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JP3602773B2 - 陽極電解水、及びその製造方法 - Google Patents

陽極電解水、及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スーパーオキサイドラジカルの不均化作用を有する陽極電解水、及びその製造方法に関し、更に詳述すればアスコルビン酸のみを電解助剤として用いる電解法による陽極電解水の製造方法、及び前記電解法により得られる陽極電解水に関する。
【0002】
【従来の技術】
隔膜としてイオン交換樹脂を膜状にした荷電膜やマイクロポーラス構造を有する非荷電膜を介して白金あるいは白金合金等からなる不活性電極を配置した電解槽を用いてアルカリ金属の塩化物の希薄電解質水溶液を電解し、陽極側で電解生成されるpHの低い陽極電解水(酸性水)を取出し、これを殺菌や消毒に利用する技術は既に良く知られている。
【0003】
陽極側で生成される陽極電解水はその中に次亜塩素酸が生成されていることから、次亜塩素酸の強力な酸化作用と塩素化作用を利用し、殺菌や消毒に利用されるもので、この様な利用方法は医療機関等で普及している。また酸性水中に微量に含まれるオゾンや溶存酸素は肉芽生成促進作用を有することから、外科治療の補助としての利用も研究されている。
【0004】
一方、陰極側で生成されるの陰極電解水(アルカリ水)は、希薄電解質溶液の代りに水道水を用いてこれを電解することにより得られ、従来飲用等に利用されている。これらの電解質水溶液に電解助剤としてではなく添加剤として、アスコルビン酸や没食子酸等の有機酸を添加する方法も知られている。
【0005】
これらの方法においては、アスコルビン酸は電解助剤の存在下で用いられ、アスコルビンの添加目的は、陰極電解水のpHを制御すること、及び陽極電解水中の遊離塩素を除くことにある。なお、上記方法とは直接的関係はないが、良く知られたコルベ反応はカルボン酸のような有機酸を電解し、陽極側で二酸化炭素を放出させると共に、その残基二つを結合させた化合物を生成させる反応で、酢酸からクエン酸を生成させる方法等も古くから知られている。
【0006】
アスコルビン酸は2位と3位にOH基を有しており、酸性領域では、3位の−OHが−OとHに解離して酸性を示し、塩基性領域では、2位の−OHが−OとHとに解離しているが、これらの解離度は低く、電解助剤としては用いられていない。なお、アスコルビン酸水溶液を電解する際の電解過程は複雑で、中間生成物の特定はなされていないが、基本的には酸化還元反応として観測される。
【0007】
アスコルビン酸は、それ自身強力な還元剤として作用するが、水溶液中で自己自動酸化が起こり、還元力が低下することも良く知られている。一般的にアスコルビン酸はつぎのようなプロセスで自動酸化される。
【0008】
【化1】
Figure 0003602773
Figure 0003602773
ここで、AsA、MDA、DHAおよびDKGは、それぞれアスコルビン酸、モノデハイドロアスコルビン酸、デハイドロアスコルビン酸および2、3−ジケトグロニック酸を示す。
【0009】
近年、活性酸素として広く知られているスーパーオキサイドラジカルをアスコルビン酸が不均化し、消滅させることが明らかにされ、このためアスコルビン酸は抗酸化剤として注目を集めるようになっている。
【0010】
ここで不均化反応とは、下記式(2)で示され、このようにスーパーオキサイドラジカルが消滅し、過酸化水素が生成する反応である。
【0011】
【化2】
・+O ・+2H→H+O (2)
アスコルビン酸は上述のようにスーパーオキシラジカルを消滅させる有用なものであるが、アスコルビン酸水溶液を電解することによりスーパーオキサイドラジカルの不均化を増大させる方法は、未だ実現されていないのが現状である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は上記アスコルビン酸のスーパーオキシラジカルを不均化する能力に着目し、この能力を保持した陽極電解水を得るため種々検討した。その結果、水溶性金属塩等の無機電解質を電解助剤として用いることなく、比較的低濃度のアスコルビン酸の単独水溶液を電解すると、スーパーオキシラジカルを不均化する能力を保持した陽極電解水が得られることを発見した。
【0013】
本発明は上記発見に基づいて完成するに至ったもので、その目的とするところはスーパーオキシラジカルを不均化する能力を高めた陽極電解水を提供することにある。
【0014】
【課題を解決しようとする手段】
上記目的を達成する本発明は、以下に記載するものである。
【0015】
〔1〕 水溶性無機塩を0.1mM未満、アスコルビン酸を1〜50mM含有し、溶存酸素が8〜15mg/l、且つスーパーオキサイドラジカルの不均化作用を有する陽極電解水。
【0016】
〔2〕 水溶性無機塩を0.1mM未満、アスコルビン酸を1〜50mM含有する電解原水を電気分解して陽極電解水を取出すことを特徴とするスーパーオキサイドラジカルの不均化作用を有する陽極電解水の製造方法。
【0017】
〔3〕 隔膜を有する電解槽を用いて電気分解する上記〔2〕に記載のスーパーオキサイドラジカルの不均化作用を有する陽極電解水の製造方法。
【0018】
〔4〕 電気分解する際の電流密度が0.003〜0.03A/cmである請求項2に記載のスーパーオキサイドラジカルの不均化作用を有する陽極電解水の製造方法。
【0019】
〔5〕 水溶性無機塩を0.1mM未満、アスコルビン酸を1mM〜50mM含有する原水を流量500〜3000ml/minで隔膜を有する連続流通電解槽に供給し、電解電流密度0.003〜0.03A/cmで連続的に電気分解する〔2〕に記載のスーパーオキサイドラジカルの不均化作用を有する陽極電解水の製造方法。
【0020】
【作用】
電解質溶液を電解し、飲用や殺菌消毒用として利用する場合、電解質溶液として、水道水や、水道水に更に塩化ナトリウムあるいは塩化カリウム等の水溶性無機塩を加えたものが利用されている。水道水には本来微量の無機塩を含有しているので、これが電解質として作用する。
【0021】
一方、電解質の添加剤としてアスコルビン酸がアルカリ度除去剤として用いられている(例えば、特開平11−33552号)。また、アスコルビン酸を添加剤として用いて陽極側に生成される次亜塩素酸を還元し、遊離塩素の生成を抑制する方法も既に知られている(特開平8−229563号)。これらの場合は、すべて水溶性無機塩からなる電解質を電解助剤として共存させており、アスコルビン酸を用いる目的はあくまでも電解に直接関係しない添加剤として用いるものである。
【0022】
一般に電解助剤として塩化ナトリウムのような電解質を用い、添加剤としてアスコルビン酸を用いて電解を行う場合、次のような反応が起こる。
【0023】
1.陰極側
【0024】
【化3】
Figure 0003602773
なおここで、AsANaはアスコルビン酸ナトリウムを示す。陰極電解水中のアスコルビン酸は3位のHがナトリウムイオンと置き換わることによりナトリウム塩となる。その結果、2位のHのみがスーパーオキサイドを不均化することに利用され、不均化能が半減する。
2.陽極側
【0025】
【化4】
Figure 0003602773
陽極側では、(9)式に示すように、次亜塩素酸による塩素化および酸化作用により、アスコルビン酸の2位および3位のHが消滅し、このため全くスーパーオキサイドの不均化は起こらなくなる。
【0026】
以上が電解質を電解助剤として用い、アスコルビン酸を添加剤として添加した電解原水を用いた場合の両極の電解反応である。この場合は、陰極側でのみスーパーオキサイドの不均化が見られるものの、アスコルビン酸ナトリウムが生成される量だけ不均化反応量が減少する。
【0027】
また、陽極側では、次亜塩素酸によるアスコルビン酸の塩素化および酸化作用によりアスコルビン酸の2位および3位のHが消滅し、このため、全くスーパーオキサイドの不均化反応は起こらない。
【0028】
一方、電解質としてアスコルビン酸のみを用いた場合の両極の電解反応は、以下に示すものである。
【0029】
1.陰極側
【0030】
【化5】
Figure 0003602773
(11)式に示すように、電解することによりアスコルビン酸中の2位と3位の水素が陰極表面で求電子反応を起し、水素ガスが発生する。電解により生じるDHAはHを放出できず、このためスーパーオキサイドラジカルの不均化は起らない。さらに、アスコルビン酸アニオンが陽極側に輸送される。このため、アスコルビン酸アニオンによるスーパーオキサイドラジカルの不均化も起らない。
2.陽極側
【0031】
【化6】
Figure 0003602773
(13)式で示されるように、アスコルビン酸アニオンは陽極上で水の酸化によって生成されたHと反応してアスコルビン酸になる。一方(14)式で示されるように 、陽極上で生成された酸素ガスはアスコルビン酸を酸化して2,3−ジケトグロニック酸となり、陽極電解水中の溶存酸素量を低減させる方向に作用する。しかし、この割合は大きくない。
【0032】
更に陽極では、(13)式で示される反応の他に、アスコルビン酸アニオンと水素イオンの拡散速度の相違から、わずかに水素イオンが過剰に生成され、アスコルビン酸のみよりもプロトンが増加している。このため、スーパーオキサイドラジカルの不均化量は多くなる。
【0033】
以上をまとめると、
1)塩化ナトリウムや塩化カリウムのような水溶性電解質を電解助剤として用い、これにアスコルビン酸を添加剤として併用している電解原水を電解する場合、陰極電解水は不均化反応を示すが、アスコルビン酸ナトリウムやアスコルビン酸カリウムとして消費される量だけ、不均加作用は低下する。陽極電解水は、次亞塩素酸を含むためアスコルビン酸の大部分が消費され、不均化反応は起きない。
【0034】
2)アスコルビン酸のみを電解助剤として用いる電解原水を電解する場合、陰極側ではアスコルビン酸の2、3位の水素が求電子反応により引抜かれてデヒドロアスコルビン酸が生じ、不均化反応はほとんど認められなくなる。
【0035】
また、陽極側では、陰極から輸送されるアスコルビン酸アニオンと、水の電極反応で発生する水素イオンとが反応してアスコルビン酸に戻り、更に生成される僅かに過剰の水素イオンにより、陽極電解水の不均化反応作用は増加する。また、溶存酸素により消費されるアスコルビン酸の量は極めて少ない。
【0036】
以下、本発明を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0037】
【発明の実施の形態】
本発明のスーパーオキサイドラジカルの不均化作用を有する陽極電解水を製造する際に用いる電解装置は特に制限が無く、従来用いられている電解水製造装置の何れもが使用できる。即ち、電解装置の大きさ、電解槽中に隔膜の有無等に関係なく何れの形式のものでも利用できる。
【0038】
図1は、本発明のスーパーオキサイドラジカルの不均化作用を有する陽極電解水の製造に用いる電解装置の一例を示す概略図である。
【0039】
図1中、2は電解原水タンクで、その内部には電解原水4が貯留されている。
【0040】
前記電解原水4は、アスコルビン酸を1〜50mM、好ましくは2〜20mM含有している。アスコルビン酸の濃度が1mM未満の場合は、導電率が低く、電解が困難になり、また50mMを超える場合は得られる機能水を皮膚等に適用する際にべたつき感が感じられ、適用方法によっては不都合な場合が起る。
【0041】
上記電解原水4には、アスコルビン酸以外の水溶性無機塩等の電解質を実質的に含有していないことが望ましい。水溶性無機電解質の含有量は、各水溶性無機電解質の合計で0.1mM以下であることが好ましく、特に0.02mM以下であることが望ましい。
【0042】
このような電解原水4の調製方法としては、蒸留水や、脱イオン水等の精製水(純水)に、アスコルビン酸を上記濃度範囲に溶解する方法が例示される。
【0043】
6は原水供給管8に介装されたポンプで、このポンプ6を作動させることによりにより、原水4は供給管8を通って電解槽10に送られる。
【0044】
前記電解槽10は、所定間隔離れて互いに対向する陽極12と陰極14と、前記両極間に両極と離間して配設された隔膜16とを有し、前記陽極12と隔膜16との間に陽極室18が、また前記陰極14と隔膜16との間に陰極室20が形成されている。前記陽極12、陰極14は電気化学的に不活性な金属材料で形成されている。電極材料としては、白金、白金合金等が好ましい。隔膜16は陽極室18内の陽極電解水と陰極室14内の陰極電解水とが混合することを防止する役割を果すものであり、かつ電解電流が伝わる材料で構成されている。隔膜としては、イオン交換膜や、無電荷膜等、電解隔膜として従来使用されているものが適宜使用される。
【0045】
前記供給管8は、電解槽10の上流側で分岐され、それぞれの分岐管8a、8bが前記陽極室18、陰極室20に連結されている。
【0046】
22は電解電源で、そのプラス端子は陽極12に、マイナス端子は陰極14に接続されている。
【0047】
前記供給管8a、8bを通って陽極室18、陰極室20に送られた電解原水は、ここで電気分解される。電解電流密度は、0.003〜0.03A/cmが好ましく、0.01〜0.02A/cmが特に好ましい。電解電流密度が0.003A/cm未満の場合は、陽極室から流出する陽極電解水中の溶存酸素量を電解原水よりも高くすることができず、また電解電流密度が0.03A/cmを超える場合は、電流値に応じて陽極電解水生成量が増加しない。
【0048】
従って、上記範囲内に電解電流密度を制御することにより、陽極室から流出する陽極電解水中の溶存酸素量を電解原水以上、好ましくは8〜15mg/l、より好ましくは9〜14mg/lとすることができる。
【0049】
上記のようにして電解されて生成した陽極電解水は陽極電解水取出し管24を通って外部に取出される。また、同様に陰極電解水は陰極電解水取出し管26を通って外部に取出される。
【0050】
なお、上記電解槽10はその内部に隔膜が設けられた構造のものであるがこれに限られず、隔膜の設けられていない無隔膜構造の電解槽も好適に使用できる。
【0051】
このような無隔膜構造の電解槽としては、陽極板と陰極板との間に隔膜を介在させることなく両極板を近接して配置し、前記陰、陽の両極板間に電解原水を連続的に供給すると共に電解し、陽極の下流側で陽極表面近傍の陽極電解水を連続的に取出すようにする構造のものが挙げられる。具体的には、特開平6−246272号公報に示される電解槽等が例示される。
【0052】
また、スーパーオキサイドラジカルの不均化能の有無は、後述するESRによるスーパーオキサイドラジカルのシグナルの有無により判断される。
【0053】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
【0054】
実施例1
図1に示す電解装置を用いてアスコルビン酸含有電解原水を電解した。但し、電解槽は、5枚の白金板(7.5mm×11.5mm)をそれぞれ2.5mm間隔で平行に配列し、その間に無電荷隔膜を介装すると共に、前記白金板を交互に陽極、陰極とすることにより、合計4個の電解槽を一体に並設してなるものであった。電解槽内容積は86.4mlで、この電解槽に電解原水を2000ml/minの流量で供給し、陽極電解水、及び陰極電解水を得た。電解電流密度は0.02A/cmとなるように調節した。
【0055】
電解原水は脱イオン水にアスコルビン酸を2mM濃度になるように添加して調製した。なお、脱イオン水を用いたので、電解原水中の水溶性無機塩の含有量は極めて微量(0.01mM未満)であった。
【0056】
製造した電解水を試料とし、電子スピン共鳴装置を用いて以下のようにスーパーオキサイドラジカルの不均化反応による消滅の有無を調べた。
【0057】
1)スーパーオキサイドラジカルの発生
スーパーオキサイドラジカルは、2mMのヒポキサチンと0.4mM unit/mlのキサンチンオキシダーゼとを用いて発生させた。
【0058】
2)DMPOによるスピントラップ
2mM ヒポキサンチン一リン酸塩緩衝液 50μl
5.5mM DETAPAC(diethylenetriaminepentaacetic acid)‐リン酸塩緩衝液 35μl
DMPO(5,5‐dimethy−1−pyrroline−N−oxide)16μl
0.4unit/mlキサンチンオキシターゼーリン酸塩緩衝液 50μl
を特殊偏平セルに入れ、ESR装置にセットし、1分後に掃引を開始し、スーパーオキサイドラジカルの信号の有無を確認した。
【0059】
3)ESR測定条件
測定温度:室温
マイクロ波出力:3.7mW
掃引磁場:339.1mT±5.5mT
磁場変調:100kHz(外部変調方式)
変調幅:0.1mT
時定数:0.12sec
掃引時間:1min
であった。
【0060】
4)測定結果
得られたESRスペクトルを図2及び図3に示した。図2は陽極電解水を用いた場合を示した。スーパーオキサイドラジカルのシグナルが見られないことから、スーパーオキサイドラジカルが不均化され、スーパーオキサイドラジカルが殆ど消滅していることが明らかである。
【0061】
なお、陽存酸素量は14.99mg/lであった。
【0062】
図3は陰極電解水を用いた場合である。スーパーオキサイドラジカルのシグナル(図中矢印aで示すシグナル)が見られ、スーパーオキサイドラジカルが消去されず、不均化されていないことが明らかである。
実施例2
電解原水のアスコルビン酸濃度を50mMとし、電流密度0.01A/cm、とした以外は実施例1と同様にして、スーパーオキサイドラジカルの不均化作用を有する陽極電解水を製造した。
【0063】
得られた陽極及び陰極電解水のそれぞれに付、電子スピン共鳴装置を用いて実施例1と同様にしてスーパーオキサイドラジカルの不均化の有無を調べた。
【0064】
得られたESRスペクトルを図4及び図5に示した。図4は陽極電解水を用いた場合である。スーパーオキサイドラジカルのシグナルが見られないことから、スーパーオキサイドラジカルが不均化し、スーパーオキサイドラジカルが殆ど消滅していることが明らかである。
【0065】
なお、陽存酸素量は12.3mg/lであった。
【0066】
図5は陰極電解水を用いた場合である。スーパーオキサイドラジカルのシグナル(図中矢印aで示すシグナル)が見られ、スーパーオキサイドラジカルが消去されておらず、不均化されていないことが明らかである。
【0067】
(陽極電解水の性能評価試験)
上記実施例2によって製造した陽極電解水を用いてスキンケアの官能テストを行った。比較のため、濃度0.25質量%のNaCl水溶液を同様の装置を用いて同様の条件で電解して得た陽極電解水(強酸性水)を用いて官能テストを行った。
【0068】
テスト方法は、以下に記載する通りであった。
1)被験者:健丈者(健康な女子)のうち、肌が荒れやすい人14人
2)テスト方法:14人中7人はアスコルビン酸含有電解原水を電解して得られた陽極電解水(本発明品)、他の7人はNaCl含有電解原液を電解して得られた陽極電解水(比較品)を1日2回の割合で21日間に亘り、手、及び顔に塗布した。
【0069】
得られたテスト結果を表1に示した。
【0070】
【表1】
Figure 0003602773
NaCl含有電解原液を電解して得られた陽極電解水は、一般に使用されている、いわゆる電解生成水で、pH=2.5、ORP=1250mVのものである。本発明の実施例2の陽極電解水は、刺激性、及び臭気が全くなく、保湿性に関してもNaCl含有電解原液を電解して得られた陽極電解水よりも優れていた。本発明の陽極電解水がこのような好ましい性質を示す理由は、電解により抗酸化作用が高められた結果であることが強く示唆される。
実施例3
電解原水のアスコルビン酸濃度を20mMとし、電流密度0.02A/cm、とした以外は実施例1と同様にして、スーパーオキサイドラジカルの不均化作用を有する陽極電解水を製造した。
【0071】
得られた陽極及び陰極電解水のそれぞれに付、電子スピン共鳴装置を用いて実施例1と同様にしてスーパーオキサイドラジカルの不均化の有無を調べた。
【0072】
得られたESRスペクトルを図6及び図7に示した。図6は陽極電解水を用いた場合である。スーパーオキサイドラジカルのシグナルが見られないことから、スーパーオキサイドラジカルが不均化し、スーパーオキサイドラジカルが殆ど消滅していることが明らかである。
【0073】
図7は陰極電解水を用いた場合である。スーパーオキサイドラジカルのシグナル(図中矢印aで示すシグナル)が見られ、スーパーオキサイドラジカルが消去されておらず、不均化されていないことが明らかである。
比較例1
電解原液として2mMNaClを用いて、実施例1と同様にして電解した。得られた陽極電解水、陰極電解水を用いて実施例1と同様にしてESRスペクトルを得た。
【0074】
図8、9に陽極電解水、陰極電解水のESRスペクトルを示した。NaClを電解助剤として用いた比較例1の場合は、いずれの電解水にもスーパーオキサイドラジカルのシグナルが認められ、これら電解水はスーパーオキサイドラジカルの消去能がないことがわかる。
【0075】
比較例2
蒸留水を電解することなく用いて、実施例1と同様の測定方法でスーパーオキサイドの不均化能を調べた。図10に測定したESRスペクトルを示した。純水の場合、スーパーオキサイドラジカルの消去は全く見られず、従って不均化能はないことが明らかである。
【0076】
なお、溶存酸素量は9.65mg/lであった。
【0077】
参考例1
通常、アスコルビン酸を精製水に溶解すると、精製水中の溶存酸素を消費して溶存酸素量は8mg/l以下の値を示す。これに対し、アスコルビン酸水溶液を電解して陽極側に得られる陽極電解水は、陽極における水の電解により生成される酸素により溶存酸素量が高められる。このため、アスコルビン酸水溶液(電解原水)を電解すると、電解前から原水に溶存する溶存酸素に、電解で生成される酸素が加わり、電解前の原水よりも溶存酸素濃度が高くなる。
【0078】
従って、電解前の電解原水と電解後の電解水とは、電解後極端に時間が経過していない場合は、溶存酸素量を比較することにより容易に識別できる。
【0079】
図11は、実施例1と同様の電解装置を用いて実施例1に示す電解原水の電解を行った際の、電解電流密度と溶存酸素量との関係を示すグラフである。電解を行うと、必然的に陽極電解水の溶存酸素量が増大する。
【0080】
なお、溶存酸素の存在は、電解助剤としてNaClを用いた際に生成する溶存酸素と同一のもので、このものは皮膚再生や皮膚修復に寄与する作用を有する。
【0081】
【発明の効果】
本発明においては、アスコルビン酸を電解助剤とする電解原水を電解するようにしたので、得られる陽極電解水は、スーパーオキサイドラジカルの不均化能が高められたものである。このため、この陽極電解水は殺菌消毒、肉芽生成、健康保持、美容等の各種用途に有用なものとして利用できる。更に、アスコルビン酸は人体に対して安全性の確認されているビタミンであるので、これを電解助剤として用いて製造する本陽極電解水の安全性も極めて高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明陽極電解水の製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】実施例1の陽極電解水のスーパーオキサイドラジカルに対する不均化能を示すESRスペクトルの一例である。
【図3】実施例1の陰極電解水のスーパーオキサイドラジカルのESRスペクトルの一例である。
【図4】実施例2の陽極電解水のスーパーオキサイドラジカルに対する不均化能を示すESRスペクトルの他の例である。
【図5】実施例2の陰極電解水のスーパーオキサイドラジカルのESRスペクトルの他の例である。
【図6】実施例3の陽極電解水のスーパーオキサイドラジカルに対する不均化能を示すESRスペクトルの他の例である。
【図7】実施例3の陰極電解水のスーパーオキサイドラジカルのESRスペクトルの他の例である。
【図8】比較例1の陽極電解水のスーパーオキサイドラジカルのESRスペクトルの一例である。
【図9】比較例1の陰極電解水のスーパーオキサイドラジカルのESRスペクトルの一例である。
【図10】比較例2の蒸留水のスーパーオキサイドラジカルを示すESRスペクトルの一例である。
【図11】実施例1に示す電解原水の電解を行った際の、電解電流密度と溶存酸素量との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
2 電解原水タンク
4 電解原水
6 ポンプ
8 電解原水供給管
10 電解槽
12 陽極
14 陰極
16 隔膜
18 陽極室
20 陰極室
22 電解電源
24 陽極電解水取出し管
26 陰極電解水取出し管

Claims (5)

  1. アスコルビン酸を含有する電解原水を電気分解して得られる陽極電解水であって、水溶性無機塩を0.1mM未満、アスコルビン酸を1〜50mM含有し、溶存酸素が8〜15mg/l、且つスーパーオキサイドラジカルの不均化作用を有する陽極電解水。
  2. 水溶性無機塩を0.1mM未満、アスコルビン酸を1〜50mM含有する電解原水を電気分解して陽極電解水を取出すことを特徴とするスーパーオキサイドラジカルの不均化作用を有する陽極電解水の製造方法。
  3. 隔膜を有する電解槽を用いて電気分解する請求項2に記載のスーパーオキサイドラジカルの不均化作用を有する陽極電解水の製造方法。
  4. 電気分解する際の電流密度が0.003〜0.03A/cm2である請求項2に記載のスーパーオキサイドラジカルの不均化作用を有する陽極電解水の製造方法。
  5. 水溶性無機塩を0.1mM未満、アスコルビン酸を1mM〜50mM含有する原水を流量500〜3000ml/minで隔膜を有する連続流通型電解槽に供給し、電解電流密度0.003〜0.05A/cm2で連続的に電気分解する請求項2に記載のスーパーオキサイドラジカルの不均化作用を有する陽極電解水の製造方法。
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