JP3631360B2 - 塩化ビニル系樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は加工性に優れ、また物理特性に優れた成形体を与える塩化ビニル系樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、塩化ビニル系樹脂と、メタクリル酸メチルと他のメタクリル酸アルキルおよびアクリル酸アルキルとの重合体を主成分とする塩化ビニル系樹脂用加工助剤とからなる塩化ビニル系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
塩化ビニル樹脂は物理特性および化学特性が優れているため、種々の分野で広く利用されている。しかし、加工温度が熱分解温度に近いため成形可能な温度領域が狭く、しかも溶融状態になるまでの時間が長いなど、種々の加工上の問題がある。
【0003】
今日、前記加工上の問題を克服しようとする多くの技術が知られている。代表的な技術としては、たとえば塩化ビニル樹脂に可塑剤を添加する、塩化ビニルと他の単量体とを共重合した塩化ビニル系樹脂を使用する、塩化ビニル樹脂に他の樹脂成分を混合するなどの技術が知られている。
【0004】
しかし、これらのいずれの技術も、塩化ビニル樹脂固有の優れた物理的性質、化学的性質を保持したままで加工性を充分に向上させることができない。たとえば塩化ビニル樹脂に可塑剤を添加したり、塩化ビニルに他の単量体を共重合させた塩化ビニル系樹脂を使用したばあいには、えられる成形体の物理的性質が大きく変化する。また塩化ビニル樹脂に他の樹脂成分を混合するものの多くは、成形加工時の溶融粘度を低下させ、よって加工温度を低下させようとするものである。これらの方法は、見かけ上は塩化ビニル系樹脂の流動性を向上させるが、実際には混練エネルギーが流動によって消費されてしまうため、塩化ビニル樹脂のゲル化が不充分となる。したがって見かけ上は、透明になっていてもその物理的性質は充分にゲル化された塩化ビニル樹脂に比べて劣ることになる。
【0005】
前記のような問題を解決するために、特公昭40−5311号公報には、比較的高分子量のメタクリル酸メチルを主成分とする共重合体を加工助剤として配合する方法が提案されているが、添加された加工助剤が未ゲル化物(一般にフィシュアイと呼ばれる)として残りやすく、そのため製品の外観を損いやすく、また、製品光沢の向上、2次加工性の向上、発泡成形時の比重低下など、その他の加工助剤の添加効果も充分にえられなくなるという問題がある。
【0006】
特公昭52−49020号公報および同53−2898号公報に開示されているメタクリル酸メチルの重合体またはメタクリル酸メチルを優位量含む共重合体のラテックスの存在下に、優位量のアクリル酸エステルまたはメチルエステル以外のメタクリル酸エステルを重合した2段重合体を加工助剤として配合する方法は、前記未ゲル化物の発生の防止に一定の効果を示すものの充分ではなく、塩化ビニル系樹脂に添加したばあいに成形体の透明性の低下、ゲル化度の低下、高温伸びなどの2次加工性の低下など、加工助剤が充分に塩化ビニル系樹脂中に分散していないことが原因と推定される現象を生じることが多い。
【0007】
高分子量化された加工助剤を用いると、塩化ビニル系樹脂に粘性や弾性などを付与する効果が高くなるであろうことは容易に推察できる。しかし、ただ単に加工助剤の分子量をあげただけのものは、前記のような分散低下現象が著しくなることがよく知られている。
【0008】
このような高分子領域での未ゲル化物の発生防止、透明性改良のためには、特許2515014号公報にメタクリル酸メチルを優位量含む成分に引き続いて、アクリル酸アルキルを優位量含む成分を添加、重合した2段重合体のラテックス粒子径を1000Å以下にする方法が開示されているが、この方法ではゲル化性の改良効果が充分でなく、用途が限られるばあいがある。
【0009】
また、アクリル酸エステルを主体とする比較的ガラス転移温度が低い成分を2段重合体の核に用いる技術が仏国特許2180595号明細書に開示されている。前記発明の目的は比較的低分子量の加工助剤を用いることにより、加工時の金属面への粘着を防止したり、塩化ビニル樹脂の粘度上昇およびバラス効果に代表される溶融樹脂の弾性の発現を抑制しようとするものであるが、これはその他の従来の技術とは異なった分野に属するもので、この技術では、本発明でえられる加工性の改良などの効果はえられない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
加工助剤を塩化ビニル系樹脂に添加して使用するときの、未ゲル化物の発生や透明性の低下は加工助剤を添加した効果がえられないだけでなく、塩化ビニル系樹脂が本来もっている優れた物理的、化学的性質を損うこともあり望ましくない。前記未ゲル化物の発生の問題を解決すれば、従来のものと同量の添加でより高い添加効果がえられ、また、同一の効果をうるための添加量を少なくすることができる。さらに加工助剤の高分子量化にともなう諸物性の低下を抑制することができるので、さらなる加工助剤の高効率化を望むことができる。また、加工助剤は、製造過程でラテックスから分離して加工助剤をうる際に微粉化しやすい。しかし、微粉が多いばあいには、取り扱いが不便であるため、微粉が少ない方が好ましい。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明はかかる現状に鑑みて、より少量の添加で塩化ビニル系樹脂のゲル化性を改善し、未ゲル化物の発生を大幅に減少させ、しかも透明性を低下させず、加工性を大幅に改善する加工助剤について鋭意検討を重ねた結果、アクリル酸アルキルを主成分とする混合モノマーを乳化重合した共重合体ラテックスの存在化で、メタクリル酸メチルを主成分とする混合モノマーを添加重合し、さらにアクリル酸アルキルを主成分とする混合モノマーを添加重合する3段重合体を加工助剤として用いることで前記目的を達成できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、
塩化ビニル系樹脂100部(重量部、以下同様)および塩化ビニル系樹脂用加工助剤0.1〜30部からなる組成物であって、前記塩化ビニル系樹脂用加工助剤が、メタクリル酸メチル0〜50%(重量%、以下同様)とアクリル酸アルキル50〜100%とこれらと共重合可能なビニル系単量体0〜20%との混合物(A)3〜30部を乳化重合してえられるラテックスの存在下で、メタクリル酸メチル60〜100%とアクリル酸アルキルおよびメタクリル酸メチルを除くメタクリル酸アルキルの中から選ばれる少なくとも1種の単量体0〜40%とこれらと共重合可能なビニル系単量体0〜10%との混合物(B)40〜94部を添加、重合し、このラテックスの存在下で、さらにメタクリル酸メチル0〜50%とアクリル酸アルキル50〜100%とこれらと共重合可能なビニル系単量体0〜20%との混合物(C)3〜30部を合計量が100部となるように添加、重合してえられる重合体であることを特徴とする塩化ビニル系樹脂組成物(請求項1)、
前記塩化ビニル系樹脂用加工助剤0.4gを100mlのベンゼンに溶解した溶液の30℃における比粘度が1以上であることを特徴とする請求項1記載の組成物(請求項2)、および
前記塩化ビニル系樹脂用加工助剤の重合体のラテックスの粒子径が1000Å以下で、かつ該重合体0.4gを100mlベンゼンに溶解した溶液の30℃における比粘度が1以上であることを特徴とする請求項1記載の組成物(請求項3)に関する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は、2段重合体の加工助剤にかえて、特有の組成の外側層をもつ3段重合体を加工助剤として用いることにより、加工助剤の製造過程のラテックスから分離して加工助剤をうる際の微粉の発生を抑えた、加工時に扱いやすい塩化ビニル系樹脂組成物であり、また塩化ビニル系樹脂が本来有する優れた物理的、化学的特性を損うことなく、ゲル化を促進し、また、2次加工性を改良し、発泡成形時の比重を低下させる、製品の光沢を向上させるなど、加工助剤の添加によって期待できる効果を少量の添加で顕著に発現させることのできる塩化ビニル系樹脂組成物を見出したものである。
【0014】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂100部および塩化ビニル系樹脂用加工助剤0.1〜30部からなる組成物である。
【0015】
前記塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル単位80〜100%、塩化ビニルと共重合可能なその他の単量体からの単位0〜20%からなる重合体である。
【0016】
前記塩化ビニルと共重合可能なその他の単量体としては、たとえば酢酸ビニル、プロピレン、スチレン、アクリル酸エステルなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
前記塩化ビニル系樹脂の平均重合度などには特別な限定はなく、従来から使用されている塩化ビニル系樹脂であれば使用しうる。
【0018】
このような塩化ビニル系樹脂の具体例としては、たとえばポリ塩化ビニル、80%以上の塩化ビニル単量体とその他の共重合可能な単量体(たとえば酢酸ビニル、プロピレン、スチレン、アクリル酸エステルなど)との共重合体、後塩素化ポリ塩化ビニルなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
前記塩化ビニル系樹脂用加工助剤は、メタクリル酸メチルとアクリル酸アルキルとこれらと共重合可能なビニル系単量体との混合物(A)を乳化重合してえられるラテックスの存在下で、メタクリル酸メチルとアクリル酸アルキルおよびメタクリル酸メチルを除くメタクリル酸アルキルの中から選ばれる少なくとも1種の単量体とこれらと共重合可能なビニル系単量体との混合物(B)を添加、重合し、このラテックスの存在下で、さらにメタクリル酸メチルとアクリル酸アルキルとこれらと共重合可能なビニル系単量体との混合物(C)を添加、重合してえられる3段重合体であり、前記塩化ビニル系樹脂にその優れた透明性などの性質を低下させることなしに、優れたゲル化性、加工性などの特性を与えるものである。
【0020】
前記混合物(A)はメタクリル酸メチル0〜50%とアクリル酸アルキル50〜100%およびこれらと共重合可能なビニル系単量体0〜20%からなる混合物であり、これらの成分の共重合体を3段重合体の内殻に配置することにより、加工助剤が塩化ビニル系樹脂に添加されたとき、ゲル化を促進し、未ゲル化物の発生を防ぐことができる。また、この結果、塩化ビニル系樹脂により効率よく粘性や弾性を付与することができる
要すれば使用される前記これらと共重合可能なビニル系単量体は、塩化ビニル系樹脂組成物の使用目的に応じて使用される成分である。
【0021】
前記アクリル酸アルキルの具体例としては、たとえばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどがあげられる。これらは、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中ではとくにアクリル酸ブチルがガラス転移温度の低い重合体を与える単量体であるので本発明の目的を達成するうえで好ましい。
【0022】
また、前記これらと共重合可能なビニル系単量体の具体例としては、たとえばスチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニルやアクリロニトリルなどの不飽和ニトリルなどがあげられる。これらは、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
混合物(A)中の各成分の割合は、未ゲル化物の発生を防ぐ、ガラス転移温度を低くするなどの点から、メタクリル酸メチル0〜50%、好ましくは20〜50%、さらに好ましくは30〜45%であり、前記アクリル酸アルキル50〜100%、好ましくは50〜80%、さらに好ましくは55〜70%および前記これらと共重合可能なビニル系単量体0〜20%、好ましくは0〜10%、さらに好ましくは0〜5%である。混合物(A)中のメタクリル酸メチルの割合が50%をこえると良好なゲル化性が失われたり、未ゲル化物が発生することとなる。また前記アクリル酸アルキルの割合が50%未満でも同様である。さらに前記これらと共重合可能なビニル系単量体の割合は、本発明の特徴である良好なゲル化性のためには用いない方が好ましいが、必要であれば20%をこえない範囲で用いることができる。前記これらと共重合可能なビニル系単量体を用いるばあいにはできるだけ少量であるのが好ましい。。
【0024】
混合物(B)は、メタクリル酸メチル60〜100%とアクリル酸アルキルおよびメタクリル酸メチルを除くメタクリル酸アルキルの中から選ばれる少なくとも1種の単量体0〜40%、およびこれらと共重合可能なビニル系単量体0〜10%との混合物である。この成分は従来の塩化ビニル用加工助剤に用いられていゲル化性、加工性を改良する成分と同等の作用をもつものである。
【0025】
要すれば使用される前記これらと共重合可能なビニル系単量体は塩化ビニル系樹脂組成物の使用目的に応じて使用される成分である。
【0026】
前記アクリル酸アルキルの具体例としては、たとえばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどがあげられる。また、メタクリル酸メチルを除くメタクリル酸アルキルの具体例としてはたとえばメタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどがあげられる。これらのアクリル酸アルキルおよびメタクリル酸メチルを除くメタクリル酸アルキルは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
要すれば使用される前記これらと共重合可能なビニル系単量体の具体例としては、たとえばスチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニルやアクリロニトリルなどの不飽和ニトリルなどがあげられる。これらは、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
混合物(B)中の各成分の割合はメタクリル酸メチル60〜100%、好ましくは60〜90%、さらに好ましくは65〜85%、前記アクリル酸アルキルおよびメタクリル酸メチルを除くメタクリル酸アルキルの中から選ばれる少なくとも1種の単量体0〜40%、好ましくは0〜30%、さらに好ましくは0〜20%、前記これらと共重合可能なビニル系単量体0〜10%、好ましくは0〜5%、さらに好ましくは0〜3%である。混合物(B)中のメタクリル酸メチルの割合が60%未満のばあいには、透明性、2次加工性、ゲル化性などが低下する。また、前記アクリル酸アルキルおよびメタクリル酸メチルを除くメタクリル酸アルキルの中から選ばれる少なくとも1種の単量体の割合が40%をこえると透明性、加工性などが低下する。さらに前記これらと共重合可能なビニル系単量体の割合が10%をこえるとゲル化性、透明性が低下する。
【0029】
混合物(C)はメタクリル酸メチル0〜50%とアクリル酸アルキル50〜100%とこれらと共重合可能なビニル系単量体0〜20%とからなる混合物であり、混合物(A)と同様の組成範囲であるが必ずしも同一である必要はなく、塩化ビニル系樹脂組成物を使用する目的に応じて調整することができる。このような比較的ガラス転移温度が低い共重合体を与える混合物(C)を混合物(A)、(B)からの重合体ラテックスの存在下に添加することにより、塩化ビニル系樹脂組成物中の未ゲル化物の発生を防ぐとともに、前記加工助剤をうる際に、樹脂をラテックスから分離して粉末にするときの微粉の発生を減少させることができる。
【0030】
混合物(C)中の各成分の割合はメタクリル酸メチル0〜50%、好ましくは20〜50%、さらに好ましくは30〜45%であり、前記アクリル酸アルキル50〜100%、好ましくは50〜80%、さらに好ましくは55〜70%および前記これらと共重合可能なビニル系単量体0〜20%、好ましくは0〜10%、さらに好ましくは0〜5%である。混合物(C)中のメタクリル酸メチルの割合が50%をこえると未ゲル化物が発生し、樹脂をラテックスから分離して粉末にするときの微粉の量が増加する。また前記アクリル酸アルキルの割合が50%未満でも同様になる。さらに前記これらと共重合可能なビニル系単量体は本発明の特徴である良好なゲル化性を与えるためには用いない方が好ましいが、必要であれば20%をこえない範囲で用いることができる。前記これらと共重合可能なビニル系単量体を用いるばあいにはできるだけ少量であることが好ましい。
【0031】
前記加工助剤100部における混合物(A)からの共重合体の含有量は3〜30部、好ましくは5〜20部、さらには8〜15部である。混合物(A)からの共重合体が3段重合体の内側層に3〜30部という比較的少量存在することでゲル化性、加工性を特異的に改善し、結果として3段重合体からなる加工助剤の添加効果を飛躍的に高効率化することができる。このような少量成分が前記のような特異的な効果をもつことは従来知られていなかった。混合物(A)からの共重合体の含有量が30部をこえると塩化ビニル系樹脂のゲル化性、透明性を損うので好ましくなく、3部未満では加工助剤の塩化ビニル系樹脂への分散性が損われ、未ゲル化物が発生するようになる。
【0032】
前記加工助剤100部における混合物(B)からの共重合体の含有量は、40〜94部、好ましくは60〜90部、さらには80〜90部である。混合物(B)からの共重合体の含有量が94部をこえると、加工助剤の塩化ビニル系樹脂への分散性が損われ、未ゲル化物が発生するようになる。また40部未満では本発明の目的とするゲル化性が充分改良されなくなる。
【0033】
前記加工助剤100部における混合物(C)からの共重合体の含有量は3〜30部、好ましくは5〜20部、さらには8〜15部である。比較的ガラス転移温度が低い共重合体で混合物(A)、(B)からの重合体のラテックス粒子の表面を被覆することで、未ゲル化物の発生を防ぐとともに、前記加工助剤をうる際に、樹脂をラテックスから分離して粉末にするときの微粉の発生を減少させることができる。混合物(C)からの共重合体の含有量が3部未満では未ゲル化物の発生を防ぐ効果、微粉を減少させる効果が充分でなく、30部をこえると加工性が低下する。
【0034】
前記加工助剤の重合体のラテックスは、通常の乳化重合法によりえられるが、たとえば以下の方法でうることができる。
【0035】
まず混合物(A)を適当な媒体、乳化剤、重合開始剤および連鎖移動剤などの存在下で乳化重合させ、混合物(A)の重合体ラテックスをうる。ついで混合物(B)、(C)を順次添加して重合を行なう。このように各々の混合物を逐次重合させることにより、混合物(A)の重合体を内側層として、混合物(B)の重合体の層と混合物(C)の重合体の層が2重の被覆を形成した3段重合体をうることができる。
【0036】
前記乳化重合で使用される媒体とは、通常、水である。
【0037】
また、前記乳化剤としては公知のものが使用され、たとえば脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、スルホコハク酸ジエステル塩などのアニオン系界面活性剤やポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどの非イオン系界面活性剤などがあげられる。
【0038】
前記重合開始剤としては水溶性や油溶性の重合開始剤、熱分解型や、レドックス型の重合開始剤などが使用され、たとえば通常の過硫酸塩などの無機開始剤、あるいは有機過酸化物、アゾ化合物などを単独で用いるか、前記化合物と亜硫酸塩、亜硫酸水素、チオ硫酸塩、第一金属塩、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートなどを組み合わせ、レドックス系で用いてもよい。前記重合開始剤として好ましい過硫酸塩としては、たとえば過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどがあげられ、好ましい有機過酸化物としては、たとえばt−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイルなどがあげられる。
【0039】
重合温度や時間などにもとくに限定はなく、使用目的に応じて所望の比粘度、粒子径になるように適宜調整すればよい。
【0040】
2段目以降のモノマーの添加にあたっては、前段の重合が完結していることを確認して添加することにより前段のモノマーと混合することなく、各段の重合を行なうことができる。
【0041】
このようにしてえられる前記加工助剤の重合体のラテックスは、平均粒子径が100〜3000Å、さらには100〜1000Åが好ましい。平均粒子径が100Å未満のラテックスをうるのは困難であり、3000Åをこえるばあいには分散性が低下し、さらに1000Å以下のばあいにはきびしい加工条件でも成形できる傾向にある。
【0042】
前記加工助剤の重合体のラテックスは、通常の電解質の添加による塩析、擬析や熱風中に噴霧、乾燥させることにより、ラテックスから分離して用いられる。
【0043】
えられる3段重合体は必要に応じて、通常の方法により洗浄、脱水、乾燥などが行なわれうる。
【0044】
えられる加工助剤は、通常、平均粒子径が30〜300μmの白色粉末状のようなものが好ましい。
【0045】
前記加工助剤は通常用いられる分子量の範囲であれば、いかなる分子量のものであっても加工助剤としての効果を充分に発現する。
【0046】
しかし、前記加工助剤0.4gをベンゼン100ml中に溶解させ、30℃で測定した比粘度が1以上、さらには1.2以上、とくには1.5以上で、7以下、さらには5以下、とくには3以下であるのが好ましい。前記比粘度が1以上であるばあいさらに良好な加工性がえられる点で好ましい傾向がある。また7をこえると透明性が低下する傾向がある
従来、加工助剤は高分子量のものほどその効果が高くなると類推されていた。しかし、実際はただ単に分子量をあげただけのものは塩化ビニル系樹脂のゲル化性が低下したり、高温伸び、発泡成形時の比重低下などの加工性が低下することがあり、必ずしも実用に適するものではないということが知られている。しかし本発明で使用する前記加工助剤は層構造が特有のものであるために、前期比粘度が1以上であるような高分子量の領域であっても充分なゲル化性、加工性がえられる。
【0047】
なお、前記加工助剤の分散性能は加工条件(ロール温度など)や安定剤、滑剤などの配合物の種類などにおいて、通常の条件下(たとえば通常のスズ配合コンパウンドを用いたばあいの8インチテストロールによる加工でロール温度は160〜180℃程度)で良好な加工性を示す。しかし、本発明の範囲内であっても、条件により、たとえばロール温度が低いばあい(たとえばロール温度が140〜160℃のばあい)や配合された滑剤の量が多いばあいなどには、前記比粘度が1以上のばあい分散性能が低下し、ゲル化が進みにくくなり、透明性、加工性が低下することがある。このようなばあいには、加工助剤のラテックスの平均粒子径を前記の範囲にかえて1000Å以下、好ましくは800Å以下で好ましくは100Å以上にすることで前記の問題を改良することができる。
【0048】
なお、前記範囲のラテックスは、前記通常の条件でもとくに問題なく使用しうる。
【0049】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は前記塩化ビニル系樹脂に前記加工助剤を通常の方法にしたがって混合することによりうることができる。
【0050】
前記塩化ビニル系樹脂と前記加工助剤との混合割合は100部に対して前記塩化ビニル系樹脂0.1〜30部、好ましくは0.3〜10部、さらに好ましくは0.5〜5部である。前記加工助剤の量が0.1部未満になると加工助剤の効果が充分えられなくなり、30部をこえると塩化ビニル系樹脂の優れた機械的特性が損われる。
【0051】
このようにしてえられる本発明の塩化ビニル系樹脂組成物には、実用に際して必要に応じて安定剤、滑剤、耐衝撃強化剤、可塑剤、着色剤、充填剤、発泡剤などを配合して使用してもよい。
【0052】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、加工性に優れ、ブロー成形、インジェクション成形、カレンダー成形、押出成形などの方法で成形することができる。えられる成形体は透明性、光沢、表面の平滑性などの外観や、2次加工性に優れたり、発泡成形に用いるばあいには低比重の成形体がえられるなどの優れた特性を有しているため、塩化ビニル系樹脂の加工を要するすべての分野、たとえばシート、異形成形体、発泡成形体などに好ましく使用されうる。
【0053】
【実施例】
以下実施例および比較例に基づき本発明の組成物をさらに詳細に説明する。
【0054】
なお、評価方法を以下に示す。
【0055】
(評価方法)
重合体試料(加工助剤)0.4gを100mlのベンゼンに溶解させた溶液の比粘度(ηsp)の測定:
重合体試料0.4gを100mlのベンゼンに溶解させ、30℃の水浴中で一定温度に保ったユーベロード型粘度計を用いて測定した。
【0056】
組成物の評価:
ポリ塩化ビニル(平均重合度660)100部にえられた重合体試料3部、オクチルスズメルカプタイド系安定剤1.5部、大豆油のエポキシ化物1.5部、ステアリン酸ブチル1.0部および脂肪酸のポリグリコールエステル0.5部を配合したものを以下の方法で評価した。
【0057】
(ゲル化性)
前記配合物55gを小型混練試験機(ブラベンダー社製プラスチコーダー、PLE−331)で、150℃で混練した。混練時間対トルクの曲線で、最低のトルクと最大のトルクの点を結んだ直線の傾きからゲル化性を評価した。この傾きが大きいほどゲル化性がよいと判断した。
【0058】
(透明性)
8インチテストロールで160℃×5分間の混練後、170℃×15分間プレスし、厚さ5mmのプレス板を作成した。えられたプレス板の全光線透過率および曇価をJIS−6714に準じて測定した。全光線透過率は数字が大きいほど透明性がよいことを示し、曇価は数字が小さいほどよい。
【0059】
(加工性)
高温時の伸びは、8インチテストロールで160℃×5分間の混練後、170℃×15分間プレスし、厚さ1mmのプレス板を作成後、JIS K 7113に準じて測定した。ダンベルはJIS 2号を用い、測定温度は100℃、引張速度は200mm/分とした。高温時の伸びが大きいほど加工助剤がその能力を充分に発揮していることを示す。
【0060】
また、発泡性は前記配合物にアゾジカルボンアミド0.6部を配合し、東洋精機(株)製ラボプラストミル付属の小型押出機で170℃で成形し、えられた矩形成形体の比重を評価した。成形体の比重が低いものほど発泡性がよいと言える。
【0061】
(未ゲル化物)
8インチテストロールで160℃×5分間のロール混練後、170℃×15分間プレスを行ない、厚さ0.1mmのプレス板を作成し、100cm2の面積中でゲル化せずに残っている粒子の数を目視により計数した。未ゲル化物は少ない方が好ましい。
【0062】
実施例1
撹拌機付き反応器にあらかじめ水に溶解したジオクチルスルホコハク酸ソーダ0.5部および過硫酸カリウム0.1部を入れ、さらに水を加えて水の全量を200部とした。前記反応器内にチッ素を流通させることで空間部および水中の酸素を除去したのち、撹拌しながら内容物を70℃に昇温した。つぎに前記反応器にメタクリル酸メチル(MMA)3部、アクリル酸ブチル(BA)7部よりなる単量体混合物(混合物(A))を1時間あたり20部程度の速度で滴下した。滴下終了後、1時間撹拌を続け、重合を実質的に完結させた。そののち、MMA64部およびBA16部からなる単量体混合物(混合物(B))を1時間あたり20部程度の速度で滴下した。滴下終了後、1時間撹拌を続け重合を実質的に完結させた。さらにMMA3部、BA7部よりなる単量体混合物(混合物(C))を1時間あたり20部程度の速度で滴下した。滴下終了後、そのまま90分間内容物を70℃に保ち、そののち冷却した。重合転化率は99.5%であった。また濁度法により求めたラテックスの粒子径は1200Åであった。このラテックスに塩化カルシウム水溶液を加えて塩析凝固させ、90℃まで昇温熱処理したのちに遠心脱水機を用いて濾過し、えられた樹脂の3重量倍の水で水洗し、並行流乾燥機で50℃、15時間乾燥させて白色粉末状の重合体試料(1)をえた。
【0063】
えられた重合体試料(1)を前記の方法で評価した。
【0064】
結果を表1に示す。
【0065】
実施例2〜4および比較例1〜3
表1に示した成分、量にしたがって実施例1と同様にして重合体試料(2)〜(7)をえた。なお、重合体試料(5)は混合物(A)の重合を行なわない2段重合体であるが、実質的には同様にしてえた。えられたラテックスの粒子径は全て1100〜1300Åの範囲であった。
【0066】
えられた重合体試料を前記の方法で評価した。
【0067】
結果を表1に示す。
【0068】
なお、表中、MMAはメタクリル酸メチル、BAはアクリル酸ブチル、EAはアクリル酸エチル、BMAはメタクリル酸ブチル、ANはアクリロニトリルを示す。
【0069】
【表1】
【0070】
表1より、3段重合体である重合体試料(1)〜(4)を用いると、従来の発明で知られている2段重合体である重合体試料(5)に比べて塩化ビニル系樹脂組成物のゲル化性、加工性が優れていることがわかる。また、重合体試料(6)のように混合物(A)の量が本発明の範囲より少量であるばあいはゲル化性の効果が充分でなく、一方、重合体試料(7)のように混合物(A)の量が本発明の範囲をこえて多くなったばあいには、ゲル化性、加工性の改良効果が充分でなく、また透明性も低下する。
【0071】
実施例5〜10および比較例4〜6
混合物(B)またはその相当物を構成するモノマーの種類および量を表2に示したように変更したほかは実施例1と同様にして重合体試料(8)〜(16)をえた。えられたラテックスの粒子径は全て1100〜1300Åの範囲であった。
【0072】
えられた重合体試料を用いて、前記評価方法により評価した。結果をまとめて表2に示す。
【0073】
【表2】
【0074】
表2の結果より、重合体試料(8)〜(13)を用いると良好なゲル化性、透明性、加工性を有した組成物がえられるが、アクリル酸アルキルおよびメタクリル酸メチルを除くメタクリル酸アルキルの中から選ばれた単量体の共重合比を本発明の範囲をこえて高くした混合物(B)相当物を用いた重合体試料(14)、(15)を用いたばあいには透明性、加工性が低下することがわかる。また重合体試料(13)のようにメタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキル以外の単量体(アクリロニトリル)を少量、共重合したばあいには物性低下の原因になることはないが、重合体試料(16)のようにメタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキル以外の単量体の組成比を本発明の範囲をこえて混合物(B)相当物の10%以上にするとゲル化性が低下し、その他の物性も低下していることがわかる。
【0075】
実施例11〜13および比較例7〜9
表3に示した成分、量にしたがって実施例1と同様にして重合体試料(17)〜(22)をえた。えられたラテックスの粒子径は全て1100〜1300Åの範囲であった。
【0076】
えられた重合体試料を用いて、前記評価方法により評価した。
【0077】
結果をまとめて表3に示す。
【0078】
なお、凝固性はラテックスを電解質で凝固してえられた凝固体の強度で評価した。
【0079】
えられたラテックスを直径15mm、長さ30mmの半透膜チューブに封入し、このチューブを50℃で1%塩化カルシウム水溶液に30分間浸して、凝固体をえた。この凝固体の円周方向から10mm/分の一定速度で応力をかけていき、凝固体が破壊される応力を測定した。この凝固体の強度が高いものほど前記加工助剤をうる際に、樹脂をラテックスから分離して粉末にするときの微粉の発生量は少なくなると考えられる。
【0080】
【表3】
【0081】
表3の結果から、3段重合体である重合体試料(17)〜(19)を用いたばあいには未ゲル化物がほとんど発生せず、凝固性も良好であるが、2段重合体である重合体試料(20)や重合体試料(21)のように混合物(C)相当物がないばあいや本発明の範囲より少ないばあいには未ゲル化物が激増し、凝固体強度も低下することがわかる。また重合体試料(22)のように混合物(C)相当物の量が本発明の範囲をこえて多くなったばあいには、加工性が低下することがわかる。
【0082】
実施例14、15および比較例10、11
3段重合体である重合体試料(23)、(24)と2段重合体である重合体試料(25)、(26)は開始剤(過硫酸カリウム)の量と乳化剤(ジオクチルスルホコハク酸ソーダ)の量とを調整してηspとラテックスの粒子径を調整したほかは実施例1と同様にしてえた。
【0083】
えられた重合体試料を用いて、前記評価方法により評価した。結果をまとめて表4に示す。
【0084】
【表4】
【0085】
表4の結果から、3段重合体試料を用いたばあいにはηspを高くしても透明性は低下せず加工性はむしろ向上するが、混合物(A)相当物が存在しない2段重合体である(25)、(26)を用いたばあいはηspの上昇により、透明性が著しく低下することがわかる。
【0086】
実施例16〜17、参考例1、2
3段重合体である重合体試料(27)、(28)は開始剤(過硫酸カリウム)の量と乳化剤(ジオクチルスルホコハク酸ソーダ)の量とを調整してηspとラテックス中の重合体粒子の粒子径を調整したほかは実施例1と同様にしてえた。
【0087】
えられた試料を用いて前記評価方法と同様にして組成物を調整し、評価したが、8インチロールの温度を150℃に、プレスの温度を160℃に、押出温度を160℃に変更して行なった。結果をまとめて表5に示す。
【0088】
【表5】
【0089】
表5の結果から、参考例1、2の3段重合体である重合体試料(23)、(24)は実施例14、15に用いたものと同じものであるが、加工温度を10℃低くすることで透明性、加工性が低下していることがわかる。一方ラテックス粒子径を1000Å以下にした重合体試料(27)、(28)は高ηspにしても透明性が低下せず、加工性はむしろ向上しており、ラテックス粒子径を1000Å以下にすることにより透明性、加工性の効果を改良することができることがわかる。
【0090】
実施例19、20および比較例12、13
実施例1に用いた重合体試料(1)の組成物への配合部数をかえたばあいの効果について評価するために、前記評価方法の重合体試料3部にかえて、表6に記載の配合部数にし、そのほかは、前記評価方法と同様にして評価した。
【0091】
【表6】
【0092】
表6の結果より、本発明の範囲内で重合体試料(1)を配合した組成物は良好なゲル化性、透明性、加工性を有しているが、比較例12のように本発明の範囲をこえて配合部数を減らしたばあいには充分なゲル化性、加工性がえられない。また比較例13のように本発明の範囲をこえて配合部数を増やしたばあいには不均一性が増して、透明性、加工性を評価するのに適した成形体をうることができなかった。
【0093】
【発明の効果】
本発明の組成物はゲル化性が良好であるのに加えて、透明性および加工性が良好である。このような好ましい特徴を有する組成物が塩化ビニル樹脂100部に対して0.1〜30部という少量の加工助剤の添加で製造される。
Claims (3)
- 塩化ビニル系樹脂100重量部および塩化ビニル系樹脂用加工助剤0.1〜30重量部からなる組成物であって、前記塩化ビニル系樹脂用加工助剤が、メタクリル酸メチル0〜50重量%とアクリル酸アルキル50〜100重量%とこれらと共重合可能なビニル系単量体0〜20重量%との混合物(A)3〜30重量部を乳化重合してえられるラテックスの存在下で、メタクリル酸メチル60〜100重量%とアクリル酸アルキルおよびメタクリル酸メチルを除くメタクリル酸アルキルの中から選ばれる少なくとも1種の単量体0〜40重量%とこれらと共重合可能なビニル系単量体0〜10重量%との混合物(B)40〜94重量部を添加、重合し、このラテックスの存在下で、さらにメタクリル酸メチル0〜50重量%とアクリル酸アルキル50〜100重量%とこれらと共重合可能なビニル系単量体0〜20重量%との混合物(C)3〜30重量部を合計量が100重量部となるように添加、重合してえられる重合体であることを特徴とする塩化ビニル系樹脂組成物。
- 前記塩化ビニル系樹脂用加工助剤0.4gを100mlのベンゼンに溶解した溶液の30℃における比粘度が1以上であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
- 前記塩化ビニル系樹脂用加工助剤の重合体のラテックスの粒子径が1000Å以下で、かつ該重合体0.4gを100mlのベンゼンに溶解した溶液の30℃における比粘度が1以上であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
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