JP3618895B2 - 長繊維ウェブの製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スパンボンド法による長繊維不織布の製造工程において、紡出された糸条群を引き取りネット上に均質に捕集・載置してウェブとする方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
所定の間隔をおいて設けられた多数の紡糸口金から紡出されたマルチフィラメント糸条群(以下、特に断らない限り、「マルチフィラメント糸条」を単に「糸条」と称する。)を、口金下に一列の直線状に並設されたエジェクター群により引き取り、開繊した後にネット上に捕集・載置して展延し、これによって広幅のウェブを製造する、所謂スパンボンド法については、従来より数多くの提案がなされている。
【0003】
このスパンボンド法によれば、糸条群を捕集・載置するネットの幅方向に一列に配置されたエジェクターから糸条群を空気流とともに噴出させると、隣接するエジェクターから噴出される空気流同士が干渉を起こし、これによってネット上に糸条群を均一に載置することができず、得られるウェブ幅が不均一となり、ウェブに目付斑を惹起する。
【0004】
特に、一列に配されたエジェクター群の両端に位置するエジェクターでは、片方にしか隣接エジェクターが存在しないため、噴出された糸条群は、エジェクターが存在しない幅方向の外側へ向かって流れる傾向がある。このため、ウェブの幅が広がり、ウェブの目付が小さくなるという問題があり、ウェブの両端の所謂耳部を大きくカットしなければならず、非常に歩留まりが悪いものとなる。
【0005】
このような問題を解決するために、例えば、特開昭62−177271号公報には、糸条を引き取るエジェクターの糸条噴出口の高さをエジェクター毎に変化させると共に、該糸条噴出口が互いに悪影響を及ぼさないように隔離壁を設けることでネット上に捕集・載置するウェブの均一化を図る試みが提案されている。しかしながら、エジェクターの糸条噴出口とウェブ捕集面との距離を変更すると、確かに隣接するエジェクターからの噴出空気流同士の干渉は軽減されるものの、エジェクターから噴出される各糸条の広がり幅も同時に変わってしまい、結果として広幅でかつ目付の均一なウェブを得ることが極めて難しくなる。
【0006】
また、特開昭62−170570号公報には、隣接するエジェクター同士から噴出される空気流の干渉を軽減するために、糸条を衝突させるための衝突板の角度を各糸条毎に変え、隣接する噴出空気流の干渉を抑制することが提案されている。しかしながら、このような衝突板の角度を各糸条毎に変更する方法においても、依然として隣接するエジェクターから噴出される糸条群を均一にネット上に捕集・載置することが極めて困難である。
【0007】
更に、より重要な事には、前述の特開昭62−177271号公報及び特開昭62−170570号公報には、ネット状に捕集・載置するウェブの耳部の目付を一定に制御する方法に関しては、何等の提案もなされていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上に述べた従来の諸問題に鑑み、スパンボンド法によりながらも、目付が均一な広幅のウェブを安定して得ることができ、しかも、ウェブの耳部での目付を良好に制御でき、これによって耳部を大幅にカットすることのない歩留まりの良いウェブを製造する方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
ここに、請求項1に係る本発明によれば、一列に並設された溶融紡糸口金群から紡出されたマルチフィラメント糸条群を、各口金のそれぞれに対応した下方に設けられたエジェクター群で引き取り、引き取った各マルチフィラメント糸条を帯電させ、帯電させた各マルチフィラメント糸条を各衝突板に衝突させた後、移動するネット上に該マルチフィラメント糸条群を展延して長繊維ウェブを製造する方法において、
前記の衝突板のそれぞれに衝突する各マルチフィラメント糸条を挟むようにして、各マルチフィラメント糸条の進行方向に沿って、各衝突板の糸条衝突面に対して平行かつ「ハの字」状に末広がりに圧縮空気を吹き出すことを特徴とする長繊維ウェブの製造方法が提供される。
【0010】
また、請求項2に係る本発明によれば、エジェクター群の中、両端に配されたエジェクターによって引き取られる各マルチフィラメント糸条に対しては、圧縮空気を吹き出す方向が該マルチフィラメント糸条を挟んで左右非対称の「ハの字」状であって、
その他のエジェクターによって引き取られる各マルチフィラメント糸条に対しては、圧縮空気を吹き出す方向が該マルチフィラメント糸条を挟んで左右対称の「ハの字」状である請求項1記載の長繊維ウェブの製造方法が提供される。
【0011】
さらに、請求項3に係る本発明によれば、前記の圧縮空気を吹き出す方向を調整自在とした請求項1又は請求項2記載の長繊維ウェブの製造方法が提供される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の態様について、図面を参照しながら、その作用と共に詳細に説明する。
【0013】
図1及び図2は、本発明の長繊維ウェブを得るための方法を説明するための斜視図及び側面図をそれぞれ示す。該図において、1は溶融紡糸口金(図示せず)のそれぞれに対応してその下方に配されたエジェクター、2は溶融紡糸口金(図示せず)から紡出されたマルチフィラメント糸条、3は衝突板、4a及び4bは糸条(2)を挟んで「ハの字」状に圧縮空気を吹き出すための二つのノズル、5a及び5bは該二つのノズル(4a及び4b)から吹き出される圧縮空気、6は糸条群を展延するための移動ネットをそれぞれ表わす。なお、これらの図は、本発明を簡便に説明するために、一つのエジェクターとこれに関係する部材を一ユニットとして採りあげて記載したものであって、実際は、これらのユニットが多数隣接して一列に設けられている。また、上方からエジェクター(1)に入る紡出糸条も省略してある。
【0014】
以上のように構成された装置において、本発明の一大特徴とする所は、エジェクター(1)によって引き取られた各糸条(2)を各衝突板(3)に衝突させるに際して、糸条(2)を挟んで該衝突板(3)の糸条衝突面に対して、平行かつ「ハの字」状に圧縮空気(5a及び5b)を吹き付けることにある。
【0015】
本発明においては、溶融紡糸口金から紡出するためにポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等の熱可塑性ポリマーからなる糸条を対象としており、単繊維の形態としては、単独のポリマーで構成された繊維、2種以上のポリマーが混合されたブレンド繊維、2種以上のポリマー成分が複合されたコンジュゲート繊維等を使用することができる。
【0016】
ここで、溶融紡糸口金(図示せず)から紡出された糸条は、エジェクター(1)から噴出される空気流の作用によって引き取られ、引き取られた糸条(2)は、コロナ放電装置(図示せず)によって帯電させられ、噴出された空気流と共に衝突板(3)に衝突させられ、開繊させられる。このとき、衝突板(3)は、衝突の際の衝撃力を利用して繊維を開繊すると共に、移動するネット状に糸条(2)を展延・載置してウェブとするに際して、該ウェブのタテ/ヨコ比を調整するという役割を果たす。ただし、糸条(2)を衝突板(3)に余りにも強く当てると、フィラメント間の絡みが激しくなって、不織布として製品化したときの地合いが悪化するので、糸条(2)が入射する時の角度(α)としては、30〜45°が適切である。
【0017】
以上のような状況において、もし、本発明の圧縮空気を吹き出すノズル(4a及び4b)を欠けば、互いに隣接するエジェクターから噴出される空気の干渉により、移動するネット上に展延・載置して形成されるウェブのタテ/ヨコ比を最適に調整すことが、全くできなくなることは明らかであろう。何故ならば、高速でエジェクター(1)から排出され、衝突板(3)に当たって流れる空気流は、その流れの近傍において、その静圧が低くなるため周囲から空気を巻き込み、これらの周囲から巻き込まれる空気流の影響によってフィラメント群が、幅方向に広がろうとする作用が減殺されてしまうからである。
【0018】
そこで、本発明の二つのノズル(4a及び4b)の衝突板(3)に対する配置が極めて重要な意味を持ってくるのである。このため、本発明の二つのノズル(4a及び4b)では、衝突板(3)に平行して、糸条(2)が衝突板上を走行するその後方から圧縮空気を噴射する角度が「ハの字」状の末広がりになるように設けてある。これによって、二つのノズル(4a及び4b)から噴射された末広がりの圧縮空気の作用によって、エジェクター(1)から噴出されて衝突板(3)に衝突して開繊した糸条(2)は、良好に圧縮空気(5a及び5b)の吹き出し方向に拡幅されることとなるのである。
【0019】
以上に述べた作用を知れば、フィラメント群の平均的進行方向と、圧縮空気(5a及び5b)の吹き出し方向とがそれぞれなす角度(θa及びθb)については、一列に配された両端のエジェクターを除いて30〜60°と対称にすることが好適であることを容易に理解できるであろう。すなわち、前記の角度(θa及びθb)が30°未満であれば、開繊させた糸条の拡幅効果が十分でなく、また、60°を越えると、隣接する開繊糸条との干渉が生じるからである。
【0020】
さらに、前記の二つのノズル(4a及び4b)と開繊糸条の衝突面の中心との間の距離(L1)、及び開繊されたフィラメント群の平均進行位置から該ノズル(4a及び4b)の圧縮空気吹き出し位置との間の距離(L2)に関しては、10〜30mm程度の距離を置くことがノズル(4a及び4b)にフィラメントが引っ掛からないようにする上で好ましい。
【0021】
なお、両端に配されたエジェクターの場合には、前記のノズル(4a及び4b)から圧縮空気を吹き出す方向を糸条を挟んで左右非対称の「ハの字」状とすることが必要である。このとき、両端に位置する圧縮空気吹き出しノズルの圧縮空気吹き出し角度に関しては、−30〜30°とするのが適当である。ただし、L1及びL2に関しては、その他のエジェクターの場合と同様である。
【0022】
また、前記の二つのノズル(4a及び4b)から吹き出す圧縮空気の流量は、開繊糸条を拡幅する上で重要であって、製造条件によって変化はするが、一つのノズル当たり0.01〜0.1Nm3/分とすることが通常は好ましい。この圧縮空気の流量は、該ノズルの圧縮空気噴出口の断面積、流量制御弁等の流量調整手段によって調整されるため、適宜必要に応じて好ましい調整手段を適用すれば良い。また、該ノズルの圧縮空気噴出口の断面形状は、特に丸型に限定する理由はなく、矩形等の非円形形状であっても良い。
【0023】
次に、エジェクター(1)の糸条出口から衝突板(3)迄の距離(L)に関しては、100〜300mmが適切である。ここで、Lが100mm未満であると、糸条を帯電させるためのコロナ放電装置を設置するのが難しい、と言う問題を生じる。また、300mmを超えると、エジェクター(1)から空気と共に噴出される糸条の速度が下がってしまい、衝突板(3)に衝突して糸条が十分に開繊されないばかりか、コロナ放電によって糸条は高度に静電気を帯電しているので、その静電気の影響で糸条が衝突板(3)に付着してしまう、と言う問題を生じる。
【0024】
以上に述べたような本発明の方法は、当初目付が均一なウェブを製造することを目的として実施したが、次のような場合には、予想外の効果が現れた。すなわち、本発明の糸条を製造するための原料として、高融点ポリマーと低融点ポリマーとからなる複合コンジュゲート繊維を紡糸する場合には、紡糸温度を高融点ポリマーに合わせて設定する必要があるため、低融点ポリマー側から一部熱分解した低分子量成分が放出される。このような低分子量熱分解物は、ウェブを長期にわたって製造する過程で、衝突板のフィラメント群が当たる位置の周辺に付着堆積し、やがて単繊維がこの体積物に引っ掛かり始める。このため、衝突板の表面を定期的に清掃する必要があったが、本発明では、高速空気が衝突板の表面に沿って常時流れることとなるので、清掃が全く不要になった。
【0025】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本実施例での測定方法は、以下の通りである。
【0026】
(1)ウェブの目付変動率
ウェブの耳部を除去した後、得られた一定幅のウェブを幅方向に20等分し、長さ20cmに裁断して、それぞれの重量を測定する。そして、測定した試料の標準偏差を平均値で除した値を%で表わし、ウェブの目付変動率とする。
【0027】
(2) ウェブの耳部幅
ウェブの両端部において、目付がウェブ中央部の平均値の70%以下である場所を、ウェブの耳部と定義し、その部分の幅の平均値を耳部幅とする。
【0028】
[実施例1]
極限粘度が0.6のポリエチレンテレフタレートを290℃で溶融し、孔数48の溶融紡糸口金を一列に10個設けた紡糸ヘッドから、紡糸温度285℃で、吐出量を口金当たり50g/分として吐出させた。吐出後、冷却風により冷却しつつ、口金下1000mmの位置に100mmの等ピッチで配した10個のエジェクターにより、5000m/分の速度で引き取った。その後、コロナ放電装置に−22KVの電圧を印可して、コロナ放電により糸条を帯電させた後、エジェクターの出口下200mmに配された衝突板に入射角α=40°で衝突させ糸条を開繊させた。このとき、各衝突板には、口径が2mmの圧縮空気吹き出しノズルを2個配した。その配置位置は、10個の全エジェクター共に、L1=20mm、L2=10mmであり、配置角度に関しては、両端のエジェクターを除いた8個のエジェクターについては、θa=θb=45°、両端の2個のエジェクターに関しては、左右両端に位置するそれぞれの角度を0°、中央側に位置するそれぞれの角度を55°とした。吹き出す圧縮空気の流量は、各ノズル毎に0.04〜0.05Nm3/分の範囲で調整した。そして、開繊拡幅した糸条群をエジェクター出口の下方500mmに配置した、20m/分で移動するネット上に展延・載置しウェブとし、表面温度が150℃の仮圧着ロールで固定し、ウェブの目付変動率と耳部幅を測定した。
【0029】
[比較例1]
実施例1と全く同一の条件で紡糸を行い、衝突板に圧縮空気吹き出しノズルを取り付けない以外は、実施例1と同じ方法でウェブを作製し、ウェブの目付変動率と耳部幅を測定した。このとき得られた結果を実施例1の結果と合わせて、表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明の方法によれば、幅方向に均一な目付のウェブが得られ、更に、ウェブ耳部の目付調整が容易にでき、これによってウェブの製造歩留まりが著しく向上する、という極めて顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を説明するための装置を例示した斜視図である。
【図2】本発明の方法を説明するための装置を例示した側面図である。
【符号の説明】
1 エジェクター
2 マルチフィラメント糸条
3 衝突板
4a,4b 圧縮空気吹き出しノズル
5a,5b 圧縮空気
θa,θb 圧縮空気の吹き出し角度
【発明の属する技術分野】
本発明は、スパンボンド法による長繊維不織布の製造工程において、紡出された糸条群を引き取りネット上に均質に捕集・載置してウェブとする方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
所定の間隔をおいて設けられた多数の紡糸口金から紡出されたマルチフィラメント糸条群(以下、特に断らない限り、「マルチフィラメント糸条」を単に「糸条」と称する。)を、口金下に一列の直線状に並設されたエジェクター群により引き取り、開繊した後にネット上に捕集・載置して展延し、これによって広幅のウェブを製造する、所謂スパンボンド法については、従来より数多くの提案がなされている。
【0003】
このスパンボンド法によれば、糸条群を捕集・載置するネットの幅方向に一列に配置されたエジェクターから糸条群を空気流とともに噴出させると、隣接するエジェクターから噴出される空気流同士が干渉を起こし、これによってネット上に糸条群を均一に載置することができず、得られるウェブ幅が不均一となり、ウェブに目付斑を惹起する。
【0004】
特に、一列に配されたエジェクター群の両端に位置するエジェクターでは、片方にしか隣接エジェクターが存在しないため、噴出された糸条群は、エジェクターが存在しない幅方向の外側へ向かって流れる傾向がある。このため、ウェブの幅が広がり、ウェブの目付が小さくなるという問題があり、ウェブの両端の所謂耳部を大きくカットしなければならず、非常に歩留まりが悪いものとなる。
【0005】
このような問題を解決するために、例えば、特開昭62−177271号公報には、糸条を引き取るエジェクターの糸条噴出口の高さをエジェクター毎に変化させると共に、該糸条噴出口が互いに悪影響を及ぼさないように隔離壁を設けることでネット上に捕集・載置するウェブの均一化を図る試みが提案されている。しかしながら、エジェクターの糸条噴出口とウェブ捕集面との距離を変更すると、確かに隣接するエジェクターからの噴出空気流同士の干渉は軽減されるものの、エジェクターから噴出される各糸条の広がり幅も同時に変わってしまい、結果として広幅でかつ目付の均一なウェブを得ることが極めて難しくなる。
【0006】
また、特開昭62−170570号公報には、隣接するエジェクター同士から噴出される空気流の干渉を軽減するために、糸条を衝突させるための衝突板の角度を各糸条毎に変え、隣接する噴出空気流の干渉を抑制することが提案されている。しかしながら、このような衝突板の角度を各糸条毎に変更する方法においても、依然として隣接するエジェクターから噴出される糸条群を均一にネット上に捕集・載置することが極めて困難である。
【0007】
更に、より重要な事には、前述の特開昭62−177271号公報及び特開昭62−170570号公報には、ネット状に捕集・載置するウェブの耳部の目付を一定に制御する方法に関しては、何等の提案もなされていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上に述べた従来の諸問題に鑑み、スパンボンド法によりながらも、目付が均一な広幅のウェブを安定して得ることができ、しかも、ウェブの耳部での目付を良好に制御でき、これによって耳部を大幅にカットすることのない歩留まりの良いウェブを製造する方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
ここに、請求項1に係る本発明によれば、一列に並設された溶融紡糸口金群から紡出されたマルチフィラメント糸条群を、各口金のそれぞれに対応した下方に設けられたエジェクター群で引き取り、引き取った各マルチフィラメント糸条を帯電させ、帯電させた各マルチフィラメント糸条を各衝突板に衝突させた後、移動するネット上に該マルチフィラメント糸条群を展延して長繊維ウェブを製造する方法において、
前記の衝突板のそれぞれに衝突する各マルチフィラメント糸条を挟むようにして、各マルチフィラメント糸条の進行方向に沿って、各衝突板の糸条衝突面に対して平行かつ「ハの字」状に末広がりに圧縮空気を吹き出すことを特徴とする長繊維ウェブの製造方法が提供される。
【0010】
また、請求項2に係る本発明によれば、エジェクター群の中、両端に配されたエジェクターによって引き取られる各マルチフィラメント糸条に対しては、圧縮空気を吹き出す方向が該マルチフィラメント糸条を挟んで左右非対称の「ハの字」状であって、
その他のエジェクターによって引き取られる各マルチフィラメント糸条に対しては、圧縮空気を吹き出す方向が該マルチフィラメント糸条を挟んで左右対称の「ハの字」状である請求項1記載の長繊維ウェブの製造方法が提供される。
【0011】
さらに、請求項3に係る本発明によれば、前記の圧縮空気を吹き出す方向を調整自在とした請求項1又は請求項2記載の長繊維ウェブの製造方法が提供される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の態様について、図面を参照しながら、その作用と共に詳細に説明する。
【0013】
図1及び図2は、本発明の長繊維ウェブを得るための方法を説明するための斜視図及び側面図をそれぞれ示す。該図において、1は溶融紡糸口金(図示せず)のそれぞれに対応してその下方に配されたエジェクター、2は溶融紡糸口金(図示せず)から紡出されたマルチフィラメント糸条、3は衝突板、4a及び4bは糸条(2)を挟んで「ハの字」状に圧縮空気を吹き出すための二つのノズル、5a及び5bは該二つのノズル(4a及び4b)から吹き出される圧縮空気、6は糸条群を展延するための移動ネットをそれぞれ表わす。なお、これらの図は、本発明を簡便に説明するために、一つのエジェクターとこれに関係する部材を一ユニットとして採りあげて記載したものであって、実際は、これらのユニットが多数隣接して一列に設けられている。また、上方からエジェクター(1)に入る紡出糸条も省略してある。
【0014】
以上のように構成された装置において、本発明の一大特徴とする所は、エジェクター(1)によって引き取られた各糸条(2)を各衝突板(3)に衝突させるに際して、糸条(2)を挟んで該衝突板(3)の糸条衝突面に対して、平行かつ「ハの字」状に圧縮空気(5a及び5b)を吹き付けることにある。
【0015】
本発明においては、溶融紡糸口金から紡出するためにポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等の熱可塑性ポリマーからなる糸条を対象としており、単繊維の形態としては、単独のポリマーで構成された繊維、2種以上のポリマーが混合されたブレンド繊維、2種以上のポリマー成分が複合されたコンジュゲート繊維等を使用することができる。
【0016】
ここで、溶融紡糸口金(図示せず)から紡出された糸条は、エジェクター(1)から噴出される空気流の作用によって引き取られ、引き取られた糸条(2)は、コロナ放電装置(図示せず)によって帯電させられ、噴出された空気流と共に衝突板(3)に衝突させられ、開繊させられる。このとき、衝突板(3)は、衝突の際の衝撃力を利用して繊維を開繊すると共に、移動するネット状に糸条(2)を展延・載置してウェブとするに際して、該ウェブのタテ/ヨコ比を調整するという役割を果たす。ただし、糸条(2)を衝突板(3)に余りにも強く当てると、フィラメント間の絡みが激しくなって、不織布として製品化したときの地合いが悪化するので、糸条(2)が入射する時の角度(α)としては、30〜45°が適切である。
【0017】
以上のような状況において、もし、本発明の圧縮空気を吹き出すノズル(4a及び4b)を欠けば、互いに隣接するエジェクターから噴出される空気の干渉により、移動するネット上に展延・載置して形成されるウェブのタテ/ヨコ比を最適に調整すことが、全くできなくなることは明らかであろう。何故ならば、高速でエジェクター(1)から排出され、衝突板(3)に当たって流れる空気流は、その流れの近傍において、その静圧が低くなるため周囲から空気を巻き込み、これらの周囲から巻き込まれる空気流の影響によってフィラメント群が、幅方向に広がろうとする作用が減殺されてしまうからである。
【0018】
そこで、本発明の二つのノズル(4a及び4b)の衝突板(3)に対する配置が極めて重要な意味を持ってくるのである。このため、本発明の二つのノズル(4a及び4b)では、衝突板(3)に平行して、糸条(2)が衝突板上を走行するその後方から圧縮空気を噴射する角度が「ハの字」状の末広がりになるように設けてある。これによって、二つのノズル(4a及び4b)から噴射された末広がりの圧縮空気の作用によって、エジェクター(1)から噴出されて衝突板(3)に衝突して開繊した糸条(2)は、良好に圧縮空気(5a及び5b)の吹き出し方向に拡幅されることとなるのである。
【0019】
以上に述べた作用を知れば、フィラメント群の平均的進行方向と、圧縮空気(5a及び5b)の吹き出し方向とがそれぞれなす角度(θa及びθb)については、一列に配された両端のエジェクターを除いて30〜60°と対称にすることが好適であることを容易に理解できるであろう。すなわち、前記の角度(θa及びθb)が30°未満であれば、開繊させた糸条の拡幅効果が十分でなく、また、60°を越えると、隣接する開繊糸条との干渉が生じるからである。
【0020】
さらに、前記の二つのノズル(4a及び4b)と開繊糸条の衝突面の中心との間の距離(L1)、及び開繊されたフィラメント群の平均進行位置から該ノズル(4a及び4b)の圧縮空気吹き出し位置との間の距離(L2)に関しては、10〜30mm程度の距離を置くことがノズル(4a及び4b)にフィラメントが引っ掛からないようにする上で好ましい。
【0021】
なお、両端に配されたエジェクターの場合には、前記のノズル(4a及び4b)から圧縮空気を吹き出す方向を糸条を挟んで左右非対称の「ハの字」状とすることが必要である。このとき、両端に位置する圧縮空気吹き出しノズルの圧縮空気吹き出し角度に関しては、−30〜30°とするのが適当である。ただし、L1及びL2に関しては、その他のエジェクターの場合と同様である。
【0022】
また、前記の二つのノズル(4a及び4b)から吹き出す圧縮空気の流量は、開繊糸条を拡幅する上で重要であって、製造条件によって変化はするが、一つのノズル当たり0.01〜0.1Nm3/分とすることが通常は好ましい。この圧縮空気の流量は、該ノズルの圧縮空気噴出口の断面積、流量制御弁等の流量調整手段によって調整されるため、適宜必要に応じて好ましい調整手段を適用すれば良い。また、該ノズルの圧縮空気噴出口の断面形状は、特に丸型に限定する理由はなく、矩形等の非円形形状であっても良い。
【0023】
次に、エジェクター(1)の糸条出口から衝突板(3)迄の距離(L)に関しては、100〜300mmが適切である。ここで、Lが100mm未満であると、糸条を帯電させるためのコロナ放電装置を設置するのが難しい、と言う問題を生じる。また、300mmを超えると、エジェクター(1)から空気と共に噴出される糸条の速度が下がってしまい、衝突板(3)に衝突して糸条が十分に開繊されないばかりか、コロナ放電によって糸条は高度に静電気を帯電しているので、その静電気の影響で糸条が衝突板(3)に付着してしまう、と言う問題を生じる。
【0024】
以上に述べたような本発明の方法は、当初目付が均一なウェブを製造することを目的として実施したが、次のような場合には、予想外の効果が現れた。すなわち、本発明の糸条を製造するための原料として、高融点ポリマーと低融点ポリマーとからなる複合コンジュゲート繊維を紡糸する場合には、紡糸温度を高融点ポリマーに合わせて設定する必要があるため、低融点ポリマー側から一部熱分解した低分子量成分が放出される。このような低分子量熱分解物は、ウェブを長期にわたって製造する過程で、衝突板のフィラメント群が当たる位置の周辺に付着堆積し、やがて単繊維がこの体積物に引っ掛かり始める。このため、衝突板の表面を定期的に清掃する必要があったが、本発明では、高速空気が衝突板の表面に沿って常時流れることとなるので、清掃が全く不要になった。
【0025】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本実施例での測定方法は、以下の通りである。
【0026】
(1)ウェブの目付変動率
ウェブの耳部を除去した後、得られた一定幅のウェブを幅方向に20等分し、長さ20cmに裁断して、それぞれの重量を測定する。そして、測定した試料の標準偏差を平均値で除した値を%で表わし、ウェブの目付変動率とする。
【0027】
(2) ウェブの耳部幅
ウェブの両端部において、目付がウェブ中央部の平均値の70%以下である場所を、ウェブの耳部と定義し、その部分の幅の平均値を耳部幅とする。
【0028】
[実施例1]
極限粘度が0.6のポリエチレンテレフタレートを290℃で溶融し、孔数48の溶融紡糸口金を一列に10個設けた紡糸ヘッドから、紡糸温度285℃で、吐出量を口金当たり50g/分として吐出させた。吐出後、冷却風により冷却しつつ、口金下1000mmの位置に100mmの等ピッチで配した10個のエジェクターにより、5000m/分の速度で引き取った。その後、コロナ放電装置に−22KVの電圧を印可して、コロナ放電により糸条を帯電させた後、エジェクターの出口下200mmに配された衝突板に入射角α=40°で衝突させ糸条を開繊させた。このとき、各衝突板には、口径が2mmの圧縮空気吹き出しノズルを2個配した。その配置位置は、10個の全エジェクター共に、L1=20mm、L2=10mmであり、配置角度に関しては、両端のエジェクターを除いた8個のエジェクターについては、θa=θb=45°、両端の2個のエジェクターに関しては、左右両端に位置するそれぞれの角度を0°、中央側に位置するそれぞれの角度を55°とした。吹き出す圧縮空気の流量は、各ノズル毎に0.04〜0.05Nm3/分の範囲で調整した。そして、開繊拡幅した糸条群をエジェクター出口の下方500mmに配置した、20m/分で移動するネット上に展延・載置しウェブとし、表面温度が150℃の仮圧着ロールで固定し、ウェブの目付変動率と耳部幅を測定した。
【0029】
[比較例1]
実施例1と全く同一の条件で紡糸を行い、衝突板に圧縮空気吹き出しノズルを取り付けない以外は、実施例1と同じ方法でウェブを作製し、ウェブの目付変動率と耳部幅を測定した。このとき得られた結果を実施例1の結果と合わせて、表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明の方法によれば、幅方向に均一な目付のウェブが得られ、更に、ウェブ耳部の目付調整が容易にでき、これによってウェブの製造歩留まりが著しく向上する、という極めて顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を説明するための装置を例示した斜視図である。
【図2】本発明の方法を説明するための装置を例示した側面図である。
【符号の説明】
1 エジェクター
2 マルチフィラメント糸条
3 衝突板
4a,4b 圧縮空気吹き出しノズル
5a,5b 圧縮空気
θa,θb 圧縮空気の吹き出し角度
Claims (3)
- 一列に並設された溶融紡糸口金群から紡出されたマルチフィラメント糸条群を、各口金のそれぞれに対応した下方に設けられたエジェクター群で引き取り、引き取った各マルチフィラメント糸条を帯電させ、帯電させた各マルチフィラメント糸条を各衝突板に衝突させた後、移動するネット上に該マルチフィラメント糸条群を展延して長繊維ウェブを製造する方法において、
前記の衝突板のそれぞれに衝突する各マルチフィラメント糸条を挟むようにして、各マルチフィラメント糸条の進行方向に沿って、各衝突板の糸条衝突面に対して平行かつ「ハの字」状に末広がりに圧縮空気を吹き出すことを特徴とする長繊維ウェブの製造方法。 - エジェクター群の中、両端に配されたエジェクターによって引き取られる各マルチフィラメント糸条に関しては、圧縮空気を吹き出す方向が該マルチフィラメント糸条を挟んで左右非対称の「ハの字」状であって、
その他のエジェクターによって引き取られる各マルチフィラメント糸条に関しては、圧縮空気を吹き出す方向が該マルチフィラメント糸条を挟んで左右対称の「ハの字」状である請求項1記載の長繊維ウェブの製造方法。 - 前記の圧縮空気を吹き出す方向を調整自在とした請求項1又は請求項2記載の長繊維ウェブの製造方法。
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