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JP3680341B2 - 光学活性1,1’−ビス(1−ヒドロキシアルキル)メタロセンの製造方法 - Google Patents

光学活性1,1’−ビス(1−ヒドロキシアルキル)メタロセンの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、キラルなフェロセン誘導体を触媒とする不斉アルキル化反応を用いる光学活性1,1’−ビス(1−ヒドロキシアルキル)メタロセンの製造方法に関し、さらに詳細にはキラルなフェロセン誘導体触媒の存在下、1,1’−ジホルミルメタロセンとジアルキル亜鉛を反応させる光学活性1,1’−ビス(1−ヒドロキシアルキル)メタロセンの製造方法に関する。
【0002】
光学活性1,1’−ビス(1−ヒドロキシアルキル)メタロセンは立体化学を保持したままジアミンに容易に変換することができるので不斉触媒の原料として有用である。例えば該ジアミンから誘導したフェロセニルジホスフィンとPdとの錯体は不斉クロスカップリング反応に利用されている(ジャ−ナルオブケミカルソサエティ,1989年,495.)。
【0003】
【従来の技術】
従来、光学活性1,1’−ビス(1−ヒドロキシアルキル)メタロセンを製造する方法としては酵素を用いるラセミ体及びメソ体混合物の立体選択的酢酸エステル化が知られている(テトラヘドロン:アシンメトリー,1993年,4巻,919頁.)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、酵素による不斉加水分解法はラセミ体/メソ体比が1の混合原料を使用せねばならないことから理論収率が25%と低い。さらに、濃度が低いなど酵素法は工業的に利用するのに適したものではなかった。
【0005】
そこで本発明の目的は、キラルなフェロセニルアミノアルコールを触媒に用い、1,1’−ジホルミルメタロセンへのジアルキル亜鉛の不斉付加反応で、高収率で高い光学純度を有する光学活性1,1’−ビス(1−ヒドロキシアルキル)メタロセンへ変換する、工業的利用に適した製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題に関し鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明は、式[I]又は[II]で表されるキラルフェロセン誘導体触媒の存在下、式[III]で表される1,1’−ジホルミルメタロセンとジアルキル亜鉛を反応させることを特徴とする、式[IV]で表される光学活性1,1’−ビス(1−ヒドロキシアルキル)メタロセンの製造方法
【0007】
【化5】
Figure 0003680341
【0008】
【化6】
Figure 0003680341
【0009】
【化7】
Figure 0003680341
【0010】
【化8】
Figure 0003680341
【0011】
(式[I]及び[II]中、R1はメチル基またはエチル基を示し、R2とR3は同一または異なり、フェニル基、p−クロロフェニル基、p−フルオロフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基またはt−ブチル基を示し、nは4または5のいずれかから選ばれる整数である。式[III]及び[IV]中、MはFeあるいはRuを示し、式[IV]中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、C*は不斉炭素を示す。)である。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明で触媒として用いられる化合物は、式[I]又は[II]の構造を有するキラルなフェロセン誘導体である。これらの誘導体は例えば特開平3−112996及び特開平4−99786号公報等に従って製造することができる。
【0014】
本発明において不斉アルキル化されるカルボニル化合物としては式[III]で示される1,1’−ジホルミルメタロセンである。メタロセンの金属MとしてはFeあるいはRuを示し、具体的には、1,1’−ジホルミルフェロセン、1,1’−ジホルミルルテノセンである。
【0015】
本発明の製造方法に用いられるジアルキル亜鉛としては炭素数1〜6のアルキル基を有するものである。具体的には、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジ(n−プロピル)亜鉛、ジ(iso−プロピル)亜鉛、ジ(n−ブチル)亜鉛、ジ(n−ヘキシル)亜鉛等が用いられる。これらジアルキル亜鉛はヘキサンあるいはトルエンの0.5〜3.0M溶液として使用することが好ましい。
【0016】
本発明の製造方法においては溶剤を用いることが好ましい。該溶媒は反応に対し不活性なものであり、具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、エチルエ−テル、テトラヒドロフラン等のエ−テル類、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。これらの溶媒は1,1’−ジホルミルメタロセン1重量部に対し、通常1〜100重量部、好ましくは5〜80重量部存在させる。
【0017】
1,1’−ジホルミルメタロセンとジアルキル亜鉛を反応させる際、1,1’−ジホルミルメタロセンに対しジアルキル亜鉛は1.5〜5.0当量、好ましくは1.7〜4.0当量とすることが適当である。
【0018】
光学活性な触媒である式[I]または[II]で表されるキラルなフェロセン誘導体の使用量は1,1´−ジホルミルメタロセンに対し通常0.5〜30モル%、より好ましくは1〜15モル%である。
【0019】
反応温度は通常、−10℃〜60℃、より好ましくは0℃〜40℃である。
【0020】
反応時間は1〜100時間である。反応圧力は常圧から加圧のいずれでもよいが、好ましくは1〜3気圧下で行われる。また反応は窒素あるいはアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行われる。
【0021】
反応の進行状況は薄層クロマトグラフィ−より判定することができる。反応後は水を加えて反応を停止し、抽出し、溶媒の濃縮後、再結晶あるいはカラムクロマトグラフィ−より目的生成物を単離することができる。生成物である1,1’−ビス(1−ヒドロキシアルキル)メタロセンのジアステレオ選択性及び光学純度はキラルシフト試薬であるEu(hfc)3を用いたプロトンNMR分析によって決定することができる。一方、反応に用いた触媒は目的生成物の単離の過程で同時に分離回収することができる。
【0022】
この様にして本発明の方法により製造される化合物としては、例えば(S,S)−1,1’−ビス(1−ヒドロキシエチル)フェロセン、(S,S)−1,1’−ビス(1−ヒドロキシプロピル)フェロセン、(S,S)−1,1’−ビス(1−ヒドロキシブチル)フェロセン、(S,S)−1,1’−ビス(1−ヒドロキシエチル)ルテノセン、(S,S)−1,1’−ビス(1−ヒドロキシプロピル)ルテノセン、(S,S)−1,1’−ビス(1−ヒドロキシブチル)ルテノセン、(R,R)−1,1’−ビス(1−ヒドロキシエチル)フェロセン、(R,R)−1,1’−ビス(1−ヒドロキシプロピル)フェロセン、(R,R)−1,1’−ビス(1−ヒドロキシブチル)フェロセン、(R,R)−1,1’−ビス(1−ヒドロキシエチル)ルテノセン、(R,R)−1,1’−ビス(1−ヒドロキシプロピル)ルテノセン、(R,R)−1,1’−ビス(1−ヒドロキシブチル)ルテノセン等を好適なものとして挙げることができる。
【0023】
【実施例】
実施例1
窒素雰囲気下、撹はん機を有するガラス製常圧反応装置に、式[I]で表される触媒として(R)−1−[(S)−2−(ジフェニルヒドロキシメチル)フェロセニル]−1−ピペリジノエタン(28.0mg、0.058mmol、1,1’−ジホルミルフェロセンに対して5mol%)、1,1’−ジホルミルフェロセン(250mg、1.03mmol)およびジクロロメタン9mlの混合物に室温でジメチル亜鉛のトルエン溶液(1.9ml,1.9M、3.68mmol)を加え、室温で40時間反応させた。氷冷した後、水を加えて反応を停止させた。得られた混合物をエ−テルで抽出し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をエタノール中、水素化ホウ素ナトリウムで還元し、常法処理した後、アルミナカラムクロマトグラフィ−で精製し(展開溶媒ヘキサン−酢酸エチル)、収率84%で(S,S)体と(S,R)体との混合物として黄色結晶の1,1’−ビス(1−ヒドロキシエチル)フェロセン(237mg、0.865mmol)を得た。同時に(R)−1−[(S)−2−(ジフェニルヒドロキシメチル)フェロセニル]−1−ピペリジノエタンが26.5mg(94%)回収された。
【0024】
生成物のジアステレオ選択性及び光学純度はキラルシフト試薬Eu(hfc)3を用いたプロトンNMRより決定した。
【0025】
1,1’−ビス(1−ヒドロキシエチル)フェロセン
(S,S)体:(S,R)体(メソ体) = 95:5
(S,S)体の光学純度: >99%ee
さらにヘキサン/ベンゼン=4(容量比)から再結晶化して、(S,S)体のみを単離した。
【0026】
[α]D 25+74.3(c 0.71,C66
融点 62℃。
【0027】
実施例2〜4
アルデヒド、ジアルキル亜鉛、及び反応時間を表1に示した化合物及び条件とした以外は実施例1と同様な操作を繰り返して1,1’−ビス(1−ヒドロキシアルキル)メタロセンを得た。結果を表1に示す。
【0028】
実施例2の生成物
(S,S)−1,1’−ビス(1−ヒドロキシプロピル)フェロセン
(S,S)体:(S,R)体(メソ体) = 95:5
(S,S)体の光学純度: >99%ee。
【0029】
実施例3の生成物
(S,S)−1,1’−ビス(1−ヒドロキシエチル)ルテノセン
(S,S)体:(S,R)体(メソ体) = 95:5
(S,S)体の光学純度: >99%ee。
【0030】
さらに酢酸エチル/ヘキサン=2(容量比)から再結晶化して、(S,S)体のみを単離した。
【0031】
[α]D 25 +51.5(c 0.67,CHCl3
融点 116℃。
【0032】
実施例4の生成物
(S,S)−1,1’−ビス(1−ヒドロキシプロピル)ルテノセン
(S,S)体:(S,R)体(メソ体) = 95:5
(S,S)体の光学純度: >99%ee。
【0033】
実施例5
式[II]で表される触媒として(S)−1−[(R)−2−(ジフェニルヒドロキシメチル)フェロセニル]−1−ピペリジノエタンを用いた以外は実施例1と同様な操作を繰り返して(R,R)−1,1’−ビス(1−ヒドロキシエチル)フェロセンを収率83%で得た。
【0034】
(R,R)体:(S,R)体(メソ体) = 95:5
(R,R)体の光学純度: >99%ee
さらにヘキサン/ベンゼン=4(容量比)から再結晶化して、(R,R)体のみを単離した。
【0035】
[α]D 25 −74.3(c 0.65,C66
融点 62℃。
【0036】
【表1】
Figure 0003680341
【0037】
なお表中の収率は、(S,S)体と(S,R)体との混合物としての収率を表す。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、式[I]または[II]で表されるキラルなフェロセン誘導体を触媒として用いることにより、高いジアステレオ選択性及び光学純度を有する光学活性1,1’−ビス(1−ヒドロキシアルキル)メタロセンの両対掌体を効率よく得ることができる。さらに本発明では高価な不斉源が触媒量で済むのみならず、不斉アルキル化反応を室温付近の極めておだやかな条件下でも高立体選択性を達成することができることから工業的に有利に行うことができる。
【0039】
さらに従来、一般的にキラルアミノアルコールを触媒とするジアルキル亜鉛のアルデヒドへの不斉付加反応では、ジメチル亜鉛をアルキル化剤とした場合、触媒活性及び立体選択性とも低く実用に耐えるものではなかった。しかし、本発明のフェロセン誘導体を触媒として用いるとジメチル亜鉛を用いても、触媒活性及び立体選択性とも高く工業的利用にも充分耐えうるものであることがわかった。通常医薬あるいはその中間体においてはキラルなメチルカルビノール構造を有するものが多く見られる。従って、本発明の方法は医薬あるいはその中間体の製造に利用することが可能である。

Claims (1)

  1. 式[I]又は[II]で表されるキラルフェロセン誘導体触媒の存在下、式[III]で表される1,1’−ジホルミルメタロセンとジアルキル亜鉛を反応させることを特徴とする、式[IV]で表される光学活性1,1’−ビス(1−ヒドロキシアルキル)メタロセンの製造方法
    Figure 0003680341
    Figure 0003680341
    Figure 0003680341
    Figure 0003680341
    (式[I]及び[II]中、R1はメチル基またはエチル基を示し、R2とR3は同一または異なり、フェニル基、p−クロロフェニル基、p−フルオロフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基またはt−ブチル基を示し、nは4または5のいずれかから選ばれる整数である。式[III]及び[IV]中、MはFeあるいはRuを示し、式[IV]中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、C*は不斉炭素を示す。)。
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