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JP3668274B2 - 保持器付きころ - Google Patents

保持器付きころ Download PDF

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JP3668274B2
JP3668274B2 JP04344795A JP4344795A JP3668274B2 JP 3668274 B2 JP3668274 B2 JP 3668274B2 JP 04344795 A JP04344795 A JP 04344795A JP 4344795 A JP4344795 A JP 4344795A JP 3668274 B2 JP3668274 B2 JP 3668274B2
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    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
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Description

【0001】
発明の属する技術分野
この発明は保持器付きころに関し,特に長寿命化を達成した保持器付きころに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来,オートバイ等に装備されるエンジンのコネクティングロッド用として,軽量にして断面高さが小さく大きな負荷容量及び剛性を有し,しかも高速回転性能が良好であり,且つ厳しい潤滑条件のもとでの使用が可能である等の特徴が生かされて保持器付きころが多く利用されている。
【0003】
図8乃至図12に従来の保持器付きころの一例を示す。また,この保持器付きころは,特開平5−118337号公報において開示されている。
【0004】
図8乃至図10に示すように,従来の保持器付きころは,複数のポケット101aが円周方向において等間隔にて且つ軸方向に平行に形成された略円筒状の保持器101と,保持器101の肉厚よりも大径で各ポケット101aに挿入されたころ102(図9参照)とからなる。持器101は,両端の円環部101bと,両円環部101bと一体にして円環部101bと共にポケット101aを画定すべく円周方向において並設された複数の柱部101cとを有している。各柱部101cの円周方向両側の端面は平滑なころ案内面101dとなっている。そして,各柱部101cの軸方向における中央近傍及び両端近傍であって円周方向両側には,内側保持用突出部101f及び外側保持用突出部101gが夫々ポケット101aに臨むように形成されており,これらの突出部によってころ102がポケット101aから内外に脱落することが規制されている。この構成によって,保持器101と各ころ102とが一体化され,エンジン等に対して当該保持器付きころを取付け,あるいは取外しをする際の扱いが容易となる。
【0005】
上記の内側保持用突出部101f及び外側保持用突出部101gは,次のように形成される。
【0006】
すなわち,断面略M字状に加工された円筒状の素材に打抜き加工を施すことによってポケット101aを形成してなる半完成品としての保持器101に対し,内周側及び外周側からローレット加工軸(図示せず)をあてがって所定圧力で押し付け,回転させることにより形成される。この形成方法によれば,図10から明らかなように,柱部101cを円周方向に横切る線状の溝101h,101iが内外に形成されると共に,溝101h,101iの縁部に歪みによる盛上がり101j,101kが生ずる。
【0007】
上記の保持器付きころでは保持器101の外周を装着相手(例えばコネクティングロッドの大端部)の内周面(案内面)で案内させる設計とされ,それ故に柱部101cの外側に盛上がり101kがあると装着相手の案内面を損傷させることとなるので,図11及び図12において装二点鎖線で示すように保持器101の外周側を研磨(寸法e1 にて示す)して盛上がり101kを除去することが行われる。但し,溝101iについてはその底部までは除去されることなく残され,主として溝101iの底面よりも内側に形成される外側保持用突出部101gに研磨が及ぶことはない。
【0008】
なお,柱部101cの内側に生じた盛上がり101jに関しては,保持器101の内周が案内される訳ではない故,除去処理は行われない。また,図12から明らかなように,保持器101は,上述の外周研磨加工を施した状態で正規の外径D0 となるよう,素材の外径D1 正規外径D0 に比して若干(上記寸法e1 )大きく設定される。
【0009】
かかる構成の保持器付きころにおいては,その作動状態において,ころ102は,柱部101cのころ案内面101dと接触し,ほぼピッチ円直径(P.C.D.:図12参照)上で案内され,内側保持用突出部101f及び外側保持用突出部101gとは非接触にて転動する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述した構成の保持器付きころにおいては,ある程度の作動期間が経過すること,あるいは使用条件等により柱部101cのころ案内面101dの摩耗量が増大すると,ころ102は,図12において破線にて示すようにポケット101aの正規幅Wを逸脱して円周方向にずれる(図12においてこのずれ量を記号aで示している)状態になる。よって,ころ102は,外側保持用突出部101gに対して図示のように接触することが懸念される。これは,上記保持器付きころでは,図12において記号b1 にて示すころ102の上がり量,すなわち,ころ102をラジアル方向外側に移動させて外側保持用突出部101gに接触させたときに保持器1の外径からころ102が突出する量が元来比較的小さいことに基づく。なお,図12において,記号C1 は,ポケット101aの円周方向両側に形成された各外側保持用突出部101gに対するころ102の接触点103(図12参照)間の距離である。また,同図において,記号d1 ,両外側保持用突出部101g同士の距離を示す。
【0011】
上記のようにころ102が外側保持用突出部101gに接触すると,この接触による発熱分が加算されて比較的短時間で焼付きが生起してしまうという不都合がある。
【0012】
一方,上記保持器付きころにおいては,外側保持用突出部101gを設ける際に形成される溝101iが残存していることから,保持器101の外周面と装着相手の内周面(案内面)との接触面積は,溝101i分だけ少なくなり,接触面の圧力が大きくなって発熱が促され,また,前記接触面の摩耗の進行が早まるという問題をしている。
【0013】
この発明の目的は,上記従来技術の欠点に鑑みてなされたものであって,発熱を抑え,延いては焼付きの発生を防止し,以て長寿命化を達成すると共に,他の種々の効果をも併せ持っている保持器付きころを提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
この発明は,上記の目的を達成するために,両端の円環部及び前記円環部と一体に円周方向にそれぞれ並設されて前記円環部と共に軸方向に平行なポケットを画定する複数の柱部を有する略円筒状の保持器と,前記保持器の肉厚よりも大径にして前記ポケットにそれぞれ挿入されたころとから保持器付きころにおいて
前記柱部には外面の一部が凹部に加工されることによって前記柱部の前記一部が前記ポケットに臨むように突出て前記ころの外方への脱落を規制する外側保持用突出部が形成され,加工により生じた前記凹部の底面である前記外側保持用突出部のところまで前記保持器の外周側を全て切削除去して前記外側保持用突出部の外面と前記保持器の正規外径である前記保持器の外周面とが一致して形成され,
前記ポケットの円周方向両側に形成された前記外側保持用突出部に対する前記ころの接触点が前記保持器の前記外周面に一致するように形成され,
前記柱部は,外側面が全長にわたって前記円環部の外周面と面一に形成され,前記柱部の内側且つ軸方向中央に前記ころのピッチ円直径よりも外側まで達し且つ前記ポケットの長さよりも短い略U字状の凹部が形成されて両端厚肉部と中央薄肉部とに形成され,前記両端厚肉部に前記外側保持用突出部が形成されていることを特徴とする保持器付きころに関する。
【0015】
また,この保持器付きころは,前記柱部の前記軸方向における中央にして前記円周方向における両側に,前記ポケットの一部を拡幅するように切欠部を形成してなるものである。
【0016】
また,この保持器付きころは,前記柱部の一部を加工することによって前記ポケットに臨むように突出させて前記ころの内方への脱落を規制する内側保持用突出部を形成したものである。前記保持器は,一対の半環状分割体を互いに接合して構成されている。
【0017
この保持器付きころは,上記のように構成されているので前記外側保持用突出部が前記保持器の外径に極く接近して位置することから,前記ころの上がり量が増大すると共に,前記外側保持用突出部に対応する保持器外周部分に凹部が残存しないが故に装着相手の案内面との接触圧力が小さくなる。
【0018
発明の実施の形態
以下,図面を参照して,この発明の保持器付きころの一実施例について説明する。
【0019
図1乃至図4に示すように,この発明にる保持器付きころは,略円筒状にして複数のポケット1aが軸方向に平行にかつ円周方向において等間隔にて形成された保持器1と,ポケット1a各々に挿入された針状ころ2とからなる。ポケット1aはその幅寸法が,後述する各保持用突出部間の寸法を除いてころ2の外径寸法より僅かに大きく設定されている。また,各ころ2の直径は保持器1の肉厚よりも大となっている。
【0020
保持器1は,両端の円環部1bと,両円環部1bを互いに結合しかつ各円環部1bと共にポケット1aを画定すべく円周方向に並設された複数の柱部1cとを,一体に成形してなる。
【0021
図3から明らかなように,各柱部1cはその略全長にわたって外側面が両円環部1bの外周面と面一となるようになされている。この構成によれば,保持器1の外周面はポケット部を除いて完全な円筒面となり,装着相手としてのコネクティングロッド大端部(後述)の内周面(案内面)との接触面積が極めて大となって接触面の圧力が大幅に軽減され,発熱と前記接触面の摩耗の抑制に関して特に有効である。
【0022
3から明らかなように,柱部1cには,その内側かつ軸方向中央に,ころ2のピッチ円直径(P.C.D.)よりも外側まで達しかつポケット1aの長さよりも短い略U字状の凹部1fが形成されている。これにより,柱部1cは,円環部1bに各々連なる両端の厚肉部1dと,両厚肉部1d間に介在する中央の薄肉部1eとを有する。厚肉部1dは,その円周方向両側面が平滑なころ案内面となっており,前記ころ案内面にてころ2に円滑に摺接して案内する。
【0023
上記の略U字状の凹部1fを形成した構成によれば,前述のように柱部1cの外側面と円環部1bの外周面とを互いに面一とした構成と相まって,柱部1cが,両円環部1bの断面形状と共に門のような形を呈する。このように保持器1が門形の断面形状を有するので,比較的大きな断面係数が確保され,軽量にして大きな剛性が得られる。
【0024
保持器1の上記門形断面形状の構成においては,ころ2が柱部1cの両端厚肉部1dによって案内されるので,ころの倒れ,すなわちスキューが小さく抑えられ,軌道面との滑りが小さく発熱量も少ない。また,保持器1の門形断面形状では,ころ2のビッチ円直径(P.C.D.)に沿った柱部1cの幅寸法が比較的小さいから,ころ2の組込み本数を増やすことができ,上述のように剛性が大であることにも鑑みて,高負荷容量を必要とする際に用いて好適である。因に,図8乃至図12に従来例として示した保持器付きころは,図9から特に明らかなように,柱部101cが,両端の円環部101bの断面形状と共にアルファベットのMを形成するようにその中央部分が内径側に向けて屈曲しており,それ故にM形と称される。前記M形の保持器付きころでは,ころのピッチ円直径に沿った柱部101cの幅寸法を,本発明にる門形の保持器付きころと同じに設定した場合,組み込めるころの本数は本発明のものに比べて少なくなる。また,柱部101c自体も薄肉でしかも大きく屈曲しているところから,剛性が抑えられ,比較的低い負荷を受ける場合に多く選定される。
【0025
図3及び図4に示すように,柱部1cの両端部近傍,すなわち両厚肉部1dには,その内面側両側に一対の内側保持用突出部1gが形成されており,また,外面側にして内側保持用突出部1gに対応する部位に同じく一対の外側保持用突出部1h1 が形成されている。但し,図5には外側保持用突出部1h1 のみ示している。これら内側保持用突出部1g及び外側保持用突出部1h1 ポケット1aに臨むように突出しており,円周方向において隣り合う柱部1cの内側と外側との保持用突出部同士の距離がころ2の直径よりも僅かに小さいように設定されている。これによってころ2が内側と外側との保持用突出部で保持され,ポケット1aからの内外への脱落が規制されている。
【0026
図1乃至図4に示すように,各柱部1cには,その軸方向における中央にして円周方向における両側に,ポケット1aの一部を拡幅するように所定長の切欠部1kが形成されている。このようにポケット1aの一部を拡幅したことにより,この保持器付きころが潤滑剤(油)を取り入れる能力が向上している。特に,このように切欠部1kを保持器1の軸方向中央に形成したことにより,図6に示す如くコネクティングロッド6の大端部6aに,この保持器付きころを装着した場合の潤滑性が優れている。
【0027
すなわち,図6の(a)に示した装着状態で,この保持器付きころへの潤滑剤の供給は,クランクシャフト7のウェイト部7aに対向する大端部6aの軸方向端面に形成されたサイドスリット6e(図6の(b)も参照)と,大端部6aの軸方向中央に形成された中央スリット6b(図6の(b)も参照)とを通じて行われる。これら各スリットのうち,大端部6aの中央スリット6bからの供給量が比較的多く見込まれる。上述したポケット1aの拡幅部分である切欠部1kは,このように大端部6aの軸方向中央に形成されている潤滑剤供給用の中央スリット6bに対応して位置するから,潤滑剤が効率良く流入し,潤滑性,耐焼付き性が良好である。
【0028
また,図6において参照符号5で示すのは,クランクピンである。また,クランクピン5と大端部6aについては図4にも示している。
【0029
上記構成の保持器付きころは,次のように製作される。また,保持器1の材質については例えば浸炭用鋼(SCM415,STKM13)等が選定され,ころ2に関しては軸受用鋼(SUJ2)等が用いられる。
【0030
保持器1については,まず,上記材質よりなる長尺のパイプ状材料を所定長さに切断することにより円筒状の素材を用意する。そして,断面を門形に旋削加工された円筒状の素材に打抜き加工を施すことによってポケット1aを形成し,更に,内周側及び外周側からローレット加工軸(図示せず)をあてがって所定圧力で押し付け,回転させることによって内側保持用突出部1g及び原外側保持用突出部1hを形成する。保持器1は,上記のローレット加工により,図3及び図5に示すように,柱部1cを円周方向に横切る凹部としての線状の溝1i及び1jが内外に形成されこの後,熱処理が施される。
【0031
3及び図5において二点鎖線で示すように保持器1の外周側を研削(寸法e2 にて示す)して,ローレット加工により生じた上記の溝1jを全て除去することが行われる。図5から明らかなように,保持器1は,上記の外周研削加工が完了した状態で正規の外径D0 となるよう,研削前の素材の外径D2 正規外径D0 に対して予めこの研削代e2 を加えた値に設定される。また,図3及び図5に示すように,上述のようにローレット加工を施すことによって形成された原外側保持用突出部1hはこの研削加工によってその外側部分1h2 を削り取られ,残余の部分が前述の正規の外側保持用突出部1h1 となる。従って,この正規の外側保持用突出部1h1 の外面と保持器1の正規外径D0 とが一致している。
【0032
またこの実施例においては,ローレット加工により保持器1の外周側に生じた溝1jを除去すべく行われる研削加工によって原外側保持用突出部1hの外周部分1h2 を削り取るものとしているが,次のようにしてもよい。
【0033
すなわち,図5において,溝1jの底面,つまり原外側保持用突出部1hの外面がそのまま保持器1の正規外径D0 と一致するように素材の外径を設定し,溝1jの底面まで削り込んだら研削を終了するものである。この構成によれば,ローレット加工によって形成した原外側保持用突出部1hがそのまま正規の外側保持用突出部1h 1 となる。要するに,溝1jをその一部をも余すことなく除去すればよい訳である。
【0034
上述のようにして保持器1の成形が完了したら,保持器1の外面に銅及び/または銀めっきを施す。これにより,特に保持器1の外径面の案内面に対するなじみ性が良好となる。
【0035
一方,ころ2については,詳述はしないが,前述の材質よりなる線状の材料を所定長さに切断することにより針状の素材を用意し,この素材に対して研磨処理,熱処理等を施して得る。このようにして得られたころ2を,保持器1のポケット1a内に圧入によって挿入し,この保持器付きころが完成する。
【0036
図4及び図6は上記した構成の保持器付きころをコネクティングロッドの大端部6aとクランクピン5との間に介装した使用状態を示すものであるが,この使用状態においては,ころ2が柱部1cの厚肉部1d(図3等も参照)に形成されたころ案内面と円滑に接触し,ほぼピッチ円直径(P.C.D.)上で案内され,内側保持用突出部1g及び外側保持用突出部1h1 に接触することなく転動するようになされている。また,保持器1の円周面は,クランクピン5に接触する前に大端部6aの内周面(案内面)に保持器1の外周面が接触するように寸法設定がなされている。すなわち,この保持器付きころにおいては,保持器1の外周をコネクティングロッド大端部6aの内周面(案内面)で案内させる設計となされている。この保持器付きころにおいては,このように,保持器1の内周側は案内されないし,また,保持器付きころが回転中にはころ2が遠心力によって外側に振り回されて内側保持用突出部1gと接触することがないので,保持器1の内周側に形成された内側保持用突出部1g及び溝1iに関しては,研削処理は行われない。
【0037
上述したように,この保持器付きころにおいては,外側保持用突出部の加工時に生じた凹部としての溝1jを完全に除去すべく保持器1の外周側を研削して,該外側保持用突出部の外面と保持器1の正規外径D0 (図5参照)とが一致するようにしている。
【0038
この構成によれば,図5から特に明らかなように,外側保持用突出部1h1 が保持器1の外周面に極く接近して位置し,保持器1に対するころ2のラジアル方向外側への突出量b2 ,すなわち上がり量を大きくとることができる。言い換えれば,ポケット1aの円周方向両側に形成された各外側保持用突出部1h1 に対するころ2の接触点13(図5参照)は,保持器の外周面側に上がっていることである。また,図5に示すように,ころ2の接触点13間の距離c2 は,両外側保持用突出部1h1 同士の距離d2 とほぼ一致している。
【0039
この発明による保持器付きころは,上記構成を有することによって,下記の効果が得られる。この保持器付きころにおいては,ある程度の作動期間が経過すること,あるいは使用条件により柱部1cのころ案内面の摩耗量が増大すると,ころ2が図5において破線にて示すようにポケット1aの正規幅Wを逸脱して円周方向にずれる(図5においてこのずれ量を記号aで示している)状態になる。よって,ころ2は外側保持用突出部1h1 に接近する。
【0040
この発明にる保持器付きころにおいては,上記のように,外側保持用突出部1h1 が保持器1の外周面に極く接近して位置しているから,このように保持器1の柱部1cのころ案内面が摩耗しても,ころ2が外側保持用突出部1h1 に接触することがないか,あるいは接触するまでの時間,すなわち発熱,焼付きに至るまでの時間が延長され,寿命が長くなる。
【0041
また,外側保持用突出部1h1 を設けるために形成された上記の溝1jについても完全に除去されるから,保持器1の外周面と装着相手としてのコネクティングロッド大端部6aの内周面(案内面)との接触面積が増大して接触面の圧力が小さくなり,発熱と前記接触面の摩耗が抑えられる。
【0042
更に,この保持器付きころは,上記構成によれば,上記正規外径D0 に加えて上記溝1jの深さ分以上の研削代(e2 )を持った状態,すなわち厚肉で剛性の大きな円筒状素材に対してポケット1a及び外側保持用突出部1h1 及び内側保持用突出部1gの加工を施すこととなるため,該加工により生ずる歪が小さく抑えられ,ポケット1a,外側保持用突出部1h1 及び内側保持用突出部1gの寸法精度が向上している。
【0043
また,外側保持用突出部1h1 及び内側保持用突出部1gは,柱部1cの全長のうち剛性が比較的大きな両端の厚肉部1dに形成される。従って,ローレット加工による加圧に基づく保持器1の変形量が小さくて済み,ポケット1aの寸法を高精度に保つことができる。
【0044
この保持器付きころの実施例に関して,上述したころ2の上がり量b2 (図5参照)と,保持器1の外周面積すなわちコネクティングロッド大端部との接触面積について,実際に供試体を製作して測定した結果を示す。また,この発明にる保持器付きころの数値と比較するために,保持器1の外周面の研削処理を行わない別の供試体をも製作して,そのころの上がり量と保持器の外周面積を測定したのでその結果も示す。但し,言うまでもなく,この比較用の別の供試体は,ローレット加工を施す以前の円筒状素材の外径が既に正規外径D0 となされた。
【0045
上記両供試体は,図3に示した各主要寸法が下記のように設定されている。また,ころ数は16に設定された。
w :内接円径=22mm
w :外接円径=29mm
c :保持器幅=17mm
ころ直径=3.5mm
ころ長さ=13.8mm
【0046
上記寸法設定の結果,この発明に係る供試体では,上がり量b2 は約0.7乃至1.0mmの数値が得られ,研削処理を行わない供試体では上がり量は約0.4乃至0.7mmとなった。すなわち,この発明に係る供試体においては,非研削の供試体に比し,上がり量b2 を平均で約0.3mm大きくすることができた。
【0047
例えば跨座型車両(オートバイ等)に装備されるエンジンのコネクティングロッド用としては,一般にころの直径が約3乃至4mmの保持器付きころが選定され,上記供試体のものはこれに相当する。この供試体を実際にエンジンに装着して実験を行ったところ,上記上がり量b2 の最小値を上記の如く約0.7mmとすれば所要の効果が得られることが判明した。
【0048
一方,保持器1の外周面積,すなわち接触面積については,非研削の供試体のそれが575mm2 であるのに対し,本発明に係る供試体では641mm2 となり,11.5%増加させることができた。従って,本発明に係る供試体は,回転中の保持器1の外径接触面の圧力については,非切削のものに比し,10.3%減少することが判明した。
【0049
図7は,この発明による保持器付きころの第2実施例の要部の縦断面を示すものである。また,第2実施例としての保持器付きころは,以下に説明する部分以外は図1乃至図6に示した第1実施例としての保持器付きころと同様に構成されており,従って,全体としての説明は省略して要部のみの説明に留める。また,以下の説明において,第1実施例の保持器付きころの構成部分と同一又は対応する構成部分については同一の参照符号を付して示している。
【0050
図示のように,この保持器付きころにおいては,保持器1の厚みが第1実施例の保持器付きころの保持器の厚みに比して薄く形成され,内側保持用突出部は形成されてはおらず,外側保持用突出部1h1 のみ形成されている。外側保持用突出部1h1 の形成方法に関しては第1実施例のものと同様である。このように,ころ2の脱落規制を外方についてのみ行った保持器付きころにおいても前述した第1実施例の保持器付きころと同様に,所要の効果を有している
【0051
また,前述の第1実施例のもののように,ころ2の脱落規制を内外共に施した保持器付きころにおいては,ころ2は保持器1と一体化され,コネクティングロッド等に装着する際の取扱いが容易となる。
【0052
また,上記各実施例では,保持器1の外側保持用突出部1h1 (第1実施例における内側保持用突出部1gについても)に関して,ローレット加工によるカシメによって形成し,上記カシメによって生じた溝1j(1i)を除去する場合を示したが,この他,成形型によって前記突出部を形成した後,それによってできた形成くぼみ部を完全になくなるまで外径面の研削を施すこととしてもよい。
【0053
また,上記各実施例の保持器付きころは門形断面形状のものであるが,この発明は他にM形のものなど,種々の保持器付きころにも適用可能であることは勿論である。
【0054
また,上記各実施例では,ローレット加工により生じた溝を除去すべく研削加工を行っているが,広義には切削であればよい。
【0055
更に,上記各実施例においては,保持器1に関してその全体が円筒状として一体に形成されているが,二つ割り構造,すなわち,一対の半環状の分割体を互いに接合する構成としてもよい。図6に示したクランクシャフト7については,クランクピン5とウェイト部7aとが別体のものと一体のものとがあり,完全円筒状の一体成形の保持器はこの別体形式のクランクシャフトでは組み込めるが,一体形式のクランクシャフトヘの組込みは不可能である。二つ割り構造の保持器を用いれば,クランクシャフトが別体形式,一体形式にかかわらず組み込むことができる。
【0056
【発明の効果】
以上説明したように,この発明による保持器付きころは,外側保持用突出部の加工時に生じた凹部を完全に除去すべく保持器の外周側を切削して,上記外側保持用突出部の外面と保持器の正規外径とが一致するようにしている。上記構成によれば,外側保持用突出部,保持器の外周面に極く接近して位置し,保持器に対するころのラジアル方向外側への突出量,すなわち上がり量を大きくとることができる。従って,保持器の柱部のころ案内面が摩耗しても,ころが外側保持用突出部に接触することがないか,あるいは接触するまでの時間,すなわち発熱,焼付きに至るまでの時間が延長され,寿命が長くなる。また,この保持器付きころは,外側保持用突出部を設けるために形成された上記凹部についても完全に除去される故,保持器外周面と装着相手(例えばコネクティングロッド大端部)の内周面(案内面)との接触面積が増大して接触面の圧力が小さくなり,発熱と該接触面の摩耗が抑えられる。
【0057】
更に,この保持器付きころは,上記構成によれば,上記正規外径に加えて上記凹部の深さ分以上の切削代を持った状態,すなわち厚肉で剛性の大きな素材に対してポケット及び外側保持用突出部(内側保持用突出部を設ける場合も同様)の加工を施すこととなるため,該加工により生ずる歪が小さく抑えられ,ポケット及び外側保持用突出部(内側保持用突出部も)の寸法精度が向上している。加えて,この保持器付きころにおいては,保持器の柱部各々について,その略全長にわたって外側面を円環部の外周面と面一となしているので,保持器外周面はポケット部を除き完全な円筒面となり,上記装着相手との接触面積が極めて大となって接触面の圧力が大幅に軽減され,前述した発熱と摩耗の抑制に関して特に有効である。
【0058】
また,この保持器付きころは,上記柱部に関して,保持器軸方向における中央にして円周方向における両側に,ポケットの一部を拡幅するように切欠部を形成しているので,ポケットの一部を拡幅したことにより,潤滑剤を取り入れる能力が向上している。特に,この保持器付きころをコネクティングロッド大端部に装着した場合,大端部の軸方向中央部に形成されている潤滑剤供給用のスリットに対応してポケットの拡幅部分が位置するから,潤滑剤が効率良く流入し,潤滑性,耐焼付き性が良好である。更に,この保持器付きころは,上記柱部の内側かつ軸方向中央にころのピッチ円直径よりも外側まで達しかつポケットの長さよりも短い略U字状の凹部を形成することにより両端厚肉部と中央薄肉部とを有するようになし,上記外側保持用突出部を該両端厚肉部に形成している。上記略U字状凹部を形成した構成によれば,前述のように柱部の外側面と円環部の外周面とを互いに面一とした構成と相まって,柱部が,両円環部の断面形状と共に門のような形を呈する。
【0059】
この保持器付きころは,保持器が門形の断面形状を有するので,軽量にして大きな剛性が得られる。また,柱部の全長のうち剛性が比較的大きな上記両端厚肉部に外側保持用突出部(内側保持用突出部を形成する場合も同様)が形成されるから,ローレット加工等による加圧に基づく保持器の変形量が小さくて済み,ポケットの寸法を高精度に保つことができる。また,上記門形断面形状の構成においては,ころが柱部の両端厚肉部によって案内される故,ころの倒れ,すなわちスキューが小さく抑えられ,軌道面との滑りが小さく発熱量も少ない。また,上記門形断面形状では,ころのピッチ円直径(P.C.D.)に沿った柱部の幅寸法が比較的小さいから,ころの組込み本数を増やすことができ,上述のように剛性が大であることにも鑑みて高負荷容量を必要とする際に用いて好適である。因に,図8乃至図12に従来例として示した保持器付きころは,図9から特に明らかなように,柱部101cが,両端の円環部101bの断面形状と共にアルファペットのMを形成するようにその中央部分が内径側に向けて屈曲しており,それ故にM形と称される。このM形の保持器付きころでは,ころのピッチ円直径に沿った柱部101cの幅寸法を本発明に係る門形の保持器付きころと同じに設定した場合,組み込めるころの本数は本発明のものに比べて少なくなる。また,柱部101c自体も薄肉でしかも大きく屈曲しているところから,剛性が抑えられ,比較的低い負荷を受ける場合に多く選定される。
【0060】
この発明による保持器付きころは,ポケットからのころの内方への脱落を規制する内側保持用突出部も有する。従って,ころは内外の保持用突出部によって保持されて保持器と一体化され,コネクティングロッド等に当該保持器付きころを装着する際の取扱いが容易となっている。但し,該内側保持用突出部の加工時に保持器内周側に形成された凹部に関しては,保持器付きころが回転中にはころが遠心力によって外側に振り回されて該内側保持用突出部と接触することがないから,外側保持用突出部形成時の凹部のように除去する必要はない。更に,この保持器付きころは,上記保持器が,一対の半環状分割体を互いに接合してなる。図6に示したクランクシャフト7については,クランクピン5とウェイト部7aとが別体のものと一体のものとがあり,完全円筒状の一体成形の保持器はこの別体形式のクランクシャフトでは組み込めるが,一体形式のクランクシャフトへの組込みは不可能であるが,二つ割り構造の保持器を用いれば,クランクシャフトが別体形式,一体形式に拘らず組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明による保持器付きころの第1実施例を示す斜視図である。
【図2】 1に示した保持器付きころの一部を示す拡大図である。
【図3】 1に示した保持器付きころの一部を示す軸方向に平行な縦断面図である。
【図4】 1に示した保持器付きころの一部を示す軸方向に対して垂直な断面図である。
【図5】 1に示した保持器付きころの一部を示す拡大した軸方向に対して垂直な断面図である。
【図6】 1に示した保持器付きころをエンジンのコネクティングロッドに装着した状態を示す図である。
【図7】 この発明による保持器付きころの一部の第2実施例を示す軸方向に平行な縦断面図である。
【図8】 来の保持器付きころの一部を示す正面図である。
【図9】 8に示した保持器付きころを示す軸方向に平行な縦断面図である。
【図10】 8に示した保持器付きころの一部を示す軸方向に平行な縦断面図である。
【図11】 8に示した保持器付きころの一部を示す軸方向に平行な縦断面図である。
【図12】 8に示した保持器付きころの一部を示す拡大した軸方向に対して垂直な断面図である。
【符号の説明】
1 保持器
1a ポケット
1b 円環部
1c 柱部
1d (両端の)厚肉部
1e (中央の)薄肉部
1f (略U字状の)凹部
1g 内側保持用突出部
1h1 外側保持用突出部
1i,1j 溝(凹部)
5 クランクピン
6 コネクティングロッド
6a 大端部
6b 中央スリット

Claims (4)

  1. 両端の円環部及び前記円環部と一体に円周方向にそれぞれ並設されて前記円環部と共に軸方向に平行なポケットを画定する複数の柱部を有する略円筒状の保持器と,前記保持器の肉厚よりも大径にして前記ポケットにそれぞれ挿入されたころとから保持器付きころにおいて
    前記柱部には外面の一部が凹部に加工されることによって前記柱部の前記一部が前記ポケットに臨むように突出て前記ころの外方への脱落を規制する外側保持用突出部が形成され,加工により生じた前記凹部の底面である前記外側保持用突出部のところまで前記保持器の外周側を全て切削除去して前記外側保持用突出部の外面と前記保持器の正規外径である前記保持器の外周面とが一致して形成され,
    前記ポケットの円周方向両側に形成された前記外側保持用突出部に対する前記ころの接触点が前記保持器の前記外周面に一致するように形成され,
    前記柱部は,外側面が全長にわたって前記円環部の外周面と面一に形成され,前記柱部の内側且つ軸方向中央に前記ころのピッチ円直径よりも外側まで達し且つ前記ポケットの長さよりも短い略U字状の凹部が形成されて両端厚肉部と中央薄肉部とに形成され,前記両端厚肉部に前記外側保持用突出部が形成されていることを特徴とする保持器付きころ。
  2. 前記柱部の前記軸方向における中央にして前記円周方向における両側に,前記ポケットの一部を拡幅するように切欠部を形成してなることを特徴とする請求項1に記載の保持器付きころ。
  3. 前記柱部の一部を加工することによって前記ポケットに臨むように突出させて前記ころの内方への脱落を規制する内側保持用突出部を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の保持器付きころ。
  4. 前記保持器は,一対の半環状分割体を互いに接合してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の保持器付きころ。
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