JP3678095B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の制御装置に関し、特に内燃機関の停止制御に関するものとである。
【0002】
【従来の技術】
排気ガス対策や燃費向上の手法として、車両が信号でアイドル状態で停止しているとき、エンジンを自動的に停止させ、発進時に自動的に再始動させて円滑に発進させるようにした技術が各種提案されている。この場合、エンジンの再始動に時間が掛かるとドライバの発進意思に対してレスポンスが遅れてドライバビリティが悪化するため、如何に早く且つ円滑に再始動させるかが重要となっている。また、エンジンとモータとを有するハイブリッド車において、エンジンを始動する場合でも、バッテリ能力低下や加速性向上等のために速やかにエンジンを始動することが重要である。更に、イグニッションキーによってエンジンを始動するものでも、ドライバビリティを向上させるために速やかにエンジンを始動することが重要である。
【0003】
このようなエンジンの始動性を向上するものとして、例えば、特開平11−107793号公報に開示されたものがある。この公報に開示された「内燃機関の停止位置制御装置」は、イグニッションスイッチがオフにされたときにエンジン回転数及び吸気管内圧力に応じて最後に燃焼させるべき最終燃焼気筒を特定するように、燃料供給及び点火を制御してエンジンを停止させることで、クランク軸が常に吸気行程上死点位置にある位置で停止するようにし、始動性を損なうことなく機関始動時における排気ガス特性を向上することができるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、クランク軸の停止位置は燃料供給量や点火時期のほか、筒内圧の影響が大きく、この従来の「内燃機関の停止位置制御装置」では、外乱によって筒内圧が変化したときには、クランク軸は所望の位置に停止しない虞がある。そして、クランク軸を所望の位置に停止させるために、燃料供給及び点火を高精度に制御しようとすると、マッチング工数の増加や制御の複雑化により高コスト化を招いてしまう。
【0005】
本発明はこのような問題を解決するものであって、エンジンを所望のクランク角度で停止することでエンジン始動性の向上を図った内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために請求項1の発明の内燃機関の制御装置では、エンジン停止条件判定手段によりエンジン停止条件が成立したと判定されると、吸気圧力増大手段によりエンジン停止時のクランク角位置を60° BTDC 近傍とすべく吸気圧力を増大し、その後にエンジン停止手段によりエンジンを停止するようにしている。従って、エンジンを停止前に吸気圧力を増大させることでエンジンの圧縮圧が増大し、エンジンを所望のクランク角度で停止することができ、その結果、エンジン始動性が向上する。
【0007】
また、上記の内燃機関の制御装置では、エンジンは、理論空燃比噴射モードと希薄空燃比噴射モードとを有し、吸気圧力増大手段は、希薄空燃比噴射モードを選択することにより吸気圧力を増大させるようにしている。従って、別途、吸気圧力を増大させるための装置を追加することなく、簡単にエンジンの停止前に吸気圧力を増大させることができる。
【0008】
なお、吸気圧力増大手段は、希薄空燃比噴射モードの他、点火時期を遅角したり、EGR量の増大やスロットル開度の増大などにより吸入空気量を増大することで実行してもよい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0010】
図1に本発明の一実施形態に係る内燃機関の制御装置の概略構成、図2に本実施形態の内燃機関の制御装置による制御のフローチャート、図3に異なる筒内圧でのエンジン停止位置頻度を表すグラフ、図4に異なるクランク角位置でのエンジン始動特性を表すグラフを示す。
【0011】
本実施形態の内燃機関の制御装置が適用されたハイブリッド車において、図1に示すように、搭載されるエンジン11は、例えば、筒内噴射型の火花点火式ガソリンエンジンであって、気筒ごとに点火プラグ12及びインジェクタ13が取付けられ、ピストン14の上方に形成される燃焼室15内にこのインジェクタ13の噴射口が開口し、燃料が燃焼室15内に直接噴射されるようになっている。また、シリンダヘッドには燃焼室15を臨む吸気ポート16及び排気ポート17が形成され、吸気ポート16は吸気弁18により開閉され、排気ポート17は排気弁19により開閉される。そして、このエンジン11には各気筒の所定のクランク位置でクランク角信号を出力するクランク角センサ20が設けられ、クランク角センサ20はエンジン回転速度を検出可能となっている。更に、吸気ポート16には吸気管21が接続され、空気取入口にはエアクリーナ22が取付けられており、この吸気管21には電子制御スロットル弁23及びスロットルポジションセンサ24が取付けられ、このスロットル弁23上流側にはエアフローセンサ25が取付けられている。排気ポート17には排気管26が接続されている。
【0012】
なお、図示しないが、エンジン11にはEGR通路が設けられており、所定のエンジン運転状態において、排気ガスを吸気系に導入することが可能であると共に、EGR通路に設けられたEGR弁により排気ガス循環量を調整可能となっている。
【0013】
このように構成されたエンジン11のクランク軸27は伝達クラッチ28を介して電気モータ29の出力軸30と断接可能となっており、この伝達クラッチ28は図示しない油圧駆動装置で作動するアクチュエータ31により駆動可能となっている。そして、この電気モータ29はバッテリ32から電力の供給を受けて駆動可能であると共に、エンジン11からの駆動力を受けて発電して電力をバッテリ32に充電可能となっている。
【0014】
この電気モータ29の出力軸30は無段変速機としてのCVT33に接続されている。このCVT33は、図示しない一対の可変V形プーリの間に無端のスチールベルトを掛け回し、一方の可変V形プーリの回転軸を入力側となる出力軸30に連結し、他方の可変V形プーリの回転軸を出力側となる出力軸34に連結して構成されており、油圧の給排により各可変V形プーリの幅を変更してプーリ比を変えることで、エンジン11や電気モータ29から伝達される回転力を一対の可変V形プーリ及びスチールベルトを介して無段階に調節して出力軸34に伝達することができる。そして、CVT33の出力軸34は発進クラッチ35を介してデファレンシャルギヤ36に接続されており、この発進クラッチ35は図示しない油圧駆動装置で作動するアクチュエータ36により駆動可能となっており、出力軸34から左右の駆動輪38へのトルク伝達量を調整することができる。
【0015】
また、車両にはエンジン11、電気モータ29、CVT33などを制御する電子制御ユニット(ECU)39が設けられ、このECU39には、入出力装置、制御プログラムや制御マップ等の記憶を行う記憶装置、中央処理装置及びタイマやカウンタ類が具備されており、このECU39により筒内噴射エンジン11の総合的な制御が実施される。即ち、前述したクランク角センサ20、スロットルポジションセンサ24、エアフローセンサ25に加えてドライバが踏み込むアクセルペダルのポジションセンサ40などの各種センサ類の検出情報、イグニッションキースイッチ42の信号がECU39に入力され、ECU39が各種センサ類の検出情報に基づいて、燃料噴射モードや燃料噴射量、点火時期等を決定し、点火プラグ12、インジェクタ18のドライバ、スロットル弁23の駆動モータ、EGR弁開度等を駆動制御する。
【0016】
また、ECU39には図示しないバッテリ容量センサが検出するバッテリ32の充電容量が入力されており、このバッテリ充電容量に応じて電気モータ29を制御している。更に、CVT33は、前述したように、一対の可変V形プーリの幅を変更するための油圧駆動回路を有しており、ECU39はこの油圧駆動回路を制御することでプーリ比を変えて変速比を設定変更するようにしている。なお、伝達クラッチ28及び発進クラッチ35の各アクチュエータ31,37の制御もECU39が行うようにしている。
【0017】
ところで、エンジン11の始動特性は、エンジン始動時(前回の停止時)におけるクランク角度位置に大きな影響を受ける。図4に示すグラフは、ハイブリッド車がモータのみの駆動力により走行しているときに、加速条件等が成立してエンジンを始動した場合における3つの異なるクランク角位置での始動特性を表している。このグラフにて、実線がクランク角60°BTDCでエンジンを始動した場合、点線がクランク角90°BTDCでエンジンを始動した場合、一点鎖線がクランク角120°BTDCでエンジンを始動した場合である。このグラフからわかるように、特に、エンジントルク及びモータトルク、エンジン回転数は、クランク角60°BTDCに比べてクランク角90°BTDCやクランク角120°BTDCは所定時間だけ遅れることとなる。従って、車両の加速性や始動の迅速性では、クランク角60°BTDCでエンジンを始動することが最良であることがわかる。
【0018】
一方、エンジンの停止前に圧縮圧が高いと、ピストンが下方への反力を受けて上死点を乗り越えられずにその前で停止することから、このクランク軸の停止位置は吸気圧力に大きく影響される。図3に示すグラフは、エンジンが停止するときの3つの異なる吸気圧力に対するクランク軸の停止位置の頻度を表している。図3(a)は、スロットルを全開として吸気圧(マニホールド圧)を0mmHg(大気圧)とした場合であり、クランク軸はクランク角60°BTDCで停止する頻度が高い。また、図3(b)は、吸気圧(マニホールド圧)を−200mmHgとした場合であり、クランク軸はクランク角50°BTDCで停止する頻度が高い。これは圧縮圧の減少に伴ってピストンなどの慣性力と圧縮圧との釣り合うクランク角度がTDC側に移行するためであり、上述した図3(a)よりもややTDC側にずれた位置でピストンが停止するものと考えられる。更に、図3(c)は、吸気圧(マニホールド圧)を−400mmHgとした場合であり、クランク軸はクランク角150°BTDC以上で停止する頻度が高くなっている。これはピストンなどの慣性力が圧縮圧に打ち勝ってTDCを乗り越えた後にピストンが停止するためであり、圧縮圧の影響を受けていないものと考えられる。従って、吸気圧を約−200mmHg以上した場合に、クランク軸がクランク角60°BTDC近傍で停止する頻度が高いことがわかる。
【0019】
このようなことから、本実施形態の内燃機関の制御装置にあって、ECU39は、エンジン11の停止条件が成立したかどうかを判定(エンジン停止条件判定手段)し、エンジン停止条件が成立したら吸気圧力を増大(吸気圧力増大手段)し、その後にエンジン11を停止(エンジン停止手段)するようにしている。そして、ここでは、エンジン11が、理論空燃比近傍で燃料を噴射する理論空燃比噴射モードと、希薄空燃比で燃料を噴射する希薄空燃比噴射モードとを有しているため、希薄空燃比噴射モードを選択することにより吸気圧力を増大させるようにしている。
【0020】
ここで、上述した本実施形態の内燃機関の制御装置におけるECU39の制御を図2のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0021】
図2に示すように、ステップS11にて、エンジン11の停止条件が成立したかどうかを判定するが、エンジン11の停止には、ドライバによるイグニッションキースイッチのOFF操作による手動停止と、アイドルストップによる自動停止、ハイブリッド車でのバッテリ電力や運転状態によるエンジン停止があり、アイドルストップによる自動停止の場合には、予め設定された停止条件、例えば、シフトレバーの中立位置、車速0状態の一定時間継続、ブレーキスイッチのONなどがエンジンの停止条件となる。
【0022】
そして、このステップS11にて、このようなエンジン11の停止条件が成立したら、ステップS12にて、ECU39がエンジン11の希薄空燃比噴射モードを選択して圧縮リーンで運転することで、吸気圧力を増大して圧縮圧を増大させる。そして、ステップS13にて、吸気圧力の増大から所定時間経過したら、圧縮圧がピストンを所定位置で停止することが可能な反力を得ることができるまで上昇したものと判断してステップS14にてエンジン11を停止する。
【0023】
このようにエンジン11の停止条件が成立したら希薄空燃比噴射モードを選択して圧縮リーンとして吸気圧力を増大してから所定時間経過後にエンジン11を停止するようにしたことで、エンジン11は停止前に圧縮圧が増大してピストンが下方への反力を受けて上死点を乗り越えられずにその前、つまり、クランク軸はクランク角60°BTDC近傍で停止する確率が高くなる。そのため、次のエンジン11の始動時には、エンジン着火及び燃焼開始が早期化し、図4の実線で示すように、エンジントルク及びモータトルク、エンジン回転数等は早期に上昇することとなり、車両の加速性、始動の迅速性が良くなる。
【0024】
なお、上述の実施形態では、吸気圧力増大手段として、エンジン11を希薄空燃比噴射モードで運転することで吸気圧力を増大させるようにしたが、この方法に限定されるものではなく、例えば、点火時期を遅角することにより低下する出力を補うためにスロットル開度を増大することで吸気量を増大させたり、また、EGR量を増大することで吸気量を増大させたり、単にスロットル開度のみを増加して吸気圧力を増大させるようにしてもよい。
【0025】
但し、エンジン停止時の吸気圧力増大手段の作動前後でエンジン出力が変化すると、エンジン停止時に出力変化に伴うショックが発生してドライバビリティを悪化させる可能性があるため、吸気圧力増大手段の作動前後でエンジン出力が変化しないようにすることが好ましい。そのため、上述した実施形態では、同一エンジン出力となるように希薄空燃比噴射モードに切り換えることによりエンジン出力変化を防止している。また、スロットル開度を増加するものでは、点火時期をリタードすることによりエンジン出力を一定とし、更に、EGR量を増大するものでは、点火時期を遅角することによりエンジン出力を一定とすれば、エンジン出力を一定としてエンジン停止時のドライバビリティの悪化を防止できる。
【0026】
【発明の効果】
以上、実施形態において詳細に説明したように請求項1の発明の内燃機関の制御装置によれば、エンジン停止条件が成立したと判定されるとエンジン停止時のクランク角位置を60° BTDC 近傍とすべく吸気圧力を増大し、その後にエンジンを停止するようにしたので、エンジンを停止前に圧縮圧が増大することでエンジンを所望のクランク角度で停止することができ、エンジン始動時における着火及び燃焼開始が早期化してエンジン始動の迅速性を向上することができ、その結果、車両の加速性を向上することができる。
【0027】
また、上記の内燃機関の制御装置によれば、エンジンが理論空燃比噴射モードと希薄空燃比噴射モードとを有し、希薄空燃比噴射モードを選択することにより吸気圧力を増大させるようにしたので、別途、吸気圧力を増大させるための装置を追加することなく、簡単にエンジンの停止前に吸気圧力を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る内燃機関の制御装置の概略構成図である。
【図2】本実施形態の内燃機関の制御装置による制御のフローチャートである。
【図3】異なる筒内圧でのエンジン停止位置頻度を表すグラフである。
【図4】異なる筒内圧でのエンジン始動特性を表すグラフである。
【符号の説明】
11 エンジン
27 クランク軸
29 電気モータ
33 CVT
39 電子制御ユニット、ECU(エンジン停止条件判定手段、吸気圧力増大手段、エンジン停止手段)
Claims (1)
- 筒内噴射エンジンの停止条件が成立したかどうかを判定するエンジン停止条件判定手段と、該エンジン停止条件判定手段によりエンジン停止条件が成立したと判定されるとエンジン停止時のクランク角位置を60° BTDC 近傍とすべく吸気圧力を増大する吸気圧力増大手段と、該吸気圧力増大手段の作動後に前記エンジンを停止するエンジン停止手段とを具え、前記エンジンは、理論空燃比近傍で燃料を噴射する理論空燃比噴射モードと、希薄空燃比で燃料を噴射し圧縮リーンで運転する希薄空燃比噴射モードとを有し、前記吸気圧力増大手段は、前記希薄空燃比噴射モードを選択することにより吸気圧力を増大させることを特徴とする内燃機関の制御装置。
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