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JP3740713B2 - 電磁誘導加熱用合金メッキ膜およびこれを表面に形成した基材 - Google Patents

電磁誘導加熱用合金メッキ膜およびこれを表面に形成した基材 Download PDF

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JP3740713B2 JP15589595A JP15589595A JP3740713B2 JP 3740713 B2 JP3740713 B2 JP 3740713B2 JP 15589595 A JP15589595 A JP 15589595A JP 15589595 A JP15589595 A JP 15589595A JP 3740713 B2 JP3740713 B2 JP 3740713B2
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  • Electroplating Methods And Accessories (AREA)
  • Other Surface Treatments For Metallic Materials (AREA)
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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ニッケルとコバルトとの合金を非磁性基材上にメッキ膜として形成し、電磁誘導加熱を可能とした合金メッキ材と、調理容器にこの合金メッキ材を用いた電磁誘導加熱調理器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、高周波磁界を発生させて鍋等の調理用器に誘導電流を発生させ、鍋自体を発熱させて調理を行う電磁誘導加熱調理器が普及してきている。この電磁誘導加熱調理器は、火を使わないため、安全でしかも清潔であり非常に便利なものである。この電磁誘導加熱調理器に使用している鍋は、前記しているように高周波磁界と鎖交して誘導電流を発生する必要があるため磁性材料であることが必須の条件となっている。一般には、磁性ステンレスや鋼板が用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記しているように従来の構成の電磁誘導加熱調理器に使用する鍋等の調理用器は、磁性材料であることが必須の条件となっている。一方一般的な調理容器の基材としては、非磁性ステンレス・アルミニウム・ガラス・セラミック等の非磁性材料のものも多く使用されている。そこで従来から、これらの非磁性材料であっても電磁誘導加熱調理器用の調理用器として使用できるようにするため、これらの基材上に厚い鉄板あるいはステンレス等を張り付けたり、クラッド化したり、鉄溶射等を施して、磁性を備えた材料とする努力が行われている。しかし現状では、基材の選択、製造方法・能力、伝熱性能・耐食性能・外観・重量等に課題があり、一般的に使用されるところまでは達していない。
【0004】
本発明はこれらの課題を解決するものであり、電磁誘導加熱が可能であるニッケルとコバルトとの合金メッキ膜とした電磁誘導加熱用合金メッキ材を提供することを第一の目的としている。
【0005】
また第一の目的を達成する合金メッキ膜を基材上に形成した電磁誘導加熱用合金メッキ材を提供することを第二の目的としている。
【0006】
また第一の目的を達成する合金メッキ膜を非磁性基材上に形成した電磁誘導加熱用合金メッキ材を提供するを第三の目的としている。
【0007】
更に、第一の目的を達成する合金メッキ膜をセラミック上に形成した電磁誘導加熱用合金メッキ材を提供することを第四の目的としている。
【0008】
また第一の目的を達成する合金メッキ膜をガラス上に形成した電磁誘導加熱用合金メッキ材を提供することを第五の目的としている。
【0009】
また同様に非磁性ステンレス上に形成したもの、アルミニウム上に形成したものを提供することを第六・第七の目的としている。
【0010】
【課題が解決するための手段】
第一の目的を達成するための本発明の第1の手段は、ニッケルとコバルトとの合金比率を原子数比で3070とし、膜厚を0〜100μmとした無電解メッキを用いた電磁誘導加熱用合金メッキとするものである。また、 第一の目的を達成するための本発明の第二の手段は、ニッケルとコバルトとの合金比率を原子数比で30:70とし、膜厚を50〜100μmとした電解メッキを用いた電磁誘導加熱用合金メッキ膜とするものである。
【0011】
第二の目的を達成するための本発明の第の手段は、本発明の第一、二の手段を構成する電磁誘導加熱用合金メッキ表面に形成した材とするものである。
【0012】
第三の目的を達成するための本発明の第の手段は、特にメッキ可能な基材を非磁性基材とした電磁誘導加熱用合金メッキ材とするものである。
【0013】
また第四の目的、第五の目的、第六の目的、第七の目的を達成するための本発明の第の手段、第の手段、第の手段、第の手段はそれぞれ特に非磁性基材をセラミック基材・ガラス基材・ステンレス基材・アルミニウム基材とした電磁誘導加熱用合金メッキ材とするものである。
【0014】
【作用】
本発明の第一、二の手段は、無電解メッキを用い、ニッケルとコバルトとの合金比率を原子数比で3070とし、膜厚を0〜100μmとしたり、または、電解メッキを用い、ニッケルとコバルトとの合金比率を原子数比で30:70とし、膜厚を50〜100μmとし、単純なニッケルメッキ膜もしくはコバルトメッキ膜に比べて透磁率が高く、電磁誘導による表皮電流を大きくとれる合金メッキ膜とした電磁誘導加熱用合金メッキとしているものである。
【0015】
本発明の第の手段は、本発明の第一、二の手段を構成する合金メッキ膜をメッキ可能な基材上に形成して、いかなる基材であっても電磁誘導加熱を可能とした電磁誘導加熱用合金メッキ材としているものである。
【0016】
本発明の第の手段〜第の手段は、合金メッキ膜を非磁性基材上に、セラミック基材上に、ガラス基材上に、非磁性ステンレス基材上に、アルミニウム基材上に形成して、それぞれの非磁性材料に電磁誘導加熱が可能である磁性を与えたものである。
【0017】
【実施例】
(実施例1)
以下の条件に調整し温度を90℃に保った無電解メッキ溶液中に、片面をマスキングした200mm×200mm×3.2mmの強化ガラス板を浸漬して、5〜10分間放置し、引き上げて、片面のマスキングを取り除くと、他面にはニッケルとコバルトの合金メッキ層を得ることができる。無電解メッキ溶液の組成は、濃度を0.05mol/Lとした硫酸コバルトと硫酸ニッケルの混合液中に、濃度を0.2mol/Lとした次亜リン酸2水素ナトリウムと、濃度を0.2mol/Lとしたクエン酸ナトリウムと、濃度を0.5mol/Lとした硝酸アンモニウムを加えた溶液中に、pHが10になるようにアンモニアを添加したものである。このとき、本実施例では硫酸コバルトと硫酸ニッケルとの混合比率を種々変えた無電解メッキ溶液としている。こうして作成したメッキ層の厚さは、10〜100μmとなっている。
【0018】
発明者らはこうして作成した供試片について、電磁誘導加熱が可能であるかどうかを実験している。実験には電磁誘導加熱調理器KZ−P2(松下電器産業(株))を使用し、この調理プレート上にこの供試片を載置して、ワットメータを使用してこの電磁誘導加熱調理器の出力を測定しているものである。この結果を表1・表2に示している。表1に示した供試片のメッキ層は、ニッケルとコバルトの原子数比を種々変え、メッキ厚さを50μmとしている。また比較例として、同一寸法のアルミ板、ステンレス(SUS304、SUS430)、アルミ板の表面に50μmの厚さのステンレス層を設けたものを使用している。表2は、ニッケルとコバルトの原子数比を30:70と一定にし、メッキ厚さを種々変えた場合を示している。
【0019】
【表1】
Figure 0003740713
【0020】
【表2】
Figure 0003740713
【0021】
表1から明らかであるように、ニッケルとコバルトの合金メッキ層は、非常に優秀な電磁誘導加熱部材となりうるものである。つまり、比較品であるアルミ板・ステンレス(SUS304)・ステンレス(SUS430)・アルミ+ステンレスのもの、あるいはニッケル単体・コバルト単体のものに比べて、電磁誘導加熱調理器の出力パワーを非常に大きくとることができるものである。つまり、ニッケルとコバルトの合金は透磁率が非常に大きく、高周波磁界と鎖交した場合に発生する誘導電流による表皮電流が非常に大きいものである。また、ニッケルとコバルトの合金比率は、この実験から原子数比で30:70が最適であることが分かる。
【0022】
また表2から、メッキ層の厚さは厚いほど電磁誘導加熱出力を大きくとることができるが、70μm以上ではほぼ一定になることがわかる。
【0023】
なお前記無電解メッキ溶液の組成は一般的なものであり、ニッケルとコバルトの合金メッキができるのものであれば、どのような組成のものであっても支障はないものである。また本実施例では強化ガラス板をメッキ基材として使用しているが、たとえばセラミック・非磁性ステンレス・アルミニウム・プラスチック等の非磁性体であっても支障はないものである。
【0024】
(実施例2)
以下の条件に調整し温度を75℃に保った電解メッキ溶液中に、片面をマスキングした200mm×200mm×1.0mmのアルミニウム板(JIS A1100)を浸漬し、アルミニウム板を陰極として電流密度11A/dmで電解メッキを行い、アルミニウム板を引き上げて、片面のマスキングを取り除くと、他面にはニッケルとコバルトの合金メッキ層を得ることができる。電解メッキ溶液の組成は、濃度を300g/Lとした塩化コバルト・6水和物と塩化ニッケル・6水和物の混合物に、濃度を40g/Lとしたほう酸を加え、この溶液にpHが3.0になるように塩酸と水酸化カルシウムを添加したものとなっている。本実施例では塩化コバルト・6水和物と塩化ニッケル・6水和物との混合比率を種々変えた電解メッキ溶液としている。こうして作成したメッキ層の厚さは、10〜100μmとなっている。
【0025】
発明者らはこうして作成した供試片について、電磁誘導加熱が可能であるかどうかを実験している。実験には電磁誘導加熱調理器KZ−P2(松下電器産業(株))を使用し、この調理プレート上にこの供試片を載置して、ワットメータを使用してこの電磁誘導加熱調理器の出力を測定しているものである。この結果を表3・表4に示している。表3に示した供試片のメッキ層は、ニッケルとコバルトの原子数比を種々変え、メッキ厚さを50μmとしている。また比較例として、同一寸法のアルミ板、ステンレス(SUS304、SUS430)、アルミ板の表面に50μmの厚さのステンレス層を設けたものを使用している。表4は、ニッケルとコバルトの原子数比を30:70と一定にし、メッキ厚さを種々変えた場合を示している。
【0026】
【表3】
Figure 0003740713
【0027】
【表4】
Figure 0003740713
【0028】
表3から明らかであるように、電解メッキ溶液を使用した場合は、無電解メッキ溶液を使用した場合よりも、やや誘導加熱特性が良くなる傾向が見られるものである。また無電解メッキ溶液を使用した場合と同様、比較品であるアルミ板・ステンレス(SUS304)・ステンレス(SUS430)・アルミ+ステンレスのもの、あるいはニッケル単体・コバルト単体のものに比べて、電磁誘導加熱調理器の出力パワーを非常に大きくとることができるものである。また、ニッケルとコバルトの合金比率は、この実験から原子数比で30:70が最適であることが分かる。また表4から、メッキ層の厚さは厚いほど電磁誘導加熱出力を大きくとることができるが、50μm以上ではほぼ一定になることがわかる。
【0029】
次に、電解メッキと無電解メッキの特性を比較した実験結果を報告する。この実験は、前記アルミニウム板に電解メッキによって厚さ50μmの合金メッキ層を形成した試験片と、無電解メッキによって厚さ50μmの合金メッキ層を形成した試験片とを同じ電磁誘導加熱調理器の調理プレート上に載置して、ワットメータを使用してこの電磁誘導加熱調理器の出力を測定しているものである。この結果を表5に示している。
【0030】
【表5】
Figure 0003740713
【0031】
この結果から明らかなように、電解メッキによって得た合金層の方が、無電解メッキによって得た合金層よりも電磁誘導加熱出力を大きくとることができるものである。この理由は、ニッケルとコバルトで形成した磁区の方向が電解メッキによるものの方が揃っているためと考えられる。
【0032】
なお前記電解メッキ溶液の組成は条件は一般的なものであり、ニッケルとコバルトの合金メッキができるのものであれば、どのような組成のものであっても支障はないものである。また本実施例ではアルミニウム板をメッキ基材として使用しているが、たとえばステンレスあるいは鋼板であっても支障はないものである。
【0033】
(実施例3)
次に本発明の第三の実施例である電磁誘導加熱調理器について説明する。本実施例では電磁誘導加熱調理器として、図1に示した電磁誘導加熱炊飯器を使用している。本体3の内部には米と水である調理物8を収容した内鍋1を設けている。内鍋1は、アルミニウムの基材上に前記実施例2で説明した合金メッキを施した合金メッキ面1aを外面に有している。また内鍋1の内面はフッ素コート面1bとなっている。5は、ヒンジ4によって内鍋1を開閉自在に覆う外蓋である。外蓋5には、前記内鍋1に対応する側に加熱板2を設けている。加熱板2の表面にも内鍋1と同様の合金メッキを施している。前記合金メッキの組成はニッケルとコバルトの比が30:70となっており、厚さは50μmとなっている。内鍋1の下部には高周波磁界を発生する鍋加熱用IHコイル6を、また外蓋5内にも加熱板2を加熱するためのIHコイル7を設けている。9は本体1に給電するための電源コードである。
【0034】
以下本実施例の動作について説明する。図示していない炊飯開始ボタンを押すと、IHコイル6・IHコイル7に高周波電流が供給されて、IHコイル6・IHコイル7は高周波磁界を発生する。この高周波磁界は表面を合金メッキ層1aとした内鍋1と、同様の合金メッキを施した加熱板2と鎖交する。このため、内鍋1の合金メッキ層1aおよび加熱板2は誘導加熱され発熱する。この発熱によって、内鍋1に収容した調理物8の炊飯が進行するものである。また炊飯が終了した段階では、図示していない制御回路が働いてIHコイル6に対する通電は断たれ、IHコイル7に対する通電が行われて自動的に保温モードに入るものである。
【0035】
次に内鍋1・加熱板2の材質を変えて炊飯実験をした結果について報告する。本実験は、内鍋1・加熱板2として前記合金メッキアルミニウムを使用したもの、アルミニウム単体を使用したもの、磁性ステンレスを使用したものについて行っている。この実験結果を表6に示している。
【0036】
【表6】
Figure 0003740713
【0037】
この結果から明らかなように、合金メッキアルミニウムを使用したものは最も炊飯性能が優れているものである。なお鍋の材質をアルミニウムとしたものは、アルミニウムの熱伝導率が高いため均熱効果を有しており、炊きムラが発生しにくいものとなっている。また加熱板2からの輻射熱も均等に分布するもので、ご飯のねばりも適切なものとなっている。
【0038】
なお表6中には示していないが、アルミニウム−ステンレスクラッド材を使用したものは、合金メッキアルミニウムと同様な性能な炊飯性能が得られるものの、基材の重量が重いという欠点を有しているものである。
【0039】
【発明の効果】
本発明の第一、の手段は、電磁誘導加熱が可能であるニッケルとコバルトとの合金メッキ膜とした電磁誘導加熱用合金メッキ材を実現するものである。
【0040】
本発明の第の手段は、本発明の第一、二の手段を構成する合金メッキ膜をメッキ可能な基材上に形成することによって、いかなる基材であっても電磁誘導加熱を可能とした電磁誘導加熱用合金メッキ材を実現するものである。
【0041】
本発明の第の手段は、特に基材の材質を非磁性基材として、非磁性基材に電磁誘導加熱が可能である磁性を持たせた合金メッキ材を実現するものである。
【0042】
本発明の第の手段は、特に基材の材質をセラミックとして、非磁性体であるセラミックに電磁誘導加熱が可能である磁性を持たせた合金メッキ材を実現するものである。
【0043】
本発明の第の手段は、特に基材の材質をガラスとして、非磁性体であるガラスに電磁誘導加熱が可能である磁性を持たせた合金メッキ材を実現するものである。
【0044】
本発明の第の手段は、特に基材の材質を非磁性ステンレスとして、非磁性ステンレスを電磁誘導加熱が可能な磁性ステンレスとすることができるものである。
【0045】
本発明の第の手段は、特に基材の材質をアルミニウムとして、非磁性体であるアルミニウムに電磁誘導加熱が可能である磁性を持たせた合金メッキ材を実現するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第三の実施例である電磁誘導加熱炊飯器の構成を示す説明図
【符号の説明】
1a 合金メッキ面

Claims (8)

  1. ニッケルとコバルトとの合金比率を原子数比で3070とし、膜厚を0〜100μmとした無電解メッキを用いた電磁誘導加熱用合金メッキ
  2. ニッケルとコバルトとの合金比率を原子数比で30:70とし、膜厚を50〜100μmとした電解メッキを用いた電磁誘導加熱用合金メッキ膜。
  3. 請求項1または2に記載した電磁誘導加熱用合金メッキ表面に形成した材。
  4. 基材を非磁性基材とした請求項3記載の材。
  5. 非磁性基材をセラミック基材とした請求項記載の材。
  6. 非磁性基材をガラス基材とした請求項記載の材。
  7. 非磁性基材を非磁性ステンレス基材とした請求項記載の材。
  8. 非磁性基材をアルミニウム基材とした請求項記載の材。
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