JP3638509B2 - 時計用外装部品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、亜鉛キャスト素材あるいは真鍮キャスト素材を用いる時計用外装部品に関するものであり、特に表面に梨地調仕上げを施すと共にNi金属を含まないメッキによる表面処理を施したものに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ケース、レジスターリング、バンド等の時計用外装部品には、亜鉛素材や真鍮素材がよく使用されている。この時計用外装部品は、亜鉛キャストや真鍮キャストの形成方法により素材を形成し、この素材に所要の加工を施した後、耐蝕性や装飾性を高めるため数種類のメッキを施して表面にメッキ層を形成し、完成されるものであった。このような部品形成の中で、携帯時計等として落ち着いた装飾性を得るために、ホーニングを施して光沢を抑えた梨地調に仕上げることがある。このような梨地調の外装部品の場合、以下に示すような構成となっていた。
【0003】
即ち、素材が亜鉛キャストの場合、高級感のある外観色を得るために、素材の表面にCuメッキを施して第1のメッキ層を形成し、この第1のメッキ層の上に光沢Niメッキを施して第2のメッキ層を形成し、ここでホーニングを施して表面に梨地調の模様を形成し、更に光沢Niメッキを施して第3のメッキ層を形成し、仕上げメッキとしてPdメッキやAuメッキを施して第4のメッキ層を形成し、白色外観色や金色外観色を得ていた。
【0004】
また、真鍮キャスト素材の場合、下地メッキとしてのCuメッキを削減して素材の表面に光沢Niメッキを施して第1のメッキ層を形成し、このメッキ層にホーニングを施し、更に光沢Niメッキを施して第2のメッキ層を形成し、PdメッキやAuメッキを施して第3のメッキ層を形成し、白色外観色や金色外観色を得ていた。
【0005】
上記のような形成工程におけるメッキ厚は、概ね、Cuメッキが10〜20μm、ホーニング前の光沢Niメッキが10〜15μm、ホーニング後の光沢Niメッキが0.1〜0.2μm、Pdメッキが0.1〜2μm、Auメッキが0.03〜2μmに設定されていた。
【0006】
上記Cuメッキは亜鉛キャスト素材の腐食を防止するために施すものであるため、かなり厚くすることが必要である。また、ホーニング前の光沢Niメッキは、Cuメッキあるいは真鍮キャスト素材の腐食を防止するために施している。この光沢Niメッキのメッキ厚は、ホーニングを施すことから、通常のホーニングを施さない部品に比べて厚くなるように設定されている。また、ホーニング後の光沢Niメッキは、模様の梨地感を保ちながら所望の光沢を出すために施すものであり、そのメッキ厚を厚くし過ぎると梨地感が薄れて光沢が増すため、非常に薄いメッキ厚に設定されている。更に、PdメッキやAuメッキは外観色を出すために施されるものであり、非常に高価であると共に耐摩耗性等を考慮して概ね2μm以下のメッキ厚となるように管理されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術においては、ホーニングにより梨地調の模様を形成したときに、深く打痕が形成される場合があり、その上にメッキを施しても耐蝕性が低下することがあった。特に、梨地感を保つため、ホーニング後の光沢Niメッキのメッキ厚を薄くしなければならなかったため、梨地調の外観に仕上げながら耐蝕性を高めることは困難であった。
【0008】
仮に耐蝕性だけを高めるのであれば、ホーニング後の光沢Niメッキのメッキを厚くして対処することが考えられるが、このようにメッキ厚を厚くすると梨地感が薄れて光沢が増してしまい、所望の梨地感や光沢を得ることができなくなってしまう。また、光沢Niメッキに代えて通常のNiメッキを厚く形成して耐蝕性を高めることも考えられるが、これでは全く艶が出ずに曇りが現われてしまい、外観品質が著しく低下することになる。更に、仕上げメッキであるPdメッキやAuメッキを厚くして耐蝕性を高めることも考えられるが、コストが大幅に上昇することになる。上記のように梨地調の模様を設ける場合、耐蝕性と外観品質、あるいは耐蝕性と製造コストに関する条件を全て満足させなければならなかった。
【0009】
また、ホーニングにより梨地調の模様を形成すると、部品表面の形状によっては模様にバラツキが生じることがあった。
【0010】
更に、ホーニングで形成した梨地調の模様は、その表面の粗さにより、上に形成されるメッキ層との密着性があまり良くないため、熱による膨張時に剥がれ等の不良が発生することがあった。
【0011】
更にまた、ホーニングで梨地調の模様を形成する場合、部品の側面等、部品全面にホーニングを施すことが必要であると、作業に時間がかかり、生産性が悪いという課題もあった。
【0012】
また、現在では、梨地調の模様を有する時計用外装部品であっても、金属アレルギー対策の一つとして、アレルギー症状を引き起こすNi金属を使用しないものを商品化することが急務とされている。このように梨地調の模様を有する時計用外装部品の場合、金属アレルギー対策を取りながら、更に前述したような耐蝕性あるいは外観品質等に関する条件を満足させなければならないという課題があった。
【0013】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みなされたもので、梨地調の外観を保ちながら耐蝕性、外観品質及び生産性を向上させ、更に金属アレルギー対策をとることを可能とした時計用外装部品を提供するものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の時計用外装部品は、請求項1に示すように、亜鉛キャストの素材に、Cuメッキを施すことにより形成される第1のメッキ層と、この第1のメッキ層の上にCu梨地メッキを施すことにより形成される第2のメッキ層と、この第2のメッキ層の上にCu−Sn合金メッキ又はCu−Sn−Zn合金メッキを施すことにより形成される第3のメッキ層と、この第3のメッキ層の上にPdメッキを施すことにより形成される第4のメッキ層と、を有するものである。この時計用外装部品における前記第1のメッキ層は10〜23μmの厚みを有し、前記第2のメッキ層は7〜12μmの厚みを有し、前記第3のメッキ層は2〜5μmの厚みを有し、前記第4のメッキ層は0.03〜2μmの厚みを有している。また、この時計用外装部品における前記第4のメッキ層の上には、Auメッキ又はAu−Fe合金メッキ又はAu―Fe―In合金メッキ又はAu−In合金メッキを施すことにより形成される第5のメッキ層が設けられている。そして、前記第5のメッキ層は0.03〜2μmの厚みを有している。
【0015】
また、本発明の時計用外装部品は、請求項3に示すように、真鍮キャストの素材に、Cu梨地メッキを施すことにより形成される第1のメッキ層と、この第1のメッキ層の上にCu−Sn合金メッキ又はCu−Sn−Zn合金メッキを施すことにより形成される第2のメッキ層と、この第2のメッキ層の上にPdメッキを施すことにより形成される第3のメッキ層と、を有するものである。この時計用外装部品における前記第1のメッキ層は7〜12μmの厚みを有し、前記第2のメッキ層は2〜5μmの厚みを有し、前記第3のメッキ層は0.03〜2μmの厚みを有している。また、この時計用外装部品における前記第3のメッキ層の上には、Auメッキ又はAu−Fe合金メッキ又はAu―Fe―In合金メッキ又はAu−In合金メッキを施すことにより形成される第4のメッキ層が設けられている。そして、前記第4のメッキ層は0.03〜4μmの厚みを有している。
【0016】
更に、上記本発明における時計用外装部品における前記Cu梨地メッキは、固体微粒子をCuメッキに混入する複合メッキからなる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の時計用外装部品においては、梨地調の模様を形成するためにCu梨地メッキを7〜12μm施してメッキ層を形成した後、その上にCu−Sn合金メッキ又はCu−Sn−Zn合金メッキを施して2〜5μmのメッキ層を形成することを特徴とするものである。
【0018】
即ち、亜鉛キャスト素材の場合にはCuメッキを下地メッキとして施した後、また、真鍮キャスト素材の場合には直接表面に、Cu梨地メッキを施し、その上に、Cu−Sn合金メッキ又はCu−Sn−Zn合金メッキを施している。このCu梨地メッキは、Cuメッキに固体微粒子を混入することでメッキ層の表面に固体微粒子で凹凸を形成して、梨地調にするものである。このCu梨地メッキの場合、通常のメッキと同様の工程を経て梨地を形成することができ、また、仕上がりも通常のメッキと同様に一様にすることができる。このため、ホーニングのようにメッキ層の表面に深い打痕が形成されるものと異なり、耐蝕性は向上し、梨地のバラツキもなくなる。また、通常のメッキと同様に、その上に形成されるメッキ層との密着性も向上させることができる。
【0019】
また、ホーニングを廃止してCu梨地メッキを採用したことにより耐蝕性が向上し、これにより上記Cu梨地メッキによるメッキ層の上に施されるCu−Sn合金メッキ又はCu−Sn−Zn合金メッキは、メッキ厚を2〜5μmと薄くすることが可能となる。このため、Cu梨地メッキで形成した凹凸による梨地感が損なわれることがなく、また十分な光沢も確保することができる。また、このように形成されたメッキ層により耐蝕性が高められているため、仕上げとしてのPdメッキ、Auメッキ等のメッキ厚を増す必要もなく、コストを考慮しながらメッキ厚を薄く設定することが可能となる。
【0020】
この結果、従来、ホーニングを行うことによる耐蝕性の低下と、それを補うと生じる外観品質の低下という問題を全て解決することができる。
【0021】
また、Ni金属を使用していないため、金属アレルギーに対処することもできる。特に、ホーニングを行わないため、下地メッキとして硬度の高いNiメッキを施す必要がなく、また錆を防止するためにNiメッキを施す必要もなく、Cu梨地メッキを7〜12μm施した後、Cu−Sn合金メッキ又はCu−Sn−Zn合金メッキを2〜5μmのメッキ厚となるように施すだけで、金属アレルギーを引き起こすNi金属を使用することなく、所望の梨地感や光沢を得ることができる。
【0022】
【実施例】
以下本発明の一実施例に係る時計用外装部品の構成を説明する。図1は本発明の第1実施例に係る白色金属光沢を有する時計用外装部品のメッキ構成を示す断面図である。図1において、2は亜鉛キャストからなる素材であり、4は素材2の表面にCuメッキを施すことにより形成された第1のメッキ層、6は第1のメッキ層4の上にCu梨地メッキを施すことにより形成された第2のメッキ層である。この第2のメッキ層6は、Cuメッキに固体微粒子を混入した複合メッキにより形成されるものであり、Cuメッキ層6bの表面から固体微粒子6aが突出してその表面に微細な凹凸が形成され、これが梨地となる。8は第2のメッキ層6の上にCu−Sn合金メッキ又はCu−Sn−Zn合金メッキを施すことにより形成された第3のメッキ層、10は第3のメッキ層8の上にPdメッキを施すことにより形成された第4のメッキ層である。
【0023】
上記Cuメッキにより形成される第1のメッキ層4は、素材2の腐食を防ぐと共に第2のメッキ層6の密着性向上と光沢を出すために設けられている。この第1のメッキ層4を形成するCuメッキは、シアン系のストライク銅メッキをした後に硫酸銅メッキを施すことにより成されている。その際のメッキ厚は、ストライク銅メッキを2〜3μm施した後に硫酸銅メッキを施して、総厚が10〜23μmとなるように設定している。
【0024】
また、Cu梨地メッキにより形成される第2のメッキ層6は、前述したように表面を梨地調に仕上げるために設けられており、7〜12μmの厚みに設定されている。このCu梨地メッキは、Cuメッキ層6bを形成するためのCuに、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、炭化タングステン、炭化ジルコニウム、炭化ホウ素、窒化ホウ素、ホウ化クロム等からなる固体微粒子6aを混入してメッキを施すものである。このCu梨地メッキを施す場合、図5に示すように、メッキ浴14中に複合すべき固体微粒子6aを入れ、メッキ液吸引及びエアー吹き出し孔16から吹き出されるメッキ液及びエアーにより固体微粒子6aを攪拌させて、均一に素材2の表面(第1のメッキ層4の上)に固体微粒子6aを付着させながら第2のメッキ層6を形成する。本実施例における固体微粒子6aの粒径は、3〜5μmのものを用いているが、第2のメッキ層6の厚み等を考慮して0.01〜10μm程度の粒径の固体微粒子6aを用いることが可能である。また、粒子の添加量は求める梨地の度合いにより、少ない梨地のときは30g/lが最適で、それより少ないと梨地にはなるが光沢が強く現れて梨地とは云いがたくなる。また、100g/l以上では梨地が強くなり過ぎザラザラ感が出現し、時計の外装としては好ましいものではなくなる。
【0025】
また、梨地調の表面を有する第2のメッキ層6の上にCu−Sn合金メッキ又はCu−Sn−Zn合金メッキで形成される第3のメッキ層8はレベリング作用が弱く、第2のメッキ層6の表面に良く馴染んで、その梨地感を損なうことがないものとなっている。従って、この第3のメッキ層8の厚みを2〜5μmに設定しても、その下の第2のメッキ層6の梨地感を損なうことがなく、耐蝕性を更に向上させることができる。
【0026】
更に、Pdメッキにより形成される第4のメッキ層10は、白色金属光沢に仕上げるために形成されるものであり、0.03〜2μmのメッキ厚に設定している。
【0027】
上記メッキ構成において、第1乃至第3のメッキ層4,6,8は、それぞれ素材2や下側のメッキ層の腐食を防止することを目的として設けられているものであるため、これら第1乃至第3のメッキ層4,6,8の厚みを変えながら耐蝕性等についての評価試験を行った。具体的には、メッキの密着性を見るための折曲試験として、素材2の上に第1乃至第3のメッキ層4,6,8を形成したものを、360度に折り曲げたときのメッキのはがれを見て確認した。
【0028】
また、変色等を見るための人工汗試験として、塩化ナトリウム9.9g/l、硫化ナトリウム0.8g/l、尿素1.9g/l、乳酸1.7ml/l、アンモニア水0.2ml/lを調合して人工汗組成液を作り、40度の液温の下で24時間浸漬し、変色の状態を確認した。
【0029】
更に、錆の発生を見るための塩水噴霧試験として、塩化ナトリウム5%溶液を、35度の液温にして、24時間噴霧し、錆の発生を確認した。
【0030】
上記各試験を行った結果、メッキのはがれ、変色及び錆の発生が認められないものを選定すると、第1のメッキ層4(Cuメッキ)10〜23μm、第2のメッキ層6(Cu梨地メッキ)7〜12μm、第3のメッキ層8(Cu−Sn合金メッキ又はCu−Sn−Zn合金メッキ)2〜5μmの範囲が好適であることを確認した。尚、前記各試験の結果から、各メッキ厚の下限を腐食の生じない下限の限度と確認することができ、また、各メッキ厚の上限に関しては前記試験の結果だけでなく、メッキコストや寸法管理に関しても考慮することにより設定している。
【0031】
即ち、Cuメッキによる第1のメッキ層4の場合、10〜23μmのメッキ厚までは耐蝕性が向上するが、それ以上厚くしても顕著な耐蝕性の向上は認められず、逆にメッキコストが上昇し、寸法管理も難しくなるという問題が生じる。このため、メッキ厚の上限を23μmにすることが最適であると認められた。また、他のメッキ層に関しても同様にその上限を設定している。尚、第3のメッキ層8の場合、あまり厚く形成すると、色調に曇りが発生して光沢が低下することがあるため、耐蝕性を保持しつつ光沢が得られるように設定している。
【0032】
一方、Pdメッキによる第4のメッキ層10は、仕上げメッキであるため、所望の白色色調を得ると共に耐蝕性の保証、及びメッキコストを考慮してその厚さが設定されている。
【0033】
前述したCuメッキ、Cu梨地メッキ、Cu−Sn合金メッキ、Cu−Sn−Zn合金メッキ、Pdメッキのメッキ加工条件は表1及び表2に示すように設定している。各メッキのメッキ厚は、表1及び表2に示すメッキ条件において浴液中の浸漬時間により決定され、また電流値を変えることによりメッキ厚を調整することも可能である。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
上記のように、Cuメッキによる第1のメッキ層4を10〜23μmの厚みに形成し、Cu梨地メッキによる第2のメッキ層6を7〜12μmの厚みに形成し、Cu−Sn合金メッキ又はCu−Sn−Zn合金メッキによる第3のメッキ層8を2〜5μmの厚みに形成し、Pdメッキによる第4のメッキ層10を0.03〜2μmの厚みに形成することにより、十分な耐蝕性を得ることができると共に、白色の金属光沢を持つ梨地調の時計用外装部品を形成することができる。
【0037】
図2は本発明の第2実施例に係る時計用外装部品のメッキ構成を示す断面図である。図1に示す第1実施例におけるメッキ構成は白色の金属光沢を得るものであったが、本実施例においては金色の金属光沢を得ることができるメッキ構成となっている。即ち、素材2、第1のメッキ層4、第2のメッキ層6、第3のメッキ層8及び第4のメッキ層10に関しては、その材質、メッキ方法及び厚みが全て第1実施例と同一であり、仕上げメッキとして更に金色のメッキを施すことのみが異なっている。この仕上げメッキは、第4のメッキ層10の上に、Auメッキ又はAu−Fe合金メッキ又はAu−Fe−In合金メッキ又はAu−In合金メッキにより形成される第5のメッキ層12であり、この第5のメッキ層12を0.03〜2μmの厚みに形成することにより、十分な耐蝕性を得ることができると共に、光沢を有した所望の金色を得ることができる。また、当然ながら、この第5のメッキ層12の厚みを必要以上に厚くしなければAuの使用量を少なくすることができ、コストの上昇を抑えることができる。尚、このAuメッキ又はAu−Fe合金メッキ又はAu−Fe−In合金メッキ又はAu−In合金メッキのメッキ加工条件に関しては表2に示すように設定している。
【0038】
また、この第2実施例において、Au−Fe合金メッキ又はAu−Fe−In合金メッキ又はAu−In合金メッキのように、FeやInを含む金合金メッキを施すことにより、メッキ表面硬度を高めて耐摩耗性を向上させることができる。
【0039】
図2及び図3は素材に真鍮キャストを用いた第3実施例及び第4実施例に係る時計用外装部品のメッキ構成を示す断面図である。素材22に真鍮キャストを用いた場合、図1及び図2に示す第1及び第2実施例のようにCuメッキによる第1のメッキ層4を形成する必要がないものであり、素材22自体の耐蝕性及び光沢をそのまま活かすことができる。
【0040】
このため、白色金属光沢の梨地調模様に仕上げる第3実施例の場合には、図3に示すように、素材22の表面に直にCu梨地メッキにより第1のメッキ層26を7〜12μmの厚みに形成し、その上にCu−Sn合金メッキ又はCu−Sn−Zn合金メッキにより第2のメッキ層28を2〜5μmの厚みに形成し、その上にPdメッキにより第3のメッキ層30を0.03〜2μmの厚みに形成している。
【0041】
金色金属光沢の梨地調模様に仕上げる第4実施例の場合には、図4に示すように、第3実施例と同様にして素材22の上にCu梨地メッキによる第1のメッキ層26を7〜12μmの厚みに形成し、その上にCu−Sn合金メッキ又はCu−Sn−Zn合金メッキにより第2のメッキ層28を2〜5μmの厚みに形成し、その上にPdメッキにより第3のメッキ層30を0.03〜2μmの厚みに形成し、その上にAuメッキ又はAu−Fe合金メッキ又はAu−Fe−In合金メッキ又はAu−In合金メッキにより第4のメッキ層32を0.03〜4μmの厚みに形成している。
【0042】
尚、上記第3実施例と第4実施例における各メッキのメッキ加工条件も、第1実施例及び第2実施例と同様に表1及び表2に示す条件に設定している。
【0043】
また、第3実施例と第4実施例における真鍮キャストからなる素材22の表面の状態によっては、亜鉛キャストからなる素材2と同様に、下地メッキとしてCuメッキを10μm以下の厚みに形成しても良い。
【0044】
一方、上記各実施例においては、何れもNi金属を含まない金属又は合金によるメッキを施すことで各メッキ層を形成しているため、梨地調の外観を持ちながら金属アレルギーに対処することが可能なものとなっている。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、亜鉛キャストからなる素材の上に、Cuメッキを施して第1のメッキ層を10〜23μmの厚みに形成し、その上にCu梨地メッキを施して第2メッキ層を7〜12μmの厚みに形成し、その上にCu−Sn合金メッキ又はCu−Sn−Zn合金メッキを施して第3のメッキ層を2〜5μmの厚みに形成し、その上に仕上げメッキとしてPdメッキを施して第4のメッキ層を0.03〜2μmで形成し、更に金色に仕上げるためにAuメッキ又はAu−Fe合金メッキ又はAu−Fe−In合金メッキ又はAu−In合金メッキにより第4のメッキ層32を0.03〜4μmの厚みに形成しているので、ホーニングを廃止して、耐蝕性に優れ、白色又は金色の金属光沢を持った梨地調の模様を有する時計用外装部品を提供することができる。
【0046】
また、Cu梨地メッキで梨地を形成しているので、ホーニングに比べて梨地のバラツキが少なくなり、外観品質をより高めることができる。
【0047】
更に、メッキ層の表面にホーニングを施すことなく、一連のメッキ層を形成しているので、梨地調の表面を有するメッキ層とその上のメッキ層との密着性を高めることができる。
【0048】
更にまた、メッキを施すことで部品の表面全体に梨地を形成することができるので、ホーニングに比べて作業にかかる時間と手間を削減することができ、生産性を向上させることができる。
【0049】
また、Ni金属を使用せずに全てのメッキ層を形成することができるので、耐蝕性と外観品質に優れるだけでなく、金属アレルギーにも対処することができる梨地調模様を有する時計用外装部品を提供することができる。
【0050】
更に、真鍮キャストからなる素材の場合にも、亜鉛キャストにおいて必要としていたCuメッキを削減し、他のメッキ層を同様に形成するだけで、優れた耐蝕性と光沢を持った梨地調模様を有する時計用外装部品を提供することができる。
【0051】
更にまた、耐蝕性の向上を図ることができるCu梨地メッキを施すと共にその上にCu−Sn合金メッキ又はCu−Sn−Zn合金メッキを施しているので、仕上げメッキとしてのPdメッキ、Auメッキ、Au−Feメッキ、Au−Fe−Inメッキ、Au−Inメッキのメッキ厚を厚くすることなく、十分な耐蝕性を得ることができ、仕上げメッキのメッキ厚増加によるメッキコストの上昇を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係る時計用外装部品のメッキ構成を示す断面図である。
【図2】本発明の第2実施例に係る時計用外装部品のメッキ構成を示す断面図である。
【図3】本発明の第3実施例に係る時計用外装部品のメッキ構成を示す断面図である。
【図4】本発明の第4実施例に係る時計用外装部品のメッキ構成を示す断面図である。
【図5】本発明におけるCu梨地メッキを施すためのメッキ装置を示す説明図である。
【符号の説明】
2,22 素材
4 第1のメッキ層
6 第2のメッキ層
6a 固体微粒子
6b Cuメッキ層
8 第3のメッキ層
10 第4のメッキ層
12 第5のメッキ層
26 第1のメッキ層
28 第2のメッキ層
30 第3のメッキ層
32 第4のメッキ層
Claims (4)
- 亜鉛キャストの素材に、10〜23μmの厚みを有するCuメッキを施すことにより形成される第1のメッキ層と、この第1のメッキ層の上に固体微粒子をCuメッキに混入する複合メッキからなる7〜12μmの厚みを有するCu梨地メッキを施すことことにより形成される第2のメッキ層と、この第2のメッキ層の上に2〜5μmの厚みを有するCu−Sn合金メッキ又はCu−Sn−Zn合金メッキを施すことことにより形成される第3のメッキ層と、この第3のメッキ層の上に0.03〜2μmの厚みを有するPdメッキを施すことことにより形成される第4のメッキ層と、を有することを特徴とする時計用外装部品。
- 前記第4のメッキ層の上に0.03〜2μmの厚みを有するAuメッキ又はAu−Fe合金メッキ又はAu−Fe−In合金メッキ又はAu−In合金メッキを施すことにより形成される第5のメッキ層を設けることを特徴とする請求項1記載の時計用外装部品。
- 真鍮キャストの素材に、固体微粒子をCuメッキに混入する複合メッキからなる7〜12μmの厚みを有するCu梨地メッキを施すことことにより形成される第1のメッキ層と、この第1のメッキ層の上に2〜5μmの厚みを有するCu−Sn合金メッキ又はCu−Sn−Zn合金メッキを施すことことにより形成される第2のメッキ層と、この第2のメッキ層の上に0.03〜2μmの厚みを有するPdメッキを施すことことにより形成される第3のメッキ層と、を有することを特徴とする時計用外装部品。
- 前記第3のメッキ層の上に0.03〜4μmの厚みを有するAuメッキ又はAu−Fe合金メッキ又はAu−Fe−In合金メッキ又はAu−In合金メッキを施すことにより形成される第4のメッキ層を設けることを特徴とする請求項3記載の時計用外装部品。
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