JP3675601B2

JP3675601B2 - 吸収体

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Publication number: JP3675601B2
Application number: JP07744797A
Authority: JP
Inventors: 一郎和田; 千真理藤田
Original assignee: Uni Charm Corp
Current assignee: Uni Charm Corp
Priority date: 1996-09-12
Filing date: 1997-03-28
Publication date: 2005-07-27
Anticipated expiration: 2017-03-28
Also published as: CN1214773C; TW346394B; EP0829245B1; MY115472A; AU3748597A; ID18258A; AU697067B2; SG65013A1; KR19980024483A; EP0829245A2; US5994614A; KR100494196B1; JPH10137291A; EP0829245A3; CN1177472A

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙おむつや失禁パッドまたは生理用ナプキンなどに設けられる吸収体に係り、特に薄型で高吸収の吸収体に関する。
【０００２】
【従来の技術】
紙おむつや生理用ナプキンなどでは、不透液性の樹脂シートから成るバックシートと、着用者の肌に直接当たる内側のトップシートとの間に、尿や経血などの体液を吸収するための吸収シートが設けられている。この吸収シートは、薄葉紙などの上層と下層との間に、粉砕されたパルプにポリアクリル酸塩などの高吸収ポリマー（ＳＡＰ）、またはＳＡＰのみが介在され、上層および下層が端部において接合されて封止されて形成されている。ＳＡＰはパルプ以上に吸液性が高いため、パルプのみで吸収シートを構成したものに比べ体液の吸収性に優れ、吸収シートを薄型化できる。また、ＳＡＰは乾燥状態においては粉末状で、体液を吸収すると膨潤してゲル状に固まるため、吸収された体液を吸収シート内に確実に保持でき、吸収された体液の逆戻り、洩れ等を防止できる。また、ＳＡＰは乾燥状態および膨潤状態（ゲル状）においてもパルプより柔らかいため、パルプを使用したものに比べ吸収シートが柔らかくなり、着用者の体に添って容易に変形可能であり、且つ装着感が良好なものとなる。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記吸収シートにおいて、吸水性を高めるためにＳＡＰの量を多くすると、吸水前の乾燥時において、ＳＡＰの粉末が着用者の動きにより吸収シートの上層と下層の間で移動し、ＳＡＰの分布にむらが生じる。このとき、ＳＡＰの分布が少ない所に体液が与えられると体液をＳＡＰにより吸収しきれず、吸収シートの吸収性が落ちてしまう。また、吸水により形成されたゲルが上層と下層の間を移動してだんご状に固まったり、またはこの塊により２層の薄葉紙が破れたりちぎれたりし、着用者に不快感を与えるなどの問題があった。
【０００４】
以上の問題点を解決するために、例えば特公昭６１−３００４１号公報や特開平６−２５４１１８号公報および特公平７−７３５９１号公報、さらに実公昭６３−２３０７８号公報には、シート上に高吸水性物質が所定量ずつ間隔をあけて配置されてシート全面に分散され、この上から凹凸の形成されたカバーシートが被せられて前記シートと接合された吸収シートに関する発明又は考案が記載されている。
このように、高吸水性物質が所定量ずつ吸収シート全体に均一に分布され、且つカバーシートにより配置位置から動かないよう押さえられているため、高吸水性物質の吸収シート内での移動を防止でき、吸収シートの厚さを全体で均一に保つことができ、しかも吸水性を高くできる。
【０００５】
しかし、前記の吸収シートでは、高吸水性物質の膨潤を妨げないように、前記カバーシートの凹部の深さおよび径を大きくして、高吸水性物質の量よりも内部空間を大きくしておく必要があるため、吸収シートの厚さ寸法が大きくなり、薄型化に限界がある。また、薄型にするために前記カバーシートの凹部の空間を小さくすると、吸水時に高吸水性物質の膨潤が妨げられ、吸水性が低下してしまう。
また、前記の吸収シートではカバーシートを被せるときにカバーシートに形成された凹部に、高吸水性物質が収納されるように位置合わせし、カバーシートの凹部と凹部との間にてカバーシートと、高吸水性物質が載せられているシートとを接着しなくてはならず、接着線のパターンが複雑で接着工程に手間がかかるものであった。
【０００６】
本発明は、上記従来の問題を解決するものであり、吸収シート内での吸収性樹脂の移動を防止でき、吸収性樹脂を常に均一に分散させることができ、また吸水時での吸収性樹脂の膨潤領域を確保できる吸収体を提供することを目的としている。
【０００７】
また本発明は、製造が簡単で薄型であり、しかも吸収性樹脂が外部に洩れるのを確実に防止できる吸収体を提供することを目的としている。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
本発明は、表裏両側に設けられた繊維の密度が高い外シートと、表裏両側の外シートの間に位置し繊維の密度が前記外シートよりも低い嵩高な内シートと、前記内シートの繊維間に介在する吸収性樹脂とを有し、
前記内シートを挟んだ状態で前記外シートどうしが加圧されて、前記外シートと前記内シートおよび前記内シートどうしが接合されて、表側と裏側の少なくとも一方において没となる接合部が形成され、
前記接合部が所定面積を囲む領域の周囲に形成されて、前記接合部で囲まれた前記領域が前記接合部で区分された囲み部とされており、前記囲み部は前記接合部を挟んで互いに隣接し幅方向および長さ方向へ複数設けられていることを特徴とするものである。
【０００９】
前記内シートは、２．０デニール以上で１０．０デニール以下の太さの繊維で形成された不織布から成り、その密度は０．０１ｇ／ｃｍ³以上で０．０６ｇ／ｃｍ³以下であることが好ましい。
【００１０】
また、前記接着線により囲まれた囲み部の面積が１．０ｃｍ²以上で１０．０ｃｍ²以下であることが好ましく、
【００１１】
且つ外シートと内シート、および内シートどうしを接合する接合部は、湾曲部および／または角部を有する連続線または間欠線であることが好ましい。
【００１２】
また前記吸収体の好ましい形態は、外シートの内側に内シートが重ねられてこの内シートの繊維間に吸収性樹脂が含まれ、前記外シートの幅方向の両側端が内シートとともに折り畳まれて、内シートを包み込むようにして外シートの両側端部分が重ねられ、表裏両側の外シートが内シートを挟んで部分的に接合されているものとなる。
【００１３】
上記吸収体の製造方法は、外シートの内側に内シートを重ね、前記内シートの繊維間に吸収性樹脂を均一に分散させて載せ、外シートの両側端部を内シートとともに内側へ折り畳み、内シートを包み込むようにして外シートの両側端部どうしを重ね、内シートを挟んで外シートどうしを加圧し、熱融着し、またはホットメルト系接着剤などにより接合する。
【００１４】
本発明の吸収体は、失禁パッドや紙おむつや生理用ナプキンなどに使用されるものであり、例えば図１に示すように、着用者の体の形に合った形状に成形された紙などのシートの上にホットメルト系接着剤などにより接着され吸収シートとして使用される。また図５や図６に示すように、前記吸収シートの内側に吸水性のトップシートが接合され、外側にバックシート（外装シート）が接合されて使用される。
【００１５】
前記内シートは、目が粗で嵩高なエアースルー不織布から成る。そして、例えば吸収性樹脂が前記内シートの上に載せられ、内シートが両端から折り返されて吸収性樹脂が包み込まれて、吸収性樹脂が内シートの繊維間に介在する。
【００１６】
前記吸収性樹脂としては、ポリアクリル酸塩などの高い吸水性と保水性を有する高吸水性ポリマー（ＳＡＰ）が主に使用される。このＳＡＰとしては、前記ポリアクリル酸塩のほかに、ポリビニルアルコール系、ポリアクリルアミド系などの合成ポリマー系、またはデンプン系やセルロース系などの種々のものが使用可能である。
【００１７】
本発明の吸収体が、例えば失禁パッド用の吸収シートとして使用される場合、前記高吸水性ポリマー（ＳＡＰ）が、水膨潤性の高分子吸収体であって、１ｇの高吸水性ポリマーに１５ｃｃの人工尿が与えられたときに、好ましくは７秒以内さらに好ましくは４秒以内に吸収することが好ましい。吸収速度が１０秒を越えると、吸収体から尿が洩れやすくなる。また吸水後のＳＡＰの容積の膨潤率が５０倍以上で例えば６０倍以下であることが好ましい。また人工尿の吸収量は１ｇのＳＡＰに対して６０〜７０ｇ、保水量は１ｇのＳＡＰに対して３５〜４５ｇであることが好ましい。
【００１８】
上記の条件に適する高吸水性ポリマーは、例えばアクリル酸およびアクリル酸アルカリ塩水溶液をＨＬＢ８〜１２の界面活性剤が共存する脂環族炭化水素溶媒または、脂肪族炭化水素溶媒中に懸濁させ、水溶性ラジカル開始剤の存在下で逆懸濁重合させてなる高分子吸収剤を例示できる。
【００１９】
上記のＨＬＢ８〜１２の界面活性剤は、例えばソルビタンモノラウリレートである。
【００２０】
前記脂環族炭化水素の溶媒としては、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、脂肪族炭化水素の溶媒としては、ｎ−ペンタン、ｎ−ヘキサン、ｎ−ヘプタン、リクロインが適する。
【００２１】
前記ラジカル開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニュウムが適する。
【００２２】
また、前記の重合に使用される架橋剤としては、水溶性ジグリシジルエーテル化合物（例えば（ポリ）エチレングリコールジクリシジルエーテル、（ポリ）プロピレングリコールジグリシジルエーテル）、ハロエポキシ化合物（例えばエヒクロルヒドリン、α−メチルエヒクロルヒドリン）、アルデヒド化合物（クルタルアルデヒド、グリオキザール、チオジアセトアルデヒド）が適する。
【００２３】
前記ＳＡＰは内シートの間に挟まれるが、前記内シートは目が粗であり繊維と繊維の間に空隙が多数あるエアースルー不織布であるため、ＳＡＰはこの繊維の間の空隙に保持されている。そして、体液が与えられるとＳＡＰは繊維の空隙内の空間内で膨潤する。前記のように内シートは繊維の目が粗で嵩高なものなので、ＳＡＰの膨潤を許容する空間が多く、ＳＡＰの膨潤空間を確保できる。したがって、ＳＡＰは体液を吸収して十分に膨潤でき、ＳＡＰの吸収性が発揮される。よって、ＳＡＰの量が少なくても吸収性を高くすることができ、吸収体を薄型化できる。
【００２４】
このように、内シート内にＳＡＰの膨潤空間を形成するためには、前記内シートは２．０デニール以上で１０．０デニール以下の太さの繊維、さらに好ましくは４．０デニール以上で６．０デニール以下の繊維により形成された不織布で、その密度は０．０１ｇ／ｃｍ³以上で０．０６ｇ／ｃｍ³以下、さらに好ましくは０．０３ｇ／ｃｍ³以上で０．０５ｇ／ｃｍ³以下、厚みが０．４〜０．６ｍｍであることが望ましい。
【００２５】
このように、密度が低く、且つ繊維のデニールが大きいと、繊維間に形成される空隙が大きくなり、吸収性樹脂の膨潤空間を確保できるものとなる。
【００２６】
そして、前記内シートの外側には、親水性を有する不織布の外シートが重ねられている。特に接合部を形成する熱融着強度を高くするために、熱融着性繊維（熱可塑性繊維）が１００％のポイントボンド不織布であり、親水性界面活性剤で処理されていることが好ましい。外シートは内シートの繊維の目の間から洩れた吸収性樹脂が外側に洩れないよう、内シートよりも目が密に形成されており、１．０デニール以上で４．０デニール以下の太さの繊維から成るもので目付が１０ｇ／ｍ²以上で６０ｇ／ｍ²以下であることが好ましい。
【００２７】
また、外シートが熱融着性繊維のポイントボンド不織布の場合、密度は０．１ｇ／ｃｍ³以上で０．１５ｇ／ｃｍ³以下であることが好ましい。密度が、０．１５ｇ／ｃｍ³を越えると、液が内シートに浸透しにくくなる。また密度が０．１ｇ／ｃｍ³を下回ると、内シート内のＳＡＰが外シートの外へ出やすくなる。
【００２８】
外シートが内シートに重ねられ、吸収性樹脂が両シートにより包み込まれた後、外シートと内シート、および内シートどうし、すなわち内シートを挟んだ状態で外シートどうしが加圧されて接合される。前記内シートおよび外シートにＰＰやＰＥなどの熱融着性の樹脂が混合されている場合には、外シートを加圧し且つ加熱することにより外シートおよび内シートが熱融着されて接合される。この熱融着による接合部は、例えば図１に示すように六角形状の囲み部が形成されるよう、または菱形の囲み部が形成されるよう、吸収シート全面にわたって形成される。前記ＳＡＰなどの吸収性樹脂はこの囲み部の中の限られた領域内でのみ移動するので、吸収シートに均一に分散させることが可能である。また、この囲み部内の領域においてＳＡＰが膨潤するが、この囲み部の面積は前記熱融着工程において自由に設定可能である。本発明では、この囲み部の面積を１．０ｃｍ²以上で１０．０ｃｍ²以下とすることによりＳＡＰの膨潤空間を確保でき、また、ＳＡＰが囲み部内を移動してもＳＡＰの分布が不均一になることはなく、吸収体内においてＳＡＰが均一に分散されることとなる。
【００２９】
前記接合部は、吸収体の幅方向および／または長さ方向に湾曲線または折れ線を有する連続線または間欠線であることが好ましい。体液が外シートの表面に与えられると、体液は線状の接合部に沿って吸収体の全面に拡散する。このとき接合部が湾曲線あるいは折れ線であると、これらの線に沿う流路が長くなり、横洩れする前に親水性の外シートから内シート内に吸収されやすくなる。また、接合部が、部分的に接合されていない部分を含む間欠線または破断線であると、この線上での接合部と非接合部との不連続部で体液の流れが減速させられ、これによっても横洩れが生じにくく、内シート内に吸収されやすくなる。
【００３０】
前記接合部は、図１や図２に示すように、接合部（融着部）と非接合部（非融着部）とが交互に繰り返される間欠線（または破断線）であってもよいし、または直線であってもよい。接合部を直線にすると、ＳＡＰの膨潤領域が六角状の囲み部内に限られるが、ＳＡＰの膨潤領域が確実に区分されて、ＳＡＰのゲル状の塊が移動することがなくなる。逆に接合部を間欠線とすると、線内の非接合部においてもＳＡＰが膨潤でき、吸水量を多くできる。
【００３１】
また外シートと内シートが重ねられた後に、外シートの上から所定形状を形成するようにヒートシールすればよいため、外シートと内シート、および内シートどうしを接合する接合工程が容易なものとなる。
【００３２】
また、吸収体の製造方法は、一枚（または複数枚）の外シートの上に内シートを一枚（または複数枚）重ね、前記内シートの上に両端の領域を除いてＳＡＰを分散させ、外シートおよび内シートの幅方向の端部を内側に折り返して、一方の端の内シートが他端の外シートの上に重なるよう両端部を重ね合わせ、外シートの上からヒートシールなどを施して外シートと内シートおよび内シートどうしを熱溶着させることにより完了できる。
【００３３】
吸収体の幅方向の両側端では外シートが折り返され、外シートにより内シートおよび吸収性樹脂が包み込まれているため、幅方向の両端部においてＳＡＰが洩れることがない。
【００３４】
さらに、内シートの空隙率が４０％以上で６０％以下、吸収性樹脂は、液の吸収による体積増加率が５０倍以上であり、且つ吸収性樹脂の見かけ密度が０．２５ｇ／ｃｍ³以上で０．４５ｇ／ｃｍ³以下であることが好ましい。
【００３５】
また、前記吸収性樹脂が液を吸収して内シート内で膨潤したときに、前記囲み部内に位置する前記吸収性樹脂の膨張力によって前記接合部が剥離可能とされていることが好ましい。
【００３６】
本発明の吸収体（吸収シート）は、内シート内に吸収性樹脂を含ませ、主にこの吸収性樹脂により液の吸収と保持を行なっている。そのため、前記のように吸収性樹脂としては、吸収倍率が高く且つ吸収速度の速いものを使用することが好ましい。吸収速度が遅いと尿などが吸収体の外部に洩れやすい。また吸収倍率が低いと吸収できる液が少なくなる。
【００３７】
吸収倍率が大きく且つ吸収速度の速いＳＡＰを用いる場合、液吸収前の状態で、ＳＡＰの膨潤空間を確保しておくことが必要である。そこで、ＳＡＰが含まれる内シートの空隙率は４０％以上で６０％以下であることが好ましい。空隙率が前記の範囲を下回ると、ＳＡＰの膨潤空間を十分に確保できず、また前記範囲を越えると、液吸収前に、内シート内でＳＡＰが動きやすくなり、ＳＡＰの分布が不均一になる。
【００３８】
前記において空隙率（％）は、｛１００−（Ｍ／Ｔ・ρ）｝で表される。
【００３９】
前記Ｍ（ｇ／ｃｍ²）は、１０ｃｍ2での内シートの目付、Ｔ（ｍｍ）はシートの厚みであり、１０枚重ねて圧力２０ｇｆ／ｃｍ²を与えた状態で測定し、１枚のシートの厚みを換算したもの、ρ（ｇ／ｃｍ³）は内シートの繊維密度である。
【００４０】
前記空隙率４０％から６０％の内シートに対し、前記のように吸収速度が７秒以下、吸収倍率が５０〜６０倍のＳＡＰを、充填目付１００〜１５０ｇ／ｍ²、見かけ密度が０．２５〜０．４５ｇ／ｃｍ³の範囲で充填することが好ましい。このような充填率とすることにより、内シートの空隙内でＳＡＰが液をすばやく吸収して、洩れが生じず、また十分な量の尿などを吸収できるようになる。
【００４１】
また、ＳＡＰの粒度分布は以下のメッシュに対して以下の透過率であることが好ましい。
・１２メッシュ：透過率１００％
・３２〜４８メッシュ：透過率２０〜６０％
・４８〜８０メッシュ：透過率２０〜６０％
・８０〜１４５メッシュ：透過率０〜１５％
【００４２】
次に、本発明の吸収体では、接合部により、面積が１．０〜１０．０ｃｍ2の囲み部を形成しているが、この囲み部内または接合部付近、あるいは接合部が間欠的に形成されている場合には、接合部と接合部との間に、吸収性樹脂が点在している。体液が吸収されると、それぞれの吸収性樹脂が液を吸収して膨潤するが、このとき前記囲み部により内シート内の領域が制限されていると、吸収性樹脂の膨潤空間を十分に確保できない。そこで、吸収倍率が５０倍以上の吸収性樹脂が液を吸収して膨潤したときに、その体積の増加に伴って、前記接合部での内シート間の接合が解離することが好ましい。
【００４３】
このような接合強度を設定しておくと、液吸収前は、吸収性樹脂がそれぞれの囲み部に区分されてシート内に均一な密度で点在し、液が急速に吸収される際に、内シート間の接合が外れてＳＡＰの内シート内での膨潤空間を十分に確保できる。液を吸収した結果内シート内に膨潤した吸収性樹脂が層をなす状態になる。
【００４４】
内シートの空隙率が前記範囲で、且つ吸収倍率の高い前記吸収性樹脂が前記充填率で充填されている場合、内シート間の接合強度は、２５ｍｍ幅で２０〜５０ｇｆの力で剥離可能に設定しておくことが好ましい。
【００４５】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図１は本発明の吸収体が設けられた吸収シートの平面図である。
図１に示すように長方形状に形成された吸収体１は、着用者の体の形状に沿った形に成形された吸収性の紙シート６の上に載せられて接着されて、失禁用パッド、紙おむつや生理用ナプキンなどに装着される吸収シート７が形成される。また失禁用パッド、紙おむつや生理用ナプキンとして使用される時には、図５または図６に示すように、上下にトップシートとバックシートとが接合される。
【００４６】
図２は図１に示す吸収体１の斜視図、図３（Ａ）（Ｂ）（Ｃ）は、吸収体１の製造工程を説明する図１のＩＩＩ−ＩＩＩ線の断面図、図４は内シートに吸収体が保持されている状態を示す拡大断面図である。
この吸収体１では、外シート２の内側に内シート３が重ねられている。内シート３は、繊維の密度が粗で嵩高なエアースルー不織布であり、ＰＥ（ポリエチレン）／ＰＰ（ポリプロピレン）の複合繊維、ＰＥ繊維、ＰＰ繊維、の単体または複合されたもの、または前記単体繊維あるいは複合繊維の表面にグリセリンなどの親水性の油剤を塗布し、または前記油剤を繊維に練りこんだもの、あるいはこれらの繊維とレーヨン繊維などから構成されている。また内シート３として使用されるエアースルー不織布では、熱融着性繊維を少なくとも２０％以上含むことが必要である。この内シート３の繊維の間の空隙にＳＡＰ４が保持され、この空間内がＳＡＰ４の膨潤空間となるため、内シート３はＳＡＰ４の膨潤を許容できる程度に目が粗いことが必要である。このため、内シート３のエアースルー不織布は、２．０ないし１０．０デニール、さらに好ましくは４．０ないし６．０デニールの太い繊維で形成されている。また、繊維の密度は０．０１ｇ／ｃｍ³以上で０．０６ｇ／ｃｍ³以下が好ましく、さらに好ましくは、０．０３ｇ／ｃｍ³以上で０．０５ｇ／ｃｍ³である。また空隙率は４０％以上で６０％以下である。
【００４７】
図４は、上記内シート３の拡大断面図である。前記のように内シート３は、嵩高で繊維の密度が粗なエアースルー不織布により形成されているが、エアースルー不織布では、一方の面３ａに熱ロールが与えられるため、一方の面３ａでは、繊維の密度が密で、他方の面３ｂでは繊維の密度が粗になる。したがって、面３ａでは繊維間の距離がＳＡＰ４の粒径よりも小さくてＳＡＰ４が面３ａから外部へ洩れにくく、３ｂの側では、繊維の密度が粗で、繊維間にＳＡＰの十分な膨潤空間を形成できる。このため、面３ａ側が外シート２に向けられて使用されることが好ましい。
このように、内シート３を嵩高にして密度を粗にすることにより、乾燥状態のＳＡＰ４粉末を内シート３の繊維間の空隙に確保でき、さらに繊維間の空隙によりＳＡＰ４の膨潤を許容できるので、ＳＡＰ４の吸水性が損なわれることなく発揮でき、しかも吸収体１を薄型化できる。
【００４８】
前記外シート２は内シート３の繊維の隙間から洩れた高吸水性ポリマー（ＳＡＰ）４が外側に洩れないよう、内シート３より目が密となっている。外シート２は透液性であり、例えば１．０デニール以上で４．０デニール以下の細い熱融着性繊維で形成されたポイントボンド不織布を使用することが好ましい。また、このポイントボンド不織布では、ＰＥ繊維、ＰＰ繊維または、ＰＥ／ＰＰ複合繊維などの熱融着性繊維が少なくとも２０％以上含まれ、好ましくは熱融着性繊維が１００％である。
すなわち、外シート２と内シート３、及び対向する内シート３どうしが熱融着により接合されるためには、前記内シート３および外シート２にＰＰまたはＰＥなどの熱融着性の繊維を２０％以上含ませることが好ましい。また、熱融着性繊維を１００％あるいはほぼ１００％含むものでは、接合部にて熱融着するときの融着性を高め、高速にて熱融着作業を行なうことが可能である。
【００４９】
前記内シート３の繊維間に保持される高吸水性ポリマー（ＳＡＰ）４としては、例えばポリアクリル酸塩や、ポリビニルアルコール系およびポリアクリルアミド系などの合成ポリマー系、またはデンプン系やセルロース系などの種々のものが使用されるが、好ましくは、アクリル酸およびアクリル酸アルカリ塩水溶液をＨＬＢ８〜１２の界面活性剤が共存する脂環族炭化水素溶媒または、脂肪族炭化水素溶媒中に懸濁させ、水溶性ラジカル開始剤の存在下で逆懸濁重合させてなる高分子吸収剤であり、１ｇのＳＡＰが１５ｃｃの人工尿を吸収するときの速度が７秒以下、好ましくは４秒以下で、吸収倍率が５０〜６０倍のものである。
【００５０】
上記吸収体１の製造方法を説明する。
図３（Ａ）に示すように、外シート２の内側に、外シート２と同じ幅寸法で同じ面積の内シート３が重ねられ、内シート３の上からＳＡＰ４が均一に分散するように撒かれる。その後、図３（Ｂ）に示すように外シート２の幅方向の両側端部が内シート３とともに折り畳まれ、外シート２と内シート３の両側端部どうしが互いに重ねられ、内シート３およびＳＡＰ４が外シート２に包みこまれる。
その後に、図３（Ｃ）に示すように、外シート２と内シート３との積層体が、熱ローラに送られ、ローラに形成された凸部により部分的に加圧されて加熱され、接合部５において、外シート２及び内シート３が一緒に熱融着される。図１及び図２に示すように、前記接合部５は、連続線または間欠線となり、この線により六角形が連続する亀甲羅模様となるように形成される。図３（Ｃ）では、接合部５において表裏両面から外シート２が没となるように加圧融着されているが、表裏いずれか一方の面側からのみ、接合部５が没となるように形成されてもよい。
【００５１】
このように製造された吸収体１は、図２および図３（Ｃ）に示すように、幅方向の両側端で外シート２および内シート３が折り返されているため、吸収体１全体が外シート２で囲まれ、その内側ではＳＡＰ４が内シート３で囲まれた構造になる。ＳＡＰ４は内シート３に囲まれその外側の外シート２内に包みこまれた状態であるため、ＳＡＰ４が吸収体１の外部に洩れにくくなる。さらに外シート２の内部では内シート３が２層重ねられた状態となるため、外シート２内において、ＳＡＰ４が保持される空隙の占める容積を大きくでき、ＳＡＰ４の膨潤領域を広く確保できる。
【００５２】
前記内シート３に包み込まれるＳＡＰ４は、その量が少ないと体液を完全に吸収することができず、また多すぎると内シート３の繊維の間の空間内で膨潤するＳＡＰ４を保持しきれず、ＳＡＰ４の膨潤が限られる。したがって、ＳＡＰ４の充填目付は、１０．０ｇ／ｍ²以上で５００ｇ／ｍ²以下であることが好ましく、さらに好ましくは１００〜１５０ｇ／ｍ²である。また、吸収スピードが遅すぎると、連続して体液が与えられたときにＳＡＰ４が体液を吸収しきれず、横洩れ等が起こる。よって、ＳＡＰの吸収スピードは、Vortex法で測定した吸収速度、すなわち２５℃の０．９％塩化ナトリウム水溶液５０ｍｌにＳＡＰを２．０ｇ入れてから前記水溶液表面に渦がなくなるまでの時間（ＳＡＰが前記水溶液を吸収して完全に膨潤したときの時間）が少なくとも１０ｓｅｃ（ｓｅｃｏｎｄ：秒）以下で、好ましくは７ｓｅｃ以下、さらに好ましくは４秒以下である。
【００５３】
図１に示すように、外シート２と内シート３、および内シート３どうしを融着している接合部５により囲まれる囲み部５Ａの平面形状は、六角形状の連続（または菱型の連続でも可）である。乾燥状態のＳＡＰ４の移動はこの囲み部５Ａ内で制限されるため、ＳＡＰ４の分布が偏らず、ＳＡＰ４を吸収体１内に均一に分散させることができ、体液が与えられる箇所に常にＳＡＰ４が存在し、体液をＳＡＰ４により効果的に吸収することができる。但し、この囲み部５Ａの面積が小さいと接着部分が多くなるので内シートの嵩が減ってＳＡＰ４を保持し且つ膨潤を許容する空間が減少し、好ましくない。また、囲み部５Ａの面積が大きいとＳＡＰ４が移動することによりＳＡＰ４の分布が不均一になるなどの問題も生じる。したがって、囲み部５Ａの面積は１．０ｃｍ²以上で１０．０ｃｍ²以下、好ましくは約３．０ｃｍ²程度であるとよい。よって、例えばＳＡＰ４の充填目付が１３０ｇ／ｍ²で、囲み部の１区画の面積が３．０ｃｍ²であるときの囲み部１区画当たりのＳＡＰ４の量は０．０４２ｇである。
【００５４】
図１と図２に示す吸収体１では、接合部５が幅方向および長さ方向の双方へ折れ線となって延びている。また融着部と非融着部とが交互に連続する間欠線である。外シート２の表面に流れ込んだ体液は、その一部が直ちに外シート２を透過して内シート３内に至るが、体液の一部は折れ線状に延びる没状の接合部５に沿って流れ、吸収体１の縦および横方向へ広がる。接合部５が折れ線となっていると、これに沿って流れる体液の流路が長くなるため、接合部５に沿って流れているうちに体液が外シート２を透過して内シート３に浸透しやすくなる。また、接合部５が間欠線であると、接合部５に沿って流れる体液の流速が減速され、外シート２を透過して内シート３に浸透しやすくなる。よって横洩れを防止できる。また、図１では、接合部５が折れ線となっているが、例えば湾曲線であってもよいし、または湾曲線と折れ線が交じっているものであってもよい。
【００５５】
前記接合部５を連続線とするか間欠線とするか、また接合部５での融着強度の設定は、吸収体１の使用目的により変えることができる。例えば失禁パッドや、薄型の生理用ナプキンや紙おむつなどのように短時間で取り代えて使用されるものでは、ＳＡＰ４の膨潤による吸収量を優先する方がよい。そのためには、ＳＡＰ４が膨潤したときに接合部５に与えられる剥離力により接合部５が比較的容易に剥離できるように、接合部５の強度を弱く設定しておくのがよい。また、夜用の生理用ナプキンや夜用のおむつのように長時間での使用を目的とするものでは、接合部５の融着強度が弱いと、膨潤したＳＡＰ４が吸収シート内を移動し着用者に不快感を与えたり、また膨潤したＳＡＰ４の塊により内シート３および外シート２の破れやちぎれを生じることになる。したがって、この場合は接合部５の融着強度を強くして、膨潤したＳＡＰ４を囲み部５Ａ内に確実に保持できるようにしておくことが好ましい。
【００５６】
この吸収体１の厚さ、剛軟度等は使用される外シート２および内シート３の材質によって異なるが、吸収性があり且つ着用者に不快感を与えないためには、厚さ１．０ｍｍ以上で５．０ｍｍ以下、好ましくは１．０ｍｍ以上で２．５ｍｍ以下であり、テーバ法による剛軟度がＣＤ方向で４ｇ・ｃｍ／２５ｍｍ以上で３０ｇ・ｃｍ／２５ｍｍ以下、好ましくは４ｇ・ｃｍ／２５ｍｍ以上で１０ｇ・ｃｍ／２５ｍｍ以下であるとよい。
このように形成された吸収体１は図２に示すＹ方向に長尺なものとなるが、Ｙ方向への所定寸法長ごとに切断されて使用される。また切断面（イ）は、外シート２および内シート３を熱融着しまたは封止材を接着することなどにより密閉する。そして、股間部などの形に合わせて形成された吸水性の紙シート６などの上に載せられ、紙シート６と外シート２の対向面に部分的にホットメルト系の接着剤８が塗布されて紙シート６と外シート２が接合され、吸収シート７となる。このとき、吸収体１の幅方向の長さは紙シート６の幅方向の長さとほぼ同じ長さである。
【００５７】
図５に示すように、この吸収シート７では、外シート２どうしが重ねられている接合部が体液の吸収側と逆側に向けられるよう、前記接合部が、紙シート６に接着剤８により接着される。体液の吸収側である外シート２どうしが接合されていない面に、紙おむつの股間部などにおいて着用者の肌側に向けられるトップシート１２がホットメルト接着剤１３により部分的に接着され、紙シート６にはバックシート９がホットメルト接着剤１１などにより紙シート６に接着される。
さらに図６に示すように、紙シート６上に、吸収体１を２枚重ねて接着固定してもよい。
【００５８】
また、上記の実施の形態では、内シートおよび外シートを折り返してＳＡＰを上下から包み込んでいるが、本発明はこれに限らず、例えば２枚の内シートの間にＳＡＰを介在させて、この両内シートの外側に外シートを積層させて、内シートおよび外シートの外周部が溶着されてＳＡＰが封止されるものでもよい。このとき、バックシート側に向けられる外シートは、ＳＡＰが外に洩れないようトップシート側に向けられる外シートよりも目が密なものを使用してもよい。
【００５９】
【発明の効果】
以上のように、本発明の吸収体によれば、目が粗で嵩の高い内シートの繊維間の空隙内で吸収性樹脂が膨潤でき、且つ外シートと内シート、および内シートどうしを接合する接合部により囲み部が形成され、この囲み部内で吸収性樹脂の移動が妨げられるため、吸収性樹脂を吸収体内に均一に分散させることができ、吸収性が高く且つ薄型の吸収体を実現できる。
【００６０】
また、前記接合部が、幅方向あるいは／および長さ方向において、湾曲線あるいは折れ線を有していると、体液が接合部の線に沿って吸収体に拡散されるとき、前記湾曲線や折れ線で体液の拡散が妨げられるため、吸収体の幅方向および長さ方向に体液が流れて洩れることがなく、吸収性樹脂により体液を効果的に吸収することができる。
【００６１】
さらに前記接合部に間欠部があると、体液の拡散はこの間欠部により止められるため、さらに効果的に吸収性樹脂で体液を吸収することができ、体液の洩れ等を防止できる。
【００６２】
また、前記吸収体が両端部において吸収性樹脂が外シートおよび内シートにより包み込まれているものであると、吸収性樹脂が外側に洩れずまた製造が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の吸収体が設けられた吸収シートの平面図、
【図２】本発明の吸収体の斜視図、
【図３】（Ａ）（Ｂ）（Ｃ）は、吸収体の製造工程を順に示す拡大断面図、
【図４】内シートの拡大断面図、
【図５】吸収体とトップシートとバックシートとの接合状態を示す分離断面図、
【図６】２枚の吸収体とトップシートとバックシートとの接合状態を示す分離断面図、
【符号の説明】
１吸収体
２外シート
３内シート
４ＳＡＰ
５接合部
６紙シート
７吸収シート
９バックシート
１２トップシート

Claims

表裏両側に設けられた繊維の密度が高い外シートと、表裏両側の外シートの間に位置し繊維の密度が前記外シートよりも低い嵩高な内シートと、前記内シートの繊維間に介在する吸収性樹脂とを有し、
前記内シートを挟んだ状態で前記外シートどうしが加圧されて、前記外シートと前記内シートおよび前記内シートどうしが接合されて、表側と裏側の少なくとも一方において没となる接合部が形成され、
前記接合部が所定面積を囲む領域の周囲に形成されて、前記接合部で囲まれた前記領域が前記接合部で区分された囲み部とされており、前記囲み部は前記接合部を挟んで互いに隣接し幅方向および長さ方向へ複数設けられていることを特徴とする吸収体。
前記内シートは、２．０デニール以上で１０．０デニール以下の太さの繊維で形成された不織布から成り、その密度は０．０１ｇ／ｃｍ³以上で０．０６ｇ／ｃｍ³以下である請求項１記載の吸収体。
前記囲み部の面積が１．０ｃｍ²以上で１０．０ｃｍ²以下である請求項１または２記載の吸収体。
接合部は、湾曲部および／または角部を有して延びる連続線または間欠線である請求項１ないし３のいずれかに記載の吸収体。
外シートの内側に内シートが重ねられてこの内シートの繊維間に吸収性樹脂が含まれ、前記外シートの幅方向の両側端が内シートとともに折り畳まれて、内シートを包み込むようにして外シートの両側端部分が重ねられ、表裏両側の外シートが内シートを挟んで部分的に接合されている請求項１ないし４のいずれかに記載の吸収体。
内シートの空隙率が４０％以上で６０％以下、吸収性樹脂は、液の吸収による体積増加率が５０倍以上であり、且つ吸収性樹脂の見かけ密度が０．２５ｇ／ｃｍ³以上で０．４５ｇ／ｃｍ³以下である請求項１ないし５のいずれかに記載の吸収体。
前記吸収性樹脂が液を吸収して内シート内で膨潤したときに、前記囲み部内に位置する前記吸収性樹脂の膨張力によって前記接合部が剥離可能とされている請求項１ないし６のいずれかに記載の吸収体。