JP3628236B2 - 清掃用物品及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は清掃用物品及びその製造方法に関する。更に詳しくは基材シートから延びる繊維層の平均密度を高くして前記繊維層にボリュームを持たせてゴミ等の捕集能力に優れるようにした清掃用物品及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、清掃用モップなどに取付けられて使用される清掃用物品、または手で保持して使用される清掃用物品として、使用後に使い捨てが可能とされたものがある。
【0003】
図6は、使い捨て用の清掃用物品として、基材シートの表面に繊維層による刷毛部が形成されたものの断面図を示している。この種の清掃用物品は、例えば特開平9−149873号公報に開示されている。
【0004】
前記清掃用物品は、熱溶着性繊維を含む不織布などの基材シート1の表面に、繊維層2が溶着線3により接合され、前記溶着線3から延びる前記繊維層2により刷毛部が形成されている。
【0005】
この清掃用物品の製造方法は、基材シート1の上にトウから開繊された長繊維をその繊維が基材シート1の長手方向(Y方向)へ延びるように設置する。そして、前記長手方向へ一定の間隔を開け且つ互いに平行に延びる複数の溶着線3,3、…により基材シート1と長繊維層とを熱溶着し、その後に隣り合う溶着線3と溶着線3との間で長繊維層を切断する。これにより溶着線3と溶着線3との間に、前記溶着線3を基端とし自由端2aが溶着線3と溶着線3との間に延びる繊維層2による刷毛部が形成される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
図6に示す従来の清掃用物品では、長繊維層を基材シート1に溶着線3,3で接合し、この溶着線3と溶着線3との間で長繊維層を切断して製造している。そのため、溶着線3の配列間隔(ピッチ)をPaとし、隣り合う溶着線3と溶着線3との間で刷毛部を形成している繊維層2,2の溶着線3から自由端2a,2aまでの長さをそれぞれLa、Lb(La≒Lb)としたときに、必然的にPa>La+Lbとなる。
【0007】
すなわち、基材シート1の溶着線3と溶着線3との間では、左右に2分された繊維層2の自由端2aと繊維層2の自由端2aとの間に隙間Sが形成される。したがって、基材シート1の表面の全面に対する繊維層2の平均密度が低くなり、刷毛部のボリューム感を出すことができない。またこの清掃用物品で拭き取り作業を行うときに、前記隙間Sを介して左右に2分されたそれぞれの繊維層2,2が基材シート1の表面に倒れ、その倒れた状態から復元されにくくなる。さらに、床などを拭くときに、繊維層2による刷毛部の清掃効果が全体として低下し、また前記隙間Sにおいて基材シート1が直接に床などの拭き取り面に当たるため床面などに摺動させるときの摩擦力が大きくなって、拭き取り作業の際の摺動抵抗が大きくなる。
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、基材シートの面に形成される繊維層の平均密度を高めて清掃効果を高くし、また繊維層が基材シートに倒れにくくし、さらに清掃面との摺動抵抗も低減できるようにした清掃用物品およびその製造方法を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基材シートと、前記基材シートの片面または両面に設けられた繊維層と、前記繊維層を前記基材シートに接合する接合線とが設けられた清掃用物品において、
前記接合線は互いに所定間隔を開けて形成され、前記接合線の間隔をP、隣り合う接合線間に位置する前記繊維層の前記接合線から自由端までの長さの合計をLとしたときに、P<Lであることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の清掃用物品では、接合線間に位置する繊維層の長さLが、接合線の間隔(ピッチ)Pよりも長いため、基材シートの表面に繊維層の隙間が形成されにくくなる。よって基材シート上での繊維層の平均密度を高くでき、繊維層による拭き取り効果を高くできる。また基材シートが直接に床など拭き取り面に当たりにくくなるので、摺動抵抗を低減でき、拭き取り感触を良好にできる。
【0011】
前記繊維層では、繊維が一方向へ揃えられて延びていることが好ましい。
また、隣り合う接合線のそれぞれから前記接合線間に繊維層が延びているものでは、一方の接合線から延びる前記繊維層のその接合線から自由端までの長さをL1、他方の接合線から延びる前記繊維層のその接合線から自由端までの長さをL2としたときに、P<L=L1+L2である。
【0012】
この場合、前記L1とL2が等しくてもよいし、前記L1とL2が相違してもよい。
【0013】
または、隣り合う接合線間において、一方の接合線のみから前記長さLの繊維層が延びているものとすることも可能である。
【0014】
また、例えば、前記繊維層の自由端が前記基材シートから離れる方向へ向けられて前記繊維層により刷毛部が形成されているものである。ただし、製造時に繊維層が基材シートの表面に密着しており、拭き取り作業で摺動力が作用したときに、基材シートから繊維層が立ち上がって前記刷毛部が形成されるものであってもよい。
【0015】
また、前記繊維層は、捲縮繊維で形成されている。または、前記繊維層は、トウから開繊された繊維で形成されている。または、前記繊維層は、フラットヤーンにより形成されてもよく、前記繊維層は、スプリットヤーンにより形成されててもよい。あるいは、前記繊維層の代わりに、樹脂シートまたは不織布から短冊状に切断された短冊状シートの層が使用される。
【0016】
また例えば、前記基材シートは、前記接合線の並ぶ方向へ伸縮性を有するものである。ただし、基材シートが伸縮性を有しないものであってもよい。
【0017】
本発明の清掃用物品は、少なくとも次の工程を含むことを特徴とするものである。
【0018】
(a)伸縮性を有する基材シートを伸ばし、この基材シートの伸び方向に沿って延びる長繊維層を前記基材シートの表面と裏面の少なくとも一方に重ねるとともに、前記伸び方向へ間隔を開け且つ伸び方向と交叉する方向に延びる複数の接合線により、前記基材シートと前記長繊維層とを接合する工程、
(b)隣り合う接合線間で前記長繊維層を切断する工程、
(c)前記(b)の工程の前または後で、前記基材シートに与えた伸びを解除して前記基材シートを収縮させる工程。
【0019】
あるいは、少なくとも次の工程を含むことを特徴とするものである。
(d)基材シートの表面と裏面の少なくとも一方に、一方向に揃えられた第1の長繊維層を重ね、前記第1の長繊維層の延びる方向へ間隔を開け且つ前記延びる方向と交叉する方向に延びる複数の第1の接合線により、前記基材シートと第1の長繊維層とを接合する工程、
(e)前記第1の長繊維層を、隣り合う第1の接合線間で切断する工程、
(f)前記第1の長繊維層の上に、第2の長繊維層を前記第1の長繊維層と同じ方向へ延びるように重ね、前記第1の長繊維層が切断された部分において、前記基材シートと前記第2の長繊維層とを、第2の長繊維層が延びる方向と交叉する方向に延びる第2の接合線で接合する工程、
(g) 前記第2の長繊維層を、隣り合う前記第2の接合線の間で切断し、第1の接合線と、第2の接合線のそれぞれから延びる繊維層を形成する工程。
【0020】
または、少なくとも次の工程を含むことを特徴とするものである。
(h)基材シートの表面と裏面の少なくとも一方に、一方向に揃えられた長繊維層を重ね、前記長繊維層の延びる方向へ間隔を開け且つ前記延びる方向と交叉する方向に延びる複数の接合線により、前記基材シートと前記長繊維層とを接合する工程、
(i)前記長繊維層を、隣り合う接合線間で切断する工程、
(j)前記(i)の工程の前または後で、前記基材シートを前記接合線の間隔を狭めるように接合する工程。
【0021】
この場合、前記長繊維層を、捲縮繊維で形成してもよい。または、前記長繊維層として、トウから開繊された長繊維層を用いる。あるいは、前記長繊維層として、フラットヤーンの層を用いてもよいし、また前記長繊維層として、スプリットヤーンを用いてもよい。または、前記長繊維層の代わりに、樹脂シートまたは不織布から短冊状に切断された短冊状シートの層を使用することも可能である。
【0022】
なお、前記繊維層と基材シートとの接合線は、熱溶着線であることが好ましいが、接着剤で繊維層と基材シートを接合してもよく、また繊維層を基材シートに線状に縫合して前記接合線を形成してもよい。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について図面を参照して説明する。
【0024】
図1は本発明の第1の実施の形態の清掃用物品10を示す部分斜視図である。
この清掃用物品10には、縦方向(Y方向)に長く、横方向(X方向)に所定幅寸法を持つ長方形の基材シート11が設けられ、この基材シート11の片面に繊維層12,12,…が接合されている。また各繊維層12の繊維が主に延びる方向はY方向である。ただし、繊維の延びる方向がY方向とX方向の双方に対して傾斜していてもよい。
【0025】
基材シート11と繊維層12との接合線13,13,…は、Y方向すなわち前記繊維層12の繊維の延びる方向へ一定の間隔(ピッチ)Pを開けて且つ前記繊維の延びる方向と直交する方向に向けて互いに平行に形成されている。ただし、前記接合線13,13,13、…の間隔Pは場所によって相違してもよく、また前記各接合線13は、Y方向とX方向に対して傾斜していてもよい。あるいは前記各接合線13が波形状や曲線形状あるいはV字形状の各パターンに形成されていてもよい。V字形状パターンの場合、V字の頂部が縦方向(Y方向)へ向けられていることが好ましい。
【0026】
図1および図3(B)に示すように、前記繊維層12は、前記接合線13で基材シート11に止められて、繊維層12の自由端12aと自由端12bは、接合線13を中心としてY方向での左右両側に延びている。そして、接合線13を基端として一方の自由端12aまで延びる繊維層12が刷毛部12Aとなり、接合線13を基端として他方の自由端12bまで延びる繊維層12が刷毛部12Bとなっている。
【0027】
ただし、各繊維層12が基材シート11側へ倒れていてもよく、使用時の床面などとの摺動力によって、繊維層12の自由端12a,12bが基材シート11から立ち上がって刷毛部12Aと12Bが形成されるものであってもよい。
【0028】
隣り合う接合線13と接合線13との間の領域では、一方の接合線13から前記刷毛部12Aを形成する繊維層12が延び、他方の接合線13から前記刷毛部12Bを形成する繊維層12が延びている。ここで、一方の刷毛部12Aを形成する繊維層12の接合線13から自由端12aまでの繊維の長さ(多数の繊維の平均長さ)をL1、他方の刷毛部12Bを形成する繊維層12の接合線13から自由端12bまでの繊維の長さ(多数の繊維の平均長さ)をL2としたときに、前記長さL1とL2の合計L=L1+L2と、前記接合線13の間隔Pとの関係は、P<L=L1+L2である。すなわち、刷毛部12Aを形成する繊維層12と、刷毛部12Bを形成する繊維層12とが、共に基材シート11に倒れたときに、刷毛部12Aを形成する繊維層12の先部と、刷毛部12Bを形成する繊維層12の先部とが重複する関係である。
【0029】
前記繊維長の合計Lは、前記間隔Pの少なくとも1.1倍以上が好ましく、さらに好ましくは1.3倍以上、さらに好ましくは1.5倍以上である。
【0030】
図2は本発明の第2の実施の形態の清掃用物品10Aを示す部分斜視図である。
【0031】
この実施の形態では、図1に示す実施の形態と同様に、基材シート11の片面に繊維層12が設けられ、各繊維層12は繊維の主に延びる方向がY方向である。前記基材シート11と繊維層12は、Y方向に一定の間隔Pを開けて且つX方向へ互いに平行に延びる接合線13,13,…により接合されている。
【0032】
各繊維層12は各接合線13から主に図示左方向へ延びており、接合線13から自由端12dまでの部分の繊維層12で刷毛部12Dが形成されている。この実施の形態では、隣り合う接合線13と接合線13との間の領域において、一方の接合線からのみ刷毛部12Dが延びている。なお、接合線13で繊維層12が基材シート11に止められるときに、前記繊維層12が接合線13から図示右方向へ若干はみ出る。このはみ出し部分の繊維層12の自由端12eと接合線13との間の繊維長さL0はきわめて短く、2mm以下、好ましくは1mm以下程度である。よって、接合線13から自由端12eまでの部分は実質的に刷毛部としての機能を発揮しない。
【0033】
図2の実施の形態では、刷毛部12Dを形成する繊維層12において、接合線13から自由端12dまでの繊維の長さ(多数の繊維の平均長さ)をLとしたときに、接合線13と接合線13との間隔Pとの関係は、P<Lである。すなわち、接合線13から延びる刷毛部12Dを形成する繊維層12は、基材シート11側に倒れたときに、隣りの接合線13に重なる関係である。
【0034】
前記繊維長Lは、前記間隔Pの少なくとも1.1倍以上が好ましく、さらに好ましくは1.3倍以上、さらに好ましくは1.5倍以上である。
【0035】
上記清掃用物品10および10Aでは、刷毛部を形成している繊維層の接合線から自由端までの繊維長さL=L1+L2、またはLが、接合線13の間隔Pよりも大きいため、基材シート11上の全面での繊維層12の平均密度を高くでき、繊維層12で形成される刷毛部にボリューム感を持たせることができる。また床面などの拭き取り作業を行う際に、刷毛部を形成する繊維層12が押されたときに、この繊維層は隣り合う刷毛部を形成する繊維層に重なるため、繊維層12が基材シート11側へ倒れても直ちに復元できる。
【0036】
また、刷毛部と刷毛部の間に基材シート11が露出しにくいため、基材シート11の面で直接に床などを擦ることが少なくなり、床面などとの摩擦力を低減でき、拭き取り感触を良好にできる。
【0037】
また拭き取り作業の際には、繊維層で形成された前記刷毛部により、微小な埃からパン屑まで、種々のゴミを除去・捕集できる。
【0038】
基材シート11は、例えばスパンボンド法によって形成された不織布、樹脂フィルム、合成繊維を含んだ布等、使用に耐えうる強度をもつものであればどのようなものも使用することができる。例えば、強度が高い点において、基材シート11は、芯がポリエチレンテレフタレート、鞘がポリエチレンからなる複合繊維でできたスパンボンド不織布などが使用可能である。また後に説明する図3の工程で清掃用物品10または10Aを製造する際には、前記基材シート11として少なくともY方向へ弾性伸縮性を有しているものが使用される。弾性伸縮性を有する基材シートは、捲縮繊維、または弾性伸縮性繊維で形成された不織布、または前記弾性伸縮性繊維を含む不織布、またはゴムシートなどである。
【0039】
繊維層12は、例えばトウから開繊された長繊維層(長繊維束)が使用される。長繊維層は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、レーヨンなどから製造される。この中でも、芯がポリエステル、鞘がポリエチレンの複合繊維を用いることが好ましい。その他、▲1▼芯がポリエチレンテレフタレート、鞘がポリエチレンの複合繊維、▲2▼芯と鞘がポリエチレンテレフタレートの複合繊維、▲3▼芯がポリエチレンテレフタレート鞘がポリプロピレンの複合繊維、▲4▼芯と鞘がポリプロピレンの複合繊維、▲5▼芯がポリプロピレン鞘がポリエチレンの複合繊維などが使用可能である。また、長繊維のデニールは1〜50dtexが好ましく、更に好ましくは2〜10dtexである。また、長繊維は必要に応じて捲縮させたものを使用することができる。また繊維層12が異なるデニールの繊維を含むものでもよい。この場合、基材シート11側に大きいデニールの繊維層を設け、その上に小さいデニールの繊維層を重ねてもよく、あるいはその逆であってもよい。
【0040】
また、前記繊維層12として、フィルムをテープ状にスリットし、延伸させたフラットヤーンや、スプリットヤーンと称される熱可塑性フィルムを樹脂の配向方向と直交する方向にかきわけて、繊維状となったフィルムが網目状に接合されているものを使用してもよい。その他、羊毛や毛糸等のように天然繊維を用いても良い。
【0041】
以上のべた繊維のうち、捲縮繊維が好ましい。捲縮繊維としては、予め捲縮している羊毛や、繊維形成後に捲縮処理を施すことによって形成された繊維である。捲縮繊維を用いると、繊維層が嵩高くなり、さらに捲縮部分に塵や埃を取り込み易い構造となる。特に、トウ繊維から形成された捲縮繊維が好ましい。
【0042】
また前記繊維層12の代わりに短冊状シートの束を使用することができる。この短冊状シートは、不織布やフィルム等のシート状のものを、幅寸法が極めて短い短冊状(例えば長方形)にし、その短冊状のシートを束にしたものである。
【0043】
基材シート11及び繊維層12または短冊状シートの層は、熱可塑性樹脂(熱融着性繊維)を含有することが好ましい。この場合、前記接合線13は、熱エンボスロール加工や超音波溶着手段を用いた熱融着線により形成できる。ただし、前記接合線13において基材シート11と繊維層12または短冊状シートの層を接着剤を用いて接着してもよいし、あるいは縫合して前記接合線13を形成してもよい。前記接合線13の間隔Pは5〜50mmであることが好ましい。
【0044】
なお、前記接合線13と接合線13との間の一部において、前記接合線13と接合線13との間を渡る繊維層が設けられていてもよい。この場合、前記刷毛部を形成する繊維層で細かなゴミを捕捉でき、接合線13と接合線13を渡っている繊維層と基材シート11との間に形成されるポケットで、比較的大きなゴミを捕捉することが可能である。この場合、X方向へ向けて、前記刷毛部と、前記ポケットを形成する繊維層が交互に配置されていることが好ましい。
【0045】
また前記清掃用物品10、10Aの繊維層12に、パラフィン等の鉱物油、ポリオレフィン等の合成油、シリコーン油などの油剤、埃の吸着剤、界面活性剤などを塗布することが可能であり、また消臭剤、保湿剤、抗菌剤等の物質を含有させることができる。
【0046】
図3は本発明の清掃用物品の製造方法の第1の実施の形態を示している。図3では、図1に示す清掃用物品10を製造する工程を一例として示している。
【0047】
図3に示す製造方法では、基材シート11として少なくともY方向へ弾性伸縮性を有する不織布などが使用されている。
【0048】
図3(A)では、基材シート11にY方向の張力Tを与えて、Y方向に伸長させる。このときの伸長倍率(Py/P)は最低で1.1倍以上である。好ましくは1.3倍以上、さらに好ましくは1.5倍以上である。
【0049】
伸長させた状態で基材シート11を保持し、その上に長繊維層12Yを設置する。この長繊維層12Yはトウから開繊されたもの、あるいはフラットヤーンや、前記フラットヤーンを機械的な方法によって微細に割裂させたスプリットヤーン、または前記長繊維層12Yの代わりに用いられる短冊状シート層である。前記長繊維12Yは繊維の主な延び方向がY方向となるように、前記基材シート11に重ねられる。
【0050】
そして、基材シート11を伸長させたままの状態で、基材シート11と長繊維層12Yを、接合線13により接合する。接合線13はY方向へ等間隔(Py)で且つX方向へ延びるように平行に形成される。またこの接合線13はX方向へ向けて波形状でもよく、X方向とY方向に対して傾斜していてもよく、あるいはV字形状パターンとなるように形成されてもよい。
【0051】
前記接合線13を形成した後に、隣り合う接合線13と接合線13との中点、すなわち前記間隔Pyの1/2の位置で、前記長繊維層12Yを切断する。このときの切断線C1は、X方向へ延び且つ互いに平行である。また前記切断線C1をX方向へ間欠的に形成し、接合線13と接合線13との間で、長繊維層12Yが切断されている領域と切断されていない領域とがX方向へ交互に繰り返すように形成してもよい。また接合線13が波形状やV字形状パターンに形成されている場合、前記切断線C1も同じ形状で両側の接合線13と切断線C1とが等間隔となるように形成されることが好ましい。
【0052】
前記切断の後に、基材シート11の保持を解除し、基材シート11をY方向へ自らの弾性収縮力により収縮させる。図3(B)は収縮後に完成した清掃用物品10を示している。基材シート11の収縮により接合線13の間隔はPyからPに収縮する。その結果、接合線13から一方の側に延びる繊維層12により刷毛部12Aが形成され、接合線13から他方の側に延びる繊維層12により刷毛部12Bが形成される。ここで、刷毛部12Aを形成する繊維層12の接合線13から自由端12aまでの繊維長をL1、刷毛部12Bを形成する繊維層12の接合線13から自由端12bまでの繊維長をL2とするとL1≒L2である。また刷毛部12Aと刷毛部12Bでの繊維長の合計L=L1+L2は、P<L=L1+L2である。なお、PとLとの比率は、図3(A)における基材シート11のY方向への伸長倍率により決まる。
【0053】
なお、図3(A)では、隣り合う接合線13と接合線の中点で長繊維層12Yを切断したためにL1≒L2であるが、前記切断線C1の位置を前記中心からY方向へずらすと、L1とL2が異なる長さとなる。この場合もP<L=L1+L2である。
【0054】
また、図3(A)において破線矢印で示すように、一方の接合線13にきわめて近い位置の切断線C1aで長繊維層12Yを切断すると、図2に示すように、一方の接合線13から延びる繊維層12で刷毛部12D(繊維長さL)が形成された清掃用物品10Aを得ることができる。
【0055】
なお、図3(A)の状態で基材シート11の保持を解除し、基材シート11がY方向へ収縮した後に、前記切断線C1により長繊維層12Yを切断してもよい。
【0056】
図4は本発明の清掃用物品の製造方法の第2の実施の形態を示している。この製造方法は、図1に示す清掃用物品10を製造するのに適している。
【0057】
図4(A)では非伸縮性の基材シート11の上に第1の長繊維層12Y1を設置する。この場合も長繊維層12Y1の主たる繊維の延びる方向はY方向である。そして、基材シート11と第1の長繊維層12Y1とを、第1の接合線13aにより接合する。この第1の接合線13aは互いに平行であり、そのY方向の間隔は2P(Pの2倍)である。この場合も接合線13aの向き形状は自由であり前記のように波形やV字形パターンにすることができる。
【0058】
そして、図4(A)に示すように、隣り合う第1の接合線13aと第1の接合線13aとの間で前記第1の長繊維層12Y1を切断する。この切断は、接合線13aと接合線13aのほぼ中点で行う。このとき図3(A)に示すような1本の切断線C1で長繊維層12Y1を切断してもよいが、図4(A)では、Y方向に間隔W1を開けた2つの切断線C2,C2で長繊維層12Y1を切断し、切断線C2とC2との間で長さW1分の長繊維層12Y1を除去している。その結果、図4(B)に示すように、第1の接合線13aの両側において、切断後の繊維層12により刷毛部12A1と12B1が形成される。ただしこの状態では、刷毛部12A1を形成する繊維層12の自由端12a1と、刷毛部12B1を形成する繊維層12の自由端12b1との間には、Y方向に間隔(W1)が開けられている。
【0059】
図4(C)では、前記刷毛部12A1と刷毛部12B1が形成された層の上に第2の長繊維層12Y2が載せられる。この第2の長繊維層12Y2の繊維の主な延び方向はY方向である。そして、前記刷毛部12A1の自由端12a1と、刷毛部12B1の自由端12b1との隙間において、前記第2の長繊維層12Y2と前記基材シート11とを、第2の接合線13bにより接合する。
【0060】
前記第2の接合線13bは、第1の接合線13aと平行である。また前記第2の接合線13bと第2の接合線13bとの間隔は2P(Pの2倍)であり、第1の接合線13aと第2の接合線13bの間隔はPとなるように接合線が形成される。このとき、第2の長繊維層12Y2の下に位置する刷毛部12A1の自由端12a1と、刷毛部12B1の自由端12b1との隙間(間隔W1)において前記第2の接合線13bを形成することができるため、刷毛部12A1と刷毛部12B1を形成する繊維層が、第2の長繊維層12Y2または基材シート11に接合されることがない。
【0061】
次に、図4(C)に示すように、隣り合う第2の接合線13bと第2の接合線13bとの間において、第2の長繊維層12Y2を2つの切断線C3,C3で切断する。前記切断線C3とC3はY方向に間隔W2を開けて設定され、その結果、前記間隔W2分だけ前記第2の長繊維層12Y2が除去される。前記間隔W2は、図4に示す間隔W1と等しいことが好ましいが、必ずしも等しくなくてもよい。
【0062】
その結果、図4(D)に示すように、前記第2の接合線13bの一方の側に繊維層12Y2による刷毛部12A2が形成され、他方の側に繊維層12Y2による刷毛部12B2が形成される。すなわち、第1の接合線13aと第2の接合線13bが等間隔Pを介して交互に並び、また刷毛部12A1および刷毛部12B1と、刷毛部12A2および刷毛部12B2が、Y方向へ交互に並ぶことになる。
【0063】
そして隣り合う接合線13aと接合線13bとの間では、接合線13aから刷毛部12A1が延び、接合線13bから刷毛部12B2が延びる。あるいは、隣り合う接合線13aと接合線13bとの間では、接合線13aから刷毛部12B1が延び、接合線13bから刷毛部12A2が延びる。
【0064】
前記刷毛部12A1と12A2の接合線13a又は13bから自由端12a1又は12a2までの繊維長をL1、刷毛部12B2と12B1の接合線13b又は13aから自由端12b2又は12b1までの繊維長をL2とすると、P<L=L1+L2である。そしてL1≒L2である。なお、図4(A)に示す切断長さW1と図4(C)に示す切断長さW2を変えると、前記L1とL2は等しくなくなる。
【0065】
なお、第2の接合線13bを第1の接合線13aの中点に形成せず、第2の接合線13bをいずれか一方の第1の接合線13aに近い位置に形成してもよい。
【0066】
図5は、本発明の清掃用物品の製造方法の第3の実施の形態を示している。
この製造方法では、図5(A)において、非伸縮性の基材シート11の上に長繊維層12Yまたは短冊状シートの層を、繊維がY方向へ延びるように設置する。そして、基材シート11と前記長繊維層12Yとを、接合線13により接合する。この接合線13は前記各実施の形態で説明したように、互いに平行でX方向に延びる。ただし、接合線13が波形状やV字形状パターンであってもよい。
【0067】
このとき接合線13のY方向の間隔Pyは、完成時の接合線13の間隔Pよりも長くしておく。Py/Pは1.1以上、好ましくは1.3以上、さらに好ましくは1.5以上である。
【0068】
そして、隣り合う接合線13と接合線13との中点において、切断線C1により長繊維層12Yを切断する。そして、図5(B)に示すように、隣り合う接合線13と接合線13との間で、基材シート11を上方からブレードで押込むことで重合部11aを形成し、この重合部11aを接合する。基材シート11が熱融着性である場合には、前記ブレードで押込んだ後に、重合部11aを両側から挟んで加熱加圧し溶着することで、重合部11aを固めることができる。あるいは重合部11aでシート間を接着しあるいは縫合してもよい。
【0069】
前記重合部11aを形成することで、接合線13の間隔がPyからPに縮められる。よって、隣り合う接合線13の一方から延びる刷毛部12Aの接合線13から自由端12aまでの繊維長L1と、刷毛部12Bの接合線13から自由端12bまでの繊維長L2と、接合線13の間隔Pとの関係は、P<L=L1+L2となる。
【0070】
また前記L1とL2は相違していてもよい。また、図5(A)において、一方の接合線13にきわめて接近した位置で長繊維12Yを切断線C1aで切断すると、図2に示すように、隣り合う接合線13と13の間で一方の接合線13から長さLで延びる繊維層(刷毛部12D)が設けられた清掃用物品10Aを得ることができる。
【0071】
また、図5(B)に示すように接合線13と接合線13との間の間隔をPyからPに縮めるための重合部11aを形成した後に、長繊維層12Yを切断線C1により切断してもよい。
【0072】
前記図3から図5に示した各実施の形態では、Y方向に連続して延びる基材シート11上に繊維層を接合した連続シートを形成することができる。この連続シートを形成した後に、Y方向への所定寸法となるように切断することで、個々の清掃用物品10または10Aを得ることができる。
【0073】
なお、前記繊維層12を接合した後に、繊維層を毛羽立たせる工程を設けて、各刷毛部において繊維層の自由端が基材シート11から持ち上がるようにしてもよい。
【0074】
なお、前記各実施の形態では、基材シート11の一方の面にのみ繊維層が形成されているが、基材シート11の表裏両面に繊維層が形成されていてもよい。すなわち、基材シート11の両面に設置された繊維層を前記接合線13あるいは13aと13bにより一緒に熱融着して接合し、上下両面の長繊維層を前記切断線C1、C2またはC1aで切断すれば、基材シート11の両面に刷毛部を形成することができる。
【0075】
なお、前記清掃用物品10および10Aは、清掃用モップに取付けて使用しても良いし、手で保持して拭き取り作業を行ってもよい。
【0076】
【発明の効果】
以上のように本発明の清掃用物品は、基材シート上に繊維層をボリューム感を持たせて設置することができる。また、刷毛部が基材シートの表面から外側に向って起毛した状態を維持できるため、表面に凹凸がある面のゴミも捕集できる。また、パン屑のように比較的大きなゴミであっても捕集できる。
【0077】
また本発明の清掃用物品の製造方法は、基材シート上にボリューム感のある繊維層を簡単な工程で形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の清掃用物品の部分斜視図、
【図2】本発明の第2の実施の形態の清掃用物品の部分斜視図、
【図3】(A)(B)は本発明の第1の実施の形態の清掃用物品の製造方法を工程別に示す断面図、
【図4】(A)(B)(C)(D)は本発明の第2の実施の形態の清掃用物品の製造方法を工程別に示す断面図、
【図5】(A)(B)は本発明の第3の実施の形態の清掃用物品の製造方法を工程別に示す断面図、
【図6】従来の清掃用物品を示す断面図、
【符号の説明】
10,10A 清掃用物品
11 基材シート
12 繊維層
12A,12B,12A1,12B1,12A2,12B2,12D 刷毛部
12a,12b,12a1,12b1,12a2,12b2,12d,12e 自由端
12Y 長繊維層
12Y1 第1の長繊維層
12Y2 第2の長繊維層
13 接合線
13a 第1の接合線
13b 第2の接合線
Claims (20)
- 基材シートと、前記基材シートの片面または両面に設けられた繊維層と、前記繊維層を前記基材シートに接合する接合線とが設けられた清掃用物品において、
前記接合線は互いに所定間隔を開けて形成され、隣り合う接合線の間では一方の接合線のみから繊維層が延びており、前記接合線の間隔をP、前記繊維層の前記接合線から自由端までの長さの合計をLとしたときに、P<Lであることを特徴とする清掃用物品。 - 基材シートと、前記基材シートの片面または両面に設けられた繊維層と、前記繊維層を前記基材シートに接合する接合線とが設けられた清掃用物品において、
前記接合線は互いに所定間隔を開けて形成され、前記基材シートは、前記接合線の並ぶ方向へ伸縮性を有しており、
隣り合う接合線間において、一方の接合線から延びる前記繊維層のその接合線から自由端までの長さをL1、他方の接合線から延びる前記繊維層のその接合線から自由端までの長さをL2としたときに、P<L=L1+L2であることを特徴とする清掃用物品。 - 基材シートと、前記基材シートの片面または両面に設けられた繊維層と、前記繊維層を前記基材シートに接合する接合線とが設けられた清掃用物品において、
前記接合線は互いに所定間隔を開けて形成され、隣り合う接合線の間で前記基材シートが重ね合わされて接合されて、接合線と接合線との間隔が狭められており、
隣り合う接合線間において、一方の接合線から延びる前記繊維層のその接合線から自由端までの長さをL1、他方の接合線から延びる前記繊維層のその接合線から自由端までの長さをL2としたときに、P<L=L1+L2であることを特徴とする清掃用物品。 - 前記繊維層では、繊維が一方向へ揃えられて延びている請求項1ないし3のいずれかに記載の清掃用物品。
- 前記L1とL2が等しい請求項2または3記載の清掃用物品。
- 前記L1とL2が相違する請求項2または3記載の清掃用物品。
- 前記繊維層の自由端が前記基材シートから離れる方向へ向けられて前記繊維層により刷毛部が形成されている請求項1ないし6のいずれかに記載の清掃用物品。
- 前記繊維層は、捲縮繊維で形成されている請求項1ないし7のいずれかに記載の清掃用物品。
- 前記繊維層は、トウから開繊された繊維で形成されている請求項1ないし8のいずれかに記載の清掃用物品。
- 前記繊維層は、フラットヤーンにより形成されている請求項1ないし8のいずれかに記載の清掃用物品。
- 前記繊維層は、スプリットヤーンにより形成されている請求項1ないし8のいずれかに記載の清掃用物品。
- 前記繊維層の代わりに、樹脂シートまたは不織布から短冊状に切断された短冊状シートの層が使用される請求項1ないし7のいずれかに記載の清掃用物品。
- 少なくとも次の工程を含むことを特徴とする清掃用物品の製造方法。
(a)伸縮性を有する基材シートを伸ばし、この基材シートの伸び方向に沿って延びる長繊維層を前記基材シートの表面と裏面の少なくとも一方に重ねるとともに、前記伸び方向へ間隔を開け且つ伸び方向と交叉する方向に延びる複数の接合線により、前記基材シートと前記長繊維層とを接合する工程、
(b)隣り合う接合線間で前記長繊維層を切断する工程、
(c)前記(b)の工程の前または後で、前記基材シートに与えた伸びを解除して前記基材シートを収縮させる工程。 - 少なくとも次の工程を含むことを特徴とする清掃用物品の製造方法。
(d)基材シートの表面と裏面の少なくとも一方に、一方向に揃えられた第1の長繊維層を重ね、前記第1の長繊維層の延びる方向へ間隔を開け且つ前記延びる方向と交叉する方向に延びる複数の第1の接合線により、前記基材シートと第1の長繊維層とを接合する工程、
(e)前記第1の長繊維層を、隣り合う第1の接合線間で切断する工程、
(f)前記第1の長繊維層の上に、第2の長繊維層を前記第1の長繊維層と同じ方向へ延びるように重ね、前記第1の長繊維層が切断された部分において、前記基材シートと前記第2の長繊維層とを、第2の長繊維層が延びる方向と交叉する方向に延びる第2の接合線で接合する工程、
(g) 前記第2の長繊維層を、隣り合う前記第2の接合線の間で切断し、第1の接合線と、第2の接合線のそれぞれから延びる繊維層を形成する工程。 - 少なくとも次の工程を含むことを特徴とする清掃用物品の製造方法。
(h)基材シートの表面と裏面の少なくとも一方に、一方向に揃えられた長繊維層を重ね、前記長繊維層の延びる方向へ間隔を開け且つ前記延びる方向と交叉する方向に延びる複数の接合線により、前記基材シートと前記長繊維層とを接合する工程、
(i)前記長繊維層を、隣り合う接合線間で切断する工程、
(j)前記(i)の工程の前または後で、前記基材シートを前記接合線の間隔を狭めるように接合する工程。 - 前記長繊維層を、捲縮繊維で形成する請求項13ないし15のいずれかに記載の清掃用物品の製造方法。
- 前記長繊維層として、トウから開繊された長繊維層を用いる請求項13ないし16のいずれかに記載の清掃用物品の製造方法。
- 前記長繊維層として、フラットヤーンの層を用いる請求項13ないし16のいずれかに記載の清掃用物品の製造方法。
- 前記長繊維層として、スプリットヤーンの層を用いる請求項13ないし16のいずれかに記載の清掃用物品の製造方法。
- 前記長繊維層の代わりに、樹脂シートまたは不織布から短冊状に切断された短冊状シートの層を使用する請求項13ないし15のいずれかに記載の清掃用物品の製造方法。
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