JP3750198B2 - 音像定位装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、電子楽器やオーディオ機器が出力する楽音の音像を所定の位置に定位する音像定位装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子楽器やオーディオ機器は出力する楽音の臨場感を増すため、楽音が空間のある点から発音しているように聴取者がイメージできるように、複数(左右)のスピーカの音量や出力タイミングなどを制御している。この空間の「ある点」を仮想発音位置といい、楽音が発音されているようにイメージされる仮想的な空間領域(仮想的な楽器の所在場所)を音像という。
【0003】
現在一般的なステレオヘッドホンは左右スピーカに予め決められたバランスの音量で楽音を供給することにより、その楽音の音像を定位するようにしている。しかし、ヘッドホンは聴取者の頭に装着されるため、聴取者が頭を動かしたときヘッドホンのスピーカもこれに追従して動き、上記制御のみでは音像も一緒に動いてしまう。これに対応するため、聴取者が頭を動かしたことを検出して、左右スピーカに出力する楽音特性を制御することにより、頭を動かしても音像の位置が変化しないヘッドホンシステムが提案されている(特開平4−44500号など)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記ヘッドホンシステムでは、左耳用,右耳用のフィルタをそれぞれ設け、ヘッドホンの向きに応じてその向きに対応した応答特性のパラメータを読み出して上記フィルタに設定するという制御を行っているため、パラメータメモリに多くの仮想発音位置に対応するパラメータを記憶しておく必要があった。このため、大きなパラメータメモリを備えなければ正確に音像を定位することができず、また、聴取者が頭を動かす毎にパラメータの読み出しをし直さなければならないという欠点があった。
【0005】
この発明は、簡単な演算処理で聴取者が頭を動かしても定点に音像を定位できる音像定位装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この出願の請求項1の発明は、左右別系統のスピーカを有するヘッドホンと、該ヘッドホンの向きを検出する方位検出手段と、楽音の仮想発音位置を設定する発音位置設定手段と、入力された楽音信号をそれぞれ異なる遅延時間だけ遅延した先行音および後行音を出力する遅延手段と、複数の方向から両耳への楽音伝達特性で前記先行音および後行音をそれぞれ別々に畳み込み演算する複数のフィルタ手段と、前記発音位置設定手段の設定内容および前記方位検出手段の検出内容に基づいてヘッドホンに対する前記仮想発音位置の少なくとも方向を含む相対位置データを割り出し、この割り出された相対位置データに基づいて前記複数のフィルタ手段のゲインを、前記仮想発音位置に近い方向については先行音を畳み込み演算するフィルタのゲインを高く設定し、前記仮想発音位置から遠い方向については後行音を畳み込み演算するフィルタのゲインを高く設定する特性設定手段と、前記複数のフィルタ手段から出力された信号を合成して前記ヘッドホンのスピーカに供給する合成出力手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
この出願の請求項2の発明は、前記方位検出手段を、前記ヘッドホンに設けられた磁石コンパスと、その指示方向を検出するセンサとで構成したことを特徴とする。
【0008】
この出願の請求項3の発明は、前記遅延手段が、前記仮想発音位置から前記ヘッドホンまでの距離に応じて、前記先行音および後行音の遅延時間を各々設定することを特徴とする。
【0009】
この出願の請求項4の発明は、前記特性設定手段が、ヘッドホンに対する前記仮想発音位置の方向に応じて前記先行音を畳み込み演算するフィルタと後行音を畳み込み演算するフィルタのゲイン差を決定することを特徴とする。
【0011】
この発明では、複数の方向から両耳への楽音伝達特性で楽音信号を畳み込み演算する複数のフィルタ手段を備えており、方位検出手段が検出したヘッドホンの向きおよび発音位置設定手段によって設定された仮想発音位置に基づいて割り出された相対位置データ(例えば方向および距離)に基づいて各フィルタ手段のゲインが設定される。このように、複数の方向に対応するフィルタ手段を予め備えておき、定位方向に合わせて各フィルタ手段のゲインを設定するのみで音像を定位することができるため、種々のパラメータをその都度読み出して設定する方式に比べて、簡略な処理で音像定位および定位の移動が可能であり、頭の移動に対応したリアルタイムの音像定位制御に適した処理が可能である。
【0012】
この発明では、前記方位検出手段を磁石コンパスとその指示方向を検出するセンサで構成したことにより、安価な構成でヘッドホンの方位を検出することができる。
【0013】
この発明では、複数の方向から両耳への楽音伝達特性で楽音信号を畳み込み演算する複数のフィルタ手段、および、この複数のフィルタ手段に入力する楽音信号を遅延する遅延手段を備えており、方位検出手段が検出したヘッドホンの向きおよび発音位置設定手段によって設定された仮想発音位置に基づいて割り出された相対位置データに基づいて各フィルタ手段のゲインおよび遅延手段の遅延時間が設定される。このように、複数の方向に対応するフィルタ手段および遅延手段を予め備えておき、定位方向および距離に合わせて各フィルタ手段のゲインおよび遅延手段の遅延時間を設定するのみで音像を定位することができるため、種々のパラメータをその都度読み出して設定する方式に比べて、簡略な処理で音像定位および定位の移動が可能であり、頭の移動に対応したリアルタイムの音像定位制御に適した処理が可能である。
【0014】
この発明では、遅延手段に異なる遅延時間の複数の出力部を設けたことにより、直接音や初期残響音に対応する楽音信号をフィルタ手段に供給することができ、より、臨場感のある音像定位が可能になる。
【0015】
この発明では、異なる遅延時間で供給される複数の楽音信号に対してそれぞれ異なるゲインを設定するようにしたことにより、より明瞭な音像定位が可能になる。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1はこの発明の実施形態であるヘッドホンシステムの構成を示す図である。このヘッドホンシステムは、音源である電子楽器1が発生した楽音信号を音像定位部2を介してステレオのヘッドホン3に供給する。ヘッドホン3の頂部には方位センサ4が設けられており、この方位センサ4によりヘッドホン3すなわちこのヘッドホンを装用する聴取者がどの方向を向いているかを検出することができる。この方位センサ4の検出内容は係数発生部5に入力される。また、この係数発生部5にはジョイスティック6および設定ボタン7が接続されている。ジョイスティック6は電子楽器1が発生する楽音の仮想発音位置を指定するために用いられる。この仮想発音位置は、聴取者に装用されて移動するヘッドホン3に対する相対的なものではなく、その空間内における絶対的な位置として設定される。また、設定ボタン7は、ヘッドホン3を装着した聴取者が後述する仮想的壁面8に対して正面を向いたとき、その方位(北を0度とする角度)を設定するためのボタンである。なお、これら操作子に対応して、係数発生部5には正面方位レジスタ5a,仮想発音位置レジスタ5bが設定されている。
【0017】
図2はこのヘッドホンシステムの音像定位方式を説明する図である。図3は前記音像定位部2の構成を示す図である。図3において、音像定位部2は8チャンネルのFIRフィルタ15(15L,15R)を並列に備えている。この8個のチャンネルCh1〜Ch8はそれぞれ図2(A)の▲1▼〜▲8▼の方向に対応している。すなわち、Ch1のFIRフィルタ15L,15Rは、それぞれ図2(A)の▲1▼の方向(位置)から左耳,右耳までの楽音の伝達特性(頭部音響伝達関数:HRTF)で楽音信号を畳み込み演算するFIRフィルタである。同様に、Ch2〜Ch8のFIRフィルタも図2(A)の▲2▼〜▲8▼の方向から左右両耳までの楽音伝達特性で楽音信号を畳み込み演算するFIRフィルタである。このように図2(A)の▲1▼〜▲8▼は聴取者の正面すなわちヘッドホン3に対する方向を示し、聴取者が頭の向きを変えるとそれに合わせてこの▲1▼〜▲8▼の向きも変わる。
【0018】
一方、前記ジョイスティック6は、上述したように電子楽器1が発生する楽音の仮想発音位置を設定するための操作子である。この実施形態では仮想発音位置はヘッドホン3からz0 の距離にある仮想的壁面8上の1点に定位されるようになっており、該平面8上の座標がヘッドホン3からの垂線の交点を原点とするx,y座標で表される。前記ジョイスティック6を右向きに操作すると前記仮想発音位置のx座標が増加し、左向きに操作すると前記仮想発音位置のx座標が減少する。また、ジョイスティック6を上向きに操作すると前記仮想発音位置のy座標が増加し、下向きに操作すると前記仮想発音位置のy座標が減少する。図2(A)において、楽音の仮想発音位置が仮想的な壁面8上の点9に設定され、ヘッドホン3が図示の向きであるとすると、仮想発音位置の方向は前記基本の方向▲1▼〜▲8▼のうち▲1▼,▲2▼,▲5▼,▲6▼に対してα1,α2,α5,α6の角度となる。したがって、図3のCh1,Ch2,Ch5,Ch6のゲイン乗算器12,13のそれぞれにこの角度α1,α2,α5,α6に対応して主として直接音(先行音)を取り込むようなゲインを与え、他のチャンネルには上記角度に対応して主として初期反射音(後行音)を取り込むようなゲインを与えることにより、ヘッドホン3において音像を点9に定位させることができる。ヘッドホン3の向きが変わると、点9とヘッドホン3の角度も変化するが、このとき新たに基本方向との角度α1,α2,α5,α6が算出され、これに対応するゲインが割り出されるため、ヘッドホン装用者がどの方向を向いても楽音の音像は常に空間内における絶対的位置である仮想発音位置9に定位され続けることになる。なお、ジョイスティック6を操作して仮想発音位置9を移動させた場合には、これに合わせて新たな角度α1,α2,α5,α6が算出され、定位が移動する。
【0019】
この説明では、仮想発音位置がヘッドホン3の正面付近にある場合についてのみ説明したが、仮想的発音位置がヘッドホン3の左側にある場合にはCh1,Ch4,Ch5,Ch8に対する角度α1,α4,α5,α8を算出して対応するゲインが割り出され、仮想的発音位置がヘッドホン3の右側にある場合にはCh2,Ch3,Ch6,Ch7に対する角度α2,α3,α6,α7を算出して対応するゲインが割り出される。また、仮想的発音位置がヘッドホン3の後側にある場合にはCh3,Ch4,Ch7,Ch8に対する角度α3,α4,α7,α8を算出して対応するゲインが割り出され、仮想的発音位置がヘッドホン3の上側にある場合にはCh5,Ch6,Ch7,Ch8に対する角度α5,α6,α7,α8を算出して対応するゲインが割り出され、仮想的発音位置がヘッドホン3の下側にある場合にはCh1,Ch2,Ch3,Ch4に対する角度α1,α2,α3,α4を算出して対応するゲインが割り出される。
【0020】
なお、この実施形態では仮想発音位置9を仮想的壁面8上のみに設定可能にしているが、空間内の任意の点に設定できるようにしてもよい。この場合には、ジョイスティック6を3次元の座標を設定できるようにする。
【0021】
また、仮想発音位置9の設定操作子は上記ジョイスティック6に限定されるものではなく、ジョイスティック6に類似した座標値を相対的に増減する操作子のほか、テンキーなど座標値を直接入力する操作子を用いることができ、また、モニタ上に表示される壁面や空間の画像内で仮想発音位置をグラフィックに設定できるようにしてもよい。また、仮想的壁面8に向かう方向をリセットする設定スイッチ7も同様にグラフィックに設定できるようにしてもよい。
【0022】
図3を参照して音像定位部2の構成を説明する。電子楽器1から入力された楽音信号はA/Dコンバータ10によってディジタル信号に変換される。電子楽器1がディジタル楽器であり、楽音をディジタル信号のまま出力するものであれば、このA/Dコンバータ10をスキップして直接ディレイライン11に信号を入力するようにしてもよい。ディレイライン11は多段のシフトレジスタで構成されており、入力されたディジタル楽音信号を順次シフトしてゆく。このディレイライン11の任意の位置(レジスタ)に2つのタップが設けられ、この2つのタップ(先行音タップ,後行音タップ)からディレイされた信号(先行音,後行音)が取り出される。タップ位置は、係数発生部5から入力されるタップ位置係数によって決定される。2つのタップのうちディレイライン11の入力端に近いタップから取り出される信号を先行音といい、入力端に遠いタップから取り出される信号を後行音という。先行音は直接音に対応しており、後行音は初期反射音に対応している。先行音はCh1〜Ch8のゲイン乗算器12に入力され、後行音はCh1〜Ch8のゲイン乗算器13に入力される。ディレイライン11の2つのタップおよびゲイン乗算器12,13のゲインを適当に設定することにより、音像の距離感や前後感を出すことができる。
【0023】
たとえば、タップの間隔を短くして先行音と後行音のずれを小さくすると距離感が小さくなり音像を近くに定位することができ、逆に先行音と後行音のずれを大きくすると距離感が大きくなり音像を遠くに定位することができる。ただし、先行音と後行音のずれは20msを超えないようにする。ずれが20msを超えると聴取者に別の音として認識されてしまうからである。また、先行音と後行音のレベル差(ゲイン乗算器12のゲインとゲイン乗算器13のゲインの差)を大きくすると、音像が前方に定位しやすくなり、先行音と後行音のレベル差を小さくすると音像が後方に定位しやすくなる。
【0024】
Ch1〜Ch8のゲイン乗算器12,13のゲインは係数発生部5から入力される。このゲインが乗算された先行音信号および後行音信号は加算器14によって加算され、FIRフィルタ15に入力される。すなわち、1つの楽音信号を遅延して先行音信号,後行音信号の2つの信号を取り出すのは同一の楽音信号が微小な時間差でずれて聞こえ、且つ、そのレベル差により距離感や前後間を出すためである。FIRフィルタ15は左耳用フィルタ15L,右耳用フィルタ15Rの2系統が並列に設けられている。Ch1のFIRフィルタ15Lは、楽音が図2(A)の▲1▼の方向から左耳に聞こえてくる場合の響きを頭部音響伝達関数によりシミュレートし、Ch1のFIRフィルタ15Rは、楽音が図2(A)の▲1▼の方向から右耳に聞こえてくる場合の響きを頭部音響伝達関数によりシミュレートする。同様にCh2〜Ch8のFIRフィルタ15L,FIRフィルタ15Rはそれぞれ▲2▼〜▲8▼の方向から左右両耳への楽音の伝達を頭部音響伝達関数によりシミュレートする。
【0025】
そして、仮想発音位置の方向がこれら基本方向▲1▼〜▲8▼の中間の方向であった場合、係数発生部5は、図2(A)に示したように、▲1▼〜▲8▼の方向のうちその仮想発音位置の方向を囲む4方向となす角度を算出し、その角度に対応するゲインおよびディレイライン11のタップを決定する係数を各チャンネルのゲイン乗算器12,13およびディレイライン11に与える。なお、ヘッドホン3における音像定位位置が変化しても音量を変化させない場合には、上記全てのゲイン乗算器12,13に与えられるゲインの対数的な合計値は1であるが、音像定位位置によってゲインの合計を変化させることによって特殊な効果を出してもよい。
【0026】
各チャンネルのFIRフィルタ15Lから出力された信号は加算器16Lで加算合成される。また、各チャンネルのFIRフィルタ15Rから出力された信号は加算器16Rで加算合成される。これら加算合成されたディジタルの楽音信号はD/Aコンバータ17でアナログ信号に変換され、アンプ18で増幅されたのちヘッドホン3に出力される。
【0027】
図4は前記ヘッドホン3の外観図である。図5はヘッドホン3の頂部に取り付けられている方位センサ4の構成図である。ヘッドホン3の両方の耳あて部には小型スピーカが内蔵されており、それぞれ前記アンプ18から出力された左右のアナログ楽音信号が入力される。そしてアーチの頂部には方位センサ4が設けられている。方位センサ4は円筒形のケース28に収納されており、コンパス20およびフォトセンサ25,26,27で構成されている。コンパス20は、球状の透明アクリルケース22内に球状磁石体21を収納し、この球状磁石体21と透明アクリルケース22の内壁面との隙間に液体23を充填したものである。この液体23は無色透明のものである。球状磁石体21は液体23内で重力に対して常に上下関係を維持するとともに南北の方位を指すようにするため、中央部に板状磁石21aを収納し、上部に空間21c,下部に重り21bを有している。これにより、図6に示すように、このコンパス20すなわちヘッドホン3がどの向きになってもどのように傾いてもこの球状磁石体21aは必ず特定の部位が北を指し、重り21bが重力方向を向くように透明アクリルケース20内で回転揺動する。なお、透明アクリルケース22内で球状磁石体21は液体23で浮揚しており、摩擦なく透明アクリルケース22内で回転揺動できる。
【0028】
そして、球状磁石体21の表面は、図7に示すように青と赤のグラデーションで彩色されている。青のグラデーションは同図(A),(B)に示すようにその濃度が方位を表すように経線状に彩色されており、北→東→南→西→北と回転するにしたがって青の濃度が薄くなるようにされている。すなわち、青色の濃度(薄さ)が方位角(北を0度とする時計回りの角度)を表すことになる。赤のグラデーションは同図(C),(D)に示すようにその濃度が傾斜角を示すように緯線状に彩色されており、透明アクリルケース20が下向きに傾斜するほど赤の濃度の高い部分が現れるようになっている。実際には、この赤グラデーションと青グラデーションが同じ球面にされており、両色が混ざり合っている。
【0029】
図5において、このコンパス20の側面に向けてフォトセンサ25〜27が設けられている。フォトセンサ25は青色の濃度を検出するセンサであり、フォトセンサ26,27は赤色の濃度を検出するセンサである。フォトセンサ25はヘッドホン3の前側からコンパス20の側面に向けられており、フォトセンサ26はヘッドホン3の右側からコンパス20の側面に向けられており、フォトセンサ27はヘッドホン3の後側からコンパス20の側面に向けられている。
【0030】
各フォトセンサ25,26,27は、図8に示す構成になっている。LED30およびフォトダイオード32がコンパス20に向けて設けられ、これらLED30,フォトダイオード32の前面に所定色のみを通過させる光学フィルタが設けられている。LED30は電池31によって連続点灯され、コンパス20の球状磁石体21の表面を照射している。また、フォトダイオード32は、上記LED30が照射した光の球状磁石体21表面の反射光を受光することによって抵抗値が変化する。このフォトダイオード32はアンプ33に接続されている。アンプ33はフォトダイオード32の検出値を増幅してLPF34に入力する。LPF34は、検出値のうち微小な振動成分を除去して動作としての頭の動きのみを抽出し、係数発生部5に出力する。
【0031】
フォトセンサ25が前側からコンパス20の球状磁石体21の青色濃度を検出することにより、図9(A)に示す濃度検出値と方位角の関係に基づいて、このヘッドホン3がどの方位を向いているかを検出することができる。また、フォトセンサ26は右側面から球状磁石体21の赤色を検出することにより、図9(B)に示す濃度検出値と傾斜角の関係に基づいて、ヘッドホン3が右にどの程度傾いているかを検出することができる。さらに、フォトセンサ27は後側から球状磁石体21の赤色を検出することにより、図9(B)に示す濃度検出値と仰角の関係に基づいて、ヘッドホン3がどの程度上を向いているかを検出することができる。
【0032】
これらの検出内容を係数発生部5に入力することにより、係数発生部5は、ジョイスティック6によって設定された仮想発音位置がヘッドホン3からみてどの方向・距離にあるかを計算することができ、この方向・距離を信号処理的に実現するためのディレイライン11のタップ位置およびCh1〜Ch8のゲイン乗算器12,13のゲインを算出して音像定位部2に出力する。
【0033】
なお、このように方位センサとして地磁気センサを用いたことにより、他のセンサ例えばジャイロセンサなどに比べて以下のような利点がある。首を傾けて回してもズレや誤差が生じないため、上体を動かして演奏する電子ピアノのヘッドホンに用いても安定した音像定位を実現することができる。地磁気が常時安定しているため、電子楽器やAV機器など音源となる装置とのキャリブレーション(位置関係の設定)を1回とれば、以後使用開始時や使用途中に取り直す必要がなく、以後装置を移動させるまでとる不要となる。また、ジャイロなど他の方位センサに比べて安価である。
【0034】
なお、方位磁石を浮かせている液体の粘度を調節することで、頭の回転に対する応答性を調節することができる。また、この検出内容の係数発生部5への伝送は、有線でも無線でもよい。無線で行う場合には、電源として電池を用いるが、その電池は充電でもよい。たとえば、ヘッドホンを掛けておくホルダに充電機能を設け、そのホルダに載せている間に充電されるようにしてもよい。また、有線で行う場合には、ヘッドホンのオーディオケーブルを介して信号および電源の送受をするようにすることもできる。
【0035】
図10,図11は上記係数発生部5の動作を示すフローチャートである。図10において、この装置の動作がスタートすると、まず、各種レジスタをイニシャライズする。正面方位レジスタ5aには0度のデータが入力される。すなわち、ヘッドホン3の正面(仮想的壁面8)は真北に向いているとされる。そして、仮想発音位置レジスタ5bにはx,y座標として0,0がセットされる。すなわち、ヘッドホン3の正面に仮想発音位置があるように設定される。こののち設定ボタン7のオン(s2)またはジョイスティック6の操作(s3)があるまで待機する。設定ボタン7がオンされると(s2)、そのときの方位センサ4の方位(フォトセンサ25の検出値)を読み取り(s4)、その方位を正面方位レジスタ5aに記憶する(s5)。一方、ジョイスティック6が操作されると、その操作に応じて仮想発音位置レジスタ5bのx,y座標を書き換える(s6)。すなわち、ジョイスティック6が左右に操作されるとその操作に応じてx座標の値を増減し、ジョイスティック6が上下に操作されるとその操作に応じてy座標の値を増減する。
【0036】
図11はタイマインタラプト動作である。この動作は数十ミリ秒に1回の頻度で行われる定位位置制御動作である。まず、方位センサ4に内蔵されている3つのフォトセンサ25,26,27の検出値を読み取る(s11)。そして、この検出値に基づいてヘッドホン3の向き(方位)および傾きを検出する(s12,s13)。このデータと正面方位データ,仮想音源のz0 およびx,y座標に基づいて仮想発音位置に対する方向・距離を算出する(s14)。この方向・距離に基づいて各チャンネルに与えるゲインおよびディレイライン11のタップ位置を決定し(s15)、これらを音像定位部2に送出する(s16)。
【0037】
なお、ゲインやタップ位置などの割り出しは、算出された方向・距離に基づき所定の演算式を用いて算出するようにしてもよく、種々の方向・距離に対応する係数をテーブルとして記憶しておき、その中の適当なものを読み出すようにしてもよい。この係数テーブルは複数の距離・方向に対応するFIRフィルタの伝達特性パラメータを記憶したテーブルに比べてデータ量が極めて小さいためこのようにしてもメモリ容量は少なくてすむ。
【0038】
【発明の効果】
以上のようにこの発明では、複数の方向に対応するフィルタ手段を予め備えておき、定位方向に合わせて各フィルタ手段のゲインを設定するのみで音像を定位することができるため、種々のパラメータをその都度読み出して設定する方式に比べて、簡略な処理で音像定位および定位の移動が可能であり、頭の移動に対応したリアルタイムの音像定位制御に適した処理が可能である。
【0039】
この発明では、前記方位検出手段を磁石コンパスとその指示方向を検出するセンサで構成したことにより、安価な構成でヘッドホンの方位を検出することができる。
【0040】
この発明では、複数の方向に対応するフィルタ手段および遅延手段を予め備えておき、定位方向および距離に合わせて各フィルタ手段のゲインおよび遅延手段の遅延時間を設定するのみで音像を定位することができるため、種々のパラメータをその都度読み出して設定する方式に比べて、簡略な処理で音像定位および定位の移動が可能であり、頭の移動に対応したリアルタイムの音像定位制御に適した処理が可能である。
【0041】
この発明では、遅延手段に異なる遅延時間の複数の出力部を設けたことにより、直接音や初期残響音に対応する楽音信号をフィルタ手段に供給することができ、より、臨場感のある音像定位が可能になる。
【0042】
この発明では、異なる遅延時間で供給される複数の楽音信号に対してそれぞれ異なるゲインを設定するようにしたことにより、より明瞭な音像定位が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態である音像定位装置のブロック図
【図2】同音像定位装置の音像定位方式を説明する図
【図3】同音像定位装置の音像定位部のブロック図
【図4】同音像定位装置のヘッドホンの外観図
【図5】同ヘッドホンに設けられる方位センサの構成図
【図6】同方位センサが傾斜したときの状態を示す図
【図7】同方位センサの球状磁石体の塗装を説明する図
【図8】同方位センサに設けられるフォトセンサの構成図
【図9】同方位センサのフォトセンサの濃度検出値と方位各,傾斜との関係を示す図
【図10】同音像定位装置の係数発生部の動作を示すフローチャート
【図11】同音像定位装置の係数発生部の動作を示すフローチャート
【符号の説明】
2…音像定位部、3…ヘッドホン、4…方位センサ、5…係数発生部、
5a…正面方位レジスタ、5b…仮想発音位置レジスタ、
6…ジョイスティック、7…設定ボタン、
11…ディレイライン、11a,11b…タップ、
12,13…ゲイン乗算器、15L,15R…FIRフィルタ、
16L,16R…加算器、
20…コンパス、21…球状磁石体、21a…板状磁石、21b…重り、
21c…空間、23…液体、
25,26,27…フォトセンサ、28…ケース
30…LED、32…フォトダイオード、35…フィルタ
Claims (4)
- 左右別系統のスピーカを有するヘッドホンと、
該ヘッドホンの向きを検出する方位検出手段と、
楽音の仮想発音位置を設定する発音位置設定手段と、
入力された楽音信号をそれぞれ異なる遅延時間だけ遅延した先行音および後行音を出力する遅延手段と、
複数の方向から両耳への楽音伝達特性で前記先行音および後行音をそれぞれ別々に畳み込み演算する複数のフィルタ手段と、
前記発音位置設定手段の設定内容および前記方位検出手段の検出内容に基づいてヘッドホンに対する前記仮想発音位置の少なくとも方向を含む相対位置データを割り出し、この割り出された相対位置データに基づいて前記複数のフィルタ手段のゲインを、前記仮想発音位置に近い方向については先行音を畳み込み演算するフィルタのゲインを高く設定し、前記仮想発音位置から遠い方向については後行音を畳み込み演算するフィルタのゲインを高く設定する特性設定手段と、
前記複数のフィルタ手段から出力された信号を合成して前記ヘッドホンのスピーカに供給する合成出力手段と、
を備えたことを特徴とする音像定位装置。 - 前記方位検出手段は、前記ヘッドホンに設けられた磁石コンパスと、その指示方向を検出するセンサとからなることを特徴とする請求項1に記載の音像定位装置。
- 前記遅延手段は、前記仮想発音位置から前記ヘッドホンまでの距離に応じて、前記先行音および後行音の遅延時間を各々設定する請求項1または請求項2に記載の音像定位装置。
- 前記特性設定手段は、ヘッドホンに対する前記仮想発音位置の方向に応じて前記先行音を畳み込み演算するフィルタと後行音を畳み込み演算するフィルタのゲイン差を決定する請求項1、請求項2または請求項3に記載の音像定位装置。
Priority Applications (1)
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