)の構成によって達成することができる。
(1) 窒化物半導体と異なる材料よりなる異種基板の上に、第1の窒化物半導体を成長させる第1の工程と、
前記第1の工程後、前記第1の窒化物半導体の表面をドライエッチングにより窒化物半導体が成長しにくいか又は成長しないように部分的に改質し、第1の窒化物半導体の表面への窒化物半導体の成長に選択性を持たせる第2の工程と、
前記第2の工程後、前記表面が部分的に改質された第1の窒化物半導体上に、第2の窒化物半導体を成長させる第3の工程を少なくとも有することを特徴とする窒化物半導体の成長方法。
(2) 前記第2の工程が、異種基板上に成長された第1の窒化物半導体上に、保護膜を部分的に形成した後、該保護膜の形成されていない部分を、前記ドライエッチングによりN欠損部分を形成して第1の窒化物半導体の表面を部分的に改質し、その後、保護膜を除去する工程であることを特徴とする前記(1)に記載の窒化物半導体の成長方法。
(3) 前記ドライエッチングが、希ガス及びO2ガスの少なくとも1種以上のガスを用いることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の窒化物半導体の成長方法。
(4) 前記第3の工程後に、前記第2の窒化物半導体の表面であり、且つ第1の窒化物半導体の表面改質部分以外の部分の上部をドライエッチングにより窒化物半導体が成長しにくいか又は成長しないように部分的に改質し、第2の窒化物半導体の表面への窒化物半導体の成長に選択性を持たせる第4の工程と、
前記第4の工程後、前記表面が部分的に改質された第2の窒化物半導体上に、第3の窒化物半導体を成長させる第5の工程を有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の窒化物半導体の成長方法。
(5) 前記異種基板が、サファイアのC面がステップ状にオフアングルされていることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の窒化物半導体の成長方法。
(6) 前記ステップ状にオフアングルされているサファイア基板のオフアングル角が、0.1°〜0.5°であることを特徴とする前記(5)に記載の窒化物半導体の成長方法。
(7) 前記ステップ状にオフアングルされているサファイア基板のステップに沿う方向(段差方向)が、サファイアのA面に対して垂直に形成されていることを特徴とする前記(5)又は(6)に記載の窒化物半導体の成長方法。
(8) 前記(1)〜(7)のいずれか1つに記載の窒化物半導体の成長方法により基板を成長させる第1の工程と、前記基板上に素子構造となる少なくともn型窒化物半導体、活性層、及びp型窒化物半導体を形成する第2の工程を有することを特徴とする窒化物半導体素子の製造方法。
(9) 前記(1)〜(7)のいずれか1つに記載の窒化物半導体の成長方法により基板を成長させる第1の工程と、前記基板上に素子構造となる少なくともn型窒化物半導体、活性層、及びp型窒化物半導体を形成する第2の工程と、前記窒化物半導体基板の第1の窒化物半導体に形成された改質部分上部に、窒化物半導体レーザ素子の光を導波するストライプ形状又はリッジ形状を形成する第3の工程を有することを特徴とする窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
【0009】
つまり、本発明の窒化物半導体の成長方法は、異種基板上に成長された第1の窒化物半導体の表面を部分的に、窒化物半導体が成長しにくくなるように改質することにより、この改質部分への第2の窒化物半導体の成長が抑制され、第1の窒化物半導体の表面への窒化物半導体の成長に選択性が生じ、従来のSiO2等の保護膜を用いた場合のように、改質部分が保護膜のような働きをすることで、改質部分の上方部に成長する第2の窒化物半導体には転位がほとんど見られなくなる。
【0010】
従来のSiO2を用いないELOGの成長方法では、SiO2を用いた場合のように窒化物半導体の成長に選択性が得られないので、意図的に窒化物半導体を横方向に成長させることができない。
また、SiO2を用いる従来技術では、窒化物半導体の成長に選択性が得られ転位のほとんどない部分を形成することができるが、熱によるSiO2の分解による汚染等での結晶性の低下が懸念される。
【0011】
これに対して、本発明の窒化物半導体の成長方法は、上記のように、SiO2等のマスクを用いずとも、窒化物半導体の表面を部分的に改質することで、窒化物半導体の成長に選択性を持たせることができる。これによって、改質部分へ向かって、意図的に窒化物半導体を横方向に成長させることができ、その結果、転位の低減が可能となる。
本発明において、改質部分では窒化物半導体の成長が抑制され、改質部分以外から窒化物半導体が成長する。この成長を始めた窒化物半導体が、厚膜に成長していく過程で、成長の抑制されている改質部分方向に意図的に横方向に成長し、それと同時に転位も改質部分方向に向かって横方向に伝播する。その結果、改質部分の上方部に成長する第2の窒化物半導体には転位がほとんど見られなくなる。
【0012】
転位は、窒化物半導体の成長の方向とほぼ同様の方向に伝播する性質を有するが、窒化物半導体の縦方向の成長に比べて横方向の成長が促進される(意図的に横方向に成長させる場合に横方向の成長が促進される傾向がある。)と横方向に伝播する傾向がある。そして、一旦横方向に伝播した転位は、再び横方向の成長に比べて、縦方向の成長が促進されても、再び縦方向(改質部分の上方部)に伝播しにくくなる傾向がある。その結果、改質部分の上に向かって意図的に横方向に成長した窒化物半導体部分には転位がほとんど見られなくなる。
【0013】
また、転位のほとんど見られない部分を有する第2の窒化物半導体を基板として素子構造を形成すると、寿命特性の良好な窒化物半導体素子が得られる。この場合、素子の導波路等が、転位のほとんど見られない部分の上方に形成されていることが寿命特性を向上させる点で好ましい。
【0014】
更に、本発明は、第2の工程が、異種基板上に成長された第1の窒化物半導体上に、保護膜を部分的に形成した後、該保護膜の形成されていない部分を、ドライエッチングしてN欠損部分を形成して第1の窒化物半導体の表面を部分的に改質し、その後、保護膜を除去する工程であると、改質部分への窒化物半導体の成長を良好に抑制でき、改質部分以外から成長する窒化物半導体の横方向の成長を良好とし、転位の低減の点で好ましい。
この場合、保護膜の形成されていない分部をドライエッチングするとN欠損部分が形成され、このN欠損となった窒化物半導体の表面には窒化物半導体が成長しないか又は成長しにくくなる。
更に、本発明は、ドライエッチングが、希ガス及びO2ガスの少なくとも1種以上のガスを用いて行うものであると、スパッタリングのみでのドライエッチングとなり有効に改質できる点で好ましい。保護膜の形成されていない部分の第1の窒化物半導体の表面では、上記のようなガスでドライエッチングすると、窒化物半導体はほとんど削れず、窒化物半導体の質のみが変わる。そのため改質部分を有する第1の窒化物半導体の表面を、第2の窒化物半導体が良好に覆い易くなる。
【0015】
また、第2の工程が、異種基板上に成長された第1の窒化物半導体上に、不純物を部分的に拡散させて第1の窒化物半導体の表面を部分的に改質する工程であると、改質部分への窒化物半導体の成長を良好に抑制でき、改質部分以外から成長する窒化物半導体の横方向の成長を良好とし、転位の低減の点で好ましい。
更に、不純物が、周期律表の3B族及び5B族以外の元素であると、不純物の拡散部分への窒化物半導体の成長を良好に抑制でき好ましい。不純物の拡散部分では、窒化物半導体が成長しない又は成長しにくくなっている。
【0016】
また、本発明の方法における第1の窒化物半導体の表面の改質の方法は、第1の窒化物半導体表面にあまり段差が生じず、改質部分以外から成長する第2の窒化物半導体が良好に改質部分を覆い易くなる傾向がある。そして、この改質部分を覆い易くなる傾向は、第2の窒化物半導体の膜厚を比較的薄膜で成長させても、転位の低減が良好に行われるので、第2及び第3の工程を繰り返して行う場合、成長時間の短縮など操作の簡素化が可能となり好ましい。
【0017】
更に、本発明において、第2の窒化物半導体を厚膜に成長させた後、第2の工程と第3の工程を繰り返すことで転位を更に低減させることができる。但し、繰り替えされる第2の工程は、第1の窒化物半導体の表面に形成された改質部分以外の上部に、第2の窒化物半導体の表面に形成される改質部分が位置するように、第2の窒化物半導体の表面に部分的に改質が行われる。また、第2及び第3の工程は、2回以上繰り返してもよい。
このように第1の窒化物半導体の表面の改質部分と、第2の窒化物半導体の表面の改質部分とが、上記のように交互になっていると、改質部分の上部に厚膜に成長する窒化物半導体には転位がほとんど見られなくなることから、改質部分を有する第2の窒化物半導体上に成長させる窒化物半導体の表面全面には、転位がほとんど見られなくなる。このように全体的に転位の低減された窒化物半導体を基板として素子構造を成長させると、寿命特性の良好な素子を量産する場合に好ましい。
【0018】
更に、本発明の成長方法において、異種基板が、サファイアのC面がステップ状にオフアングルされているものであると、得られた窒化物半導体を基板として素子構造を形成する際に、1チップの大きさに値する程度の幅の良好な平面を有する窒化物半導体基板が得られ、寿命特性の良好な素子が選られやすくなり好ましい。更に、ステップ状にオフアングルされていると、レーザ素子ではしきい値が低下し、LEDでは発光出力が20〜30%向上する傾向がある。
更に本発明において、ステップ状にオフアングルされているサファイア基板のオフアングル角が、0.1°〜0.5°であると、上記良好な平面となる部分の表面性が良好となり、この上に素子を形成すると寿命特性をより良好にすることができ好ましい。更にオフ角が上記範囲であると、しきい値がより低下し、発光出力がより向上し好ましい。
更に本発明において、ステップ状にオフアングルされているサファイア基板のステップに沿う方向(段差方向)が、サファイアのA面に対して垂直に形成されていると、サファイアのA面に対して窒化物半導体のM面が平行となるように第2の窒化物半導体が成長し、段差方向に平行に、例えばリッジ形状のストライプを形成すると、M面で劈開し易くなり良好な共振面が得られるので好ましい。
【0019】
また本発明は、上記本発明の窒化物半導体の成長方法により得られる窒化物半導体を基板として、この上に素子構造となる少なくともn型窒化物半導体、活性層、及びp型窒化物半導体を形成することにより、寿命特性の良好な窒化物半導体素子を得ることができる。
更に、本発明において、リッジ形状のストライプを有する窒化物半導体レーザ素子を製造する場合、前記窒化物半導体の成長方法で改質された部分の上部にリッジ形状のストライプが位置するように素子を製造すると、より良好な寿命特性のレーザ素子が得られ好ましい。また上記本発明の方法で第2及び第3の工程を繰り返す場合は、特にリッジ形状のストライプの形成される位置を考慮しなくともよい。
転位の少ない部分に窒化物半導体素子を形成すると、良好な素子特性を有するので好ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図を用いて本発明を更に詳細に説明する。
図1〜図4は、本発明の窒化物半導体の成長方法の一実施の形態を段階的に示した模式図である。
【0021】
本発明の窒化物半導体の成長方法の一実施の形態として、まず、図1の第1の工程において、異種基板1上に第1の窒化物半導体2を成長させ、図2の第2の工程において、第1の窒化物半導体2の表面を部分的に窒化物半導体が成長しにくいか又は成長しないように改質し、第1の窒化物半導体2の表面への窒化物半導体の成長に選択性を持たせ、続いて図3の第3の工程において、部分的に改質された第1の窒化物半導体2上に、第2の窒化物半導体3を成長させる。
【0022】
以下に上記各工程ごとに図を用いて更に詳細に説明する。
(第1の工程)
図1は異種基板1上に、第1の窒化物半導体2を成長させる第1の工程を行った模式的段面図である。
この第1の工程において、用いることのできる異種基板としては、例えば、C面、R面、及びA面のいずれかを主面とするサファイア、スピネル(MgA12O4)のような絶縁性基板、SiC(6H、4H、3Cを含む)、ZnS、ZnO、GaAs、Si、及び窒化物半導体と格子整合する酸化物基板等、従来知られている窒化物半導体と異なる基板材料を用いることができる。好ましい異種基板としては、サファイア、スピネルが挙げられる。
【0023】
また、第1の工程において、異種基板1上に第1の窒化物半導体2を成長させる前に、異種基板1上にバッファ層(図示されていない)を形成してもよい。バッファ層としては、AlN、GaN、AlGaN、InGaN等が用いられる。バッファ層は、900℃以下300℃以上の温度で、膜厚0.5μm〜10オングストロームで成長される。このように異種基板1上にバッファ層を900℃以下の温度で形成すると、異種基板1と第1の窒化物半導体2との格子定数不正を緩和し、第1の窒化物半導体2の結晶欠陥が少なくなる傾向にある。
【0024】
第1の工程において、異種基板1上に形成される第1の窒化物半導体2としては、アンドープ(不純物をドープしない状態、undope)のGaN、Si、Ge、及びS等のn型不純物をドープしたGaNを用いることができる。
第1の窒化物半導体2は、高温、具体的には約900℃より高温〜1100℃、好ましくは1050℃で異種基板1上に成長される。このような温度で成長させると、第1の窒化物半導体2は単結晶となる。第1の窒化物半導体2の膜厚は特に限定しないが、第1の窒化物半導体の表面の改質が良好に行える程度の膜厚であることが好ましく、例えば具体的には、500オングストローム〜10μmが好ましく、2.5μm〜5μmがより好ましい。上記範囲であると、反りが防止され、結晶性が良好となり好ましい。
【0025】
(第2の工程)
次に、図2は異種基板1上に第1の窒化物半導体2を成長させた後、第1の窒化物半導体2の表面を部分的に窒化物半導体が成長しにくい又は成長しないように改質し、第1の窒化物半導体2の表面への窒化物半導体の成長に選択性を持たせてなる模式的断面図である。
【0026】
第2の工程において、部分的に表面を改質するとは、少なくとも第1の窒化物半導体2の表面に、窒化物半導体が成長しないように窒化物半導体の表面の性質を変化させて、窒化物半導体の成長を抑制することである。
また、第1の窒化物半導体2の表面に形成される改質の部分の形状は、特に限定されないが、第1の窒化物半導体2を真上から見た状態での形状が、例えば、ランダム状、ストライプ状、碁盤目状、ドット状に形成できる。好ましい形状としては、ストライプ状であり、この形状とすると、異常成長が少なく、より平坦に埋まり好ましい。
【0027】
改質の部分の形状をストライプ状とする場合、ストライプの形状としては、特に限定されないが、例えば改質部分のストライプ幅を1〜30μm、好ましくは10〜20μmであり、改質部分以外の部分のストライプ間隔を1〜30μm、好ましくは2〜20μmであるものを形成することができる。
このようなストライプ形状を有していると、転位の低減と面状態を良好にする点で好ましい。
【0028】
本発明において、第1の窒化物半導体2の表面の改質としては、特に限定されず、少なくとも窒化物半導体の成長が抑制されていればよく、例えば好ましい具体例としては、一旦、部分的に保護膜を形成した後ドライエッチングすることで保護膜の形成されていない部分を改質する方法[但し、保護膜は、改質後に等方性のエッチング(ドライエッチングまたはウエットエッチング)で除去する](図2のa−1からa−3参照)、及び不純物(周期律表の3B族及び5B族以外の元素)を拡散させて改質する方法(図2のb−1からb−3参照)が挙げられる。以下にこれらの好ましい改質の方法について説明する。
【0029】
まず、図2の(a−1)から(a−3)に示されたドライエッチングにて改質する方法について説明する。
図2の(a−1)に示すように、保護膜を第1の窒化物半導体2の表面に部分的に形成する。その後、図2(a−2)に示すように、保護膜の形成されている第1の窒化物半導体2上からドライエッチングして、保護膜の形成されていない部分の第1の窒化物半導体2表面にN欠損部分を形成することにより、第1の窒化物半導体2の表面を部分的に改質する。改質後、図2(a−3)に示すように、保護膜を等方性のエッチング(ドライエッチングまたはウエットエッチング)で除去する。
【0030】
第1の窒化物半導体2上に形成される保護膜としては、特に限定されず、第1の窒化物半導体の表面をドライエッチングで改質する際に第1の窒化物半導体を保護できるような材料であれば特に限定されず、例えば酸化物、金属、フッ化物、窒化物、等が挙げられる。例えば具体的には酸化ケイ素(SiOX)、窒化ケイ素(SiXNY)、酸化チタン(TiOX)、酸化ジルコニウム(ZrOX)等の酸化物、窒化物、またこれらの多層膜、金属等を用いることができる。好ましい保護膜材料としては、SiO2及びSiNが挙げられる。このような保護膜を用いることは、ドライエッチング時の選択制、及び窒化物半導体へ拡散しない点で好ましい。
【0031】
上記のような保護膜を第1の窒化物半導体2の表面に形成する方法としては、例えば蒸着、スパッタ、CVD等の気相製膜技術を用いることができる。また、部分的(選択的)に形成するためには、フォトリソグラフィー技術を用いて、所定の形状を有するフォトマスクを作製し、そのフォトマスクを介して、前記材料を気相製膜することにより、所定の形状を有する保護膜を形成できる。保護膜の形状は、特に限定されないが、例えばドット、ストライプ、碁盤面状の形状で形成でき、好ましくはストライプ状の形状でストライプがオリエンテーションフラット面(サファイアのA面)に垂直になるように形成される。また保護膜が形成されている表面積は、保護膜が形成されていない部分の表面積より小さい方が転位を防止して良好な結晶性を有する窒化物半導体基板を得ることができる。
保護膜の幅は、上記した改質部分以外の部分の幅で調整され、また、保護膜と保護膜の間の幅は、上記の改質部分の幅で調整される。更に保護膜の形成される形状として、改質部分の形状が上記したような例えばストライプ状等になるように適宜調整される。
【0032】
上記のように保護膜を第1の窒化物半導体2の表面に部分的に形成した後、N欠損部分を形成するドライエッチングについて記載する。
ドライエッチングとしては、異方性のドライエッチングであり、さらに非反応性のドライエッチングが好ましい。エッチングに用いられるガスとしては、He、Ne、Ar及びXe等の希ガス、及びO2ガス等の少なくとも1種以上のガスを用いることができる。
このようなガスを用いると、スパッタリングのみでのドライエッチングとなり、有効に改質できる点で好ましい。改質されている部分は、N欠損となり、この部分には窒化物半導体が成長しないような性質の結晶面となっている。
また、保護膜の形成されていない部分の第1の窒化物半導体の表面では、上記のようなガスでドライエッチングすると、窒化物半導体はほとんど削れず、窒化物半導体の質のみが変わる。そのため改質部分を有する第1の窒化物半導体の表面を、第2の窒化物半導体が良好に覆い易くなる。
上記のように改質部分を形成した後、第1の窒化物半導体2の表面から保護膜を除去し、この上に第2の窒化物半導体3を成長させる。
本発明において、ドライエッチングによる改質部分は、従来技術のSiO2を用いる場合のELOGの成長方法におけるSiO2と同様の働きをする。
【0033】
次に、参考例として図2の(b−1)から(b−3)に示された不純物の拡散により改質する方法について記載する。
図2の(b−1)に示すように、第1の窒化物半導体2上に、不純物となる元素を部分的に形成し、続いて、図2(b−2)に示すように、熱処理を行い元素を第1の窒化物半導体2の表面付近に拡散させ、その後、図2(b−3)に示すように、不純物となる元素を第1の窒化物半導体2表面から除去することで、元素の形成されていた部分に不純物が拡散され、その部分の表面は窒化物半導体の成長の抑制されるような性質の結晶面となり改質される。
【0034】
上記の不純物となる元素としては、特に限定されないが、例えば好ましい元素としては、3B族及び5B族以外の元素が挙げられ、より好ましくは3B族及び5B族以外の元素で電気陰性度が、Gaより大きい元素が挙げられる。更に好ましい具体例としては、Ni、Au、Co、Cr、Fe及びCuのいずれか1種以上の元素を用いることができる。このような元素を用いると、改質部分以外への拡散が少なく、第1の窒化物半導体2の表面を部分的に改質でき、改質後に成長させる第2の窒化物半導体3の転位を良好に低減でき好ましい。
不純物となる元素の形成される形状や、元素の形成されない部分の幅等は、上記の改質部分及び改質部分以外の部分の形状と同様である。
また、不純物となる元素の形成される際の膜厚は、第1の窒化物半導体2の表面が改質される程度であれば特に限定されず、例えば好ましい膜厚としては、10オングストローム〜5μm、好ましくは100オングストローム〜1μmである。上記範囲の膜厚であると、第1の窒化物半導体の改質と、不純物となる元素の形成及び除去の点で好ましい。
【0035】
上記の元素を第1の窒化物半導体2の表面に形成後の熱処理としては、元素が拡散される程度の温度で熱処理され、具体的には、例えば200〜800℃、好ましくは400〜700℃程度に熱して、元素を第1の窒化物半導体に拡散させる。上記範囲の温度で熱処理すると、不純物となる元素が良好に拡散され第1の窒化物半導体2の表面の改質の点で好ましい。
【0036】
上記の熱処理の後、元素を第1の窒化物半導体2の表面から除去する。除去の方法としては、例えば、王水、フッ酸等で処理して除去する。そして、元素を除去された第1の窒化物半導体2の表面には、元素が拡散されており、この部分が窒化物半導体の成長が抑制されるような性質を有する結晶面となり、改質されている。
【0037】
(第3の工程)
次に、図3は、表面を部分的に改質された第1の窒化物半導体2上に、第2の窒化物半導体3を成長させる第3の工程を行った模式的断面図である。
第2の窒化物半導体3としては、前記第1の窒化物半導体2と同様のものを用いることができる。第2の窒化物半導体3の成長温度は、第1の窒化物半導体2を成長させる場合と同様である。
第2の窒化物半導体3の膜厚は、特に限定されないが、少なくとも第1の窒化物半導体2の表面の改質部分を良好に覆うことができる程度の膜厚であればよく、例えば、具体的には、5〜30μm、好ましくは10〜15μmである。このような膜厚で成長させると、改質部分を有する第1の窒化物半導体2の表面を良好に覆うことができ、転位の低減された良好な第2の窒化物半導体3を得ることができる。
【0038】
第2の窒化物半導体3は、まず、改質部分以外の部分の第1の窒化物半導体2の表面から成長し、成長していく過程で、改質部分へ向かって横方向に成長して改質部分を覆う。そして、厚膜に成長させると、改質部分は窒化物半導体が成長しないような性質を有しているが、あたかも改質部分に窒化物半導体が成長したように図4のように第2の窒化物半導体3が成長する。また、図4に示すように、改質部分にはわずかに空隙が形成される場合がある。
【0039】
また、第2の窒化物半導体3を成長させる際に、不純物(例えばSi、Ge、Sn、Be、Zn、Mn、Cr、及びMg等)をドープして成長さる、減圧条件下で成長させる、または窒化物半導体の原料となるIII族とV族の成分のモル比(III/Vのモル比)を調整して成長させる等により、横方向の成長を縦方向の成長に比べて促進させ転位を低減させる点で好ましい。このような反応条件は、転位を低減するために、窒化物半導体を意図的に横方向に成長させる場合に適用できる。
【0040】
また、本発明において、第2及び第3の工程を繰り返す場合、図5に示すように、第1の窒化物半導体2の表面の改質部分の上方部に、第2の窒化物半導体3の表面に部分的に形成される改質部分以外の部分が位置するように、及び第1の窒化物半導体2の表面の改質部分以外の部分の上部に、第2の窒化物半導体3の表面の改質部分が位置するように、第2の窒化物半導体3の表面を部分的に改質する。そして、改質部分を有する第2の窒化物半導体3上に第3の窒化物半導体4を成長させる。
第3の窒化物半導体4は、表面全体が転位の少ない窒化物半導体となり好ましい。第3の窒化物半導体4としては、第2の窒化物半導体と同様のものが挙げられる。また、第3の窒化物半導体4の膜厚は、特に限定されないが、少なくとも第2の窒化物半導体3の改質部分を良好に覆うことができる程度の膜厚であればよい。
【0041】
また、第2の窒化物半導体3は、この上に素子構造となる窒化物半導体を成長させるための基板となるが、素子構造を形成するには異種基板を予め除去してから行う場合と、異種基板等を残して行う場合がある。また、素子構造を形成した後で異種基板を除去する場合もある。
異種基板等を除去する場合の第2の窒化物半導体3の膜厚は、50μm以上、好ましくは100μm以上、好ましくは500μm以下である。この範囲であると異種基板及び保護膜等を研磨除去しても、第2の窒化物半導体3が割れにくくハンドリングが容易となり好ましい。
【0042】
また異種基板等を残して行う場合の第2の窒化物半導体3の膜厚は、特に限定されないが、100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下である。この範囲であると異種基板と窒化物半導体の熱膨張係数差によるウエハの反りが防止でき、更に素子基板となる第2の窒化物半導体5の上に素子構造となる窒化物半導体を良好に成長させることができる。
【0043】
本発明の窒化物半導体の成長方法において、第1の窒化物半導体2、及び第2の窒化物半導体3等を成長させる方法としては、特に限定されないが、MOVPE(有機金属気相成長法)、HVPE(ハライド気相成長法)、MBE(分子線エピタキシー法)、MOCVD(有機金属化学気相成長法)等、窒化物半導体を成長させるのに知られている全ての方法を適用できる。好ましい成長方法としては、膜厚が50μm以下ではMOCVD法を用いると成長速度をコントロールし易い。また膜厚が50μm以下ではHVPEでは成長速度が速くてコントロールが難しい。
【0044】
また本発明において、第2の窒化物半導体3上には、素子構造となる窒化物半導体を形成することができるので、明細書内において第2の窒化物半導体3を素子基板又は窒化物半導体基板と言う場合がある。
【0045】
また第1の工程における前記異種基板となる材料の主面をオフアングルさせた基板、さらにステップ状にオフアングルさせた基板を用いたほうが好ましい。オフアングルさせた基板を用いると、表面に3次元成長が見られず、ステップ成長があらわれ表面が平坦になり易い。更にステップ状にオフアングルされているサファイア基板のステップに沿う方向(段差方向)が、サファイアのA面に対して垂直に形成されていると、窒化物半導体のステップ面がレーザの共振器方向と一致し、レーザ光が表面粗さにより乱反射されることが少なくなり好ましい。
【0046】
更に好ましい異種基板としては、(0001)面[C面]を主面とするサファイア、(112−0)面[A面]を主面とするサファイア、又は(111)面を主面とするスピネルである。ここで異種基板が、(0001)面[C面]を主面とするサファイアであるとき、前記第1の窒化物半導体等に形成される改質部分のストライプ形状が、そのサファイアの(112−0)面[A面]に対して垂直なストライプ形状を有していること[窒化物半導体の(101−0)[M面]に平行方向にストライプを形成すること]が好ましく、また、オフアングルのオフ角θ(図11に示すθ)は0.1°〜0.5°、好ましくは0.1°〜0.2°が好ましい。また(112−0)面[A面]を主面とするサファイアであるとき、前記改質部分のストライプ形状は、そのサファイアの(11−02)面[R面]に対して垂直なストライプ形状を有していることが好ましく、また(111)面を主面とするスピネルであるとき、前記改質部分のストライプ形状は、そのスピネルの(110)面に対して垂直なストライプ形状を有していることが好ましい。
ここでは、改質部分がストライプ形状の場合について記載したが、本発明においてサファイアのA面及びR面、スピネルの(110)面に窒化物半導体が横方向に成長し易いので、改質部分の形状を、これらの面を考慮して形成することが好ましい。
【0047】
本発明に用いられる異種基板について図を用いて更に詳細に説明する。図6はサファイアの結晶構造を示すユニットセル図であり、以下のサファイアの各面を例示している。
まず本発明の方法において、C面を主面とするサファイアを用い、改質部分が、サファイアA面に対して垂直なストライプ形状とする場合について説明する。例えば、図7は主面側のサファイア基板の平面図である。この図7はサファイアC面を主面とし、オリエンテーションフラット(オリフラ)面をA面としている。この図に示すように改質部分のストライプをA面に対して垂直方向で、互いに平行なストライプを形成する。図7に示すように、サファイアC面上に窒化物半導体を選択成長させた場合、窒化物半導体は面内ではA面に対して平行な方向で成長しやすく、垂直な方向では成長しにくい傾向にある。従ってA面に対して垂直な方向でストライプを設けると、ストライプとストライプの間の窒化物半導体がつながって成長しやすくなり、図1〜図4に示したような結晶成長が容易に可能となると考えられるが詳細は定かではない。
【0048】
次に、A面を主面とするサファイア基板を用いた場合、上記C面を主面とする場合と同様に、例えばオリフラ面をR面とすると、R面に対して垂直方向に、互いに平行なストライプを形成することにより、ストライプ幅方向に対して窒化物半導体が成長しやすい傾向にあるため、結晶欠陥の少ない窒化物半導体層を成長させることができる。
【0049】
また次に、スピネル(MgAl2O4)に対しても、窒化物半導体の成長は異方性があり、窒化物半導体の成長面を(111)面とし、オリフラ面を(110)面とすると、窒化物半導体は(110)面に対して平行方向に成長しやすい傾向がある。従って、(110)面に対して垂直方向にストライプを形成すると窒化物半導体層と隣接する窒化物半導体同士が保護膜の上部でつながって、結晶欠陥の少ない結晶を成長できる。なおスピネルは四方晶であるため特に図示していない。
【0050】
また、以下に、オフアングルされたサファイア基板のステップに沿う方向が、サファイア基板のA面に対して垂直に形成されてなる場合について図11を用いて説明する。
ステップ状にオフアングルしたサファイアなどの異種基板は、図11に示すようにほぼ水平なテラス部分Aと、段差部分Bとを有している。テラス部分Aの表面凹凸は少なく、ほぼ規則正しく形成されている。このようなオフ角θを有するステップ状部分は、基板全体にわたって連続して形成されていることが望ましいが、特に部分的に形成されていてもよい。なおオフ角θとは、図11に示すように、複数の段差の底部を結んだ直線と、最上層のステップの水平面との角度を示すものとする。
また異種基板は、オフ角が0.1°〜0.5°、好ましくは0.1°〜0.2°である。オフ角を上記範囲とすると、第1の窒化物半導体2表面は細かな筋状のモフォロジーとなり、エピタキシャル成長表面(第2の窒化物半導体3表面)は波状のモフォロジーとなり、この基板を用いて得られる窒化物半導体素子は平滑で、特性も長寿命、高効率、高出力、歩留まりの向上したものが得られる。
【0051】
本発明の窒化物半導体素子(以下本発明の素子と言う場合がある。)について以下に説明する。
本発明の窒化物半導体素子は、前記した本発明の窒化物半導体の成長法により得られる第2の窒化物半導体3(窒化物半導体基板)上に、素子構造となる少なくともn型及びp型の窒化物半導体等が形成されてなるものである。本発明において、前記本発明の成長方法により得られる窒化物半導体上に素子構造を形成する場合、改質部分上部に発光領域など(例えばレーザ素子においてはリッジ形状のストライプなど)が位置するように素子構造を形成することが、寿命特性等の素子特性が良好な素子を得るのに好ましい。
本発明の窒化物半導体素子を構成する窒化物半導体としては、特に限定されず、少なくともn型窒化物半導体、活性層、及びp型の窒化物半導体が積層されていればよい。例えば、n型窒化物半導体層として、超格子構造を有するn型窒化物半導体層を有し、この超格子構造のn型層にn電極を形成することのできるn型窒化物半導体が形成されているもの等が挙げられる。活性層としては、例えばInGaNを含んでなる多重量子井戸構造の活性層が挙げられる。
また、窒化物半導体素子構造を形成するその他の構成は、例えば電極、素子の形状等、いずれのものを適用させてもよい。本発明の窒化物半導体素子の一実施の形態を実施例に示したが、本発明はこれに限定されない。
【0052】
本発明の窒化物半導体素子構造となる窒化物半導体を成長させる方法は、特に限定されないがMOVPE(有機金属気相成長法)、HVPE(ハライド気相成長法)、MBE(分子線エピタキシー法)、MOCVD(有機金属化学気相成長法)等、窒化物半導体を成長させるのに知られている全ての方法を適用できる。好ましい成長方法は、MOCVD法であり、結晶をきれいに成長させることができる。しかし、MOCVD法は時間がかかるため、膜厚が厚い場合には時間の短い方法で行うことが好ましい。また使用目的によって種々の窒化物半導体の成長方法を適宜選択し、窒化物半導体の成長を行うことが好ましい。
【0053】
【実施例】
以下に本発明の一実施の形態である実施例を示し、本発明の更に詳細に説明する。しかし、本発明はこれに限定されない。
[実施例1]
実施例1における各工程を図1〜図4を用いて示す。また実施例1はMOCVD法を用いて行った。
【0054】
(第1の工程)
異種基板1として、2インチφ、C面を主面とし、オリフラ面をA面とするサファイア基板1を反応容器内にセットし、温度を510℃にして、キャリアガスに水素、原料ガスにアンモニアとTMG(トリメチルガリウム)とを用い、サファイア基板1上にGaNよりなるバッファ層(図示されていない)を約200オングストロームの膜厚で成長させる。
バッファ層を成長後、TMGのみ止めて、温度を1050℃まで上昇させる。1050℃になったら、原料ガスにTMG、アンモニアを用い、アンドープのGaNよりなる第1の窒化物半導体層2を2.5μmの膜厚で成長させる(図1)。
【0055】
(第2の工程)
第1の窒化物半導体層2を成長後、第1の窒化物半導体層2上に、CVD装置によりSiO2を形成し、フォトリソグラフィーによりストライプ状のフォトマスクを介して、保護膜の形成されない部分(改質部分)のストライプ幅10μm、保護膜の形成される部分(改質部分以外の部分)のストライプ間隔10μmとなるようにパターニングされたSiO2膜からなる保護膜を形成し(図2のa−1)、続いて、RIE装置によりArガスでスパッタリング(ドライエッチング)して、保護膜の形成されていな部分の第1の窒化物半導体層2表面をN欠損として改質する(図2のa−2)。改質後は、保護膜を除去する(図2のa−3)。
そして、SiO2が形成されていない部分の第1の窒化物半導体の表面ではN欠損がおこり、この部分には窒化物半導体が成長しないかまたは成長しにくく改質されている(図2のa−3)。
なお、ストライプ方向は、図7に示すように、オリフラ面に対して垂直な方向で形成する。
【0056】
(第3の工程)
次に、第1の窒化物半導体層2の表面が部分的に改質部分の形成されたウエハを反応容器内にセットし、原料ガスにTMG、アンモニアを用い、アンドープのGaNよりなる第2の窒化物半導体層3を15μmの膜厚で成長させる(図3及び図4)。
【0057】
第2の窒化物半導体層3を成長後、ウェーハを反応容器から取り出し、アンドープのGaNよりなる窒化物半導体基板を得る。
【0058】
得られた第2の窒化物半導体層3(本発明の窒化物半導体基板)をCL(カソードルミネセンス)方法により観測すると、改質部分以外の部分の上方部は転位密度がやや多めであったが、改質部分の上方部にはほとんど転位が見られず良好な結晶性を有している。
【0059】
[参考例1]
実施例1において、第2の工程を以下のようにする他は同様にして第2の窒化物半導体3を成長させる。
(第2の工程)
第1の窒化物半導体層2を成長後、改質部分のストライプ幅10μm、改質部分以外の部分のストライプ間隔10μmとなるように、厚さ1000オングストロームの膜厚でNiを改質される部分にストライプ状に形成する(図2のb−1)。
次に、600℃で熱処理して、Niを第1の窒化物半導体層2の表面部分に拡散させる(図2のb−2)。その後、ストライプ状のNiを除去し、第1の窒化物半導体層2の表面にNiが拡散された改質面が形成される(図2のb−3)。 Niが不純物として拡散された部分の第1の窒化物半導体2の表面では、窒化物半導体が成長しないかまたは成長しにくく改質されている。
なお、ストライプ方向は、図7に示すように、オリフラ面に対して垂直な方向で形成する。
【0060】
以上のようにして得られた第2の窒化物半導体3を実施例1と同様にして観測すると、改質部分上部にはほとんど転位が見られず、実施例1と同等の良好な結果が得られた。
【0061】
[実施例2]
実施例1で得られた第2の窒化物半導体3の表面に、実施例1の第2の工程及び第3の工程を繰り返す。
(繰り返される第2の工程)
まず、図5に示すように、第1の窒化物半導体2の表面の改質部分の上部に、第2の窒化物半導体3の表面に形成される改質部分以外の部分が位置するように、さらに第1の窒化物半導体2の表面の改質部分以外の部分の上部に、第2の窒化物半導体3の表面に形成される改質部分が位置するように、第2の窒化物半導体層3上に、CVD装置によりSiO2を形成し、フォトリソグラフィーによりストライプ状のフォトマスクを介して、保護膜の形成されない部分(改質部分)のストライプ幅10μm、保護膜の形成される部分(改質部分以外の部分)のストライプ間隔10μmにパターニングされたSiO2膜からなる保護膜を形成し、続いて、RIE装置によりArガスでスパッタリング(ドライエッチング)して、保護膜の形成されていな部分の第2の窒化物半導体層3表面をN欠損として改質する。改質後は、保護膜を除去する。SiO2膜の除去面は、実施例1の第1の窒化物半導体の表面に形成された改質部分と同様に、窒化物半導体が成長しにくくなっている。
(繰り返される第3の工程)
次に、改質部分を有する第2の窒化物半導体3上に、アンドープのGaNからなる第3の窒化物半導体4を15μmの膜厚で成長させる(図5)。
【0062】
以上のようにして得られた第3の窒化物半導体4をCL方法により観察すると、全体的に転位の低減された窒化物半導体を得ることができる。
【0063】
[実施例3]
以下に、図8を用いて実施例3を説明する。図8は本発明の実施例1で得られた第2の窒化物半導体を基板として素子構造を形成してなる本発明の一実施の形態であるレーザ素子の構造を示す模式的断面図である。
実施例1で得られた第2の窒化物半導体3を窒化物半導体基板として以下の素子構造を積層成長させる。
【0064】
(アンドープn型コンタクト層)[図8には図示されていない]
窒化物半導体基板1上に、1050℃で原料ガスにTMA(トリメチルアルミニウム)、TMG、アンモニアガスを用いアンドープのAl0.05Ga0.95Nよりなるn型コンタクト層を1μmの膜厚で成長させる。
【0065】
(n型コンタクト層32)
次に、同様の温度で、原料ガスにTMA、TMG及びアンモニアガスを用い、不純物ガスにシランガス(SiH4)を用い、Siを3×1018/cm3ドープしたAl0.05Ga0.95Nよりなるn型コンタクト層2を3μmの膜厚で成長させる。
【0066】
(クラック防止層33)
次に、温度を800℃にして、原料ガスにTMG、TMI(トリメチルインジウム)及びアンモニアを用い、不純物ガスにシランガスを用い、Siを5×1018/cm3ドープしたIn0.08Ga0.92Nよりなるクラック防止層33を0.15μmの膜厚で成長させる。
【0067】
(n型クラッド層34)
次に、温度を1050℃にして、原料ガスにTMA、TMG及びアンモニアを用い、アンドープのAl0.14Ga0.86NよりなるA層を25オングストロームの膜厚で成長させ、続いて、TMAを止め、不純物ガスとしてシランガスを用い、Siを5×1018/cm3ドープしたGaNよりなるB層を25オングストロームの膜厚で成長させる。そして、この操作をそれぞれ160回繰り返してA層とB層を積層し、総膜厚8000オングストロームの多層膜(超格子構造)よりなるn型クラッド層34を成長させる。
【0068】
(n型ガイド層35)
次に、同様の温度で、原料ガスにTMG及びアンモニアを用い、アンドープのGaNよりなるn型ガイド層35を0.075μmの膜厚で成長させる。
【0069】
(活性層36)
次に、温度を800℃にして、原料ガスにTMI、TMG及びアンモニアを用い、不純物ガスとしてシランガスを用い、Siを5×1018/cm3ドープしたIn0.01Ga0.99Nよりなる障壁層を100オングストロームの膜厚で成長させる。続いて、シランガスを止め、アンドープのIn0.11Ga0.89Nよりなる井戸層を50オングストロームの膜厚で成長させる。この操作を3回繰り返し、最後に障壁層を積層した総膜厚550オングストロームの多重量子井戸構造(MQW)の活性層36を成長させる。
【0070】
(p型電子閉じ込め層37)
次に、同様の温度で、原料ガスにTMA、TMG及びアンモニアを用い、不純物ガスとしてCp2Mg(シクロペンタジエニルマグネシウム)を用い、Mgを1×1019/cm3ドープしたAl0.4Ga0.6Nよりなるp型電子閉じ込め層37を100オングストロームの膜厚で成長させる。
【0071】
(p型ガイド層38)
次に、温度を1050℃にして、原料ガスにTMG及びアンモニアを用い、アンドープのGaNよりなるp型ガイド層8を0.075μmの膜厚で成長させる。
このp型ガイド層8は、アンドープとして成長させるが、p型電子閉じ込め層37からのMgの拡散により、Mg濃度が5×1016/cm3となりp型を示す。
【0072】
(p型クラッド層39)
次に、同様の温度で、原料ガスにTMA、TMG及びアンモニアを用い、アンドープのAl0.1Ga0.9NよりなるA層を25オングストロームの膜厚で成長させ、続いて、TMAを止め、不純物ガスとしてCp2Mgを用い、Mgを5×1018/cm3ドープしたGaNよりなるB層を25オングストロームの膜厚で成長させる。そして、この操作をそれぞれ100回繰り返してA層とB層の積層し、総膜厚5000オングストロームの多層膜(超格子構造)よりなるp型クラッド層39を成長させる。
【0073】
(p型コンタクト層40)
次に、同様の温度で、原料ガスにTMG及びアンモニアを用い、不純物ガスとしてCp2Mgを用い、Mgを1×1020/cm3ドープしたGaNよりなるp型コンタクト層40を150オングストロームの膜厚で成長させる。
【0074】
反応終了後、反応容器内において、ウエハを窒素雰囲気中、700℃でアニーリングを行い、p型層を更に低抵抗化する。
アニーリング後、ウエハを反応容器から取り出し、最上層のp側コンタクト層の表面にSiO2よりなる保護膜を形成して、RIE(反応性イオンエッチング)を用いSiCl4ガスによりエッチングし、図9に示すように、n電極を形成すべきn側コンタクト層32の表面を露出させる。
次に図9(a)に示すように、最上層のp側コンタクト層40のほぼ全面に、PVD装置により、Si酸化物(主として、SiO2)よりなる第1の保護膜61を0.5μmの膜厚で形成した後、第1の保護膜61の上に所定の形状のマスクをかけ、フォトレジストよりなる第3の保護膜63を、ストライプ幅1.8μm、厚さ1μmで形成する。
次に、図9(b)に示すように第3の保護膜63形成後、RIE(反応性イオンエッチング)装置により、CF4ガスを用い、第3の保護膜63をマスクとして、前記第1の保護膜をエッチングして、ストライプ状とする。その後エッチング液で処理してフォトレジストのみを除去することにより、図9(c)に示すようにp側コンタクト層40の上にストライプ幅1.8μmの第1の保護膜61が形成できる。
【0075】
さらに、図9(d)に示すように、ストライプ状の第1の保護膜61形成後、再度RIEによりSiCl4ガスを用いて、p側コンタクト層40、およびp側クラッド層39をエッチングして、ストライプ幅1.8μmのリッジ形状のストライプを形成する。但し、リッジ形状のストライプは、図8に示すように、第1の窒化物半導体に形成した凹部上部にくるように形成される。
リッジストライプ形成後、ウェーハをPVD装置に移送し、図9(e)に示すように、Zr酸化物(主としてZrO2)よりなる第2の保護膜62を、第1の保護膜61の上と、エッチングにより露出されたp側クラッド層39の上に0.5μmの膜厚で連続して形成する。このようにZr酸化物を形成すると、p−n面の絶縁をとるためと、横モードの安定を図ることができ好ましい。
次に、ウェーハをフッ酸に浸漬し、図9(f)に示すように、第1の保護膜61をリフトオフ法により除去する。
【0076】
次に図9(g)に示すように、p側コンタクト層40の上の第1の保護膜61が除去されて露出したそのp側コンタクト層の表面にNi/Auよりなるp電極20を形成する。但しp電極20は100μmのストライプ幅として、この図に示すように、第2の保護膜62の上に渡って形成する。
第2の保護膜62形成後、図8に示されるように露出させたn側コンタクト層2の表面にはTi/Alよりなるn電極21をストライプと平行な方向で形成する。
【0077】
以上のようにして、n電極とp電極とを形成したウェーハのサファイア基板を研磨して70μmとした後、ストライプ状の電極に垂直な方向で、基板側からバー状に劈開し、劈開面(11−00面、六角柱状の結晶の側面に相当する面=M面)に共振器を作製する。共振器面にSiO2とTiO2よりなる誘電体多層膜を形成し、最後にp電極に平行な方向で、バーを切断して図8に示すようなレーザ素子とする。なお共振器長は300〜500μmとすることが望ましい。
得られたレーザ素子をヒートシンクに設置し、それぞれの電極をワイヤーボンディングして、室温でレーザ発振を試みた。
その結果、室温においてしきい値2.5kA/cm2、しきい値電圧5Vで、発振波長400nmの連続発振が確認され、室温で1万時間以上の寿命を示す。また、第2の窒化物半導体の面状態が良好であるので、素子特性の良好なレーザ素子を歩留まりよく得られる。
【0078】
[実施例4]
以下、図10を元に実施例4について説明する。図10は本発明の成長方法により得られた窒化物半導体層を基板とする一実施の形態のレーザ素子の構造を示す模式断面図である。
【0079】
実施例1において、第2の窒化物半導体3を成長させる際に、Siを1×1018/cm3ドープして、膜厚を150μmとする他は同様にして、Siドープの第2の窒化物半導体3を得る。得られたウエハのサファイア基板等を研磨、除去し、第2の窒化物半導体3の単体とする。
【0080】
次に、サファイア基板を除去した面とは反対の面の第2の窒化物半導体層3(SiドープGaN)を主面とするウェーハをMOVPE装置の反応容器内にセットし、この第2の窒化物半導体層3の上に下記各層を形成する。
【0081】
(n側クラッド層43)
次に、Siを1×1019/cm3ドープしたn型Al0.2Ga0.8Nよりなる第1の層、20オングストロームと、アンドープ(undope)のGaNよりなる第2の層、20オングストロームとを交互に100層積層してなる総膜厚0.4μmの超格子構造とする。
【0082】
(n側光ガイド層44)
続いて、Siを1×1017/cm3ドープしたn型GaNよりなるn型光ガイド層44を0.1μmの膜厚で成長させる。
【0083】
(活性層45)
次に、Siを1×1017/cm3ドープのIn0.2Ga0.8Nよりなる井戸層、25オングストロームと、Siを1×1017/cm3ドープのIn0.01Ga0.95Nよりなる障壁層、50オングストロームを交互に積層してなる総膜厚175オングストロームの多重量子井戸構造(MQW)の活性層45を成長させる。
【0084】
(p側キャップ層46)
次に、バンドギャップエネルギーがp側光ガイド層47よりも大きく、かつ活性層45よりも大きい、Mgを1×1020/cm3ドープしたp型Al0.3Ga0.9Nよりなるp側キャップ層46を300オングストロームの膜厚で成長させる。
【0085】
(p側光ガイド層47)
次に、バンドギャップエネルギーがp側キャップ層46より小さい、Mgを1×1018/cm3ドープしたp型GaNよりなるp側光ガイド層47を0.1μmの膜厚で成長させる。
【0086】
(p側クラッド層48)
次に、Mgを1×1020/cm3ドープしたp型Al0.2Ga0.8Nよりなる第1の層、20オングストロームと、Mgを1×1020/cm3ドープしたp型GaNよりなる第2の層、20オングストロームとを交互に積層してなる総膜厚0.4μmの超格子層よりなるp側クラッド層48を形成する。
【0087】
(p側コンタクト層49)
最後に、Mgを2×1020/cm3ドープしたp型GaNよりなるp側コンタクト層49を150オングストロームの膜厚で成長させる。
【0088】
反応終了後、反応容器内において、ウェーハを窒素雰囲気中、700℃でアニーリングを行い、p型層をさらに低抵抗化する。アニーリング後、ウェーハを反応容器から取り出し、図10に示すように、RIE装置により最上層のp型コンタクト層49と、p型クラッド層48とをエッチングして、4μmのストライプ幅を有するリッジ形状とし、リッジ表面の全面にNi/Auよりなるp電極51を形成する。
【0089】
次に、図10に示すようにp電極51を除くp側クラッド層48、コンタクト層49の表面にSiO2よりなる絶縁膜50を形成し、この絶縁膜50を介してp電極51と電気的に接続したpパッド電極52を形成する。
【0090】
p側電極形成後、第2の窒化物半導体層3の素子構造が形成されていない表面全面に、Ti/Alよりなるn電極53を0.5μmの膜厚で形成し、その上にヒートシンクとのメタライゼーション用にAu/Snよりなる薄膜を形成する。
【0091】
その後、n電極側53からスクライブし、第2の窒化物半導体層3のM面(11−00、図6の六角柱の側面に相当する面)で第2の窒化物半導体層5を劈開し、共振面を作製する。共振面の両方あるいはどちらか一方にSiO2とTiO2よりなる誘電体多層膜を形成し、最後にp電極に平行な方向で、バーを切断してレーザチップとした。次にチップをフェースアップ(基板とヒートシンクとが対向した状態)でヒートシンクに設置し、pパッド電極52をワイヤーボンディングして、室温でレーザ発振を試みたところ、室温において、閾値電流密度2.5kA/cm2、閾値電圧4.5Vで、発振波長405nmの連続発振が確認され、1万時間以上の寿命を示した。
【0092】
[実施例5]
実施例2で得られた第3の窒化物半導体4を基板として、実施例3と同様の素子構造を形成してレーザ素子を作製した。
得られたレーザ素子は実施例3と同様に良好な寿命特性を有している。また、リッジ形状のストライプを形成する位置を第2の窒化物半導体3の改質部分上部に関係なく改質部分以外の部分上部に形成しても良好な特性を示す。
【0093】
[実施例6]
実施例1において、サファイア基板1として、2インチφ、オフアングル角θ=0.2°、ステップ段差(高さ)約1原子層、テラス幅Wが約40オングストロームのステップを有し、C面を主面とし、オリフラ面をA面として、ステップに沿う方向、すなわち段差の方向がこのA面に対して垂直な方向に設けてあるサファイア基板を用いる他は同様にして第2の窒化物半導体3を成長させる。
得られた第2の窒化物半導体3を基板として、実施例3と同様の素子構造を形成してレーザ素子を製造する。
得られたレーザ素子は、実施例3よりしきい値が低下し、より良好な寿命特性を有する。
【0094】
【発明の効果】
本発明は、上記の如く、SiO 2 等のマスクを用いずとも、窒化物半導体の表面を部分的に改質することにより、改質部分が、従来のELOG成長の場合に用いられていたSiO2とほぼ同様に窒化物半導体の横方向の成長を意図的に促進することができる。それによって、本発明は、転位を低減させ、かつ、結晶性が良好な窒化物半導体を得ることができる窒化物半導体の成長方法を提供することができる。
更に、本発明は、結晶性が良好で転位の少ない窒化物半導体を基板とする寿命特性の良好な窒化物半導体素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の方法の各工程において得られる窒化物半導体ウェーハの構造を示す模式的断面図である。
【図2】 本発明の方法の各工程において得られる窒化物半導体ウェーハの構造を示す模式的断面図である。
【図3】 本発明の方法の各工程において得られる窒化物半導体ウェーハの構造を示す模式的断面図である。
【図4】 本発明の方法の各工程において得られる窒化物半導体ウェーハの構造を示す模式的断面図である。
【図5】 本発明の方法の各工程において得られる窒化物半導体ウェーハの構造を示す模式的断面図である。
【図6】 サファイアの面方位を示すユニットセル図である。
【図7】 保護膜のストライプ方向を説明するための基板主面側の平面図である。
【図8】 本発明の方法による基板を用いた窒化物半導体LD素子の一構造を示す模式断面図である。
【図9】 図9は、リッジ形状のストライプを形成する一実施の形態である方法の各工程におけるウエハの部分的な構造を示す模式的断面図である。
【図10】 本発明の方法による基板を用いた窒化物半導体LD素子の一構造を示す模式断面図である。
【図11】 本発明の方法による基板の一部を拡大して示した模式的断面図である。
【符号の説明】
1・・・・異種基板
2・・・・第1の窒化物半導体
3・・・・第2の窒化物半導体
4・・・・第3の窒化物半導体
Claims (9)
- 窒化物半導体と異なる材料よりなる異種基板の上に、第1の窒化物半導体を成長させる第1の工程と、
前記第1の工程後、前記第1の窒化物半導体の表面をドライエッチングにより窒化物半導体が成長しにくいか又は成長しないように部分的に改質し、第1の窒化物半導体の表面への窒化物半導体の成長に選択性を持たせる第2の工程と、
前記第2の工程後、前記表面が部分的に改質された第1の窒化物半導体上に、第2の窒化物半導体を成長させる第3の工程を少なくとも有することを特徴とする窒化物半導体の成長方法。 - 前記第2の工程が、異種基板上に成長された第1の窒化物半導体上に、保護膜を部分的に形成した後、該保護膜の形成されていない部分を、前記ドライエッチングによりN欠損部分を形成して第1の窒化物半導体の表面を部分的に改質し、その後、保護膜を除去する工程であることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体の成長方法。
- 前記ドライエッチングが、希ガス及びO2ガスの少なくとも1種以上のガスを用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化物半導体の成長方法。
- 前記第3の工程後に、前記第2の窒化物半導体の表面であり、且つ第1の窒化物半導体の表面改質部分以外の部分の上部をドライエッチングにより窒化物半導体が成長しにくいか又は成長しないように部分的に改質し、第2の窒化物半導体の表面への窒化物半導体の成長に選択性を持たせる第4の工程と、
前記第4の工程後、前記表面が部分的に改質された第2の窒化物半導体上に、第3の窒化物半導体を成長させる第5の工程を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の窒化物半導体の成長方法。 - 前記異種基板が、サファイアのC面がステップ状にオフアングルされていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の窒化物半導体の成長方法。
- 前記ステップ状にオフアングルされているサファイア基板のオフアングル角が、0.1°〜0.5°であることを特徴とする請求項5に記載の窒化物半導体の成長方法。
- 前記ステップ状にオフアングルされているサファイア基板のステップに沿う方向(段差方向)が、サファイアのA面に対して垂直に形成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の窒化物半導体の成長方法。
- 前記請求項1〜7のいずれか1項に記載の窒化物半導体の成長方法により基板を成長させる第1の工程と、前記基板上に素子構造となる少なくともn型窒化物半導体、活性層、及びp型窒化物半導体を形成する第2の工程を有することを特徴とする窒化物半導体素子の製造方法。
- 前記請求項1〜7のいずれか1項に記載の窒化物半導体の成長方法により基板を成長させる第1の工程と、前記基板上に素子構造となる少なくともn型窒化物半導体、活性層、及びp型窒化物半導体を形成する第2の工程と、前記窒化物半導体基板の第1の窒化物半導体に形成された改質部分上部に、窒化物半導体レーザ素子の光を導波するストライプ形状又はリッジ形状を形成する第3の工程を有することを特徴とする窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
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