JP3785075B2 - 圧延機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、上下の圧延用ロールの間を通過する帯材や棒材などを所定厚さに圧延する圧延機に関する。
【0002】
【従来の技術】
図8に従来の4段クロスロール圧延機の概略を示す。
【0003】
従来の4段クロスロール圧延機において、図8に示すように、ハウジング001内には上下のワークロールチョック002,003が支持され、この上下のワークロールチョック002,003にはそれぞれ上下のワークロール004,005の軸部が回転自在に支持されており、上ワークロール004と下ワークロール005とは互いに対向して配設されいる。また、上下のワークロールチョック002,003の上方及び下方には上下のバックアップロールチョック006,007が支持され、この上下のバックアップロールチョック006,007にはそれぞれ上下のバックアップロール008,009の軸部が回転自在に支持されており、上バックアップロール008と上ワークロール004とが互いに対向し、下バックアップロール009と下ワークロール005とが互いに対向している。そして、ハウジング001の上部には上バックアップロールチョック006及び上バックアップロール008を介して上ワークロール004に対して圧延荷重を加える圧下装置010がステップライナ020を介して設けられている。
【0004】
また、ハウジング001の上部に位置してその入側及び出側には上バックアップロールチョック006及び上ワークロールチョック002を水平支持する上クロスヘッド011,012が設けられており、各ロールクロス機構013,014により水平方向移動可能となっている。一方、ハウジング001の下部に位置してその入側及び出側には下バックアップロールチョック007及び下ワークロールチョック003を水平支持する下クロスヘッド015,016が設けられており、各ロールクロス機構017,018により水平方向移動可能となっている。
【0005】
従って、圧延を行う場合、帯板Sをハウジング001の入側から送給し、圧下装置010により所定荷重を加えた上ワークロール004と下ワークロール005との間を通過させることで圧延を行い、出側から送出して次工程に供給する。
【0006】
そして、圧延前または圧延中、各ロールクロス機構013,014,017,018を作動することで、各クロスヘッド011,012,015,016を介して上部チョック002,006と下部チョック003,007をそれぞれ異なる方向に移動し、上ワークロール004及び上バックアップロール008と下ワークロール005及び下バックアップロール009とを、ロール中央部を中心として互いに逆方向に回動して互いの回転軸線を交差させ、そのクロス角度を所定角度に設定することで板クラウンを制御する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
一般的な圧延機にて、前述したステップライナ020は、圧下装置010の応答性を向上させると共に、可動ストロークを小さくして油のバネ定数を高く設定することで製品の歩留りを向上させる目的でハウジング001と圧下装置010との間に介装されており、上バックアップロール008等の摩耗量に応じて異なる厚さのものを変更可能となっている。この場合、ステップライナ020は、圧下装置010の押圧力が上バックアップロール008に適正に伝達され、且つ、軸受等に偏った荷重が作用して耐久性が低下しないように、所定の厚さを確保することが必要である。ところが、ステップライナ020が厚くなると、ハウジング001自体の高さが高くなって剛性が低下し、圧延時にハウジング001が変形して圧延精度が低下してしまうという問題がある。
【0008】
また、この圧延機にて、一般的に、上バックアップロールチョック006の上面にライナが装着されており、このライナをステップライナと兼用させることが考えられる。ところが、上述したクロスロール圧延機では、ロールクロス機構013,014,017,018を作動し、上ワークロール004及び上バックアップロール008と下ワークロール005及び下バックアップロール009とを所定のクロス角度で交差させることで、板クラウンを制御するようにしている。そのため、クロス角度を変更すると、圧下装置010に対する上バックアップロールチョック006の位置が変わり、圧下装置010とステップライナとが位置ずれを生じて帯板Sの圧延精度に影響を与えてしまう。
【0009】
そして、上バックアップロールチョック006は上バックアップロール008のロール組替時にハウジング001から取り外されるため、上バックアップロールチョック006に装着したステップライナもこのロール組替時に交換する必要があり、作業性が煩雑なものとなってしまう。
【0010】
本発明はこのような問題を解決するものであって、ハウジングを小型化して剛性を上げることで圧延精度の向上を図った圧延機を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するための請求項1の発明の圧延機は、ハウジングと、該ハウジングにロールチョックを介して回転自在に支持された上下の圧延用ロールと、前記ハウジングの上部に設けられて該圧延用ロールに所定圧力を作用させる圧下シリンダと、該圧下シリンダの下部に設けられたステップライナと、前記ロールチョックと前記圧下シリンダと前記ステップライナを水平面内で移動させる移動手段とを備え、前記上下の圧延用ロールを支持するロールチョックを帯板の搬送方向前後に移動させて各ロールの中心軸を互いにクロスさせるクロスロール圧延機の前記ロールチョックを移動して前記上下の圧延用ロールをクロスさせるロールクロス手段を、前記移動手段としたことを特徴としている。
【0017】
請求項2の発明の圧延機では、前記圧延用ロールは、前記ハウジングにワークロールチョックを介して対向して回転自在に支持された上下のワークロールと、前記ハウジングにバックアップロールチョックを介して回転自在に支持されて前記上下のワークロールに対接する上下のバックアップロールとを有し、前記ロールクロス手段は、前記クロスヘッドにより前記ワークロールチョック及び前記バックアップロールチョックを移動することを特徴としている。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0019】
図1に本発明の第1実施形態に係る圧延機としてのクロスロール圧延機の概略、図2に第1実施形態のクロスロール圧延機の一部切欠側面視、図3に図2のIII−III断面、図4にクロスロール圧延機の一部切欠正面視、図5にステップライナの支持構造を表すクロスロール圧延機の要部断面、図6に図5のVI−VI断面、図7に図5のVII−VII断面を示す。
【0020】
まず、第1実施形態の圧延機としての4段クロスロール圧延機を簡単に説明する。図1に示すように、ハウジング11には上下のワークロールチョック12,13が支持され、この上下のワークロールチョック12,13にはそれぞれ上下のワークロール14,15の軸部が回転自在に支持されており、上ワークロール14と下ワークロール15とは互いに対向している。また、上下のワークロールチョック12,13の上方及び下方には上下のバックアップロールチョック16,17が支持され、この上下のバックアップロールチョック16,17にはそれぞれ上下のバックアップロール18,19の軸部が回転自在に支持されており、上バックアップロール18と上ワークロール14とが互いに対向し、下バックアップロール19と下ワークロール15とが互いに対向している。そして、ハウジング11の上部に上バックアップロール18を介して上ワークロール14に対して圧延荷重を加える圧下装置20が設けられており、ステップライナ61をハウジング11と圧下装置20の間ではなく、圧下装置20と上バックアップロールチョック16との間に介装している。
【0021】
また、ハウジング11の上部に位置してその出側の一方には圧下装置20、上ワークロールチョック12、上バックアップロールチョック16を支持する上クロスヘッド21が設けられており、上ロールクロス機構22により水平方向移動可能となっている。また、ハウジング11の上部に位置してその入側の一方には圧下装置20、上ワークロールチョック12、上バックアップロールチョック16を押圧する油圧シリンダ機構23,24,25が設けられている。一方、ハウジング11の下部に位置してその出側の一方には下ワークロールチョック13、下バックアップロールチョック17を支持する下クロスヘッド26が設けられており、下ロールクロス機構27により水平方向移動可能となっている。また、ハウジング11の下部に位置してその入側の一方には、下ワークロールチョック13、下バックアップロールチョック17を押圧する油圧シリンダ機構28,29が設けられている。
【0022】
従って、ハウジング11の入側から帯板Sを送給し、圧下装置20により所定荷重を加えると、その荷重はステップライナ61を介して上バックアップロール18に伝達され、帯板Sは上ワークロール14と下ワークロール15との間を通過するときに圧延荷重が付与され、所定の板厚に圧延される。このとき、油圧シリンダ機構23,24,25,28,29及び各ロールクロス機構22,27を作動し、各クロスヘッド21,26を介して上部チョック12,16と下部チョック13,17をそれぞれ異なる方向に移動することで、上ワークロール14及び上バックアップロール18と下ワークロール15及び下バックアップロール19との回転軸線を交差させ、そのクロス角度を所定角度に設定して板クラウンを制御する。
【0023】
本実施形態では、このロールクロス機構22,27による上ワークロール12及び上バックアップロール18と、下ワークロール13及び下バックアップロール19とのクロス角度の設定時、各上部チョック12,16(上ワークロール12及び上バックアップロール18)と共に圧下装置20を同方向に同期移動させることで、圧下装置20が上バックアップロール18の軸中心に対応する上バックアップロールチョック16の適正位置を押圧し、常時、安定した圧延が行われるようにしている。また、このクロス角度の設定時、圧下装置20の下部に上バックアップロールチョック16との間に介装されたステップライナ61も同方向に同期移動させることで、圧下装置20による圧下力が上バックアップロール18に適正に伝達されるようにしている。更に、圧下装置20と上バックアップロール18との間に必要厚さのステップライナ61を介装することで、圧下装置20の全長を短縮して小ストローク化している。
【0024】
以下、上述した第1実施形態の4段クロスロール圧延機を詳細に説明する。図2乃至図4に示すように、ハウジング11は左右一対の枠体11a,11bからなり、各枠体11a,11bの上部に左右の上ワークロールチョック12a,12bが支持され、下部に左右の下ワークロールチョック13a,13bが支持されており、上下のワークロール14,15の各軸部が上下の各ワークロールチョック12a,12b,13a,13bに回転自在に支持されている。
【0025】
また、ハウジング11の枠体11a,11bの上部に上ワークロールチョック12a,12bの上方に位置して左右の上バックアップロールチョック16a,16bが支持され、下部に下ワークロールチョック13a,13bの下方に位置して左右の下バックアップロールチョック17a,17bが支持されており、上下のバックアップロール18,19の各軸部が上下の各バックアップロールチョック16a,16b,17a,17bに回転自在に支持されている。
【0026】
更に、ハウジング11の枠体11a,11bの上部に上バックアップロールチョック16a,16bの上方に位置して圧下装置20を構成する左右の圧下シリンダ20a,20bが設けられている。この圧下シリンダ20a,20bにて、枠体11a,11bの上部にはそれぞれ取付ブラケット51a,51bが取付けられ、この取付ブラケット51a,51bには第2バランスシリンダ52a,52bが球面ブッシュ53a,53bを介して吊下げ連結されている。そして、この第2バランスシリンダ52a,52bの駆動ロッド54a,54bには球面ブッシュ55a,55bを介して連結ロッド56a,56bが連結され、この連結ロッド56a,56bがシリンダケース31a,31bに取付けられている。この第1バランスシリンダ52a,52bは、帯板Sの圧延時に、圧下シリンダ20a,20bを引き上げることで、この圧下シリンダ20a,20bの重量を支持し、その重量が帯板Sの圧延精度に影響がでないようにキャンセルしている。
【0027】
また、枠体11a,11bとシリンダケース31a,31bとの間にはフラット軸受34a、円錐ころ軸受34bが介装され、シリンダケース31a,31b同志が連結ロッド35により連結されている。そして、ピストン33a,33bの下面が左右の上バックアップロールチョック16a,16bの上面部に接触している。この場合、圧下シリンダ20a,20bにおけるピストン33a,33bの中心が上バックアップロール18の軸中心に対応する上バックアップロールチョック16a,16bの適正位置を押圧するように位置設定されている。
【0028】
一方、枠体11a,11bの中間部には第1バランスシリンダ43が装着され、左右の上バックアップロールチョック16a,16bを押し上げ可能となっている。この第1バランスシリンダ43は、帯板Sの圧延時に、上バックアップロールチョック16a,16bを押し上げることで、この上バックアップロールチョック16a,16b、上バックアップロール18、圧下シリンダ20a,20bの重量を支持し、各装置の重量が帯板Sの圧延精度に影響がでないようにキャンセルしている。
【0029】
ハウジング11の枠体11aの上部に位置してその出側には上クロスヘッド21が設けられていて、その入側には油圧シリンダ機構23,24,25が設けられている。この場合、駆動側のシリンダケース31b、上バックアップロールチョック16b、上ワークロールチョック12bは球面軸受36により枠体11bに対して垂直軸周りに回動自在に支持され、作業側のシリンダケース31a、上バックアップロールチョック16a、上ワークロールチョック12aは油圧シリンダ機構23,24,25により、上クロスヘッド21に押圧されると共に、上クロスヘッド21を介して上ロールクロス機構22により枠体11aに対して一体に帯板Sの搬送方向に沿って移動可能に支持されている。
【0030】
この上ロールクロス機構22において、ハウジング11の枠体11aの上部にはクロス駆動用モータ37が取付けられ、出力軸に駆動ロッド38が連結されている。枠体11aの側部には上下のウォーム減速機39,40が装着され、駆動ロッド38の下端部がウォーム減速機39,40に駆動連結されている。そして、基端部がウォーム減速機39,40に駆動連結された従動ロッド41,42の先端部が上クロスヘッド21に連結されている。従って、油圧シリンダ機構23,24,25により、シリンダケース31a、上バックアップロールチョック16a、上ワークロールチョック12aを上クロスヘッド21に押圧すると共に、クロス駆動用モータ37の駆動により駆動ロッド38、ウォーム減速機39,40、従動ロッド41,42を介して上クロスヘッド21を帯板Sの搬送方向に沿って移動し、シリンダケース31a、上バックアップロールチョック16a、上ワークロールチョック12aを同期して移動することができる。
【0031】
また、この油圧シリンダ機構23,24,25は、シリンダケース31a、上バックアップロールチョック16a、上ワークロールチョック12aを帯板Sの搬送方向に沿って上クロスヘッド21を介してハウジング11に押圧することで、圧下荷重に対してハウジング11は内狭まり変形量δを減少させ、水平方向動剛性が高い状態を維持して圧延時のミル振動を防止することができる。なお、各シリンダケース31a,31bには上ロールクロス機構22及び油圧シリンダ機構23,24,25によるクロス角度の設定時に、圧下シリンダ20a,20bに移動量を検出する検出センサ44a,44bが設けられている。
【0032】
一方、ハウジング11の枠体11bの下部に位置してその出側には下クロスヘッド26が設けられていて、その入側に油圧シリンダ機構28,29が設けられている。この場合、作業側の下バックアップロールチョック17a、下ワークロールチョック13aは球面軸受(図示略)により枠体11aに対して垂直軸周りに回動自在に支持され、駆動側の下バックアップロールチョック17b、下ワークロールチョック13bは油圧シリンダ機構28,29により、下クロスヘッド26に押圧されると共に、下クロスヘッド26を介して下ロールクロス機構27により枠体11bに対して一体に帯板Sの搬送方向に沿って移動可能に支持されている。
【0033】
なお、この下ロールクロス機構27は、前述した上ロールクロス機構22とほぼ同様の構成となっており、説明は省略する。従って、下ロールクロス機構27及び油圧シリンダ機構28,29の作用により下クロスヘッド26を帯板Sの搬送方向に沿って移動し、下バックアップロールチョック17b、下ワークロールチョック13bを同期して移動することができる。また、油圧シリンダ機構28,29により下バックアップロールチョック17b、下ワークロールチョック13bを帯板Sの搬送方向に沿って下クロスヘッド26を介してハウジング11に押圧することで、圧延時のミル振動を防止することができる。
【0034】
また、本実施形態の4段クロスロール圧延機では、圧下装置20の下部にステップライナ61が装着されており、上ロールクロス機構22及び油圧シリンダ機構23,24,25の作用により上クロスヘッド21を帯板Sの搬送方向に沿って移動し、シリンダケース31a、上バックアップロールチョック16a、上ワークロールチョック12aを同期して移動するとき、ステップライナ61も同期して移動することができるようになっている。
【0035】
即ち、図5乃至図7に示すように、圧下シリンダ20a,20bにおける各ピストン33a,33bの下面にはそれぞれスラストブロック62a,62bが固定されており、このスラストブロック62a,62bには各ピストン33a,33bと同心上に押圧部63a,63bが固定されている。また、各スラストブロック62a,62bに左右一対の係止爪64によりロール軸方向(図5にて左右方向)に長いライナケース65が取付けられている。このライナケース65内には圧下シリンダ20a,20bに対応してスライド枠体66a,66bが支持ローラ67a,67bによりロール軸方向に沿って移動自在に支持されると共に、連結ロッド68により連結されている。なお、このライナケース65の受部と壁部にはライナ69,70が取付けられ、スライド枠体66a,66bの端部が摺動自在にであると共に、支持ローラ67,67bが転動自在となっている。そして、ライナケース65の一側部にはスライドシリンダ71が取付けられ、駆動ロッド72の先端部がスライド枠体66に連結されている。
【0036】
また、スライド枠体66a,66bには圧下シリンダ20a,20bに対応してそれぞれ3つの開口が形成され、厚さの異なる複数のステップライナ73a,73b,74a,74b,75a,75b(ステップライナ61)がそれぞれロール軸方向に並んで固定されている。この場合、それぞれ対となる第1ステップライナ73a,73b、第2ステップライナ74a,74b、第3ステップライナ75a,75bが同じ厚さであり、第1ステップライナ73a,73bより第3ステップライナ75a,75bの方が厚く形成されている。
【0037】
従って、上ロールクロス機構22及び油圧シリンダ機構23,24,25の作用により上クロスヘッド21を帯板Sの搬送方向に沿って移動すると、圧下シリンダ20aと共にその下部にライナケース65やスライド枠体66a,66b等を介して設けられたステップライナ73a,73b,74a,74b,75a,75bを同方向に移動し、上バックアップロールチョック16a及び上ワークロールチョック12aに同期移動することができる。
【0038】
また、このライナケース65内にはそれぞれ3種類の厚さの異なるステップライナ73a,73b,74a,74b,75a,75bが設けられており、スライドシリンダ71を伸縮駆動することでスライド枠体66a,66bを移動し、各圧下シリンダ20a,20bのピストン33a,33bに対応するステップライナ73a,73b,74a,74b,75a,75bを変更することができる。この場合、ステップライナ73a,73b,74a,74b,75a,75bを使用しない場合も含めて、上ワークロール14や上バックアップロール18等の摩耗量に応じて、4つのの使用パターンを実施することができる。
【0039】
上述した本実施形態のクロスロール圧延機にて、クロス角度を設定する場合、上ロールクロス機構22を作動して上クロスヘッド21を移動し、この上クロスヘッド21に油圧シリンダ機構23,24,25により押圧されている圧下シリンダ20a、上バックアップロールチョック16a、上ワークロールチョック12aを移動する一方、下ロールクロス機構27を作動して下クロスヘッド26を移動し、この下クロスヘッド26に油圧シリンダ機構28,29により押圧されている下バックアップロールチョック17b、下ワークロールチョック13bを移動する。すると、上ワークロール14及び上バックアップロール18と下ワークロール15及び下バックアップロール19との回転軸線が交差し、そのクロス角度を所定角度に設定することができる。
【0040】
このクロス角度の設定時、圧下シリンダ20aの移動と共に、その下部に装着されたライナケース65内のステップライナ73a,73b,74a,74b,75a,75bも追従して同方向に同期移動する。
【0041】
そして、設定したクロス角度で圧延を行う場合、ハウジング11の入側から送給されて上ワークロール14と下ワークロール15との間を通過する帯板Sに対して圧下装置20を作動させると、圧下装置20の押圧力が対応するステップライナ73a,73bを介して上バックアップロールチョック16a、上バックアップロール18に伝達され、更に、上ワークロール14を介して帯板Sに所定荷重として付与され、帯板Sは所定の板厚に圧延される。
【0042】
この場合、クロス角度の設定時に、上ロールクロス機構22及び油圧シリンダ機構23,24,25により上クロスヘッド21を介して圧下シリンダ20a、上バックアップロールチョック16a、上ワークロールチョック12aが同期して移動するため、圧下シリンダ20a,20bにおけるピストン33a,33bの中心が上バックアップロール18(上ワークロール14)の軸中心に対応した位置設定状態が維持されている。従って、圧下シリンダ20a,20bは上バックアップロールチョック16a,16bの適正位置を押圧することとなり、上バックアップロールチョック16a,16bに転倒モーメントが発生するのを防止し、所定の圧延荷重が適正に帯板Sに付与され、安定した圧延を行うことで帯板Sを高精度に圧延することができる。
【0043】
また、上バックアップロールチョック16a,16bに転倒モーメントが発生しないため、圧下シリンダ20a,20bと上バックアップロールチョック16a,16bとの間で片当たりが生じることはなく、偏摩耗による圧下装置20の寿命の低下を防止することができる。
【0044】
更に、圧下シリンダ20aと共にステップライナ73aが同期移動するため、ピストン33a,33bとステップライナ73a,73bと上バックアップロールチョック16a,16bとの位置関係がずれることはなく、圧下装置20の押圧力は上バックアップロール18及び上ワークロール14に適正に伝達されることとなり、帯板Sを高精度に圧延することができる。
【0045】
なお、ロールクロス角度の設定時に、圧下シリンダ20a,20bは上バックアップロールチョック16a,16b、上ワークロールチョック12a,12bと移動するが、この圧下シリンダ20a,20bが枠体11a,11bに第2バランスシリンダ52a,52b及び各球面ブッシュ53a,53b,55a,55bを介して吊下げ支持されているため、枠体11a,11bに対する圧下シリンダ20a,20bの水平移動量はこの球面ブッシュ53a,53b,55a,55bにより吸収されるため、ステップライナ73a,73bを介した上バックアップロールチョック16a及び上ワークロールチョック12aに対する圧下シリンダ20aの追従性を向上できる。また、帯板Sの圧延時には、第2バランスシリンダ52a,52bが作動して圧下装置20(圧下シリンダ20a,20b)を引き上げてその重量を支持するため、圧下装置20の重量が帯板Sの圧延精度に悪影響を及ぼすことがない。
【0046】
なお、帯板Sの圧延中にロールクロス角度を変更する場合であっても、上ロールクロス機構22及び油圧シリンダ機構23,24,25により上クロスヘッド21を介して圧下シリンダ20a、上バックアップロールチョック16a、上ワークロールチョック12aを同期して移動することとなり、前述と同様に、圧下シリンダ20a,20bは上バックアップロールチョック16a,16bの適正位置を常時押圧することとなり、安定した帯板Sの圧延を行うことができる。
【0047】
そして、帯板Sの圧延中に、上ワークロール14や上バックアップロール18等が摩耗して圧下シリンダ20a,20bが十分な圧下力を発揮できないときには、その摩耗量に応じてステップライナ73a,73b,74a,74b,75a,75bを交換する。例えば、圧下シリンダ20a,20bのピストン33a,33bを上昇させた状態で、スライドシリンダ71を伸縮駆動することでスライド枠体66a,66bを移動し、現在、圧下シリンダ20a,20bのピストン33a,33bに対応する位置するステップライナ73a,73bに対して、もっと厚いステップライナ74a,74bをピストン33a,33bの下部に位置させる。
【0048】
このように本実施形態のクロスロール圧延機では、圧下シリンダ20aと上バックアップロールチョック16aと上ワークロールチョック12aとを上ロールクロス機構22の作動及び油圧シリンダ機構23,24,25による上クロスヘッド21への押圧により上クロスヘッド21を介して上チョック12a,16a(上ロール12,18)と共に圧下装置20(圧下シリンダ20a,20b)を同方向に同期移動させるようにしている。従って、圧下装置20と上ロール12,18との位置関係はずれずに、圧下装置20は上バックアップロール18の軸中心に対応する上バックアップロールチョック16の適正位置を押圧することとなり、常時、安定した圧延を行い、帯板Sの圧延精度を向上することができると共に、偏摩耗による圧下装置20の寿命の低下を防止することができる。
【0049】
そして、ステップライナ61(73a,73b,74a,74b,75a,75b)を圧下装置20(圧下シリンダ20a,20b)と上バックアップロールチョック16との間に介装するように、ピストン33a,33bの下部に装着している。従って、圧下装置20(圧下シリンダ20a,20b)におけるピストン33a,33bの長さを短くすることができ、ハウジング11自体の高さが高くなることはなく、また、剛性が低下することもなく、圧延時におけるハウジング11の変形を防止して圧延精度を向上することができる。また、ピストン33a,33bの可動ストロークを小さくすることで、油のバネ定数を高く設定することができ、圧延開始直後や圧延終了直後における板厚精度を確保し、製品の歩留りを向上させることができる。
【0050】
また、ロールクロス角度の設定時、圧下シリンダ20aと共にステップライナ73aが同期移動するため、ピストン33a,33bとステップライナ73a,73bと上バックアップロールチョック16a,16bとの位置関係がずれることはなく、圧下装置20の押圧力は上バックアップロール18及び上ワークロール14に適正に伝達されることとなり、帯板Sを高精度に圧延することができる。
【0051】
更に、圧下シリンダ20aのピストン33a,33bに装着されたライナケース65には3種類の厚さの異なるステップライナ73a,73b,74a,74b,75a,75bが交換可能に設けられている。従って、帯板Sの圧延中に上ワークロール14や上バックアップロール18等が摩耗したときには、その摩耗量に応じてステップライナ73a,73b,74a,74b,75a,75bを交換することで、圧下シリンダ20a,20bの圧下力が各ロール12,18に確実に伝達されることとなる。
【0052】
なお、上述した実施形態では、ライナケース65に3種類の厚さの異なるステップライナ73a,73b,74a,74b,75a,75bを交換可能に設けたが、その種類は3種類に限らず、1種類であっても4種類以上であってもよい。また、圧下シリンダ20a,20bにおける各ピストン33a,33bの下面にスラストブロック62a,62bを固定し、このスラストブロック62a,62bにライナケース65を取付け、内部に複数のステップライナ73a,73b,74a,74b,75a,75bを有するスライド枠体66a,66bを移動自在に設けたが、このステップライナ73a,73b,74a,74b,75a,75bの支持構造はこれに限定されるものではない。
【0053】
また、上ロールクロス機構22をクロス駆動用モータ37やウォーム減速機39,40等を用いて構成したが、この構造に限らず、クロス駆動用モータとスクリュー軸を用いたり、油圧シリンダを用いたりしてもよい。また、油圧シリンダ機構23,24,25を別の機械式移動機構としてもよい。更に、本発明のロール移動手段と圧下移動手段とを上ロールクロス機構22及び油圧シリンダ機構23,24,25により対応したが、ロール移動手段を上ロールクロス機構22及び油圧シリンダ機構24,25とし、圧下移動手段を別の機械式移動機構や油圧式移動機構などとしてもよい。
【0054】
更に、上述の実施形態では、本発明の圧延機を4段クロスロール圧延機とし、片クロスタイプとして説明したが、左右のロールチョックに対してクロスヘッド及びロールクロス機構がある両クロスタイプのクロスロール圧延機でもよい。また、圧延機の種類は、クロスロール圧延機に限らず、上下の圧延用ロールをロール軸方向にシフトさせるシフトロール圧延機やワークロールに対接する前記バックアップロールを帯材の搬送方向に僅かにずらしたオフセットロール圧延機に適用することもできる。
【0055】
【発明の効果】
以上、実施形態において詳細に説明した圧延機によれば、ハウジングにロールチョックを介して上下の圧延用ロールを回転自在に支持すると共に、ハウジングの上部に圧延用ロールに所定圧力を作用させる圧下シリンダを設け、この圧下シリンダの下部にステップライナを設けたで、圧下シリンダの長さを短くすることができ、ハウジング自体の高さが高くなって剛性が低下することもなく、圧延時におけるハウジングの変形を防止して圧延精度を向上することができ、また、圧下シリンダの可動ストロークを小さくすることで、油のバネ定数を高く設定することができ、圧延開始直後や圧延終了直後における板厚精度を確保し、製品の歩留りを向上させることができる。
【0056】
また、圧下シリンダの下部に厚さの異なるステップライナを複数交換可能に設けたので、帯材の圧延中に圧延用ロール等が摩耗したときには、その摩耗量に応じてステップライナを交換することで、圧下シリンダの圧下力が圧延用ロールに確実に伝達されることとなり、適正な圧延を行うことができる。
【0057】
また、圧下シリンダを、ハウジングに支持されたシリンダケースと、シリンダケースに上下移動自在に支持されたピストンとで構成し、ピストンの下部にライナケースを取付け、ライナケース内にスライド枠体を移動自在に支持し、スライド枠体に厚さの異なる複数のステップライナを並設したので、圧下シリンダの下部に複数のステップライナを容易に装着することができ、装置が大型化することなく圧延用ロール等の摩耗に対応することができる。
【0058】
また、ロールチョックと圧下シリンダとステップライナを水平面内で移動させる移動手段を設けたので、圧延用ロールが移動しても、圧下シリンダとステップライナと圧延用ロールとの位置関係が変更されることはなく、常時圧延用ロールの所定位置に所定圧力が作用することとなり、圧下力を適正に圧延ロールに付与して安定した圧延を行うことで圧延精度を向上すると共に寿命の低下を防止することができる。
【0059】
また、圧下シリンダをハウジングの上部から水平面内で移動自在に吊下げ支持した簡単な構造で圧下シリンダを水平面内に移動支持することができ、帯材の圧延精度の低下を防止することができる。
【0060】
請求項1の発明の圧延機によれば、圧延機をクロスロール圧延機とし、ロールクロス手段を移動手段としたので、圧延用ロールがクロス移動しても圧下シリンダは常時圧延用ロールの軸心位置に所定圧力を作用させることができ、圧下力を適正に圧延用ロールに付与して安定した圧延を行うことができる。
【0061】
請求項2の発明の圧延機によれば、圧延機をクロスロール圧延機とし、圧延用ロールを上下のワークロールと上下のバックアップロールとで構成し、ロールクロス手段がクロスヘッドによりワークロールチョック及びバックアップロールチョックを移動するので、ロールクロス手段によりクロスヘッドを介して圧下シリンダ、ワークロールチョック、バックアップロールチョックを移動することとなり、移動位置の精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る圧延機としてのクロスロール圧延機の概略図である。
【図2】第1実施形態のクロスロール圧延機の一部切欠側面図である。
【図3】図2のIII−III断面図である。
【図4】クロスロール圧延機の一部切欠正面図である。
【図5】ステップライナの支持構造を表すクロスロール圧延機の要部断面図である。
【図6】図5のVI−VI断面図である。
【図7】図5のVII−VII断面図である。
【図8】従来の4段クロスロール圧延機の概略図である。
【符号の説明】
11,51 ハウジング
12, 12a,12b 上ワークロールチョック
13,13a,13b 下ワークロールチョック
14 上ワークロール(圧延用ロール)
15 下ワークロール(圧延用ロール)
16,16a,16b 上バックアップロールチョック
17,17a,17b 下バックアップロールチョック
18 上バックアップロール(圧延用ロール)
19 下バックアップロール(圧延用ロール)
20 圧下装置
20a,20b 圧下シリンダ
21 上クロスヘッド
22 上ロールクロス機構(移動手段)
23,24,25,28,29 油圧シリンダ機構
26 下クロスヘッド
27 下ロールクロス機構(移動手段)
43 第1バランスシリンダ
52a,52b 第2バランスシリンダ
53a,53b,55a,55b 球面ブッシュ
61,73a,73b,74a,74b,75a,75b ステップライナ
62a,62b スラストブロック
65 ライナケース
66a,66b スライド枠体
71 スライドシリンダ
S 帯板
Claims (2)
- ハウジングと、該ハウジングにロールチョックを介して回転自在に支持された上下の圧延用ロールと、前記ハウジングの上部に設けられて該圧延用ロールに所定圧力を作用させる圧下シリンダと、該圧下シリンダの下部に設けられたステップライナと、前記ロールチョックと前記圧下シリンダと前記ステップライナを水平面内で移動させる移動手段とを備え、前記上下の圧延用ロールを支持するロールチョックを帯板の搬送方向前後に移動させて各ロールの中心軸を互いにクロスさせるクロスロール圧延機の前記ロールチョックを移動して前記上下の圧延用ロールをクロスさせるロールクロス手段を、前記移動手段としたことを特徴とする圧延機。
- 請求項1記載の圧延機において、前記圧延用ロールは、前記ハウジングにワークロールチョックを介して対向して回転自在に支持された上下のワークロールと、前記ハウジングにバックアップロールチョックを介して回転自在に支持されて前記上下のワークロールに対接する上下のバックアップロールとを有し、前記ロールクロス手段は、前記クロスヘッドにより前記ワークロールチョック及び前記バックアップロールチョックを移動することを特徴とする圧延機。
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