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JP3680114B2 - 脳神経障害治療剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は脳神経障害治療剤に関する。より詳細にはHGF(Hepatocyte Growth Factor、肝細胞増殖因子)を有効成分とする脳神経障害治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
HGFは本発明者らが再生肝ラット血清中から成熟肝実質細胞を in vitro で増殖させる因子として見いだしたタンパク質である(Biochem Biophys Res Commun, 122, 1450, 1984)。本発明者らはさらに、HGFをラット血小板より単離することに成功し(Proc. Natl. Acad. Sci, 83, 6489, 1986, FFBS Letter, 22, 311, 1987)、そのアミノ酸配列を一部決定した。さらに、本発明者らは解明されたHGFアミノ酸配列をもとにヒト及びラット由来のHGFcDNAクローニングを行い、このcDNAを動物組織に組換えて肝実質細胞増殖因子をタンパク質として得ることに成功した(ヒトHGF:Nature, 342, 440, 1989;ラットHGF:Proc. Natl. Acad. Sci, 87, 3200, 1990)。
【0003】
HGFの分子量はSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で82〜85kDである。ラットHGF分子は463アミノ酸残基からなるα鎖と233アミノ酸残基からなるβ鎖が1個のジスルフィド結合により架橋したヘテロダイマー構造を持ち、α、β両鎖とも2個のグルコサミン型糖鎖結合部位が存在する。ヒトHGFもまたほぼ同じ生理活性を有し、463アミノ酸残基からなるα鎖と234アミノ酸残基からなるβ鎖とからなる。α鎖中には線溶酵素プラスミンと同様のクリングル構造が4個存在し、β鎖のアミノ酸配列においてもセリンプロテアーゼ活性を有するプラスミンのB鎖と約37%のホモロジーを有する。ラットHGFとヒトHGFのアミノ酸配列のホモロジーはα鎖において91.6%、β鎖において88.9%と非常に高い相同性を持ち、その活性は全く互換性がある。
【0004】
肝実質細胞を特異的に増殖させる因子として発見されたHGFは、本発明者をはじめとする研究者による最近の研究成果によって、生体内で種々の活性を示している事が明らかとなり、研究対象としてのみならずヒトや動物の治療薬などへの応用に期待が集まっている。
本発明者らは、HGFが増殖因子として肝細胞のみならず広く上皮系細胞に働く事を明らかにし、いくつかの発明を成就した。特願平2−158841号においては、HGFが腎の近位尿細管細胞の増殖を促進することより、腎疾患治療剤としての応用開発を、また特願平2−419158号においては、HGFがメラノサイト、ケラチノサイトなど正常上皮細胞の増殖を促進することより、上皮細胞促進剤として創傷治療や皮膚潰瘍治療、毛根細胞の増殖剤などへの応用開発を成就し、その詳細を開示した。特に、HGFはEGF等他の多くの増殖因子に見られるガン化作用やガン細胞増殖活性を有さないことから、より実用に適している。さらに本発明者らは、特願平3−140812号においてHGFのヒト肝ガン由来HepG2細胞株、リンパ芽球ガン由来IM9細胞株などのガン細胞増殖抑制活性を利用し、制ガン剤としても利用可能であることを開示した。
また、最近、発明者らは、HGFが傷害を持つ肺における再生を促進し、肺疾患患者の血漿HGFレベルは健康人におけるそれよりも遥かに高いことをも見出している(Yanagita et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 182, 802-809, 1992)。
このようなHGFの受容体に関して、最近の研究から、c−met原腫瘍遺伝子がHGF受容体をコードしていることが確定的になった(Bottaro et al., Science 251, 802-804, 1991; Naldini et al., Oncogene 6, 501-504, 1991)。
【0005】
HGFの医薬品としての実用性を考える上でさらに重要な点は、HGFがG1期、すなわち増殖期に入った細胞のみを増殖促進し、G0期、すなわち静止期にある細胞には作用しないことである。このことは、傷害のある組織の増殖再生は促進するが、傷害を受けていない組織に対しては全く作用を及ぼさないことを意味する。従って、過剰にHGFを投与しても、あるいは血液などを介して非患部にHGFが到達しても、正常組織にガン化を誘導したり過剰な増殖を起こすことがないと考えられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記のようにHGFが肝細胞だけでなく広く上皮細胞の増殖を促進し、またガン細胞の増殖抑制活性を有することから、生体内ではHGFが組織傷害治癒に働いていることが予想される。HGF産生細胞は上皮細胞自身ではなく、肝臓ではKupffer細胞や類洞壁血管内皮細胞、腎臓では毛細血管内皮細胞、肺では肺胞マクロファージや血管内皮細胞など主に間葉系の細胞により産生されていることが解明されており、近隣細胞から必要に応じてHGFが供給される、いわゆるパラクリン機構が成立していることが明らかにされている。
しかしながら、肝臓や腎臓に傷害を受けたとき、傷害を受けていない臓器、例えば肺などにおいてもHGFの産生が高まることから、いわゆるエンドクリン機構によってもHGFが供給されていると考えられる。
【0007】
このように、HGFは種々の臓器・組織で傷害治癒に働いている増殖因子であるが、脳神経が障害を受けたときにHGFが脳神経の修復に寄与するか否かは明らかにされていない。そこで、本発明者らは、脳におけるHGFの作用を検討し、その結果、HGFにより脳神経細胞の生存が促進されること;脳傷害を受けた生体では、脳内におけるHGF mRNA及びc−met mRNAの発現が顕著に増大することを見出した。本発明はかかる知見に基づいてなされたもので、本発明は、脳神経障害の予防・治療に有用な脳神経障害治療剤を提供すること目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するためになされた本発明の脳神経障害治療剤は、HGFを有効成分として含有することからなる。
上記の構成からなる本発明の有効成分であるHGFは、医薬として使用できる程度に精製されたものであれば、種々の方法で調製されたものを用いることができる。HGFの調製方法としては、各種の方法が知られており、例えば、ラット、ウシ、ウマ、ヒツジなどの哺乳動物の肝臓、脾臓、肺臓、骨髄、脳、腎臓、胎盤等の臓器、血小板、白血球等の血液細胞や血漿、血清などから抽出、精製して得ることができる。また、HGFを産生する初代培養細胞や株化細胞を培養し、培養物(培養上清、培養細胞など)から分離精製してHGFを得ることもできる。あるいは遺伝子工学的手法によりHGFをコードする遺伝子を適切なベクターに組込み、これを適当な宿主に挿入して形質転換し、この形質転換体の培養上清から目的とする組換えHGFを得ることができる(例えば、Nature, 342, 440, 1989、特開平5−111383号公報、Biochem. Biophys. Res. Commun., 163, 967, 1989など参照)。上記の宿主細胞は特に限定されず、従来から遺伝子工学的手法で用いられている各種の宿主細胞、例えば大腸菌、枯草菌、酵母、糸状菌、植物又は動物細胞などを用いることができる。
【0009】
より具体的には、HGFを生体組織から抽出精製する方法としては、例えば、ラットに四塩化炭素を腹腔内投与し、肝炎状態にしたラットの肝臓を摘出して粉砕し、S−セファロース、ヘパリンセファロースなどのゲルカラムクロマトグラフィー、HPLC等の通常の蛋白質精製法にて精製することができる。また、遺伝子組換え法を用い、ヒトHGFのアミノ酸配列をコードする遺伝子を、ウシパピローマウィルスDNAなどのベクターに組み込んだ発現ベクターによって動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、マウスC127細胞、サルCOS細胞などを形質転換し、その培養上清より得ることができる。
【0010】
かくして得られたHGFは、そのアミノ酸配列の一部が欠失又は他のアミノ酸により置換されていたり、他のアミノ酸配列が一部挿入されていたり、N末端及び/又はC末端に1又は2以上のアミノ酸が結合していたり、あるいは糖鎖が同様に欠失又は置換されていてもよい。
【0011】
上記のHGFは、後記実施例に示されるように、脳神経細胞の生存を促進する作用を有し、また脳傷害を受けた生体では脳内におけるHGF mRNA及びc−met/HGF受容体mRNAの発現が顕著に増大することが明らかとなった。 より詳細には、HGF mRNA及びc−met mRNAは、胎生後期、新生児期のラット及び成体ラットの脳に発現することが明らかとなった。HGF mRNA及びc−met mRNAの両者は、成体ラットの脳の全体にわたり広汎に発現し、又海馬及び嗅球の如き類似の領域に比較的高いレベルの発現が見られた。HGF mRNA及びc−met mRNAの両者の分布に見られる類似性は、HGFが肝臓、腎臓及び肺臓と同様に脳内においても役割を持っていることを示唆するものである。
【0012】
HGFは、各種のタイプの細胞の増殖、細胞運動及び形態形成を制御する事が実証されているが、神経細胞タイプの細胞がHGFに応答するか否かは未知である。ラット好クロム性細胞腫PC12細胞は、神経堤由来の細胞であり、アドレナリン作働性の性質を持つ(Greene et al., Proc. Natl. Acad. Sci, 73, 2424-2428, 1976)。PC12細胞は、さらに神経栄養因子により誘発された分化の研究に広く用いられてきた。この細胞は、副腎髄質のクロム親和性細胞の多くの性質を示し、NGF、線維芽細胞成長因子(FGF)又はインタロイキンー6(IL-6)の存在下で培養すると、一連の生理学的変化が起り、交感神経細胞に似た表現型を示すことが知られている(Togari et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 114, 1189-1193, 1983)。HGFは、PC12細胞のDNA合成を促進することはなかったが、PC12細胞の生存率を増加し、その結果生存を延長することが明らかとなった。従って、HGFは、細胞分裂促進因子としてよりもPC12細胞に対する生存因子として機能し得るものと結論できる。神経細胞(ニューロン)の生存を延長するこの能力は、HGFの生物学上の新規な生物活性である。
【0013】
文献(Greene et al. Proc. Natl. Acad. Sci, 73, 2424-2428, 1976)に示される結果と同様に、NGFはPC12細胞のDNA合成及び増殖を阻止する一方細胞の分化を誘導した。NGFは、無血清培地中でのPC12細胞の死滅を防止することが知られている(Greene, L., J. Cell Biol., 78, 747-755, 1978)ので、NGFは分化した表現型のPC12細胞の生存を維持する。NGFとは異なり、HGFはPC12細胞のDNA合成には効果を及ぼさなかったが、細胞の成長を高めた。これはPC12細胞の生存を延長する顕著な能力によるものと考えられる。従って、HGFはNGFとは別の経路によってPC12細胞の生存を維持し、HGFの効果はむしろEGFの持つ効果に類似すると考えられる。しかし、HGFとEGFの持つ成長促進効果は、相加的であると考えられる為に、これらの因子は類似してはいるが、別個の細胞内情報伝達経路を経てPC12細胞の成長と生存を制御するものと思われる。
【0014】
PC12細胞において、高親和性HGF受容体が存在(細胞当たり185箇所でKdは40pMである)することは、PC12細胞がHGFのターゲット細胞であり、またPC12細胞の生存の延長が高親和性受容体により媒介されることを明らかに示すものである。他方、NGFによりPC12細胞を分化誘導すると、HGF受容体の数が著しく減少した。この実験結果から、HGFは分化した細胞に対するよりは未分化のPC12細胞に対して生物学的な作用を及ぼすことが考えられる。PC12細胞における成長因子受容体の分化に伴う減少は、EGFに関する報告によっても認められている(Huff et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 89, 178-180, 1979など)。上記からPC12細胞が分裂期から分化した状態に変化する場合には、成長因子受容体の利用ができなくなり、かかる変化により分化した細胞と未分化の細胞の成長因子に対する応答性に差異が生じたことが考えられる。中枢神経系組織由来のT98G、GOTO及びSCCH−26細胞も又、高親和性HGF受容体を発現している。HGFは、これらの細胞のDNA合成を促進することはなかったが、これらの細胞はHGFに応答する可能性が考えられる。
【0015】
また、in vivoでの神経細胞(ニューロン)特有の性質を保持していると考えられる海馬ニューロンの初代培養系においてHGFが生存を延長したことは、全く新たな知見である。この実験結果は、HGFが脳内のニューロンに対してはin vivoにおいても生存因子として機能することを示すものである。これを裏付ける現象として、HGF mRNA及びc−met/HGF受容体mRNAの両者の発現が成体ラットの脳内の虚血障害の後に顕著に増大したことが挙げられる。
前述のように、HGFは、各種の器官、及び組織の再生の為の“栄養因子”として機能することが考えられる。今回の結果と併せて判断すれば、HGFが脳内での“栄養因子”としての役割を果たすことによりニューロン及び他の細胞の退行変性による死滅を防止し、脳内の各種の傷害に対してニューロンの生存を助長する作用を有することを示している。HGFの有する特有の生物活性(細胞増殖促進、細胞運動の亢進及び形態形成誘導)、及び神経組織に対する想定誘導因子、更にニューロンに対する生存因子としてのHGFの活性は、HGFが脳の組織誘導、器官発生及び生体恒常性の維持に関して極めて重要な役割を果たしていることを示す。
【0016】
以上のように、HGFは脳神経細胞の生存を促進させる作用を有し、また脳傷害を受けた生体では脳内におけるHGF mRNA及びc−met/HGF受容体mRNAの発現が顕著に増大することから、本発明の脳神経障害治療剤は神経変性疾患、脳卒中、脳梗塞、痴呆、頭部外傷などに対して有用である。ここで、神経変性疾患とは、神経細胞が萎縮又は変性脱落する病気であり、例えば、アルツハイマー病、アルツハイマー型老年痴呆症、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン氏病等が挙げられる。
【0017】
本発明の治療剤は種々の製剤形態(例えば、液剤、固形剤、カプセル剤など)をとりうるが、一般的には有効成分であるHGFのみ又はそれと慣用の担体と共に注射剤とされるか、又は慣用の担体と共に経口剤とされる。当該注射剤は常法により調製することができ、例えば、HGFを適切な溶剤(例えば、滅菌水、緩衝液、生理食塩水等)に溶解した後、フィルター等で濾過して滅菌し、次いで無菌的な容器に充填することにより調製することができる。注射剤中のHGF含量としては、通常0.0002〜0.2(W/V%)程度、好ましくは0.001〜0.1(W/V%)程度に調整される。また、経口薬としては、例えば、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、軟又は硬カプセル剤、液剤、乳剤、懸濁剤、シロップ剤などの剤形に製剤化され、これらの製剤は製剤化の常法に準じて調製することができる。製剤中のHGF含量は、剤形、適用疾患などに応じて適宜調整することができる。
【0018】
製剤化に際して、好ましくは安定化剤が添加され、安定化剤としては、例えば、アルブミン、グロブリン、ゼラチン、マンニトール、グルコース、デキストラン、エチレングリコールなどが挙げられる。さらに、本発明の製剤は製剤化に必要な添加物、例えば、賦形剤、溶解補助剤、酸化防止剤、無痛化剤、等張化剤等を含んでいてもよい。液状製剤とした場合は凍結保存、又は凍結乾燥等により水分を除去して保存するのが望ましい。凍結乾燥製剤は、用時に注射用蒸留水などを加え、再溶解して使用される。
【0019】
本発明の製剤は、該製剤の形態に応じた適当な投与経路により投与され得る。例えば、注射剤の形態にして静脈、動脈、皮下、筋肉内等に投与することができる。その投与量は、患者の症状、年齢、体重などにより適宜調整されるが、通常HGFとして0.01mg〜100mgであり、これを1日1回ないし数回に分けて投与するのが適当である。
【0020】
【発明の効果】
本発明の治療剤において、有効成分であるHGFは脳神経細胞の生存を促進し、傷害を受けた脳の再生・修復を図ることができる。従って、本発明の治療剤は、各種の脳神経障害疾患(例えば、痴呆、アルツハイマー病、アルツハイマー型老年痴呆症、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン氏病、脳卒中、脳梗塞、頭部外傷等)の予防・治療に有用である。
【0021】
【実施例】
以下、実施例及び製剤例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、以下の実験で用いた材料及び方法は下記のとおりである。
材料及び方法
(1)材料
実験には雄のWistar系ラットを使用した。ハイボンド-N、[α-32P]dCTP、Na[125I]及びMegaprime DNA標識システムはAmersham社製を用いた。Biodyne-BはPall社(EastHills, N. Y.)から、ランダムプライマー DNA標識キッド及びOligotex dT30(商標名)は宝酒造社(Kyoto)及びRoche社(Tokyo)からそれぞれ購入したものを使用した。
【0022】
(2)成長因子
ヒト組換体HGFは、ヒト組換体HGF cDNAをトランスフェクトしたCHO細胞の培養上清から精製した(Nakamura et al., Nature 342, 440-443, 1989; Seki et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 172, 321-327, 1990)。マウスの顎下腺から精製した2.5S神経成長因子(NGF)は、Biomedical Technology社(Stoughton, MA) から購入した。ヒト組換体上皮細胞成長因子(EGF)は、アース製薬社(赤穂、日本)から提供を受けた。
【0023】
(3)ノザン(Northern)ハイブリダイゼーション
ノザン分析用に、全RNAは、酸グアニジニウムチオシアネート−フェノール−クロロホルム法により精製した。全RNAを、1.0%アガロース/ホルムアルデヒトゲル電気泳動法により分離し、Biodyne-B ナイロンメンブランフィルターに移した。
ラットのHGF cDNAのEcoR1フラグメント(1.4 kb)(α−鎖の第4クリングル(kringle)領域、全β−鎖及び3'−非翻訳領域の一部をコード化するRBC-1クローン)、ポリメラーゼーチェーン反応(PCR)により増幅・調製したラットのc−met cDNA(0.8 kb)又はラットのグルタールアルデヒト 3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH) cDNAを、ランダムプライマーDNA標識キット又はMegaprime DNA標識システムを用いて[α-32P]dCTPにより標識化し、プローブとして用いた。
【0024】
ハイブリダイゼーションは、50(w/v)%ホルムアミド、5× NaCl/Pi/EDTA(0.18M NaCl,10mM NaH2PO4, pH 7.7, 1mM Na2EDTA)、2× Denhardt's、1.0% SDS、0.3%ナトリウム N−ラウロイル サルコシネート、及び100μg/mlサーモン精子DNAからなる溶液中において42℃の条件で24時間にわたって行った。フィルターは、0.2× NaCl/Pi/ EDTA-0.1% SDSを用い65℃で8分間洗い、次に増感スクリーンを用いて−70℃下にて、Fuji-X線フィルム上でオートラジオグラフィーを行った。
【0025】
(4)細胞培養
PC12ラット好クロム性細胞腫、T98Gヒト神経膠芽細胞腫、GOTO及びSCCH−26ヒト神経芽細胞腫の各細胞は、日本癌研究所資源バンク(Japanese Cancer Research Resources Bank)から入手した。PC12細胞は12%牛胎児血清(FCS)を添加したRPMI 1640培地中で培養した。T98G細胞は、非必須アミノ酸(8.9mg/l L-アラニン、15.0mg/l L-アスパラギン、13.3mg/l L-アスパラギン酸、14.7mg/l L-グルタミン酸、11.5mg/l L-プロリン、10.5mg/l L-セリン、及び7.5mg/l グリシン)、1.1mg/ml ピルベート及び10% FCSを添加したEagleの最少培地(MEM)中で培養した。GOTO細胞は、RPMI 1640とMEM培地の(1:1)の混合培地(10% FCSを添加)中で培養した。SCCH−26細胞は10% FCSを添加したES培地中で培養した。
【0026】
(5)HGFの放射性コード[125I]ラベル化
ヒト組換体HGFをクロラミン−T法により放射性ヨードラベル化した。放射性ヨードラベル化法の詳細は、文献(Higuchi & Nakamura, Biochem. Biophys. Res. Commun. 176, 599-607, 1991)に記載されたとおりである。この方法を簡単に説明すれば、1.5M燐酸ナトリウム緩衝液pH 7.0(10μl)、0.5μg HGF(17μl)及び0.5mCi Na[125I](14Ci/mg l, IMS 30)を、シリコン処理した試験管内で混合し、次に5μlのクロラミン−T溶液(100μg/ml)を30秒間隔で4回加えることにより反応を開始した。反応は、20μlの50mM N−アセチル−L−チロシン(Sigma社)、200μlの60mM沃化カリ及び200μlの尿素溶液(1M酢酸中、1.2g/ml)を加えることにより停止した。125I−HGFは、4mM HCl、75mM NaCl及び1mg/mlウシ血清アルブミン(BSA, Sigma社)により平衡化したセファデックスG-25 カラム(Pharmacia社)を用いた分子篩クロマトグラフィーにより分離した。このようにして調製した125I−HGFの比活性は70-160 mCi/mg蛋白質であった。
【0027】
(6)125I−HGF結合アツセイ
培養した細胞についての結合アツセイは、下記のように行われた。PC12、T98G、GOTO及びSCCH−26細胞を極めて短時間のトリプシン処理により培養プレートから分離した。懸濁した細胞を、シリコン処理した試験管(Assist社)中で、各種の濃度の125I−HGFを含む結合用緩衝液中、10℃下で、過剰量の非標識HGFの存在下又は非存在下に、1時間にわたりインキュベートした。細胞を、ジ−n−ブチルフタレート及びジ−(2−エチルヘキシル)フタレートの混合液(3:2)からなるオイルクッション上に載せ、4℃下で5分間12,000gで遠心分離した。水層及び油層を取り除いた後、細胞沈渣に特異的に結合した125I−HGFを、γ−カウンターによりカウントした。全ての結合実験は、トリプリケート(3重)にて実施した。
【0028】
(7)PC12細胞の細胞成長、生存及びDNA合成の測定
細胞成長を測定するために、コラーゲンを予め塗布した6ウエルプレート(Corning社)上に細胞を104細胞/cm2の割合で播種し、24時間培養した。培地を5% FCSを含む新しい培地に変え、成長因子を添加した。培地は3日目毎に変え、その都度成長因子を加えた。トリプシン処理により細胞を分散した後、細胞の数をヘマトサイトメーターを用いてカウントした。データーは、3回の測定で得られた値の平均値を用いた。
PC12細胞の生存率を求めるために、細胞を6ウエルプレートに5×104細胞/cm2の割合で播種し、24時間培養した。培地は1%のFCSを含む新しい培地に変えた。
DNA合成の測定には、PC12細胞をコラーゲンでコートした24ウエルプレート(Costar社)上に105細胞/ウエルの密度で播種し、翌日、培地をFCS濃度の低い(2.5%)新しい培地に変え、24時間培養した。成長因子を添加し、細胞を24時間培養した後、1μCiの125I−デオキシウリジン(2200 Ci/mM、New England Nuclear社)を用いて12時間にわたり標識化した。培養細胞は、PBS及び氷冷10%(w/v)TCAで、それぞれ1回洗った。細胞を1M NaOHにより可溶化し、核に取り込まれた放射活性をγ−カウンターによりカウントした。
【0029】
(8)蛋白質アツセイ
蛋白質濃度は、ウシ血清アルブミンを標準物質として用い、マイクロBCA蛋白質アツセイシステム(Pierce Chemical社)により測定した。
【0030】
(9)海馬ニューロンの初代培養
海馬を18日胚のラット胎児から切り出し、0.25%トリプシン中で37℃下で8分間にわたりインキュベートした。溶液を除去してから、残留トリプシンを適量のFCS又はウマ血清(HS)を用いて阻害した。細胞は、プラスチック製のチップを通して分散させた。分散したニューロンを、ポリエチレンイミン(Sigma社)で予めコートした48ウエルプレート(Coster社)に105細胞/cm2の密度で播種した。ニューロンは、5% FCS及び5% HSを添加したDME(Dulbecco's Modified Eagle's)培地とHamのF12培地の(1:1)の混合培地中で、90%空気/10%CO2の加湿のインキュベーター(37℃)中で成育させた。培地は、播種から12−24時間後に、FCS又はHSに代えて、10% NU-血清(Collaborative Research社)を含むDMEを用いた。
【0031】
(10)脳虚血実験
生後9週間の雄Wistar系ラットを使用した。脳虚血は、中央大脳動脈への血流を停止するために右内頚動脈に塞栓を挿入することにより行った。塞栓は、2時間にわたって挿入した後に除去し、血流を再び循環させた。再灌流から適当な時間の経過後にラットを屠殺し、左脳と右脳を別々に摘出した。
【0032】
実施例1
脳内におけるHGF mRNAとc−met mRNAレベルの変化
ラットの発達中における脳内のHGF mRNA及びHGF受容体レベルの変化を、前述のノザンブロット分析により調べた。即ち、全RNA(50μg/レーン)を1.0%アガロース/ホルムアルデヒドゲル中で電気泳動した後に、Biodyne-βフィルターに移した。メンブレンを、材料及び方法の項に記載のとおり、32P−ラベル化されたラットのHGF cDNA又はラットc−met cDNAプローブを用いてハイブリダイズした。その結果を図1に示す。図において、下側の図は内部標準のグルタールアルデヒド 3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH)のバンドを示す。
【0033】
上記の図1は、胎生後期、新生児期のラット及び成体ラットの脳におけるHGF mRNA及びc−met mRNAの発現の変化を示している。HGF mRNAは、胎生後期では脳内において極めて低いレベルでしか検出されなかったが、出生後には増大し、成体では最大値に達した。他方、c−met mRNAは、胎生後期の脳において発現し、出生後には著しく増大し、5日目にピークに達した。しかし、c−met mRNAレベルは成体になる迄に大幅に低下した。HGF及びその受容体mRNAが脳内において胎生後期から成体まで連続的に発現されることを示すこの結果は、HGFが或る役割を脳内において果たしていることを示すものである。
HGFの脳内において果たすことの可能な役割を検討する為に、次にHGF mRNAとc−met mRNAの脳内の各部位における発現を調べ、さらにHGFのニューロンに及ぼす効果を下記のようにin vitroで分析した。
【0034】
実施例2
HGF mRNA及びc−met mRNAの成体ラットの脳内各部位における発現
成体ラットの脳の各部位におけるHGF mRNA及びc−met mRNAの発現を前述のノザンブロット分析により調べた。即ち、全RNAをレーン当たりそれぞれ30μg及び50μgの割合で電気泳動し、Biodyne-βフィルターに移した。メンブレンは、材料及び方法の項に記載のとおり、32P−ラベル化したラットのHGF cDNA及びラットc−met cDNAプローブを用いてハイブリダイズした。その結果を図2に示す。図において、下側の図は、臭化エチジウム染色により可視化した18S及び28S rRNAのバンドである。
【0035】
上記の図2は、成体ラットの脳の各部位におけるHGF mRNA及びc−met mRNAの発現を示す。HGF mRNAは、脳内の様々な部位で検出され、海馬、嗅球、大脳皮質及び小脳において比較的高いレベルで発現していた。c−met mRNAもまた脳の様々な部位において発現しており、海馬及び嗅球における発現のレベルは比較的高かった。
【0036】
実施例3
PC12細胞の成長及び生存への影響
脳におけるHGFの機能を調べるために、PC12細胞の培養系を用いた。
▲1▼ 最初に、HGFのPC12細胞の増殖に対する影響を調べるためにPC12細胞を5% FCSを含む培地中で、HGFが存在する場合と存在しない場合に分けて培養した。即ち、PC12細胞を、コラーゲンをコートした6ウエルプレートにウエル当たり105個の密度で播種した。翌日、培地を5% FCS を含む新しい培地に変え、細胞をHGFの存在しない状態で(○)、1ng/ml のHGFの存在下で(●)、3ng/ml のHGFの存在下で(△)、又は10ng/ml のHGFの存在下で(▲)、それぞれ所定日数培養した後、細胞数を測定した(材料及び方法の項参照)。その結果を図3Aに示す。各値は3回測定の平均値で標準偏差は各値の0.3%以下であった。
図3Aに示したように、PC12細胞に対するHGFの増殖促進効果は培養の4日目から培養中の10日間にわたって認められ、HGFは、添加量に依存して細胞数を増やし、1、3、10ng/ml のHGFを添加した場合、それぞれの細胞数は、HGF非存在下に比べ、1.1倍、1.3倍及び1.4倍となった。
【0037】
▲2▼ PC12細胞の増殖は、NGFにより停止するのに対し、EGFにより促進されることが判っているために、HGF、EGF、NGF及びこれらの組合せのPC12細胞の成長に及ぼす影響を比較した。PC12細胞は上記▲1▼の如く培養し、成長因子は下記の濃度で用いた:HGF10ng/ml;EGF10ng/ml;NGF20ng/ml。細胞数は細胞をプレートに播種した後、8日目に測定した。その結果を図3Bに示す。各値は3回測定の平均値であり、標準偏差は各値の0.3%以下であった。
図3Bに示したように、PC12細胞の数は、10ng/mlHGFの添加により1.4倍に増加したのに対し、10ng/ml EGFを添加した場合の増加率は、2.1倍であった。10ng/ml HGFと10ng/ml EGFを組み合わせた場合には、成長因子の加えていない場合に比較して細胞は2.4倍に増加した。このようにHGF及びEGFは、PC12細胞の増殖を相加的に促進した。上記に反し、PC12細胞の増殖は、既に知られているように、20ng/ml NGFによっては影響を受けることはなかった。更に、PC12細胞の数は、同時にNGFを加えた時には、HGFによっても増加しなかった。
【0038】
▲3▼ HGFがPC12細胞中において細胞分裂を促進するか否かを調べるために、HGFのDNA合成への影響を検討した。即ち、コラーゲンをコートした24ウエルプレート上にPC12細胞を105細胞/ウエルの密度で播種した。125I−デオキシウリジンの取り込み量は材料及び方法の項に記載の方法で測定した。その結果を表1に示す。なお、各値は3回の測定の平均値及び標準偏差は示す。
表1に示したように、HGF及びEGFの両者は、PC12細胞のDNA合成を有意に促進することはなかったのに対し、NGFはDNA合成を投与量に依存して阻害した。
【0039】
【表1】
Figure 0003680114
【0040】
▲4▼ 上記のように、HGFは、PC12細胞の細胞分裂を促進しなかったので、HGFがPC12細胞の生存を延長するか否かを検討するため、1%の FCSを含む培地中で培養したPC12細胞の生存に対するHGFのもたらす効果を調べた。即ち、PC12細胞を、コラーゲンをコートした6ウエルプレートにウエル当たり5×105細胞の密度で播種した。翌日、培地を1% FCSを含有する新たな培地に変え、1ng/ml(●)、3ng/ml(△)、10ng/ml(▲)の各濃度のHGFの存在下で、又はHGFの存在しない状態でそれぞれ所定日数培養した後、細胞数を測定した。その結果を図4に示す。なお、各値は3回の測定の平均値であり、標準偏差は各値の0.6%以下であった。
図4に示したように、HGFの存在しない場合、全細胞の約40%は4日間の培養中に培養器から死滅し、10日目迄に細胞の大部分が死滅した。これに反し、HGFが存在する場合には、細胞数の減少は認められなかった。PC12細胞数は、HGFの存在下で少なくとも13日の培養期間中は維持され、この条件下では1ng/ml HGFのPC12細胞の生存維持にもたらす効果は完全といえた。
【0041】
▲5▼ PC12細胞の分化に対するHGF、EGF及びNGFの影響を調べた。即ち、PC12細胞は12% FCSを含有する培地中、HGFの存在しない状態下(A)、10ng/mlのHGFの存在下(B)、10ng/mlのEGFの存在下(C)、20ng/mlのNGFの存在下(D)、10ng/mlのHGF+10ng/mlのEGFの存在下(E)、及び10ng/mlのHGF+20ng/mlのNGFの存在下(F)で培養した。細胞は上記の条件下で7日間にわたって培養し、細胞の形態学的な変化を観察した。その結果を図5に示す。
図5に示したように、PC12細胞の形態は円形であったが、NGFを添加するとPC12細胞は神経突起が伸長した交感神経細胞様の表現型へと分化誘導された(図5A及びD)。しかし、HGFの添加後には形態学的な変化は起こらず、HGFにより処理した細胞は、処理されぬ細胞とは識別できなかった(図5B)。EGFも、HGFとEGFとの組み合わせも神経突起の伸長を誘導しなかったから(図5C及びE)、これらの成長因子は、PC12細胞の分化を誘導するものとは思われない。HGFとNGFを同時に添加すると、PC12細胞は形態学的に誘導された。従って、NGFによりトリガーされた細胞内のシグナルが、HGFによりトリガーされたシグナルを殆ど打ち消したことを示唆している。
【0042】
▲6▼ PC12細胞及び他の神経細胞系におけるHGF受容体分析を行った。即ち、NGFの存在下又は非存在下に培養したPC12細胞への125I−HGFの濃度依存的結合を測定した。125I-HGFのPC12細胞への結合は、材料及び方法の項に記載の方法で求めた。その結果を図6に示す。同図中、Aは、NGFの存在せぬ状態で(●)、又は50ng/ml のNGFの存在下で(○)で培養したPC12細胞に対する、125I-HGFの特異的結合の飽和曲線を示し、またBは、125I-HGFのPC12細胞への結合のScatchard プロットを示す。
図6Aに示したように、125I−HGFは、NGFの存在しない状態で培養した未分化のPC12細胞に特異的に結合した。結合に対するScatchard分析により、指数関数的に増殖するPC12細胞は40pMのKd値を持ち、細胞当たり185箇所の結合部位を発現することがわかった(図6B)。PC12細胞を、50ng/ml NGFの存在下で7日間培養し、神経細胞の表現型に分化させた時は、12 5I−HGFの特異的結合が著しく減少した(図6A)。Scatchard 分析により、これらのPC12細胞は27pMのKd値を持ち、細胞当たり15箇所の結合部位を持つことが明らかになった(図6B)。このように、PC12細胞の分化の際に、HGFの細胞当たりの結合部位は185箇所から15箇所に減少した。
また、同様にして、中枢神経組織から由来した他の細胞への125I−HGFの結合を測定した。その結果を表2に示す。表2に示したように、高和力性の受容体は、PC12細胞以外にもヒト神経膠芽細胞腫T98G、ヒト神経芽細胞腫GOTO及びSCCH−26においても見出され、その結合部位は細胞当たりそれぞれ540、120及び60箇所であり、Kd値は30−40pMの間にあった。
【0043】
【表2】
Figure 0003680114
【0044】
実施例4
初代培養海馬神経細胞への影響
HGFがPC12細胞に対する生存因子として働くことが判明したために、次にHGFが初代培養時の神経細胞の生存を延長するか否かを調べた。海馬神経細胞を、HGFの存在しない状態、又は存在下で培養し、培養1日目及び6日目の形態を観察した。その結果を図7に示す。
図7に示したように、海馬神経細胞をHGFなしで6日間培養したときには、細胞の大部分は死滅した。これらの培養細胞にHGFを添加すると生存神経細胞数は増大した。この様にHGFは、初代培養における海馬神経細胞に対する生存因子として作用することが明らかとなった。
【0045】
実施例5
脳虚血後の脳内におけるHGF mRNA及びc−met mRNAの発現の誘導HGFが初代培養系における神経細胞に対して生存因子として働くことが明らかとなったため、脳の傷害による神経細胞の退行変性に対するHGFの保護作用を実験的脳虚血試験で検討した。実験的脳虚血は、材料及び方法の項に記載の方法で行い、血流を再開してから、4、8、12及び24時間後に全RNAを右及び左の脳から抽出し、材料及び方法の項に記載の方法でノザンブロットし、HGF mRNA及びc−met mRNAレベルを分析した。その結果を図8に示す。図において、下側は臭化エチジウム染色により可視化した18S及び28S rRNAのバンドを示す。
この実験では、主要な虚血傷害が右脳に生じたのに対し、左脳は右脳に血流が再び循環した後に右脳よりもやや遅れて傷害された。右脳では血流の循環が再開されてから12時間後にHGF mRNAの誘導が始まり、24時間後に顕著になった。左脳においてはHGF mRNAは、再循環から24時間後に最も増大した。
また、c−met mRNAは、HGF mRNAの場合と同様の時間的経過で顕著に発現誘導された。右脳においては、c−met mRNAは再循環から12時間後に増大が始まり、虚血処理から24時間後に顕著な増大を示した。左脳においては、c−met mRNAは処理から12時間後に発現誘導され、24時間後に著しく増大した。
一方、別途行った擬施術した動物においては、HGFとc−met mRNAsの誘発は僅かしか認められなかった。
【0046】
製剤例1
生理食塩水100ml中にHGF1mg、マンニトール1g及びポリソルベート80 10mgを含む溶液を無菌的に調製し、1mlずつバイアルに分注した後、凍結乾燥して密封することにより凍結乾燥製剤を得た。
【0047】
製剤例2
0.02Mリン酸緩衝液(0.15M NaCl及び0.01%ポリソルベート80含有、pH7.4)100ml中にHGF1mgとヒト血清アルブミン100mgを含む水溶液を無菌的に調製し、1mlずつバイアルに分注した後、凍結乾燥して密封することにより凍結乾燥製剤を得た。
【0048】
製剤例3
注射用蒸留水100ml中にHGF1mg、ソルビトール2g、グリシン2g及びポリソルベート80 10mgを含む溶液を無菌的に調製し、1mlずつバイアルに分注した後、凍結乾燥して密封することにより凍結乾燥製剤を得た。
【図面の簡単な説明】
【図1】アガロース/ホルムアルデヒドゲル中で電気泳動したRNAのノザンブロットの写真であり、胎生後期から成体期迄の期間におけるラットの脳内におけるHGF mRNA及びc−met mRNAレベルの変化を示す。
【図2】アガロース/ホルムアルデヒドゲル中で電気泳動したRNAのノザンブロットの写真であり、成体ラット脳内の各部位におけるHGF mRNA 及びc−met mRNAの発現を示す。
【図3】HGF及び他の成長因子がPC12細胞の成長に及ぼす影響を示す図である。図中、AはHGFのPC12細胞の成長に対する促進効果を示し、BはHGF、EGF、NGF及びこれらの組合せのPC12細胞の成長に及ぼす影響を示す。
【図4】HGFがPC12細胞の生存に及ぼす促進効果を示す図である。
【図5】HGF、EGF若しくはNGFの存在下又は非存在下で培養したPC12細胞(生物)の形態学的な変化を示す顕微鏡写真である。
【図6】NGFの存在下又は非存在下で培養したPC12細胞に対する125I-HGFの結合実験の結果を示す図である。図中、Aは、NGFの存在せぬ状態で(●)、又は50ng/mlのNGFの存在下で(○)で培養したPC12細胞に対する125I-HGFの特異的結合の飽和曲線を示し、Bは、125I-HGFのPC12細胞への結合のScatchard プロットを示す。
【図7】海馬神経細胞(生物)の形態を示す顕微鏡写真であり、HGFを用いた初代培養海馬神経細胞の生存の延長を示す。
【図8】アガロース/ホルムアルデヒドゲル中で電気泳動したRNAのノザンブロットの写真であり、脳虚血実験後の脳内のHGF mRNA及びc−met mRNA発現の誘導を示す。

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  1. HGFを有効成分として含有することを特徴とする脳神経障害治療剤。
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