JP3663703B2 - モノパルスレーダ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、モノパルスレーダ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車等の移動体の衝突を未然に防ぐために運転者の視覚を補助する手段として、電波を伝送媒体とした障害物検出レーダの実現が期待されている。またこの種のレーダ装置において、前を走行する車両等,障害物の水平方向の位置を判別することは、衝突の可能性予測にきわめて重要な技術である。このため、こうした自動車用のレーダ装置としては、モノパルスレーダ装置が有効であると考えられる。
【0003】
つまり、モノパルスレーダ装置は、外部に所定の電波を送信し、その送信電波が物標に当たって反射してくる反射波を、位置又はビーム方向をずらした一対の受信アンテナにて受信し、各受信アンテナからの受信信号の位相差又は振幅差から物標の位置(方向等)を測位するものであり、一般には、航空機追尾用レーダとして用いられているが、受信アンテナの位置やビーム方向を水平方向にずらして設置すれば、水平方向の物標を高精度に判別することができるため、自動車の走行環境のような多くの障害物が存在する状況において、極めて有効に機能すると考えられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来、モノパルスレーダ装置では、受信アンテナに、導波管ホーンやパラボラアンテナといった、大型でしかも量産化が難しいアンテナ装置が使用されていた。これは、従来のモノパルスレーダ装置は、航空機追尾用に開発されものであり、小型化・量産化の要求がなかったためであるが、上記のように、モノパルスレーダ装置を障害物検出レーダとして自動車等の移動体に搭載するには、受信アンテナを小型化・量産化する必要があり、従来のモノパルスレーダ装置をそのまま障害物検出レーダに適用することはできなかった。
【0005】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたもので、受信アンテナの小型化・量産化を容易に図ることができ、障害物検出レーダとして自動車等の移動体に搭載するのに好適なモノパルスレーダ装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、請求項1に記載のモノパルスレーダ装置では、マトリクス状に配置されたアンテナ素子と、このアンテナ素子の各列毎に設けられた直列給電線路と、該直列給電線路を介してアンテナ素子の各列毎に並列給電を行う並列給電線路とからなるアレーアンテナを2系統備え、各アレーアンテナにおいて直列給電線路にて形成されるアンテナ素子列の内の全列又は一部の列が略等間隔で交互に噛み合うように、各アレーアンテナを同一平面上に配置してなる平面アレーアンテナを、受信アンテナとして使用する。
【0007】
つまり、本発明のモノパルスレーダ装置では、送信用アンテナから送信した送信電波が外部の物標に当たって反射してきた反射電波を、上記のように構成された平面アレーアンテナにて受信し、この平面アレーアンテナの各並列給電線路の給電端子から得られる受信信号に基づき、物標の方向を検出する。
従って、本発明のモノパルスレーダ装置によれば、従来のモノパルスレーダ装置のように、2つの受信アンテナを使用することなく物標の方向を検出することができ、自動車等の移動体に搭載して障害物検出レーダとして使用するのに最適なレーダ装置となり得る。
【0008】
即ち、位相モノパルスレーダ装置は、図5に示す如く、同一の指向特性のアンテナ(図では反射鏡を備えたパラボラアンテナを示す)A1,A2を横方向に少しずらした状態で配置し、同一の反射物標Pxからの反射電波を各アンテナA1,A2にて受信して、その受信信号の位相差から反射物標の方向(角度)θを計測するものであり、具体的には、反射物標Pxから各アンテナA1,A2の受信点P1,P2までの電波の経路長LA1,LA2の差によって生じる受信信号の位相差をφ、アンテナA1,A2の間隔をD、電波の波長をλ、反射物標の方向角度をθとしたとき、下記の関係式(1) から反射物標の方向θを求めるものである。
【0009】
φ=(2π/λ)D・sinθ …(1)
このため、位相モノパルスレーダ装置を構成する際には、基本的には、同一の指向特性のアンテナA1,A2を用いて、反射物標Pxからの反射電波を同時に受信する必要がある。
【0010】
しかし、上記平面アレーアンテナは、各系統のアンテナ素子列の間隔dにて決定される所定距離(「d/2」又は「n・d+d/2」)だけ位置ずれした2系統のアレーアンテナを構成していることから、1つの平面アレーアンテナにて、位相モノパルスレーダ装置の受信アンテナを実現できることになり、位相モノパルスレーダ装置における受信アンテナの小型化を容易に図ることができる。また、平面アレーアンテナは、従来よりモノパルスレーダ装置の受信アンテナとして利用されているパラボラアンテナや導波管ホーンのように、反射鏡や導波管を設ける必要がないため、量産化を容易に図ることができ、しかも軽量になるので、自動車等の移動体にも容易に搭載することができる。
【0011】
また、図5に示した従来装置のように、位相モノパルスレーダ装置を、一対の受信アンテナを用いて構成した場合には、受信アンテナが2つ必要なため、装置が大型化し、また、そのアンテナ間隔Dが、各アンテナA1,A2のアンテナ口径にて制限されてしまい、アンテナ間隔Dが広くなって、受信信号の位相差から方位を一義的に定めることができなくなるとか、逆に、アンテナ間隔を狭くするために各アンテナA1,A2にアンテナ口径の小さいアンテナを使用すると、物標の最大探知距離が小さくなってしまう、といった問題があるが、本発明の平面アレーアンテナによれば、一つの平面アレーアンテナにて位相モノパルスレーダ装置用の一対の受信アンテナを実現でき、これら各一対の受信アンテナの間隔は、平面アレーアンテナのアンテナ口径に制限されることなく任意に設定できることから、アンテナ利得,延いては物標の最大探知距離を低下させずに、物標方向を一義的に検出することが可能になる。
【0012】
なお、位相モノパルスレーダ装置において、アンテナ間隔Dが広くなると物標方向θの方位を一義的に検出できなくなるのは、受信可能な方向θの範囲で、位相差φと方向θとが1対1に対応しなくなるためである。つまり、アンテナ間隔Dが大きい程、方向θの僅かな変化で位相差φの値が大きく変化するようになり、位相差φの値の範囲が±πを超え、折り返すため、1つの位相差の値φに対し、複数の方位の値θが対応してしまうためである(図6参照)。
【0013】
ところで、2系統のアレーアンテナにおいて各アンテナ素子列に対して並列給電を行なう並列給電線路として、一般的な並列給電線路のように、給電端子からアンテナ素子の各列までの線路長を全て同じにした場合には、上記2系統のアレーアンテナの放射ビームの方向が一致するようになる。そして、このように各アレーアンテナの放射ビームの方向を一致させた場合には、受信信号の位相差から物標の方位を検出する位相モノパルスレーダ装置として使用することができる。
【0014】
しかし、受信信号の振幅差から物標の方位を検出する振幅モノパルスレーダ装置では、2つの受信アンテナの放射ビームの方向をずらす必要があることから、上記のように並列給電線路の各列までの線路長を全て同じにすると、振幅モノパルスレーダ装置の受信アンテナとして使用することができない。
【0015】
そこで、本発明のモノパルスレーダ装置を振幅モノパルスレーダ装置として構成する場合には、請求項2に記載の如く、上記2系統のアレーアンテナを夫々構成する一対の並列給電線路のうち、少なくとも一方の並列給電線路の給電端子から各アンテナ素子列までの線路長を不均等にして、2系統のアレーアンテナの放射ビーム中心方向が互いに所定角度ずれるように構成すればよい。
【0016】
つまり、アレーアンテナでは、各アンテナ素子に対する給電線路の長さを調整して、各アンテナ素子毎に送受信信号の位相をずらせば、放射ビームの方向を変化させることができることから、本発明の平面アレーアンテナを振幅モノパルスレーダ装置の受信アンテナとして使用する場合には、上記2系統のアレーアンテナの放射ビームの中心方向がずれるように、並列給電線路の給電端子から各アンテナ素子列までの線路長を調整すればよいのである。なお、この場合、一対の並列給電線路の内の一方の線路長のみを調整しても良く、両方の線路長を調整してもよい。
【0017】
また、アンテナ素子としては、従来より平面アンテナとして使用されている平面パッチやスリットアンテナ等の各種アンテナ素子を利用することができるが、このうち請求項3に記載のように、アンテナ素子を平面パッチにて形成すれば、平面アレーアンテナをより簡単に量産化することができる。つまり、平面パッチは、誘電体基板にマイクロストリップ線路を形成することにより簡単に作製できるため、アンテナ素子を平面パッチにて形成すれば、平面アレーアンテナの量産化をより簡単に実現できるのである。
【0018】
一方、本発明のように、2系統のアレーアンテナを構成するアンテナ素子列の内の全列又は一部の列が交互に噛み合うように2系統のアレーアンテナを同一平面上に配置するようにした場合、各系統のアレーアンテナのアンテナ素子列が噛み合った部分では、各アンテナ素子列の間隔が通常の半分になってしまい、アンテナ素子を一般に使用される円形の平面パッチで形成すると、各系統のアンテナ素子同士が重なり、正常な受信特性が得られなくなることが考えられる。そこで、このような場合には、請求項4に記載のように、各アンテナ素子を列方向に長い半波長共振器にて形成することが好ましい。
【0021】
ところで上記平面アレーアンテナは、一つのアンテナ装置にて2系統のアレーアンテナを構成しているので、モノパルスレーダ装置の受信アンテナとして使用するのに最適であるが、モノパルスレーダ装置の受信アンテナとしてのみ使用する場合には、別途送信用アンテナを設ける必要がある。しかし、上記平面アレーアンテナにおける2系統のアレーアンテナは、各々独立したアンテナ装置であるので、個々に送信用アンテナとして使用することもできる。
【0022】
そこで、この平面アレーアンテナをモノパルスレーダ装置に使用する場合、請求項5に記載のように、一方の並列給電線路の給電端子にサーキュレータを接続し、このサーキュレータを介して送信信号の入力及び受信信号の取り出しを行うようにすれば、この並列給電線路から給電を受けるアレーアンテナを、送受信兼用のアンテナ装置として動作させることができる。そして、この場合、送信用アンテナを別途設ける必要がないので、モノパルスレーダ装置の構成をより簡素化して、モノパルスレーダ装置をより安価に実現することが可能になる。
【0023】
また次に、モノパルスレーダ装置は、一対の受信信号の位相差又は振幅差から、物標の方位を検出するものであるが、上記のように移動体等に搭載して障害物検出レーダとして利用するには、物標と移動体との間の距離や、物標と移動体との相対速度を検出できることが好ましい。そこで、本発明のモノパルスレーダ装置を、障害物検出レーダとして使用する場合には、請求項6に記載のように、信号発生手段から、送信信号として所定の連続波を発生させ、物標の検出を行う物標検出手段側では、平面アレーアンテナにて受信した一対の受信信号をホモダイン検波して、その検波信号から、物標の方向だけでなく、距離及び速度をも検出するようにすればよい。
【0024】
つまり、従来より、連続波(CW)を用いて物標の距離及び相対速度を検出するCWレーダとして、三角波にて周波数変調した信号(FM−CW)を送信し、受信信号をこの送信信号にて周波数変換(ホモダイン検波)して、その周波数変換した信号(検波信号)から物標との間の距離及び相対速度を求めるFM−CWレーダや、周波数の異なる2信号を送信し、その受信信号を各信号毎にホモダイン検波することにより、ドップラ効果により生じた信号の周波数変化(ドップラ周波数成分)を検出し、その検出結果から物標との間の距離及び相対速度を求める2周波CWレーダ等が知られているが、上記モノパルスレーダ装置において、こうしたCWレーダ方式を利用して距離及び相対速度を検出するようにすれば、障害物検出をより良好に行うことができるようになり、このモノパルスレーダ装置を、自動車等の移動体に搭載すれば、移動体の走行安全性をより向上することが可能になる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下に本発明が適用された実施例の障害物検出レーダについて説明する。
まず図2は、本実施例の障害物検出レーダの構成を表わすブロック図である。
本実施例の障害物検出レーダは、自動車等の移動体に搭載され、その前方又は後方に存在する障害物(物標)を検出して、移動体がその障害物に衝突する虞があるときに警報を発して、その旨を運転者等に報知するためのものであり、受信アンテナ10として、2系統のアレーアンテナを有する平面アレーアンテナを備えている。
【0026】
また、本実施例の障害物検出レーダは、送信アンテナ6から送信した送信電波が外部の障害物に当たって反射してきた反射電波を、受信アンテナ10(2系統のアレーアンテナ)にて受信し、その受信信号の位相差から障害物の方向を検出する位相モノパルスレーダ装置として構成されているが、単にこうした位相モノパルスレーダとしての機能だけでなく、受信信号から障害物までの距離及び障害物との相対速度を検出する、FM−CWレーダとしての機能も有する。
【0027】
即ち、図2に示す如く、本実施例の障害物検出レーダは、受信信号から障害物の方位,距離及び相対速度を求める電子制御装置(以下、ECUという)20と、このECU20から出力される制御電圧(三角波)を受け、その制御電圧に応じて発振周波数が漸次増・減する電圧制御発振器2と、この電圧制御発振器2からの出力信号を送信信号として送信アンテナ6の給電端子に入力して、送信アンテナ6から周波数が三角波状に漸次増・減する送信電波を放射させると共に、その送信信号を所定の比率で電力分配器12側に分配する方向性結合器4と、受信アンテナ10を構成する各アレーアンテナの給電端子A,Bからの出力(つまり受信信号)を夫々RF端子に受け、電力分配器12にて電力分配された送信信号をLO端子に受けて、各信号を混合することで、受信信号を、両者の差の周波数を有する中間周波信号(以下、IF信号という)に周波数変換(ホモダイン検波)する一対のミキサ回路14a,14bと、各ミキサ回路14a,14bから出力されるIF信号を夫々増幅する一対のIF回路16a,16bと、ECU20からの警報出力情報を受けて運転者等に危険を報知する警報装置18と、を備えている。
【0028】
そして、ECU20は、CPU,ROM,RAM等からなるマイクロコンピュータを中心に構成され、予め設定されたプログラムに従い、後述の手順で、FM−CWレーダ及び位相モノパルスレーダとしての機能を実現する。
なお、電力分配器12は、方向性結合器4から入力された送信信号を各ミキサ回路14a,14bに同位相で電力分配を行うものである。
【0029】
次に、本発明にかかわる主要部である受信アンテナ10の構成について説明する。なお、図1において、(a)は、受信アンテナ10を電波を放射する表面側より見た状態を表わし、(b)は、図に点線で示す一つのアンテナ素子部29を以下に説明する列方向に切断したときの断面状態を表わす。
【0030】
図1に示す如く、受信アンテナ10は、電波を放射する表面側に配置される第1の誘電体基板22とその裏面側に配置される第2の誘電体基板27とを備え、第1の誘電体基板22の表面側には、アンテナ素子24がマトリクス状に配置されている。
【0031】
アンテナ素子24は、受信アンテナ10を表面側から見たときの垂直方向の並びを列、水平方向の並びを行とすると、m行,2・m列(本実施例では8行16列)のマトリクス状に配置されており、各アンテナ素子24は、夫々、列方向に細長いマイクロストリップ線路(換言すれば平面パッチ)からなる半波長共振器にて構成されている。また、各アンテナ素子24の配置間隔は、各列の間隔が通常のアレー間隔の半分の長さとなり、各行の間隔が通常のアレー間隔の長さとなるようにされている。
【0032】
また、各アンテナ素子24が配置された第1の誘電体基板22の裏面側には、アンテナ素子24を列毎に直列に接続する直列給電線路26と、この直列給電線路26にて接続された各列のアンテナ素子24の内、向かって左側から1列毎にグループ分けした奇数列のアンテナ素子と偶数列のアンテナ素子とに、夫々、同位相で並列給電を行う一対の並列給電線路26a,26bとが設けられ、第2の誘電体基板27は、給電線路を挟んで、第1の誘電体基板22の裏面側に積層されている。そして、第2の誘電体基板27の給電線路とは反対側面(つまり受信アンテナ10の裏面側)には、その面全体に、接地導体28が設けられている。
【0033】
このように構成された本実施例の受信アンテナ10では、奇数列の各アンテナ素子24には、給電端子Aから並列給電線路26aを介して同位相で給電され、偶数列の各アンテナ素子24には、給電端子Bから並列給電線路26bを介して同位相で給電される。そして、各列内では、直列給電線路26を介して、電磁結合方式で直列給電される。
【0034】
従って、本実施例の受信アンテナ10は、各並列給電線路26a,26bから給電を受ける奇数列のアンテナ素子により形成されるアレーアンテナと、偶数列のアンテナ素子24により形成されるアレーアンテナとの、2系統のアレーアンテナを備えることになり、各並列給電線路26a,26bの給電端子A,Bからこれら各アレーアンテナが受信した受信信号を取り込むことができる。
【0035】
次に、本実施例の障害物検出レーダが位相モノパルスレーダ及びFM−CWレーダとして機能するために、ECU20において実行される制御動作について説明する。
まず、ECU20は、所定の電圧発生回路を用いて、三角波状に変化する制御電圧を電圧制御発振器2に出力することにより、電圧制御発振器2から、周波数が三角波状に漸次増・減するFM変調信号を出力させる。すると、このFM変調信号(送信信号)に対応した送信電波が、送信アンテナ6から送信され、外部に障害物があるときには、送信電波が障害物に当たって反射され、その反射電波が受信アンテナ10に入射する。受信アンテナ10では、この反射電波が、奇数列のアンテナ素子24と偶数列のアンテナ素子24とで構成される一対のアレーアンテナにより各々受信され、その受信信号が、上記各並列給電線路26a,26bの各給電端子A,Bから出力される。そして、これら各受信信号は、ミキサ回路14a,14bにて、現在送信中の送信信号と混合(ホモダイン検波)されてIF信号に変換され、更にIF回路16a,16bにて増幅された後、ECU20に入力される。
【0036】
するとECU20は、IF回路16a,16bから入力された受信信号(IF信号)の内のどちらか一方を高速フェーリエ変換手法等によって周波数分析し、送信電波を反射した障害物までの距離と障害物との相対速度を計測する、周知のFM−CWレーダとしての計測動作を実行すると共に、各IF信号から受信アンテナ10にて受信された一対の受信信号の位相を比較することにより、外部の障害物の方向(角度)を計測する周知の位相モノパルスレーダとしての計測動作を実行する。
【0037】
そして、ECU20は、この計測結果、つまり障害物までの距離と障害物との相対速度と障害物の方向とから、移動体が障害物に衝突する虞があるかどうかを判断し、衝突の虞がある場合に、警報装置18を動作させて、その旨を運転者等に報知する。
【0038】
なお、警報装置18は、ECU20からの警報出力情報を受けて、運転者等に危険を報知するものであるが、この警報装置18には、所定の警告音を発生するブザー等を使用してもよいが、例えば、上記検出結果に応じて障害物の方向等を表わす音声メッセージを発する音声合成装置等を利用すれば、より安全性を高めることができる。
【0039】
以上説明したように、本実施例の移動体用の障害物検出レーダでは、位相モノパルスレーダとしての機能を実現するために、受信アンテナ10として、従来のようにパラボラアンテナや導波管ホーン等からなる一対の受信アンテナを用いるのではなく、2系統のアレーアンテナの機能を有する平面アレーアンテナを備えている。従って、移動体には受信アンテナ10を一つ搭載するだけでよく、装置を小型化して、移動体への搭載性を向上できる。また、受信アンテナ10は、平面アレーアンテナであるため、反射鏡や導波管を必要とせず、量産化・軽量化を容易に図ることができる。従って、レーダ装置を安価に実現できると共に、移動体の任意の位置に取り付けることができるようになり、汎用性の高いレーダ装置を実現できる。
【0040】
また更に、本実施例の受信アンテナ10によれば、一つの平面アレーアンテナにて位相モノパルスレーダ装置用の一対のアレーアンテナを構成でき、その一対のアレーアンテナの間隔は、アンテナ素子24一列分の間隔(1系統のアレーアンテナの間隔の半分)であり、アンテナ口径よりも極めて小さくすることができるので、アンテナ利得,延いては物標の最大探知距離を低下させることなく、物標方向を一義的に検出することが可能になる。
【0041】
また、本実施例の障害物検出レーダは、単なる位相モノパルスレーダ装置としての機能だけでなく、FM−CWレーダとしての機能も有するため、障害物の方位だけでなく、障害物との距離及び相対速度をも検出できる。この結果、障害物への衝突の可能性をより高精度に判定することができ、自動車等の走行安全性をより高めることができる。
【0042】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様をとることができる。
例えば、上記実施例では、アンテナ素子24を8行16列のマトリクス状に配置した受信アンテナ10について説明したが、この行数及び列数については、使用すべきアンテナの特性(送受信電波の周波数,放射ビームの幅,アンテナゲイン等)に応じて適宜設定すればよい。
【0043】
また、本実施例では、受信アンテナ10における並列給電線路26a,26bを、対応する列のアンテナ素子24に対して全て同位相で給電可能なものとして説明したが、これは、各アレーアンテナからの放射ビームの中心方向を、誘電体基板22に直交する方向に一致させて、高精度な位相モノパルスレーダを実現するためであり、受信信号の振幅差から障害物の方向を検出する振幅モノパルスレーダを実現する場合には、例えば、並列給電線路26a,26bのうち、奇数列のアンテナ素子24に給電を行う並列給電線路26aについては、給電端子Aから向かって左側の列に至る給電線路程、線路長が長くなるように、給電端子Aから各列に至る給電線路の線路長を設定し、逆に、偶数列のアンテナ素子24に給電を行う並列給電線路26bについては、給電端子Bから向かって右側の列に至る給電線路程、線路長が長くなるように、給電端子Bから各列に至る給電線路の線路長を設定すればよい。
【0044】
つまり、振幅モノパルスレーダでは、使用するアンテナ装置の放射ビームの中心方向を互いにずらす必要があるが、このようにすれば、奇数列及び偶数列のアンテナ素子にて夫々形成される2系統のアレーアンテナからの放射ビームの中心方向を水平方向に所定角度だけずらすことができ、振幅モノパルスレーダを良好に実現することができるようになる。また、この構成のアンテナ装置を用いて位相モノパルスレーダ装置を実現することもでき、更に、受信信号の振幅差及び位相差の両方から物標の方向を検出するモノパルスレーダ装置を実現することもできる。
【0045】
また、本実施例では、送信電波は、送信専用の送信アンテナ6を用いて送信するように構成したが、図3に示す如く、方向性結合器4から出力される送信電波発生用の送信信号を、サーキュレータ32を介して、上記実施例の受信アンテナ10と同様に構成された送受信アンテナ30の一方の給電端子A(Bでもよい)に入力し、この給電端子Aから出力される受信信号をサーキュレータ32を介してミキサ回路14aのRF端子に入力するようにしてもよい。
【0046】
そして、このようにすれば、図1に示した奇数列のアンテナ素子24にて形成されるアレーアンテナを利用して、送信電波を送信できるようになり、送信アンテナ6を別途設けることなく、上記実施例と同様の機能を有する障害物検出レーダを構成でき、このレーダ装置の構成をより簡素化して、安価に実現できるようになる。
【0047】
なお、図3に示す障害物検出レーダは、図2に示した上記実施例の障害物検出レーダから送信アンテナ6を取り除き、代りにサーキュレータ32を設けることにより、図1に示した平面アレーアンテナを、送受信アンテナ30として動作させるものであり、それ以外の構成については、上記実施例と全く同様であるため、他の部分については、同一符号を付し、説明を省略する。
【0048】
また更に、上記実施例では、受信アンテナ10として、アンテナ素子24をm行,2・m列のマトリクス状に配置し、全アンテナ素子を、奇数列のアンテナ素子と偶数列のアンテナ素子とにグループ分けして、各グループ毎に、各列のアンテナ素子に対して直列給電を行なう複数の直列給電線路と各列毎に並列給電を行なう並列給電線路とを設けることにより、2つの給電端子A,Bから各々給電可能な2系統のアレーアンテナ10A,10Bの全アンテナ素子列が交互に噛み合い、各アレーアンテナ10A,10Bの間隔Dが各系統のアレーアンテナ10A,10Bにおけるアンテナ素子列の間隔の半分となるように構成された平面アレーアンテナ(図4に示す模式図a1,a2参照)を用いた障害物検出レーダについて説明したが、本発明の平面アレーアンテナは、必ずしも2系統のアレーアンテナ10A,10Bのアンテナ素子列の全列が交互に噛み合うようにする必要はない。
【0049】
つまり、本発明の平面アレーアンテナは、図4(b1),(b2)に示す受信アンテナ10′のように、2つの給電端子A,Bから各々給電可能な2系統のアレーアンテナ10A′,10B′のアンテナ素子列の内の一部(図では全8列の内の6列)が交互に噛み合い、左・右の両端側のアンテナ素子列の間(図では左・右の1列目と2列目及び2列目と3列目の間)には、他方のアレーアンテナのアンテナ素子列が配置されないようにしてもよい。
【0050】
そして、この場合、平面アレーアンテナ全体の開口面は大きくなるものの、全アンテナ素子列が交互に噛み合うように構成した場合に比べて、各アレーアンテナ10A,10Bの間隔Dを大きくすることができる。
従って、本発明によれば、2系統のアレーアンテナが交互に噛み合うアンテナ素子列の列数を任意に設定することにより、2系統のアレーアンテナの間隔を任意に設定することができ、位相モノパルスレーダ装置用のアンテナ装置として使用する場合に、要求される物標検出特性に応じてアンテナ間隔を最適に設定することができる、という効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例の受信アンテナ(平面アレーアンテナ)の構成を説明する説明図である。
【図2】 実施例の障害物検出レーダの構成を表わすブロック図である。
【図3】 図1に示した平面アレーアンテナを送受信アンテナとして使用する障害物検出レーダの構成を表わすブロック図である。
【図4】 図1に示した平面アレーアンテナとその変形例とを夫々模式的に表す説明図である。
【図5】 位相モノパルスレーダ装置における物標の検出原理を説明する設営図である。
【図6】 位相モノパルスレーダ装置においてアンテナ間隔の大小により生じる受信特性の変化を説明する説明図である。
【符号の説明】
2…電圧制御発振器 4…方向性結合器 6…送信アンテナ
10…受信アンテナ 12…電力分配器 14a,14b…ミキサ回路
16a,16b…IF回路 18…警報装置 20…ECU
22…第1の誘電体基板 24…アンテナ素子 26…直列給電線路
26a,26b…並列給電線路 27…第2の誘電体基板
28…接地導体 A,B…給電端子
30…送受信アンテナ 32…サーキュレータ
Claims (6)
- マトリクス状に配置されたアンテナ素子と、該アンテナ素子の各列毎に設けられた直列給電線路と、該直列給電線路を介して前記アンテナ素子の各列毎に並列給電を行う並列給電線路と、からなるアレーアンテナを2系統備え、該2系統のアレーアンテナにおいて前記直列給電線路にて形成されるアンテナ素子列の内、全列又は一部の列が略等間隔で交互に噛み合うように、各アレーアンテナを同一平面上に配置してなる平面アレーアンテナ、を受信アンテナとして備えると共に、
送信信号を発生して、送信用アンテナから送信させる信号発生手段と、
前記送信用アンテナから送信した送信電波が外部の物標に当たって反射してきた反射電波を前記平面アレーアンテナにて受信し、該平面アレーアンテナの前記各並列給電線路の給電端子から得られる受信信号に基づき、物標の方向を検出する物標検出手段と、
を備えたことを特徴とするモノパルスレーダ装置。 - 前記平面アレーアンテナにおいて前記2系統のアレーアンテナを夫々構成する一対の並列給電線路のうち、少なくとも一方の並列給電線路の給電端子から各アンテナ素子列までの線路長を不均等にして、該2系統のアレーアンテナの放射ビーム中心方向が互いに所定角度ずれるように構成してなることを特徴とする請求項1に記載のモノパルスレーダ装置。
- 前記平面アレーアンテナにおいて、前記各アンテナ素子を平面パッチにて形成してなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のモノパルスレーダ装置。
- 前記平面アレーアンテナにおいて、前記各アンテナ素子を列方向に長い半波長共振器にて形成してなることを特徴とする請求項3に記載のモノパルスレーダ装置。
- 前記平面アレーアンテナの一方の並列給電線路の給電端子に接続され、前記信号発生手段からの送信信号を該給電端子に入力すると共に、該給電端子から受信信号を取り出すサーキュレータ、を設け、該サーキュレータが接続された側のアレーアンテナを送受信兼用としたことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載のモノパルスレーダ装置。
- 前記信号発生手段は、送信信号として所定の連続波を発生し、前記物標検出手段は、前記受信信号をホモダイン検波して、該検波信号から、前記物標の方向,距離及び速度を検出することを特徴とする請求項1〜請求項5の何れかに記載のモノパルスレーダ装置。
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