JP3786461B2 - 新生理活性物質 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は血管新生の異常増殖を伴う各種疾患に対する予防および治療に有効な新規生理活性物質に関する。
【0002】
【従来の技術】
血管新生は胎児期の血管樹形成や各臓器の形態的、 機能的発達時に不可欠な生物学的現象であるが、成熟個体では女性性周期においてのみに生じる。しかし成熟個体において、血管新生の病的増加が様々な疾患の発症あるいは進行過程に関与していることが知られている。具体的には癌、リウマチ性関節炎、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性網膜症、血管腫、乾せんなどが血管新生の異常を伴う疾患として挙げられる(Marsha A. et al., Biotechnology, 9, 630, 1991)。特に固形癌の増殖は血管新生に依存することが報告されていることから(Folkman J., J. Natl. Cancer Inst., 82, 4 ,1990)血管新生阻害剤は難治性固形癌に対する新しい治療薬になると期待されている。
【0003】
これまでいくつかの血管新生阻害物質に関する報告はあるが、いまだ実用化に耐える有効な物質は見い出されていない(公開特許公報 平3-109324号、 公開特許公報 平3-236324号、公開特許公報 平3-2184号)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、血管新生阻害活性を有する新規物質を単離し、血管新生の異常増殖を伴う各種疾患に対する予防および治療剤を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記現状に鑑み、本発明者らは微生物培養液を原料として、阻害活性がより強力で副作用の少ない新しい血管新生阻害物質の探索スクリーニングを開始した。その結果、ストレプトミセス属に属する微生物の培養液中に血管新生阻害物質が産生されることを見い出し、この活性物質を単離、構造解析の結果、ボレリジンであることが判明した。この物質の精製過程において、フォトダイオードアレイ検出器を用いるHPLC分析の結果、ボレリジンと同一の紫外吸収スペクトルを示す4種のピークを確認した。これら化合物を単離、構造決定の結果、新規物質であり血管新生阻害活性を有することを確認し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、一般式(I)で表される化合物、その塩またはその水和物、及びそれらの製造方法、並びにそれらを有効成分とする医薬に関するものである。
【0007】
【化2】
【0008】
(式中、R1 は水素原子または低級アルキル基、R2 はシアノ基またはカルボキシル基を意味する。)
より具体的には、一般式(I)において、R1 がメチル基、R2 がシアノ基であり、12Z、 14Eの立体配置を有する化合物(II)、R1 がメチル基、R2 がシアノ基であり、12Z、 14Zの立体配置を有する化合物(III) 、R1が水素原子、R2がシアノ基であり、12Z、 14Eの立体配置を有する化合物 (IV) 、R1 がメチル基、R2 がカルボキシル基であり、12Z、 14Eの立体配置を有する化合物(V)、それらの塩またはそれらの水和物、及びこれら化合物の製造方法、並びにこれら化合物を有効成分とする、血管新生の異常増殖を伴う各種疾患に対する予防および治療剤等として有効な医薬に関する。
【0009】
これら化合物はボレリジンの類縁化合物であって、ボレリジンはストレプトミセス属の微生物の培養液から抗生物質として1949年単離構造決定された化合物である(Berger J. et al., Arch. Biochem. Biophys., 22, 476, 1949)。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明化合物の抽出原料である微生物培養液の微生物種としては、ストレプトミセス属を選び、 Streptomyces albovinaceus,Streptomyces rochei およびStreptomyces sp. C 2989 などボレリジンを産生するいずれの微生物も使用することができる(Singh S.K. et al., Antimicrob. Agents. Chemother. 27,239, 1985;Berger J., et al., Arch. Biochem. Biophys.,22,476, 1949 ;Lumb M.et al., Nature, 206 ,263, 1965)。
その例として、例えばストレプトミセス・ロチェイ(Streputomyces rochei) ATCC 10739などが挙げられるが、特にボレリジンの生産力が高く好適な菌株として本発明者等が石垣島の土壌より分離した放線菌 Mer-N7167株が挙げられる。本菌株は以下の菌学的性質を有する。
【0011】
形態;分岐し良く伸長する基生菌糸と、同じく良く伸長する気中菌糸とからなり、気中菌糸の先端は胞子化する。胞子鎖は10〜50個連なり、ゆるやかなラセン状を呈するが、曲状のものも見られる。胞子の表面は平滑で大きさは直径1μm ×1〜2μm 程度である。
【0012】
菌体成分;ジアミノピメリン酸としては、LL−型を含み、糖はガラクトース、グルコース、マンノース、リボースを含む。
【0013】
各種培地上での生育;
ISP-1 生育は中程度で、薄く白色の気中菌糸を産する。培養裏面はわずかに黄色になる。
ISP-2 生育は良好で、白色の気中菌糸上に灰色ないし灰白色(Light grayish reddish brown )の胞子を多量に産する。培養裏面はわずかに黄褐色を呈する。
ISP-3 生育は良好で、胞子の色は灰紫色(Grayish purple)、他はISP-2と同様。
ISP-4 胞子の色は灰色(Medium gray)他はISP-2と同様。
ISP-5 生育は弱く、白色の気中菌糸を少し産する。
改変チロシン培地 メラニン色素は産生しない。
なお、いずれの培地でも可溶性色素はほとんど見られない。
【0014】
糖資化性;
(+)グルコース、イノシトール、フラクトース、ラムノース、マンノース、アラビノース
(±)キシロース
(−)ラフィノース、シュクロース
(+);良く資化する (−);資化しない (±);その中間
同定;
本株の性状を同時に実施した Streptomyces rochei type strain IFO 12908の性状と比較すると、表1に示すような相違点が見られる。
【0015】
【表1】
【0016】
このような相違はあるものの種が異なるほどの差ではなく、ストレプトミセス・ロチェイ( Streptomyces rochei )の種内変動の範囲であるので、本発明者らは本菌株をストレプトミセス・ロチェイ( Streptomyces rochei ) Mer-N7167と命名した。なお、本菌株は、平成6年11月28日付けで工業技術院生命工学工業技術研究所に FERM P-14670 として寄託されている。
【0017】
血管新生阻害活性のスクリーニング法として、ラット大動脈片をコラーゲンゲル内にて培養した場合に観察される管腔形成の阻害度を指標とした( Nicosia R.F., Lab. Invest., 63, 115, 1990)。また、血管内皮細胞に対する増殖抑制作用及びスレオニン tRNA合成酵素阻害活性をも測定した。
【0018】
ストレプトミセス属の微生物を通常の適切な培養条件にて培養後、培養液を清澄濾過したのちブタノールまたはメチルイソブチルケトンなどの有機溶媒を加え抽出し、有機溶媒層を減圧下濃縮する。次いでメタノールにて抽出し、石油エーテル(light petroleum)などで処理し粗抽出物を得る。次いでシリカゲルなどを用いる吸着クロマトグラフィー、LH-20 ゲルクロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、ペーパークロマトグラフィーなどを適宜利用して分画し、活性スクリーニングにより活性画分を確認する。上記手法を適宜組み合わせることにより活性物質を単離することができる。吸着クロマトグラフィーに使用する溶媒としては、クロロホルム、メタノール、アセトン、ヘキサン、トルエンなど通常使用される有機溶媒を用い、適宜濃度を選択、組み合わせて使用することができる。結晶化の溶媒としてはクロロホルムとヘキサン、アセトン、四塩化炭素などの組み合わせを適宜選択して用いることができる。一つの手法として M. Lumbらの方法がある(Nature, 206, 263, 1965)。単離した化合物の構造解析は、元素分析、GC-MS、 NMR、融点、紫外・赤外吸収スペクトルなど常法の手法によって行うことができる。
【0019】
本発明化合物は強力な血管新生阻害活性を有することから、異常な血管新生が観察されている疾患、例えばリウマチ性関節炎、固形癌、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性網膜症、血管腫、乾せんなどの予防剤として、また治療薬として期待されるものである。
【0020】
該化合物を各種疾患治療・予防剤として投与する場合、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤などとして経口的に投与してもよいし、また噴霧剤、坐剤、注射剤、外用剤、点滴剤として非経口的に投与してもよい。投与量は症状の程度、年齢、肝疾患の種類などにより著しく異なるが、通常成人1日当たり約 1mg〜100mg を1日1〜数回にわけて投与する。
【0021】
製剤化の際は通常の製剤担体を用い、常法により製造する。すなわち、経口用固形製剤を調製する場合は、主薬に賦形剤、更に必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤などを加えた後、常法により錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤などとする。これらの錠剤、顆粒剤には糖衣、ゼラチン衣、その他必要により適宜コーティングすることは勿論差し支えない。
注射剤を調製する場合には、主薬に必要によりpH調整剤、緩衝剤、安定化剤、可溶化剤などを添加し、常法により皮下、筋肉内、静脈内用注射剤とする。
【0022】
【実施例】
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、例中の%は特記しない限り重量基準である。
【0023】
実施例1.精製方法
種培地として、グリセロール 2.0%、グルコース 2.0%、大豆粉 2.0%、酵母エキス0.5 %、塩化ナトリウム0.25%、炭酸カルシウム0.32%及び微量金属溶液(硫酸銅0.25%、塩化マンガン0.25%及び硫酸亜鉛0.25%の溶液を予め調製)0.2 %の組成からなる培地を用いた。生産培地としては、種培地のグリセロール 2.0%のかわりにポテト澱粉 2.0%とし、他の組成は同じものを用いた。ジャー培養に際しては、消泡剤0.05%を添加した。殺菌前pHを 7.4に調整して使用した。前記の種培地 100mlを分注した 500ml容三角フラスコを 120℃で15分間殺菌し、これにMer-N 7167株の斜面寒天培養の1白金耳を接種し、28℃で3日間振盪培養して種培養とした。生産培地15Lを、各30L容ジャー・ファーメンター2基に分注して 120℃、20分間殺菌し、種培養を各 100mlずつ接種し、28℃で5日間通気(0.5vvm)、攪拌(300rpm)培養した。培養終了後遠心分離して上清を集め、pH7に調整して、ダイヤイオンHP-20 (三菱化成社製)3Lに吸着させ、カラムに充填し、水洗浄、20%メタノール洗浄後、80%アセトンで溶出させた。溶出液約3Lを、減圧下で濃縮してアセトンを除去し、水を加えて約1Lにして、酢酸エチル1Lで2回抽出した。抽出液を減圧下で濃縮乾固し、黒褐色の油状物質を得た。この油状物質を少量のメタノールに溶解し、セファデックス LH-20(ファルマシア・バイオテク社製)カラム(400ml )の上部に載せ、メタノールで展開し、活性画分を濃縮乾固した。次に少量のクロロホルム:メタノール=50:1に溶解し、シリカゲル60(メルク社製)カラム(150ml)の上部に載せ、クロロホルム:メタノール=50:1、20:1及び10:1、各 500mlで溶出させた。クロロホルム:メタノール=50:1〜20:1で溶出される活性画分を集め、濃縮乾固した。次に少量のアセトンに溶解し、少量のシリカゲル60と混ぜ、減圧下で濃縮乾固させ、シリカゲル60カラム(150ml)の上部に載せ、ヘキサン:アセトン=3:1、2:1及び1:2、各 500mlで溶出させた。ヘキサン:アセトン=3:1〜2:1で溶出される活性画分を集め、減圧下濃縮乾固した。この試料を少量のトルエン: アセトン=5:1に溶解し、シリカゲル60カラム(50ml)の上部に載せ、トルエン:アセトン=5:1、4:1及び2:1、各 200mlで溶出させた。トルエン:アセトン=5:1で溶出される活性画分を集め、減圧下濃縮乾固した。この試料をCOSMOSIL 3C18 カラム(3 μm, 4.6x100mm)、フォトダイオードアレイ検出器を用いて分析したところ、図1に示すように、ボレリジンと同一紫外吸収スペクトルを示す3種のピーク(それぞれP−1、P−2、P−3と記す。)を確認した(移動相:アセトニトリル:10mM りん酸二水素カリウム緩衝液、 pH3.5 =1:1、イソクラティック溶出、1ml/min、OD254nm )。なお、図1のメインピークはボレリジンである。
【0024】
実施例2 P−1およびP−2の精製と構造決定
Mer-N7167 株のタンク培養液170 Lを遠心分離して上清140 Lを得、これをpH 7に調整してダイヤイオンHP-20 7Lに吸着させた。HP-20 樹脂を集めカラムに充填し水洗後、80%アセトン水、20Lで溶出した。溶出液を減圧下濃縮してアセトンを留去し、水を加えて4Lにして、酢酸エチル4Lで2回抽出した。酢酸エチル相を併せ減圧下濃縮乾固し、黒褐色油状物質27g を得た。この油状物質をメタノールで調製したセファデックスLH-20 カラムに付し、メタノールで展開し、TLC (メルク社製シリカゲル60、No.5715、 展開溶媒:クロロホルム:メタノール=9:1、硫酸発色、Rf値 0.42 )にてモニターしながら、ボレリジンを含む画分を集め濃縮乾固した。得られた試料をシリカゲル60(750ml)のカラムに吸着させ、クロロホルム2Lで洗浄後、クロロホルム:メタノール=49:1および19:1、各2.5 Lで溶出し、ボレリジンを含む画分を集め濃縮乾固した。得られた試料を更にシリカゲル60(750ml) のカラムに吸着させ、ヘキサン:アセトン=4:1 、2Lで洗浄後、同じく 7:3の混合溶媒で溶出した。ボレリジンを含む画分を集め濃縮乾固し、5.95gの精製物を得た。生物活性を示すこの精製物をクロロホルム−ヘキサンの混合溶媒から結晶化し、ボレリジンの無色針状結晶4.29gを得た。母液を濃縮乾固し(1.58g)、少量のジメチルスルホキシドに溶解した後、アセトニトリル:10mMりん酸二水素カリウム緩衝液(pH3.5) =2:3 であらかじめ緩衝化しておいたYMC-GEL ODS-AM 120-S50( YMC社製、600ml)のカラムに付した。同じ組成の混合溶媒2Lで洗浄後、9:11さらに1:1 の組成の混合溶媒各2Lで溶出し、溶出液をHPLCでモニターしながら、ボレリジンを純粋に含む画分と目的物質を含む画分とに分けた。両画分ともにアセトニトリルを留去し、酢酸エチルで抽出、酢酸エチルを留去後凍結乾燥して、それぞれ820mg と107mg の白色粉末を得た。目的物質を含む試料は、さらにHPLC( YMC-Pack D-ODS-S-5カラム、5 μm、20x250mm、 移動相、アセトニトリル:10mMりん酸二水素カリウム緩衝液 pH3.5=11:9、 イソクラティック溶出、15ml/min、OD254nm )により分取し、同様に脱塩処理を行い、ボレリジン12mg、P−1 59mg 、P−2 11mg を純粋な白色粉末として単離した。
【0025】
P−1の物理化学的性状
1)融点: 88-90℃
2)高分解能EI Mass スペクトル:測定の結果、m/z489.3087 にM+が観測され、分子式はC28H43NO6 であると決定した。質量計算値はm/z489.3090 である。3)1H核磁気共鳴スペクトル:図2に示した。
4)13C核磁気共鳴スペクトル:重クロロホルム中での測定結果を表2に示した。
【0026】
P−2の物理化学的性状
1)融点: 88-91℃
2)高分解能EI Mass スペクトル:測定の結果、m/z489.3087 にM+が観測され、分子式はC28H43NO6 であると決定した。質量計算値はm/z489.3090 である。
3)1H核磁気共鳴スペクトル:図3に示した。
4)13C核磁気共鳴スペクトル:重クロロホルム中での測定結果を表2に示した。
【0027】
【表2】
【0028】
以上の結果から、P−1は下記式(II)で表される、ボレリジンの11位における立体異性体(化合物II)、P−2は下記式(III) で表される、ボレリジンの14および15位の二重結合に関する幾何異性体(化合物III)であると決定した。
【0029】
【化3】
【0030】
実施例3 P−3の分離と構造解析
図1に記載のHPLC解析クロマトに基づいて、P−3をHPLC−質量分析計(LC-Mass)にて分析した結果、ボレリジンより分子量が14少ない類縁体であり、図4に示すマススペクトル及び図5に示すマススペクトルの開裂様式より、下記式 (IV) で表される10−デスメチルボレリジン(化合物IV)であることが判明した。
【0031】
【化4】
【0032】
実施例4 P−4の単離と構造解析
Mer-N7167 株を、グリセロール2.0 %、酵母エキス0.2 %、コーンスティープリカー2.0 %および塩化ナトリウム0.3 %からなる培地にて培養し、得られた培養液の一部をそのまま等量の1-ブタノールで抽出し、濃縮乾固して得た粗抽出物を図1と同様の条件でHPLC分析したところ図6に示すごとく、これまでのP−1、2、3とは異なるP−4が存在することが確認された。そこで以下の方法によりP−4を単離した。全培養液15LをpH3に調整し、1-ブタノール10Lを加え、1時間攪拌後遠心分離し、1-ブタノール層を減圧下濃縮乾固した。得られた油状物質を酢酸エチル、水、各々1Lに分配し、酢酸エチル層を分離し、減圧下濃縮乾固して黒褐色油状物質4.8gを得た。次にこの粗抽出物を少量のジメチルスルホキシドに溶解し、YMC-GEL ODS-AM 120-S50のカラム(600ml)に付した。アセトニトリル:10mMりん酸二水素カリウム緩衝液 pH3.5=2:3の混合溶媒2Lで洗浄後、17:25 さらに9:11の組成の混合溶媒各2Lで溶出し、溶出液をHPLCでモニターしながら、ボレリジンを純粋に含む画分とP−4を含む画分とに分け、脱塩処理後凍結乾燥して、それぞれ617mg と240mg の白色粉末を得た。P−4を含む画分は、さらにシリカゲル60カラム(150ml)に吸着させ、 TLC(展開溶媒、クロロホルム:メタノール=4:1、Rf値=0.11)にてモニターしながら、クロロホルム:メタノール=49:1、 19:1および4:1の混合溶媒で溶出し、ボレリジンおよびP−4をそれぞれ60mgおよび98mgの純粋な白色粉末として単離した。P−4は、ヘキサン−アセトンの混合溶媒から結晶化し、無色結晶51mgを得た。
【0033】
P−4の物理化学的性状
1)融点:108-111 ℃
2)高分解能EI Mass スペクトル:測定の結果、m/z508.3041 にM+が観測され、分子式はC28H44O8 であると決定した。質量計算値はm/z508.3036 である。
3)紫外吸収スペクトル:
λmaxMeOH 254nm(ε14,900)
λmax0.01N HCl-MeOH 260nm(ε15,300)
λmax0.01N NaOH-MeOH 249nm(ε16,500)
4)赤外吸収スペクトル:臭化カリウム中での拡散反射法による測定結果を図7に示した。
5) 1H核磁気共鳴スペクトル:図8に示した。
6)13C核磁気共鳴スペクトル:重クロロホルム中での測定結果を表3に示した。
【0034】
【表3】
【0035】
以上の結果から、P−4は、P−1の12位のニトリル基がカルボキシル基に置き換わった、式(V)で表されるボレリジン類縁体(化合物V)であると決定した。
【0036】
【化5】
【0037】
実施例5.血管新生阻害活性
ラット大動脈片をコラーゲンゲル内にて培養し、観察される管腔形成の阻害度を血管新生阻害活性とした。Sprague-Dawley系雄ラット(8〜12週齢)より摘出した大動脈をハンクス液で洗浄しながら周辺の脂肪組織を丁寧に除去した。大動脈を切開し2mm角の切片を作成した後、24ウエルプレート内へ内皮細胞面を上にして静置する。次に、中性化したタイプIコラーゲンゲル(Cellmatrix type I−A:新田ゼラチン)500 μl を各ウエルへ注ぎクリーンベンチ内で室温下約20分間放置してゲルを固まらせた。ゲルが固まったことを確認した後 500μl の MCDB 131 (クロレラ工業社製)培地を各ウエルに加えCO2 インキュベーター(5%CO2)で 37 ℃下培養した。翌日試験検体を含むMCDB 131培地と培養液を交換し、さらに培養4日目に再度試験検体含有のMCDB 131培地と交換して培養を続けた。そして、試験検体添加後7日目の時点で、大動脈の周囲に形成された毛細血管数を顕微鏡を用いて測定した。
【0038】
その結果は表4に示すごとく、P−1、P−2、P−4は濃度依存的に血管新生を阻害した。そのIC50値はそれぞれ 8.4ng/ml、4.4ng/ml、2.8ng/ml であった。なお、阻害活性はサンプル無添加群の毛細血管数との比較で表した。
【0039】
【表4】
【0040】
実施例6.血管内皮細胞に対する増殖抑制作用
ヒト血管内皮細胞(HUVEC:クラボウ)を EGM培地(クラボウ)に30,000cells/mlの濃度で懸濁した後、96ウエルプレート中に 100μl ずつ添加する。37℃で一晩培養した後に、同じ培地で希釈した検体含有液を各ウエルに100 μl ずつ添加し3日間培養した。そして、50μl の0.33% MTT液を各ウエルに加えて 2-3時間培養した後、培養液を吸引して除いた。次いで、100 μl のジメチルスルホキシドを加えて溶解し、540nm の吸光度をプレートリーダーを用いて測定した。阻害濃度は無処理群との比較によって算出した。
その結果、P−1、P−2、P−4のIC50値はそれぞれ39ng/ml, 36ng/ml, 10μg/mlであり、前二者に強い増殖阻害作用が確認された。
【0041】
実施例 7.スレオニンtRNA合成酵素阻害作用
スレオニンtRNA合成酵素の調製は以下の方法で行った。1×108 個のヒト鼻咽喉癌(KB)細胞を集め PBSで1回洗浄後、10mlのlysis buffer(10ml Tris HCl pH7.5, 50mM KCl, 1mM MgCl2, 0.1mM DTT, 20% glycerol, 1% NP-40) に懸濁し氷冷下30分間放置する。16000rpm(KUBOTA RK-2000T,RA2 rotor) で20分間遠心して得た上清を -20℃で保存した。スレオニンtRNA合成酵素阻害作用の測定は200 μl の反応液にて実施した。50mM HEPES pH8.2, 5mM ATP, 2.5mM CTP, 40mM KCl, 10mM MgCl2, 0.1mM EDTA, 200 μg/ml Rabbit liver tRNA, 100 μM[3H]Threonine, 100 μg/ml酵素溶液に検体を加え30℃で45分間反応を行った。次に、反応液の100 μl を2.5ml の冷却しておいた10% TCA溶液に加えてtRNAを沈殿させた。グラスフィルター(φ 2.1cm) を用いて沈殿を濾取し、10% TCA(5ml×3), EtOH(2ml×2) の順に洗浄した。そして、液体シンチレーションカウンターにより沈殿したスレオニン量を測定した。
その結果、ボレリジン、P−1およびP−2は酵素阻害作用を示し、そのIC50値はそれぞれ0.06μg/ml、 0.95 μg/ml、 0.75 μg/mlであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で行ったボレリジン画分のHPLC 3C18 カラムクロマトグラフィーの結果を示す図である。
【図2】 重クロロホルム中でのP−1の 1H核磁気共鳴スペクトルである。
【図3】 重クロロホルム中でのP−2の 1H核磁気共鳴スペクトルである。
【図4】 P−3のLC-Mass チャートである。
【図5】 P−3のマススペクトル開裂様式を示す図である。
【図6】 実施例4で行ったボレリジン画分のHPLC 3C18 カラムクロマトグラフィーの結果を示す図である。
【図7】 臭化カリウム中でのP−4の赤外吸収スペクトルである。
【図8】 重クロロホルム中でのP−4の 1H核磁気共鳴スペクトルである。
Claims (4)
- 請求項1記載の一般式(I)において、R1が水素原子、R2がシアノ基であり、12Z、 14Eの立体配置を有する化合物、その塩またはその水和物。
- 請求項1記載の一般式(I)において、R1がメチル基、R2がカルボキシル基であり、12Z、 14Eの立体配置を有する化合物、その塩またはその水和物。
- 請求項2または3記載の化合物、その塩またはその水和物を有効成分とする医薬。
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