JP3666388B2 - Martensitic stainless steel seamless pipe - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、靱性および炭酸ガス腐食性に優れた低降伏比のマルテンサイト系ステンレス継目無鋼管に関する。この継目無鋼管は炭酸ガスを含む原油を採掘する油井管や原油を輸送するフローライン、ラインパイプ、油井井戸坑底機器およびバルブ等の用途に好適である。
【0002】
【従来の技術】
石油、天然ガス資源の減少に伴い、陸上だけでなく海底油田の開発が活発となっている。海底油田を開発する場合、掘削、精製基地となる海上プラットフォームを建造し、プラットフォーム上から油井管にて石油、天然ガスを汲み上げる。
さらに、腐食性を低下させるために脱水、脱硫等の精製をプラットフォーム上で実施した後、安価な炭素鋼や合金鋼のパイプラインにて搬送する方法が一般的である。しかしながらプラットフォームの建造、維持コストが莫大なため、近年新たにプラットフォームの建造を必要としない海底油田採掘技術が開発されている。
【0003】
すなわち、プラットフォームから油井管を直接地中の油層まで降ろさず、油井管を海底から地中の油層まで降ろして海底で油井を仕上げ(sub sea completion)て、腐食性の高い原油、ガスをそのままフローラインで既存のプラットフォームまで搬送する方法である。この場合、フローラインは搬送する媒体に対して優れた耐食性を有していることが必要であり、油井管と同等程度の耐食性を有するステンレス、高合金等の材質が必要となる。
【0004】
油井に多く含まれる炭酸ガスによる腐食に対して高Cr鋼が有効であることは知られており、炭酸ガスを多く含む油井管用にはAPI−13Crで規定される0.2%C−13%Cr鋼が多く使用されている。しかしながら、この材料はC濃度が高いため溶接性は好ましくなく、フローラインやラインパイプのように溶接して使用される用途には不向きであった。そこで、近年C含有量を低減して、かわりにオーステナイト生成元素としてNiを添加したスーパー13Cr鋼と呼ばれる新しい溶接性に優れた鋼種が開発されている。
【0005】
しかし、スーパー13Cr鋼はNiを5〜7%と多量に含有しておりAPI−13Crに比べて大幅に高価になるという問題がある。また、単純にNi含有量を低減すると熱間加工性、耐食性および靭性を低下させるδフェライトが生成するだけでなく、Ni含有量自体が靭性を支配するため、靭性の確保が難しい。
【0006】
特開平9−228001号、特開平10−1752号、特開平11−61267号の各公報には、2%以下のNiを含有する低Cマルテンサイト系ステンレス鋼において、靭性を確保する手法が開示されている。いずれも、Cuを添加することにより、Ni低減による靭性低下を抑制することを特徴としている。
【0007】
特開平8−295939号公報には、Cuを必須元素とした低Cマルテンサイト系ステンレス鋼を熱処理することにより靭性を向上させるラインパイプ用高Crマルテンサイト鋼管の製造方法が開示されている。
【0008】
特開平10−1752号公報には、CuおよびNを添加して靱性を改善した 低Cマルテンサイト系ステンレス鋼が、また特開平11−61267号公報にはCuを必須元素とした鋼に、焼入れと焼戻し熱処理の中間で2相域での熱処理を施すことにより靭性を改善するマルテンサイト継目無鋼管の製造方法が開示されている。
【0009】
このように、上記従来技術はいずれもNiを低減して靭性が低下した鋼にCuを添加することによって靭性を確保するか、さらにCuを添加した鋼を用いて熱処理等を特定して靭性の改善を図った技術である。
【0010】
しかしながら、ステンレス鋼においてCuは熱間加工性やクリープ強度を低下させることがあり、不純物として好ましくない場合が多く、Cuを添加した鋼はスクラップリサイクル性にも問題がある。そこで、Cuを添加することなく靭性を確保する方策が必要とされていた。
また、上記熱処理により靱性を確保する方法においては、製造コストの面からは熱処理回数はなるべく少ない方がよく、熱間加工後室温に冷却することなく焼入れする直接焼き入れ方法による製造が望ましいが、この場合結晶粒が粗大になり、靭性確保がさらに困難になる問題があった。
【0011】
上記特開平11−61267号公報には、直接焼入れ材の靭性確保のための熱処理方法が開示されているが、直接焼入れ後、2相域熱処理と焼戻しによる2回の熱処理が必要で、直接焼入れによる熱処理軽減効果が全く得られない問題があった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、Ni含有量が3%以下と低く安価な低Cマルテンサイト系ステンレス継目無鋼管において、Cuを添加することなく、また熱処理を多数回施すことなく靱性、耐食性に優れた低降伏比マルテンサイト系ステンレス継目無鋼管を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
Cuを添加することなく、また多数回の熱処理を施さず、直接焼入れ材であっても靱性、耐食性に優れた安価な低Cマルテンサイト系ステンレス継目無鋼管を開発するため鋭意検討した結果、以下の知見を得ることができた。
【0014】
a)靭性、耐食性さらに熱間加工性を確保するためには、δフェライトを生成させてはならない。δフェライトの生成を抑制してNiを低減するためには、Niに代わるオーステナイト生成元素を添加するか、フェライト生成元素の低減が必要である。
【0015】
b)オーステナイト生成元素であるCuはスクラップのリサイクル性に問題があり、また他のオーステナイト生成元素であるC、Nも溶接部の強度を上昇させて靭性、耐食性を低下させるので利用できない。
【0016】
c)したがって、フェライト生成元素であるCrの含有量を低減する必要がある。油井管のAPI−13CrのCr含有量は約13%であるが、含有するCやNによってかなりのCrがCr炭窒化物となって耐食性に寄与しなくなっているので低C、低Nの材料では13%のCr量を確保する必要はなく、最低限9.5%のCr含有量があればAPI−13Crと同等の耐炭酸ガス腐食性が得られ、また12%を超えるとδフェライトが生成して熱間加工性、耐食性および靭性が低下することから、Cr含有量はAPI−13Crより低減した9.5%〜12%とするのがよい。
【0017】
d)Cuを含有しない成分系でNiを低減すると靭性が低下するが、その対策としては金属組織のコントロールが有効であり、焼戻しマルテンサイトとフレッシュマルテンサイトの混合組織とすれば靭性が改善でき、特にフレッシュマルテンサイトの靭性を確保するためには、少量のMoを添加する必要がある。
【0018】
e)そのフレッシュマルテンサイト率が1〜80%であると溶接構造物として良好な85%以下の降伏比も得られる。
【0019】
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、その要旨は以下の通りである。
【0020】
(1)質量%で、C:0.03%以下、Si:0.05〜1%、Mn:0.05〜2%、P:0.025%以下、S:0.01%以下、Cr:9.5〜12%、Ni:1〜3%、Mo:0.05〜1.5%、N:0.05%以下、O:0.01%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、金属組織が焼戻しマルテンサイトとフレッシュマルテンサイトの混合組織であってフレッシュマルテンサイトの量が1%〜80%であるマルテンサイト系ステンレス継目無鋼管。
【0021】
(2)さらに、V:0.001〜0.5%、Nb:0.001〜0.5%、Ti:0.001〜0.5%およびZr:0.001〜0.5%のうちから選ばれた1種又は2種以上を含有する上記(1)に記載のマルテンサイト系ステンレス継目無鋼管。
(3)さらに、Ca:0.0005〜0.05%、Mg:0.0005〜0.05%、REM:0.0005〜0.05%のうちから選ばれた1種又は2種以上を含有する上記(1)に記載のマルテンサイト系ステンレス継目無鋼管。
【0022】
(4)さらに、V:0.001〜0.5%、Nb:0.001〜0.5%、Ti:0.001〜0.5%およびZr:0.001〜0.5%のうちから選ばれた1種又は2種以上と、Ca:0.0005〜0.05%、Mg:0.0005〜0.05%、REM:0.0005〜0.05%のうちから選ばれた1種又は2種以上とを含有する上記(1)に記載のマルテンサイト系ステンレス継目無鋼管。
【0023】
(5)さらに、sol.Alを0.001〜0.1%含有する上記(1)〜(4)のいずれかに記載のマルテンサイト系ステンレス継目無鋼管。
【0024】
(6)さらに、Bを0.0003〜0.01%含有する上記(1)〜(5)のいずれかに記載のマルテンサイト系ステンレス継目無鋼管。
【0025】
なお、光学顕微鏡によりフレッシュマルテンサイトと焼戻しマルテンサイトとを判別するのが困難なため、フレッシュマルテンサイト率は下記式により求めるものとする。
フレッシュマルテンサイト率=(c−b)/(a−b)×100(%)
ここで、
aは、1000℃から水焼き入れしたときのロックウェルC硬度
bは、焼入れ後、Ac1点温度−20℃で焼戻したときの硬度
cは、最終熱処理後のロックウエル硬度C
とする。ただし、上記式が負になった場合は、フレッシュマルテンサイト率を0%とする。また、析出強化が作用したときには上記計算値が100%を超えることがあるが、その場合はフレッシュマルテンサイト率を、それぞれ100%とする。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明において、化学組成と金属組織を規定した理由を説明する。なお、化学組成の%表示は全て質量%を示す。
【0027】
C:
Cは、その含有量が0.03%を超えると、フレッシュマルテンサイトの強度が高くなり、靭性が低下するのでその上限を0.03%と定めた。C含有量は低ければ低いほうがよい。C含有量が低いほど焼き戻しマルテンサイトとフレッシュマルテンサイトの混合組織としたときの靭性が良好になるので、好ましくは0.2%以下、より好ましくは0.009%以下である。
【0028】
Si:
Siは、脱酸に必要な元素であるが、フェライト生成元素であるので添加しすぎるとδフェライトが生成して熱間加工性、靭性および耐食性を低下させる。脱酸のためには0.05%以上含有させる必要がある。一方、1%を超えるとフェライトが生成しやすくなるので、その範囲を0.05〜1%とした。
【0029】
Mn:
Mnは、脱酸材として製鋼上必要な元素である。0.05%未満では脱酸作用が不足して靭性および耐食性が低下するので、下限を0.05%とした。高温でδフェライトを析出させないためには、多量含有させることが好ましく、1%を超える量が好ましい。一方、2%を超えるとかえって靭性が低下するので上限を2%とした。
【0030】
P:
Pは、不純物として鋼中に存在し、耐食性および靭性を低下させる。十分な耐食性と靭性を得るためには0.025%以下とする必要があるが、その含有量は低ければ低い程良好であり、厳しい低温靭性が要求される場合は0.02%以下、さらに厳しい低温靭性が要求される場合は0.015%以下が好ましい。
【0031】
S:
Sは、不純物として鋼中に存在し、熱間加工性、耐食性および靭性を低下させる。それらの充分な特性を得るためには、0.01%以下が必要であるが、その含有量は低ければ低い程良好であり、0.002%以下が好ましい。
【0032】
Cr:
Crは、耐炭酸ガス腐食性を向上させる成分である。9.5%未満では十分な耐炭酸ガス腐食性が得られないので下限を9.5%とした。また、多量に含有させると高価になるためNiの上限を3%とした場合において、Cr量が12%を超えると、圧延時の加熱でδフェライトが生成しやすく熱間加工性、靭性および耐食性が低下するので12%を上限とした。圧延加熱温度はより高温の方が、変形抵抗が減少して工具寿命が長くなるので、より高温加熱でもδフェライトが生成しない成分系が好ましい。したがって、Crの上限は好ましくは11.5%、より好ましくは10.9%である。また、炭酸ガスに対する十分な耐食性を確保するにはCrは多いほど良好な結果が得られるので10%以上がより望ましい。
Ni:
C含有量を低減した高Cr鋼において、Niはδフェライトの生成を抑制し、靭性を確保するための必須の元素である。Ni含有量が1%未満ではδフェライトの生成を抑止できず、また靭性低下が著しいので上限を1%とした。靭性の確保の観点からはNi含有量は多いほど良好であるので、好ましくは1.5%以上である。特性の観点からはNiの上限は無いがNiは高価な元素であり、多量に添加すると油井管のAPI−13Crとのコスト差が大きくなるので3%を上限と定めた。なお、コストを油井管に近付けるためには、Ni添加量はなるべく低減する方が好ましく、さらに経済性を追求する場合には上限を2.5%、より好ましくは2%とするのが望ましい。
【0033】
Mo:
Moは、本発明の継目無鋼管において重要な元素であり、焼き戻されていないフレッシュマルテンサイトが存在する組織であっても良好な靭性を確保するために含有させる必要がある。この効果を得るためには0.05%以上含有させる必要がある。さらに、耐硫化物応力割れ特性を改善する効果も有するため、多量になるほど耐食性が向上するが、Moは高価な元素でありコスト高とならないように上限を1.5%とした。したがって、最小限の含有量が望ましく、好ましい範囲は0.05〜0.5%、より好ましい範囲は0.05〜0.3%である。
【0034】
N:
Nは、靭性を大幅に低下させる元素である。その含有量が0.05%を超えると、フレッシュマルテンサイトの強度が高くなり、靭性が大幅に低下するので上限を0.05%と定めた。N含有量は低ければ低いほうがいい。なお、N含有量が低いほど焼戻しマルテンサイトとフレッシュマルテンサイトの混合組織としたときの靭性が良好になるので、N含有量は好ましくは0.02%以下、より好ましくは0.01%以下に制限した方がよい。
【0035】
O(酸素):
Oは、含有量が0.01%を超えると、靭性、耐食性が低下が著しいので、0.01%以下とした。
【0036】
上記の化学組成に、さらに必要により下記の元素を含有させることができる。
V、Nb、Ti、Zr:
これらの元素は、焼戻しマルテンサイトとフレッシュマルテンサイトの混合組織としたときに強度を向上させるとともに、Cを固定し、強度のばらつきを少なくする作用があり、そのような効果を得る目的で含有させることができる。それぞれの元素の含有量が0.001%未満の場合はそれらの効果が期待できず、0.5%を超える過剰な含有量ではδフェライトが生成して熱間加工性が低下するので含有させる場合はそれぞれ0.001〜0.5%とした。
【0037】
sol.Al:
Alは、脱酸のために添加できる元素である。添加する場合には、前記効果を得るには0.001%以上が必要である。一方、Alは強力なフェライト生成元素であるので、含有量が0.1%を超えるとδフェライトが生成するので、含有させる場合の上限は0.1%である。
【0038】
B:
Bは、靭性と熱間加工性を改善する効果を有するので、それらの効果を得る場合に含有させる。前記効果を得るには0.0003%以上が必要であり、一方0.01%を超えると耐食性が低下するので、含有させる場合は0.0003〜0.01%とした。
【0039】
Ca、Mg、REM:
いずれの元素も鋼の熱間加工性を向上させるのに有効な元素である。また、鋳造時のノズルつまりを防止する作用も有する。これらの効果を得たい場合には、1種又は2種以上を選んで含有させる。しかし、いずれの元素もその含有量が0.0005%未満では上記効果が得られない。一方、0.05を超えて含有させると、粗大な酸化物が生成し、孔食起点となって耐食性が低下する。したがって、含有させる場合、それぞれ0.0005〜0.05%とした。
【0040】
フレッシュマルテンサイト率:
本発明のステンレス継目無鋼管の主な金属組織は、焼戻しマルテンサイトとフレッシュマルテンサイトであるが、さらに極少量のδフェライトと析出物を含む場合がある。フレッシュマルテンサイト量が極少ないと靭性確保は困難であり、靱性を確保するためには1%以上であることが必要である。また、多く存在し過ぎると、強度が上昇し過ぎてかえって靭性が低下するので、フレッシュマルテンサイト率は1〜80%とした。良好な靭性を確保するためにはフレッシュマルテンサイト量は必要最小限が望ましく、好ましくは1〜60%、より好ましくは1〜40%である。
【0041】
本発明はCuを添加せず、かつNiの低い高Cr鋼において靭性を大幅に向上させるため、焼戻しマルテンサイトにフレッシュマルテンサイトが一定量存在する状態とし、さらに少量のMoを含有させることを特徴としており、熱処理は特に特定されないが、本発明で規定する金属組織は、例えば熱間加工後に下記のような熱処理を施すことにより得られる。
【0042】
まず、フレッシュマルテンサイトを残存させるために、最終熱処理が焼戻しであると、フレッシュマルテンサイトは全て焼戻しマルテンサイトとなってしまうため、最終熱処理はAc1点以上の温度とする必要がある。Ac1点以上の温度に加熱すれば、オーステナイトが生成し、本発明で規定された化学組成では冷却により残留オーステナイトとはならずマルテンサイト変態する。したがって、80%以下のオーステナイトと焼戻しマルテンサイトの2相域に加熱して冷却すると、所望の組織が得られる。また、オーステナイト単相域まで加熱しても、その後の冷却速度が遅いと、マルテンサイト変態後に一部の組織が冷却途中に自動的に焼戻しされるので、この場合でもフレッシュマルテンサイトと焼戻しマルテンサイトとの混合組織が得られる。フレッシュマルテンサイトの定量は組織観察では極めて困難であり、代わりに前記マルテンサイト率を表す計算式により定量する。
なお、この効果は特に靭性の確保が困難である高温で圧延終了後、直ちにまたは再加熱した後に空冷または急冷した比較的結晶粒の粗大なインライン熱処理材における効果が大きく、熱間加工後直接焼入れしてさらにAc1点〜Ac3点の温度域に加熱、冷却しその後の焼戻しを実施しない熱処理で特に効果が大きい。また、Ac3点以上に加熱して放冷することによってセルフテンパーされた焼戻しマルテンサイトとフレッシュマルテンサイトが混在する組織としてもよい。
【0043】
従来の技術ではインライン熱処理では靭性を確保することができず、圧延後焼入れ、焼戻しという2回の熱処理が必要であったが、本発明により圧延後冷却した後、1回の2相域熱処理で良好な特性がえられるので、インライン熱処理が可能となる利点がある。
【0044】
【実施例】
表1および表2示す化学組成のステンレス鋼を溶製した後熱間鍛造し、さらに熱間圧延にて厚さ12mm、幅180mm、長さ700mmの鋼板に仕上げた。仕上げ温度は全て1000℃とし、仕上げ後直ちに950℃の炉内に入れて10分間均熱した後水冷を施し直接焼き入れを実施した。次いで、最終熱処理の温度を種々変化させてフレッシュマルテンサイト率を変化させた。
【0045】
【表1】
【表2】
これらの焼入れ、焼戻し処理した鋼板から、溶接部の特性を評価するため下記の方法で溶接継ぎ手を製作した。
【0046】
すなわち、熱処理後の各鋼板から、それぞれ幅70mm、長さ400mmの2枚の溶接継ぎ手用の鋼板を切り出し、圧延方向の側面に開先加工を施して突き合わせて、25Cr系のスーパー2相ステンレス鋼の溶接材料を用いてガス・タングステン・アーク溶接(GTAW)法にて溶接した。
【0047】
焼入れ、焼戻し処理を施したままの鋼板(以下母材という)および溶接継ぎ手から、下記の試験片を加工し、機械的特性と耐食性を調査した。
【0048】
母材および溶接継ぎ手から製作した試験片
シャルピー衝撃試験片:JIS4号シャルピー試験片
試験片の長さ方向が圧延直角方向となるように製作し、溶接継ぎ手からは、溶接熱影響部から切り出し、ノッチ位置はボンドから1mmとした。
母材から製作した試験片
引張り試験片:直径4mm、標点間距離20mm
引張り方向が圧延方向となるように製作
耐食性試験片:、厚さ2mm、幅10mm、長さ75mm
耐食性試験は、分圧30気圧の炭酸ガスを飽和させた80℃の25%NaCl溶液に、200時間浸漬して腐食速度を測定した。
これらの試験結果を、表3および表4に示す。
【0049】
【表3】
【表4】
なお、表3、4中の耐食性の評価は、腐食速度が0.1mm/年未満の場合を”○”、0.1mm/年以上の場合を”×”と表示した。
【0050】
試験No.1〜34は本発明例で、本発明で規定した化学組成を有する鋼No.S1〜S34を用い、フレッシュマルテンサイト率が7〜80%の範囲にある。これらの鋼は、引張り強さ80ksiグレード(降伏強度:550MPa以上)の高強度を有しながら、84%以下と降伏比が低く、母材の靭性および耐食性、および溶接部の靭性ともに良好である。
【0051】
試験No.35〜37(鋼No.S35〜S37:API13Cr相当鋼)は従来例で、フレッシュマルテンサイトを析出させたが、フレッシュマルテンサイトの強度が著しく高いので、いずれも強度が高過ぎ、靭性が低下しているとともに、耐食性が劣っており、また降伏比も高い。
【0052】
一方、比較例の試験No.38〜42は、鋼の化学組成は本発明で規定する範囲内にあり、フレッシュマルテンサイト率が規定範囲から外れている例である。
比較例の試験の試験No.43〜46は、マルテンサイト率は本発明の規定を満たしてはいるが、化学組成が本発明で規定する範囲からはずれた例で、いずれも母材および、溶接部の靭性が大幅に低下している。
【0053】
なお、本実施例は圧延した鋼板で試験をおこなったが、継目無鋼管や溶接鋼管においても同様の特性が得られる。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、Cuを添加せずにNiを低減しても靭性、耐食性が確保でき、溶接構造物としての安全性が高まる低降伏比を有し、安価で溶接性に優れたマルテンサイト系ステンレス継目無鋼管が提供できる。また、本発明の継目無鋼管は圧延後の冷却の後、1回の熱処理により得られ、製造コストも抑制できる利点を有する。[0001]
BACKGROUND OF THE INVENTION
The present invention is related to a martensitic stainless seamless steel pipe of a low yield ratio superior in toughness and carbon dioxide corrosion. This seamless steel pipe is suitable for applications such as oil well pipes for mining crude oil containing carbon dioxide gas, flow lines for transporting crude oil, line pipes, oil well well bottom equipment and valves.
[0002]
[Prior art]
With the decrease in oil and natural gas resources, development of offshore oil fields as well as onshore has become active. When developing an offshore oil field, an offshore platform will be built as a drilling and refining base, and oil and natural gas will be pumped from the platform through an oil well.
Furthermore, in order to reduce the corrosivity, a method of carrying out purification such as dehydration and desulfurization on a platform and then transporting it through an inexpensive carbon steel or alloy steel pipeline is generally used. However, because the platform construction and maintenance costs are enormous, new offshore oil field mining technologies that do not require platform construction have been developed in recent years.
[0003]
That is, without dropping the oil well pipe from the platform directly to the underground oil reservoir, the oil well pipe is lowered from the sea floor to the underground oil reservoir, and the oil well is finished at the sea floor (sub sea completion), and the highly corrosive crude oil and gas flow as they are. It is a method of transporting to an existing platform on the line. In this case, the flow line needs to have excellent corrosion resistance with respect to the medium to be transported, and a material such as stainless steel or high alloy having corrosion resistance equivalent to that of the oil well pipe is required.
[0004]
It is known that high Cr steel is effective against corrosion caused by carbon dioxide contained in oil wells. For oil well pipes containing a lot of carbon dioxide, 0.2% C-13% specified by API-13Cr. A lot of Cr steel is used. However, since this material has a high C concentration, weldability is not preferable, and it is unsuitable for uses such as flow lines and line pipes that are welded. Therefore, in recent years, a new steel type excellent in weldability, called super 13Cr steel, in which the C content is reduced and Ni is added as an austenite generating element instead has been developed.
[0005]
However, the super 13Cr steel contains a large amount of Ni at 5 to 7% and has a problem that it is significantly more expensive than API-13Cr. Moreover, simply reducing the Ni content not only produces δ ferrite that reduces hot workability, corrosion resistance, and toughness, but also the Ni content itself dominates toughness, making it difficult to ensure toughness.
[0006]
JP-A-9-228001, JP-A-10-1752, and JP-A-11-61267 disclose methods for ensuring toughness in a low C martensitic stainless steel containing 2% or less of Ni. Has been. In any case, the addition of Cu suppresses toughness reduction due to Ni reduction.
[0007]
Japanese Patent Application Laid-Open No. 8-295939 discloses a method for producing a high Cr martensitic steel pipe for a line pipe that improves toughness by heat-treating a low C martensitic stainless steel containing Cu as an essential element.
[0008]
Japanese Patent Laid-Open No. 10-1752 discloses quenching of low C martensitic stainless steel with improved toughness by adding Cu and N, and Japanese Patent Laid-Open No. 11-61267, steel containing Cu as an essential element. A method for producing a martensitic seamless steel pipe is disclosed in which the toughness is improved by performing a heat treatment in a two-phase region between the tempering heat treatment and the tempering heat treatment.
[0009]
As described above, all of the above prior arts ensure toughness by adding Cu to the steel whose toughness is reduced by reducing Ni, or further specify the heat treatment etc. using the steel to which Cu is added. This is an improved technology.
[0010]
However, in stainless steel, Cu may reduce hot workability and creep strength, and is often undesirable as an impurity, and steel added with Cu has a problem in scrap recyclability. Therefore, a method for ensuring toughness without adding Cu has been required.
In addition, in the method of securing toughness by the heat treatment, the number of heat treatments is preferably as small as possible from the viewpoint of production cost, and production by a direct quenching method of quenching without cooling to room temperature after hot working is desirable, In this case, there is a problem that crystal grains become coarse and it becomes more difficult to secure toughness.
[0011]
JP-A-11-61267 discloses a heat treatment method for ensuring the toughness of a direct quenching material. However, after direct quenching, two heat treatments by two-phase region heat treatment and tempering are required, and direct quenching is performed. There was a problem that the effect of reducing the heat treatment due to was not obtained at all.
[0012]
[Problems to be solved by the invention]
The object of the present invention is to provide a low C martensitic stainless steel pipe with a low Ni content of 3% or less and an excellent low toughness and corrosion resistance without adding Cu and without multiple heat treatments. It is to provide a martensitic stainless steel pipe with a yield ratio.
[0013]
[Means for Solving the Problems]
Without the addition of Cu, also without performing multiple heat treatment, toughness even direct quenching material, a result of intensive investigations to develop an inexpensive low C martensitic stainless seamless steel pipe having excellent corrosion resistance, the following We were able to obtain the knowledge of.
[0014]
a) In order to ensure toughness, corrosion resistance and hot workability, δ ferrite must not be generated. In order to suppress the formation of δ ferrite and reduce Ni, it is necessary to add an austenite generating element instead of Ni or to reduce the ferrite forming element.
[0015]
b) Cu, which is an austenite-forming element, has a problem in scrap recyclability, and other austenite-generating elements, C and N, cannot be used because they increase the strength of the weld and reduce toughness and corrosion resistance.
[0016]
c) Therefore, it is necessary to reduce the content of Cr, which is a ferrite-forming element. The API-13Cr in the oil well pipe has a Cr content of about 13%. However, a significant amount of Cr becomes Cr carbonitride and does not contribute to corrosion resistance depending on the C and N content, so it is a low C and low N material. In this case, it is not necessary to secure a Cr content of 13%. If the Cr content is at least 9.5%, carbon dioxide corrosion resistance equivalent to that of API-13Cr can be obtained. Since it produces | generates and hot workability, corrosion resistance, and toughness fall, it is good to make Cr content into 9.5%-12% reduced from API-13Cr.
[0017]
d) When Ni is reduced in a component system not containing Cu, the toughness is reduced, but as a countermeasure, the control of the metal structure is effective, and the toughness can be improved if a mixed structure of tempered martensite and fresh martensite is used. In particular, in order to ensure the toughness of fresh martensite, it is necessary to add a small amount of Mo.
[0018]
e) When the fresh martensite ratio is 1 to 80%, a yield ratio of 85% or less which is good as a welded structure can be obtained.
[0019]
The present invention has been made based on such findings, and the gist thereof is as follows.
[0020]
(1) By mass%, C: 0.03% or less, Si: 0.05-1%, Mn: 0.05-2%, P: 0.025% or less, S: 0.01% or less, Cr : 9.5-12%, Ni: 1-3%, Mo: 0.05-1.5%, N: 0.05% or less, O: 0.01% or less, the balance being Fe and impurities A martensitic stainless steel pipe having a mixed structure of tempered martensite and fresh martensite, the amount of fresh martensite being 1% to 80%.
[0021]
(2) Further, V: 0.001 to 0.5%, Nb: 0.001 to 0.5%, Ti: 0.001 to 0.5%, and Zr: 0.001 to 0.5% The martensitic stainless steel seamless pipe according to (1) above, which contains one or more selected from:
(3) Further, one or more selected from Ca: 0.0005 to 0.05%, Mg: 0.0005 to 0.05%, and REM: 0.0005 to 0.05%. The martensitic stainless steel seamless steel pipe described in (1) above.
[0022]
(4) Further, V: 0.001 to 0.5%, Nb: 0.001 to 0.5%, Ti: 0.001 to 0.5%, and Zr: 0.001 to 0.5% 1 or 2 or more types selected from: Ca: 0.0005 to 0.05%, Mg: 0.0005 to 0.05%, REM: 0.0005 to 0.05% The martensitic stainless steel seamless steel pipe according to the above (1), containing one or more kinds.
[0023]
(5) The martensitic stainless steel seamless pipe according to any one of (1) to (4) , further containing 0.001 to 0.1% of sol.Al.
[0024]
(6) The martensitic stainless steel seamless pipe according to any one of (1) to (5) , further containing B in an amount of 0.0003 to 0.01%.
[0025]
In addition, since it is difficult to discriminate fresh martensite and tempered martensite with an optical microscope, the fresh martensite ratio is obtained by the following formula.
Fresh martensite ratio = (c−b) / (a−b) × 100 (%)
here,
a is the Rockwell C hardness b when water-quenched from 1000 ° C. is the hardness c after quenching and tempering at an Ac1 point temperature of −20 ° C. is the Rockwell hardness C after the final heat treatment.
And However, when the above formula becomes negative, the fresh martensite ratio is set to 0%. Moreover, when precipitation strengthening acts, the calculated value may exceed 100%. In this case, the fresh martensite ratio is set to 100%.
[0026]
DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
The reason why the chemical composition and the metal structure are defined in the present invention will be described below. In addition, all the% display of a chemical composition shows the mass%.
[0027]
C:
If the content of C exceeds 0.03%, the strength of fresh martensite increases and the toughness decreases, so the upper limit was set to 0.03%. The lower the C content, the better. The lower the C content, the better the toughness when a mixed structure of tempered martensite and fresh martensite is obtained, so the content is preferably 0.2% or less, more preferably 0.009% or less.
[0028]
Si:
Si is an element necessary for deoxidation, but since it is a ferrite-generating element, if it is added too much, δ-ferrite is generated and hot workability, toughness, and corrosion resistance are reduced. It is necessary to contain 0.05% or more for deoxidation. On the other hand, if it exceeds 1%, ferrite tends to be formed, so the range was made 0.05 to 1%.
[0029]
Mn:
Mn is an element necessary for steelmaking as a deoxidizing material. If it is less than 0.05%, the deoxidizing action is insufficient and the toughness and corrosion resistance are lowered, so the lower limit was made 0.05%. In order not to precipitate δ ferrite at a high temperature, it is preferable to contain a large amount, and an amount exceeding 1% is preferable. On the other hand, if it exceeds 2%, the toughness is lowered, so the upper limit was made 2%.
[0030]
P:
P exists in steel as an impurity, and reduces corrosion resistance and toughness. In order to obtain sufficient corrosion resistance and toughness, it is necessary to be 0.025% or less. However, the lower the content, the better. If severe low temperature toughness is required, 0.02% or less. When severe low temperature toughness is required, 0.015% or less is preferable.
[0031]
S:
S exists in steel as an impurity, and decreases hot workability, corrosion resistance, and toughness. In order to obtain these sufficient characteristics, 0.01% or less is necessary, but the lower the content, the better, and 0.002% or less is preferable.
[0032]
Cr:
Cr is a component that improves carbon dioxide corrosion resistance. If it is less than 9.5%, sufficient carbon dioxide corrosion resistance cannot be obtained, so the lower limit was made 9.5%. In addition, if the upper limit of Ni is 3%, if the upper limit of Ni is 3%, if the Cr content exceeds 12%, δ ferrite is likely to be generated by heating during rolling, and hot workability, toughness, and corrosion resistance. The upper limit was made 12%. As the rolling heating temperature is higher, the deformation resistance is reduced and the tool life is increased, so that a component system in which δ ferrite is not generated even at higher temperature heating is preferable. Therefore, the upper limit of Cr is preferably 11.5%, more preferably 10.9%. Further, in order to secure sufficient corrosion resistance against carbon dioxide gas, the better the result is obtained as the amount of Cr increases, so 10% or more is more desirable.
Ni:
In high Cr steel with a reduced C content, Ni is an essential element for suppressing the formation of δ ferrite and ensuring toughness. If the Ni content is less than 1%, the formation of δ ferrite cannot be suppressed, and the toughness is significantly reduced, so the upper limit was made 1%. From the viewpoint of ensuring toughness, the higher the Ni content, the better. Therefore, the content is preferably 1.5% or more. Although there is no upper limit of Ni from the viewpoint of characteristics, Ni is an expensive element, and if added in a large amount, the cost difference with API-13Cr of the oil well pipe becomes large, so 3% was set as the upper limit. In order to bring the cost closer to the oil well pipe, it is preferable to reduce the Ni addition amount as much as possible, and when pursuing economy, the upper limit is preferably 2.5%, more preferably 2%.
[0033]
Mo:
Mo is an important element in the seamless steel pipe of the present invention, and it is necessary to contain Mo in order to ensure good toughness even in a structure containing fresh martensite that has not been tempered. In order to acquire this effect, it is necessary to make it contain 0.05% or more. Furthermore, since it also has an effect of improving the resistance to sulfide stress cracking, the corrosion resistance improves as the amount increases. However, Mo is an expensive element and the upper limit is set to 1.5% so as not to increase the cost. Therefore, a minimum content is desirable, and a preferable range is 0.05 to 0.5%, and a more preferable range is 0.05 to 0.3%.
[0034]
N:
N is an element that greatly reduces toughness. If the content exceeds 0.05%, the strength of fresh martensite is increased and the toughness is significantly reduced, so the upper limit was set to 0.05%. The lower the N content, the better. The lower the N content, the better the toughness of the tempered martensite and fresh martensite mixed structure. Therefore, the N content is preferably 0.02% or less, more preferably 0.01% or less. It is better to restrict.
[0035]
O (oxygen):
When the content of O exceeds 0.01%, the toughness and corrosion resistance are remarkably lowered.
[0036]
The above chemical composition may further contain the following elements as necessary.
V, Nb, Ti, Zr:
These elements are included for the purpose of obtaining such an effect, which has the effect of improving the strength when it is a mixed structure of tempered martensite and fresh martensite, fixing C, and reducing variation in strength. be able to. If the content of each element is less than 0.001%, those effects cannot be expected, and if it exceeds 0.5%, δ ferrite is generated and the hot workability is reduced, so that it is contained. In each case, the content was 0.001 to 0.5%.
[0037]
sol.Al:
Al is an element that can be added for deoxidation. When added, 0.001% or more is necessary to obtain the above effect. On the other hand, since Al is a strong ferrite-forming element, if the content exceeds 0.1%, δ ferrite is generated, so the upper limit when it is contained is 0.1%.
[0038]
B:
Since B has an effect of improving toughness and hot workability, it is contained when obtaining these effects. In order to acquire the said effect, 0.0003% or more is required, On the other hand, since corrosion resistance will fall when it exceeds 0.01%, when making it contain, it was 0.0003 to 0.01%.
[0039]
Ca, Mg, REM:
Any of these elements is an effective element for improving the hot workability of steel. It also has an action of preventing clogging during casting. To obtain these effects, one or more are selected and contained. However, the above effects cannot be obtained when the content of any element is less than 0.0005%. On the other hand, if the content exceeds 0.05, a coarse oxide is formed, which becomes a pitting corrosion starting point and the corrosion resistance is lowered. Therefore, when it was made to contain, it was 0.0005 to 0.05%, respectively.
[0040]
Fresh martensite rate:
The main metal structures of the stainless steel seamless pipe of the present invention are tempered martensite and fresh martensite, but may further contain extremely small amounts of δ ferrite and precipitates. If the amount of fresh martensite is extremely small, it is difficult to ensure toughness, and it is necessary to be 1% or more in order to ensure toughness. In addition, if too much is present, the strength increases excessively and the toughness decreases, so the fresh martensite ratio is set to 1 to 80%. In order to ensure good toughness, the amount of fresh martensite is desirably the minimum, preferably 1 to 60%, more preferably 1 to 40%.
[0041]
In the present invention, Cu is not added, and in order to greatly improve toughness in a high Cr steel with low Ni, a certain amount of fresh martensite is present in tempered martensite, and a small amount of Mo is further contained. Although the heat treatment is not particularly specified, the metal structure defined in the present invention can be obtained, for example, by performing the following heat treatment after hot working.
[0042]
First, in order to leave fresh martensite, if the final heat treatment is tempering, all of the fresh martensite becomes tempered martensite. Therefore, the final heat treatment needs to be at a temperature higher than the Ac1 point. When heated to a temperature higher than the Ac1 point, austenite is generated, and in the chemical composition defined in the present invention, it does not become retained austenite but undergoes martensitic transformation by cooling. Therefore, a desired structure can be obtained by heating and cooling to a two-phase region of 80% or less austenite and tempered martensite. Also, even if heating to the austenite single phase region, if the subsequent cooling rate is slow, some of the structure is automatically tempered during the cooling after the martensite transformation, so even in this case fresh martensite and tempered martensite And a mixed tissue is obtained. Quantification of fresh martensite is extremely difficult by structural observation, and instead, it is quantified by a calculation formula representing the martensite ratio.
This effect is particularly effective for in-line heat-treated materials with relatively coarse grains that are air-cooled or rapidly cooled immediately after re-rolling at high temperatures where it is difficult to ensure toughness. Direct quenching after hot working Further, the heat treatment is particularly effective in the heat treatment in which heating and cooling are performed in a temperature range of Ac1 point to Ac3 point and no subsequent tempering is performed. Moreover, it is good also as a structure | tissue where the tempered martensite and fresh martensite which were self-tempered by heating to Ac3 point or more and letting it cool are mixed.
[0043]
In the prior art, in-line heat treatment could not secure toughness, and two heat treatments, quenching and tempering after rolling, were necessary. Since good characteristics can be obtained, there is an advantage that in-line heat treatment is possible.
[0044]
【Example】
Stainless steels having the chemical compositions shown in Tables 1 and 2 were melted and then hot forged, and further hot rolled to finish a steel sheet having a thickness of 12 mm, a width of 180 mm, and a length of 700 mm. All finishing temperatures were set to 1000 ° C., and immediately after finishing, they were placed in a furnace at 950 ° C., soaked for 10 minutes, then water-cooled and directly quenched. Next, the fresh martensite ratio was changed by variously changing the temperature of the final heat treatment.
[0045]
[Table 1]
[Table 2]
From these quenched and tempered steel plates, weld joints were produced by the following method in order to evaluate the properties of the welds.
[0046]
That is, from each steel plate after the heat treatment, two steel plates for welding joints each having a width of 70 mm and a length of 400 mm are cut out, faced in the rolling direction and subjected to groove processing, and then 25Cr-based super duplex stainless steel. Welding was performed by gas / tungsten arc welding (GTAW) method.
[0047]
The following specimens were processed from a steel plate (hereinafter referred to as a base material) and a welded joint that had been subjected to quenching and tempering treatment, and the mechanical properties and corrosion resistance were investigated.
[0048]
Specimen Charpy impact test piece manufactured from base metal and welded joint: JIS No. 4 Charpy test piece test piece is manufactured so that the length direction is perpendicular to the rolling direction. The position was 1 mm from the bond.
Test piece tensile test piece made from base material: Diameter 4mm, distance between gauge points 20mm
Corrosion resistance test piece manufactured so that the tensile direction is the rolling direction: Thickness 2 mm, width 10 mm, length 75 mm
In the corrosion resistance test, the corrosion rate was measured by immersing in a 25% NaCl solution at 80 ° C. saturated with carbon dioxide gas having a partial pressure of 30 atm for 200 hours.
These test results are shown in Tables 3 and 4.
[0049]
[Table 3]
[Table 4]
In the evaluation of corrosion resistance in Tables 3 and 4, “○” was indicated when the corrosion rate was less than 0.1 mm / year, and “X” was indicated when the corrosion rate was 0.1 mm / year or more.
[0050]
Test No. 1 to 34 are examples of the present invention, and steel Nos. Having the chemical composition defined in the present invention. Using S1 to S34, the fresh martensite ratio is in the range of 7 to 80%. These steels have a high strength of 80 ksi grade tensile strength (yield strength: 550 MPa or more), but have a low yield ratio of 84% or less, and both the toughness and corrosion resistance of the base metal and the toughness of the weld are good. .
[0051]
Test No. 35 to 37 (steel No. S35 to S37: API13Cr equivalent steel) is a conventional example, and fresh martensite is precipitated. However, since the strength of fresh martensite is remarkably high, both strengths are too high and toughness decreases. In addition, the corrosion resistance is inferior and the yield ratio is high.
[0052]
On the other hand, test No. of the comparative example. Nos. 38 to 42 are examples in which the chemical composition of steel is within the range specified in the present invention, and the fresh martensite ratio is out of the specified range.
Test No. of the comparative example test Nos. 43 to 46 are examples in which the martensite ratio satisfies the provisions of the present invention, but the chemical composition deviates from the range defined in the present invention. In both cases, the toughness of the base material and the welded portion is greatly reduced. ing.
[0053]
In addition, although the present Example tested on the rolled steel plate, the same characteristic is acquired also in a seamless steel pipe or a welded steel pipe.
[0054]
【The invention's effect】
According to the present invention, martensite having low yield ratio that can secure toughness and corrosion resistance even when Ni is reduced without adding Cu, and safety as a welded structure is increased, and is excellent in weldability. Stainless steel seamless steel pipe can be provided. Moreover, the seamless steel pipe of the present invention is obtained by a single heat treatment after cooling after rolling, and has an advantage that the manufacturing cost can be suppressed.
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