JP3773023B2 - 高圧放電ランプおよび照明装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は高圧放電ランプおよび照明装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、高圧放電ランプ用の電極は電極表面および電極材料内に存在する不純物が発光管内に混入するのを防止するためその製造工程において各種洗浄、還元処理、高温熱処理を行なって不純物の除去を行っている。
【0003】
また、高圧放電ランプ用の電極に用いられる高融点金属であるタングステンは、高温熱処理を行なうと結晶粒径が大きく成長し金属表面上の不純物が減少し、これによりタングステンの融点が上昇する。このことによって電極材料の飛散による高圧放電ランプの黒化が減少する作用を奏している。
【0004】
しかしながら、高温熱処理によって結晶粒径を大きくすればするほど、大きく成長した結晶の結合部から電極が折れるなどの不具合が生じている。
【0005】
電極の機械的強度を維持しつつ電極の熱処理を行なうため、特開平11−97166号公報には、少なくとも電極根幹部の発光管封止材料に接触している部分の結晶粒径をL/W>5(L:粒径の長さ、W:粒径の幅)である高圧放電ランプ用の電極(従来例1)が記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来例1のように機械的強度を保ちながら熱処理を行なうために、結晶粒径を制限する様に電極を形成しても不純物が完全に除去されずに残留してしまい、高圧放電ランプを形成した場合に寿命中に黒化などの不具合を起こしてしまうことがあった。
【0007】
このような不具合を低減するためには、完全に不純物を除去するのが好ましく、さらに熱処理を加え、結晶粒径を大きくすることが有効である。
【0008】
しかしながら、結晶粒径を大きくすることは、機械的強度の低下となる虞がある。これは、結晶粒径が大きくなることで、各結晶間の結合が弱くなってしまうためと考えられている。高圧放電ランプの機械的強度が低下することは、製造工程中および輸送中などに電極折れなどの不具合を起こしてしまう虞があった。
【0009】
本発明は、充分に不純物の除去ができる熱処理を行ない電極材料の結晶粒径を大きくしても、所定の機械的強度を維持できる電極を用いた高圧放電ランプを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明の高圧放電ランプは、内部が二次再結晶層化され、表面にこの二次再結晶層を被覆する一次再結晶層が厚さ0.01〜0.05mmで形成された部分を少なくとも根幹部に備えた高融点金属にて形成してなる電極と;少なくとも1対の電極を封装してなる透光性容器と;を具備している。
【0011】
本発明および以下の各発明において、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。
【0012】
高圧放電ランプは、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどの高圧放電ランプ全般を適用することができる。
【0013】
電極を形成する高融点金属はタングステン、モリブデン、レニウムなどの金属を許容する。タングステン金属を使用する場合、アルミニウム、ケイ素、カリウムなどのドープ剤を添加したドープタングステン、または、酸化トリウムなどの電子放射性物質を混合したトリエーテドタングステンなども許容する。
【0014】
電極は、ランプの黒化などを抑止するため内部の不純物の除去を行なうために高温熱処理を行なっている。この高温熱処理によって、電極材料の結晶を成長させている。本発明にある電極を形成するためには、始めに電極の表皮に一次再結晶を形成する程度の温度で熱処理を行なう。その後電極を更に高温熱処理を行なうことで電極の内部に二次再結晶層を形成する。このとき始めの熱処理で形成された電極表皮は二次再結晶することなく一次再結晶層として形成される。
【0015】
また、電極の根幹部とは、電極を封装している透光性容器と接触している部分をしめしている。例えば、電極軸部とコイル部からなる電極においては、電極軸部の少なくとも1部を示している。
【0016】
透光性容器は、石英ガラス、透光性セラミックスなどの透光性、耐火性および気密性を備えた材料によって成形されていて、放電空間を包囲し電極を気密に封装する。
【0017】
一対の電極は、この透光性容器の内部に離間対向して封装される。透光性容器が細長い場合には、その両端に封装される。また、透光性容器が球状ないし楕円球状である場合には、一対の電極を透光性容器の両端に封装する両封止構造にするばかりでなく、要すれば、一端側からほぼ平行に離間させて封装する片封止構造にすることができる。
【0018】
また、高圧ナトリウムランプの場合、透光性容器として透光性セラミックを用いるため電極は透光性容器を気密に貫通するニオブなどの封着性金属のチューブの内端に支持することができる。
【0019】
さらに、メタルハライドランプの場合、透光性容器として石英ガラスまたは透光性セラミックを用いられるが、石英ガラスのときには、ピンチシールまたは、加熱軟化させ収縮させることによって電極を封止することができるので、電極はその基端を封止部に埋設されるモリブデン箔に溶接し中間部の周囲を石英ガラスに支持することができる。
【0020】
また、上記のように構成された高圧放電ランプを外管内部に収納することも許容する。
【0021】
請求項1の発明によれば、電極を充分に高温熱処理することができるため、電極部材内部の不純物を除去することができる。このため、電極部材の不純物による電極部材の融点が低下することが低減され、電極部材の飛散による黒化などの不具合を低減することができる。
【0022】
また、電極の表皮には厚さ0.01〜0.05mmの一次再結晶層が存在するため、充分に電極の熱処理を行なっても電極の機械的強度を保持することができる。このため、製造工程または輸送中での電極折れなどの不具合を低減できる高圧放電ランプを提供できる。
【0023】
請求項2の発明の照明装置は、照明装置本体と;請求項1記載の高圧放電ランプと;高圧放電ランプの安定点灯を行う点灯手段と;を具備している。
【0024】
照明装置は、高圧放電ランプの発光を何らかの目的で用いる様に構成されたあらゆる装置を含む広い概念を意味する。したがって、照明、光投射および光化学反応など各種用途に幅広く適応する。
【0025】
照明用としては、屋内用および屋外用の各種照明器具に適応する。
【0026】
光投射用としては、プロジェクタや広告・宣伝または標識などの表示体への投光用に適応する。
【0027】
光化学反応用としては、光硬化性樹脂など処理、合成樹脂の合成などに適応する。
【0028】
請求項2の発明によれば、請求項1の作用を有する照明装置を提供できる。
【0029】
【発明の実施形態】
本発明の光源装置の第1の実施形態を図1および図2を参照して説明する。図1は、本発明のメタルハライドランプの電極の実施形態の例の断面図である。図2は同じく電極の拡大断面図である。なお、図1と同一部分には同一符号を付してある。
【0030】
電極10は、電極軸1と電極コイル2から形成されている。電極軸1は酸化トリウムを1.7%混同したトリエテードタングステンを使用した。また電極コイル2は、直径0.4mmのドープドタングステンを使用している。電極軸1は、直径0.6mm、長さ11mmの棒状である。
【0031】
電極軸1には、一次再結晶層1aに二次再結晶層1bが被覆されており、一次再結晶層1aは、層の厚みが0.01mmから0.05mmであり、一次再結晶層1aの結晶粒径の長さは0.01mmから0.05mmであり、1から5層の結晶粒で形成されている。
【0032】
二次再結晶層1bは、一次再結晶層1aの結晶粒径の100倍以上の大きさを有している結晶粒で構成されており、最大の大きさのものでは、結晶粒の幅は、電極1の直径の一次再結晶層1aの幅を除いた幅まで成長している。
【0033】
このような電極の製造方法について実施の形態を説明する。電極1に用いられるタングステンのような高融点金属は、通常の溶解法のよる製造が困難なため、主として粉末治金法によって製造されている。粉末治金法とは、金属粉末を大きな圧力で固めた後、焼成することによって金属固体を得るものである。酸化トリウムを混合させたタングステンの粉末を粉末治金法によって得られた金属固体は、所定の太さの電極棒として加工するため線引き加工を行なっている。線引き加工の工程では、1800℃の温度で加熱しながらカーボンの型を用いて引き伸ばしている。
【0034】
この線引き加工後の電極の断面を図2(a)にしめす。電極の表皮には、線引き加工工程での1800℃の加熱によって一次再結晶層1aがすでに形成されている。電極の内部1cはまだ再結晶がしておらず、繊維状の結晶が構成されている。
【0035】
その後、電極軸1の長さにカットし電極コイル2を巻いて図1にある電極10の構造とする。
【0036】
電極10の状態で更に処理を行なう。まず、水素雰囲気の中で15分間、1800℃で加熱を行ない還元処理を行なう。その後真空雰囲気の中で10分間、2500℃の高温で加熱処理を行なう。この高温熱処理にて電極10内部の不純物の除去と電極の二次再結晶層1aを形成する。
【0037】
この処理後の電極断面図を図2(b)にしめす。電極軸内部に二次再結晶層1bが形成されている。一次再結晶層1aは、再加熱されたときにでも上記の条件では結晶化が進行することなく、一次再結晶状態を保持していた。二次再結晶層1bの結晶粒径は、最大のもので0.3mmの幅まで結晶を成長させている結果となった。
【0038】
本実施形態の電極10の機械的強度を比較した。比較に用いた電極は、本実施形態の電極と材質大きさともに同一のものを使用したが、二次再結晶を形成する熱を更に高温にし、2800℃で15分間行ない、電極表皮の一次再結晶層まで二次再結晶を成長させた電極を用いた。
【0039】
比較例の電極の場合、電極の折れ強度は、5MPa以下であったのに対して、本実施形態の電極10を用いた場合は、その1.5倍の1.5MPaの強度であった。
【0040】
これは、電極軸1の表皮に形成された結晶粒径の細かい一次再結晶層1aの各結晶間の結合によって、機械的強度が保たれ、電極軸1の内部にある二次結晶層1bを機械的に保護できるためであると考えられる。
【0041】
次に、第2の実施形態として、このように製造した電極10を用いたメタルハライドランプを図3を参照して説明する。
【0042】
図において、IBは発光管、OBは外管、Bは口金である。図のメタルハライドランプは、点灯状態にて口金Bが上部に位置する様に垂直点灯される。
【0043】
発光管IBは、透光性放電容器3、上下一対の電極10および図面に現れないイオン化媒体を備えて構成されている。
【0044】
透光性放電容器3は、石英ガラスからなり、両端にピンチシール部31を備えている。透光性放電容器3の外表面には、点灯中、下側に位置する側に保温膜12が塗付されている。
【0045】
電極10は、基端をピンチシール部31内に気密に埋設されているモリブデン箔32に溶接されている。また、補助電極11は点灯中上部に位置する側に電極10と同様にピンチシール部31に埋設される。
【0046】
イオン化媒体は、発光金属のハロゲン化物、希ガスおよび水銀からなる。
【0047】
外管OBは、硬質ガラスからなり、内部に発光管IBを収納し、室温状態で約53kPaの窒素を封入している。口金Bは、E39形ねじ口金からなり、外管OBの端部に端部に装着されている。口金Bは、一対の内部導入導体4a、4bを介してそれぞれ電極10に電気の供給を行なう役割を担っている。
【0048】
また、外管OBの内部には、発光管IBを外管OB内の所定に位置に定置するために、上部支持枠5および下部支持枠6が配設されている。
【0049】
上部支持枠5は、発光管IBの上部を支持するとともに電極10を電気的に接続するもので、コ字状導体51、支持バンド52および接続導体53を備えている。コ字状導体51は、その基底部を内部導入導体4aに溶接している。支持バンド52は、発光管IBの上側のピンチシール部31を包持するとともに、コ字状導体51の側辺に溶接されている。接続導体53は、上部支持枠5と下部支持枠6と電気的に接続されている。発光管IBの補助電極11はピンチシール部31内においてモリブデン箔32に溶接し、限流抵抗13を介してコ字状導体5aに電気的に接続される。
【0050】
下部支持枠6は、発光管IBの下部を支持するとともに電極10を電気的に接続するもので、コ字状導体61、支持バンド62、接続導体63およびスプリング片63を備えている。
【0051】
コ字状導体61および支持バンド62は、下部支持枠5と同様の構造であるが、上下倒立した関係になっている。また、スプリング片64はコ字状導体61に溶接され先端が外管OB内の所定に位置に保持している。
【0052】
この実施形態のメタルハライドランプを点灯し、黒化の発生状況を観察した。本実施形態のメタルハライドランプでは、従来の電極を用いたメタルハライドランプでは黒化が発生してしまう9000時間経過後も黒化を発生することなく良好な光束維持率を保持していた。
【0053】
これは、電極10の高温熱処理によって、電極10内部の不純物が除去され、電極10部材の飛散などが抑制されたためと考えられる。また、電極10の機械的強度も充分に確保されているため、製造工程および輸送における電極折れも低減できた。
【0054】
また、本発明の第3の実施形態を説明する。本実施形態は、第1の実施形態の電極とは電極軸の材質をドープドタングステンにしたもので、他の形状は、第1の実施形態で説明したものと同一である。
【0055】
本実施例での電極10の製造方法について説明する。線引き加工工程および線引き加工後電極軸1をカットし電極コイル2を巻回し、水素雰囲気で還元処理を行なうまで、同一工程でなされている。
【0056】
その後、電極10は高温熱処理される。実施形態1とは熱処理の温度条件が異なっている。本実施形では、高温熱処理は真空雰囲気の中で2000℃、10分間行なうことで、第1の実施形態のように二次再結晶層1bの表皮に一次再結晶層1aを形成することができる。
【0057】
この様に形成された電極10もまた、機械的強度は15kPaであり、一次再結晶層の表皮が形成されない電極と比較して機械的強度が1.5倍向上している。また、本実施形態の電極10をメタルハライドランプに組みこんだときも、寿命中黒化することなく、良好な光束維持率を確保していた。
【0058】
本発明の第3の実施形態を図3を参照して説明する。図3は第2の実施例のメタルハライドランプを装着した照明装置7を示している。なお、図1と同一部分には同一符号を付してある。
【0059】
照明装置7は、反射笠71、ソケット72及び安定器73などから構成されている。メタルハライドランプの口金4は照明装置のソケット72に装着されて使用される。ソケット72には安定器73の二次出力端が接続されメタルハライドランプに電力の供給を行なっている。照明装置7は天井面70によって支持される。
【0060】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、電極を充分に熱処理することによって、電極部材内部の不純物を除去することができるため、電極部材の不純物による電極部材の融点が低下することが低減され、電極部材の飛散による黒化などの不具合を低減することができる。
【0061】
また、電極の表皮には厚さ0.01〜0.05mmの一次再結晶層が存在するため、充分に電極の熱処理を行なっても電極の機械的強度を保持することができる。このため、製造工程または輸送中での電極折れなどの不具合を低減できる高圧放電ランプを提供できる。
【0062】
請求項2の発明によれば、請求項1の作用を有する照明装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のメタルハライドランプの電極の第1および第3の実施形態の断面図。
【図2】同じく電極の拡大断面図。
【図3】本発明の第2の実施形態のメタルハライドランプの正面図。
【図4】本発明の第4の実施形態の照明装置の断面図。
【符号の説明】
1…電極軸 1a…一次再結晶層 1b…二次再結晶層
2…電極コイル 10…電極
IB…発光管 OB…外管
Claims (2)
- 内部が二次再結晶層化され、表面にこの二次再結晶層を被覆する一次再結晶層が厚さ0.01〜0.05mmで形成された部分を少なくとも根幹部に備えた高融点金属にて形成してなる電極と;
この電極を封装してなる透光性容器と;
を具備していることを特徴とする高圧放電ランプ。 - 照明装置本体と;
請求項1記載の高圧放電ランプと;
高圧放電ランプの安定点灯を行う点灯手段と;
を具備していることを特徴としている照明装置。
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