JP3786462B2 - タキソイドの配糖化誘導体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はタキソイドの配糖化誘導体およびその製造方法に関し、詳しくは糖供与体由来の糖を糖転移酵素によりタキソイド誘導体に結合させたタキソイドの配糖化誘導体およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
パクリタクセル(Paclitaxel)は、北米産イチイ(Taxus brevifolia) の樹皮から単離されたジテルペン化合物 [M.C.Wani et al.: J.Am.Chem.Soc.,93,2325(1971)]で、従来の化学療法では治癒しない癌に対しても改善効果を持つ強力な抗癌剤として知られている。このパクリタクセルが癌を抑制するメカニズムは特異的であり、他の多くの抗癌剤が有糸分裂装置である紡錘体の主成分の微小管の形成を抑えるのに対し、パクリタクセルは微小管の過剰形成を引き起こして有糸分裂を抑制するものである。
【0003】
このように、パクリタクセルは有力な抗癌剤であるが、水に対する溶解性が低いため、実際の治療薬としての利用が限られるという課題がある。そのため、従来より可溶化剤の使用や誘導体として溶解性を高めるための研究開発等が活発に行われてるが、未だ十分な解決策は見出されていない。例えば、現在パクリタクセルは可溶化剤「クレモフォア」を用いて患者に投与されているが、2週間毎に6時間かけて1L投与し、これを4クール実施するという、患者に大きな負担を与えるもの[Eric K.Rowinsky et al.: CANCER RESEARCH 49, 4640 (1989)] である上に、可溶化剤の副作用が問題となっている。また、溶解性が改善されたパクリタクセルの誘導体としてタキソテア(Taxotere) が開発されたが、タキソテアの水に対する溶解度はパクリタクセルの1.3倍にすぎず[I.Ringel et al.: J.Natl.Cancer Inst.,83, 288 (1991)] 、さほど改善されてはいない。
【0004】
パクリタクセルの溶解性を改善する方法として、パクリタクセルの側鎖や母核に様々な官能基を導入する方法があるが、それらの誘導体のうち、いくつかの化合物には溶解性の改善が認められるものの、生理活性が増強されたものは未だ報告されていない。
また、パクリタクセルの糖誘導体に関する報告はなく、天然にキシロースがエーテル結合している化合物が存在することが報告されているだけである[H.Lataste et al.: Proc.Natl.Acad.Sci. USA,81, 4090 (1984)] 。
【0005】
本発明者らは、有効な抗癌剤として実用化することができるパクリタクセルやタキソテアの誘導体(以後、両誘導体をまとめてタキソイド誘導体と略記することがある。)の開発に携わっており、パクリタクセルにスペーサーを介したエステル結合により糖を種々の部位に結合した各種のパクリタクセル誘導体を化学合成している(平成8年2月20日付け提出の特許出願、整理番号P800746Kの明細書参照)。
該誘導体の例として、グルコシルオキシアセチル−7−パクリタクセル、グルコシルオキシアセチル−2’−パクリタクセル、ジグルコシルオキシアセチル−2’,7−パクリタクセル、グルコシルオキシアセチル−2’−タキソテア、ジグルコシルオキシアセチル−2’,7−タキソテア等が挙げられる。これらの誘導体は、水に対する溶解性が向上しており、生理活性も損なわれていないことを見出している。
しかし、これらの誘導体は、糖の結合数や糖の結合部位の差異等により性質も異なり、水溶液中では不安定なもの、溶解性が比較的低いもの等があり、実用化には未だ改善の余地がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の事情に鑑み、溶解性と生理活性を共に向上した安定なタキソイドの配糖化誘導体を開発し、効果的な癌治療薬を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、溶液中での安定性を保持したままタキソイド誘導体の溶解性を高める方法を開発すべく鋭意検討した結果、糖転移酵素の作用によりタキソイド誘導体に糖供与体由来の糖を結合させたタキソイドの配糖化誘導体が、飛躍的に溶解性が向上することを見出し、しかも該誘導体が溶液中でも安定であり、生理活性を保持していることを確認した。
さらに、生体と親和性の高い糖を結合することによって、局部に薬剤を濃縮することが可能であり、例えばガラクトースやマンノースを結合したタキソイド誘導体は肝細胞に親和性があるため、肝臓に濃縮される。つまり、これらの糖類を結合したタキソイド誘導体を抗癌剤として用いれば、肝臓癌に対する薬剤のバイオアベラビリティを高めることができると考え、これらの知見に基づいて本発明を完成するに到った。
【0008】
すなわち本発明は、グルコシルオキシアセチル−7−パクリタクセルにサイクロデキストリン類由来の糖をサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼの作用により結合させたタキソイドの配糖化誘導体に関し、さらにグルコシルオキシアセチル−7−パクリタクセルとサイクロデキストリン類をサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼの存在下で反応させ、該サイクロデキストリン類由来の糖を該グルコシルオキシアセチル−7−パクリタクセルに結合させることを特徴とするタキソイドの配糖化誘導体の製造方法に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に用いるタキソイド誘導体としては、パクリタクセルにスペーサーを介して糖を結合させたものがあり、その具体例を以下に示す。
下記の式で表されるグルコシルオキシアセチル−7−パクリタクセル(以下、7−S−パクリタクセルと略す)、
【0010】
【化1】
【0011】
上記タキソイド誘導体はパクリタクセルにスペーサーを介して糖を結合してなるものである。
パクリタクセルは、Kingston, D.G.I.: Pharmacol. Ther., 52, 1 (1992)に記載された方法により、北米産イチイ(Taxus brevifolia) の樹皮から単離することにより得られる他、化学合成されたもの(R.A.Holton : Europian Patent-A 400971, 1990)なども用いられる。
【0012】
パクリタクセルにスペーサーを介して糖を結合する反応は、テトラベンジル酢酸オキシグルコシドを用いて行われる。このテトラベンジル酢酸オキシグルコシドは、グルコースを出発物質として常法により得られるテトラベンジルグルコースにスペーサーとしてエチルグリコレートなどのグリコレートを結合させてエステル化合物とした後、脱エチル化してカルボン酸化合物としたもので、下記の式で表される。
【0013】
【化2】
【0014】
次に、テトラベンジル酢酸オキシグルコシドの製造法の1例を以下に示す。
【0015】
【数1】
【0016】
常法により得られたテトラベンジルグルコース(1)にエチルグリコレートをp−トルエンスルホン酸と共にベンゼン中で0〜150℃、好ましくは110℃にて0.5〜50時間、好ましくは8時間反応させてエチルグリコレートを1位に結合させ、エチルエステル(化合物(2)、分子量626.76)を得る。この後、該化合物(2)をアルカリ(例えば6N NaOH)メタノール−ジオキサン溶液中で室温〜100℃にて0.5〜50時間、好ましくは3時間処理した後、塩酸(例えば1N HCl)酸性に移して脱エチル化することにより、対応するカルボン酸化合物(3)を得る。この物質が、テトラベンジル酢酸オキシグルコシドである。
なお、グルコースの代わりに他の糖類を用いた場合も同様の反応によって、糖の種類の異なった、対応する糖修飾体を得ることができる。この場合に使用される糖類としては、例えばグルコースの他に、アロース,アルトロース,マンノース,グロース,イドース,ガラクトース,タロース,リボース,アラビノース,キシロース,リキソース,プシコース,フルクトース,ソルボース,タガトース,フコース,マルトース等がある。
【0017】
スペーサーとしては、エチルグリコレートなどのグリコレートの他に、アルキル鎖長を変えたものを使用することができ、例えば3−ヒドロキシ酪酸等が用いられる。
本発明に用いるタキソイド誘導体は、上述のパクリタクセルとテトラベンジル酢酸オキシグルコシドを反応させることにより得られ、その具体例としては、下記の反応工程( II )に示した方法がある。
【0018】
下記の反応工程(II)に示した方法は、パクリタクセルの2’位をクロロトリエチルシリル基を用いて保護した後にテトラベンジル酢酸オキシグルコシドと反応させ、その後、脱ベンジル化および脱トリエチルシリル化してパクリタクセル誘導体を製造するものである。
【0019】
【数2】
【0020】
まず、パクリタクセル(4)とクロロトリエチルシラン(TESCl)等の保護剤、イミダゾール等の塩基、ジメチルホルムアミド(DMF)等の溶剤をアルゴン下、室温で0.5〜50時間、好ましくは19.5時間反応してパクリタクセルの2’位をトリエチルシランで保護し、化合物(9)を得る。
次に、得られた化合物とテトラベンジル酢酸オキシグルコシド(3)、DMAP等の塩基、DCC等の縮合剤、塩化メチレン等の溶剤をアルゴン下、室温で0.5〜100時間、好ましくは5時間反応し、配糖体化した化合物(10)を得る。
その後、化合物(10)を、パラジウムブラック等の触媒、酢酸等の酸と共に水素下、室温で激しく攪拌しながら0.5〜50時間、好ましくは5時間反応させ、さらにテトラヒドロフラン(THF)等の溶剤と水を加え、室温で0.5〜50時間、好ましくは15時間反応させて目的とする化合物(11)を得る。この化合物(11)が前記式で表される7−S−パクリタクセルである。
【0021】
得られたタキソイド誘導体は、ODSなどのシリカゲルを母体とする担体を用いた液体クロマトグラフィーを適用することにより、容易にアノマーを分離することができ、精製標品が得られる。
【0022】
次に、本発明に用いる糖供与体としては、サイクロデキストリン類が挙げられる。サイクロデキストリン類としては、α−サイクロデキストリン,β−サイクロデキストリン,γ−サイクロデキストリンおよびそれらの誘導体が挙げられ、特にγ−サイクロデキストリンが好ましい。
糖供与体由来の糖とは、糖供与体からタキソイド誘導体に転移するものを意味し、上記した糖類が該当する。
【0023】
本発明に用いる糖転移酵素は、上記のタキソイド誘導体と糖供与体を含有する溶液に作用させたとき、該糖供与体からグルコシル基,フルクトシル基,ガラクトシル基,マンノシル基,マルトシル基,マルトオリゴ糖単位等をタキソイド誘導体に結合させる糖転移反応を行い、タキソイドの配糖化誘導体を製造することができるものを意味し、具体的にはサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼが挙げられる。
これらの糖転移酵素は自然界に広く分布しており、植物,動物,微生物等に由来するものがあり、本発明には市販品を含め任意の酵素が使用できる。
【0024】
本発明のタキソイド配糖化誘導体の製造法を以下に例示する。
まず、糖供与体を水,エタノール,アセトニトリルなどの溶媒に溶解して糖供与体溶液を調製するが、該溶液中の糖供与体濃度は5〜80%、好ましくは10〜50%が適当である。
また、タキソイド誘導体に対する糖供与体の比率は、使用する糖供与体の種類等によって異なるが、通常は0.5〜50倍、好ましくは1〜20倍の範囲が望ましい。
次に、該糖供与体溶液にタキソイド誘導体を溶解する。この場合、タキソイド誘導体は溶液中の濃度が0.1〜50%、好ましくは0.5〜30%となるように加えるのが一般的である。
【0025】
次に、上記の溶液に糖転移酵素を加えて反応を行う。酵素の使用量は特に限定されないが、通常は反応が0.5〜100時間、好ましくは1〜50時間で終了するような酵素量とすればよい。その他の反応条件は、用いる酵素により適宜設定すればよい。例えばサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを用いる場合は、pH4〜8、好ましくは5.5〜7で20〜70℃、好ましくは40〜60℃で行う。
上記反応において、糖転移部位は様々であり、グルコシル基の2位、3位、4位および6位の任意の位置に転移する。
【0026】
次いで、常法により酵素を失活させた後、反応生成物から目的とする配糖化誘導体を採取する。この方法は、通常の分離、精製手段を適用すればよい。最も一般的な方法は、反応生成物を固液分離して得た上清を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にかけて分画、精製してタキソイドの配糖化誘導体を分取する方法である。
【0027】
本発明によれば、目的とするタキソイド配糖化誘導体は通常5〜70%程度の収率で得ることができる。本発明のタキソイド配糖化誘導体は、水溶液中での安定性や溶解度が向上しており、本来の生理活性も保持している。
【0028】
【実施例】
次に、本発明を実施例により詳しく説明する。
製造例1
常法により得られたテトラベンジルグルコース(1)1.62g、エチルグリコレート1.56g、p−トルエンスルホン酸0.10g、ベンゼン80mlを110℃でリフラックスさせながら8時間反応させ、化合物(2)(C38H42O8, 分子量626.74)を得た。
次いで、この化合物1.88gを6N NaOH 10ml、メタノール10ml、ジオキサン15mlと共に室温〜100℃で3時間反応させた後、1N HCl 80ml中に移して脱エチル化することにより、化合物(3)、すなわちカルボン酸化合物(C36H38O8, 分子量598.69)を得た。
上記の化合物(3)を重クロロホルムに溶解し、1H-NMRで解析し、それぞれのピークを帰属して構造を決定し、前記の構造式で表されるものであることを確認した。
【0029】
製造例2
パクリタクセル(4)427mg, クロロトリエチルシラン(TESCl)0.1mg、イミダゾール102mgおよびDMF5mlをアルゴン下、室温で19.5時間反応し、パクリタクセルの2’位をトリエチルシリル基で保護した化合物(9)(C53H65NO14Si, 分子量968.18)を得た。
この化合物(9)392mg、製造例1で得たテトラベンジル酢酸オキシグルコシド(3)479mg, DMAP98mg、DCC165mgおよび塩化メチレン8mlをアルゴン下、室温で5時間反応し、配糖体化した化合物(10)(C89H101NO21Si,分子量1548.86)を得た。
次に、得られた化合物(10)513mg、パラジウムブラック100mgおよび酢酸3mlを水素下、室温で激しく攪拌しながら5時間反応した。さらに、テトラヒドロフラン(THF)1mlと水1mlを加え、室温で15時間反応して7−S−パクリタクセル(11) (C55H63NO21, 分子量1074.10)を350mg得た。
【0030】
次に、シリカゲル(商品名:ODS、ワイエムシィ社製) を充填したカラム( φ20mm×250mm) を用い、メタノールを移動相として、7−S−パクリタクセルをアノマー毎に精製した。また、7−S−パクリタクセルを重クロロホルムに溶解し、1H-NMRで解析し、それぞれのピークを帰属して構造を決定し、前記の構造式で表されるものであることを確認した。
【0031】
実施例1
γ−サイクロデキストリン(商品名:γ−CD、塩水港精糖株式会社製)200mgを50%エタノール溶液2mlおよび1M酢酸緩衝液(pH6.0)100μlに溶解した。
このサイクロデキストリン溶液900μlに製造例2で調製した7−S−パクリタクセル(グルコシルオキシアセチル−7−パクリタクセル、以下7−GPと略記する。)10mgを溶解した後、サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ(商品名:コンチザイム、天野製薬(株)製、以下CGTaseと略記する。)70単位を加え、37℃にて3時間反応させた。
その後、エタノール3mlを加えて酵素を失活させた後、固液分離して得た上清をメンブランフィルター(0.45μm)にて濾過し、濾液をHPLCにて分析した。
【0032】
なお、HPLCの分析条件は下記のとおりである。
カラム:MetaChem製 Taxil 5μ(4.6×250mm)
溶 媒:MeOH/H2O(65/35)
流 速:0.5ml/min
検出器:フォトダイオードアレイ検出器(230nm)
注入量:20μl
【0033】
その結果、CGTaseにより7−GPにマルトオリゴ糖が転移した糖転移反応物(タキソイド配糖化誘導体、これは7−GPを除いた配糖体であり、混合物である。)がタキソイド中61.5%生成していた。図1にHPLCのチャートを示した。図中の*は7−GPを示し、**はパクリタクセルを示す。
【0034】
実施例2
実施例1で得られた糖転移物を液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)で解析した。なお、液体クロマトグラフィーの条件は実施例1と同様に行った。結果を図2に示す。高速原子衝撃質量分析法(FAB−MS)のネガティブイオンモードで解析した。なお、マトリックスとしてグリセリンを使用した。得られた結果を第1表に示した。
【0035】
【表1】
第 1 表
【0036】
ピーク1,2のペンタグルコシル−グルコシルオキシアセチル−7−パクリタクセル(C85H113 NO46,分子量1884.80,RT=17.5,19.17)の推定構造式を下記に示す。
【化3】
【0037】
ピーク3のトリグルコシル−グルコシルオキシアセチル−7−パクリタクセル(C73H93NO36,分子量1560.52,RT=22.17)の推定構造式を下記に示す。
【化4】
【0038】
ピーク4のジグルコシル−グルコシルオキシアセチル−7−パクリタクセル(C67H83NO31,分子量1398.38,R=25.17)の推定構造式を下記に示す。
【化5】
【0039】
ピーク5のグルコシル−グルコシルオキシアセチル−7−パクリタクセル(C61H73NO26,分子量1236.24,RT=29.5)の推定構造式を下記に示す。
【化6】
【0040】
ピーク6,7のグルコシルオキシアセチル−7−パクリタクセル(C55H63NO21,分子量1074.10,RT=34.33,36.83)の構造式を下記に示す。
【化7】
【0041】
実施例3
パクリタクセル、7−GPおよび実施例1で調製した糖転移反応物をそれぞれ10mg秤取し、各々に水5mlを加えて18時間攪拌した。攪拌終了後、上清をメンブランフィルター(0.45μm) にて濾過し、濾液をHPLCにて分析した。その結果、各化合物の水に対する溶解度は第2表に示す通りであった。
【0042】
なお、HPLCの分析条件は下記のとおりである。
カラム:MetaChem製 Taxil 5μ(4.6×250mm)
溶 媒:MeOH/H2O(80/20)
流 速:0.5ml/min
検出器:フォトダイオードアレイ検出器(230nm)
注入量:20μl
【0043】
【表2】
第2表
【0044】
表から明らかなように、本発明のタキソイド配糖化誘導体である糖転移反応物の溶解度は飛躍的に向上している。しかも、この糖転移反応物は水溶液中でも安定であることが認められた。
【0045】
試験例
パクリタクセル、7−GPおよび実施例1で得られた糖転移反応物をそれぞれDMSOに溶解し、反応液中の濃度がそれぞれ5μMになるように調製した。
次に、上記の各サンプルをチューブリン(微小管の主要構成タンパク質)と混合し、37℃で15分間反応した。反応後2分、5分、10分および15分に反応溶液の350nmの吸光度を測定した。また、反応終了後に塩化カルシウムを添加し、その5分後に再度350nmの吸光度を測定した。各測定値から、パクリタクセルの重合促進活性および脱重合阻害活性を100とした場合の各サンプルの相対活性を求めた。結果を第3表に示した。
【0046】
【表3】
第 3 表
【0047】
表から明らかなように、タキソイド配糖化誘導体である糖転移物は脱重合阻害活性がパクリタクセルより高いものであり、非常に有効な抗癌剤であることが確認された。
【0048】
【発明の効果】
本発明により、水に対する溶解度が向上し、かつ安定性も改善されたタキソイド配糖化誘導体およびその製造法が提供される。該配糖化誘導体は、患者に投与するにあたり、患者の負担を軽減することができる上に効果的な癌治療薬としての利用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で得られた反応生成物のHPLCのチャートを示した図である。
【図2】 実施例1で得られた反応生成物のLC−MSのチャートを示した図である。
Claims (2)
- グルコシルオキシアセチル−7−パクリタクセルにサイクロデキストリン類由来の糖をサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼの作用により結合させたタキソイドの配糖化誘導体。
- グルコシルオキシアセチル−7−パクリタクセルとサイクロデキストリン類をサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼの存在下で反応させ、該サイクロデキストリン類由来の糖を該グルコシルオキシアセチル−7−パクリタクセルに結合させることを特徴とするタキソイドの配糖化誘導体の製造方法。
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