JP3680602B2 - 圧電アクチュエータ、時計および携帯機器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電アクチュエータおよびこの圧電アクチュエータを用いた時計並びに携帯機器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
圧電素子は、電気エネルギーから機械エネルギーへの変換効率や、応答性に優れていることから、近年、圧電素子の圧電効果を利用した各種の圧電アクチュエータが開発されている。この圧電アクチュエータは、カメラのシャッター機構、プリンタのインクジェットヘッド、あるいは超音波モータ等の分野に応用されている。
【0003】
図19は、従来の圧電アクチュエータを用いた超音波モータを模式的に示す図である。この超音波モータに用いられている圧電アクチュエータ300は、つっつき型と呼ばれるものであり、発振部301と、この発振部301からの交流電圧により伸縮する圧電素子302と、振動片303とにより構成されている。ここで、振動片303は、基端部が圧電素子302に固定されるとともに先端部がロータ350の側面に当接しており、ロータ350の法線に対してやや傾いた姿勢をなしている。このような構成において、発振部301からの交流電圧により圧電素子302が伸縮すると、これにより振動片303の先端がきつつきのようにロータ350の側面を叩き、ロータ350を歩進駆動するのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した圧電アクチュエータは、携帯機器に用いられるようになってきており、最近では特に腕時計への搭載が期待されている。さらに詳述すると次の通りである。
【0005】
まず、腕時計は、ユーザが手首に装着して携帯するものであるため、小型であることが望まれている。この腕時計を小型化するためには、腕時計内部のカレンダ表示機構を小さくする必要がある。ここで、既存のカレンダ表示機構は、電磁式のステップモータの回転駆動力を運針用の輪列を介して日車に間欠的に伝達し、この日車を送り駆動するように構成したものが一般的である。しかし、このカレンダ表示機構に用いられるステップモータは、コイル等の各種部品を組み合わせて構成しているので、小型にすることには限界がある。
【0006】
以上のような理由により、ステップモータに代わる小型の駆動手段が求められており、この駆動回路として圧電アクチュエータに期待が集まったのである。
【0007】
しかしながら、このような期待に応えうる小型の圧電アクチュエータはこれまで提供されていない。これは次の理由によるものである。
【0008】
まず、圧電アクチュエータを構成する圧電素子は、電圧印可によって生じる変位が微少であり、通常、この変位は数μm程度である。従って、必要な駆動力を得るためには、この圧電素子に生じる変位を増幅して駆動対象に伝達する何等かの増幅機構が必要となる。
【0009】
しかし、この増幅機構は、ある程度の厚さを持ったものであり、増幅機構の構造上、これを小さくすることは困難であった。このため、圧電アクチュエータを十分に小型化することは困難だったのである。
【0010】
また、圧電アクチュエータを腕時計等の携帯機器に用いる場合、さらに以下に説明する問題を解決しなければならない。
【0011】
まず、腕時計等の携帯機器は、バッテリを電源とするのが一般的であるため、これに搭載される圧電アクチュエータは低い駆動電圧で駆動できるものであることが求められる。
【0012】
しかし、圧電素子に増幅機構を付加した圧電アクチュエータの場合、電源からの電気エネルギーが圧電素子によって運動エネルギーに変換され、この運動エネルギーが増幅機構を介して駆動対象に与えられる際に、増幅機構において運動エネルギーの損失が生じる。
【0013】
従来の圧電アクチュエータは、この増幅機構における運動エネルギーの損失が大きく、これを低減することが困難であった。このため、駆動電圧を十分に低く抑えることが困難であり、このことが、圧電アクチュエータを腕時計等の携帯機器に適用することを妨げる一要因となっていたのである。
【0014】
本発明は、このような背景の下になされたものであり、圧電素子の振動を効率よく駆動対象に伝えることができ、かつ、小型化に適した圧電アクチュエータおよびこれを用いた時計ならびに携帯機器を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明に係る圧電アクチュエータは、単一の圧電素子と、支持体と、平面部を有しており、当該平面部と直交する方向を回転軸方向として前記支持体に対して回転可能に支持されるロータと、前記支持体に固定される固定部、および前記ロータの前記平面部と対向する位置に配置され、前記平面部とほぼ直交し、前記平面部との接触部に曲面を持つ可動端を有する単一の板状の部材であって、前記圧電素子からの圧力を受けた場合に、前記可動端が前記ロータにおける前記平面部に接触しながら移動することにより前記ロータを駆動する駆動力伝達部材とを具備することを特徴としている。
【0016】
この構成によれば、ロータを回転駆動させる可動端がロータの平面部に対向する位置、つまりロータの平面部に重なるように配置されている。従って、装置の小型化が可能となる。また、衝撃等が加わった場合にも、ロータに重なるように駆動力伝達部材の可動端が配置されているため、別に押さえ部材等を設けずに、ロータが支持体からはずれたりすることを抑制できる。また、装置の大型化を伴うことなく、ロータ径を大きくすることができるので、容易に大きなトルクを得ることができる。
【0017】
また、本発明に係る圧電アクチュエータは、圧電素子と、支持体と、平面部を有しており、当該平面部と直交する方向を回転軸方向として前記支持体に対して回転可能に支持されるロータと、前記支持体に固定される固定部、および前記ロータの前記平面部と対向する位置に配置される可動端を有する板状の部材であって、前記圧電素子からの圧力を受けた場合に、前記可動端が前記ロータにおける前記平面部に接触しながら移動することにより前記ロータを駆動する駆動力伝達部材とを具備し、前記駆動力伝達部材は、前記圧電素子からの圧力を受けた場合に、ねじれ振動を生じる位置に配置されていることを特徴としている。このようにすれば、圧電素子から駆動力伝達部材に圧力が加えられた場合に、可動端の変位が大きくなり、より大きな駆動力をロータに伝達することができる。
【0018】
また、前記駆動力伝達部材における前記固定部を、前記圧電素子からの圧力を受けてねじれ振動が生じているときの該振動の節となる位置に配置するようにしてもよい。このようにすれば、振動エネルギーの損失が減少し、効率が向上する。
【0019】
また、前記駆動力伝達部材を、前記圧電素子からの圧力を受けてねじれ振動が生じているときの該振動の腹となる位置に、前記圧電素子からの圧力を受けるように配置するようにしてもよい。このようにすれば、圧電素子の圧力を効率よく駆動力伝達部材に伝達することができる。
【0020】
また、本発明に係る圧電アクチュエータは、単一の圧電素子と、支持体と、平面部を有しており、当該平面部と直交する方向を回転軸方向として前記支持体に対して回転可能に支持されるロータと、前記支持体に固定される固定部、および前記ロータの前記平面部と対向する位置に配置され、前記平面部との接触部に曲面を持つ可動端を有する単一の板状の部材であって、前記圧電素子からの圧力を受けた場合に、前記ロータにおける前記平面部に対して斜め方向に前記平面部側に向けて移動し、該移動時に前記可動端が前記平面部に接触することにより前記ロータを駆動する駆動力伝達部材とを具備することを特徴としている。このようにすれば、可動端がロータの平面部を押さえつける方向にも移動することになり、ロータの駆動特性が向上する。
【0021】
また、前記駆動力伝達部材における前記固定部の近傍を、前記駆動力伝達部材の他の部分より幅を狭くするようにしてもよい。このようにすれば、圧電素子から駆動力伝達部材に圧力が加えられた場合に、可動端の変位が大きくなり、より大きな駆動力をロータに伝達することができる。
【0022】
また、前記駆動力伝達部材を長手方向を有する板状の部材とし、前記駆動力伝達部材における前記長手方向の一端を前記固定部とし、他端が前記可動端としてもよい。このようにすれば、駆動力伝達部材を長手方向の両端で支持できるので、駆動力伝達部材の支持構造が強固となる。
【0023】
また、前記駆動力伝達部材における前記可動端を、耐摩耗部材で形成するようにしてもよい。このようにすれば、ロータ駆動時の接触部である可動端およびロータの耐久性を向上させることができる。
【0024】
また、前記ロータにおける前記平面部を、耐摩耗部材で形成するようにしてもよい。このようにすれば、ロータ駆動時の接触部である可動端およびロータの耐久性を向上させることができる。
【0025】
また、前記耐摩耗部材としてポリイミド、フッ化樹脂またはナイロンを用いるようにしてもよい。このようにすれば、耐久性が向上すると共に、ロータ駆動時の接触部である可動端とロータとの間に生じる摩擦が大きくなり、駆動特性が向上する。
【0026】
また、前記ロータを、樹脂で形成するようにしてもよい。このようにすれば、耐久性が向上すると共に、ロータ駆動時の接触部である可動端とロータとの間に生じる摩擦が大きくなり、駆動特性が向上する。また、ロータの回転軸とロータ自体を一体成形することも可能となり、製造コストを低減できる。
【0027】
また、前記ロータにおける前記平面部に凹部を形成するようにしてもよい。このようにすれば、ロータ自体の弾性が大きくなる。従って、ロータと駆動力伝達部材の取付精度が低い場合にも、駆動力を安定させることができる。また、駆動力低下を招くことなく、弾性の小さい駆動力伝達部材を使用することもできる。
【0028】
また、本発明に係る時計は、上述した圧電アクチュエータを具備することを特徴としている。この構成によれば、内蔵される圧電アクチュエータが小型化に適した構造をしているため、時計を小型化することが可能となる。また、内蔵される圧電アクチュエータが高効率であるため、時計全体の消費エネルギーを低減することができる。
【0029】
また、本発明に係る携帯機器は、上述した圧電アクチュエータを具備することを特徴としている。この構成によれば、圧電アクチュエータが小型化に適しているため、機器全体の小型化が容易になるとともに、高効率の圧電アクチュエータを搭載しているので電池寿命が長くなり、携帯用として好適である。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
A.第1実施形態
A−1.腕時計のカレンダー表示機構
まず、図1は本発明の第1実施形態に係る圧電アクチュエータを備える腕時計のカレンダー表示機構を示す図であり、図2はこのカレンダー表示機構付近の断面図である。図1および図2に示すように、このカレンダー表示機構は、圧電アクチュエータA1、中間車101および日や曜が表記されたリング状の日車102を有している。
【0031】
圧電アクチュエータA1は、ロータ100を有しており、ロータ100は、支持体である地板103に回転可能に支持されている。圧電アクチュエータA1は、後述する機構によってロータ100を図1中矢印Yで示す方向に駆動するようになっている。ロータ100に伴って回転する歯車には、地板103に支持される中間車101が噛合されており、中間車101には日車102が噛合されている。この構成により、ロータ100の回転に伴って日車102が図1中矢印Zで示す方向に回転するようになっている。
【0032】
次に、上述したカレンダー表示機構を組み込んだ時計の構成について図3を用いて説明する。同図において、斜線部分に上述したカレンダー表示機構が組み込まれている。カレンダー表示機構(斜線部分)の上側には、円盤状の文字盤201が設けられている。この文字盤201の外周部の一部には、日付を表示するために窓部202が設けられており、窓部202から日車102に表記された日付が覗けるようになっている。なお、文字盤201の下側には、運針203を駆動するムーブメント204が設けられている。この構成の下、日車102が回転することにより、上述した窓部202に表示される日や曜等の表示が切り換わることとなる。
【0033】
A−2.圧電アクチュエータの構成
次に、図4を参照して、本実施形態に係る圧電アクチュエータについて説明する。同図に示すように、圧電アクチュエータA1は、板状の振動板10と、ステータ20と、ロータ100とを備えた構成となっている。振動板10は、圧電素子11と、弾性板として機能するシム部12とを貼り合わせて構成されている。ここで、シム部12としては、リン青銅等の薄板(厚さ0.5mm程度)等を用いることができ、圧電素子11としては、0.2mm程度の圧電素子等を用いることができる。また、圧電素子11の材料としては、チタン酸ジルコニウム酸鉛(PZT(商標))、水晶、ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、メタニオブ酸鉛、ポリフッ化ビニリデン、亜鉛ニオブ酸鉛((Pb(Zn1/3-Nb1/2)O3 1-x-Pb Ti O3 x)xは組成により異なる。x=0.09程度)、またはスカンジウムニオブ酸鉛((Pb((Sc1/2Nb1/2)1-x Tix)O3)xは組成により異なる。x=0.09程度)などの各種のものを用いることができる。
【0034】
振動板10は、図示しない駆動回路からの交流電圧が圧電素子11に印加されることにより振動する。その際の振動モードとしては、図5(a)に示すように振動板10が上下方向に波打つように撓み振動する屈曲モードと、図5(b)に示すように振動板10が長手方向に伸縮する縦振動モードとがある。いずれのモードで振動するかは、圧電素子11の構成によって決定されるが、いずれのモードにおいても振動板10の端部13が図4に示す矢印方向に振動することになる。
【0035】
ステータ20は、振動板10の振動を増幅して駆動対象に伝える駆動力伝達部材である。ステータ20は、略長方形の形状をした薄板であり、円弧状の可動端21と、幅が狭くなった括れ部22と、ネジ24によって地板103(図2参照)に固定された固定部23とを有している。
【0036】
図2に示すように、振動板10は、ステータ20の上面に重なるように取り付けられている。また、ステータ20の可動端21は、地板103に軸支されるロータ100の上面(平面部)と対向する位置に配置、つまりロータ100の上面に重なるように配置されている。ステータ20の可動端21は、下方に突出する突起部25を有しており、ステータ20の静止時においては突起部25がロータ100の上面に接触するようになっている。
【0037】
A−3.圧電アクチュエータの動作
次に、上記構成の圧電アクチュエータA1の動作について説明する。まず、図示せぬ駆動回路から振動板10に駆動信号が印加されると、圧電素子11の伸縮によって撓み振動し、ステータ20の上面に取り付けられた端部13を介してステータ20に振動を伝達する。
【0038】
この場合、図6に示すように、一点鎖線で示すステータ20の断面中心より上部に右向きの力が加わることになる。このような力がステータ20に加わると、図7に示すようなねじれがステータ20に生じ、ステータ20にねじれ振動が生じることになる。なお、図7はねじれ振動を生じた場合の一時点でのステータ20を示しており、またステータ20のねじれを明確にするために振幅等を実際より大きく表現した図である。
【0039】
ここで、図8は、ステータ20にねじれ振動が生じた場合の、ステータ20の可動端21の動きを示す図である。同図に示すように、ステータ20にねじれ振動が生じた場合、突起部25の先端部は点a、点b、点c、点aの順番で移動する。つまり、突起部25の先端部は、ほぼ楕円状の軌道に沿って移動することになる。ここで、a点からb点の間を移動する間には、突起部25は図の右下側に移動しようとするが、ロータ100と接触しているため、突起部25の先端部は、ロータ100の上面と接触した状態でほぼ右側に移動することになる。これにより突起部25とロータ100との間に生じる摩擦によってロータ100が突起部25の動きに伴って図中右側(実際には回転方向)にab間の距離を移動させられることになる。b点以降は、突起部25とロータ100とが離間した状態でステータ20が振動して元の位置に戻る。つまり、突起部25の先端部とロータ100とがa点で接触している状態に戻る。従って、突起部25の先端部がbc間およびca間を移動している間は、ロータ100には駆動力が伝わらず、ロータ100が逆回転しないようになっている。このようなステータ20のねじれ振動を利用してロータ100が回転することにより、中間車101を介して日車102が回転させられる。
【0040】
本実施形態に係る圧電アクチュエータA1では、ロータ100とステータ20の一部とが重なった構造となっているため、振動板10の発する振動の増幅部であるステータ20を小さくすることなく、つまり増幅率を小さくすることなく、装置全体の小型化が可能である。
【0041】
また、通常時は、ロータ100の上面にステータ20が重なっており、またステータ20の突起部25がロータ100の上面に接触した状態となっているので、ロータ100を上面から押さえる部材等を別に設ける必要がなく、構成を簡易とすることができる。
【0042】
また、装置の大型化を招くことなく、ロータ100の径を大きくすることができるので、圧電アクチュエータA1の発するトルクを大きくすることができる。これにより、従来装置と比較して圧電素子11に供給する電圧を少なくした場合にも、必要十分なトルクを得ることができるようになる、従って、上述したような低電圧での動作が要求される時計のカレンダー表示機構を駆動するアクチュエータとして使用するのに好適である。
【0043】
また、可動端21の突起部25がロータ100の上面に接触しながら移動することにより、ロータ100を回転させているので、ロータ100の側面を押圧して駆動するアクチュエータと比較してロータ100の厚みを小さくすることができるとともに、簡単な形状のロータ100を用いることも可能となる。
【0044】
また、ステータ20は、ステータ20における長手方向の一端である固定部23が地板103に固定されており、他端が可動端21としてロータ100と接触した状態になっている、つまりステータ20を長手方向の両端部で支持しているので、ステータ20の支持構造が強固となる。従って、上述したように時計に組み込んだ場合にも、落下等の衝撃に対する信頼性が向上する。
【0045】
また、ロータ100との接触部である突起部25をポリイミド、フッ化樹脂またはナイロン等の耐摩耗性に優れた材料により構成すれば、耐久性が向上すると共に、ロータ100と突起部25との間の摩擦が大きくなり、ロータ100駆動時のロータ100と突起部25の滑りが小さくなるため、駆動特性が向上する。また、ロータ100の上面をポリイミド、フッ化樹脂またはナイロン等の耐摩耗性に優れた材料から構成するようにしても同様の効果が得られる。この場合、ロータ100全体を上述したような樹脂で構成すれば、ロータ100における地板103に支持される軸部と円盤部とを一体で構成することが可能となり、低コスト化が可能となる。また、突起部25およびロータ100の上面の両方を、上述した耐摩耗性に優れた材料を用いて構成するようにしてもよい。
【0046】
A−4.変形例
なお、上述した第1実施形態においては、以下のような種々の変形が可能である。
【0047】
(1)ステータ20における地板103に支持される部分である固定部23は、ステータ20の長手方向の端部となっていたが、これに限らず、例えばステータ20にねじれ振動が生じているときの振動の節となる位置、つまり振幅の小さい位置を固定部として地板103に取り付けるようにしてもよい。図9に示すような振動がステータ20に生じる場合、図示の部分が振動の節となり、この場合、図10に示す位置に固定部23を設け、ステータ20を固定すればよい。このようにすれば、振動エネルギーの損失が少なくなり、効率がよくなる。
【0048】
また、ステータ20におけるねじれ振動の腹となる位置、つまり振幅の大きい位置に振動板10を取り付ければ、振動板10の振動を効率よくステータ20に伝達することができる。図9に示すような振動がステータ20に生じる場合には、図10に示す位置に振動板10を取り付ければよい。なお、図9中の破線は、ステータ20の中心部の振幅を平面的に表した図であり、実際にはねじれ振動であるため、図の紙面垂直方向にも振幅を有している。
【0049】
(2)上述した実施形態においては、振動板10をステータ20の上面に取り付けるようにしていたが、ステータ20の下面に振動板10を取り付けるようにしてもよい。他にも、振動板10のステータ20への取付位置は、上述したようにステータ20にねじれ振動を生じさせる位置であればよく、例えば、図11に示すように、振動板10をステータ20の側部に取り付けるようにしてもよい。この場合、図示のように、ステータ20の断面中心より上部に力が加わるように振動板10を取り付ければ、ステータ20にねじれ振動を生じさせることが可能である。
【0050】
(3)上述した実施形態においては、ステータ20の可動端21が円弧状に形成されていたが、このような形状に限定されるわけではなく、可動端21がロータ100の上面に重なるように配置されていれば、図12に示すように可動端21をステータ20の他の部分より幅を狭くするようにしてもよい。
【0051】
(4)ステータ20が静止している時には、ロータ100の上面と可動端21とが接触しない状態であってもよく、ステータ20にねじれ振動が生じた時に、可動端21がロータ100の上面と接触しながら移動することにより、ロータ100を回転させることが可能な構造であればよい。
【0052】
(5)また、図13に示すように、振動板10をステータ20に取り付けて、図中矢印で示すステータ20の属する平面に対して傾斜する方向から力を加えるようにしてもよい。このようにステータ20に対して力を加えた場合にも、上述した実施形態と同様にステータ20にねじれ振動が生じ、ロータ100を駆動することができる。
【0053】
B.第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態に係る圧電アクチュエータA2について説明する。第1実施形態においては、ステータ20にねじれ振動を生じさせるような位置に振動板10およびステータ20が配置されていたが、第2実施形態においては、図14に示すように、薄板状のステータ20の属する平面内でステータ20が振動するように振動板10とステータ20とが配置されている。具体的には、図15および図16に示すように、振動板10の端部13がステータ20の側部に取り付けられている。
【0054】
図16に示すように、第2実施形態においては、ロータ100の属する平面に対して振動板10およびステータ20の属する平面が傾斜するように、振動板10およびステータ20が配置されている。従って、圧電素子11に駆動電圧を印加することにより振動板10がステータ20に振動を伝達した場合、ステータ20が振動し、可動端21は図中矢印で示す方向に移動しようとする、つまりロータ100の上面は可動端21によって図中矢印で示す方向に押圧される。このようにロータ100の上面が押圧されると、可動端21とロータ100の上面との間に生じる摩擦によって、可動端21とロータ100とが接触した状態で図中右側(実際には回転方向側)に移動する。このようにしてロータ100を回転させた後、ステータ20の伸縮に伴って可動端21が元の位置に戻る。
【0055】
本実施形態に係る圧電アクチュエータA2では、上述した第1実施形態と同様にロータ100とステータ20の一部とが重なった構造となっているため、装置の小型化が容易である。また、第1実施形態と同様に、ロータ100の径を大きくできるので、発生トルクを増大させることが可能であり、またロータ100を薄く簡単な形状とすることができる。
【0056】
また、ステータ20におけるロータ100の上面と接触する部分である可動端21をポリイミド、フッ化樹脂またはナイロン等の耐摩耗性に優れた材料により構成すれば、耐久性が向上すると共に、駆動特性が向上する。また、ロータ100をポリイミド、フッ化樹脂またはナイロン等の耐摩耗性に優れた材料により構成しても同様の効果が得られる。
【0057】
なお、第2実施形態においてはロータ100の属する平面に対して振動板10およびステータ20の属する平面が傾斜している場合について述べたが、図17に示すように、振動板10およびステータ20の属する平面とロータ100の属する平面とがほぼ平行となるように配置してもよい。同図に示すように、この例では、可動端21に設けられた突起部25がロータ100の上面に接触し、ステータ20で押さえつけられた状態となっている。この力によってロータ100はたわみ、上面がわずかにステータ20に対して傾くため、駆動力を生じることができる。
【0058】
C.変形例
なお、上述した第1および第2実施形態においては、円盤状のロータ100を用いるようにしていたが、図18に示すように、貫通部(凹部)170が形成されたロータ171を用いるようにしてもよい。このような貫通部170を有するロータ171は、通常の円盤状のロータと比較した場合、ロータ自体の弾性が大きくなる。従って、ステータ20とロータ100との取付精度が低くなった場合にも、ステータ20からロータ100への加圧力をほぼ一定に維持することが可能となり、駆動特性が安定する。また、ロータ171により大きな弾性を持たせることによって、駆動力のばらつきの増大を伴わずに弾性の小さいステータ20を使用することも可能となる。なお、貫通部は必ずしも穴である必要はなく、ハーフエッチングによる凹みなど、ロータの柔軟性を増すことができる凹部であればよいことはもちろんである。
【0059】
また、上述した第1および第2実施形態では、ロータ100の上面に可動端21を接触させてロータ100を駆動するようにしていたが、ロータ100の下面側に可動端21を重ねるように配置し、ロータ100の下面を可動端21と接触させてロータ100を駆動するようにしてもよい。
【0060】
また、上述した第1および第2実施形態においては、本発明に係る圧電アクチュエータを時計のカレンダー表示機構に組み込んだ例を説明したが、これに限らず他の装置に適用することも可能である。特に、電池駆動される携帯機器に適用した場合には、この機器の小型化および低消費電力が容易となる。この場合、本発明が適用される装置のフレーム等の支持部が請求項で示した支持体に相当することになる。また、圧電アクチュエータ自体が、ロータおよびステータを支持するフレーム等を有する構造としてもよい。
【0061】
ところで、機械的な構造物に対して力を一定にして、加振周波数を徐々に大きくしていくと、特定の周波数で構造物の振幅は最大値となり、その後極小値となるといった応答を繰り返す。すなわち、振幅が極大値をとる加振周波数は複数存在し、そのような各加振周波数を固有振動周波数という。そして、固有振動周波数のうち最も小さい固有振動周波数によって加振された際の振動の態様を1次の振動モード、その次に小さい固有振動周波数によって加振された際の振動の態様を2次の振動モード、……、という。構造物は、この固有振動周波数で振動する場合、その機械的なインピーダンスが極小となるため、小さな駆動力で容易に大きな変位が得られる。このような原理を利用し、上述した第1および第2実施形態において、振動板10がステータ20の固有振動周波数の1次ましくは高次の周波数で加振する構成とすれば、ステータ20の機械的インピーダンスが極小となり、小さな駆動力で容易に大きな変位が得られるので、低い電圧での駆動が実現する。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、駆動力伝達部材の一部である可動端がロータの平面部と対向する位置に配置されている、つまりロータと重なった構造になっているため、装置の小型化容易である。また、装置の大型化を招くことなくロータ径を大きくすることができるので、発生トルクを増加させることができる。従って、圧電アクチュエータとしての効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態に係る圧電アクチュエータを備えたカレンダー表示機構の構成を示す平面図である。
【図2】 前記カレンダー表示機構を組み込んだ時計の、前記圧電アクチュエータ付近を示す断面図である。
【図3】 前記カレンダー表示機構を組み込んだ時計の断面図である。
【図4】 前記圧電アクチュエータの全体構成を示す平面図である。
【図5】 (a)は前記圧電アクチュエータの構成要素である振動板が縦モードに振動する様子を示す図であり、(b)は前記振動板が横モードによって振動する様子を示す図である。
【図6】 前記振動板が振動した場合に、前記圧電アクチュエータの構成要素であるステータに加わる力を説明するための図である。
【図7】 前記ステータのねじれ振動時の様子を示す図である。
【図8】 前記ステータのねじれ振動時のステータによるロータの駆動動作を説明するための図である。
【図9】 前記ステータのねじれ振動時の振幅を説明するための図である。
【図10】 前記圧電アクチュエータの変形例を示す平面図である。
【図11】 前記圧電アクチュエータの他の変形例における振動板とステータとの位置関係を説明するための図である。
【図12】 前記圧電アクチュエータのさらに他の変形例を示す平面図である。
【図13】 前記圧電アクチュエータのさらに他の変形例の振動板とステータとの位置関係を説明するための図である。
【図14】 本発明の第2実施形態に係る圧電アクチュエータの構成要素であるステータの振動時の様子を示す平面図である。
【図15】 第2実施形態に係る圧電アクチュエータの全体構成を示す平面図である。
【図16】 第2実施形態に係る圧電アクチュエータの構成要素であるロータと、振動板と、前記ステータとの位置関係を説明するための図である。
【図17】 第2実施形態に係る圧電アクチュエータの変形例を示す図である。
【図18】 第1および第2実施形態に係る圧電アクチュエータの変形例におけるロータを示す平面図である。
【図19】 従来の圧電アクチュエータを用いた超音波モータを模式的に示す図である。
【符号の説明】
10…振動板、11…圧電素子、12…シム部、13…端部、20…ステータ(駆動力伝達部材)、21…可動端、22…括れ部、23…固定部、25…突起部、100…ロータ、101…中間車、102…日車、103…地板(支持体)
Claims (14)
- 単一の圧電素子と、
支持体と、
平面部を有しており、当該平面部と直交する方向を回転軸方向として前記支持体に対して回転可能に支持されるロータと、
前記支持体に固定される固定部、および前記ロータの前記平面部と対向する位置に配置され、前記平面部とほぼ直交し、前記平面部との接触部に曲面を持つ可動端を有する単一の板状の部材であって、前記圧電素子からの圧力を受けた場合に、前記可動端が前記ロータにおける前記平面部に接触しながら移動することにより前記ロータを駆動する駆動力伝達部材とを具備することを特徴とする圧電アクチュエータ。 - 圧電素子と、
支持体と、
平面部を有しており、当該平面部と直交する方向を回転軸方向として前記支持体に対して回転可能に支持されるロータと、
前記支持体に固定される固定部、および前記ロータの前記平面部と対向する位置に配置される可動端を有する板状の部材であって、前記圧電素子からの圧力を受けた場合に、前記可動端が前記ロータにおける前記平面部に接触しながら移動することにより前記ロータを駆動する駆動力伝達部材とを具備し、
前記駆動力伝達部材は、前記圧電素子からの圧力を受けた場合に、ねじれ振動を生じる位置に配置されていることを特徴とする圧電アクチュエータ。 - 前記駆動力伝達部材における前記固定部は、前記圧電素子からの圧力を受けてねじれ振動が生じているときの該振動の節となる位置に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の圧電アクチュエータ。
- 前記駆動力伝達部材は、前記圧電素子からの圧力を受けてねじれ振動が生じているときの該振動の腹となる位置に、前記圧電素子からの圧力を受けるように配置されていることを特徴とする請求項2または3に記載の圧電アクチュエータ。
- 単一の圧電素子と、
支持体と、
平面部を有しており、当該平面部と直交する方向を回転軸方向として前記支持体に対して回転可能に支持されるロータと、
前記支持体に固定される固定部、および前記ロータの前記平面部と対向する位置に配置され、前記平面部との接触部に曲面を持つ可動端を有する単一の板状の部材であって、前記圧電素子からの圧力を受けた場合に、前記ロータにおける前記平面部に対して斜め方向に前記平面部側に向けて移動し、該移動時に前記可動端が前記平面部に接触することにより前記ロータを駆動する駆動力伝達部材とを具備することを特徴とする圧電アクチュエータ。 - 前記駆動力伝達部材における前記固定部の近傍は、前記駆動力伝達部材の他の部分より幅が狭くなっていることを特徴とする請求項1,2,5のいずれかに記載の圧電アクチュエータ。
- 前記駆動力伝達部材は、長手方向を有する板状の部材であり、
前記駆動力伝達部材における前記長手方向の一端は前記固定部であり、他端が前記可動端であることを特徴とする請求項1,2,5,6のいずれかに記載の圧電アクチュエータ。 - 前記駆動力伝達部材における前記可動端は、耐摩耗部材から形成されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の圧電アクチュエータ。
- 前記ロータにおける前記平面部は、耐摩耗部材から形成されていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の圧電アクチュエータ。
- 前記耐摩耗部材は、ポリイミド、フッ化樹脂またはナイロンであることを特徴とする請求項8または9に記載の圧電アクチュエータ。
- 前記ロータは、樹脂から形成されていることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の圧電アクチュエータ。
- 前記ロータにおける前記平面部には、凹部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の圧電アクチュエータ。
- 請求項1ないし12のいずれかに記載の圧電アクチュエータを具備することを特徴とする時計。
- 請求項1ないし12のいずれかに記載の圧電アクチュエータを具備することを特徴とする携帯機器。
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