JP3620157B2 - 車両制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の旋回時の安定性を確保するための車両制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、車両の旋回時には、図7に示す如く、車輪の進行方向に対してスリップ角α(横すべり角)が生じると共に、車輪としてのタイヤに転がり抵抗Fxと横方向力(以下、横力という)Fyが発生する。そして、図8に示すように、車輪の横力Fyは、車輪に加わる減速方向の力(制動力)が大きくなるほど、また、車輪に加わる加速方向の力(駆動力)が大きくなるほど、小さくなる。
【0003】
よって、例えば、車両の旋回走行中にブレーキ操作が行われた時(所謂、旋回制動時)には、車輪の横力Fyが低下して、車両がスピンする傾向がある。
そこで、このような旋回制動時のスピン傾向を防止するための技術として、例えば特開平1−178060号公報には、ブレーキ液通路の中途部にブレーキ液の液圧を制御するための電磁弁を設け、車両が旋回制動状態であることを検出すると、上記電磁弁を駆動して、旋回中心内方側の車輪のブレーキ液圧を減少させた状態に保持し、これにより、車輪に加わる制動力を低下させて、車輪の横力Fyを増加させるようにする技術が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に開示の技術は、ブレーキ液通路に設けた電磁弁を駆動することにより、車輪の横力Fyを増加させるものであるため、車両の旋回制動状態が長時間続くような緩制動時には、上記電磁弁が連続通電されることとなり、電磁弁の性能が劣化したり、或いは、発熱によって電磁弁のコイル同士が溶着してしまう虞があり、信頼性を向上させるのには限度がある。
【0005】
一方、図9に示すように、車輪の転がり抵抗Fxは、スリップ角αに応じて大きくなるが、このように転がり抵抗Fxが大きくなると、車輪に加わる制動力が大きくなったのと同じこととなり、車輪の横力Fyは小さくなる。
よって、ブレーキ操作が行われていない通常走行時において、例えば図8に示すように、エンジン及び変速機等からなる動力系から車輪(詳しくは、駆動輪)に伝達される駆動力が比較的小さい値K1であった場合に、車両の旋回状態の度合が急になって(スリップ角αが大きくなって)転がり抵抗Fxが大きくなると、矢印J1の如く車輪の駆動力K1が転がり抵抗Fxに負けて、横力Fyが△Fy1だけ減少してしまい、この結果、旋回走行時の車両挙動が不安定になってしまう。
【0006】
ところが、上記公報に開示の技術は、車輪のブレーキ液圧を減少させて、車輪の横力Fyを増加させるものであるため、上述の如くブレーキ操作が行われていない通常の旋回走行時には、車両の挙動を安定させることができなかった。
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、車両の旋回時の挙動を安定させるのに好適な車両制御装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段、及び発明の効果】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の車両制御装置においては、旋回状態検出手段が、車両の旋回状態を検出し、基本スロットル開度設定処理手段が、アクセル開度に基づきエンジンのスロットルバルブの基本開度である基本スロットル開度を演算する。また、駆動力判定手段が、前記演算された基本スロットル開度が、所定の基準値よりも小さいか否かを判定する。そして、駆動力増加手段が、旋回状態検出手段により検出される旋回状態が所定の度合を越えており、且つ、駆動力判定手段により基本スロットル開度が基準値よりも小さいと肯定判定されている場合に、スロットルバルブの開度を基本スロットル開度から補正量だけ増加させることにより、車両の動力系から車両の駆動輪に伝達される駆動力を増加させる。
【0008】
ここで、旋回状態とは、車両が旋回走行している時の旋回の度合である。そして、旋回状態検出手段は、例えば、請求項9に記載のように、車両の横加速度,車両の左右の車輪速度,及び車両の操舵角(ハンドルの操作角度)のうち、少なくとも何れか1つの情報に基づき車両の旋回状態を検出するように構成することができる。
【0009】
また、車両の動力系とは、車両の駆動輪に駆動力を伝達するためのエンジン及び変速機等からなる部分である。
【0010】
このような請求項1の車両制御装置によれば、車両の旋回状態が所定の度合を越えており、且つ、アクセル開度に基づき演算される基本スロットル開度が基準値よりも小さい場合に、スロットルバルブの開度が基本スロットル開度から補正量だけ増加されて、動力系から駆動輪に伝達される駆動力が増加される。
よって、駆動輪に制動力が加わっていない旋回走行時において、運転者がアクセルペダルを所定量踏み込んでおり、図8の矢印J1で示したように車輪の駆動力が転がり抵抗Fxに負けて横力Fyが減少することが無い場合には、駆動輪に伝達される駆動力は増加されず、駆動輪に伝達されている駆動力が転がり抵抗Fxに負けて横力Fyが減少するような場合にだけ、駆動輪への駆動力を増加させて車輪の横力Fyを増加させることができる。従って、旋回走行時の車両挙動を確実に安定させることができる。
【0011】
特に、請求項2の車両制御装置では、駆動力増加手段が、スロットルバルブの開度を前記基準値よりも大きくなるように増加させる。
【0012】
このように、本発明の車両制御装置によれば、車両の旋回時の挙動を確実に安定させることができ、しかも、前述した従来装置のようにブレーキ液通路に設けた電磁弁を駆動する、といった手法を用いることなく、上記効果を得ることができるため、装置の信頼性を大幅に向上させることができる。
【0013】
次に、請求項3に記載の車両制御装置では、車両の旋回状態を検出する旋回状態検出手段に加えて、車両の駆動輪に制動力が加わっているか否かを検出する制動検出手段を備えている。そして、駆動力増加手段が、旋回状態検出手段により検出される旋回状態が所定の度合を越えており、且つ、制動検出手段により駆動輪に制動力が加わっていると検出されている場合に、その制動力に応じて該制動力が大きいほど、車両の動力系から駆動輪に伝達される駆動力を大きく増加させる。
【0014】
尚、駆動輪に加わる制動力とは、車両のブレーキペダルが操作された場合にブレーキ装置によって加えられる制動力はもとより、運転者がアクセルペダルを放した際にブレーキ装置を自動的に作動させる所謂自動ブレーキや、運転者がアクセルペダルを放した際のエンジンブレーキ(特に、変速機の変速比が大きい時の急激なエンジンブレーキ)によって、駆動輪に加えられる減速方向の力を含むものである。
【0015】
そして、制動検出手段は、車両のブレーキペダルが操作されたことを検出することにより、駆動輪に制動力が加わっているか否かを検出するように構成することができる。また、制動検出手段は、例えば、アクセルペダルが踏込み状態から急に放された時のエンジン回転数と変速機の変速比とが所定値以上であった場合に、駆動輪に制動力が加わっていると検出するように構成することもできる。
【0016】
このような請求項3の車両制御装置によれば、車両の旋回状態が所定の度合を越えており且つ駆動輪に制動力が加わっている場合、即ち、車両が旋回制動の状態にある場合にだけ、動力系から駆動輪に伝達される駆動力が所定量増加される。
【0017】
よって、車両の旋回制動時において、その旋回状態が所定の度合を越えると、車両の動力系から駆動輪に伝達される駆動力が増加されて、図8の矢印J2に示すように、駆動輪に加わる減速方向の力が小さくなり、その分(図8の△Fy2参照)、駆動輪の横力Fyが増加するため、旋回制動時の車両挙動を安定させることができ、また、駆動輪に制動力が加わっていない旋回走行時においては、駆動輪への駆動力が増加されないため、熟練した運転技術を有する者が車両を旋回走行させた場合に、その運転者の意に反して駆動力が増加されることがない。
【0018】
そして特に、請求項3の車両制御装置において、駆動力増加手段は、駆動輪に加えられている制動力に応じて該制動力が大きいほど、駆動輪に伝達される駆動力を大きく増加させるため、旋回制動時の車両挙動を一層確実に安定させることができる。つまり、図8に示したように、車輪の横力Fyは車輪に加わる制動力(減速方向の力)が大きくなるほど小さくなるため、駆動輪に加わる制動力が大きいほど、駆動輪に伝達される駆動力を大きく増加して、駆動輪の横力Fyを常に大きな値に保つようにしている。
【0019】
次に、請求項4に記載の車両制御装置も、車両の旋回状態を検出する旋回状態検出手段を備えている。
【0020】
更に、請求項4に記載の車両制御装置は、駆動輪に制動力が加わっているか否かを検出する制動検出手段と、動力系から駆動輪に伝達されている駆動力が所定値以下であるか否かを判定する駆動力判定手段と、駆動力増加手段とを備えている。
【0021】
そして、駆動力増加手段は、旋回状態検出手段により検出される旋回状態が所定の度合を越えており、且つ、制動検出手段により駆動輪に制動力が加わっていないと検出されていると共に駆動力判定手段により肯定判定されている場合に(動力系から駆動輪に伝達されている駆動力が所定値以下である場合に)、動力系から駆動輪に伝達される駆動力を第1の所定量だけ増加させ、また、旋回状態検出手段により検出される旋回状態が所定の度合を越えており、且つ、制動検出手段により駆動輪に制動力が加わっていると検出されている場合に、動力系から駆動輪に伝達される駆動力を第1の所定量よりも大きい第2の所定量だけ増加させる。
【0022】
つまり、請求項4に記載の車両制御装置では、駆動輪に制動力が加わっていない通常の旋回走行時よりも、旋回制動時の方が車輪の横力Fyは大きく低下するという点に着目し、駆動輪に制動力が加わっておらず動力系から駆動輪に伝達されている駆動力が所定値以下である場合の旋回走行時の駆動力増加量(上記第1の増加量)よりも、旋回制動時の駆動力増加量(上記第2の増加量)の方を、大きくするようにしている。
【0023】
よって、このような請求項4に記載の車両制御装置によれば、旋回制動時と制動を伴わない旋回走行時とのあらゆる旋回時の車両挙動を適切に安定させることができる。
【0024】
尚、制動検出手段は、請求項6に記載の如く、車両のブレーキペダルが操作されたことを検出することにより、駆動輪に制動力が加わっているか否かを検出するように構成すれば、駆動輪に制動力が加わっていることを簡単且つ確実に検出することができる。
【0025】
次に、請求項5に記載の車両制御装置では、請求項4に記載の車両制御装置において、駆動力増加手段は、旋回状態検出手段により検出される旋回状態が所定の度合を越えており、且つ、制動検出手段により駆動輪に制動力が加わっていると検出されている場合に、駆動輪に加えられている制動力に応じて該制動力が大きいほど、駆動輪に伝達される駆動力を大きく増加させる。
【0026】
つまり、図8に示したように、車輪の横力Fyは車輪に加わる制動力(減速方向の力)が大きくなるほど小さくなるため、請求項3の車両制御装置と同様に、駆動輪に加わる制動力が大きいほど、駆動輪に伝達される駆動力を大きく増加して、駆動輪の横力Fyを常に大きな値に保つようにしている。よって、このような請求項5に記載の車両制御装置によれば、旋回制動時の車両挙動を一層確実に安定させることができる。
【0027】
尚、請求項3〜6の車両制御装置において、駆動力増加手段は、変速機の変速比を変更することで駆動輪に伝達される駆動力を増加させても良いが、請求項7に記載のように、エンジンの出力を増加させることにより、駆動輪に伝達される駆動力を増加させるようにすれば、駆動輪に伝達される駆動力を簡単な構成で増加させることができる。尚、エンジンの出力を増加させるには、エンジンの吸気系に設けられたスロットルバルブの開度を調節したり、或いは、エンジンの点火時期や燃料噴射量を調節するといった構成を採ることができる。
次に、請求項8に記載の車両制御装置では、請求項1ないし請求項7の何れかに記載の車両制御装置において、駆動力増加手段は、旋回状態検出手段により検出される車両の旋回状態に応じて該旋回状態が急なほど、駆動輪に伝達される駆動力を大きく増加させる。
【0028】
つまり、図8及び図9に示したように、車両の旋回状態が急になるほど(スリップ角αが大きくなるほど)、車輪の転がり抵抗Fxが大きくなり、これに伴って車輪の横力Fyが小さくなるため、請求項8に記載の車両制御装置では、車両の旋回状態が急なほど、駆動輪に伝達される駆動力を大きく増加して、駆動輪の横力Fyを常に大きな値に保つようにしている。よって、このような請求項8に記載の車両制御装置によれば、車両の旋回時の挙動を一層確実に安定させることができる。
【0030】
一方また、請求項9に記載の車両制御装置では、請求項1ないし請求項8の何れかに記載の車両制御装置において、旋回状態検出手段が、車両の横加速度,車両の左右の車輪速度,及び車両の操舵角のうち、少なくとも何れか1つの情報に基づき、車両の旋回状態を検出するように構成されている。そして、このような請求項9に記載の車両制御装置によれば、車両の旋回状態を簡単に検出することができる。
【0031】
尚、駆動力増加手段は、旋回状態検出手段が車両の横加速度に基づき旋回状態を検出する場合には、検出される横加速度が所定値以上になった場合に、駆動輪に伝達される駆動力を増加させれば良く、また、旋回状態検出手段が左右の車輪速度に基づき旋回状態を検出する場合には、検出される左右の車輪速度の差が所定値以上になった場合に、駆動輪に伝達される駆動力を増加させれば良い。また更に、旋回状態検出手段が車両の操舵角に基づき旋回状態を検出する場合には、駆動力増加手段は、その検出される操舵角が所定値以上になった場合に、駆動輪に伝達される駆動力を増加させれば良い。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。尚、本発明は、下記の実施の形態に何ら限定されることなく、本発明の技術的範囲に属する限り、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0033】
この実施の形態は、図1に示す様に、エンジン(内燃機関)2を動力源とするフロントエンジン・リヤドライブ(FR)方式の車両についてのものである。
図に示す如く、エンジン2の吸気通路4には、吸入空気の脈動を抑えるサージタンク4aが形成され、その上流には、スロットル駆動モータ10により開閉されるスロットルバルブ12が設けられている。このスロットルバルブ12はアクセル6によって直接開閉されるものではなく、所謂リンクレススロットルである。
【0034】
アクセル6及びスロットルバルブ12には、それぞれの開度を検出するアクセル開度センサ14及びスロットル開度センサ16が設けられており、これら各センサからの検出信号はスロットル制御回路20に入力されている。
エンジン2へ燃料を供給する燃料噴射弁24は、公知の内燃機関制御回路26からの燃料噴射指令に基づき作動する。燃料噴射指令は、エンジン2の運転状態に適合して決定されるもので、サージタンク4aの圧力を検出する吸気圧センサ28をはじめとする各種センサからの情報を、内燃機関制御回路26の燃料噴射指令プログラムに基づき処理することで作成される。
【0035】
スロットル制御回路20には、上述のアクセル開度センサ14及びスロットル開度センサ16の他に、エンジン回転速度センサ30、従動輪速度センサ32FL,32FR、駆動輪速度センサ40、変速比センサ42、旋回状態検出手段としての横加速度センサ44、及び制動検出手段としてのブレーキスイッチ46等からの検出信号も入力されるようになっている。そして、スロットル制御回路20は、これらの入力信号に基づいてスロットル駆動モータ10を駆動し、スロットルバルブ12の開度を制御する処理を実行している。
【0036】
ここで、エンジン回転速度センサ30は、エンジン2のクランク軸2aの回転速度を検出するものであり、内燃機関制御回路26による燃料噴射指令の作成にも利用される。
従動輪速度センサ32FL,32FRは、左右従動輪(即ち、左右前輪)22FL,22FRの回転速度をそれぞれ検出するためのセンサであり、トラクションコントロール等を実施する場合は、その検出信号が車両の車体速度の推定に利用される。
【0037】
駆動輪速度センサ40は、左右駆動輪(即ち、左右後輪)22RL,22RRの平均回転速度(駆動輪速度)を検出するためのセンサで、クランク軸2aの回転をプロペラシャフト34及びディファレンシャルギヤ36を介して左右駆動輪22RL,22RRに伝達する変速機38の出力軸に設けられる。
【0038】
変速比センサ42は、変速機38の変速比を検出するためのものであり、駆動輪速度センサ40と同様に変速機38に備えられている。
また、横加速度センサ44は公知の半導体式Gセンサであり、この横加速度センサ44により、車両旋回時に車体に加わる横加速度が検出される。
【0039】
そして、ブレーキスイッチ46は、図示しないブレーキペダルが踏込操作されるとON状態となるスイッチであり、このブレーキスイッチ46がONしたことを検出することにより、各車輪22FL〜22RRに制動力が加えられていることが検出される。
【0040】
次に、スロットル制御回路20について更に詳しく説明する。
スロットル制御回路20は、CPU,ROM,RAM等を備えるマイクロコンピュータを中心に構成されており、ROMには、エンジン回転速度センサ30によって検出されるエンジン2の回転速度と、アクセル開度センサ14によって検出されるアクセル6の開度とに応じて、スロットルバルブ12の基本開度(以下、基本スロットル開度という)θB を算出するための「基本スロットル開度マップ」(図示省略)が記憶されている。
【0041】
また、スロットル制御回路20のROMには、図2(a)に示すように、横加速度センサ44によって検出される横加速度Gと、エンジン2の出力増加量△TE との関係を表す「エンジン出力増加量マップ」が記憶されている。
尚、図2(a)における2本の実線で示す様に、エンジン出力増加量マップとしては、車輪22FL〜22RRに制動力が加わっていない通常の旋回走行時に用いられる第1の関係M1と、車輪22FL〜22RRに制動力が加わっている旋回制動時に用いられる第2の関係M2との、2つの関係M1,M2が用意されている。そして、第1の関係M1は、横加速度Gが第1の低レベル判定値GL1を越えた場合に出力増加量△TE が一定の第1所定量E1となるように設定されており、第2の関係M2は、横加速度Gが第2の低レベル判定値GL2を越えた場合に出力増加量△TE が上記第1所定量E1よりも大きい一定の第2所定量E2となるように設定されている。
【0042】
また更に、スロットル制御回路20のROMには、図2(b)に示す様に、エンジン2の出力増加量△TE と当該出力増加量△TE を達成するのに必要なスロットルバルブ12の開度の補正量(以下、スロットル開度補正量という)△θとの関係を表す「スロットル開度補正量マップ」も記憶されている。図2(b)から分かる様に、スロットル開度補正量△θは、エンジン2の出力増加量△TE が大きくなるほど、大きな値に設定されるようになっている。
【0043】
尚、図2(a),(b)はイメージであって、実際の各マップは、これらの図の関係を数値データ化したものである。
次に、スロットル制御回路20がスロットルバルブ12の開度を制御するために実行する処理について説明する。
【0044】
まず、スロットル制御回路20は、図示しない基本スロットル開度設定処理を定期的に実行することにより、エンジン回転速度センサ30によって検出されるエンジン2の回転速度と、アクセル開度センサ14によって検出されるアクセル6の開度とに基づき、前述した「基本スロットル開度マップ」を用いて、スロットルバルブ12の基本スロットル開度θB を演算する。
【0045】
そして、スロットル制御回路20は、後述する旋回走行時出力補正処理(図3)と旋回制動時出力補正処理(図4)とを、夫々、所定時間毎に実行することにより、上記演算した基本スロットル開度θB を車両の旋回状態(本実施の形態では横加速度G)に応じて補正して、スロットルバルブ12の目標スロットル開度θT を求める。
【0046】
そして更に、スロットル制御回路20は、図示しない駆動制御処理を定期的に実行することにより、スロットル開度センサ16により検出されるスロットルバルブ12の実際の開度が、上記求めた目標スロットル開度θT となるように、スロットル駆動モータ10を駆動する。尚、この駆動制御処理では、スロットルバルブ12の開度を制御するに当り、後述の旋回走行時出力補正処理と旋回制動時出力補正処理とによって夫々求めた目標スロットル開度θT のうち、値が大きい方の目標スロットル開度θT を優先して用いる。
【0047】
そこで以下、スロットル制御回路20が実行する、本実施の形態の特徴部分である旋回走行時出力補正処理と旋回制動時出力補正処理とについて、図3,図4のフローチャートに基づき説明する。
まず、図3は、旋回走行時出力補正処理を表すフローチャートである。尚、この処理は、車輪22FL〜22RRに制動力が加わっていない通常の旋回走行時に、エンジン2の出力を車両の旋回状態(横加速度G)に応じて増加させるために実行されるものである。
【0048】
図3に示すように、スロットル制御回路20が旋回走行時出力補正処理の実行を開始すると、まず、ステップ(以下、単に「S」と記す)110にて、ブレーキスイッチ46のON・OFF状態に基づき車両が制動中であるか否かを判定する、制動検出手段としての処理を実行する。
【0049】
そして、S110にて制動中ではないと判定した場合(つまり、ブレーキスイッチ46がOFFの場合)には、S120に進んで、横加速度センサ44により検出される車体の横加速度Gが、前述した第1の低レベル判定値GL1より大きい値に設定された第1の高レベル判定値GH1(>GL1)よりも大きいか否かを判定し、横加速度Gが第1の高レベル判定値GH1よりも大きければ、S130に進んで、旋回走行時制御フラグFLG1 に「1」をセットする。
【0050】
また、S120にて横加速度Gが第1の高レベル判定値GH1よりも大きくないと判定した場合には、S140に移行して、横加速度Gが第1の低レベル判定値GL1よりも小さいか否かを判定し、横加速度Gが第1の低レベル判定値GL1よりも小さければ、続くS150にて、旋回走行時制御フラグFLG1 に「0」をセットする(旋回走行時制御フラグFLG1 をクリアする)。
【0051】
そして、S130及びS150の内の何れかの処理を実行した場合、或いは、S140にて、横加速度Gが第1の低レベル判定値GL1よりも小さくないと判定した場合(即ち、横加速度Gが第1の高レベル判定値GH1以下で且つ第1の低レベル判定値GL1以上である場合)には、S160に進む。
【0052】
S160では、旋回走行時制御フラグFLG1 が「1」であるか否かを判定し、「1」であれば、S170に進み、その時点における車体の横加速度Gに基づき、図2(a)に示したエンジン出力増加量マップの第1の関係M1を用いて、エンジン2の出力増加量△TE を演算し、その値を旋回走行時出力増加量△TE1としてRAMに記憶する。尚、本実施の形態では、図2(a)に示した様に、旋回走行時出力増加量△TE1として第1所定量E1が記憶される。
【0053】
そして、続くS180にて、現在RAMに記憶されている旋回走行時出力増加量△TE1に基づき、図2(b)に示したスロットル開度補正量マップを用いて、スロットル開度補正量△θを演算し、その値を旋回走行時開度補正量△θ1 としてRAMに記憶する。
【0054】
そして更に、続くS190にて、前述の基本スロットル開度設定処理(図示省略)で演算した最新の基本スロットル開度θB が、所定の基準値θref よりも小さいか否かを判定し、基本スロットル開度θB が基準値θref よりも小さい場合には、S200に進む。
【0055】
尚、上記基準値θref は、スロットルバルブ12の開度が当該値θref よりも小さい場合のエンジン出力では、駆動輪22RL,22RRに伝達される駆動力が旋回走行時に生じる転がり抵抗Fxに負けて車輪の横力Fyが低下してしまう、といった値である。そして、本実施の形態では、上記S190の判定により、動力系から駆動輪22RL,22RRに伝達されている駆動力が所定値以下であるか否かを判定する駆動力判定手段としての処理を行っている。また、図9に示したように、車輪の転がり抵抗Fxは、車両の旋回状態が急になるほど(スリップ角αが大きくなるほど)大きくなるため、本実施の形態では、上記基準値θref を、その時点における車体の横加速度Gが大きい場合ほど、大きな値に設定するようにしている。
【0056】
そして、S200では、現在の基本スロットル開度θB に、S180で記憶した旋回走行時開度補正量△θ1 を加算して、その加算後の値(θB +△θ1 )をスロットルバルブ12の目標スロットル開度θT としてRAMに記憶する。すると、前述の如く別途実行される駆動制御処理(図示省略)により、スロットルバルブ12の開度が上記目標スロットル開度θT に制御され、エンジン2の出力が旋回走行時出力増加量△TE1だけ増加されることとなる。
【0057】
そして、このS200の処理を実行した後、当該旋回走行時出力補正処理を一旦終了する。
一方、S160にて、旋回走行時制御フラグFLG1 が「1」でないと判定した場合には、S210に移行する。そして、前回のS180で旋回走行時開度補正量△θ1 を求めるのに使用した旋回走行時出力増加量△TE1(n−1) に所定の減衰率D1(<1)を乗じ、その乗算後の値を、今回の旋回走行時出力増加量△TE1としてRAMに記憶した後、S180に進む。よって、S160で旋回走行時制御フラグFLG1 が「1」でないと判定した場合には、旋回走行時出力増加量△TE1が、当該旋回走行時出力補正処理の実行毎に、第1所定量E1から減衰率D1ずつ減少していき、それに応じて、S180でRAMに記憶される旋回走行時開度補正量△θ1 も徐々に減少することとなる。
【0058】
また、前述したS110にて、制動中であると判定した場合(つまり、ブレーキスイッチ46がONの場合)には、S220に移行する。そして、このS220にて、旋回走行時出力増加量△TE1,旋回走行時開度補正量△θ1 ,及び旋回走行時制御フラグFLG1 の各々に「0」をセットして初期化を行い、その後、S200に進む。よって、S110にて制動中であると判定されると、少なくとも当該旋回走行時出力補正処理によっては、基本スロットル開度θB が、そのまま目標スロットル開度θT として設定されることとなる。
【0059】
つまり、旋回走行時出力補正処理では、車輪22FL〜22RRに制動力が加わっていない通常の旋回走行時において、車体の横加速度Gが第1の高レベル判定値GH1を越えており、且つ、基本スロットル開度θB が基準値θref よりも小さいと判定すると(S110:NO,S120:YES,S190:YES)、基本スロットル開度θB に旋回走行時開度補正量△θ1 を加算した値を、スロットルバルブ12の目標スロットル開度θT とし、これにより、エンジン2の出力を旋回走行時出力増加量△TE1(第1所定量E1)だけ増加させるようにしている(S160:YES,S170〜S200)。そして、その後、横加速度Gが第1の低レベル判定値GL1よりも小さくなると(S140:YES)、旋回走行時開度補正量△θ1 を求めるための旋回走行時出力増加量△TE1を所定の減衰率D1で減少させ、目標スロットル開度θT を、基本スロットル開度θB に徐々に戻すようにしている(S160:NO,S210,S180〜S200)。
【0060】
次に、図4は、旋回制動時出力補正処理を表すフローチャートである。尚、この処理は、車輪22FL〜22RRに制動力が加わっている旋回制動時に、エンジン2の出力を車両の旋回状態(横加速度G)に応じて増加させるために実行されるものである。
【0061】
図4に示すように、スロットル制御回路20が旋回制動時出力補正処理の実行を開始すると、まずS310にて、前述したS110の場合と同様に、ブレーキスイッチ46のON・OFF状態に基づき車両が制動中であるか否かを判定する、制動検出手段としての処理を実行する。
【0062】
そして、S130にて制動中であると判定した場合(つまり、ブレーキスイッチ46がONの場合)には、S320に進んで、横加速度センサ44により検出される車体の横加速度Gが、前述した第2の低レベル判定値GL2より大きい値に設定された第2の高レベル判定値GH2(>GL2)よりも大きいか否かを判定し、横加速度Gが第2の高レベル判定値GH2よりも大きければ、S330に進んで、旋回制動時制御フラグFLG2 に「1」をセットする。
【0063】
また、S320にて横加速度Gが第2の高レベル判定値GH2よりも大きくないと判定した場合には、S340に移行して、横加速度Gが第2の低レベル判定値GL2よりも小さいか否かを判定する。そして、このS340にて横加速度Gが第2の低レベル判定値GL2よりも小さいと判定した場合、或いは、前述のS310にて制動中ではないと判定した場合には、S350に進んで、旋回制動時制御フラグFLG2 に「0」をセットする(旋回制動時制御フラグFLG2 をクリアする)。
【0064】
そして、S330及びS350の内の何れかの処理を実行した場合、或いは、S340にて、横加速度Gが第2の低レベル判定値GL2よりも小さくないと判定した場合(即ち、横加速度Gが第2の高レベル判定値GH2以下で且つ第2の低レベル判定値GL2以上である場合)には、S360に進む。
【0065】
S360では、旋回制動時制御フラグFLG2 が「1」であるか否かを判定し、「1」であれば、S370に進み、その時点における車体の横加速度Gに基づき、図2(a)に示したエンジン出力増加量マップの第2の関係M2を用いて、エンジン2の出力増加量△TE を演算し、その値を旋回制動時出力増加量△TE2としてRAMに記憶する。尚、本実施の形態では、図2(a)に示した様に、旋回制動時出力増加量△TE2として、第1所定量E1よりも大きい第2所定量E2が記憶される。
【0066】
そして、続くS380にて、現在RAMに記憶されている旋回制動時出力増加量△TE2に基づき、図2(b)に示したスロットル開度補正量マップを用いて、スロットル開度補正量△θを演算し、その値を旋回制動時開度補正量△θ2 としてRAMに記憶する。
【0067】
そして更に、続くS390にて、現在の基本スロットル開度θB に、S380で記憶した旋回制動時開度補正量△θ2 を加算して、その加算後の値(θB +△θ2 )をスロットルバルブ12の目標スロットル開度θT としてRAMに記憶する。すると、前述の如く別途実行される駆動制御処理(図示省略)により、スロットルバルブ12の開度が上記目標スロットル開度θT に制御され、エンジン2の出力が旋回制動時出力増加量△TE2だけ増加されることとなる。
【0068】
そして、このS390の処理を実行した後、当該旋回制動時出力補正処理を一旦終了する。
一方、S360にて、旋回制動時制御フラグFLG2 が「1」でないと判定した場合には、S400に移行する。そして、前回のS380で旋回制動時開度補正量△θ2 を求めるのに使用した旋回制動時出力増加量△TE2(n−1) に所定の減衰率D2(<1)を乗じ、その乗算後の値を、今回の旋回制動時出力増加量△TE2としてRAMに記憶した後、S380に進む。
【0069】
よって、S360で旋回制動時制御フラグFLG2 が「1」でないと判定した場合には、旋回制動時出力増加量△TE2が、当該旋回制動時出力補正処理の実行毎に、第2所定量E2から減衰率D2ずつ減少していき、それに応じて、S380でRAMに記憶される旋回制動時開度補正量△θ2 も徐々に減少することとなる。そして、旋回制動時開度補正量△θ2 の値が「0」となった後は、S390の処理により、基本スロットル開度θB が、そのまま目標スロットル開度θT として設定されることとなる。
【0070】
つまり、旋回制動時出力補正処理では、車輪22FL〜22RRに制動力が加わっている旋回制動時において、車体の横加速度Gが第2の高レベル判定値GH2を越えていると判定すると(S310:YES,S320:YES)、基本スロットル開度θB に旋回制動時開度補正量△θ2 を加算した値を、スロットルバルブ12の目標スロットル開度θT とし、これにより、エンジン2の出力を旋回制動時出力増加量△TE2(第2所定量E2)だけ増加させるようにしている(S360:YES,S370〜S390)。そして、その後、制動中でなくなるか、或いは、横加速度Gが第2の低レベル判定値GL2よりも小さくなると(S310:NO,S340:YES)、旋回制動時開度補正量△θ2 を求めるための旋回制動時出力増加量△TE2を所定の減衰率D2で減少させ、目標スロットル開度θT を、基本スロットル開度θB に徐々に戻すようにしている(S360:NO,S400,S380,S390)。
【0071】
尚、本実施の形態では、旋回走行時出力補正処理(図3)のS120〜S180,S200〜S220と、旋回制動時出力補正処理(図4)のS320〜S400とが、駆動力増加手段としての処理に相当している。
次に、旋回走行時出力補正処理及び旋回制動時出力補正処理による作用について、図5,図6を用いて説明する。
例えば図5に示すように、運転者によりブレーキ操作が行われておらず(ブレーキスイッチ46がOFFであり)、且つ、基本スロットル開度θB が基準値θref よりも小さい場合に、車体の横加速度Gが第1の高レベル判定値GH1を越えると、旋回走行時出力補正処理のS170〜S200が実行されて、基本スロットル開度θB に旋回走行時開度補正量△θ1 を加算した値が、スロットルバルブ12の目標スロットル開度θT として設定され、これにより、エンジン2の出力が旋回走行時出力増加量△TE1(第1所定量E1)だけ増加される。
【0072】
すると、駆動輪22RL,22RRに伝達される駆動力が増加するため、図8の矢印J1に示したように駆動輪22RL,22RRの駆動力が転がり抵抗Fxに負けて駆動輪22RL,22RRの横力Fyが減少してしまう、といった現象を防止でき、車両の旋回走行時の挙動を安定させることができる。
【0073】
そして、横加速度Gが第1の低レベル判定値GL1を下回ると、旋回走行時出力補正処理のS210及びS180〜S200が実行されて、目標スロットル開度θT が、基本スロットル開度θB にまで徐々に減少していき、通常のスロットルバルブ制御に戻ることとなる。
【0074】
一方、例えば図6に示すように、車体の横加速度Gが第2の高レベル判定値GH2を越えている状態で、運転者によりブレーキ操作が行われると(ブレーキスイッチ46がONになると)、旋回制動時出力補正処理のS370〜S390が実行されて、基本スロットル開度θB に旋回制動時開度補正量△θ2 を加算した値が、スロットルバルブ12の目標スロットル開度θT として設定され、これにより、エンジン2の出力が旋回制動時出力増加量△TE2(第2所定量E2)だけ増加される。
【0075】
すると、この場合も駆動輪22RL,22RRに伝達される駆動力が増加するため、図8の矢印J2に示すように、駆動輪22RL,22RRに加わる減速方向の力が小さくなり、その分(図8の△Fy2参照)、駆動輪22RL,22RRの横力Fyが増加する。よって、車両の旋回制動時の挙動を安定させることができる。
【0076】
そして、横加速度Gが第2の低レベル判定値GL2を下回ると、旋回制動時出力補正処理のS400,S380,及びS390が実行されて、目標スロットル開度θT が、基本スロットル開度θB にまで徐々に減少していき、通常のスロットルバルブ制御に戻ることとなる。
【0077】
以上詳述したように、本実施の形態では、ブレーキ操作が行われていない旋回走行時において、車体の横加速度Gが第1の高レベル判定値GH1を越えており、且つ、基本スロットル開度θB が基準値θref よりも小さくて、駆動輪22RL,22RRの駆動力が転がり抵抗Fxに負けて横力Fyが減少してしまうような場合、或いは、ブレーキ操作が行われている旋回制動時において、車体の横加速度Gが第2の高レベル判定値GH2を越えている場合に、エンジン2の出力を増加して、駆動輪22RL,22RRに伝達される駆動力を増加させている。
【0078】
よって、本実施の形態によれば、旋回制動時と制動を伴わない旋回走行時とのあらゆる旋回時における駆動輪22RL,22RRの横力Fyを、大きな値に保つことができ、この結果、車両の挙動を確実に安定させることができる。しかも、前述した特開平1−178060号公報に開示の従来装置のようにブレーキ液通路に設けた電磁弁を駆動する、といった手法を用いることなく、上記効果を得ることができるため、装置の信頼性を大幅に向上させることができる。
【0079】
また、本実施の形態では、制動を伴わない旋回走行時におけるエンジン2の出力増加量△TE (旋回走行時出力増加量△TE1:第1所定量E1)よりも、旋回制動時におけるエンジン2の出力増加量△TE (旋回制動時出力増加量△TE2:第2所定量E2)の方が大きい値となるようにしている。これは、駆動輪22RL,22RRに制動力が加わっていない通常の旋回走行時よりも、旋回制動時の方が、駆動輪22RL,22RRに加わる減速方向の力が大きく、それに応じて車輪の横力Fyが大きく低下するからである。
【0080】
よって、このような本実施の形態によれば、車両旋回時の挙動をより適切に安定させることができる。
ところで、上記実施の形態において、旋回走行時出力補正処理と旋回制動時出力補正処理とで用いるエンジン出力増加量マップは、出力増加量△TE が横加速度Gの値に拘らず一定量E1,E2となるものであったが、図2(a)における一点鎖線と二点鎖線で示す様に、エンジン出力増加量マップとして、車体の横加速度Gが大きいほど、出力増加量△TE が大きい値に設定されるものを用いるようにしても良い。そして、このように構成すれば、車両の旋回状態が急になるほど大きくなる車輪の転がり抵抗Fxに応じて、駆動輪22RL,22RRに伝達される駆動力を適切に増加させることができ、車両の旋回時の挙動を一層確実に安定させることができる。
【0081】
また、上記実施の形態において、駆動輪22RL,22RRに加わっている制動力を、例えばブレーキ装置のブレーキ液圧やブレーキペダルの踏込み圧力等に基づき検出し、旋回制動時出力補正処理のS370にて、上記検出した制動力に応じて、該制動力が大きいほど、エンジン2の出力増加量△TE (旋回制動時出力増加量△TE2)を大きい値に設定するように構成しても良い。そして、このように構成すれば、旋回制動時の車両挙動を一層確実に安定させることができる。
【0082】
尚、この場合、旋回制動時出力補正処理のS370では、例えば、図2(a)のエンジン出力増加量マップを用いて演算した旋回制動時出力増加量△TE2に、制動力に比例した係数を乗ずるようにしても良いし、また、制動力に応じた旋回制動時出力増加量△TE2を直接求めるためのマップを、ROMに別途用意しておくようにしても良い。
【0083】
一方、上記実施の形態では、車両の旋回状態を横加速度Gによって検出するものであったが、従動輪速度センサ32FL,32FRによって検出される左右従動輪(左右前輪)22FL,22FRの回転速度や、車両のハンドル(図示省略)の操舵角に基づいて、車両の旋回状態を検出するように構成しても良い。
【0084】
また、上記実施の形態における旋回走行時出力補正処理(図3)と、旋回制動時出力補正処理(図4)との両方を実行するのではなく、何れか一方の処理だけを実行するようにしても良い。そして、旋回走行時出力補正処理だけを実行する場合には、S110の判定を行うことなく(即ち、制動中か否かに拘らず)、S120以降の処理を実行するようにしても良い。
【0085】
一方更に、上記実施の形態において、車両の旋回状態の度合を判定するための、第1の低レベル判定値GL1及び第1の高レベル判定値GH1と、第2の低レベル判定値GL2及び第2の高レベル判定値GH2とは、互いに同じ値であっても良いし、また、それぞれ異なる値であっても良い。
【0086】
また、上記実施の形態は、フロントエンジン・リヤドライブ(FR)方式の車両についてのものであったが、本発明は、フロントエンジン・フロントドライブ(FF)方式の車両や、全ての車輪を駆動輪として備える四輪駆動車にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態に用いるシステムの概略構成図である。
【図2】実施の形態に用いるエンジン出力増加量マップ及びスロットル開度補正量マップの説明図である。
【図3】実施の形態における旋回走行時出力補正処理を表すフローチャートである。
【図4】実施の形態における旋回制動時出力補正処理を表すフローチャートである。
【図5】旋回走行時出力補正処理の作用を説明する説明図である。
【図6】旋回制動時出力補正処理の作用を説明する説明図である。
【図7】車両旋回時に車輪に発生する転がり抵抗Fxと横方向力(横力)Fyを説明する説明図である。
【図8】車輪に加わる加速・減速方向の力と横力Fyとの関係を説明する説明図である。
【図9】車輪のスリップ角αと転がり抵抗Fx及び横力Fyとの関係を説明する説明図である。
【符号の説明】
2…エンジン 4…吸気通路 6…アクセル
10…スロットル駆動モータ 12…スロットルバルブ
14…アクセル開度センサ 16…スロットル開度センサ
20…スロットル制御回路 22FL,22FR…従動輪(前輪)
22RL,22RR…駆動輪(後輪) 24…燃料噴射弁
26…内燃機関制御回路 28…吸気圧センサ
30…エンジン回転速度センサ 32FL,32FR…従動輪速度センサ
38…変速機 40…駆動輪速度センサ 42…変速比センサ
44…横加速度センサ 46…ブレーキスイッチ
Claims (9)
- 車両の旋回状態を検出する旋回状態検出手段と、
アクセル開度に基づきエンジンのスロットルバルブの基本開度である基本スロットル開度を演算する基本スロットル開度設定処理手段と、
前記演算された基本スロットル開度が、所定の基準値よりも小さいか否かを判定する駆動力判定手段と、
前記旋回状態検出手段により検出される旋回状態が所定の度合を越えており、且つ、前記駆動力判定手段により前記基本スロットル開度が前記基準値よりも小さいと肯定判定されている場合に、前記スロットルバルブの開度を前記基本スロットル開度から補正量だけ増加させることにより、前記車両の動力系から前記車両の駆動輪に伝達される駆動力を増加させる駆動力増加手段と、
を備えたことを特徴とする車両制御装置。 - 請求項1に記載の車両制御装置において、
前記駆動力増加手段は、
前記スロットルバルブの開度を前記基準値よりも大きくなるように増加させること、
を特徴とする車両制御装置。 - 車両の旋回状態を検出する旋回状態検出手段と、
前記車両の駆動輪に制動力が加わっているか否かを検出する制動検出手段と、
前記旋回状態検出手段により検出される旋回状態が所定の度合を越えており、且つ、前記制動検出手段により前記駆動輪に制動力が加わっていると検出されている場合に、前記制動力に応じて該制動力が大きいほど、前記車両の動力系から前記駆動輪に伝達される駆動力を大きく増加させる駆動力増加手段と、
を備えていることを特徴とする車両制御装置。 - 車両の旋回状態を検出する旋回状態検出手段と、
前記車両の駆動輪に制動力が加わっているか否かを検出する制動検出手段と、
前記車両の動力系から前記駆動輪に伝達されている駆動力が所定値以下であるか否かを判定する駆動力判定手段と、
前記旋回状態検出手段により検出される旋回状態が所定の度合を越えており、且つ、前記制動検出手段により前記駆動輪に制動力が加わっていないと検出されていると共に前記駆動力判定手段により肯定判定されている場合に、前記動力系から前記駆動輪に伝達される駆動力を第1の所定量だけ増加させ、前記旋回状態検出手段により検出される旋回状態が所定の度合を越えており、且つ、前記制動検出手段により前記駆動輪に制動力が加わっていると検出されている場合に、前記動力系から前記駆動輪に伝達される駆動力を前記第1の所定量よりも大きい第2の所定量だけ増加させる駆動力増加手段と、
を備えたことを特徴とする車両制御装置。 - 請求項4に記載の車両制御装置において、
前記駆動力増加手段は、
前記旋回状態検出手段により検出される旋回状態が所定の度合を越えており、且つ、前記制動検出手段により前記駆動輪に制動力が加わっていると検出されている場合に、前記制動力に応じて該制動力が大きいほど、前記駆動輪に伝達される駆動力を大きく増加させるように構成されていること、
を特徴とする車両制御装置。 - 請求項3ないし請求項5の何れかに記載の車両制御装置において、
前記制動検出手段は、
前記車両のブレーキペダルが操作されたことを検出することにより、前記駆動輪に制動力が加わっているか否かを検出するように構成されていること、
を特徴とする車両制御装置。 - 請求項3ないし請求項6の何れかに記載の車両制御装置において、
前記駆動力増加手段は、前記車両に搭載されたエンジンの出力を増加させることにより、前記駆動輪に伝達される駆動力を増加させるように構成されていること、
を特徴とする車両制御装置。 - 請求項1ないし請求項7の何れかに記載の車両制御装置において、
前記駆動力増加手段は、前記旋回状態検出手段により検出される前記車両の旋回状態に応じて該旋回状態が急なほど、前記駆動輪に伝達される駆動力を大きく増加させるように構成されていること、
を特徴とする車両制御装置。 - 請求項1ないし請求項8の何れかに記載の車両制御装置において、
前記旋回状態検出手段は、
前記車両の横加速度,前記車両の左右の車輪速度,及び前記車両の操舵角のうち、少なくとも何れか1つの情報に基づき、前記車両の旋回状態を検出するように構成されていること、
を特徴とする車両制御装置。
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