JP3601733B2 - 高倍率ズームレンズ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はズームレンズ、特にホームビデオカメラや電子スティルカメラに用いられる広角で変倍比が18〜20倍と大きいズームレンズに関する。
【0002】
【従来の技術】
ビデオカメラ用のズームレンズは撮像サイズが1/3インチから1/4インチに移行しつつあり、レンズ構成の簡素化が求められている。このようなズームレンズとしては、例えば全系を4群で構成し、第1レンズ群および第3レンズ群を固定とし、第2レンズ群を光軸方向に移動することにより変倍を行い、それに伴う像点位置の移動を第4レンズ群により行い、Fナンバーが1.6〜1.8、ズーム比が8倍〜12倍なる条件を満足するようにしたものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来技術では第4レンズ群が広角側から望遠側にかけて物体側に凸の曲線を描くように、かつ中間域では第3レンズ群に近づくように移動し、この中間域において像の周辺部に向かう光束が第4レンズ群の比較的低い位置から射出されるために収差の状態が広角側や望遠側と異なってしまい全体として収差の変動をズーム全領域で小さくすることが困難となる。
特に広角側の焦点距離をより小さくする場合、第4レンズ群の屈折力を大きくすることが必要となるが、これは第4レンズ群の移動距離が小さくなりレンズ全体が小型化するという利点がある反面、屈折力が大きい分、移動することによる収差の変動が大きくなり、ズーム全領域での収差補正がより困難となる。
【0004】
さらに、近年ズーム比をより大きいものとしたいという要求が強く、例えばこのズーム比を20倍程度以上まで大きくしたいという要求がある。しかしながら、この程度までズーム比を大きくすると、第2レンズ群の移動量が大きくなるのに合わせて第4レンズ群の移動量も大きくする必要があり、それに伴う収差の変動も大きくなるのでズーム全領域での補正がさらに困難となる。
このため前述した構成のものでは、画角を58゜程度、ズーム比を12倍程度とするのが限界であった。
【0005】
またこれまでの種々の従来技術では、ズームレンズを構成するレンズ枚数が上記の諸条件を満足するための限界に近い数となっているため、このままの性能を維持しつつ高ズーム比化するのは困難であった。
本発明は、従来技術に比べ、より広角でよりズーム比の大きい、諸収差が良好なズームレンズを提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の高倍率ズームレンズは、正の屈折力を有する第1レンズ群、負の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群、正の屈折力を有する第4レンズ群、および正の屈折力を有する第5レンズ群を物体側からこの順に配設してなり、
ズーミング時に前記第1レンズ群、前記第3レンズ群、および前記第5レンズ群は固定とされ、前記第2レンズ群、および前記第4レンズ群は可動とされ、 前記第2レンズ群を光軸方向に移動することにより全系の焦点距離を変化させ、前記第4レンズ群を光軸方向に移動することにより結像位置の変動を補正するとともに物体距離の変化に伴う結像位置の変化を補正するズームレンズであって、下記条件式(1)〜(4)を満足するように構成されてなることを特徴とするものである。
【0007】
−0.5<f2/(fw・ft)1/2<−0.2 (1)
1.1<f3/(fw・ft)1/2<1.4 (2)
0.4<f3/f1<0.7 (3)
6.0<f5/f3<7.0 (4)
ただし、 f2:第2レンズ群の焦点距離
fw:広角端における全系の焦点距離
ft:望遠端における全系の焦点距離
f3:第3レンズ群の焦点距離
f1:第1レンズ群の焦点距離
f5:第5レンズ群の焦点距離
【0008】
また、前記第3レンズ群を構成するレンズのレンズ面のうち、少なくとも1面を非球面により形成することが望ましい。
さらに、前記第5レンズ群を正負2枚のレンズから構成することが望ましい。
また、前記第5レンズ群の正の屈折力を有するレンズのアッベ数が下記条件式(5)を満足し、かつ前記第5レンズ群の負の屈折力を有するレンズのアッベ数が下記条件式(6)を満足するように構成されてなることが望ましい。
ν+>57 (5)
ν−<26 (6)
ただし、 ν+:第5レンズ群の正の屈折力を有するレンズのアッベ数
ν−:第5レンズ群の負の屈折力を有するレンズのアッベ数
【0009】
【作用】
本発明の高倍率ズームレンズでは上記の構成とすることにより従来の問題を解決しており、変倍時に固定とした正の屈折力を有するレンズ群を第5レンズ群とすることにより、第4レンズ群の屈折力を大きくすることなく広角化を達成し、かつ変倍による収差変動を極力抑えるようにしており、これによって、より広角で、よりズーム比の大きいズームレンズの実現を可能としている。
より広角となるような焦点距離を有し、かつズーム全領域で良好な収差補正がおこなわれるためには射出光線が光軸から離れた位置にあるとき程レンズ面で補正される必要がある。このためレンズ系の最も像側に、変倍時に固定とされている第5レンズ群を置くようにしている。
【0010】
次に第2レンズ群、および第3レンズ群と第1レンズ群の屈折力を規定する条件式について説明する。
条件式(1)は広角端での画角を大きくするために第2レンズ群が持つ屈折力の範囲を規定するもので、変倍領域全体にわたって良好な収差補正を行い、かつ高変倍比を維持しつつ広角化を実現するために必要な範囲を示すものである。条件式(1)の上限を超えるとより変倍比を大きくすることができる反面、像面が補正過剰となり、球面収差とのバランスをとることが困難となる。さらに第2レンズ群の移動量が大きくなり全体を小型化することができない。また条件式(1)の下限を超えると収差のバランスは良好となるが、高変倍比を維持したままの広角化は実現できない。
【0011】
条件式(2)は変倍比を大きくするために第3レンズ群焦点距離の範囲を規定するものである。条件式(2)の上限を超えると第3レンズ群の屈折力が足りず、その分を第1レンズ群で補おうとすると、より広角にすることは難しくなり、また第4レンズ群、第5レンズ群で補おうとすると、必要なバックフォーカスを得ることが困難となる。結局、広角のまま変倍比を大きくすることは困難となる。条件式(2)の下限を超えるとより高変倍比になる反面、広角端で像面が物体側に倒れ、良好な性能が得られない。
条件式(3)は条件式(2)と同様に変倍比を大きくするために第3レンズ群と第1レンズ群の焦点距離の比の範囲を規定するものである。条件式(3)の上限を超えると変倍比をより大きくすることができる全領域にわたって収差を良好に補正することが困難になる。条件式(3)の下限を超えると高変倍比にすることができなくなる。
【0012】
条件式(4)はズーム全領域にわたって良好な性能を維持しつつ変倍比を大きくするために第5レンズ群と第3レンズ群の焦点距離の比の範囲を規定するものである。条件式(4)の上限を超えると球面収差が補正過剰となり、像面がアンダーに倒れ良好な性能が得られない。条件式(4)の下限を超えると逆の補正となり同様に良好な性能が得られない。結局広角でかつ高変倍比を維持しつつ良好な性能を保つためには第3レンズ群と第5レンズ群の焦点距離の比は条件式(4)の範囲になければならない。
また、第3レンズ群のレンズ面のうち少なくとも1面を非球面とすることで、レンズ系全体のレンズ枚数を少なくし、かつ良好な収差補正、とくに球面収差の補正を良好とすることができる。すなわち、第3レンズ群のレンズ面の全てを球面で構成すると、収差補正を良好とするためにはレンズ枚数を増やす必要があり、これはレンズ系の全長が大きくなることにつながり好ましくない。
さらに、第5レンズ群を正、負2枚のレンズで構成することで全領域の倍率色収差の補正を容易なものとすることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例の高倍率ズームレンズについて、図面を参照しながら説明する。
図2は、本発明の高倍率ズームレンズの第1〜第3の実施例の構成を代表して示す広角端におけるレンズ構成図であり、図1は広角端、望遠端における各レンズ群の位置関係を示す図である。
【0014】
図示のズームレンズは、物体側より順に全体として正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、絞り3と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4と、正の屈折力を有する第5レンズ群G5とからなり、ズーミング時に第1レンズ群G1,第3レンズ群G3および第5レンズ群G5は固定とされ、第2レンズ群G2および第4レンズ群G4は可動とされ、第2レンズ群G2を光軸Xに沿って移動することにより全系の焦点距離fを変化させ、第4レンズ群G4を光軸Xに沿って移動することにより第2レンズ群G2の移動に伴う結像位置の変動を補正するとともにフォーカシングを行うようにしたズームレンズであって、以下の条件式(1),(2),(3),(4)を満足する構成とされている。
【0015】
−0.5<f2/(fw・ft)1/2<−0.2 (1)
1.1<f3/(fw・ft)1/2<1.4 (2)
0.4<f3/f1<0.7 (3)
6.0<f5/f3<7.0 (4)
ただし、 f2:第2レンズ群の焦点距離
fw:広角端における全系の焦点距離
ft:望遠端における全系の焦点距離
f3:第3レンズ群の焦点距離
f1:第1レンズ群の焦点距離
f5:第5レンズ群の焦点距離
【0016】
さらに詳しくは、第1レンズ群G1はレンズL1〜L3から、第2レンズ群G2はレンズL4〜L6から、第3レンズ群G3はレンズ前面(物体側の面)が非球面状に形成されたレンズL7、およびレンズL8から、第4レンズ群G4は単一のレンズL9から、第5レンズ群G5はレンズL10およびL11から構成されている。また第5レンズ群G5と結像面1の間には、赤外光をカットするフィルタやローパスフィルタ2が配されている。
【0017】
なお、ズームレンズをより広角にするためには各群の屈折力を適切な値にすることが必要となる。特に広角な焦点距離を持ち、かつズーム全領域で良好な収差補正が行われるためには射出光線がより光軸から離れた位置にあるときにレンズ面で補正される必要がある。このため本実施例の高倍率ズームレンズでは、レンズ系の最も像側に、変倍時に位置が固定の第5レンズ群G5を置くようにしている。さらに、この第5レンズ群G5は倍率色収差の補正にも有効なように、符号が互いに反対の屈折力を有し、分散に差がある材料からなる2枚のレンズL10、 L11で構成している。そして、それぞれのアッベ数は以下の範囲を満足している。
ν+>57 (5)
ν−<26 (6)
ここでν+ は第5レンズ群G5の正の屈折力を有するレンズL11のアッベ数、ν−は第5レンズ群G5の負の屈折力を有するレンズL10のアッベ数である。
【0018】
以下、各実施例について詳述する。
まず、第1の実施例にかかるズームレンズの各レンズ面の曲率半径R(mm)、各レンズの中心厚および各レンズ間の空気間隔(以下、これらを総称して軸上面間隔という)D(mm)、各レンズのd線における屈折率Nおよびアッベ数νの値を表1に示す。
なお表中の数字は物体側からの順番を表すものである。また曲率半径Rの欄において「非球面」とあるのは、下記式(A)により算出される非球面形状であることを意味するものである(以下に示す表3,5についても同じ)。
【0019】
Z=CY2/{1+(1−KC2Y2)1/2}
+A2Y4+A3Y6+A4Y8+A5Y10 (A)
ただし、Z:光軸からの高さYの非球面上の点より、非球面頂点の接平面(光軸に垂直な平面)に下ろした垂線の長さ(mm)
C:非球面の近軸曲率
Y:光軸からの高さ(mm)
K:離心率
A2〜A5:第4,6,8,10次の非球面係数
【0020】
また、表2に表1中の軸上面間隔Dの欄におけるGD1,GD2,GD3,GD4の広角端および望遠端各位置での値を示す。さらに、この表2の下段に、全系の焦点距離f、Fナンバー(FNO)、画角2ω、上式(A)に示される非球面の各定数C,K,A2〜A5の値を示す。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
図3および図4は上記第1の実施例のズームレンズの広角端および望遠端における諸収差を示す収差図である。この図3および図4から明らかなように、第1の実施例のズームレンズによればズーム領域の全体に亘って良好な収差補正がなされ、広角化(2ω=70.61度)、高ズーム比(18倍)を得ることができる。
次に、第2の実施例に係るズームレンズの各レンズ面の曲率半径R(mm)、軸上面間隔D(mm)、各レンズのd線における屈折率Nおよびアッベ数νの値を表3に示す。
【0024】
また、表4に表3中の軸上面間隔Dの欄におけるGD1,GD2,GD3,GD4の広角端および望遠端各位置での値を示す。さらに、この表4の下段に、全系の焦点距離f、Fナンバー(FNO)、画角2ω、上式(A)に示される非球面の各定数C,K,A2〜A5の値を示す。
【0025】
【表3】
【0026】
【表4】
【0027】
図5および図6は上記第2の実施例のズームレンズの広角端および望遠端における諸収差を示す収差図である。この図5および図6から明らかなように、第2の実施例のズームレンズによればズーム領域の全体に亘って良好な収差補正がなされ、広角化(2ω=71.11度)、高ズーム比(19倍)を得ることができる。
次に、第3の実施例に係るズームレンズの各レンズ面の曲率半径R(mm)、軸上面間隔D(mm)、各レンズのd線における屈折率Nおよびアッベ数νの値を表5に示す。
また、表6に表5中の軸上面間隔Dの欄におけるGD1,GD2,GD3,GD4の広角端および望遠端各位置での値を示す。さらに、この表6の下段に、全系の焦点距離f、Fナンバー(FNO)、画角2ω、上式(A)に示される非球面の各定数C,K,A2〜A5の値を示す。
【0028】
【表5】
【0029】
【表6】
【0030】
図7および図8は上記第3の実施例のズームレンズの広角端および望遠端における諸収差を示す収差図である。この図7および図8から明らかなように、第3の実施例のズームレンズによればズーム領域の全体に亘って良好な収差補正がなされ、広角化(2ω=71.15度)、高ズーム比(20倍)を得ることができる。
また、上記各実施例における、前述した条件式(1)におけるf2/(fw・ft)1/2の値、前述した条件式(2)におけるf3/(fw・ft)1/2 の値、前述した条件式(3)におけるf3/f1 および条件式(4)におけるf5/f3の値を下記表7に示す。
【0031】
【表7】
【0032】
この表7から明らかなように、各実施例のズームレンズはいずれも前述した各条件式(1)、(2)、(3)、(4)を満足している。
また、上記各実施例の所定レンズのアッベ数を示す下記表8から明らかなように、各実施例のズームレンズはいずれも前述した条件式(5)、(6)を満足しており、色収差を良好に補正することができる。
【0033】
【表8】
【0034】
なお、本発明の高倍率ズームレンズとしては上記実施例のものに限られるものではなく、例えば各レンズ群を構成するレンズの枚数や形状は適宜選択し得る。
【0035】
【発明の効果】
以上説明した如く、本発明の高倍率ズームレンズによれば各収差を良好なものとしつつ、広角端の画角を70゜以上、ズーム比を18〜20倍程度と広角、高ズーム比のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係るズームレンズの広角端および望遠端におけるレンズ群の位置関係を示す図
【図2】本発明の実施例に係るズームレンズの広角端におけるレンズ構成を示す図
【図3】第1の実施例に係るズームレンズの広角端における諸収差を示す収差図
【図4】第1の実施例に係るズームレンズの望遠端における諸収差を示す収差図
【図5】第2の実施例に係るズームレンズの広角端における諸収差を示す収差図
【図6】第2の実施例に係るズームレンズの望遠端における諸収差を示す収差図
【図7】第3の実施例に係るズームレンズの広角端における諸収差を示す収差図
【図8】第3の実施例に係るズームレンズの望遠端における諸収差を示す収差図
【符号の説明】
L : レンズ
R : 曲率半径
D : 軸上面間隔
X : 光軸
1 : 結像面
2 : フィルタ
3 : 絞り
Claims (4)
- 正の屈折力を有する第1レンズ群、負の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群、正の屈折力を有する第4レンズ群、および正の屈折力を有する第5レンズ群を物体側からこの順に配設してなり、
ズーミング時に前記第1レンズ群、前記第3レンズ群、および前記第5レンズ群は固定とされ、前記第2レンズ群、および前記第4レンズ群は可動とされ、
前記第2レンズ群を光軸方向に移動することにより全系の焦点距離を変化させ、前記第4レンズ群を光軸方向に移動することにより結像位置の変動を補正するとともに物体距離の変化に伴う結像位置の変化を補正するズームレンズであって、下記条件式(1)〜(4)を満足するように構成されてなることを特徴とする高倍率ズームレンズ。
−0.5<f2/(fw・ft)1/2<−0.2 (1)
1.1<f3/(fw・ft)1/2<1.4 (2)
0.4<f3/f1<0.7 (3)
6.0<f5/f3<7.0 (4)
ただし、 f2:第2レンズ群の焦点距離
fw:広角端における全系の焦点距離
ft:望遠端における全系の焦点距離
f3:第3レンズ群の焦点距離
f1:第1レンズ群の焦点距離
f5:第5レンズ群の焦点距離 - 前記第3レンズ群を構成するレンズのレンズ面のうち、少なくとも1面が非球面により形成されてなることを特徴とする請求項1記載の高倍率ズームレンズ。
- 前記第5レンズ群が正および負の屈折力を有する2枚のレンズからなることを特徴とする請求項1または2記載の高倍率ズームレンズ。
- 前記第5レンズ群の正の屈折力を有するレンズのアッベ数が下記条件式(5)を満足し、かつ前記第5レンズ群の負の屈折力を有するレンズのアッベ数が下記条件式(6)を満足するように構成されてなることを特徴とする請求項3記載の高倍率ズームレンズ。
ν+>57 (5)
ν−<26 (6)
ただし、 ν+:第5レンズ群の正の屈折力を有するレンズのアッベ数
ν−:第5レンズ群の負の屈折力を有するレンズのアッベ数
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