JP3788237B2 - 車両前部の構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両前部の構造に関し、特に、車幅方向両側にそれぞれ取り付けられるフェンダの取付構造の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、一般的に、車両の前部にはエンジンルームないしトランクルームが設けられていて、このエンジンルーム等の上方がボンネットフードにより覆われているとともに、該ボンネットフードの左右両側にそれぞれ連続するようにフェンダの上縁部が配置されている。そして、ボンネットフードとの境界となるフェンダの車体内方の見切り部は、隣接するボンネットフードの左右両側の端縁部と略同じ高さに位置付けられていて、該フェンダとボンネットフードとが一体的に車両前部の外面を構成するようになっている。
【0003】
ところで、近年、車両の前部に上方から障害物が衝突する事態を想定して、安全性の向上という観点から、そのときの障害物への衝撃を緩和しようという提案がなされている。すなわち、従来の一般的な車両前部の構造では、フェンダには見切り部から下方に折れ曲がって略垂直に延びるように縦壁部が設けられていて、この縦壁部によってフェンダがホイールエプロン等の車体側の支持部材に対して支持されている。このため、例えば障害物がフェンダとボンネットフードとに跨るように上方から衝突したとき、該ボンネットフードの端縁部が容易に変形する一方で、フェンダの端縁部では前記縦壁部がホイールエプロンに対し突っ張ることから、衝撃のエネルギを十分に吸収できず、障害物への衝撃が大きくなりやすいという問題がある。
【0004】
この点について、特開平11−180350号公報には、フェンダを下方に変位しやすい構造として、積極的に衝突エネルギの吸収を図るようにしたものが開示されている。具体的に、このものでは、図9に示すように、フェンダパネル91の上縁部近傍からフェンダインナパネル92の下壁部92bに至る縦壁部92aを、エプロンメンバ93よりも車幅方向外方へ離間するようにずらして配置しており、このことで、同図に矢印で示すように、フェンダパネル91とボンネットフード95との境界付近に障害物が衝突したときには、図に仮想線で示すようにフェンダパネル91の見切り部91aが下方に折れ曲がるとともに、フェンダインナパネル92の縦壁部92aと下壁部92bとが折れ曲がって下方に変位することにより、衝撃を吸収するようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記従来例の構造においては、フェンダパネル91及びフェンダインナパネル92を構成する鋼板の厚みや寸法、形状等の設定により、フェンダ各部の面剛性や支持剛性を確保しながら、一方で、適度なエネルギ吸収特性を得ようとするものあるから、それらの部材の厚み等の管理において非常に厳しい精度が要求されることになり、現実的とは言い難い。
【0006】
また、前記従来例の構造では、フェンダパネル91を支持する縦壁部92aを車体外方にずらして配置していても、この縦壁部92a自体がなくなったわけではなく、その近傍において上方からの衝撃に対し瞬間的に強い反力が作用することになるので、上方から衝突する障害物への衝撃を十分に緩和することは困難である。
【0007】
従って、前記従来例の如き構造において、衝撃エネルギの吸収性能を十分なものとしようとすると、フェンダの剛性が不足して品質感の低下を招いたり、或いは、経年変化によるフェンダとボンネットフードとの段差が大きくなりやすくなって、車両外観の見栄えを損なうという不具合が生じる。
【0008】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両前部の車幅方向両側にそれぞれフェンダを備えた車両前部の構造において、フェンダの車体への取付構造に工夫を凝らし、簡単な構造で上方からの衝撃を十分に吸収できるようにしながら、適度な剛性を安定的に確保することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の解決手段では、フェンダを車体に対して支持する取付部を車幅方向に傾斜した傾斜壁部からなるものとし、かつその傾斜壁部の上端からフェンダの見切り部までを、車体内方に延びる庇部とした。
【0010】
具体的に、請求項1の発明では、車幅方向両側にそれぞれフェンダを備えた車両前部の構造を対象とし、前記フェンダを、金属製の板材をプレス成形してなり車体の外面を構成するフェンダパネル部材と、このフェンダパネル部材の上縁部近傍において車体前後方向に延びるように設けられた別体の車体取付部材とからなるものとする。そして、まず、前記車体取付部材を、樹脂の成型品とし、車体前後方向から見て、前記フェンダパネル部の裏面から車体内方かつ下方に向かうように傾斜して延びる傾斜壁部と、この傾斜壁部の下端側に設けられて車体側の支持部材に固定されるフランジとを備えるものとし、一方、前記フェンダパネル部材には、前記車体取付部材の傾斜壁部の上端部が繋がる部位から車幅方向に車体内方の見切り部まで延びる庇部を形成する。
【0011】
さらに、前記車体取付部材には、その傾斜壁部の上端から前記フェンダパネル部材の庇部の裏面に沿って延びるように、当該傾斜壁部に比べて厚みの小さな延出部を形成すると ともに、その延出部の先端に厚肉の縁部を形成し、一方、前記フェンダパネル部材の庇部の先端には、前記車体取付部材の延出部の先端を挟持するように裏側に折り曲げた折曲部を設けて、この折曲部により前記車体取付部材の延出部先端の厚肉縁部を嵌合する構成とする。
【0012】
前記の構成では、まず、図1に模式的に示すように、車体前後方向から見て、フェンダの車体取付部材の傾斜壁部が車体側の支持部材から車体外方の斜め上方に向かって延びていて、その傾斜壁部の上端から車体内方に折り返すように、フェンダパネル部材の庇部が延びている。そして、図に矢印で示すように、前記庇部、即ちフェンダの上縁部近傍に上方から衝撃が作用したとき、該庇部及び傾斜壁部にはそれぞれ剪断力が作用し、図に仮想線で示すように両者が撓むことによって、フェンダが下方に変位することになる。
【0013】
従って、例えば、障害物が車両のボンネットフードとフェンダとに跨るように上方から衝突する事態を想定すると、このときには、前記の如く庇部及び傾斜壁部の2つがそれぞれ撓んで、フェンダが下方へ変位することにより、衝撃が吸収されるのであるが、この際、前記庇部は点S1を支点として撓み、また、傾斜壁部は点S2を支点として撓むことになり、いずれも荷重の作用点と支点とが比較的、長いことから、相対的に小さな衝撃力でもって変形することになる。つまり、相対的に小さな衝撃力で相対的に大きな変形ストロークが得られることになり、このことによって、エネルギ吸収性能を確保しながら、障害物への衝撃を緩和することができる。
【0014】
しかも、前記傾斜壁部は、縦壁部のように上下方向の衝撃に対して突っ張ることがないので、障害物に対して瞬間的であっても大きな反力が作用することはなく、また、該傾斜壁部の上端は、縦壁部を設けた場合に比べて車体外方、即ち下方に位置することになるので、この位置に上方からの障害物が直接、衝突する可能性は極めて低く、このことによっても衝撃の緩和が図られる。
【0015】
ここで、前記フェンダパネル部材及び車体取付部材を、フェンダに通常、用いられる鋼製の薄板によって形成した場合、これは部位によって厚みを調整することが容易ではないので、フェンダの支持剛性とエネルギ吸収特性とを両立させるために部材の厚みを調整しようとしても、このことがコストの大幅な増大等を招く虞がある。
【0016】
この点、前記の構成では、フェンダパネル部材を一般的な鋼製の薄板により形成することで、部材単体でのコスト増大が防止される一方、車体取付部材は樹脂製とすることで、この取付部材の厚みを調整することが容易になり、フェンダの支持剛性を安定的に得られるとともに、設計の自由度が高くなるので、衝撃吸収性能をさらに高めることも可能になる。また、材料を樹脂とすることで、鋼板に比べて取付部材の弾性を大きくすることができ、このことによっても衝撃吸収性が高められる上に、車体側からの振動を減衰させて、走行振動を抑制できる。
【0017】
その上に、前記の構成では、前記車体取付部材の傾斜壁部に比べて延出部の厚みを小さくしており、言い換えると傾斜壁部の厚みを延出部に比べて相対的に厚くしているので、傾斜壁部の剛性を相対的に高くして、フェンダの支持剛性を容易に確保することができる。尚、フェンダパネル部材の庇部と重ね合わされる取付部材の延出部については、相対的に薄くてもフェンダ上縁部の面剛性を確保できる。
【0018】
その上さらに、前記構成では、前記フェンダパネル部材の庇部の先端に、車体取付部材の延出部の先端を挟持するように裏側に折り曲げた折曲部を設け、一方、該延出部の先端には、前記折曲部によって内嵌合される厚肉の縁部を形成している。
【0019】
このことで、フェンダの製造時にフェンダパネル部材と車体取付部材とを組み付けるとき、該フェンダパネル部材の庇部の折曲部により車体取付部材の延出部先端の厚肉縁部を嵌合させることで、2つの部材を容易かつ確実に組み付けることができる。しかも、接着剤を使用しないことで、組み付け作業がさらに容易になり、製造時間も短縮される。
【0020】
請求項2の発明では、請求項1の発明における取付部材の傾斜壁部において、所定箇所に薄肉の部分を設けるものとする。
【0021】
すなわち、車両の前部に上方から障害物が衝突する事態を想定した場合、フェンダの中でも障害物との衝突が発生しやすい部位とそうでない部位とがある。そこで、この発明では、衝突発生の可能性の高い部位に対応するように、傾斜壁部の所定箇所に薄肉部を設けることによって、フェンダの全体的な剛性を確保しながら、特定の部位の衝撃吸収性はさらに高くして、フェンダの剛性の確保と衝撃吸収性の向上とを一層、高次元で両立させることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基いて説明する。尚、説明の便宜のため実施形態と類似の構成を有する参考例について先に説明する。
【0023】
(参考例)
図2は、本発明の参考例に係る車両前部の構造を適用した車両1を示す。この車両1の前部には、略中央部において図示しないパワートレインを収容するエンジンルームR(図3参照)が設けられていて、このエンジンルームRの上方を覆うように、開閉可能なボンネットフード2が配設されている。また、エンジンルームRの左右両側には、それぞれ、前車輪3,3(左側前車輪のみを示す)を収容するホイールハウスS,Sが設けられていて、該各ホイールハウスSとエンジンルームRとの間がホイールエプロン4(図3に仮想線で示す)により仕切られている。
【0024】
前記ホイールエプロン4は、詳細は図示しないが、エンジンルーム2の左右両側においてそれぞれ車体前後方向に延びるサイドフレームの上方に設けられ、該サイドフレームの上面から上方かつ車体外方に向かって緩やかに湾曲しながら延びている。そして、該ホイールエプロン4の下側の部分には、前記ホイールハウスSの車体内方を囲むようにエンジンルームRの内方に向かって膨出するホイールハウス部4aが形成されている。また、該ホイールハウス部4aの略中央部には、前車輪のサスペンション装置におけるショックアブソーバの上端側を収容するサスタワー5が設けられている。
【0025】
一方、前記ホイールエプロン4の上部には、図3に車体右側について示すようにレインフォースメント6(車体側の支持部材)が設けられている。このレインフォースメント6は、ホイールエプロン4の上端縁において車体前後方向に延びるように設けられ、図4にも示すように、車体内方側、上側及び車体外方側の3つの壁部となるコの字状断面を有するアッパ部材6aと、下側の壁部となるロア部材6bとにより構成されている。そして、前記アッパ部材6aの車体外方側壁部の下端部が車体外方に折り曲げられて、前記ロア部材6bに接合されるフランジとされ、一方、該ロア部材6bの車体内方側の端部が下側に折り曲げられて、前記アッパ部材6aの車体内方側の壁部に接合されるフランジとされていて、これらの両部材6a、6bが互いに溶接により接合されて、略矩形の閉断面を有する構造となる。
【0026】
そして、前記の如く車両1の左右両側にそれぞれ設けられたレインフォースメント6に対して、各々フェンダ7,7が取付られている。すなわち、図1に示すように、フェンダ7,7は、それぞれ上縁部がボンネットフード2の左右両側に位置づけられ、該ボンネットフード2との境界となる見切り部7aから車体外方に向かい、大きく湾曲して下方に略垂直に延びていて、ホイールハウスSの車体外方に対応する部位には円弧状の切り欠き部7bが設けられている。また、図4に示すように、フェンダ7の見切り部7aとこれに隣接するボンネットフード2の左右両側の端縁部とは、互いに略同じ高さに位置し、ボンネットフード2とその左右両側のフェンダ7,7とが一体的に車両1の前部上面を構成するようになっている。
【0027】
この発明の特徴部分は、前記図3及び図4に示すフェンダ7の取付構造(車両前部の構造A)にある。すなわち、フェンダ7は、車体の外面を構成するフェンダパネル部材10と、このフェンダパネル部材10をホイールエプロン4のレインフォースメント6に取り付けるためのブラケット11(取付部材)とからなり、このブラケット11は、前記フェンダパネル部材10の裏面の上縁部近傍において車体前後方向に延びるように設けられている。
【0028】
前記フェンダパネル部材10は、車両前部の外側面に対応する緩やかな3次曲面となるように鋼製の薄板をプレス成形したものであり、このように、大型の部材であるフェンダパネル部材10を鋼製薄板により形成することで、部材単体としての可及的なコスト低減が可能となる。一方、前記ブラケット11は合成樹脂の成型品とされている。これは、樹脂の方が相対的に弾性が大きく、また、成形性に優れることから、後述の如くフェンダ7の支持剛性と衝撃吸収性とを両立させやすいためである。また、樹脂の方が鋼板よりも内部損失が大きいので、このブラケット11を介して車体側からフェンダ7に伝わる振動が減衰し、車両1の走行振動を抑制できる。
【0029】
前記ブラケット11は、図4に示すように車体前後方向から見ると、フェンダパネル部材10の上縁部近傍の所定範囲において該フェンダパネル部材10の裏面に接合された湾曲壁部11a(延出部)と、この湾曲壁部11aの下端縁から車体内方に向かうように折れ曲がり、ここでフェンダパネル部材10から離れて下方に傾斜して延びる傾斜壁部11bと、この傾斜壁部11bの下端から車体内方に折れ曲がって、略水平に延びるフランジ11cとからなる。そして、前記フランジ11cがホイールエプロンレインフォースメント6のアッパ部材6aに接合されて、ボルト12,12,…により締結されている。
【0030】
言い換えると、前記ブラケット11の本体部は、ホイールエプロンレインフォースメント6の上面から斜め上方に延びる傾斜壁部11bであり、この傾斜壁部11bの上端縁に連続する湾曲壁部11aとフェンダパネル部材10の上縁部とが一体的に車体内方へ向かって庇のように延びているものである。つまり、前記フェンダパネル部材10の上縁部近傍において、ブラケット11の傾斜壁部11bの上端が繋がる部位から車体内方の見切り部7aまでが庇部10aであり、この庇部10aとその裏面に接合されたブラケット11の湾曲壁部11aとが、フェンダ7そのものの庇部になる。
【0031】
そして、前記フェンダパネル部材10の庇部10aの先端が裏側に折り曲げられて、ブラケット11の湾曲壁部11aの先端を挟持する折曲部10bが設けられていて、この折曲部10bにおいて両者が接着されている。すなわち、フェンダパネル部材10とブラケット11とを組み付けるときには、該フェンダパネル部材10の庇部10aに沿ってブラケット11の湾曲壁部11aを重ね合わせて、その湾曲壁部11aの先端を前記折曲部10bにより挟持させ、それらを接着すればよい。このことで、2つの部材10,11の位置合わせが容易になり、簡単な作業でフェンダ7を確実に組み立てることができる。
【0032】
ここで、前記ブラケット11の傾斜壁部11bの傾斜の度合は、フェンダ7の支持剛性と衝撃吸収性との均衡において大きな影響を持つものであり、この参考例では、図示の如く水平面からの傾斜角度θを略45°としているが、この傾斜角度θは、フェンダ7の大きさやデザイン等に応じて、所定の衝撃吸収特性を得られるように、例えば略30°〜略50°の範囲に設定すればよい。また、該傾斜壁部11bは、湾曲壁部11aに比べて相対的に厚くなるように形成されており、このことで、該傾斜壁部11bの剛性を相対的に高くして、フェンダ7の支持剛性を確保することができる。尚、湾曲壁部11aは相対的に薄く形成されることになるが、この湾曲壁部11aはフェンダパネル部材10の庇部10aと重ね合わされるものなので、面剛性の確保は容易である。
【0033】
さらに、前記傾斜壁部11bには、図3に示すように、車体前後方向に略3等分したうちの前部と後部とにそれぞれ繭形の薄肉部13,13が設けられている。これは、障害物との衝突の頻度を考慮して、衝突発生の可能性の高い部位に対応するように、傾斜壁部11bの前側と後側とにそれぞれ薄肉部13を設けたものであり、このことで、フェンダ7の全体的な剛性を確保しながら、衝突の可能性が高い部位については衝撃吸収性をさらに高めることができる。尚、前記薄肉部13に代えて貫通孔を形成してもよく、或いは、反対に傾斜壁部11bの厚みを全体的に減らした上で、前記薄肉部13に対応する箇所以外に補強用のリブを設けるようにしてもよい。
【0034】
したがって、この参考例に係る車両前部の構造Aでは、前記図4に示すように車体前後方から見て、フェンダエプロン4のレインフォースメント6の上面から車体外方に向かって斜め上方に延びるように、ブラケット11の傾斜壁部11bが配設されていて、この傾斜壁部11bの上端から車体内方に折り返されて斜め上方に向かうように、フェンダ7の庇部がボンネットフード2との境界まで延びている。
【0035】
そして、障害物がボンネットフード2とフェンダ7とに跨るように上方から衝突して、図5に矢印で示すような衝撃が加わると、フェンダ7の庇部及び傾斜壁部11bに対してそれぞれ剪断力が作用することになり、これらが図に仮想線で示すようにそれぞれ下方に撓むことによって、フェンダ7が下方へ変位することになる。
【0036】
その際、前記の如くブラケット11の傾斜壁部11bが斜めに延びていることから、この傾斜壁部11bは縦壁部のように上下方向に突っ張ることはなく、従って、前記上方からの障害物に対して瞬間的であっても大きな反力が作用することはない。しかも、該傾斜壁部11bの上端がフェンダパネル部10に繋がる部位は、フェンダ7の見切り部7aよりも車体外方かつ下方に位置するので、この部位に障害物が直接、衝突する可能性は極めて低く、このことによっても衝撃の緩和が図られる。
【0037】
詳しくは、まず、障害物がフェンダ7の上縁部近傍にに衝突したとき、フェンダ7の庇部と傾斜壁部11bとががそれぞれ弾性変形して、初期の衝撃を緩和する。続いて、それらが降伏して、塑性変形することにより、衝撃のエネルギが吸収される。このとき、衝撃荷重と変位量(ストローク)との関係は図6のグラフに実線で示すようになる。すなわち、この参考例では、ブラケット11が樹脂製であり、しかも、上方からの荷重を傾斜壁部11bにより支持するようになっていることから、特に上方からの荷重に対する初期ばね定数が低くなっていて、図に仮想線で示す従来例の構造(縦壁部を有する場合)と比較して、相対的に低い荷重で相対的に大きく弾性変形する(〜s1)。
【0038】
続いて、塑性変形域に移行すると、従来構造と同等の中程度の荷重により変形が進行し、この変形によって衝撃エネルギを吸収することになるが、この参考例の場合は、傾斜壁部11bが相対的に長いことから、従来構造のものよりも大きなストロークが得られ(s2<s3)、全体として十分なエネルギ吸収性能が得られる。
【0039】
つまり、この参考例によれば、図に仮想線で示す従来構造のものと比べて、特に初期の衝撃荷重が大きくなることを防止しながら、衝撃エネルギの吸収特性は十分に確保することができるものである。
【0040】
また、この参考例では、前記ブラケット11を樹脂製とし、その傾斜壁部11bの所定箇所に薄肉部13,13を設けており、このことによって、ブラケット11によるフェンダ7の全体的な支持剛性を確保しながら、車体前後方向について特に衝突発生の可能性の高い部位では衝撃吸収性を一層、高くすることができる。これにより、フェンダ7の剛性確保と衝撃吸収性向上とがさらに高次元で両立できる。
【0041】
加えて、この参考例では、上述の如く、樹脂製ブラケット11により初期の弾性変形域を大きくさせているので、仮に障害物による衝撃があまり大きくなければ、フェンダ7の庇部と傾斜壁部11bとをそれぞれ弾性変形させるだけで、衝撃を吸収することができ、修理の必要がないという長所もある。
【0042】
次に、上述した参考例と異なる本発明の実施形態の特徴部分について説明する。参考例のものでは、フェンダパネル部材10とブラケット11とをそれぞれの先端部において接着するようにしているが、本発明の実施形態では、両者を嵌合させて組み付けるようにしたものである。すなわち、図7に一例を示すように、ブラケット11の湾曲壁部11aの先端に、フェンダパネル部材10の折曲部10bによって内嵌合されるように厚肉の縁部11dを形成して、該フェンダパネル部材10とブラケット11とを組み付けるときには、前記折曲部10bによりブラケット11の厚肉縁部11dを嵌合させるようにする。このようにすれば、フェンダ7のサブアッシーをさらに容易に行うことができ、しかも、接着剤を使用しないことから、製造時間も短縮できる。
【0043】
尚、前記実施形態では、車両1の左右のフェンダ7,7に対して各々1つずつブラケット11を設けているが、これに限るものではなく、前記実施形態の如きブラケット11を車体前後方向に分割して、複数の小さなブラケットによりフェンダパネル部材10を支持するようにしてもよい。
【0044】
【発明の効果】
以上、説明したように、請求項1の発明に係る車両前部の構造によると、フェンダのパネル部材を車体に対して支持する取付部を、従来までの縦壁部に代えて傾斜壁部からなるものとし、その傾斜壁部が繋がる部位よりも車体内方に庇部を設けたので、例えば、障害物が車両のボンネットフードとフェンダとに跨るように上方から衝突したときに、前記傾斜壁部及び庇部の変形によって、相対的に小さな衝撃力で相対的に大きな変形ストロークが得られ、このことにより、エネルギ吸収性能を確保しながら、障害物への衝撃を緩和することができる。これに加えて、前記傾斜壁部が上下方向に突っ張ることがなく、また、障害物が該傾斜壁部の上端に対応する位置に直接、衝突する可能性が極めて低いことから、衝撃をさらに緩和することができる。
【0045】
また、フェンダパネル部材を鋼板製として部材単体でのコスト増大を防止できるとともに、車体取付部材は樹脂製とすることで、支持剛性を安定的に得られ、衝撃吸収性能を向上でき、さらに、走行振動も抑制できる。しかも、車体取付部材の傾斜壁部を相対的に厚くして、剛性を高めることで、フェンダの支持剛性を容易に確保できる。
【0046】
さらに、フェンダパネル部材の庇部の先端に折曲部を設けるとともに、車体取付部材の延出部の先端に厚肉縁部を設けて、両者を嵌合させることにより、2つの部材を容易かつ確実に組み付けることができる。しかも、接着剤を使用しないことで、作業がさらに容易になり、製造時間も短縮できる。
【0047】
請求項2の発明によると、車体取付部材の傾斜壁部に薄肉の部分を設けることで、フェンダの全体的な剛性を確保しながら、特定の部位の衝撃吸収性はさらに向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の概略構成を示す模式図である。
【図2】 本発明の参考例に係る車両前部の構造を適用した車両の斜視図である。
【図3】 車両右側のフェンダの取付構造を示す斜視図である。
【図4】 図2及び図3のIV-IV線における断面図である。
【図5】 衝撃荷重により変形するフェンダを示す図4相当図である。
【図6】 衝撃荷重とストロークとの対応関係を従来例の構造と対比して示すグラフ図である。
【図7】 実施形態に係る図4相当図である。
【図8】 従来例に係る図4相当図である。
【符号の説明】
A 車両前部の構造
R エンジンルーム
1 車両
2 ボンネットフード
6 ホイールエプロンレインフォースメント(車体側の支持部材)
7 フェンダ
7a 見切り部
10 フェンダパネル部材
10a 庇部
10b 折曲部
11 ブラケット(取付部材)
11a 湾曲壁部(延出部)
11b 傾斜壁部
11c フランジ
11d 厚肉縁部
13 薄肉部
Claims (2)
- 車幅方向両側にそれぞれフェンダ(7)を備えた車両前部の構造であって、
前記フェンダ(7)は、金属製の板材をプレス成形してなり車体の外面を構成するフェンダパネル部材(10)と、このフェンダパネル部材(10)の上縁部近傍において車体前後方向に延びるように設けられた別体の車体取付部材(11)とからなり、
前記車体取付部材(11)は、樹脂の成型品であり、車体前後方向から見て、前記フェンダパネル部材(10)の裏面から車体内方かつ下方に向かうように傾斜して延びる傾斜壁部(11b)と、この傾斜壁部(11b)の下端側に設けられて車体側の支持部材(6)に固定されるフランジ(11c)とを備える一方、
前記フェンダパネル部材(10)には、前記車体取付部材(11)の傾斜壁部(11b)の上端部が繋がる部位から車幅方向に車体内方の見切り部(7a)まで延びる庇部(10a)が形成されており、
さらに、前記車体取付部材(11)には、その傾斜壁部(11b)の上端から前記フェンダパネル部材(10)の庇部(10a)の裏面に沿って延びるように、当該傾斜壁部(11b)に比べて厚みの小さな延出部(11a)が形成されるとともに、その延出部(11a)の先端に厚肉の縁部(11d)が形成され、
一方、前記フェンダパネル部材(10)の庇部(10a)の先端には、前記車体取付部材(11)の延出部(11a)の先端を挟持するように裏側に折り曲げられた折曲部(10b)が設けられていて、この折曲部(10b)が前記車体取付部材(11)の延出部(11a)先端の厚肉縁部(11d)と嵌合している
ことを特徴とする車両前部の構造。 - 請求項1において、
車体取付部材(11)の傾斜壁部(11b)には、所定箇所に薄肉の部分(13)が設けられていることを特徴とする車両前部の構造。
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