JP3680801B2 - 回転電機の巻線接合方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車やトラックに搭載される車両用交流発電機等の回転電機の固定子巻線の接合を行う回転電機の巻線接合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、回転電機の固定子巻線の接合には、電極と巻線溶接部との間でアーク放電させ、その熱を利用して巻線を溶融接合するアーク溶接が一般に採用されている。例えば、特許第3104700号公報には、固定子鉄心に形成された複数のスロットに、U字状の電気導体を挿入した後に、その先端部側を周方向に傾斜させ、その後、隣接する先端部同士をアーク放電によって接合する方法が開示されている。
【0003】
図10は、上述した特許第3104700号公報に開示された接合方法の対象となる従来の固定子の構造を示す部分的な斜視図である。また、図11は図10に示した固定子巻線の接合部の配置を示す平面図である。図12は、従来の接合装置の要部を示す図である。図13は、従来の接合装置に含まれる棒状プラス電極の形状を示す断面図である。なお、同じような固定子の構造を示す従来技術としては、特許第3196738号公報に開示された技術が知られている。
【0004】
図10に示すように、固定子鉄心400の各スロットから4本の電気導体404が突出している場合に、径方向に見るとその突出部分が交互に反対周方向に傾斜している。これらの電気導体404の先端が接合部406であり、図11に示すように、径方向に並んだ4つの接合部406の2つずつが組になって接合作業が行われる。
【0005】
具体的には、この接合作業は、図12に示すように、内径側プラス電極410と外径側プラス電極412によって接合部406の内径側および外径側を拘束するとともに、周方向に隣接する各接合部406の間に棒状プラス電極414を配置した状態で行われる。このような状態において、接合部406に溶接電極としてのトーチ420を近づけることにより、接合部406の溶接による接合が行われる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来の接合装置を用いた接合方法では、径方向に一列に並んだ接合部の間に隙間がある場合に、内径側プラス電極410および外径側プラス電極412によって内径側および外径側を拘束しようとしても、各接合部406がこの隙間部分に向かって移動してしまうため、接合部406の位置決めが容易でないという問題があった。また、接合部406が移動すると、各接合部406と内径側プラス電極410あるいは外径側プラス電極412との間の電気的な接触が不十分になり、接合不良が発生するおそれがあるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、接合部の位置決めを確実に行うことができ、接合不良の発生を防止することができる回転電機の巻線接合方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、本発明の回転電機の巻線接合方法は、固定子鉄心に形成された複数のスロットのそれぞれに電気導体を装備し、複数の同心円上であって異なる同心円において周方向にずらして並べられた一対の電気導体の端部をそれぞれ溶接した巻線を形成するために、全ての前記同心円上に並べられた一対の電気導体の端部の内周側および外周側にそれぞれ当接するように内周側拘束部材と外周側拘束部材とを配置することにより一対の電気導体の端部を径方向に個別に拘束する拘束工程と、拘束工程において拘束された一対の電気導体の端部を溶接する溶接工程とを有している。同心円上であって異なる同心円において周方向にずらして一対の電気導体の端部が配置されている場合に、これらの端部が個別に径方向に拘束された状態で接合が行われるため、それぞれの端部の位置決めを確実に行うことができ、これにより接合不良の発生を防止することができる。
【0009】
また、上述した拘束工程では、同心円上で隣り合う一対の電気導体の端部の間に周方向拘束部材を配置することにより、一対の電気導体の端部を径方向および周方向に個別に拘束することが望ましい。これにより、電気導体の端部の位置決めをさらに確実に行うことができ、接合不良の発生を確実に防止することができる。
【0010】
また、上述した周方向拘束部材の一部は、内周側拘束部材と一体に形成されており、周方向拘束部材の残りは、外周側拘束部材と一体に形成されていることが望ましい。これにより、周方向拘束部材を配置する工程を省略することができ、工程の簡略化が可能になる。
【0011】
また、上述した溶接工程は、溶接工具を活性化する活性化工程と、活性化工程が溶接工具を活性化した状態を維持しつつ、溶接工具と同心円上に並べられた一対の電気導体の端部とを、それらの間の距離を維持しながら周方向に相対的に移動させる移動工程とを有することが望ましい。これにより、通電の初期における不安定な印加電流の影響を軽減するとともに、接合作業の高速化が可能になる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した一実施形態の回転電機の固定子巻線の製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、一実施形態の車両用交流発電機の全体構成を示す断面図である。図1に示すように、本実施形態の車両用交流発電機1は、固定子2、回転子3、ハウジング4、整流器5等を含んで構成されている。
【0013】
回転子3は、界磁として作用し、シャフト6と一体になって回転しており、ランデル型ポールコア7、界磁コイル8、スリップリング9、10、送風装置としての斜流ファン11および遠心ファン12を備えている。シャフト6は、プーリ20に連結されており、車両に搭載された走行用のエンジン(図示せず)により回転駆動される。
【0014】
ランデル型ポールコア7は、一組のポールコアを組合わせて構成されている。このランデル型ポールコア7は、シャフト6に組付られたボス部71と、ボス部71の両端より径方向に延びるディスク部72と、12個の爪状磁極部73により構成されている。
【0015】
プーリ側の斜流ファン11は、ポールコア7の端面に溶接などによって固着されたベース板111に対して鋭角の傾斜を持つブレードと直角のブレードとを有し、回転子3と一体になって回転する。反プーリ側の遠心ファン12は、ポールコア7の端面に溶接などによって固着されたベース板121に対して直角のブレードのみを有する。
【0016】
ハウジング4は、フロントハウジング4aとリアハウジング4bからなっており、その軸方向端面には吸入孔41が、外周両肩部には、固定子2の第1コイルエンド群31aと第2コイルエンド群31bのそれぞれの径方向外側に対応して冷却風の排出孔42が設けられている。
【0017】
整流器5は、固定子2から出力される交流電圧を直流に変換する整流作用を行っており、車両用交流発電機1の反プーリ側の端部に設けられている。
次に、固定子2の詳細について説明する。図2は、固定子2の部分的な断面図である。図3は、固定子鉄心32に装着されるセグメント33の模式的形状を示す斜視図である。
【0018】
固定子2は、電機子として作用し、固定子鉄心32と、固定子鉄心32に形成された複数のスロット35内に配置された複数の電気導体としてのセグメント33によって構成された固定子巻線31と、固定子鉄心32と固定子巻線31との間を電気絶縁するインシュレータ34とを備えている。
【0019】
図2に示すように、固定子鉄心32には、多相の固定子巻線31を収容できるように、内径側に開口を有する複数のスロット35が形成されている。本実施形態では、回転子3の磁極数に対応して、三相の固定子巻線31を収容するために、36個のスロット35が、等間隔に配置されている。
【0020】
固定子鉄心32のスロット35に装備された固定子巻線31は、1本1本の電気導体として把握することができ、複数のスロット35のそれぞれの中には、偶数本(本実施形態では4本)の電気導体が収容されている。また、一のスロット35内の4本の電気導体は、固定子鉄心32の径方向に関して内側から内端層、内中層、外中層、外端層の順で一列に配列されている。これらの電気導体には、絶縁被膜37として、ポリアミドイミド等の被膜材が塗布されている。
【0021】
これら電気導体が所定のパターンで接続されることにより、固定子巻線31が形成される。なお、本実施形態では、スロット35内の電気導体は、第1コイルエンド群31a側においては、連続線を配置することにより一端が接続され、また、第2コイルエンド群31b側においては、他端を接合することにより接続される。
【0022】
各スロット35内の1本の電気導体は、所定の磁極ピッチ離れた他のスロット35内の1本の他の電気導体と対をなしている。特に、コイルエンド部における複数の電気導体間の隙間を確保し、整列して配置するために、一のスロット35内の所定の層の電気導体は、所定の磁極ピッチ離れた他のスロット35内の他の層の電気導体と対をなしている。
【0023】
例えば、一のスロット内の内端層の電気導体331aは、固定子鉄心32の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ離れた他のスロット内の外端層の電気導体331bと対をなしている。同様に、一のスロット内の内中層の電気導体332aは固定子鉄心32の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ離れた他のスロット内の外中層の電気導体332bと対をなしている。そして、これらの対をなす電気導体は、固定子鉄心32の軸方向の一方の端部において連続線を用いることにより、ターン部331c、332cを経由することで接続される。したがって、固定子鉄心32の一方の端部においては、外中層の電気導体と内中層の電気導体とを接続する連続線を、外端層の電気導体と内端層の電気導体とを接続する連続線が囲むこととなる。このように、固定子鉄心32の一方の端部においては、対をなす電気導体の接続部が、同じスロット内に収容された他の対をなす電気導体の接続部により囲まれる。外中層の電気導体と内中層の電気導体との接続により中層コイルエンドが形成され、外端層の電気導体と内端層の電気導体との接続により端層コイルエンドが形成される。
【0024】
一方、一のスロット35内の内中層の電気導体332aは、固定子鉄心32の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ離れた他のスロット35内の内端層の電気導体331a’とも対をなしている。同様に、一のスロット35内の外端層の電気導体331b’は、固定子鉄心32の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ離れた他のスロット35内の外中層の電気導体332bと対をなしている。そして、これらの電気導体は固定子鉄心32の軸方向の他方の端部において接合により接続される。
【0025】
したがって、固定子鉄心32の他方の端部においては、外端層の電気導体と外中層の電気導体とを接続する接合部と、内端層の電気導体と内中層の電気導体とを接続する接合部とが、径方向に並んでいる。外端層の電気導体と外中層の電気導体との接続、および内端層の電気導体と内中層の電気導体との接続により隣接層コイルエンドが形成される。このように固定子鉄心32の他方の端部においては、対をなす電気導体の接続部が、重複することなく並べて配置される。
【0026】
さらに、複数の電気導体は、ほぼ矩形断面(平角断面)をもった一定の太さの電気導体を所定形状に成形したU字状のセグメントにより提供される。図3に示すように、内端層の電気導体と外端層の電気導体とが、一連の電気導体をほぼU字状に成形してなる大セグメント331により提供される。また、内中層の電気導体と外中層の電気導体とが一連の電気導体をほぼU字状に成形してなる小セグメント332により提供される。
【0027】
大セグメント331と小セグメント332とは基本セグメント33を形成する。そして、基本セグメント33を規則的にスロット35に配置して、固定子鉄心32の周りを2周するコイルが形成される。しかし、固定子巻線の引出線を構成するセグメントおよび1周めと2周めとを接続するターン部は基本セグメント33とは形状の異なる異形セグメントで構成される。本実施形態の場合、異形セグメントの本数は3本となる。1周めと2周めとの接続は、端層と中層の接続となるが、この接続により異形コイルエンドが形成される。
【0028】
固定子巻線31の製造工程を以下に説明する。
(挿入工程)基本セグメント33は、U字状の小セグメント332のターン部332cをU字状の大セグメント331のターン部331cが囲むように揃えられ、固定子鉄心32の軸方向側面の一方側から挿入される。その際、大セグメント331の一方の電気導体331aは固定子鉄心32の一のスロット35の内端層に、小セグメント332の一方の電気導体332aは前記一のスロット35の内中層に、そして、大セグメント331の他方の電気導体331bは固定子鉄心32の前記一のスロット35から時計方向に1磁極ピッチ離れた他のスロット35の外端層に、小セグメント332の他方の電気導体332bも前記他のスロット35の外中層に挿入される。
【0029】
その結果、図2に示すように一のスロット35には内端層側から、上述した電気導体として直線部331a、332a、332b’、331b’が一列に配置される。ここで、直線部332b’、331b’は、1磁極ピッチずれた他のスロット35内の電気導体と対をなしている大小のセグメントの直線部である。
【0030】
(折り曲げ工程)挿入後、第2コイルエンド群31bにおいて、端層側に位置している直線部331a、331bは、大セグメント331が開く方向に接合部331d、331eが1.75スロット分捻られて折り曲げられる。そして、中層に位置している直線部332a、332bは、小セグメント332が閉じる方向に接合部332d、332eが1.25スロット分捻られて折り曲げられる。その結果、第2コイルエンド群31bにおいては、径方向に隣接する電気導体は周方向の逆向きに傾斜している。以上の構成を、全てのスロット35のセグメント33について繰り返す。これにより、接合部331d、332dによって形成される一対の接合部と、接合部331e、332eによって形成される一対の接合部が、それぞれ同心円上に2列に、しかも周方向の位置がずれるように(同一の径方向に重ならないように)配置される。
【0031】
図4は、固定子2の接合部の配置状態を示す図である。図4に示すように、内周側の同心円上には、接合部331d、332dによって形成される一対の接合部が配置されており、外周側の同心円上には、接合部332e、331eによって形成される一対の接合部が配置されている。そして、それぞれの同心円上に配置された接合部は、同一径方向に重ならないように互いに周方向にずらして配置されている。
【0032】
(接合工程)そして、第2コイルエンド群31bにおいて、外端層の接合部331e' と外中層の接合部332e、並びに内中層の接合部332dと内端層の接合部331d' とが、溶接、超音波溶着、アーク溶接、ろう付け等の手段によって電気的導通を得るように接合されて固定子2が得られる。
【0033】
次に、接合工程の詳細について説明する。図5は、接合工程において用いられる本実施形態の巻線接合装置の外観および構成を示す図である。
図5に示す巻線接合装置100は、溶接工具としての溶接電極を含むトーチ102と、トーチ102を移動させるロボットアーム104と、トーチ102に電力を供給する溶接電源106と、トーチ102に不活性ガスを供給するガス供給装置108と、接合対象としてのセグメント33が装備された固定子2を固定する固定台110と、固定子2のセグメント33を拘束する拘束装置112と、固定台110を回転させる回転駆動装置114と、ロボットアーム104、回転駆動装置114、溶接電源106およびガス供給装置108を制御する制御装置116とを含んで構成されている。
【0034】
トーチ102は、タングステンによって形成されており、ロボットアーム104の先端に装備されている。トーチ102は、溶接電源106のマイナス側端子に接続されており、溶接工具としての溶接電極を含んでいる。また、トーチ102には、溶接時のアークの安定と溶接部の酸化防止のために、アルゴンやヘリウム等の不活性ガスがガス供給装置108から供給される。なお、このように、一方の電極にタングステンを用い、アルゴン等の不活性ガスを供給しながら溶接を行う構成は、TIG(Tungsten Inert Gas arc welding)として一般に知られている。
【0035】
ロボットアーム104は、制御装置116からの制御信号を受けて、トーチ102が設けられている先端を、溶接対象としてのセグメント先端の接合部に沿って接続部が並ぶ方向に沿って移動させる。
図6は、図5に示した拘束装置112の詳細を示す図である。図6に示すように、拘束装置112は、外周側に配置された一対の接合部331e、332eと、外周側に配置された一対の接合部331d、332dとを個別に径方向両側(外径側と内径側)から拘束するために、内周側拘束部材112aおよび外周側拘束部材112cを備えている。これらの内周側拘束部材112aおよび外周側拘束部材112cは、プラス電極として作用する。
【0036】
内周側拘束部材112aは、接合部331d、332eのそれぞれを内周側から押圧して拘束する。また、この内周側拘束部材112aの一部には、外周側に突出した周方向拘束部材112bが一体に形成されている。この周方向拘束部材112bは、内周側に配置された一対の接合部331d、332dの周方向位置を拘束するためのものであり、これら隣接する接合部331d、332d間であって、これらの周方向側面に当接するように配置される。
【0037】
外周側拘束部材112cは、接合部331e、332dのそれぞれを外周側から押圧して拘束する。また、この外周側拘束部材112cの一部には、内周側に突出した周方向拘束部材112dが一体に形成されている。この周方向拘束部材112dは、外周側に配置された一対の接合部331e、332eの周方向位置を拘束するためのものであり、これら隣接する接合部331e、332e間であって、これらの周方向側面に当接するように配置される。
【0038】
上述した接合工程は、内周側拘束部材112aおよび外周側拘束部材112cによって各接合部331d、332d、331e、332eを拘束する拘束工程と、この拘束工程において拘束された各接合部に対して溶接を行う溶接工程を含んでいる。
【0039】
拘束工程が終了した段階では、内周側拘束部材112aおよび外周側拘束部材112cによって各接合部331d、332d、331e、332eが拘束され、その先端部分のみが突出した状態になっている。次の溶接工程では、トーチ102を各接合部に近づけることにより、トーチ102と各接合部との間でアーク溶接を実施する。なお、この溶接工程では、トーチ102には溶接電圧が印加されており、この活性化状態を維持するとともに、トーチ102の溶接電極と各接合部との距離を一定に保ちながら、回転駆動装置114によって固定子2を回転させながら溶接を行っている。これにより、連続的なアーク溶接が可能になり、通電の初期における不安定な印加電流の影響を軽減するとともに、溶接作業(接合作業)の高速化が可能になる。
【0040】
このように、本実施形態では、同心円上に配置された接合部が、異なる同心円上では周方向にずらして配置されるため、そのぞれの接合部を内周側拘束部材112aおよび外周側拘束部材112cを用いて個別に径方向の両側および周方向に拘束して位置決めを行うことが可能になる。これにより、プラス電極としての内周側拘束部材112aおよび外周側拘束部材112cのそれぞれと各接合部との間の電気的な接触が確実になり、接合不良の発生を防止することができる。
【0041】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、内周側拘束部材112aの一部に一体的に周方向拘束部材112bが形成され、外周側拘束部材112cの一部に一体的に周方向拘束部材112dが形成されている場合について説明したが、これらの周方向拘束部材112b、112dは、内周側拘束部材112aや外周側拘束部材112cとは別体の構成としてもよい。
【0042】
図7は、拘束装置の変形例を示す図である。図7に示す拘束装置112Aは、円環状の内周側拘束部材212aおよび外周側拘束部材212cと、各接合部の間に周方向に形成された隙間に配置される周方向拘束部材212b、212dとを備えている。また、各接合部の先端は、周方向拘束部材212b、212dの端面から突出しており、対となる接合部のみが溶接されるようになっている。内周側拘束部材212a、外周側拘束部材212cと周方向拘束部材212b、212dとを別々に形成することにより、それぞれを単純な形状で実現することができるため、これらの部材のコスト低減や長寿命化が可能になる。
【0043】
また、上述した実施形態では、異なる同心円上にそれぞれ並んだ接合部が、周方向に沿って完全にずれた場合、すなわち、径方向に全く重ならない場合について説明したが、図8に示すように、径方向に部分的に重なる場合にも本発明を適用することができる。このように、一部であっても径方向に重ならない部分がある場合には、この重ならない部分を径方向両側から内周側拘束部材および外周側拘束部材によって挟み込むことができるため、各接合部の確実な位置決めと、これに伴う接合不良の発生防止を図ることができる。
【0044】
また、上述した実施形態では、二重の同心円上に配置された接合部を考えたが、図9に示すように、三重の同心円上あるいはそれ以上に重なった同心円上に沿って3列以上に接合部を配置するようにしてもよい。このような場合であっても、異なる同心円上に配置された各接合部を周方向にずらして配置することにより、各接合部を径方向両側および周方向に拘束することが可能となり、各接合部の位置決めと接合不良の発生防止を図ることができる。
【0045】
また、上述した実施形態では、不活性ガスを用いたアーク溶接を各接合部に対して連続的に行う場合を説明したが、各接合部の位置決めに着目した場合には、他の種類の接合方法を用いて各接合部の接合を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態の車両用交流発電機の全体構成を示す断面図である。
【図2】固定子の部分的な断面図である。
【図3】固定子巻線を構成するセグメントの斜視図である。
【図4】固定子の接合部の配置状態を示す図である。
【図5】接合工程において用いられる本実施形態の巻線接合装置の外観および構成を示す図である。
【図6】図5に示した拘束装置の詳細を示す図である。
【図7】拘束装置の変形例を示す図である。
【図8】固定子の変形例を示す図である。
【図9】固定子の変形例を示す図である。
【図10】従来の固定子の構造を示す部分的な斜視図である。
【図11】図10に示した固定子巻線の接合部の配置を示す平面図である。
【図12】従来の接合装置の要部を示す図である。
【図13】従来の接合装置に含まれる棒状プラス電極の形状を示す断面図である。
【符号の説明】
2 固定子
31 固定子巻線
32 固定子鉄心
33 セグメント
100 巻線接合装置
102 トーチ
104 ロボットアーム
106 溶接電源
108 ガス供給装置
110 固定台
112 拘束装置
112a 内周側拘束部材
112b、112d 周方向拘束部材
112c 外周側拘束部材
114 回転駆動装置
331d、331e、332d、332e 接合部
Claims (3)
- 固定子鉄心に形成された複数のスロットのそれぞれに電気導体を装備し、複数の同心円上であって異なる同心円において周方向にずらして並べられた一対の電気導体の端部をそれぞれ溶接して巻線を形成する回転電機の接合方法において、
全ての前記同心円上に並べられた前記一対の電気導体の端部の内周側および外周側にそれぞれ当接するように内周側拘束部材と外周側拘束部材とを配置するとともに、前記同心円上で隣り合う前記一対の電気導体の周方向側面に当接するように周方向拘束部材を配置することにより、前記一対の電気導体の端部を径方向及び周方向に個別に拘束する拘束工程と、
前記拘束工程において拘束された前記一対の電気導体の端部を溶接する溶接工程と、
を有することを特徴とする回転電機の巻線接合方法。 - 請求項1において、
前記周方向拘束部材の一部は、前記内周側拘束部材と一体に形成されており、前記周方向拘束部材の残りは、前記外周側拘束部材と一体に形成されていることを特徴とする回転電機の巻線接合方法。 - 請求項1または2において、
前記溶接工程は、
溶接工具を活性化する活性化工程と、
前記活性化工程が前記溶接工具を活性化した状態を維持しつつ、前記溶接工具と前記同心円上に並べられた前記一対の電気導体の端部とを、それらの間の距離を維持しながら周方向に相対的に移動させる移動工程と、
を有することを特徴とする回転電機の巻線接合方法。
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