JP3622130B2 - スプリンクラ消火設備 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スプリンクラ消火設備に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の一般的なスプリンクラ消火設備に使用されるスプリンクラヘッドは、火災時の熱によって溶けるヒューズ等を作動子としているので、火災が発生して一旦スプリンクラが作動して消火水が噴出すると、給水管の元弁を人為的に閉じない限り、水の噴出は止まらなかった。そのため、例えばボヤで済んだような場合には鎮火後も消火水が噴出し続けることになり、建物や商品等への散水が続いて、水びたしとなり新たに水による被害が発生し、また消火水を無駄にするという問題があった。
そこで、かかる問題点を解決するものとして例えば特公平5−10111号公報に開示された消火装置の発明がある。
【0003】
同公報に開示された発明は、火災センサからの出力に基づいて火災発生と判断した時に開き、鎮火と判断した時に閉じるよう開閉制御される弁をスプリンクラへの配水管途中に設けたものである。
そして、同公報に開示された発明によれば、火災中だけスプリンクラから放水し、しかも鎮火と同時に放水が停止するので、特にボヤで終わったような場合に、それ以上の放水による被害の発生を防止できるというものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のように構成された従来の消火装置においては、温度センサを用いた火災センサとスプリンクラを同一の天井面に設置していたため、スプリンクラが作動して消火水が噴出した場合に、消火水が火災センサに侵入してしまい、火災の熱を正確に検出できなくなってしまう恐れがあった。特に、火災センサとして煙感知器を用いた場合には、煙感知器の大半が光電式感知器であり、LEDと受光部からなる光学部に水が侵入すると煙が侵入したのと同じ状態になって誤報をするため、誤作動の危険性が高くなり、結局火災が鎮火しても放水を停止することができない場合がある。また、火災の熱による感知器の故障もあり得る。
【0005】
また、同公報に開示された消火装置は、火災センサからの入力信号が一定の値よりも低下した場合には、弁を閉じる構成のため、例えば十分に鎮火されていないにもかかわらずスプリンクラからの放水を停止してしまう危険性があり、せっかく鎮火しかかっている火災が再燃してしまうという危険性がある。一方、再燃の危険を防止すべく火災センサからの入力信号が十分低くなってから弁を閉じることも考えられるが、このようにすれば水損の防止という目的を十分に達成することが出来なくなってしまう。
【0006】
本発明はかかる問題点を解決するためになされたものであり、スプリンクラからの放水によって火災センサが誤作動を起こすことのないスプリンクラ消火設備を得ることを目的としている。
また、火災の鎮火状況に応じて放水量を調整することによって、確実な消火と共に水損の防止を実現できるスプリンクラ消火設備を得ることを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るスプリンクラ消火設備は、給水管の先端側に取り付けられた閉鎖型スプリンクラヘッドと、該スプリンクラヘッドと同じ防護区域に設置されてアナログ信号を出力する火災感知器とを備えたスプリンクラ消火設備において、前記給水管の基端側に設けられる、開度が変更可能な開放弁と、前記火災感知器のアナログ信号の変化傾向を判定する機能を有し、該アナログ信号の変化傾向から火災状況を判定し、該判定に基づいて前記開放弁の開度を制御する制御手段とを設けたものである。
【0008】
また、前記制御手段は、前記閉鎖型スプリンクラヘッドの放水後所定時間経過時における前記火災感知器の出力と該所定時間経過時より一定時間前の前記火災感知器の出力とに基づいて、前記火災状況を判定するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一実施の形態の系統図である。図において、1は給水管としての二次側配管2の先端側に取り付けられ、天井面などに設置された複数の閉鎖型のスプリンクラーヘッド、3は二次側配管2に取り付けられて、二次側配管2内の加圧水が閉鎖型スプリンクラヘッド1から流出する時に、その流れを検知して流水信号を出力する流水検知装置、4は二次側配管2と後述の一次側配管5を仕切る例えば電動弁からなる開放弁であり、後述の制御盤9の制御信号によってその開度が調整される。なお、開放弁4は通常時は半開状態に維持されている。ここで半開状態とは、スプリンクラーヘッド1からの放水圧力が1kgf/cm2 〜2kgf/cm2 となるような開度である。
また、5は一端側が開放弁4に接続され他端側が後述の消火ポンプ6を介して水源水槽7に接続された一次側配管、6は水源水槽7の消火用水をスプリンクラーヘッド1まで送水する消火ポンプ、7は消火用水が貯留された水源水槽である。
【0011】
8はスプリンクラヘッド1が設備された防護区域におけるスプリンクラヘッド1よりも高い位置、例えばプレナムチャンバー内に設置された煙感知器である。煙感知器8はアナログ型のものであり、煙の濃度に応じたアナログ信号を制御盤からの呼出し信号に応じて所定の周期で出力する。
図2はスプリンクラヘッド1と煙感知器8の設置状態を示す図である。図2に示すように、スプリンクラヘッド1は、天井21の下面に設置され、煙感知器8はスラブ23に取り付けられ、ラビリンス等で構成された火災感知部8aがスプリンクラヘッド1の上方に位置するようになっている。このためスプリンクラヘッド1が放水する際に、水が火災感知部8aに流入することはない。
【0012】
図2に示した室内の空調方式は、プレナムチヤンバー換気方式によるもので、つまり天井21には吸い込み用のスリット25が分散して設けられ、天井裏全体が吸い込みチャンバとして利用される。天井裏には熱交換機27が設けられ、ここで空調温度等を調整した後、ダクト29を介して吹き出し口31より室内に送風する。このような換気方式のため、煙感知器8は天井に設置するよりも、プレナムチャンバ内のスラブ23に設置したほうが、室内で発生した火災の煙を確実にとらえることができるのである。
しかもスラブ23に煙感知器8を設置しているため、室内の間仕切り変更などがあっても、煙感知器8の増設および移設の必要がない。
なお、本発明は、煙感知器8の出力により開放弁4を制御するものなので、スプリンクラヘッド1の動作時に(流水信号が発生した時)、空調が停止されている場合は、空調を動かすようにすることが好ましい。
【0013】
図3は火災の発生から鎮火に至るまでの煙感知器8のアナログ信号のセンサ出力の変化の一例を示すグラフであり、縦軸がセンサ出力を示し、横軸が時間の経過を示している。図3のグラフから分かるように、センサ出力は、火災の発生から次第に高くなってゆき、予報レベル、火災レベルに達し、その後スプリンクラヘッド1からの放水による消火動作が行われるとセンサ出力は次第に低くなってゆき、鎮火後には通常のレベルに戻る。もちろん図3に示したセンサ出力の変化は一般的なものであって、火災の状況あるいは鎮火状況によってセンサ出力が多様な変化をすることは言うまでもない。
【0014】
再び図1において、9は煙感知器8のアナログ信号、流水検知装置3の流水信号が入力され、これらの入力信号に基づいて開放弁4に制御信号を出力して、開放弁4の開度を制御する制御盤である。以下、この制御盤9の機能について説明する。
制御盤9は煙感知器8のアナログ出力をポーリングにより収集している。そして、制御盤9は火災判定用のしきい値を記憶しており、煙感知器8からのアナログ出力を逐次しきい値と比較して、しきい値を越えていれば火災と判定して、火災発生地区を盤面に表示したり、地区音響装置を鳴動させたりする。
【0015】
また、制御盤9は複数の煙感知器8の各感知器ごとのアナログ出力を所定時間例えば3分間程度記憶できるようになっており、所定時間経過時のアナログ出力値と所定時間経過時の一定時間前(例えば30秒前)のアナログ出力値とを比較して、信号の変化傾向を判定をする機能を有している。なお、信号の変化傾向とは所定時間(例えば3分間)の終了時点とその前30秒時点のセンサ出力を比較して終了時点のレベルがその前30秒時点のレベルよりも高い場合を上昇傾向とし、その逆の場合を下降傾向とするものである。
【0016】
表1は制御盤9に入力される煙感知器8のセンサ出力、及びその変化の傾向の組合せからなる4つのパターンと、これら各パターンに基づく火災状況判定、及び該判定に基づいて制御盤9が出力する出力信号の関係を示すものである。
【0017】
【表1】
【0018】
以下、表1に基づいて制御盤9の火災状況の判定と、該判定に基づく出力信号について説明する。
センサ出力が火災レベル以上であり、かつセンサ出力の変化が上昇傾向にあるパターン1の場合は、火災が拡大状況にあると判定し、制御盤9は最大の消火能力を発揮すべく高圧放水信号を出力する。高圧放水信号とはスプリンクラヘッドの放水圧力が4kgf/cm2 以上、例えば5kgf/cm2 〜7kgf/cm2 となるように開放弁4の開度を調整する信号である。 センサ出力が火災レベル以上であり、かつセンサ出力の変化が下降傾向にあるパターン2の場合は、火災が縮小状況にあると判定し、低圧放水信号を出力する。低圧放水信号とはスプリンクラーヘッド1からの放水圧力が1kgf/cm2 〜2kgf/cm2 となるように開放弁4の開度を調整する信号である。
【0019】
センサ出力が火災レベル未満、予報レベル以上であり、かつセンサ出力の変化が上昇又は下降傾向にあるパターン3の場合は、火災が待機状況にあると判定し、断続放水信号を出力する。断続放水信号とは、低圧放水と放水停止を所定時間(例えば30秒)間隔で繰り返すように開放弁4の開度を調整する信号である。センサ出力が予報レベル未満であり、かつ信号の変化が下降傾向にあるパターン4の場合は、火災が鎮火状況にあると判定し、放水を停止すべく停止信号を出力する。ただし、この鎮火であるとの判定が放水開始から最初の所定時間経過後である場合には、再燃を予防するために、断続放水信号を出力する。
なお、これらの放水は所定時間、例えば、3分間行われ、制御盤9はこの3分間における火災感知器8のセンサ出力をもとに、火災状況の判定を行い、次回の放水形態を決定する。
【0020】
図4は1個の閉鎖型スプリンクラヘッド1における放水圧力(kgf/cm2 )と放水量(リットル/min)との関係を示したグラフである。このグラフから分かるように、低圧放水(放水圧力1kgf/cm2 〜2kgf/cm2 )の場合の放水量は80リットル/min〜110リットル/minであり、また高圧放水(放水圧力5kgf/cm2 〜7kgf/cm2 )の場合の放水量は180リットル/min〜210リットル/minである。したがって、高圧放水の場合には低圧放水の場合の約2倍の水量が放水されることになる。このことは、高圧放水は低圧放水に比較して消火能力は高いが、水損の危険や水の無駄が大きいと言える。一方、低圧放水は高圧放水に比較して消火能力は低いが水損の危険や水の無駄は少ないと言える。
【0021】
図5は図1に示された本実施の形態における制御盤9の処理フローチャートである。以下、図5に基づいて制御盤9の処理及び、図1に示した各構成機器の動作を説明する。なお、制御盤9の処理に関しては本発明に関連する処理のみを説明することとする。
制御盤9は、前述したように、煙感知器8からのアナログ信号をポーリングにより収集している。
制御盤9は流水検知装置3からの流水信号が入力されたかどうかを判断し(S11)、流水信号の入力があったと判断したときは、流水信号の入力から所定時間(例えば3分間)経過したかどうかを判断する(S13)。この間、スプリンクラヘッド1からは通常時、開放弁4は半開状態にあるため低圧放水が行われている。
【0022】
所定時間が経過すると、煙感知器8のセンサ出力、及びその変化の傾向に基づいて火災状況の判定を行う(S15)。判定は前述した表1に示したように行うが、判定の結果火災が拡大状況にあると判定した場合には、開放弁4に対して高圧放水信号を出力する(S17)。開放弁4は高圧放水信号が入力されると弁の開度を大きくし、スプリンクラヘッド1は消火能力の高い高圧放水を行う。その後、再び所定時間が経過したかどうかを判断し(S13)、所定時間が経過したときには再び火災状況の判定を行う(S15)。
S15の判定で火災が縮小状況にあると判定した場合には、開放弁4に対して低圧放水信号を出力する(S19)。開放弁4は低圧放水信号が入力されると弁の開度を半開状態にし(既に半開状態にあるときはその状態を維持し)、スプリンクラヘッド1は水損の危険と水の無駄の少ない低圧放水を行う。その後、所定時間の経過を判断して(S13)、再び火災状況の判断を行うのは(S15)、前述のS17後の処理と同様である。
【0023】
S15の判定で火災が待機状況にあると判定した場合には、開放弁4に対して断続放水信号を出力する(S21)。断続放水信号が入力されると、開放弁4は半開状態と全閉状態を所定時間(例えば30秒)間隔で繰り返し、スプリンクラヘッド1は低圧放水と放水停止を所定時間(例えば30秒)間隔で繰り返す。この断続放水信号が入力された場合の動作は、低圧放水の場合よりもさらに水損の危険と水の無駄が少ない。
その後、所定時間の経過を判断して(S13)、再び火災状況の判断を行うのは(S15)、前述のS17後の処理と同様である。
【0024】
S15の判定で火災が鎮火状況にあると判定した場合には、S13の所定時間の経過が放水開始後(流水信号入力後)の最初の所定時間かどうかを判断し(S23)、最初の所定時間であると判断した場合には、S15で待機状態と判断した場合と同様に断続放水信号を出力する(S21)。このように最初の所定時間であると判断した場合に、断続放水信号を出力するのは、この場合には放水開始から所定時間(例えば3分間)しか放水していないため火災の再燃を考慮して、再燃の発生を防止して完全消火を行うためである。なお、断続放水信号を出力した後の動作処理は上述の待機状態と判断した場合と同様である。
S23の判断で、最初の所定時間でないと判断した場合には、開放弁4に対して停止信号を出力する(S25)。開放弁4は停止信号が入力されると、弁を閉じスプリンクラヘッド1からの放水が停止する。
【0025】
このように、本実施の形態によれば、火災の鎮火状況に応じて、開放弁4の開度調整を4つのパターンに分けてきめ細かく行っているので、火災の鎮火状況に応じて放水量を調整することができ、確実な消火と共に水損及び水の無駄の防止を実現できる。
なお、本実施の形態においては、火災感知器として煙感知器を例に挙げて説明したが、煙感知器以外の熱感知器であってもよい。
また、開放弁4の開度を決定するに際しては、所定のしきい値との比較だけではなく、火災感知器のセンサ出力の傾向も考慮しているので、火災状況に則した放水を行うことができる。
【0026】
【発明の効果】
以上のように本発明においては、制御手段が給水管の先端側に取り付けられた閉鎖型スプリンクラヘッドと同じ防護区域に設置され火災感知器のアナログ信号の変化傾向を判定する機能を有し、該アナログ信号の変化傾向から火災状況を判定し、該判定に基づいて給水管の基端側に設けられる開放弁の開度を制御するようにしたので、火災の鎮火状況に応じて放水量を調整することができ、確実な消火と共に水損の防止を実現できる。
【0027】
また、制御手段が閉鎖型スプリンクラヘッドの放水後所定時間経過時における火災感知器の出力と該所定時間経過時より一定時間前の火災感知器の出力とに基づいて、前記火災状況を判定するようにしたので、時間の経過による火災感知器の変化傾向から火災の拡大、縮小又は待機という火災状況を判定することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態の系統図である。
【図2】本発明の一実施の形態における煙感知器とスプリンクラヘッドとの配置関係の説明図である。
【図3】煙感知器のアナログ出力の変化の一例を示すグラフである。
【図4】スプリンクラヘッドの放水圧力と放水量との関係を示すグラフである。
【図5】本発明の一実施の形態における制御盤の処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 閉鎖式スプリンクラヘッド
2 二次側配管
3 流水検知装置
4 開放弁
5 一次側配管
8 煙感知器
9 制御盤
Claims (2)
- 給水管の先端側に取り付けられた閉鎖型スプリンクラヘッドと、該スプリンクラヘッドと同じ防護区域に設置されてアナログ信号を出力する火災感知器とを備えたスプリンクラ消火設備において、
前記給水管の基端側に設けられる、開度が変更可能な開放弁と、
前記火災感知器のアナログ信号の変化傾向を判定する機能を有し、該アナログ信号の変化傾向から火災状況を判定し、該判定に基づいて前記開放弁の開度を制御する制御手段とを設けたことを特徴とするスプリンクラ消火設備。 - 前記制御手段は、前記閉鎖型スプリンクラヘッドの放水後所定時間経過時における前記火災感知器の出力と該所定時間経過時より一定時間前の前記火災感知器の出力とに基づいて、前記火災状況を判定することを特徴とする請求項1記載のスプリンクラ消火設備。
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