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JP3638494B2 - 携帯用電子機器のベルトクリップ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、携帯用トランシーバ等の電子機器をベルトに装着するためのクリップに係り、捩りコイルばねの巻き戻し力を利用して把持力を得ている場合に、捩りコイルばねの軸心(案内棒)の抜け落ち防止機構を簡素化するための改善に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体製造技術の飛躍的進歩により、トランシーバ等の携帯用無線機や各種計測器等の小型化が著しく、予めそれらの電子機器にベルトクリップを取り付けておき、非使用時にはそのクリップでベルトに引っ掛けた状態で携帯することが多くなっている。
即ち、それらの電子機器は、ポケットに収納するにはサイズや重量が大き過ぎ、また鞄等に入れていると逐一取り出して使用するのも不便であるため、腰や腹部に装着しておくことが最も簡便だからである。
【0003】
例えば、小型携帯用のトランシーバでは、従来から図4及び図5に示すようなクリップ機構が筐体の背面に取り付けられている。
図4において、50はトランシーバ本体であり、その背面50aに掛け止め板1が回動機構2を介して取り付けられる。
前記の回動機構2は、図5に示すように、捩りコイルばね3とブラケット4と圧入棒5とからなり、掛け止め板1の両側部分に突出させて形成された軸支部11a,12aの内側にコ字状のブラケット4の両側板13a,14aを組み合わせ、その組み合わせ状態で両者の間に構成される空間に捩りコイルばね3を介装し、圧入棒5を軸支部11a,12aに形成されている孔11b,12bとブラケット4の両側板13a,14aの孔13b,14bと捩りコイルばね3の内部に貫挿することによって組み立てられる。
【0004】
ここに、掛け止め板1は図6に示すような構成になっており、前記のように軸支部11a,12aが形成されていると共に、ブラケット4との組み合わせ側の面には捩りコイルばね3の腕3aが嵌合する溝15が形成されており、更にブラケット4と組み合わされた状態でブラケット4側の取り付け板部16に穿設されている孔16a,16bに対応する位置(図5参照)に孔17a,17bが形成されている。
【0005】
そして、圧入棒5を貫挿させて掛け止め板1に回動機構2(捩りコイルばね3とブラケット4)を組み付けた状態で、図5に示すように、掛け止め板1の孔17a,17bを通じて取り付け用ビス18a,18bを挿入してトランシーバ本体50の背面50aにブラケット4を固定することになるが、その取り付け後の状態は図7に示される。
同図のように、トランシーバ本体50の背面50aにはブラケット4の取り付け板部16の孔16a,16bに対応した位置にビス孔51a,51bが、またブラケット4の取り付け板部16の上端に形成されたアングル部分4cを嵌挿させる凹部52が形成されており、掛け止め板1と回動機構2はブラケット4のアングル部分4cをトランシーバ本体50側の凹部52へ差し入れた状態で取り付け用ビス18a,18bによって締着される。
【0006】
その場合、回動機構2におけるブラケット4の両側板13a,14aは圧入棒5の軸の周りに回転したときに掛け止め板1と係合して一定以上開かないようになっているため、捩りコイルばね3は自然状態より捩られた状態(図5で腕3aが矢印方向へ回転せしめられた状態)で装填されている。
したがって、この回動機構2では捩りコイルばね3の巻き戻し力を掛け止め板1の復元付勢力として利用しており、図7に示すように、掛け止め板1の上側をトランシーバ本体50の背面50a側へ押圧すると掛け止め板1の下側が開角方向に回転してベルト60を受け入れることができ、その押圧力を除くと掛け止め板1が元の状態に戻ってベルト60を把持した状態となる。
尚、図6に示すように、掛け止め板1の下端にはフック部19が形成されており、掛け止め板1を開角方向へ回転させなければ取り外せないようになっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図7で示した回動機構2を平面的に見ると図8(掛け止め板1の部分は断面)のようになり、圧入棒5の抜け止め機構は、その先端部5a側を掛け止め板1の軸支部12aに形成されている孔12bに嵌挿し、他端のローレット部5bを軸支部11aに形成された孔11bへ圧入することによって実現されている。
したがって、他方の軸支部12aの孔12bは圧入棒5の軸部に対して緩いハメアイ関係になっているが、軸支部11a側の孔11bはローレット部5bの軸径よりも僅かに小さい内径になっており、ローレット部5bを圧入した際にその軸支部11aにクラックが発生し易く、クリップの使用時に破損するような事態が生じる。
また、圧入に際してはローレット部5bが少し突出した態様でその工程を完了させるため、ベルト60に対してトランシーバ本体50を着脱する際に突出した部分が洋服に引っ掛かる等の不具合もあった。
【0008】
それに対して、図9に示すように、前記の圧入棒5に代えて、両端部の外周面に溝6a,6bを形成した丸棒6を適用し、回動機構2を掛け止め板1に組み付けた後に、前記の溝6a,6bにE-リング7a,7bを嵌着することにより抜け止め機構を構成する方式も採用されている。
また、その方式では、一端のみをE-リングの嵌着手段によることとし、他端を薄めの頭部として構成することも考えられる。
これらの方式では、丸棒6を各軸支部11a,12aの孔11b,12bに緩嵌させるだけでよく、前記のようにクラックが発生することはあり得ないが、組み立て部品としてE-リング7a,7bが別途必要になると共に、やはり側面に突出部が構成されるために、トランシーバ本体50の着脱時に不具合が生じることは前記と同様である。
【0009】
そこで、本発明は、回動機構2の回動中心を構成する軸(前記の圧入棒5や丸棒6に相当し、捩りコイルばね3に対しては案内棒に相当する)の抜け止め機構を極めて簡単な構成で実現し、一般的に携帯用電子機器のベルトクリップを歩留まりよく安価に製造し、また携帯用電子機器の着脱に際しても洋服に引っ掛かる等の不具合が生じないようにすることを目的として創作された。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、携帯用電子機器と掛け止め板の各対向面にそれぞれ一定の間隔を有した一対の軸支部が突出して構成されており、携帯用電子機器と掛け止め板の各軸支部同士を相互に組み合わせた状態で、各軸支部に形成されている孔と各軸支部の組の間に構成される空間に装填した捩りコイルばねの内部に案内棒が貫挿せしめられており、且つ、捩りコイルばねは自然状態より捩られた状態でその各腕が案内棒に関して同一側にある携帯用電子機器と掛け止め板の各対向面を付勢するように装填されている携帯用電子機器のベルトクリップにおいて、捩りコイルばねの各腕が当接する携帯用電子機器側と掛け止め板側の面に、捩りコイルばね案内棒の軸方向へ移動しないように拘束すると共に、前記装填によって生じる捩りコイルばねのコイル長の変化を拘束する拘束機構を構成し、また、前記拘束条件下で装填された捩りコイルばねのコイル軸の傾斜によって、少なくともその捩りコイルばねの端部が案内棒の外周面に対して押圧状態となるように案内棒の外径の大きさを設定しておき、その案内棒における捩りコイルばねの前記端部に対応する位置に凹部を形成して前記端部を係合させたことを特徴とする携帯用電子機器のベルトクリップに係る。
【0011】
本発明によると、捩りコイルばねは、携帯用電子機器側と掛け止め板側の面に構成されている拘束機構によって、案内棒の軸方向への移動が拘束されており(拘束条件▲1▼)、またそのコイル長の変化が拘束されており(拘束条件▲2▼)、それらの拘束条件下において、自然状態より捩られた状態で装填されている。
したがって、拘束条件▲2▼に基づいたばね素線内に生じる応力によって捩りコイルばねの各輪線部がスキューした状態で装填されることになり、そのコイル軸は傾斜する。
一方、案内棒の外径は、前記コイル軸の傾斜状態において、少なくともその捩りコイルばねの端部が案内棒の外周面を押圧する大きさに設定してある。
【0012】
そして、本発明では、案内棒における捩りコイルばねの前記端部に対応する位置に凹部が形成されているため、その凹部に捩りコイルばねの前記端部が押し付けられた状態で嵌合するが、前記の拘束条件▲1▼によって捩りコイルばねは案内棒の軸方向への移動も拘束されている。
その結果、案内棒は移動が拘束された捩りコイルばねによって係止され、案内棒の抜け止め機構が構成できる。
【0013】
本発明において、前記の「携帯用電子機器側に構成される一対の軸支部」は、必ずしも電子機器本体に直接構成する必要はなく、電子機器の面に固定されるコ字状のブラケットの両側板に孔を形成したものであってもよい。
【0014】
また、「拘束機構」としては、前記の拘束条件▲1▼及び▲2▼を実現する機構であれば如何なる構成であってもよいが、携帯用電子機器側又は掛け止め板側の軸支部における捩りコイルばねの装填空間側の壁面と、捩りコイルばねの腕が当接する携帯用電子機器側又は掛け止め板側の面に形成された前記腕の嵌入溝とで構成すれば、合理的でより簡易な機構を実現できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の最適な実施形態を図1から図3を用いて詳細に説明する。
先ず、図1は小型携帯用トランシーバのクリップに係る回動機構部分の平面図を示し、従来技術に係る図8及び図9に相応したものである。
但し、この図1では捩りコイルばね3の部分も断面で表現されている。
【0016】
この実施形態においても、掛け止め板1とブラケット4の基本的構成は従来技術に示したものと同様であるが、従来技術での圧入棒5や丸棒6に相応するものとして、捩りコイルばね31の腕31aから連続した輪線部31cの位置に対応する外周面に凹溝21aが形成された案内棒21が適用されており、且つその案内棒21の長さが掛け止め板1の幅に設定されている点に特徴がある。
【0017】
そして、図2に示すように、自然状態での捩りコイルばね31の内径Dは当然に案内棒21の外径dより大きく設定されているが、図1に示すように、案内棒21によって掛け止め板1とブラケット4の間に装填すると、図3に示すように、捩りコイルばね31の腕31aが角度φだけ捩られて掛け止め板1に形成された溝15に嵌合した状態になる。
即ち、捩りコイルばね31は、その腕31aが掛け止め板1の溝15に係止され、また他端の腕31bの部分がブラケット4の取り付け板部16で係止されると共に側板13aにも当接していることによって、軸方向への移動とコイル長の変化が拘束された状態で自然状態から角度φだけ捩られることになる。
【0018】
したがって、捩りコイルばね31の各輪線部がスキューしてコイル軸が傾斜し、両端の輪線部が案内棒21の外周面を押圧する状態になるが、この実施形態では案内棒21には前記のように凹溝21aが形成されているため、図1に示すように、腕31aに連続した輪線部31cがその凹溝21aに嵌合した状態となり、捩りコイルばね31はその状態で掛け止め板1とブラケット4の間にセットされる。
その結果、捩りコイルばね31は軸方向への移動が拘束されており、その輪線部31cが案内棒21の凹溝21aに係合して案内棒21の軸方向への移動を拘束するため、案内棒21の抜け止め機構を合理的に構成できる。
【0019】
また、図7に示したように、掛け止め板1を開角方向へ回転させてトランシーバ本体50の背面50aから開いてベルト60を受け入れる際には、捩りコイルばね31はより大きく捩られることになり、捩りコイルばね31がより大きくスキューすることから、掛け止め板1の操作によって捩りコイルばね31の輪線部31cが案内棒21の凹溝21aから外れることはない。
【0020】
一般に、捩りコイルばねの巻き戻す方向の付勢力を利用する場合において、案内棒の外径dは最大捩り時のコイル内径(D−ΔD)の約90%になるように設計し[但し、ΔD=φmax・D/2πN(φmaxは最大捩れ角,Nはコイルの巻数)]、捩りコイルばねのスキューによって案内棒へ大きな負荷がかからないようにすることが行われているが、この実施形態ではそれを逆用しており、捩りコイルばね31のスキューを有効に利用して案内棒21の抜け止め機構を構成している。
したがって、この実施形態に係るクリップの回動機構部分を設計する上での一応の目安としては、捩りコイルばね31のコイル長の変化も拘束されていることも考慮して、d>0.9(D−ΔD)としておけばよい。
【0021】
そして、この実施形態の回動機構によれば、案内棒21の抜け止めを施すために、従来技術のように案内棒21を軸支部11a又は12aに圧入したり、E-リングを用いたりする必要はなく、単に案内棒21に凹溝21aを形成しておくだけで足り、回動機構の組み立ても極めて容易になる。
また、掛け止め板1の側部に突起部は無く、トランシーバ本体50をベルト60に対して着脱する際に洋服に引っ掛かる等の不具合も生じない。
【0022】
尚、この実施形態では、捩りコイルばね31の腕31aを掛け止め板1の溝15に係止させているが、掛け止め板1側に係止用の突起を設けておいてもよい。
更に、この実施形態では、回動機構をトランシーバ本体50側から独立に構成できるようにブラケット4を用いているが、トランシーバ本体50の背面50aにブラケット4の両側板13a,14aに相当するような軸支部を直接形成しておいてもよい。
【0023】
【発明の効果】
本発明の「携帯用電子機器のベルトクリップ」は、以上の構成を有していることにより、次のような効果を奏する。
捩りコイルばねの巻き戻し付勢力を利用して掛け止め板の回動機構を構成した携帯用電子機器のベルトクリップにおいて、軸支部と捩りコイルばねを貫通する案内棒の抜け止め機構を、捩りコイルばねが自然状態から捩られた際に各輪線部がスキューする現象を利用して実現しており、従来技術のように軸支部の破損や部品点数の増加を招かず、その極めて簡単な構成と組立ての容易さによってコストダウンを可能にする。
また、掛け止め板の側部から突起部を無くすることができ、携帯用電子機器を着脱する際に洋服に引っ掛かる等の不具合が生じないという利点も有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態のクリップに係る回動機構部分の平面図である。
【図2】自然状態での捩りコイルばねの内径と案内棒の外径の関係を示す図である。
【図3】捩りコイルばねが自然状態から捩りを加えて装填され、その軸方向への移動とコイル長の変化が拘束される状態を示す模式的斜視図である。
【図4】従来技術に係るクリップ機構が取り付けられた小型携帯用トランシーバを背面側から見た外観斜視図である。
【図5】図4のクリップ機構の分解斜視図である。
【図6】掛け止め板の正面図(A)と側面図(B)である。
【図7】掛け止め板に回動機構を組み付けてトランシーバ本体側へ取り付けた状態を示す拡大側面図である。
【図8】従来技術における回動機構(抜け止めはローレット部の圧入方式)の平面図である。
【図9】従来技術における回動機構(抜け止めはE-リングの嵌着方式)の平面図である。
【符号の説明】
1…掛け止め板、2…回動機構、3…捩りコイルばね、3a…腕、4…ブラケット、4c…アングル部分、5…圧入棒、5a…先端部、5b…ローレット部、6…丸棒、6a,6b…溝、7a,7b…E-リング、11a,12a…軸支部、11b,12b…孔、13a,14a…側板、13b,14b…孔、15…溝、16…取り付け板部、16a,16b…孔、17a,17b…孔、18a,18b…取り付け用ビス、19…フック部、21…案内棒、21a…凹溝、31…捩りコイルばね、31a,31b…腕、31c…輪線部、50…トランシーバ本体、50a…背面、51a,51b…ビス孔、52…凹部、60…ベルト、D…捩りコイルばねの内径、d…案内棒の外径、φ…捩れ角度。

Claims (3)

  1. 携帯用電子機器と掛け止め板の各対向面にそれぞれ一定の間隔を有した一対の軸支部が突出して構成されており、携帯用電子機器と掛け止め板の各軸支部同士を相互に組み合わせた状態で、各軸支部に形成されている孔と各軸支部の組の間に構成される空間に装填した捩りコイルばねの内部に案内棒が貫挿せしめられており、且つ、捩りコイルばねは自然状態より捩られた状態でその各腕が案内棒に関して同一側にある携帯用電子機器と掛け止め板の各対向面を付勢するように装填されている携帯用電子機器のベルトクリップにおいて、
    捩りコイルばねの各腕が当接する携帯用電子機器側と掛け止め板側の面に、捩りコイルばね案内棒の軸方向へ移動しないように拘束すると共に、前記装填によって生じる捩りコイルばねのコイル長の変化を拘束する拘束機構を構成し、
    また、前記拘束条件下で装填された捩りコイルばねのコイル軸の傾斜によって、少なくともその捩りコイルばねの端部が案内棒の外周面に対して押圧状態となるように案内棒の外径の大きさを設定しておき、
    その案内棒における捩りコイルばねの前記端部に対応する位置に凹部を形成して前記端部を係合させたことを特徴とする携帯用電子機器のベルトクリップ。
  2. 携帯用電子機器側に構成される一対の軸支部は、電子機器に固定されるコ字状のブラケットの両側板に孔を形成したものである請求項1に記載の携帯用電子機器のベルトクリップ。
  3. 拘束機構が、携帯用電子機器側又は掛け止め板側の軸支部における捩りコイルばねの装填空間側の壁面と、捩りコイルばねの腕が当接する携帯用電子機器側又は掛け止め板側の面に形成された前記腕の嵌合溝とで構成されたものである請求項1又は請求項2に記載の携帯用電子機器のベルトクリップ。
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