JP3761950B2 - シクロペンタジエン類の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は工業的に有用なシクロペンタジエン類の新規な製造方法に関する。すなわち、構造が簡単で安価なケトンやアルデヒドから、有用なシクロペンタジエン類を容易に製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ここで、シクロペンタジエン類として1,3−ジメチルシクロペンタジエンを例に取り従来技術を説明する。従来、1,3−ジメチルシクロペンタジエンの製造方法は種々提案されている。
その中でも工業的に入手可能な原料から製造する方法には、例えば、
(1)ジシクロペンタジエンをアルカリ金属酸化物の存在下でメタノールと反応させる方法(特開昭62−72630号公報)、
(2)アセトニルアセトンを環化脱水して生成した3−メチル−2−シクロペンテン−1−オンにグリニャール試薬を反応させる方法(Die Makromolekulare Chemie, 127(1969), p.78-93)、
(3)5−メチル−5−ヘキセン−2−オンをアルミナ等の触媒の存在下で環化脱水する方法(特開平3−215437号公報)等がある。
しかしながら工業的な観点から、上記(1)の方法ではモノメチル体またはトリメチル体が副生するほか、ジメチル基の位置異性体が副生するため1,3−ジメチル体だけの分離が困難である。(2)の方法では原料がやや高価なうえ、グリニャール試薬が更に高価であり、また反応溶媒に引火性の高いエーテル系の溶媒を使う必要がある。更に(3)の方法では原料が高価である等の欠点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような事情に鑑み、安価な原料から簡単な反応によってシクロペンタジエン類を経済的に合成することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1は、下記(I)および(II)の工程を含むことを特徴とするシクロペンタジエン類の製造方法に関する。
(I)合計炭素数が7以上の、同種または異種のケトンまたはアルデヒドあるいはケトンおよびアルデヒドを反応原料とし、酸触媒または塩基触媒の存在下に反応させる工程、
(II)得られた反応生成物を固体酸触媒の存在下に気相で環化脱水する工程。
本発明の第2は、前記工程(I)の反応生成物が、β−ヒドロキシカルボニル化合物、α,β−不飽和カルボニル化合物またはβ,γ−不飽和カルボニル化合物を含むものであることを特徴とする本発明の第1のシクロペンタジエン類の製造方法に関する。
本発明の第3は、前記工程(I)の反応生成物から、β−ヒドロキシカルボニル化合物、α,β−不飽和カルボニル化合物および/またはβ,γ−不飽和カルボニル化合物を分離精製することなく、上記反応生成物を環化脱水することを特徴とする本発明の第1のシクロペンタジエン類の製造方法に関する。
本発明の第4は、前記固体酸触媒が、合成固体酸触媒もしくは天然粘土系固体酸触媒、または無機酸もしくはヘテロポリ酸を多孔質無機物に担持させたものであることを特徴とする本発明の第1のシクロペンタジエン類の製造方法に関する。
本発明の第5は、前記固体酸触媒が、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−カルシア、アルミナ、シリカおよびゼオライトのいずれかであることを特徴とする本発明の第1のシクロペンタジエン類の製造方法に関する。
本発明の第6は、前記環化脱水を120〜600℃の温度で行うことを特徴とする本発明の第1のシクロペンタジエン類の製造方法に関する。
本発明の第7は、前記環化脱水を反応圧力10kg/cm2以下の条件で行うことを特徴とする本発明の第1のシクロペンタジエン類の製造方法に関する。
本発明の第8は、前記シクロペンタジエン類が1,3−、2,5−もしくは1,4−ジメチル−1,3−シクロペンタジエンまたはそれらの混合物であることを特徴とする本発明の第1のシクロペンタジエン類の製造方法に関する。
本発明の第9は、前記反応原料の少なくとも1つが対称型ケトンであることを特徴とする本発明の第1のシクロペンタジエン類の製造方法に関する。
本発明の第10は、前記反応原料の組合せが、アセトンおよびイソブチルアルデヒドであることを特徴とする本発明の第1のシクロペンタジエン類の製造方法に関する。
【0005】
以下、本発明を更に説明する。
工程(I):
本発明の工程(I)は、ケトンとケトン、アルデヒドとアルデヒドまたはケトンとアルデヒドとを、酸または塩基触媒の存在下に反応させる工程である。
ケトンまたはアルデヒドを反応させる場合には、そのケトンまたはアルデヒドは同一であってもまた異なるものでもよい。
反応させるべきケトン、アルデヒドまたはケトンとアルデヒドの合計炭素数は、7以上であることが必要である。合計炭素数が7未満では目的物であるシクロペンタジエン類が生成し難いので好ましくない。合計炭素数が7以上である限り、ケトンやアルデヒド自体の炭素数は限定されず、例えば炭素数が3以上7未満のケトンまたはアルデヒドを使用することができる。合計炭素数に上限値は特にないが、通常は20個以下である。
【0006】
本発明において用いる具体的なケトンおよびアルデヒドは、炭素数3のものとしてアセトンおよびプロピオンアルデヒド;炭素数4のものとしてメチルエチルケトン、イソブチルアルデヒドおよびブチルアルデヒド;炭素数5のものとしてジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、2−メチルブタナールおよび2,2−ジメチルプロパナール;炭素数6のものとしてメチル−n−ブチルケトン、エチルイソプロピルケトン、エチル−n−プロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−sec−ブチルケトン、メチル−tert−ブチルケトン、シクロヘキサノン、ヘキサナール、4−メチルペンタナール、3−メチルペンタナール、2−メチルペンタナール、2−エチルブタナール、3,3−ジメチルブタナールおよび2,2−ジメチルブタナール;炭素数7では2,3−ジメチルペンタナール、;炭素数8ではジブチルケトン、2−エチルヘキサナール等が挙げられる。
そのほかに、アセトフェノンまたはプロピオフェノン等の芳香族カルボニル化合物や2−フェニルプロパナールも用いることができる。
【0007】
本発明においては、カルボニル基のα−位に分岐アルキル基、例えば、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが少なくとも1個置換しているケトンまたはアルデヒドを、反応基質の少なくとも一方に使用することが好ましい。このようなケトンまたはアルデヒドを原料に用いると、目的物質であるシクロペンタジエン類の収率が向上する。上記に該当するものとしては、イソブチルアルデヒド、2−メチルブタナールなどが例示される。
例えば、アセトンとイソブチルアルデヒドとを原料に用いると1,3−ジメチルシクロペンタジエン類が;アセトンと2−メチルブタナールとを原料に用いると1,3−メチルエチルシクロペンタジエン類および1,2,3−トリメチルシクロペンタジエン類が;メチルエチルケトンとイソブチルアルデヒドとを原料に用いると1,3−メチルエチルシクロペンタジエン類および1,2,4−トリメチルシクロペンタジエン類が;ジエチルケトンとイソブチルアルデヒドとを原料に用いると2,4−ジメチル−1−エチルシクロペンタジエン類が;シクロヘキサノンとイソブチルアルデヒドとを原料に用いると2−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロインデン類がそれぞれ製造される。
【0008】
本発明の工程(I)のように、ケトン、アルデヒドまたはケトンとアルデヒドなどのカルボニル化合物を、酸触媒または塩基触媒の存在下に反応させる方法は「アルドール縮合」として知られている。
工程(I)における反応の触媒としては、塩酸、硫酸、パラトルエンスルホン酸、塩化亜鉛または亜硫酸水素カリウム等の酸触媒;水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウムもしくは水酸化バリウム等の金属水酸化物;ナトリウムエトキシド等の金属アルコキサイド;ピペリジン、ピロリジン、3−メチルピロリジンまたはジエチルアミン等のアミン類;炭酸アルカリ、ナトリウムアミド、シアン化カリウムまたは酢酸ナトリウム等の塩基触媒が用いられる。酸触媒または塩基触媒の使用量は特に限定されないが、通常は、反応基質に対して0.01〜10重量%の量が使用される。
【0009】
工程(I)の反応における反応溶媒としては、水、アルコール、エーテル、ベンゼンなど反応に不活性な適宜の溶媒が用いられるが、また反応基質であるケトンまたはアルデヒド自体を過剰に用いることもできる。
反応温度や圧力は系が液相である限り特に限定されないが、反応温度は通常0〜200℃の範囲から適宜に選択される。反応時間も同様に特に限定されないが、通常は1分〜数十時間の範囲で適宜に選択される。
反応終了後、適宜に水洗および中和を行って触媒を除去することができる。
【0010】
ここで、弱塩基触媒を用いて反応を行うと、β−ヒドロキシカルボニル化合物が主として得られ、強酸または強塩基触媒により反応を行うと一旦生成したβ−ヒドロキシカルボニル化合物の脱水反応が起こり、α,β−不飽和カルボニル化合物が得られる。また反応系中で更にα,β−不飽和カルボニル化合物が異性化し、β,γ−不飽和カルボニル化合物になることもある。これら、β−ヒドロキシカルボニル化合物、α,β−不飽和カルボニル化合物およびβ,γ−不飽和カルボニル化合物は、いずれも次の環化脱水反応の原料とすることができる。
【0011】
本発明の方法により得られるβ−ヒドロキシカルボニル化合物は、例えば、次の式〔I〕で表される。
【化1】
また、本発明の方法により得られるα,β−不飽和カルボニル化合物は、例えば、次の式〔II〕で表される。
【化2】
更に、本発明の方法により得られるβ,γ−不飽和カルボニル化合物は、例えば、次の式〔III〕で表される。
【化3】
これら化合物を次の工程(II)ににおいて環化脱水することにより、次の式〔IV〕で表されるシクロペンタジエン類が製造される。
【化4】
ここで、式〔I〕から〔IV〕において、R1からR5は同一または異なる基を表し、水素原子、アルキル基あるいはアリール基を表す。
また、式〔I〕から〔IV〕において、R1およびR2を結ぶ点線は、R1とR2が連結して脂肪族5員環または6員環を構成することができることを表す。また、式〔IV〕の実線で示される5員環内の破線はその5員環が2つの二重結合を含むことを示す。
【0012】
すなわち、本発明においては、ケトンまたはアルデヒドを反応させた後、酸または塩基触媒を分離し、β−ヒドロキシカルボニル化合物、α,β−不飽和カルボニル化合物またはβ,γ−不飽和カルボニル化合物およびそれらの混合物を含む油分を環化脱水反応に供することによりシクロペンタジエン類を製造するものである。
なお、工程(I)で得られたβ−ヒドロキシカルボニル化合物は、別途に酸触媒等で脱水することによりα,β−不飽和カルボニル化合物とし、またはこれを更に異性化してβ,γ−不飽和カルボニル化合物とした後に、次の環化脱水反応に供することもできる。また得られたα,β−不飽和カルボニル化合物を別途に酸触媒等により異性化してβ,γ−不飽和カルボニル化合物とした後、これを次の環化脱水反応に供することもできる。
必要に応じて、得られたβ−ヒドロキシカルボニル化合物、α,β−不飽和カルボニル化合物、β,γ−不飽和カルボニル化合物またはそれらの混合物を適宜に蒸留などにより分離精製することもできる。好ましくは、酸塩基触媒の除去のみを行い、それ以上の分離精製をすることなく、次の工程(II)へ供給する。この方法によれば、分離精製手段を省略することができ経済的である。なお、この場合に、共存する未反応物や副生成物などは、次の工程(II)において妨害作用を及ぼさず、また、目的物であるシクロペンタジエン類を蒸留等により取得する際にも特に障害にならないことが確認された。
【0013】
工程(II):
次の工程(II)においては環化脱水反応を行う。環化脱水反応に有効な固体酸触媒は、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−カルシア、アルミナ、シリカ、ゼオライト等の合成系触媒であっても、また酸性白土、活性白土等の天然粘土系鉱物触媒等であってもよい。ゼオライトを触媒として用いる場合、例えば、H−ZSM−5、HX型ゼオライト、HY型ゼオライト、水素ホージャサイトまたは水素モルデナイト等の水素ゼオライトを含有するものを使用することができる。これら固体酸触媒にナトリウム、カリウム等のアルカリ金属を担持させることにより、触媒に付着するカーボンを低減することもできる。
このほかにリン酸等の無機酸またはリンタングステン酸、ケイタングステン酸、ケイモリブデン酸等のヘテロポリ酸を、単独または組み合わせて適宜の担体に担持させて使用することができる。担体の具体例としてはアルミナ、マグネシア、シリカ、活性炭等の多孔質無機物が挙げられる。
上記の固体酸触媒のうち、触媒の安定性等を考慮すると合成系固体酸触媒、特にシリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−カルシア、アルミナ、シリカ、およびゼオライト等が好ましく用いられる。反応の選択性が高いことを考慮するとシリカ−アルミナが更に好ましく、特にHYゼオライト、水素モルデナイトがよい。
工程(II)の環化脱水反応の触媒は、長時間使用しているとコーキング等により次第に活性が低下するが、例えば500℃程度の高温下において空気等を用いてデコーキングすることにより、初期の活性を再現することができる。
【0014】
工程(II)における環化脱水反応の温度は、触媒の組成、接触時間、希釈モル比などに応じて、120〜600℃、好ましくは250〜500℃の範囲から選択することができる。この範囲より反応温度が高くなると、環化脱水反応のみならず生成した化合物が芳香族化したり、更に芳香族化反応で発生する水素により生成物であるシクロペンタジエン類が水素添加されたものと想像されるシクロモノオレフィンが生成するなど副反応が急速に進行し、選択率が著しく低下する。また、反応温度がこの範囲より低いと、目的とする環化脱水反応の反応速度が小さく経済的に好ましくない。
【0015】
反応により生成するジオレフィンは重合性であるため、反応槽中で濃度が高い状態で長時間高温に保つと、生成したジオレフィンの一部が重合または二量化して損失となる。これを避けるには、不活性ガス、例えば窒素、ヘリウム、アルゴン、スチーム等を同伴させて原料濃度を希釈する方法が有効である。希釈倍率に特に制限はない。
【0016】
反応形式は固定床、移動床、流動床のいずれでもよい。反応圧力は原料または生成物が気化し得る範囲であれば特に限定はないが、通常は10kg/cm2以下の圧力であり、好ましくは常圧〜5kg/cm2の範囲である。
原料と触媒との接触時間は0.005〜20秒、好ましくは0.01〜10秒、更に好ましくは0.05〜5秒である。接触時間がこれより短いと反応率が低下して好ましくない。また、これより長いと、生成したジオレフィンが重合したり水素添加されるなど副反応が多くなり選択率が低下する。
【0017】
反応層を出たガスは急速に冷却し液化する。必要に応じて上記ガスを炭化水素等の吸収液に通して液化成分を吸収させ、目的生成物を回収してもよい。
水と油分を分離した後、必要に応じて蒸留により油分から高純度の目的生成物を回収することができる。目的生成物は原料より沸点が低いので、両者は容易に分離することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により本発明を更に説明する。以下に記載の%は特に付言しない限り重量%である。
【実施例】
<実施例1>
工程(I)(その1)
フラスコにアセトン1392g(24モル)と10%水酸化ナトリウム水溶液500mlを仕込み、攪拌しながら10℃に冷却した。これにイソブチルアルデヒド721g(10モル)とアセトン1392g(24モル)との混合液を反応液の温度が15℃を越えないような速度で滴下し、滴下終了後、更に室温で4時間反応させた。ガスクロマトグラフィーで分析した結果、イソブチルアルデヒドは定量的に反応していた。
反応液を18%塩酸で中和した後、エバポレーターで過剰のアセトンを留去すると2層に分離したので、油層(上層)1380mlを分離した。油層の組成はガスクロマトグラフィーで分析したところ以下の組成であった。
ジアセトンアルコール 13.0%
5−メチル−3−ヘキセン−2−オン 8.8%
5−メチル−4−ヒドロキシヘキサン−2−オン 59.1%
重質物 17.1%
【0019】
工程(I)(その2)
上記工程(I)(その1)で得た油層500mlに、トルエン1250mlとパラトルエンスルホン酸1.75gを加え、トルエンの還流温度下でトルエンと水の共沸により水を反応系外に除去しながら3時間加熱した。ガスクロマトグラフィー分析により5−メチル−4−ヒドロキシヘキサン−2−オンが完全に消費されていることを確認した。反応終了後、消石灰で中和して濾過を行い、更に常圧蒸留によりトルエンを除去して216gの粗生成物を得た。この粗生成物をガスクロマトグラフィーで分析したところ以下の組成であった。
4−メチル−3−ペンテン−2−オン 1.8%
5−メチル−3−ヘキセン−2−オン 56.8%
5−メチル−4−ヘキセン−2−オン 5.8%
重質物 33.8%
【0020】
工程(I)(その3)
上記工程(I)(その1)で得た油層500mlに、トルエン1250mlとパラトルエンスルホン酸20gを加え、トルエンの還流温度下でトルエンと水の共沸により水を反応系外に除去しながら10時間加熱した。ガスクロマトグラフィー分析の結果、5−メチル−4−ヒドロキシヘキサン−2−オンは完全に消費されていた。反応終了後、消石灰で中和して濾過を行い、更に常圧蒸留によりトルエンを除去して208gの粗生成物を得た。この粗生成物を更に蒸留して以下の組成の留分108gを得た。
5−メチル−3−ヘキセン−2−オン 75%
5−メチル−4−ヘキセン−2−オン 25%
【0021】
工程(II)(その1)
水素モルデナイト触媒(触媒化成工業(株)製)を16〜20メッシュに調整し、内径12mm、長さ1mのステンレス管に15ml充填した。
次に、上記工程(I)(その1)で得た反応粗生成物100mlを15ml/hr の流量で、また希釈剤として水を60ml/hr の流量で、予熱管を経由して反応温度380℃で触媒層に通し、環化脱水反応を行った。触媒との接触時間は0.34秒であった。環化脱水物を冷却し、ガスおよび水を分離した後、有機層についてガスクロマトグラフィーにより分析したところ、5−メチル−4−ヒドロキシヘキサン−2−オンのピークは消失しており、ジメチルシクロペンタジエン類25.7%を含む反応液が得られた。
上記反応液を常圧蒸留したところ、沸点101〜104℃の留分10.5gが得られた。これを核磁気共鳴(NMR)、赤外分光法(IR)および質量分析(MS)により測定した結果、主成分は1,3−ジメチル−1,3−シクロペンタジエンであった。
【0022】
工程(II)(その2)
工程(I)(その2)の反応液100gを用い、触媒にシリカ−アルミナ触媒(商品名:N633L、日揮化学(株)製)を用いて、工程(II)(その1)と同様に反応を行ったところ、5−メチル−3−ヘキセン−2−オンおよび5−メチル−4−ヘキセン−2−オンのピークはほぼ消失し、ジメチルシクロペンタジエン類42.5%を含む反応液が得られた。
工程(II)(その1)と同様に、得られた反応液を常圧蒸留したところ、沸点101〜104℃の留分25.2gが得られた。NMR、IR、MS分析の結果、主成分は1,3−ジメチル−1,3−シクロペンタジエンであることが判った。
【0023】
工程(II)(その3)
工程(I)(その3)の蒸留留出液50gを用い、触媒にシリカ−アルミナ触媒(商品名:N633L、日揮化学(株)製)を用いて、工程(II)(その1)と同様に反応を行ったところ、5−メチル−3−ヘキセン−2−オンおよび5−メチル−4−ヘキセン−2−オンのピークはほぼ消失し、ジメチルシクロペンタジエン類39.3%を含む反応液が得られた。
工程(II)(その1)と同様に、得られた反応液を常圧蒸留したところ、沸点101〜104℃の留分10.8gが得られた。NMR、IR、MS分析の結果、主成分は1,3−ジメチル−1,3−シクロペンタジエンであることが判った。
【0024】
工程(II)(その4)
触媒としてHYゼオライト(触媒化成工業(株)製)を用い、反応温度を430℃としたほかは工程(II)(その3)と同様にして、工程(I)(その3)の蒸留流出液100mlの反応を行い、ジメチルシクロペンタジエン類50.8%を含む反応液60.8gを得た。ガスクロマトグラフィーにより分析したところ、ジメチルシクロペンタジエン類の主成分は1,3−ジメチル−1,3−シクロペンタジエンであった。
【0025】
工程(II)(その5)
希釈剤として水を用いる代わりに窒素74.7リットル/hr を使用したほかは、工程(II)(その4)と同様にして反応を行った。反応物は同様に冷却した後、窒素と共にクメン溶液の中に導入し、反応粗生成物中の油分をクメンに吸収させた。クメン層から少量の水を分離した後、ガスクロマトグラフィーで分析したところ、クメンを除いた基準で換算すると、1,3−ジメチルシクロペンタジエン類を71.8%含んでいることが判った。
【0026】
<実施例2〜8>
工程(I)
フラスコに2モルのケトン、溶媒としてエタノールおよび触媒として10%水酸化ナトリウム水溶液を仕込んだ。ただし、実施例3では触媒として水酸化ナトリウム水溶液に代わって1N−水酸化カリウム−エタノール溶液100mlを塩基として用いた。これに2モルのアルデヒドと2モルのケトンの混合液を反応液の温度が25℃を越えないような速度で滴下し、滴下終了後、更に室温で16時間反応させた。上記ケトンおよびアルデヒドの種類ならびにエタノールの使用量を表1に示す。
反応液を10%硫酸で中和した後、エバポレーターで溶媒、過剰のケトンおよび未反応のアルデヒドを留去した。得られた溶液についてガスクロマトグラフィー分析、赤外分光分析および質量分析を行い、相当するヒドロキシケトンが主成分であることを確認した。
これにヘキサン250mlと10%硫酸10mlを加え、ヘキサンの還流温度下でヘキサンと水の共沸により水を反応系外に除去しながら3〜6時間加熱した。ガスクロマトグラフィー分析により相当するヒドロキシケトンが完全に消費され、ガスクロマトグラフィー保持時間のより短い位置に大きなピークが見られることを確認した。
10%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、常圧蒸留によりヘキサンと水を除去し、更に減圧蒸留で表1に示す粗生成物を得た。この粗生成物をガスクロマトグラフィー、赤外分光分析、NMR分析および質量分析を行ったところ相当するエノンが主成分であった。
【0027】
【表1】
【0028】
工程(II)
水素モルデナイト触媒(東ソー(株)製)を16〜20メッシュに調整し、内径12mm、長さ1mのステンレス管に15ml充填した。
次に、上記工程(I)で得た反応粗生成物150mlを10ml/hr の流量で、また希釈剤として水を60ml/hr の流量で、予熱管を経由して反応温度330℃で触媒層に通し、環化脱水反応を行った。環化脱水物を冷却し、ガスおよび水を分離した後、有機層についてガスクロマトグラフィーにより分析したところ、相当するエノンのピークは大幅に減少しており、更にガスクロマトグラフィー保持時間の短いピークを含む反応液が得られた。
上記反応液を減圧蒸留し、表2から表5に示す沸点の留分を得た。これらをNMR、赤外分光法および質量分析により測定した結果、それぞれ表2から表5に示す構造の置換シクロペンタジエンであることが判った。
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
【表4】
【0032】
【表5】
【0033】
【発明の効果】
本発明は、有用な工業中間体であるシクロペンタジエン類を製造する方法であり、安価な原料から簡単な反応工程で高収率に製造し得る点が特に有利である。
Claims (10)
- 下記(I)および(II)の工程を含むことを特徴とするシクロペンタジエン類の製造方法、
(I)合計炭素数が7以上の、同種または異種のケトンまたはアルデヒドあるいはケトンおよびアルデヒドを反応原料とし、酸触媒または塩基触媒の存在下に反応させる工程、
(II)得られた反応生成物を固体酸触媒の存在下に気相で環化脱水する工程。 - 前記工程(I)の反応生成物が、β−ヒドロキシカルボニル化合物、α,β−不飽和カルボニル化合物および/またはβ,γ−不飽和カルボニル化合物を含むものであることを特徴とする請求項1に記載のシクロペンタジエン類の製造方法。
- 前記工程(I)の反応生成物からβ−ヒドロキシカルボニル化合物、α,β−不飽和カルボニル化合物および/またはβ,γ−不飽和カルボニル化合物を分離精製することなく、該反応生成物を環化脱水することを特徴とする請求項1に記載のシクロペンタジエン類の製造方法。
- 前記固体酸触媒が、合成固体酸触媒もしくは天然粘土系固体酸触媒、または無機酸もしくはヘテロポリ酸を多孔質無機物に担持させたものであることを特徴とする請求項1に記載のシクロペンタジエン類の製造方法。
- 前記固体酸触媒が、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−カルシア、アルミナ、シリカおよびゼオライトのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のシクロペンタジエン類の製造方法。
- 前記環化脱水を120〜600℃の温度で行うことを特徴とする請求項1に記載のシクロペンタジエン類の製造方法。
- 前記環化脱水を反応圧力10kg/cm2以下の条件で行うことを特徴とする請求項1に記載のシクロペンタジエン類の製造方法。
- 前記シクロペンタジエン類が1,3−、2,5−もしくは1,4−ジメチル−1,3−シクロペンタジエンまたはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載のシクロペンタジエン類の製造方法。
- 前記反応原料の少なくとも1つが対称型ケトンであることを特徴とする請求項1に記載のシクロペンタジエン類の製造方法。
- 前記反応原料の組合せが、アセトンおよびイソブチルアルデヒドであることを特徴とする請求項1に記載のシクロペンタジエン類の製造方法。
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