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JP3651554B2 - 車両用駐車ブレーキの安全装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は車両用駐車ブレーキの安全装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、パーキングブレーキの操作不足等により駐車中の車両が路面の傾斜で自然に動き出したときを想定して、車両を自動的に停止させる駐車ブレーキ安全装置が実用化されている。この種の安全装置は、例えば、パーキングブレーキの作動を検出するパーキングスイッチのオン、車速センサによる車速の検出、キースイッチによるエンジン停止の検出等の予め設定された条件が満たされたときに、上記した自動停止を実行するようになっている。
【0003】
車両の動き出しの有無は車速センサの検出に基づいて判定されるが、その車速検出の原理上、誤判定を生ずる場合があった。即ち、車速センサは、プロペラシャフトと共に回転するマグネット回転板の磁束密度の変化をホール素子により検出し、そのホール素子の出力を波形成形して車速に比例した周期のパルス信号を得ている。そして、車速センサからのパルス数が所定のカウント値に達した(対応する距離だけ車両が移動した)ときに、自動停止を実行している。しかしながら、例えば、荷積作業等で車両が揺れたときにも、プロペラシャフトと共にマグネット回転板が微妙に回動変位するため、車両が動き出していないにも拘わらずカウント値が累積されて、自動停止が実行されてしまうという場合があった。
【0004】
その対策として、本出願人は特願平10−021482号に記載の駐車ブレーキ安全装置を提案している。この装置では、上記した装置と同じく車速センサのパルス数が所定数(例えば17、距離に換算して60cm)に達した時点で自動停止を実行するように構成した上で、図3に示すように、車両の揺れの減衰に伴いパルス信号のエッジ間隔(時間間隔)ΔTnが所定値(例えば3sec)を越えると(t1の時点)、荷積作業等による車両の揺れであると見なしてカウント値をリセットして、不適切な自動停止を防止している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記したパルス信号の時間間隔に着目した判定では、図4に示すように、3secを越えるエッジ間隔ΔTnが連続する限り(つまり車両の移動速度が緩慢である限り)、譬え車両が移動していてもカウントが0のまま累積されず、自動停止が実行されないという弊害がある。先の出願の車両用駐車ブレーキの安全装置では、その対策として、3secを越えるエッジ間隔ΔTnであっても所定数カウントされた時点で自動停止を実行するように別の自動停止条件が設定されている。しかしながら、あくまでも非常時の対策であるため上記した通常の設定に比較して十分に大きなカウント値(例えば100、距離に換算して300cm)が設定されており、車両がかなりの距離を移動しないと自動停止されないという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、荷積作業等の車両の揺れによる不適切な自動停止の実行を防止した上で、路面の傾斜等による車両の緩慢な移動であっても短距離で確実に検出して自動停止させることができる車両用駐車ブレーキの安全装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明では、車速センサのパルス信号の時間間隔が前回に対し長くなった場合に信号判定手段によりリセット判定を下すと共に、その判定に基づいてリセット手段にて検出パルス数の累積値をリセットするように構成した。つまり、発生したパルス信号が荷積作業等で生じた車両の揺れによるものであるときには、揺れの減衰に伴ってパルス信号の時間間隔が次第に長くなることから、検出パルス数の累積値がリセットされ、パルス信号の時間間隔の変化がそれ以外のときには、車両の動き出しと見なしてパルス数はリセットされることなく累積され続け、累積値が所定値に達した場合に制動力補助手段が作動する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した車両用駐車ブレーキの安全装置の一実施例を説明する。
【0009】
図1の模式的なブロック図に示すように、本実施例の駐車ブレーキ安全装置の制御系は、入力部19、制御演算部20、及び制動力補助手段33から構成されている。制御演算部20は、駐車ブレーキ作動状態検出手段21とカウンタ手段22と信号判定手段30とリセット手段26と制御条件設定部27とよりなる。尚、カウンタ手段22及び制御条件設定部27は制御手段を構成している。
【0010】
上記入力部19より、所要の入力信号である例えばパーキングスイッチ10の接点信号、車速センサ11の検出信号、ニュートラルスイッチ12の変速位置が中立位置にあることを検出する接点信号、ストップランプスイッチ13によるフットブレーキの踏込み状態を示す接点信号、キースイッチ17のオンオフ等の信号、及びその他の制御系に必要なコンピュータ起動チェック済信号(イニシャルチェック中でない)14,バッテリ電源電圧の所定電圧保持の状況を示す信号15、ロックブレーキ非作動中の信号16、クラッチ接点セット済信号18等を制御演算部20に入力させ、まず、駐車ブレーキ作動状態検出手段21によりパーキングスイッチ10を介して当該車両が駐車ブレーキにより停止状態にあることを確認する。
【0011】
次いで、カウンタ手段22により上記駐車ブレーキが作動中にも拘わらず移動していることを車速センサ11の検出信号により確認すると共に車速や移動量を演算し、それぞれの設定要素の集約により制動力補助手段33を適宜作動させ、車両のホイールに制動力を付加して車を停止させている。
【0012】
制動力補助手段33の作動は、複数の設定要素を組み合わせて二組の作動機構を構成したもので、その設定要素は、
上記駐車ブレーキ作動状態検出手段21により、前記入力部19のパーキングスイッチ10の接点信号を介して、「駐車ブレーキ作動中にのみ制動力補助手段33の作動は可能である」という設定要素28を設定する。
【0013】
次に、カウンタ手段22は、1号カウンタ23,2号カウンタ24,タイマ25を内蔵し、入力部19の車速センサ11の検出信号を1号カウンタ23に入力させ、タイマ25を介して車速Vを算出して、「V<0.2km/hのときにのみ制動力補助手段33の作動は可能である」という設定要素29を設定する。
【0014】
次に、カウンタ手段22の1号カウンタ23を使用し、該カウンタ23で上記信号判定手段30を満足しない検出信号(例えば今回のパルス信号のエッジの間隔ΔTn+1が、前回のエッジの間隔ΔTnに1以上の定数Cを乗じた値より小さいときの信号)を累積し、車の移動距離に相当する累積信号S1を得て、「S1が所定値α(例えば17)に達したときにのみ制動力補助手段33の作動は可能である」とする設定要素31を設定する。
【0015】
次に、カウンタ手段22の2号カウンタ24を使用し、該カウンタ24で前記信号判定手段30を満足するか否かを問わず車速センサ11による検出信号を累積し、車の移動に相当する累積信号値S2を得て[S2が別の所定値β(例えば100)に達したときにのみ制動力補助手段33の作動は可能である」という設定要素32を設定する。
【0016】
上記設定要素を組み合わせ、図1に示すように、
設定要素28,29,32の何れもを満足したとき、及び設定要素28,29,31の何れもを満足したときに、それぞれ制動力補助手段33を作動させ、当該車両の移動を停止させる二重作動機構を構成する。
【0017】
図1に示す本発明の車両用駐車ブレーキの安全装置は上記のように構成してあるので、図2に示すフローチャートに示すとおり、下記のように作動する。
【0018】
まず、ステップS50で上記10〜18で示す各信号に基づいて、車両が駐車中で駐車ブレーキ安全装置を作動させる各条件が成立しているか否かを判定する。ステップS50の判定がNO(否定)のときには、ステップS59で2号カウンタ24をリセットし、ステップS60で1号カウンタ23をリセットする。又、ステップS50の判定がYES(肯定)のときには、ステップS51で車速センサ11の検出信号を制御演算部20のカウンタ手段22に入力し、ステップS52で検出信号のパルスエッジが検出されたか否かを判定する。エッジが検出されてYESと判定したときには、ステップS53で1号カウンタ23及び2号カウンタ24に1を加算し、ステップS54で最初のパルスであるか否かを判定する。2回目以降のパルスでNOと判定したときには、ステップS55に移行して次式の条件を満たしているか否かを判定する。
【0019】
ΔTn+1>C×ΔTn
ここで、ΔTn+1は今回のパルス信号のエッジ間隔、ΔTnは前回のエッジ間隔、Cは1以上の定数である。つまり、上式は、前回のエッジ間隔ΔTnに対して今回のエッジ間隔ΔTn+1が増加していることを意味し、その増加率はCに応じて定められる。実際のエッジ間隔の増加率が定数C以下(エッジ間隔が不変、及び減少の場合も含む)で上式の条件を満たさない場合には、ステップS55でNOと判定し、ステップS56で1号カウンタ23のカウント値が17に達したか否かを、ステップS57で2号カウンタ24のカウント値が100に達したか否かをそれぞれ判定する。いずれかのステップSでYESと判定したときには、ステップS58で制動力補助手段33を作動させる。
【0020】
又、前記ステップS55の判定がYESのとき、つまり、エッジ間隔の増加率が定数Cを越えて上式を満たす場合には、ステップS60に移行して1号カウンタ23をリセットする。従って、1号カウンタ23は再び0から累積されることになる。
【0021】
以上のカウンタの処理状況を図3及び図4のタイムチャートに基づいて説明すると、荷積作業等による車両の揺れでパルス信号が発生したとき、図3に示すように、揺れの減衰に伴いパルスエッジの間隔は次第に増加する。このときのエッジ間隔の増加率は上式の定数Cを越えているため、各パルスエッジ毎に上式の条件が満たされ続けて、1号カウンタ23は累積されることなく0のまま保持される。換言すれば、この車両の揺れに起因するエッジ間隔の増加率によって上式が満たされるように、定数Cの値が決定されているのである。従って、このように荷積作業等によって車両が揺れた場合であっても、不適切に自動停止が実行される事態を未然に防止することができる。
【0022】
一方、この駐車ブレーキ安全装置が本来想定している車両の動き出しは、パーキングブレーキの操作不足等があったときに路面の傾斜で生じるものである。従って、その移動速度は一般に停止状態の0から次第に増加する傾向を示し、甚だしい減速は考えられないし、仮にそのような減速であれば自動停止する必要もない。このときのエッジ間隔は移動速度の高低に拘わらず、減少、不変、又は軽度の増加のいずれかの状況を示し、定数Cを越える増加率を示す(上式を満たす)可能性は皆無である。その結果、図4に示すように、譬え車両の移動が緩慢であっても、1号カウンタ23は累積され続けて所定数(例えば2号カウンタ24より遥かに小さい17、距離に換算して60cm)に達したT2の時点で速やかに自動停止が実行され、ごく短距離で確実に車両を停止させることができる。
【0023】
以上で実施例の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施例に限定されるものではない。例えば、上記実施例では、上式を前提として累積される1号カウンタ23とは別に、無条件で累積される2号カウンタ24を設けた。この2号カウンタ24は、実際に車両が動き出しているにも拘わらず、エッジ間隔の増加率が上式を満たしていないとして1号カウンタ23が累積されない場合を想定したものであるが、上記のように定数Cの値を適切に設定しておけば、車両の動き出しに伴って確実に1号カウンタ23を累積させることができるため、この2号カウンタ24に関する処理を省略してもよい。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の車両用駐車ブレーキの安全装置によれば、車速センサのパルス信号の時間間隔が前回に対し長いとき、つまり、発生したパルス信号が荷積作業等で生じた車両の揺れによるものであるときには、検出パルス数の累積値をリセットするため、不適切な自動停止の実行を防止でき、かつ、パルス信号の時間間隔の変化がそれ以外のときには、車両の動き出しと見なして検出パルス信号をリセットすることなく累積し続けるため、譬え車両の移動が緩慢であっても、累積値が所定値に達した時点で速やかに自動停止を実行して、ごく短距離で確実に車両を停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の車両用駐車ブレーキの安全装置の制御系を模式的に表したブロック図である。
【図2】車両用駐車ブレーキの安全装置の制御演算部が実行するフローチャートである。
【図3】車両が揺れたときの従来例と実施例の1号カウンタの累積状態を示すタイムチャートである。
【図4】車両の移動速度が緩慢なときの従来例と実施例の1号カウンタの累積状態を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
11 車速センサ
21 駐車ブレーキ作動状態検出手段
22 制御手段としてのカウンタ手段
26 リセット手段
27 制御手段としての制御条件設定部
30 信号判定手段
33 制動力補助手段

Claims (1)

  1. 車速に対応して回転する回転体の回転をパルス信号として検出する車速センサと、
    駐車ブレーキの作動状態を検出する駐車ブレーキ作動状態検出手段と、
    運転者による制動操作とは独立して車両に制動力を付与可能に設けられた制動力補助手段と、
    前記駐車ブレーキ作動状態検出手段により駐車ブレーキが作動中であることが検出されているときに前記車速センサの検出パルス数を累積し、該累積値が所定値に達した場合に、前記制動力補助手段を作動させる制御手段と、
    前記駐車ブレーキが作動中で、前記車速センサから検出されるパルス信号の時間間隔が前回の信号時間間隔に対し長くなった場合にリセット判定を下す信号判定手段と、
    前記信号判定手段にてリセット判定が下された場合に、前記制御手段による検出パルス数の累積値をリセットするリセット手段と
    を備えたことを特徴とする車両用駐車ブレーキの安全装置。
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