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JP3698316B2 - 電着塗装方法 - Google Patents

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JP3698316B2 JP2001396336A JP2001396336A JP3698316B2 JP 3698316 B2 JP3698316 B2 JP 3698316B2 JP 2001396336 A JP2001396336 A JP 2001396336A JP 2001396336 A JP2001396336 A JP 2001396336A JP 3698316 B2 JP3698316 B2 JP 3698316B2
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満雄 坂下
仁志 荒木
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三協アルミニウム工業株式会社
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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、アクリル−メラミン系アニオン電着塗料を用いた電着塗膜の表面接着性改善に係る電着塗装方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から知られている電着塗装方法として例えば、特開昭59−41496号では電着塗装後の被処理物に酸性処理液中で直流陽極電圧を印加することによって電着塗膜を艶消しする方法、あるいは、特開平9−192592号では電着塗膜を水蒸気雰囲気中で焼付処理することによって電着塗膜とシーリング材との接着性を向上する方法、などが開示されている
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記の如く、電着塗装方法では例えば塗膜表面外観を艶消しにすることや表面の接着性を改善することが大きな課題となっている。しかし、上記に例示した従来の電着塗装方法では以下の如き問題点がある。
【0004】
例えば電着塗装後の被処理物に酸性処理液中で直流陽極電圧を印加することによって電着塗膜を艶消しする方法では電圧印加処理のため、給電設備費や電力費を要するためコスト高となる。また、電着塗膜を水蒸気雰囲気中で焼付処理することによって電着塗膜とシーリング材との接着性を向上する方法は焼付乾燥設備に水蒸気雰囲気を均一に供給するための、また設備の水蒸気雰囲気による腐食を防止するための特別な工夫を要するものである。
【0005】
【発明の目的】
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたもので、アクリル−メラミン系アニオン電着塗料を用いた電着塗膜表面への2トーン塗装やラミネート加工、断熱形材成形のためのウレタン注入処理、あるいは建材のシーリング処理等における塗料、接着剤、シーリング材等との接着性を低コストで改善することができ、かつ、良好な塗膜外観の得られる電着塗装方法を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、被処理物にアクリル−メラミン系アニオン電着塗料を用いて電着塗装を施し、電着塗装した被処理物を、スルホサリチル酸を濃度10〜100g/lの範囲で含有する浴温20〜40℃の酸性水溶液に1〜5分間浸漬し、而る後に塗膜の焼付乾燥を行なうことを特徴とする電着塗装方法の構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0008】
【発明の作用】
本発明は、上記した如く電着塗膜を未硬化段階でスルホサリチル酸水溶液への浸漬処理を行ない塗膜表面に作用させることによって改質し、表面の接着性を向上させることを可能としたものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて説明する。
【0010】
【実施例1】
アルミニウム合金押出形材A6063S−T5(以下、アルミ形材という)を、130g/lの硫酸水溶液に25℃で5分間浸漬して脱脂洗浄を行なった後、50g/lの水酸化ナトリウム水溶液に50℃で5分間浸漬してエッチング処理を行ない、次いで、このアルミ形材を40g/lの硝酸に20℃で2分間浸漬してスマット除去を行なった後、20℃の150g/l硫酸水溶液中でアルミ形材を陽極に接続して電流密度100A/m2で34分間の電解処理を行ない、表面に9μmの陽極酸化皮膜を生成させた。続いてこのアルミ形材を80℃の脱イオン水で8分間の湯洗処理を行ない、これを冷却後、アクリル−メラミン系アニオン艶消し電着塗料(神東塗料株式会社製エスビアED5020)浴中で、アルミ形材を陽極として140Vで3分間の通電を行ない、形材表面に7μmの電着塗膜を形成させた後、水洗して表面に付着した余剰の塗料成分を除去した。このアルミ形材表面に形成した未硬化の電着塗膜を、スルホサリチル酸2水和物を5g/l〜150g/lの範囲で7水準に濃度を変化させた水溶液中で、10℃〜50℃の範囲で5水準に浴温を変化させて浸漬し、浸漬時間を0.5分〜7分間と5水準に変化させて所定時間経過後に取り出して再度水洗を行なった後、180℃で30分間の焼付乾燥を行なった。このようにして浴濃度、浴温及び浸漬時間の各種組み合せによって得られた電着塗装アルミ形材製品について表面外観評価及び塗膜性能試験を行なうとともに、この電着塗装アルミ形材製品に常温乾燥型のアクリルウレタン樹脂塗料(藤倉化成株式会社製アクレタンM白エナメル)を静電スプレー塗装方法により30μmの膜厚になるように上塗り塗装した後、100℃で30分の乾燥を行ない、このアクリルウレタン樹脂塗膜の乾燥から48時間経過後に上塗り塗膜の表面接着性試験を実施した。
【0011】
表1及び表2は上記実施例1のスルホサリチル酸2水和物水溶液を用いた浸漬処理における、スルホサリチル酸の濃度及び浴温、浸漬時間の各種組み合せにおいての焼付乾燥後の電着塗膜の表面外観・塗膜性能及び上塗り塗膜の表面接着性をテストした結果を示している。表1及び表2において網懸けの有無及び濃淡は電着塗膜外観の評価及び耐アルカリ性・キャス耐食性等の塗膜性能試験評価結果を表わしている。塗膜外観評価基準としては外観異常(艶ムラ)の有無、色差1.5以上の変色の有無、30%以上の光沢変化の有無、等を見る事によって実用上問題のある外観変化があるか否かを判定した。塗膜性能評価基準としてJISH8602に規定される耐アルカリ性試験及びJISH8681に規定されるキャス耐食性試験においてRN9.8以下となる塗膜性能の劣化の有無を判定した。表1及び表2において、網がけの無い部分は塗膜外観及び塗膜性能共に異常の全く認められなかった条件範囲を示しており、淡い網掛け部分は塗膜性能の劣化は認められなかったが塗膜外観に実用上問題のある変化が認められた条件範囲を示している。また、濃い網掛け部分は塗膜外観に実用上問題のある変化が認められると同時に塗膜性能の劣化も認められた条件範囲を示している。また、表1及び表2において○及び×は上塗り塗膜の表面接着性の評価を表わしており、表面接着性評価基準として、JISK5400に規定される1mm桝の碁盤目試験を行ない、上塗り塗膜の接着性評価が100/100のものを“○”で表わし、100/100に満たない、即ち、少しでも塗膜剥離が認められたものを“×”で表わした。
【0012】
【表1】
Figure 0003698316
【0013】
【表2】
Figure 0003698316
【0014】
表1は浸漬時間は3分間一定として、浴濃度と浴温度を変化させて調べたものである。表1より酸水溶液としてスルホサリチル酸2水和物水溶液を用いた場合の浸漬処理好適条件範囲として浴濃度10〜100g/l、浴温度20〜40℃であれば、外観不良や性能低下を招く事無しに表面接着性が良好に確保されることが明らかとなった。表2は浴温度20〜40℃において浴濃度と浸漬時間を変化させた場合の影響について調べたものであり、表2より浸漬処理好適条件範囲として浴濃度10〜100g/l、浸漬時間1〜5分であれば、外観不良や性能低下を招く事無しに表面接着性が良好に確保されることが明らかとなった。
【0015】
【比較例1】
実施例1と同様のアルミ形材を、実施例1と同様の脱脂−エッチング−スマット除去−陽極酸化処理−湯洗処理−電着塗装処理−余剰塗料の水洗の各処理を行なった後、酸水溶液への浸漬処理を行なわずに直ちに180℃で30分の焼付乾燥処理を施して得られた電着塗装アルミ形材製品について、実施例1と同様に常温乾燥型のアクリルウレタン樹脂塗料(藤倉化成株式会社製アクレタンM白エナメル)を上塗り塗装して、実施例1と同様の表面接着性テストを行なった。
【0016】
比較例1により得られた製品では上塗り白色塗膜は電着塗膜との界面で全て剥離、即ち、塗膜密着性は0/100であった。この結果を前記実施例1と比較してみると、実施例1の酸水溶液への浸漬処理を施す事によって上塗り塗膜の表面接着性は飛躍的に向上することが明らかである。
【0024】
表1及び表2及びその他の実験結果から本発明者等が得た知見によると、電着塗膜の焼付乾燥前にスルホサリチル酸の水溶液への浸漬処理は、浴濃度及び浴温が低くなるほど、また浸漬時間が短いほど電着塗膜の表面外観は良好であるが表面接着性の改善効果は弱くなり、逆に、浴濃度及び浴温が高くなるほど、また浸漬時間が長くなるほど電着塗膜の表面接着性の改善効果は高まるが、同時に度を過ぎると表面外観及び電着塗膜性能にも悪影響が出てきていることが明らかである。このことは上記した酸浴への浸漬処理の浴濃度、浴温、浸漬時間によって重合硬化反応前の電着塗膜表面への酸成分の吸着量が変化し、吸着した酸成分の量に対応して焼付乾燥時の塗膜の重合硬化反応の促進度合いが変化し、表面接着性の改善効果も変化するとともに、度を過ぎると表面外観への悪影響、更には塗膜欠陥の発生にもつながることをも示しているものであると考えられ、本発明者等はこれらの知見に基づいて上述の最適条件範囲を見出したものである。尚、種々実験の結果、この時の酸浸漬処理浴のpH値は、概ねpH3未満の強酸域においてより顕著な表面接着性改善効果が得られることが判っている。
【0025】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明者等は請求項1に記載の電着塗装処理を被処理物に施す事によって、得られた電着塗装製品の表面外観及び塗膜性能を損なうことなく表面接着性が良好に改善される効果があることを見出したものであり、そのことによって、その後の建材製品等としての使用時の二次加工、例えば、電着塗膜表面への2トーン塗装やラミネート加工、断熱形材成形のためのウレタン注入処理、あるいは建材のシーリング処理等においてそれぞれの処理のためにサンディングによる地荒らしや専用プライマーの塗布あるいはコロナ放電処理等のような特別な前処理を施さずとも電着塗膜と上塗り塗料、接着剤、シーリング材等との良好な接着性を確保することを可能としたものである。したがって、本発明の電着塗装方法によれば、通常の電着塗装処理設備において電着塗膜の水洗処理後焼付処理の前に酸水溶液への浸漬処理工程を付加するだけで、電着塗膜表面の接着性改善のためのその他の特別な前処理が不要になり、製品の塗膜の表面接着性の改善効果と共に二次加工品質の向上効果も得られ、同時にそのための生産コストの上昇も抑えることができるという大きな効果が得られるものである。

Claims (1)

  1. 被処理物にアクリル−メラミン系アニオン電着塗料を用いて電着塗装を施し、電着塗装した被処理物を、スルホサリチル酸を濃度10〜100g/lの範囲で含有する浴温20〜40℃の酸性水溶液に1〜5分間浸漬した後に塗膜の焼付乾燥を行なうことを特徴とする電着塗装方法。
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