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JP3776521B2 - 光スキャナ - Google Patents

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JP3776521B2
JP3776521B2 JP24055896A JP24055896A JP3776521B2 JP 3776521 B2 JP3776521 B2 JP 3776521B2 JP 24055896 A JP24055896 A JP 24055896A JP 24055896 A JP24055896 A JP 24055896A JP 3776521 B2 JP3776521 B2 JP 3776521B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光源からの光を反射し、その反射光を一次元及び二次元に走査する小型の光スキャナに関する。
【0002】
【従来の技術】
<第1の従来技術>
従来、小型の光スキャナの一例として、光を反射させるためのスキャン部と細長い弾性変形部と圧電アクチュエータとが接着された振動入力部を有し、圧電アクチュエータによって反射部を二次元に振動させ光を走査するものが知られている。
【0003】
このような光スキャナは、例えば、特開平5−100175号公報に開示されている。
【0004】
図14は、この特開平5−100175号公報に開示された光スキャナ1の構成を示す。
【0005】
この光スキャナ1は、薄板状のプレート6と圧電アクチュエータ21とから構成されている。
【0006】
前記プレート6には、振動入力部5と弾性変形部2とスキャン部3及びウエイト部3Wとが一体に形成されている。
【0007】
前記圧電アクチュエータ21は、積層型圧電素子22にひずみ変換素子23を接合させた構造となっている。
【0008】
前記スキャン部3には、光ビームを反射させるためのミラー面4が形成されている。
【0009】
このように構成された光スキャナ1において、振動入力部5に接着された圧電アクチュエータ21に電圧を印加して振動入力部5を振動させると、弾性変形部2が共振してスキャン部3が、図1(a)では軸心Pの回りに角度θT の範囲で回動すると共に、図1(b)では軸心Qの回りに角度θB の範囲で回動するようになる。
【0010】
この場合、圧電アクチュエータ21から、ねじれ変形モードの共振周波数を持つ振動と、曲げ変形モードの共振周波数を持つ振動とを重ね合わせた振動モードで振動入力部5を振動させることにより、変形弾性部2でねじり変形モードと曲げ変形モードとが増幅され、スキャン部3ではねじれ振動と曲げ振動が合成された振動となる。
【0011】
そして、このように構成された光スキャナ1において、圧電アクチュエータ21に印加する電圧を図示しない駆動回路によって制御することにより、二次元的な光走査を実現している。
【0012】
<第2の従来技術>
また、小型の光スキャナの一例として、シリコン半導体基板とねじりバネとを用い、電磁力によって反射鏡を揺動させて光を走査する光偏向子を用いるようにしたものが知られている。
【0013】
このような光スキャナは、例えば、文献“TECHNICAL DIGEST OF THE SENSOR SYMPOSIUM,1995.pp17−20“に開示されている。
【0014】
図15は、この文献に開示された光スキャナの構成を示す。
【0015】
この光スキャナは、光偏向子としてシリコン半導体基板31に反射鏡34と、ねじりバネ33と、これらを支持する固定枠50とを一体に形成している。
【0016】
前記反射鏡34の周縁部には平面コイル35が敷設されており、この平面コイル35は前記ねじりバネ33上を伝わって前記固定枠50上に形成された電極36に電気的に接続されている。
【0017】
また、円形の永久磁石38はスペーサ絶縁基板40を介してその磁化方向が前記反射鏡34に平行でかつ、前記ねじりバネ33の軸方向と約45度をなす方向になる場所に配置されている。
【0018】
交流電流が印加される前記平面コイル35には前記永久磁石38が発生する磁界との相互作用によってローレンツ力が生じる。
【0019】
このローレンツ力によって、前記反射鏡34は前記ねじりバネ33のねじり方向に揺動する。
【0020】
前記ねじりバネ33の弾性特性と前記反射鏡34の質量および重心によって規定される共振周波数と同じ周波数を有する電流を前記平面コイル35に印加すると、その電流値における最大の振幅を得ることができる。
【0021】
また、ここでは反射鏡34を真空封止することによってダンピング係数を小さくしている。
【0022】
なお、図15において、参照符号39はガス吸着剤であり、41は前カバー絶縁基板であり、42は裏面絶縁基板である。
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した第1及び第2の従来技術には大きな偏向角を持って振動する光スキャナの配線などの電気要素の耐久性や大気からの保護という観点については記載されていない。
【0024】
そこで、本発明はこのような点に着目し、大きな偏向角を持って振動する光スキャナにおいて、高い耐久性を示す電気要素を有する光スキャナを提供することを課題とするものである。
【0025】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1によると、任意の部材に固定するための支持体と、少なくとも一方の面が光を反射する反射面である可動板と、前記可動板の幅方向に対する中心から外れるように前記支持体と前記可動板とを接続する弾性部材と、前記可動板上に形成された駆動コイルと、前記可動板の先端部分の近傍に間隔を置いて配置された永久磁石とを具備し、前記駆動コイルに交流電流を印加することにより、前記可動板が前記弾性部材と前記支持体との接続部を固定端とした曲げ及びねじり振動を行う光スキャナであって、前記弾性部材は内部に電気要素を有し、前記可動板上と前記支持体上に達する絶縁性の弾性膜であることを特徴とした光スキャナが提供される。
【0026】
本発明の請求項2によると、任意の部材に固定するための支持体と、少なくとも一方の面が光を反射する反射面である可動板と、前記支持体と前記可動板とを接続する弾性部材と、前記可動板上に、可動板の幅方向に沿って形成された複数の駆動コイルと、前記可動板近傍に間隔を置いて配置された永久磁石とを具備し、前記複数の駆動コイルに交流電流を印加することにより、前記可動板が前記弾性部材と前記支持体との接続部を固定端とした曲げ及びねじり振動を行う光スキャナであって、前記弾性部材は内部に電気要素を有し、前記可動板上と前記支持体上に達する絶縁性の有機弾性膜であることを特徴とした光スキャナが提供される。
【0027】
本発明の請求項3によると、任意の部材に固定するための支持体と、少なくとも一方の面が光を反射する反射面である可動板と、前記支持体と前記可動板とを接続する弾性部材と、前記可動板上に形成された駆動コイルと、前記可動板の先端部分の近傍と側壁部分の近傍に間隔を置いて配置された永久磁石とを具備し、前記駆動コイルに交流電流を印加することにより、前記可動板が前記弾性部材と前記支持体との接続部を固定端とした曲げ及びねじり振動を行う光スキャナであって、前記弾性部材は内部に電気要素を有し、前記可動板上と前記支持体上に達する絶縁性の有機弾性膜であることを特徴とした光スキャナが提供される。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態につき詳細に説明する。
【0029】
<第1実施の形態>
図1乃至図4は、本発明による光スキャナの第1実施の形態及びその変形例を示す。
【0030】
この実施の形態の光スキャナは二次元の光の走査を行うことができるもので、この光スキャナの斜視図を図1に示し、ここで使用される駆動コイルを図2(a)に示し、この光スキャナの断面図を図2(b)に示し、この光スキャナの製作工程を図3(a)〜(e)及び図4(a)〜(d)に示す。
【0031】
この第1実施の形態による光スキャナは、次のように構成されている。
【0032】
この光スキャナは、可動板101と、弾性部材102と、支持体103と、永久磁石104及び駆動コイル106とから構成されている。
【0033】
前記可動板101には光を反射するための反射面105が形成されており、図1における可動板101の裏面がそれに対応している。
【0034】
この可動板101に用いる主材料には振動中に反射面105が変形しないことが望まれるので、ここでは可動板101の主材料として高剛性材料である単結晶シリコンを用いている。
【0035】
また、この可動板101に用いる材料にはその他に窒化シリコン、アルミニウム、ポリイミド等の材料が用いられている。
【0036】
すなわち、前記窒化シリコンは光スキャナを作製するときのマスク材料として用いられ、前記アルミニウムは前記駆動コイル106の配線と駆動コイル106の始点及び終点にあるコンタクトパッド107として、場合によっては反射面105のミラー材料として用いられる。
【0037】
また、前記ポリイミドは前記駆動コイル106を上下から挟み込むような膜を形成するために使用されており、コイル配線間の絶縁と、コンタクトパッド107も含めて電気要素が大気に触れないようにしている。
【0038】
前記弾性部材102は、前記可動板101から延在するポリイミド膜を主材料として、その内部に前記コンタクトパット107から前記支持体103に向かう配線108が形成されている。
【0039】
この配線108材料としては、アルミニウムを用いる。
【0040】
前記支持体103は、光スキャナをダイキャスト等に固定するための接着部として用いられると共に、その表面に外部からの電力を前記配線108を通して前記駆動コイル106に供給するためのボンディングパッド109が形成されている。
【0041】
この支持体103は主材料として単結晶シリコンを用いており、この単結晶シリコンは剛性が高いため、ダイキャストなどに固定するのに都合がよい。
【0042】
その他に支持体103には,光スキャナを作製するときのマスク材料となる窒化シリコンと、前記ボンディングパッド109と配線108を形成するアルミニウムと、配線108を上下から挟み込むことによって大気に触れないようにするためのポリイミド膜などが用いられている。
【0043】
このポリイミド膜は前記可動板101、弾性部材102から延在するポリイミド膜を用いている。
【0044】
また、支持体103の単結晶シリコンと可動板101で用いられる単結晶シリコンは同一の基板から形成されている。
【0045】
図2(a)に示すように、駆動コイル106は、その配線の線幅と配線間の距離を各辺で変化させていると共に、永久磁石104近傍でその幅方向に平行に形成された配線がその他の場所に形成した配線と比べると配線の線幅が狭く、配線間の間隔も狭くしている。
【0046】
ただし、駆動コイル106の厚みは均一にしている。
【0047】
ここで、永久磁石104の配置位置については、上述した文献“TECHNICAL DIGEST OF THE SENSOR SYMPOSIUM,1995.pp17-20 “に示された構成を応用し、可動板101の板厚方向に着磁方向を合わせ、可動板101先端の駆動コイル106に対して上方あるいは下方約45度の延長線上に永久磁石104下部あるいは上部先端が合うような位置に配置する。
【0048】
次に、この第1の実施の形態による光スキャナの作製方法を説明する。
【0049】
この光スキャナは、図2(b)に示す断面図、図3(a)〜(e)及び図4(a)〜(d)に示すような半導体製造技術によって作製することができるもので、使用する材料としては単結晶シリコンの基板と窒化シリコンとポリイミドとアルミニウムの4種類だけである。
【0050】
まず、図3(a)に示すように、シリコン基板110を洗浄し、このシリコン基板110の両面に低圧CVD 装置を用いて窒化シリコン膜111を成膜する。
【0051】
このシリコン基板110の両面に形成された窒化シリコン膜111は、可動板101と支持体103とを分離する際のマスク材料として用いるため、図3(b)に示すように、裏面の窒化シリコン膜111にはフッ素系のドライエッチングによって、シリコンが除去される部分をパターニングしておく。
【0052】
次に、図3(c)に示すように、パターニングされた面と逆の面の窒化シリコン膜111上に第1のポリイミド層112を形成する。
【0053】
この第1のポリイミド層112の形成方法としては、液状のポリイミド溶液を窒化シリコン膜111上に塗布し、印刷法あるいはスピンコーティング法によって均一に成膜し、焼結する手法を用いる。
【0054】
次に、図3(d)に示すように、第1ポリイミド層112上にスパッタされたアルミニウムをエッチングすることによって、駆動コイル106とコンタクトパッド107とが形成される。
【0055】
次に、図3(e)に示すように、第2のポリイミド層113が、前述した第1のポリイミド層112と同様に液状のポリイミド溶液を第1のポリイミド層112上に塗布し、印刷法あるいはスピンコーティング法によって均一に成膜され、焼結される。
【0056】
このとき、コンタクトパッド107上のポリイミドは、あらかじめ除去しておくものとする。
【0057】
次に、図4(a)に示すように、第2のポリイミド層113上にスパッタされたアルミニウムをエッチングすることによって、配線108を形成する。
【0058】
次に、図4(b)に示すように、コンタクトパッド107における駆動コイル106と配線108のコンタクトを確実にするためと、ボンディングパッド109を形成する目的で、さらにアルミニウムをスパッタにより成膜しエッチングすることによってパターニングを行う。
【0059】
このとき、アルミニウム成膜は、配線108の膜厚よりかなり厚膜であることが望まれる。
【0060】
次に、図4(c)に示すように、第3のポリイミド層114が、弾性部材102の剛性を決定する目的とボンディングパッド109を大気から保護する目的で成膜される。
【0061】
この第3のポリイミド層114の成膜後、ボンディングパッド109上のポリイミドはフォトリソグラフィー技術とドライエッチングにより除去される。
【0062】
次に、図4(d)に示すように、シリコン基板110から可動板101と支持体103を作製するためにアルカリ性溶液を用いてシリコン基板110の裏面からシリコンの異方性エッチングを行う。
【0063】
このとき、図2(b)に示すように、弾性部材102となる第1のポリイミド層112下には窒化シリコン膜111があり、この窒化シリコン膜111はシリコン基板110が貫通エッチングされた際に第1のポリイミド層112を保護するための保護層になる。
【0064】
また、シリコン基板110の貫通エッチング後に、弾性部材102と可動板101と支持体103の裏面に露出した窒化シリコン膜111は、ドライエッチングによって除去される。
【0065】
そして、必要に応じて、光を反射する面にアルミニウムをスパッタして反射率の高い反射面105を形成すれば第1の実施の形態による光スキャナの完成となる。
【0066】
次に、この第1の実施の形態による光スキャナの作用を説明する。
【0067】
まず、ボンディングパッド109から交流電流を印加することにより、可動板101上でその先端を周回する駆動コイル106には永久磁石104との相互作用によってローレンツ力が発生する。
【0068】
このローレンツ力のベクトル方向は永久磁石104と駆動コイル106の位置関係によって決まり、この場合、可動板101の板厚方向に力が発生する。
【0069】
この光スキャナは弾性部材102と可動板101との接続部が可動板101の幅方向に対する中心からはずれているため、曲げ振動のみの振動を作り出すことはできず、曲げ振動とねじり振動が同時に発生する構造となっている。
【0070】
ここで、弾性部材102が支持体103との接続部を固定端として板厚方向に振動することを曲げ振動と呼び、弾性部材102の中心軸を回転軸として可動板101が上方あるいは下方に回転する方向に働く振動をねじり振動と呼ぶ。
【0071】
この場合、曲げ振動による可動板101の振幅は、駆動コイル106に生じるローレンツ力の強さと、このローレンツ力の生じている点から支持体103の弾性部材102と接続している辺までの垂線の長さとの積によって決まる。
【0072】
また、ねじり振動による可動板101の振幅の場合は、駆動コイル106に生じるローレンツ力の強さと、このローレンツ力の生じている点から弾性部材102の幅方向に対する中心軸線上までの垂線の長さとの積によって決まる。
【0073】
また、ローレンツ力は永久磁石104の性能とサイズ、駆動コイル106のターン数と配線長と駆動コイル106に印加する電流量と永久磁石104から駆動コイル106までの距離によって決まる。
【0074】
ここで、駆動コイル106が可動板101の最外周を周回するように形成されるのは、発生力量を少しでも大きくするためである。
【0075】
そして、支持体103を図示しないダイキャスト等に固定し、駆動コイル106に電流を印加することによって、可動板101は支持体103と弾性部材102の境界部を固定端とした振動を開始する。
【0076】
このとき、可動板101と弾性部材102の形状や材質によって一意的に決定される共振周波数と同様の周波数で交流電流を印加することにより、可動板101はその電流値における最大の振幅で振動を開始する。
【0077】
このときの振動は、曲げ振動とねじり振動とが同時に発生する2次元的な振動となり、曲げ振動の共振周波数もねじり振動の共振周波数も可動板101と弾性部材102の形状や材質によって一意的に決定される。
【0078】
したがって、曲げ方向に対してもねじり方向に対しても共振状態で振動させたい場合、曲げ振動モードの共振を励起する電流波形とねじれ振動モードの共振を励起する電流波形とを重ね合わせた交流電流を駆動コイル106に印加すればよい。
【0079】
したがって、この第1の実施の形態による光スキャナによれば、次のような効果がある。
【0080】
本実施の形態における光スキャナは2次元の光走査を行うことができる。
【0081】
この光スキャナは一つの駆動コイル106が曲げ振動とねじり振動の両方を発生させる。
【0082】
したがって、本実施の形態における光スキャナは同一形状であれば、駆動時の曲げ、ねじり方向の偏向角は駆動コイル106に印加される電流値によって一意的に決定でき、駆動制御がしやすい。
【0083】
また、本実施の形態における光スキャナは、弾性部材102として有機膜であるポリイミドを用いているために、上述した文献“TECHNICAL DIGEST OF THE SENSOR SYMPOSIUM,1995.pp17-20 “に示されているようなシリコンを振動部材に用いた場合と比較して脆性破壊が起きにくく、必要最小限の強度を保ちながら、大きな偏向角を得ることができる。
【0084】
また、駆動コイル106、配線108およびコンタクトパッド107等の電気要素がポリイミド膜内部に形成されているため、電気要素が湿気によって劣化することがほとんどなく、ポリイミド膜内部に駆動コイル106を設けることで駆動コイル106の配線間の絶縁も安定する。
【0085】
また、本実施の形態で示した駆動コイル106はコイルに電流が印加される際に発生する熱を極力抑えながら、大きな駆動力を得るために考察された形状となっている。
【0086】
この駆動力は以下に示す式(1)によって簡単に求めることができる。
【0087】
F = n i ・B …(1)
ここで、F は駆動力、n はコイルのターン数、i はコイルに流れる電流量、そしてB が永久磁石104に近接して形成された駆動コイル106の配線部上における平均磁束密度を示している。
【0088】
この駆動力を大きくするためには、駆動コイル106に流れる電流量を大きくすることも有効であるが、実際には電流量を大きくすれば駆動コイル106に熱が発生し、駆動コイル106の電気抵抗が大きくなってしまう結果、電流から駆動力への変換効率が悪くなってしまう。
【0089】
また、駆動力を大きくするために、駆動コイル106のターン数を増やしても駆動コイル106の抵抗が大きくなってしまうため、上記と同様の問題が発生する。
【0090】
なお、駆動力を大きくするために、永久磁石104による平均磁束密度を考慮すれば、永久磁石104と駆動コイル106との距離は短い方がよい。
【0091】
すなわち、駆動コイル106の線幅と配線間隔を狭くすることが望ましいが、駆動コイル106の配線全体の線幅を狭くすれば上記と同様に抵抗の問題が発生する。
【0092】
これを極力抑えるために、本実施の形態では、図2(a)に示すように駆動力に寄与する配線だけその線幅を狭くすると共に、配線間の間隔も狭くすることにより、配線全体が永久磁石104の近傍に集中するようになされている。
【0093】
ここで、駆動力に寄与しない部分の駆動コイル106の配線間隔を広くしているのは、駆動コイル106の作製歩留まりを向上させるためである。
【0094】
本実施の形態では光スキャナを一体に形成することができ、組立作業がほとんどなく、超小型の光スキャナとしての生産性を向上することができる。
【0095】
また、本実施の形態では光スキャナは半導体製造技術を応用しているため、超小型化された光スキャナの寸法精度が高く、個々の部品または組立上の問題で光スキャナの振動が不安定になるようなことはない。
【0096】
なお、この実施の形態の各構成は、当然、各種の変形、変更が可能である。
【0097】
例えば、図5に示すように、ねじり振動をより確実に大きな振幅を得るために、弾性部材102が接続する部分に近接する可動板101の側壁の対岸に位置する側壁面122の近傍に永久磁石121を配置してもよい。
【0098】
すなわち、ねじり振動は弾性部材102が可動板101の中心からずれた位置に接続されているために発生する。
【0099】
ねじれの場合、発生力はモーメントで決定され、この構成の場合、弾性部材102の幅方向に対する中心軸を回転中心として、発生力が生じる部分から回転中心軸までの垂線の長さと発生力の積で求められる。
【0100】
永久磁石104は回転中心軸に対して垂直方向に駆動力が分布する配置になっているため、永久磁石104だけではねじり振動を発生する駆動力を効率よく得ることができない。
【0101】
一方、永久磁石121は回転中心軸から最も離れた側壁面122近傍に配置されており、永久磁石121近傍を通る駆動コイル106の配線に生じる駆動力は永久磁石104が作り出す駆動力よりもはるかに効率的で大きい。
【0102】
この構成において、図8(a)に示すように、駆動コイル106は永久磁石104と永久磁石121近傍に形成された配線部が他の配線部と比較して配線幅が狭く、配線間隔も狭くなっている。
【0103】
これによって、駆動力を効率的に得ることができ、駆動コイルの電気抵抗を最小限に抑え、電流を印加したときの熱の発生を最小限にしている。
【0104】
<第2実施の形態>
図6乃至図10は、本発明による光スキャナの第2実施の形態及びその変形例を示す。
【0105】
この第2実施の形態による光スキャナは二次元の光の走査を行うことができるもので、この光スキャナの斜視図を図6に示し、ここで使用される駆動コイルを図8(b)に示す。
【0106】
この第2実施の形態による光スキャナは、駆動コイル206及び207が光スキャナの幅方向に対して2つに分割されている点が第1実施の形態で示した単一の駆動コイル106の構成と異なる。
【0107】
この光スキャナは、可動板201と、弾性部材202と、支持体203と、永久磁石204と、駆動コイル206及び207から構成されている。
【0108】
前記可動板201には光を反射するための反射面205が形成されており、図6における可動板201の裏面がそれに対応している。
【0109】
この可動板201の材料としては振動中に反射面が変形しないことが望まれるので、ここでは可動板201の主材料として高剛性材料である単結晶シリコンを用いている。
【0110】
この可動板201にはその他に窒化シリコン、アルミニウム、ポリイミド材料が用いられており、窒化シリコンは光スキャナを作製するときのマスク材料として用いられ、アルミニウムは駆動コイル206及び207の配線と該駆動コイル206、207の始点及び終点にあるコンタクトパッド208として、場合によっては反射面205のミラー材料としても用いられる。
【0111】
また、ポリイミドは駆動コイル206及び207を上下から挟み込むように形成されており、コイル配線間の絶縁と、コンタクトパッド208も含めて電気要素が大気に触れないようにしている。
【0112】
前記弾性部材202は可動板201から延在するポリイミド膜を主材料として、その内部にコンタクトパッド208から支持体203に向かう配線209が形成されている。
【0113】
この配線209もアルミニウムを用いる。
【0114】
前記支持体203は光スキャナをダイキャスト等に固定するための接着部として用いられると共に、その表面に外部からの電力を配線209を通して駆動コイル206及び207に供給するためのボンディングパッド210が形成されている。
【0115】
この支持体203は主材料として単結晶シリコンを用いており、単結晶シリコンは剛性が高いため、ダイキャストなどに固定するのに都合がよい。
【0116】
その他に支持体203の材料としては光スキャナを作製するときのマスク材料となる窒化シリコンと、ボンディングパッド210と配線209を形成するアルミニウムと、配線209を上下から挟み込み配線209が大気に触れないようにするためのポリイミド膜などが用いられている。
【0117】
このポリイミドは可動板201、弾性部材202から延在するポリイミドを用いている。
【0118】
また、支持体203の単結晶シリコンと可動板201で用いられる単結晶シリコンは同一の基板から形成されている。
【0119】
図8(b)に示すように、駆動コイル206及び207は配線の線幅と配線間の距離を各辺で変化させている。
【0120】
すなわち、永久磁石204近傍でその幅方向に平行に形成される駆動コイル206及び207の配線は、その他の場所に形成される配線と比べると配線の線幅が狭く、配線間の間隔も狭くしている。
【0121】
ただし、駆動コイル206及び207の厚みは共に均一にしている。
【0122】
前記永久磁石204の配置位置については、上述した文献“TECHNICAL DIGEST OF THE SENSOR SYMPOSIUM,1995.pp17-20 “に示された構成を応用し、可動板201の板厚方向に着磁方向を合わせ、可動板201先端の駆動コイル206及び207に対して上方あるいは下方約45度の延長線上に永久磁石204下部あるいは上部先端が合うような位置に配置する。
【0123】
なお、この第2実施の形態による光スキャナは、第1実施の形態で示した光スキャナの作製方法と同様の方法で作製が可能である。
【0124】
次に、この第2実施の形態による光スキャナの作用を説明する。
【0125】
まず、ボンディングパット210から交流電流を印加することにより、可動板201上でその先端を周回する駆動コイル206及び207は永久磁石204との相互作用によってローレンツ力が発生する。
【0126】
このローレンツ力のベクトル方向は、永久磁石204と駆動コイル206及び207の位置関係によって決まり、この場合、可動板201の板厚方向に力が発生する。
【0127】
もし、駆動コイル206及び207に同じ向きと大きさの交流電流を印加すると、この光スキャナは支持体203と弾性部材202の境界部を固定端とした曲げ振動を開始する。
【0128】
しかし、駆動コイル206及び207にそれぞれ異なった向きと大きさで交流電流を印加すると、この光スキャナは曲げ振動の他にねじり振動も加わった2次元的な振動を開始する。
【0129】
ここで、弾性部材202が支持体203との接続部を固定端として板厚方向に振動することを曲げ振動と呼び、弾性部材202の中心軸を回転軸として可動板201が上方あるいは下方に回転する方向に働く振動をねじり振動と呼ぶ。
【0130】
この曲げ振動による可動板201の振幅は駆動コイル206及び207に生じるローレンツ力の強さと、このローレンツ力の生じている点から支持体203の弾性部材202と接続している辺までの垂線の長さとの積によって決まる。
【0131】
また、ねじり振動による可動板201の振幅の場合は、駆動コイル206及び207に生じるローレンツ力の強さと、このローレンツ力の生じている点から弾性部材202の幅方向に対する中心軸線上までの垂線の長さとの積によって決まる。
【0132】
また、ローレンツ力は永久磁石204の性能とサイズ、駆動コイル206及び207のターン数と配線長と駆動コイル206及び207に印加する電流量と永久磁石204から駆動コイル206及び207までの距離によって決まる。
【0133】
ここで、駆動コイル206及び207が可動板最外周を周回するように形成されるのは、発生力量を少しでも大きくするためである。
【0134】
そして、支持体203を図示しないダイキャスト等に固定し、駆動コイル206及び207に電流を印加することにより、可動板201は支持体203と弾性部材202の境界部を固定端とした振動を開始する。
【0135】
このとき、可動板201と弾性部材202の形状や材質によって一意的に決定される共振周波数と同様の周波数で交流電流を印加することにより、可動板201はその電流値における最大の振幅で振動を開始する。
【0136】
また、このときの振動は曲げ振動のみの1次元の振動かあるいは曲げ振動とねじり振動が同時に発生する2次元的な振動となる。
【0137】
なお、曲げ振動の共振周波数もねじり振動の共振周波数も可動板201と弾性部材202の形状や材質によって一意的に決定される。
【0138】
本実施の形態のように複数の駆動コイルを有する場合は、印加する電流の条件によって振動は複雑に変化する。
【0139】
例えば、曲げ振動のみを発生させる場合は、駆動コイル206及び207に曲げモードの共振周波数と同様の周波数の交流電流を印加すればよい。
【0140】
また、ねじり振動のみを発生させる場合は、ねじりモードの共振周波数と同様の周波数を持つ交流を駆動コイル206及び207に印加すればよいする。
【0141】
このとき、駆動コイル206及び207に印加する電流の位相を180度ずらせば、可動板201はねじりモードの振動を開始する。
【0142】
そして、曲げモードに対してもねじりモードに対しても共振状態で振動させたい場合は、曲げモードの共振を励起する電流波形とねじれモードの共振を励起する電流波形とを重ね合わせた交流電流をそれぞれの駆動コイル206、207に印加すればよい。
【0143】
したがって、この第2実施の形態による光スキャナによれば次のような効果がある。
【0144】
本実施の形態における光スキャナは、曲げ振動のみの1次元の光走査を行うこともでき、さらにねじり振動も含めた2次元の光走査も行うこともできると共に、駆動コイル206及び207に印加する電流の向きや大きさを制御することによって、曲げ振動の振幅とねじり振動の振幅を微妙に制御することができ、光の走査領域が任意に決定されている場合でも、印加する電流を制御することによって対応することができる。
【0145】
特に、走査領域の縦横比が変化するような場合、第1実施の形態で示した光スキャナでは対応することができないが、本実施の形態で示した光スキャナでは対応することができる。
【0146】
また、この第2実施の形態による光スキャナでは、弾性部材202として有機膜であるポリイミドを用いているために、上述した文献“TECHNICAL DIGEST OF THE SENSOR SYMPOSIUM,1995.pp17-20 “に示されているようなシリコンを振動部材に用いた場合と比較して脆性破壊が起きにくく、必要最小限の強度を保ちながら、大きな偏向角を得ることができる。
【0147】
また、駆動コイル206及び207、配線209およびコンタクトパッド208等の電気要素がポリイミド膜内部に形成されているため、電気要素が湿気によって劣化することがほとんどなく、ポリイミド膜内部に駆動コイル206及び207を設けることにより、駆動コイル206及び207の配線間の絶縁も安定する。
【0148】
また、本実施の形態で示した駆動コイル206及び207は、コイルに電流が印加される際に発生する熱を極力抑えながら、大きな駆動力を得るために考察されした形状となっている。
【0149】
この駆動力は第1実施の形態で示した式(1)によって簡単に求めることができる。
【0150】
ここで、簡単化のため、2つの駆動コイル206及び207に印加される電流は向きも大きさも同一であると仮定すると、式(1)から、駆動力を大きくするためには電流量を大きくすることも有効である。
【0151】
しかるに、実際には電流量を大きくすれば、駆動コイル206及び207に熱が発生し、駆動コイル206及び207の電気抵抗が大きくなってしまう結果、電流から駆動力への変換効率が悪くなってしまう。
【0152】
また、駆動力を大きくするために、駆動コイル206及び207のターン数を増やしても駆動コイル206及び207の抵抗が大きくなってしまうため、上記と同様の問題が発生する。
【0153】
もっとも、第1実施の形態で示した駆動コイルに比べれば、本構成の駆動コイルは2つに分割されている分、コイルの総配線長が短いため熱問題に対しては有利である。
【0154】
また、駆動力を大きくするために、平均磁束密度を考慮すれば永久磁石と駆動コイルの距離は短い方がよい。
【0155】
すなわち、駆動コイル206及び207の線幅と配線間隔を狭くすることが望ましいが、駆動コイル206及び207の配線全体の線幅を狭くすれば上記と同様に抵抗の問題が発生する。
【0156】
これを極力抑えるために、本実施の形態では、図8(b)に示すように駆動力に寄与する配線だけその線幅を狭くし、また、配線間隔を狭くすることで配線全体が永久磁石204の近傍に集中するようになされている。
【0157】
ここで、駆動力に寄与しない部分の駆動コイル206及び207の配線間隔を広くしているのは、駆動コイル206及び207の作製歩留まりを向上させるためである。
【0158】
本実施の形態では、光スキャナは一体に形成することができ、組立作業がほとんどなく、超小型の光スキャナの生産性を向上することができる。
【0159】
また、本実施の形態では、半導体製造技術を応用しているため、超小型化された光スキャナの寸法精度が高く、個々の部品または組立上の問題で光スキャナの振動が不安定になるようなことはない。
【0160】
なお、この実施の形態の各構成は、当然、各種の変形、変更が可能である。
【0161】
第1の変形例として、ねじり振動をより確実に大きな振幅を得るために図7に示すように、可動板201の幅方向の両端にそれぞれ永久磁石211及び212を配置してもよい。
【0162】
この永久磁石211及び212は可動板201の幅方向に平行な磁場を形成するように磁化方向を合わせて配置すれば効率よく、駆動力に変換することができる。
【0163】
この第1の変形例による光スキャナでは、曲げモードのみの振動を発生させたい場合、駆動コイル206及び207に印加する電流の向きを逆向きにしなければならない点が上述した第2実施の形態における構成と大きく異なる。
【0164】
また、第2実施の形態における構成が曲げ振動における効率を重視しているのに対し、この変形例による光スキャナでは、ねじり振動における効率を重視した構成といえる。
【0165】
これは、第2実施の形態で示した構成はねじり振動に影響を与えるモーメントが均一に分布していないが、この変形例の構成ではねじりモードのモーメントが均一に分布しているのに対し、曲げ振動に影響を与えるモーメントが均一に分布していないためである。
【0166】
この構成において、図10(a)に示すように駆動コイル206及び207は永久磁石211及び212近傍に形成された配線部で他の配線部と比較して配線幅が狭く、配線間隔も狭くなっている。
【0167】
これによって、駆動力を効率的に得ることができ、駆動コイルの電気抵抗を最小限に抑え、電流を印加したときの熱の発生を最小限にしている。
【0168】
第2の変形例として、図9に示すように、曲げ振動とねじり振動の個別制御をより簡単に行えるようにするため、第2実施の形態に類似したような構成で駆動コイル206及び207を可動板201の幅方向に2つに分割して形成し、それぞれの駆動コイル206及び207に永久磁石213及び214をそのコイルの分担する振動モードを発生させる位置に配置してもよい。
【0169】
したがって、曲げ振動を発生させる駆動コイル207に対応する永久磁石213は可動板201の先端近傍に配置されている。
【0170】
また、駆動コイル206はねじり振動を発生させる目的で形成されており、これに対応した永久磁石214は弾性部材202が接続する部分に近接する可動板201の側壁の対岸に位置する側壁面の近傍に永久磁石214を配置する。
【0171】
この構成では、各駆動コイル206及び207が振動方向を分担しているため、駆動コイル207のみに電流を印加した場合は曲げ振動が発生し、駆動コイル206のみに電流を印加した場合は不完全ではあるがねじり振動が発生する。
【0172】
なお、曲げ振動とねじり振動を同時に発生させる場合、第2実施の形態やその第1の変形例では2つのコイルに曲げ振動の波形とねじり振動の波形を重ね合わせた波形で電流を印加していたが、この変形例では重ね合わせる必要はなく、それぞれの駆動コイル206及び207にそれぞれのモードを発生させる交流電流を印加すればよい。
【0173】
この構成は波形を重ね合わせる必要がなく、電流波形を形成する電気回路の構成が容易になる。
【0174】
この構成において、図10(b)に示すように、駆動コイル206及び207の配線は、永久磁石214及び213近傍に形成された配線部が他の配線部と比較して配線幅が狭く、配線間隔も狭くなっている。
【0175】
これによって、駆動力を効率的に得ることができ、駆動コイルの電気抵抗を最小限に抑え、電流を印加したときの熱の発生を最小限にしている。
【0176】
<第3実施の形態>
図11乃至図13は、本発明による光スキャナの第3実施の形態を示す。
【0177】
この実施の形態による光スキャナは二次元の光の走査を行うことができると共に、駆動周波数を検出するための検出コイルを内蔵しているもので、この光スキャナの断面図を図11に示し、この光スキャナの上面図を図12に示す。
【0178】
本実施の形態では上述した第1実施の形態で示した構成を用いて検出用のコイルを内蔵した光スキャナについて示す。
【0179】
この光スキャナは可動板301と、弾性部材302と、支持体303と、永久磁石304と、駆動コイル305とから構成されており、これらを構成する構成要素は第1実施の形態と同様である。
【0180】
また、この光スキャナは、電気要素として前記可動板301上に形成された駆動コイル305と、前記支持体303上に形成されたボンディングパッド306と、前記駆動コイル305とボンディングパッド306を接続するための配線307と、前記可動板301、弾性部材302及び支持体303に延在する検出コイル308とがある。
【0181】
この検出コイル308と駆動コイル305は第2のポリイミド層310によって絶縁されている。
【0182】
また、検出コイル308は第1のポリイミド層309と第2のポリイミド層310に挟まれており、コイル配線間もポリイミドによって絶縁されている。
【0183】
そして、駆動コイル305の始点及び終点にはコンタクトパッド311が形成されている。
【0184】
この駆動コイル305の配線間の絶縁をとっている第3のポリイミド層312はコンタクトパッド311の部分だけ取り除かれており、コンタクトパッド311は配線307と電気的に接続されている。
【0185】
また、この配線307も第4のポリイミド層313によって大気から遮断されている。
【0186】
前記支持体303により、配線307とボンディングパッド306とは電気的に接続されている。
【0187】
また、この支持体303には検出コイル308の始点及び終点に電気的に接続されたボンディングパッド314が形成されている。
【0188】
次に、この実施の形態の作用を説明する。
【0189】
まず、ボンディングパット306から交流電流を印加することにより、可動板301上でその先端を周回する駆動コイル305には永久磁石304との相互作用によってローレンツ力が発生する。
【0190】
このローレンツ力のベクトル方向は永久磁石304と駆動コイル305の位置関係によって決まり、この場合、可動板301の板厚方向にローレンツ力が発生する。
【0191】
この光スキャナは弾性部材302と可動板301との接続部が可動板301の幅方向に対する中心からはずれているため、曲げ振動のみを作り出すことはできず、曲げ振動とねじり振動が同時に発生する構造となっている。
【0192】
ここで、弾性部材302が支持体303との接続部を固定端として板厚方向に振動することを曲げ振動と呼び、弾性部材302の中心軸を回転軸として可動板301が上方あるいは下方に回転する方向に働く振動をねじり振動と呼ぶ。
【0193】
可動板301が振動を開始すると検出コイル308には式(2)に示されるような誘導起電圧Vが発生する。
【0194】
V=B・v・l …(2)
ここで、Bは永久磁石304近傍に形成されたコイル配線上の平均磁束密度であり、vは可動板301の振動速度であり、lは誘導起電圧を発生する検出コイル308の配線長を示している。
【0195】
検出コイル308から得られた電圧波形は可動板301の振動波形と同様の波形となり、駆動コイル305に印加される電流波形とは同一波形であるものの、位相がずれて出力される。
【0196】
したがって、この第3実施の形態による光スキャナによれば次のような効果がある。
【0197】
検出コイル308を光スキャナに一体で内蔵することで、検出コイル308を含めた光スキャナを一体で形成することができ、組立作業がほとんどなく、超小型の光スキャナの生産性を向上することができる。
【0198】
また、半導体製造技術を応用しているため、超小型化された光スキャナの寸法精度が高く、個々の部品または組立上の問題で光スキャナの振動が不安定になるようなことはない。
【0199】
また、駆動コイル305で熱を発生しても振動状態を表す検出コイル308からの検出信号には全く影響がなく、歪みゲージなどを使った検出系よりも精度の高い信号の検出を行うことができる。
【0200】
なお、この検出信号は可動板301の振動状態を評価するのに用いるだけでなく、図13に示すようにこの検出信号を使って、光スキャナを常に共振状態で振動できるようにする自励発振回路315を構成することもできる。
【0201】
この光スキャナを自励発振させることによって温度環境や弾性部材302の経時的な変化に影響されずに常に安定した共振駆動が可能になる。
【0202】
以上説明したような実施の形態において、本発明には以下のような発明が含まれている。
【0203】
(1)任意の部材に固定するための支持体と、少なくとも一方の面が光を反射する反射面である可動板と、前記可動板に二自由度以上の自由度を持たせながら前記支持体と前記可動板とを接続する弾性部材と、少なくとも二辺が前記可動板上に形成された駆動コイルと、前記可動板近傍に間隔を置いて配置された永久磁石とを具備し、前記駆動コイルに交流電流を印加することにより、前記可動板が前記弾性部材と前記支持体との接続部を固定端とした曲げ及びねじり振動を行う光スキャナであって、前記弾性部材は内部に電気要素を有し、前記可動板上と前記支持体上に達する絶縁性の弾性膜であることを特徴とした光スキャナ。
【0204】
(対応する発明の実施の形態)
この(1)の発明に関する実施の形態は、第1実施の形態が対応する。
【0205】
この(1)の発明における駆動コイルは、第1実施の形態に示すように、交流電流を印加したとき永久磁石との相互作用によって可動板を振動させる力を発生するコイルであり、第1実施の形態では平面コイルを用いている。
【0206】
この(1)の発明における電気要素とは駆動コイル、検出コイル、電気配線、電極パッド等を総称している。
【0207】
(作用、効果)
この(1)の発明による光スキャナは、駆動コイルがーつしかないにも関わらず2次元駆動することができると共に、構成が簡単で作製が容易な2次元の光スキャナである。
【0208】
また、この(1)の発明による光スキャナは、板バネ部に絶縁性の弾性膜を用いることによって、振動部材にシリコンを用いた場合と比べて脆性な破壊が起きにくく、必要最小限の強度を保ちながら、大きな偏向角が得られる。
【0209】
また、この(1)の発明による光スキャナは、電気要素が絶縁性の弾性膜内部に形成されているため、電気要素の湿気による劣化がほとんどなく、各電気要素間の絶縁などにも弾性膜を用いることができる。
【0210】
(2)任意の部材に固定するための支持体と、少なくとも一方の面が光を反射する反射面である可動板と、前記可動板に二自由度以上の自由度を持たせながら前記支持体と前記可動板とを接続する弾性部材と、少なくとも一辺が前記可動板上に形成された複数の駆動コイルと、前記可動板近傍に間隔を置いて配置された永久磁石とを具備し、前記駆動コイルに交流電流を印加することにより、前記可動板が前記弾性部材と前記支持体との接続部を固定端とした曲げ及びねじり振動を行う光スキャナであって、前記弾性部材は内部に電気要素を有し、前記可動板上と前記支持体上に達する絶縁性の弾性膜であることを特徴とした光スキャナ。
【0211】
(対応する発明の実施の形態)
この(2)の発明に関する実施の形態は、第2実施の形態が対応する。
【0212】
この(2)の発明における駆動コイルは、第2実施の形態に示すように、交流電流を印加したとき、永久磁石との相互作用によって可動板を振動させる力を発生するコイルであり、第2実施の形態では平面コイルを用いている。
【0213】
この(2)の発明における電気要素とは駆動コイル、検出コイル、電気配線、電極パッド等を総称している。
【0214】
(作用、効果)
この(2)の発明による光スキャナは、複数の駆動コイルを用いることによって(1)の発明による光スキャナよりも可動板の振動を複雑に制御することができる。
【0215】
この(2)の発明によるスキャナは、2次元駆動はもちろん1次元駆動も可能であり、2次元駆動のそれぞれのモードにおける振幅も駆動コイルに印加する電流量を調整することにより、個別に制御することができる。
【0216】
また、この(2)の発明によるスキャナは、板バネ部に絶縁性の弾性膜を用いることによって、振勤部材にシリコンを用いた場合と比べて脆性な破壊が起きにくく、必要最小限の強度を保ちながら、大きな偏向角が得られる。
【0217】
また、この(2)の発明によるスキャナは、電気要素が絶縁性の弾性膜内部に形成されているため、電気要素の湿気による劣化がほとんどなく、各電気要素間の絶縁などにも弾性膜を用いることができる。
【0218】
(3)前記永久磁石は、二つ以上の永久磁石を有し、少なくともーつの永久磁石が前記支持体に対する前記可動板の先端近傍に配置され、少なくとも他のーつの永久磁石が前記可動板の側面近傍に配置されていることを特徴とした(1)に記載の光スキャナ。
【0219】
(対応する発明の実施の形態)
この(3)の発明に関する実施の形態は、第1実施の形態の変形例が対応する。
【0220】
(作用、効果)
この(3)の発明による光スキャナは、可動板の側壁近傍に永久磁石を配置することによって、可動板の先端近傍にのみ永久磁石を配置していた場合と比較してねじり方向に対する偏向角を大きくとることができる。
【0221】
(4)前記永久磁石は、二つ以上の永久磁石を有し、少なくとも二つの永久磁石がそれぞれ前記可動板の両側壁面近傍に配置されていることを特徴とした(2)に記載の光スキャナ。
【0222】
(対応する発明の実施の形態)
この(4)の発明に関する実施の形態は、第2実施の形態の第1変形例が対応する。
【0223】
(作用、効果)
この(4)の発明による光スキャナは、可動板の両側壁近傍にそれぞれ永久磁石を配置することによって、可動板の先端近傍に一つの永久磁石を配置していた場合と比較してねじり方向に対する偏向角を大きくとることができる。
【0224】
ただし、この(4)の発明による光スキャナは、曲げ方向に対する偏向角は小さくなるので、ねじり方向の向角を基準に設計する際に有効な構成である。
【0225】
(5)前記永久磁石は、二つ以上の永久磁石を有し、少なくともーつの永久磁石が前記支持体に対する前記可動板の先端近傍に配置され、前記複数の駆動コイルのうちのーつの駆動コイルのみに影響を及ぼす永久磁石であり、少なくとも他のーつ永久磁石が前記可動板の側面近傍に配置され前記複数の駆動コイルのうちの他のーつの駆動コイルのみに影響を及ぼす永久磁石であり、それぞれの永久磁石はそれぞれ別の駆動コイルに影響を及ぼすように配置されたことを特徴とした(2)に記載の光スキャナ。
【0226】
(対応する発明の実施の形態)
この(5)の発明に関する実施の形態は、第2実施の形態の第2変形例が対応する。
【0227】
(作用、効果)
この(5)の発明による光スキャナは、それぞれの永久磁石がそれぞれ別の一つの駆動コイルにのみに影響を及ぼすように配置されているため、一つの駆動コイルのみに交流電流を印加した場合、発生する振動モードをほぼ一つに限定することができる。
【0228】
また、この(5)の発明による光スキャナの構成を用いれば、曲げ振動の波形とねじり振動の波形を重ね合わせた波形でそれぞれ別の駆動コイルに電流を印加する必要がないので、それぞれ別の駆動コイルにそれぞれのモードを発生させる交流電流を印加すればよい。
【0229】
したがって、(5)の発明による光スキャナは、電流波形を形成する電気回路の構成が容易になる。
【0230】
(6)前記絶縁性の弾性膜は有機膜からなることを特徴とした(1)、(2)、(3)、(4)、(5)に記載の光スキャナ。
【0231】
(対応する発明の実施の形態)
この(6)の発明に関する実施の形態は、第1、第2及び第3実施の形態が対応する。
【0232】
(作用、効果)
この(6)の発明による光スキャナは、板バネ部に有機膜を用いることによってシリコンなどを振動部材に用いた場合と比較して脆性破壊が起きにくく、必要最小限の強度を保ちながら、大きな偏向角を得ることができる。
【0233】
(7)前記駆動コイルは前記永久磁石近傍で該駆動コイルの配線の幅と該配線間の間隔が最小になることを特徴とした(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)に記載の光スキャナ。
【0234】
(対応する発明の実施の形態)
この(7)の発明に関する実施の形態は、第1及び第2実施の形態が対応する。
【0235】
(作用効果)
この(7)の発明による光スキャナは、永久磁石近傍に形成された力の発生に寄与するコイル配線の間隔を狭くし、配線の幅も狭くすることによって永久磁石近傍のコイル配線を永久磁石に近づけることができ、通常のコイルよりも大きな発生力を得ることができる。
【0236】
そして、この(7)の発明による光スキャナは、力の発生に寄与しない部分のコイル配線の幅を十分にとるとともに、コイル配線の間隔を広くすることによって発生する熱の問題を最小限に抑えることができる。
【0237】
また、この(7)の発明による光スキャナは、力の発生に寄与しない部分のコイル配線の間隔を広くすることで作製上の歩留まりを改善することができる。
【0238】
(8)少なくとも一辺が前記可動板内に一体に形成され、該可動板の振動周波数を検出するための検出コイルを有することを特徴とした(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)に記載の光スキャナ。
【0239】
(対応する発明の実施の形態)
この(8)の発明に関する実施の形態は、第3実施の形態が対応する。
【0240】
この(8)の発明における検出コイルは、第3実施の形態に示すように永久磁石との相互作用によって誘導起電力を発生するコイルを指し、第3実施の形態では可動板と弾性部材と支持体に延在する平面コイルを用いている。
【0241】
(作用効果)
この(8)の発明による光スキャナは、検出コイルは駆動コイルで熱を発生しても検出される信号に全く影響がなく、ひずみゲージ等を用いた検出系よりも精度の高い信号検出が可能である。
【0242】
また、この(8)の発明による光スキャナでは、検出コイルからの検出信号を用いて可動板の振動状態を評価するだけでなく、この検出信号を使って、光スキャナを常に共振状態で振動できるようにする自励発振回路として構成することもできる。
【0243】
すなわち、この(8)の発明による光スキャナでは、光スキャナを自励発振させることによって環境温度や弾性部材の経時的な変化に影響されずに常に安定した共振駆動が可能になる。
【0244】
なお、上述した第1及び第2の従来技術には大きな偏向角を持って振動する光スキャナの配線などの電気要素の耐久性や大気からの保護という観点については記載されていない。
【0245】
上述した(1)乃至(5)の発明は、このような点に着目し、大きな偏向角を持って振動する光スキャナにおいて、高い耐久性を示す電気要素を有する光スキャナを提供することを課題とするものである。
【0246】
また、上述した第1及び第2の従来技術には光スキャナの偏向角を大きくするという観点について記載されていない。
【0247】
上述した(6)の発明はこの点に着目し、板バネ部として弾性膜、具体的には有機膜を用いることにより、バネ部の剛性を低くし、小型化に伴う発生力量の低下にも関わらず、大きな偏向角が得られる光スキャナを提供することを課題とするものである。
【0248】
また、上述した第2の従来技術にはコイルに電流を流したときに発生する熱の影響を最小限に抑えるという観点については記載されていない。
【0249】
上述した(7)の発明はこの点に着目し、コイルに発生する熱を最小限に抑えるコイル形状を有する光スキャナを提供することを課題とするものである。
【0250】
また、上述した第1及び第2の従来技術には、光スキャナに一体に形成され振動状態をモニタするデバイスが環境の変化や光スキャナの経時的な変化に関わらず精度の良い検出を行うという観点については記載されていない。
【0251】
上述した(8)の発明はこの点に着目し、環境の変化に強い振動状態をモニタするデバイスを一体に形成した光スキャナを提供することを課題とするものである。
【0252】
【発明の効果】
従って、以上詳述したように、本発明によれば、大きな偏向角を持って振動する光スキャナにおいて、高い耐久性を示す電気要素を有する光スキャナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施の形態による光スキャナの構成を示す斜視図である。
【図2】 第1実施の形態における駆動コイルの構成を示す平面図と光スキャナの構成を示す断面図である。
【図3】 第1実施の形態による光スキャナの製作工程を示す断面図である。
【図4】 第1実施の形態による光スキャナの製作工程を示す断面図である。
【図5】 第1実施の形態による光スキャナの変形例の構成を示す斜視図である。
【図6】 本発明の第2実施の形態による光スキャナの構成を示す斜視図である。
【図7】 第2実施の形態による光スキャナの第1変形例の構成を示す斜視図である。
【図8】 第1実施の形態の変形例及び第2実施の形態における駆動コイルの構成を示す平面図である。
【図9】 第2実施の形態による光スキャナの第2変形例の構成を示す斜視図である。
【図10】 第2実施の形態の第1変形例及び第2変形例における駆動コイルの構成を示す平面図である。
【図11】 本発明の第3実施の形態による光スキャナの構成を示す断面図である。
【図12】 第3実施の形態による光スキャナの構成を示す平面図である。
【図13】 第3実施の形態による光スキャナの適用例を示す図である。
【図14】 第1の従来技術の構成を示す図である。
【図15】 第2の従来技術の構成を示す図である。
【符号の説明】
101、201、301…可動板、
102、202、302…弾性部材、
103、203、303…支持体、
104、204、211、212、213、214、304…永久磁石、
105、205、…反射面、
106、206、207、305…駆動コイル、
107、208、311…コンタクトパッド、
108、209、307…配線、
109、210、306、314…ボンディングパッド、
110…シリコン基板、
111…窒化シリコン膜、
112、309…第1のポリイミド層、
113、310…第2のポリイミド層、
313…第4のポリイミド層、
114、312…第3のポリイミド層、
313…第4のポリイミド層、
308…検出コイル、
315…自励発振回路。

Claims (5)

  1. 任意の部材に固定するための支持体と、
    少なくとも一方の面が光を反射する反射面である可動板と、
    前記可動板の幅方向に対する中心から外れるように前記支持体と前記可動板とを接続する弾性部材と、
    前記可動板上に形成された駆動コイルと、
    前記可動板の先端部分の近傍に間隔を置いて配置された永久磁石とを具備し、
    前記駆動コイルに交流電流を印加することにより、前記可動板が前記弾性部材と前記支持体との接続部を固定端とした曲げ及びねじり振動を行う光スキャナであって、
    前記弾性部材は内部に電気要素を有し、前記可動板上と前記支持体上に達する絶縁性の弾性膜であることを特徴とした光スキャナ。
  2. 任意の部材に固定するための支持体と、
    少なくとも一方の面が光を反射する反射面である可動板と、
    前記支持体と前記可動板とを接続する弾性部材と、
    前記可動板上に、可動板の幅方向に沿って形成された複数の駆動コイルと、
    前記可動板近傍に間隔を置いて配置された永久磁石とを具備し、前記複数の駆動コイルに交流電流を印加することにより、前記可動板が前記弾性部材と前記支持体との接続部を固定端とした曲げ及びねじり振動を行う光スキャナであって、
    前記弾性部材は内部に電気要素を有し、前記可動板上と前記支持体上に達する絶縁性の有機弾性膜であることを特徴とした光スキャナ。
  3. 任意の部材に固定するための支持体と、
    少なくとも一方の面が光を反射する反射面である可動板と、
    前記支持体と前記可動板とを接続する弾性部材と、
    前記可動板上に形成された駆動コイルと、
    前記可動板の先端部分の近傍と側壁部分の近傍に間隔を置いて配置された永久磁石とを具備し、
    前記駆動コイルに交流電流を印加することにより、前記可動板が前記弾性部材と前記支持体との接続部を固定端とした曲げ及びねじり振動を行う光スキャナであって、
    前記弾性部材は内部に電気要素を有し、前記可動板上と前記支持体上に達する絶縁性の有機弾性膜であることを特徴とした光スキャナ。
  4. 前記駆動コイルにおいて、その配線幅と配線間の間隔が前記永久磁石と対向する部分で最小となるように構成されていることを特徴とした請求項1乃至請求項3のいずれかひとつに記載の光スキャナ。
  5. 前記可動板上に、この可動板の振動時の振動周波数を検出する検出コイルが形成されていることを特徴とした請求項1乃至請求項4のいずれかひとつに記載の光スキャナ。
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