JP3646770B2 - 燃料電池用ガスケット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池用のガスケットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体電解質型または高分子固体電解質型等の燃料電池に用いられる密封装置として、Oリングタイプの密封装置および基材の両面に発泡ゴムをコーティングしたガスケットタイプの密封装置が知られている。
【0003】
しかしながら、前者のOリングタイプの密封装置には、その材質が柔らかいために装着性が良くない不都合があり、また製品厚みが厚いために、セルの積層数が増加すると、燃料電池がかなり大きなものになってしまう不都合がある。
【0004】
また、後者のガスケットタイプの密封装置には、もともと発泡ゴムの応力緩和性があまり良くないために、セルの積層数が増加すると、締結ボルトの緩みが大きくなってシール性が早期に損なわれてしまう不都合がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上の点に鑑み、装着性に優れ、燃料電池を大型化することがなく、しかもシール性に優れた燃料電池用ガスケットを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1による燃料電池用ガスケットは、正極、電解質板および負極を備えた単位セルを挟み込む一対のハウジング間に装着される燃料電池用ガスケットであって、金属基板の両面または片面に発泡ゴム層または低硬度ゴム層を被着した構造であるとともに、前記金属基板にビード状のシール部を設けた構造であり、前記ビード状のシール部は、基準面部に連なる斜面部とこの斜面部に連なる平面部とよりなるハーフビードをなし、前記一対のハウジングが締結手段によって互いに接触するように締結固定されたときに、前記基準面部は前記ハウジングに設けた収容凹部に収容されて前記ハウジング間に挟み込まれ、前記ビード状のシール部は前記ハウジングに設けた圧縮用凹部に収容され、前記圧縮用凹部の深さは零よりも大きく自由状態における前記ビード状のシール部の高さよりも小さく設定されており、前記圧縮用凹部に収容された前記ビード状のシール部は定寸止めで使用されることを特徴とするものである。
【0007】
【0008】
上記構成を備えた本発明の請求項1による燃料電池用ガスケットのように、金属基板の両面または片面に発泡ゴム層または低硬度ゴム層を被着した構造が備えられていると、先ず金属基板が剛性を備えているために、当該ガスケットの装着性を向上させることが可能となり、また金属基板に薄肉のものを使用することができるために、当該ガスケットの製品厚みを薄く成形することが可能となる。また金属基板に発泡ゴム層または低硬度ゴム層が被着されているために、その弾性により、小さな締付け荷重で大きな密接圧力を確保することが可能となる。
【0009】
また、金属基板にビード状のシール部が設けられているために、その金属バネ作用により、上記密接圧力を一層大きくすることが可能となる。
【0010】
またこれに加えて、上記構成を備えた本発明の請求項1による燃料電池用ガスケットにおいては、ビード状のシール部が圧縮はされるが全圧縮はされない定寸止めで使用されることから、このビード状のシール部の圧縮量が制限されてこのビード状のシール部が適切な弾性領域で使用される。したがって、やはり小さな締付け荷重で大きな密接圧力を確保することが可能となる。
【0011】
【発明の実施の形態】
つぎに本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
【0012】
図1に示すように、当該実施形態に係るガスケット1は、全体を符号11で示す燃料電池に装着されてこの電池11内部の気密を保ち、また電池11内部の密封流体をシールするものである。燃料電池11は、正極(水素極とも称する)13、電解質板14および負極(酸素極とも称する)15からなる単位セル12を当該ガスケット1のハウジング16となる板状のセパレータを介して多数積層したものであって、一組の単位セル12を上下から挟み込む上下一対のハウジング16間に当該ガスケット1が単位セル12の回りを取り囲むようにして挟着される。
【0013】
当該ガスケット1は、図2に示すように、SUSまたはSPCC等の鋼板ないしソフトメタル等よりなる金属基板2の両面にそれぞれ発泡ゴム層3を塗布またはコーティング等の手段により被着したものであって、図3に示すように、所定の平面レイアウトを備えた基準面部4を備えており、この基準面部4に同じく所定の平面レイアウトを備えた皿バネ状のハーフビードを成すシール部5が一体成形されている。このハーフビード状のシール部5は、基準面部4に連なる斜面部6と、この斜面部6に連なる平面部7とを一体に備えたものである。
【0014】
図3に示したように、上側ハウジング16の下面に、上下一対のハウジング16が締結ボルト等の締結手段(図示せず)によって互いに接触するように締結固定されたときに当該ガスケット1の基準面部4を上下のハウジング16で挟み込んで収容するための収容凹部17が形成されており、この収容凹部17に連続して同じく上側ハウジング16の下面に、ハーフビード状のシール部5を定寸止めで使用するための圧縮用凹部18が形成されている。この後者の圧縮用凹部18の深さd1は零より大きく、かつ自由状態におけるハーフビード状のシール部5の高さh1より小さく設定されており、これによりこの圧縮用凹部18によってシール部5が圧縮されると、シール部5が圧縮はされるが全圧縮はされない適度の圧縮状態である定寸止めが実現される。この定寸止めは、例えば金属基板2がステンレス鋼板である場合、自由状態におけるシール部5の高さ1.5mmをハウジング16の締結時に0.8mm程度に圧縮するのが好適である。
【0015】
収容凹部17は、図4に示すように、下側ハウジング16の上面に形成しても良く、この場合には、圧縮用凹部18のみが上側ハウジング16の下面に形成されることになる。
【0016】
図5は、当該ガスケット1の平面レイアウトの一例を示しており、矩形平面の四隅にそれぞれ、気体を上下に通すための孔状のボア部8が設けられている。ハーフビード状のシール部5は、このボア部8を通過する気体をシールすることができるように内外の二重構造とされており、図6に示すように、内側のシール部5が外高形状とされるとともに外側のシール部5が内高形状とされている。
【0017】
上記構成を備えたガスケット1は、以下の作用効果を奏する点に特徴を有している。
【0018】
すなわち先ず第一に、当該ガスケット1の構成要素に、剛性を備えた金属基板2が含まれているために、当該ガスケット1は自らが保形性を備えている。したがって当該ガスケット1はその取扱いが容易であり、よってその装着性(装着作業性)ないし組付け性(組付け作業性)を向上させることができる。また金属基板2に厚さ0.1mm程度の薄肉のものを使用することができるために、当該ガスケット1の製品厚みを薄く成形することが可能である。したがって単位セル12の積層数が多い場合でも、燃料電池11がそれほど大型化することがない。
【0019】
また、金属基板2の両面に発泡ゴム層3が被着されているために、その弾性により、小さな締付け荷重で大きな密接圧力を確保することが可能となり、金属基板2にハーフビード状のシール部5が設けられているために、その金属バネ作用により、上記密接圧力を一層大きくすることが可能となる。したがってシール性能を向上させることができる。
【0020】
また、従来のOリングタイプ等のゴムシールでは、高温領域でゴムにへたりが発生し、これにより締結ボルトに緩みが発生してシール性能が低下してしまうことがあるが、当該ガスケット1では、金属基板2が設けられているために、使用温度の影響を受けにくい。したがって広い範囲の温度領域で使用することが可能なガスケット1を提供することができる。
【0021】
また、ハーフビード状のシール部5が圧縮用凹部18に収容されて圧縮はされるが全圧縮はされない定寸止めの状態で使用されるために、このシール部5の圧縮量が制限されてシール部5がビードの追従性の高い適切な弾性領域で使用される。したがって、この点からも小さな締付け荷重で大きな密接圧力を確保することができ、シール性能を向上させることができる。また締結ボルトに緩みが発生するのを防止することができるとともに、ハウジング16の歪みに対する追従性を向上させることができ、これらの点からもシール性能を向上させることができる。
【0022】
更にまた、低荷重でシール性が成立するハーフビード状のシール部5の弾性領域が拡大するために、圧縮用凹部18の深さについての寸法交差を±0.05mm(レンジ0.1mm)程度まで拡大することが可能である。したがって凹部18を容易に形成することができる。
【0023】
【0024】
【0025】
【発明の効果】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0026】
すなわち先ず、上記構成を備えた本発明の請求項1による燃料電池用ガスケットにおいては、当該ガスケットの構成要素に、剛性を備えた金属基板が含まれているために、当該ガスケットが自ら保形性を備えている。したがって当該ガスケットはその取扱いが容易であって、その装着性ないし組付け性を向上させることができる。また金属基板に薄肉のものを使用することができるために、当該ガスケットの製品厚みを薄く成形することが可能である。したがって単位セルの積層数が多い場合でも、燃料電池が極端に大型化するのを防止することができる。
【0027】
また、金属基板の両面または片面に発泡ゴム層または低硬度ゴム層が被着されているために、その弾性により、小さな締付け荷重で大きな密接圧力を確保することが可能となり、金属基板にビード状のシール部が設けられているために、その金属バネ作用により、上記密接圧力を一層大きくすることが可能となる。したがって当該ガスケットがハウジングに強く密接し、シール性能を向上させることができる。
【0028】
また、従来のOリングタイプ等のゴムシールでは、高温領域でゴムにへたりが発生し、これにより締結ボルトに緩みが発生してシール性能が低下してしまうことがあるが、当該ガスケットでは、金属基板が設けられているために、使用温度の影響を受けにくい。したがって広い範囲の温度領域で使用することが可能なガスケットを提供することができる。
【0029】
またこれに加えて、上記構成を備えた本発明の請求項1による燃料電池用ガスケットにおいては、ビード状のシール部が定寸止めで使用される構造であるために、このシール部の圧縮量が制限されてシール部がビードの追従性の高い適切な弾性領域で使用される。したがって、この点からも小さな締付け荷重で大きな密接圧力を確保することができ、シール性能を向上させることができる。また締結ボルトに緩みが発生するのを防止することができるとともに、ハウジングの歪みに対する追従性を向上させることができ、これらの点からもシール性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係るガスケットの装着構造を示す要部断面図
【図2】 同ガスケットの積層構造を示す要部断面図
【図3】 図3の一部拡大図
【図4】 他の装着構造を示す要部断面図
【図5】 ガスケットの平面レイアウトの一例を示す平面図
【図6】 図5におけるA−A線拡大断面図
【符号の説明】
1 ガスケット
2 金属基板
3 発泡ゴム層
4 基準面部
5 シール部
6 斜面部
7 平面部
8 ボア部
11 燃料電池
12 単位セル
13 正極
14 電解質板
15 負極
16 ハウジング
17 収容凹部
18 圧縮用凹部
Claims (1)
- 正極(13)、電解質板(14)および負極(15)を備えた単位セル(12)を挟み込む一対のハウジング(16)間に装着される燃料電池用ガスケット(1)であって、
金属基板(2)の両面または片面に発泡ゴム層(3)または低硬度ゴム層を被着した構造であるとともに、前記金属基板(2)にビード状のシール部(5)を設けた構造であり、前記ビード状のシール部(5)は、基準面部(4)に連なる斜面部(6)とこの斜面部(6)に連なる平面部(7)とよりなるハーフビードをなし、
前記一対のハウジング(16)が締結手段によって互いに接触するように締結固定されたときに、前記基準面部(4)は前記ハウジング(16)に設けた収容凹部(17)に収容されて前記ハウジング(16)間に挟み込まれ、前記ビード状のシール部(5)は前記ハウジング(16)に設けた圧縮用凹部(18)に収容され、前記圧縮用凹部(18)の深さは零よりも大きく自由状態における前記ビード状のシール部(5)の高さよりも小さく設定されており、前記圧縮用凹部(18)に収容された前記ビード状のシール部(5)は定寸止めで使用されることを特徴とする燃料電池用ガスケット。
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