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JP3645140B2 - 移動通信システム - Google Patents

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JP3645140B2
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  • Small-Scale Networks (AREA)
  • Communication Control (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基地局から無線チャネルを介して携帯電話機などの移動局に対して通信サービスを提供するようにした移動通信システムに係り、詳しくは、移動局と複数の基地局との間で情報の送受信を行うようにした移動通信システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の移動通信システムは、例えば、図36に示すように、移動局45、基地局51〜57、回線制御局61、62及び交換局71にて構成されている。無線ゾーン(破線で示す)を形成する複数の基地局51〜57、回線制御局61、62及び交換局71は階層的に接続されている。
【0003】
移動局45は、無線ゾーン間を自由に移動し、在圏する無線ゾーンの基地局、例えば、基地局54と無線チャネルで接続され。無線チャネルで接続された移動局45と基地局54は、その無線チャネルを介して双方向に通信を行う。
各基地局は、1つ以上の移動局と無線チャネルを介して通信を行う。また、基地局51、53、56、基地局52、54、55、57は、それぞれ回線制御局61、62に接続され、その接続された回線制御局61、62と双方向の通信を行う。
【0004】
各回線制御局61、62は、それぞれ複数の基地局と接続され、移動局45が無線ゾーン間を移動する際に、移動局が通信する基地局の切替え制御を行う。このような移動局45と接続されるべき基地局の切替え時、所謂、ハンドオーバー時に、移動局45は、無線チャネルの切替を行う。
交換局71は、複数の回線制御局61、62、複数の他の交換局(図示略)、複数の他のネットワークシステム(図示略)と接続されている。この交換局71は、配下に存在する移動局の間、その配下に存在する移動局と他の交換局や他のネットワークシステム配下の端末との間の接続制御を行う。
【0005】
従来の移動通信システムでは、基地局と移動局との間における無線チャネル接続は、FDMA(周波数分割多元接続)、TDMA(時間分割多元接続)、CDMA(符号分割多元接続)等の多元接続の方式に従って行われる。以上のような構成により、従来の移動通信システムは、回線交換型の通信サービスとパケット交換型の通信サービスの両者を移動局に対して提供することができる。
【0006】
上記のような移動通信システムにおいて、移動局45は、無線チャネルの受信レベルが最大となる基地局(図36において、例えば、基地局54) を通信相手として選択する。この移動局にて選択された基地局を在圏基地局という。図36において、移動局45が在圏基地局54と通信を行っている際、移動局45のアンテナの指向性は低いため、この移動局45からの送信信号は在圏基地局の周辺の基地局(図36において、例えば、基地局52)にも到達する。特にこの現象は、移動局が無線ゾーンの境界部に位置する場合に顕著となる。
【0007】
無線チャネルの伝送方式としてCDMA方式を使う移動通信システムでは、複数の無線チャネル(拡散コード)を使うことにより、複数の基地局が1つの移動局からの送信信号を同時に受信することができる。例えば、図37に示すように、移動局47は、2つの拡散コードを用いて2つの基地局55、57と同時に通信を行っている。回線制御局62は、2つの基地局55、57から受信した移動局47からの送信信号を1つの信号に合成して交換局71に送信する。このような通信方式を一般に複数基地局同時受信方式(または、ソフトハンドオーバー、サイトダイバーチという)という。この複数の基地局からの信号を合成する方法として種々の方法があるが、代表的な方法として、以下の2つの方法がある。
【0008】
第一の方法では、各基地局は、復調したビット情報をそのまま回線制御局に送信する。そして、回線制御局は、誤り訂正符号語や誤り訂正符号語単位で誤りの無いブロックから信号を再生する。
第二の方法では、各基地局は、受信した軟判定信号を受信信号強度(RSSI)か信号対雑音・干渉総合電力比(S/N+I)と共に回線制御局に送信する。そして、回線制御局は、各基地局から受信した上記情報を最大比合成して信号を再生する。
【0009】
このような方法に従って複数の基地局からの信号を回線制御局にて合成することにより、移動局から伝送された信号の誤り率が低減される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来の移動通信システムでは、回線制御局が複数の基地局から受信した信号の合成を行うため、例えば、図37に示すように、接続される回線制御局61、62が異なる複数の基地局51、54と移動局46との間で、上述したような複数基地局同時受信方式での通信を行うことができない。従って、移動する移動局に対して、常に、複数の基地局同時受信方式での通信サービスを提供することができない。
【0011】
また、従来の移動通信システムでは、ハンドオーバー以外の通信において、上述したような複数基地局受信方式での通信を行うと、移動局の台数の増加に伴って回線制御局における処理の負担が増大してしまう。
更に、複数の基地局から移動局に対して信号を送信する場合(複数基地局同時送信/複数基地局順次送信)も、その複数の基地局を統括的に制御しなければならならないことから、上述したような移動局の位置に応じて切れ目の無い通信サービスができないという問題及び複数の基地局を統括する通信ノードでの処理の負担が増大するという問題を有している。
【0012】
そこで、本発明の課題は、移動局と複数の基地局との間の通信を安定的に実現でき、かつ、その通信における各通信ノードでの処理負担の増加をできるだけ少なくできるような移動通信システムを提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明、請求項1に記載されるように、通信サービスエリアに設置されると共に所定の網に接続された複数の基地局を有し、移動局と通信相手との間の通信が上記所定の網と基地局とを介して行われるようにした移動通信システムにおいて、上記所定の網は、非階層的に上記複数の基地局を接続し、移動局と各基地局との間の無線伝送路の状態に基づいて、当該移動局と情報通信を行うべき複数の基地局の集合体となる仮想基地局を決定する仮想基地局決定手段と、仮想基地局決定手段にて決定れた仮想基地局に属する各基地局にて受信された移動局からの情報を、該仮想基地局内の1つの基地局において合成する情報合成手段とを有し、該情報合成手段にて合成された情報を該1つの基地局から通信相手宛ての情報として上記所定の網に送信するように構成される。
【0014】
このような移動通信システムでは、移動局と各基地局との間の無線伝送路の状態に基づいて当該移動局と情報通信を行うべき基地局の集合体となる仮想基地局が決定される。そして、移動局から通信相手に宛てた情報は、その仮想基地局を構成する複数の基地局にて受信される。各基地局にて受信した移動局からの情報は、仮想基地局内の1つの基地局にて合成される。その合成された情報が当該1つの基地局から上記通信相手宛ての情報として上記所定の網に送信される。
【0015】
このような移動通信システムによれば、移動局が通信サービスエリア内で移動して当該移動局と各基地局との間の無線伝送路の状態が変化すると、その変化に応じて、仮想基地局を構成する基地局が変化する。即ち、この仮想基地局を構成する基地局は、移動局の移動に伴って動的に変化する。移動局から通信相手宛ての情報は、仮想基地局を構成する複数の基地局にて受信され、その複数の基地局にて受信された情報が合成されるので、通信相手に伝送される情報の誤り率が低下する。
【0016】
また、通信サービスエリアに設置された複数の基地局は、非階層的に所定の網にて接続されているので、移動局が通信サービスエリア内を移動する際に、仮想基地局を構成すべき基地局に対する制限はない。更に、いずれかの基地局が故障しても、その基地局を除く他の基地局から仮想基地局として構成すべき基地局が決定されるようになる。
【0017】
上記移動局と基地局との間の無線伝送路の状態は、移動局と基地局間の距離(無線伝送路の距離)、障害物での反射の状態、電波の減衰の状態、他の通信ノードからの電波の干渉状態等であって、例えば、信号の受信レベル、信号の誤り率、干渉波の受信レベルなどにて表すことができる。
通信相手宛ての情報の誤り率をより低減できるという観点から、本発明は、請求項2に記載されるように、上記移動通信システムにおいて、上記仮想基地局決定手段は、移動局との間の無線伝送路の状態が所定の状態より良好な基地局を上記仮想基地局を構成すべき基地局として決定するように構成することができる。
【0018】
このような移動無線通信システムにより、移動局との間の無線伝送路の状態がより良好な基地局が仮想基地局を構成すべき基地局として決定される。
また、最も誤り率の少ない状態で移動局からの信号を受信すると見込まれる基地局にて各基地局での受信情報を合成するという観点から、本発明は、請求項3に記載されるように、上記移動通信システムにおいて、上記仮想基地局決定手段にて決定された仮想基地局を構成すべき各基地局のうち、移動局との間の無線伝送路の状態が最も良好な基地局を親基地局とし、該親基地局において上記情報合成手段が上記仮想基地局に属する各基地局にて受信された移動局からの情報を合成するように構成することができる。
【0019】
上述したように、移動局と基地局との間の無線伝送路の状態は、信号の受信レベルにて容易に表すことができる。このことを利用して仮想基地局を構成すべき基地局を容易に決定できるという観点から、本発明は、請求項4に記載されるように、上記移動通信システムにおいて、上記仮想基地局決定手段は、移動局にて各基地局の無線チャネルの受信レベルを無線伝送路の状態として測定する受信レベル測定手段を有し、該受信レベル測定手段にて測定された受信レベルのうち所定レベル以上の受信レベルとなる無線チャネルの基地局を仮想基地局として構成されるべき基地局として決定するするように構成することができる。
【0020】
また、移動局との間の無線伝送路の最も良好な基地局にて情報の合成を行うという観点から、本発明は、請求項5に記載されるように、上記移動通信システムにおいて、上記仮想基地局決定手段にて決定された仮想基地局を構成すべき各基地局のうち、受信レベルの最大となる無線チャネルの基地局を親基地局とし、該親基地局において上記情報合成手段が上記仮想基地局に属する各基地局にて受信された移動局からの情報を合成するように構成することができる。
【0021】
限られた通信資源を有効に利用できるという観点から、本発明は、請求項6に記載されるように、上記各移動通信システムにおいて、上記仮想基地局決定手段にて仮想基地局を構成すべき基地局として決定された複数の基地局は、同一の無線チャネルにて移動局と通信を行うように構成することができる。
通信サービスエリアに設置された複数の基地局を容易に非階層的に接続できるという観点から、本発明は、請求項7に記載されるように、上記各移動通信システムにおいて、上記所定の網は、パケット通信網となるように構成することができる。
【0022】
移動局と情報通信を行うべき基地局として決定された仮想基地局の各基地局の関係を容易に解消できるとう観点から、本発明は、請求項8に記載されるように、上記各通信システムにおいて、上記仮想基地局決定手段にて決定された仮想基地局としての各基地局の関係を所定時間後に解消する仮想基地局解消手段を有するように構成することができる。
【0023】
このような移動通信システムでは、仮想基地局として構成された各基地局は、所定時間経過後に自動的に、その関係が解消される。そして、上述したように、移動局と各基地局との間の無線伝送路の状態に基づいて再度当該基地局と通信を行うべき複数の基地局の集合体となる仮想基地局が決定される。
仮想基地局として構成された各基地局の関係を解消する処理を分散的に行えるという観点から、本発明は、請求項9に記載されるように、上記移動通信システムにおいて、上記仮想基地局解消手段は、仮想基地局に属する上記1つの基地局において当該仮想基地局に属する他の基地局を管理する第一の管理手段と、該仮想基地局に属する当該他の基地局のそれぞれにおいて上記1つの基地局を管理する第二の管理手段とを有し、上記仮想基地局決定手段にて仮想基地局を構成すべき基地局が決定されてから所定時間後に上記第一の管理手段と上記第二の管理手段での管理を終了させることにより、上記仮想基地局としての各基地局の関係を解消するように構成することができる。
【0024】
このような移動通信システムでは、仮想基地局を構成する各基地局での他の基地局についての管理の終了により自動的にそれらの関係が解消される。
移動局宛ての情報を複数の基地局から同時的あるいは順次的に送信できるという観点から、本発明は、請求項10に記載されるように、上記各移動通信システムにおいて、通信相手から移動局宛ての情報を上記仮想基地局を構成する基地局のうちの1つの基地局が受信したときに、該1つの基地局にてその受信した情報を複製して当該仮想基地局に属する他の基地局に上記所定の網を介して転送する複製情報転送手段を有し、上記1つの基地局及び、複製された情報を受信した当該他の基地局それぞれから上記移動局に対して情報を送信するように構成するこができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の実施の一形態に係る移動通信システムは、例えば、図1に示すように構成される。
図1において、この移動通信システムでは、通信サービスエリア内に設置された各基地局11〜29がパケット通信網100にて非階層的に相互に接続されている。基地局11〜29は、それぞれ無線ゾーンを形成する。移動局31、32、33は、通信サービスエリア内を移動し、基地局と無線チャネルを介して通信を行う。上記パケット通信網100には、例えば、固定端末機41が接続されている。
【0026】
上記パケット通信網100は、パケット通信プロトコルにしたがって、移動局31、32、33、基地局11〜29、固定端末41の間で送受信されるパケットの伝送経路となる。代表的なパケット通信アルゴリズムとしてIP(Internet Protocol )があり、以下、このパケット通信アルゴリズムを前提に説明を行う。
【0027】
上記のような構成の移動通信システムにおいて、例えば、図2に示すように、各通信ノード(移動局、基地局、固定端末)に対してパケット通信網100において一意的に定義されるIPアドレスが付与されると共に、各基地局11〜29での使用無線チャネルが定められている。なお、各移動局31、32、33には、上記IPアドレスのほか、移動局番号が付与される。具体的には、例えば、移動局31に対して移動局番号1、移動局32に対して移動局番号2、移動局33に対して移動局番号3が付与される。
【0028】
パケット通信網100を伝送されるIPパケットのフォーマットは、例えば、図3に示すように構成される。即ち、各パケットは、制御情報が記述されたIPヘッダと送信すべき情報の内容が記述されたペイロードにて構成される。IPヘッダにおいて、送信元IPアドレスは、IPパケットの送信元となる移動局、基地局、固定端末機のIPアドレスを表す。また、宛先IPアドレスは、IPパケットの宛先となる移動局、基地局、固定端末機のIPアドレスを表す。
【0029】
各基地局11〜29は、上記のように定められた無線チャネルを介して各移動局と通信を行い、更に、パケット通信網100を介して他の基地局や固定端末機41と通信を行う。固定端末機41は、パケット通信網100、基地局及び無線チャネルを介して移動局と通信を行う。
前述したように、移動局と基地局は、無線チャネルを介して信号の送受信を行う、移動局と基地局との間で送受信される信号のフォーマットは、例えば、図4に示すように構成される。即ち、この信号は、移動局番号、シーケンス番号、信号種、信号の内容、誤り訂正符号及び誤り検出符号にて構成される。移動局番号は、移動局から基地局への信号(上り信号)において当該信号の送信元となる移動局を特定し、基地局から移動局への信号(下り信号)において当該信号の宛先となる移動局を特定する。つまり、複数の移動局と1つの基地局は、1つの無線チャネルを用いて信号を送受信するため、移動局は信号に含まれる移動局番号により基地局から送信された信号が自局宛てのものかどうかを判定する。また、基地局はこの移動局番号により信号がどの移動局から送信されたかを判定する。
【0030】
シーケンス番号は、同一の移動局番号を含む信号を区別するために用いられる。移動局と基地局は、新たな信号を送信する毎に、シーケンス番号を予め定められたモジュロ数で1つずつインクリメントする。信号種別は、信号の種類(例えば、移動局と基地局との間の制御に用いる制御信号や、移動局と固定端末の間あるいは移動局間の情報転送に用いるパケット信号を示す)、信号の内容は、送受信すべき情報の内容であって、信号の種別に応じてその構成が異なる。誤り訂正符号は、信号に発生した伝送誤りを当該信号の受信側で訂正するために用いられる情報である。この誤り訂正符号は、信号の送信側にて、移動局番号、シーケンス番号、信号種別、信号の内容を所定の長さに分割した符号ブロック毎に付加される。誤り検出符号は、信号の受信側が、誤り訂正符号によって信号を正しく訂正できたかどうかを判定するために用いられる情報である。この誤り検出符号も上記誤り訂正符号と同様に、所定長の符号ブロック毎に付加される。
【0031】
各基地局11〜29は、IPパケット網100を介して他の基地局とメッセージの送受信を行う。このメッセージのフォーマットは、例えば、図5に示すようになっている。このメッセージはメッセージ種別とメッセージの内容にて構成される。メッセージ種別はメッセージの種類を表す。メッセージの内容は、他の基地局に伝えるべき情報であって、メッセージ種別に応じてその構造が異なる。各基地局は、メッセージをIPパケットのペイロードに含めてパケット通信網100を経由させて他の基地局に送る。その際、各基地局は、IPパケットのヘッダ内におけるプロトコルに「 基地局間制御」 を設定し、ペイロードに上記メッセージを設定する。
【0032】
上記移動通信システムにおける各基地局11〜29及び各移動局31、32、33は、例えば、図6に示すように構成される。
図6において、基地局は、有線受信ユニット101、有線送信ユニット102、無線送信ユニット103、無線受信ユニット104及び制御ユニット105を備えている。無線受信ユニット104は、自局に割当てられた無線チャネルだけでなく、周辺の基地局が使用する無線チャネルも受信が可能であり、複数の移動局から送信される各種の信号を受信する。無線送信ユニット104は、自局に割当てられた無線チャネルにて移動局に対して各種の信号を送信する。有線受信ユニット101は、パケット通信網100と接続され、他の基地局や固定端末機41からのIPパケットを受信する。有線送信ユニット102は、パケット通信網100と接続され、他の基地局や固定端末機41に対してIPパケットを送信する。制御ユニット105は、有線受信ユニット101にて受信したIPパケットや有線送信ユニット102にて送信すべきIPパケットに対する処理、無線受信ユニット103にて受信した移動局からの各種信号や無線送信ユニット104にて移動局に送信すべき各種信号に対する処理などを行う。
【0033】
上記制御ユニット105は、自局の周辺に位置する基地局を管理するための図7に示すような周辺基地局管理テーブル、図8に示すような子基地局管理テーブル、図9に示すような親基地局管理テーブル、及び図10に示すような受信信号管理テーブルを有する。各管理テーブルは、複数のフィールドからなるレコードから構成され、そのレコードの数は可変である。
【0034】
上記周辺基地局管理テーブル(図7参照)のレコードは、周辺基地局の無線チャネル情報と周辺基地局のIPアドレスのフィールドから構成される。子基地局管理テーブル(図8参照)のレコードは、移動局番号、子基地局数、参加子基地局数、子基地局IPアドレスリスト、子基地局有効期限のフィールドから構成される。親基地局管理テーブル(図9参照)のレコードは、移動局番号、無線チャネル情報、親基地局IPアドレス、親基地局有効期限のフィールドから構成される。受信信号管理テーブル(図10参照)のレコードは、移動局番号、シーケンス番号、受信待ち期限、受信信号数、受信信号リストのフィールドから構成される。
【0035】
図6に戻って、各移動局は、無線受信ユニット201、無線送信ユニット202及び制御ユニット203を有している。無線受信ユニット201は、1つの無線チャネルでの受信が可能であり、無線チャネルの受信レベルの測定や、基地局から送信される各種の信号を受信する。無線送信ユニット202は、1つの無線チャネルでの送信が可能であり、基地局に対して各種の信号を送信する。制御ユニット203は、無線受信ユニット201及び無線送信ユニット202に対して使用すべき無線チャネルを指定したり、無線受信ユニット201にて受信した各種に信号や、無線送信ユニット202にて送信すべき各種の信号に対する処理を行う。この制御ユニット203は、図11に示すような無線チャネル情報管理テーブル、図12に示すような周辺基地局受信レベル管理テーブルを有する。各管理テーブルは複数のフィールドからなるレコードから構成され、そのレコードの数は可変である。
【0036】
上記無線チャネル情報管理テーブル(図11参照)のレコードは、無線チャネル情報と受信レベルの各フィールドにて構成される。上記周辺基地局受信レベル管理テーブル(図12参照)のレコードは、周辺基地局の無線チャネル情報と、周辺基地局の無線チャネルの受信レベルのフィールドから構成される。
上記のような移動通信システムにおいて、例えば、図13に示すように、移動局31が基地局19、20、24の無線ゾーンの境界部付近に位置する場合を想定して、動作について説明する。なお、図13は、見やすくするために、パケット通信網100及びパケット通信網100と各基地局との間の接続線が省略されている。
【0037】
移動局が送信した信号は、当該移動局が在圏する基地局だけでなく、周辺の基地局においても、受信可能である。この例では、1つの移動局から送信された信号を同時に受信する複数の基地局の集合体を仮想基地局と定義する。そして、仮想基地局に属する基地局のうち、移動局が在圏する1つの基地局を親基地局という。また、仮想基地局に属する基地局のうち親基地局以外の基地局を子基地局という。
【0038】
移動通信システムにおいて、ある移動局に対して仮想基地局を構成する基地局は、例えば、図14に示す手順に従って決定される。
移動局31の制御ユニット203は、この移動通信システムにて使用される無線チャネルの情報を記述した無線チャネル情報管理テーブルを有している(図11参照)。この無線チャネル情報管理テーブルは、例えば、図15に示すように、各無線チャネル情報CH1〜CH7と移動局における受信レベルとの関係が記述される。この無線チャネル情報は、無線チャネルの伝送方式としてTDMA方式が用いられた場合、無線チャネルの周波数とスロット番号である。また、無線チャネルの伝送方式としてCDMA方式が用いられた場合、この無線チャネル情報は、無線チャネルの周波数と拡散コード番号である。
【0039】
図14において、移動局31は、電源がONになる(S1)と、無線チャネル情報管理テーブルに含まれる無線チャネル情報によって特定される無線チャネルの受信レベルを順次測定する(S2)。具体的には、移動局31の制御ユニット203は、無線チャネル情報を無線受信ユニット201に渡すと共に、受信レベルの測定を指示する。すると、無線受信ユニット201は、指示された無線チャネルの受信レベルを測定してその測定結果を制御ユニット203に渡す。この測定結果を受け取った制御ユニット203は、無線チャネル情報管理テーブルの対応する無線チャネル情報にその測定結果を受信レベルとして記述する。
【0040】
移動局31の制御ユニット203は、全ての無線チャネル情報について受信レベルの測定が完了すると、無線チャネル情報管理テーブルから最大受信レベルとなるレコードを検索する。図15に示す無線チャネル情報管理テーブルの場合、無線チャネル情報がCH4であるレコードが最大受信レベルとなるレコードである。このレコードの無線チャネル情報によって特定される無線チャネルを使う基地局、この例の場合、基地局19(図2参照)は、この移動局31に対する親基地局となる。そして、移動局31の制御ユニット203は、この最大受信レベルとなるレコードの無線チャネル情報を無線受信ユニット201及び無線送信ユニット202に渡す。その結果、無線受信ユニット201及び無線送信ユニット202は、制御ユニット203から無線チャネル情報にて指定された無線チャネルに切替える(S3)。
【0041】
上記のようにして移動局31に対する親基地局となる基地局19(IPアドレス9:図2参照)の制御ユニット105が有する周辺基地局管理テーブルは、例えば、図16に示すようになる。この基地局19の制御ユニット105は、この周辺基地局管理テーブルを参照して、周辺の基地局が使用する無線チャネル情報と受信レベル閾値を含む報知情報信号を作成する(S11)。この報知情報信号は、制御ユニット105から無線送信ユニット103に提供される。そして、無線送信ユニット103は、この提供された報知情報を送信する。
【0042】
上記報知情報信号は、例えば、図17に示すように構成される。図17(a)は、報知情報信号のフォーマットを示し、同図(b)は、例えば、移動局31に対する親基地局となるIPアドレス9の基地局19が送信する報知情報信号の構成を示す。報知情報信号は、同じ無線チャネルを受信する全ての移動局に対して送信されるため、報知情報信号中の移動局番号として、全ての移動局を示す所定の移動局番号(ブロードキャスト移動局番号)が指定される。
【0043】
移動局31の無線受信ユニット201は、親基地局19(IPアドレス9)からの報知情報信号を受信すると、その報知情報信号を制御ユニット203に渡す。この報知情報信号を取得した制御ユニット203は、報知情報信号から受信レベル閾値と親基地局19の周辺の基地局が使用する無線チャネルの情報を得て、周辺基地局受信レベル管理テーブル(図12参照)を作成する(S4)。移動局31は、周辺基地局受信レベル管理テーブルに含まれる各周辺基地局の無線チャネル情報(CH1、CH2、CH3、CH5、CH6、CH7)によって特定される無線チャネルの受信レベルを順次測定し(S5)、その測定結果を周辺基地局受信レベル管理テーブル内に周辺基地局の無線チャネルに対応させて記述する。この受信レベルの測定が完了すると、当該移動局31の制御ユニット203は、図18に示すような状態の周辺基地局受信レベル管理テーブルを得る。
【0044】
その後、制御ユニット203は、周辺基地局受信レベル管理テーブルから受信レベル閾値(例えば、25)以上の受信レベルとなるレコードを選択する。選択されたレコードの周辺基地局の無線チャネル情報(CH2、CH5、CH7)によって特定される無線チャネルを使用する基地局15、20、24は、移動局31に対する子基地局となる。上述した動作により、1つの親基地局19(IPアドレス9)と複数の子基地局15、20、24(IPアドレス5、10、14)が仮想基地局を構成すべき基地局として決定される。 各移動局の位置は、移動通信システム内で任意であるため、移動局が受信することのできる信号を送信する基地局は移動局毎に異なる。従って、仮想基地局となる基地局は移動局毎に異なりうる。つまり、移動通信システム内のある基地局は、ある移動局に対しては仮想基地局になるが、他の移動局に対しては仮想基地局でないこともある。また、親基地局や子基地局も移動局毎に決定されるので、ある移動局に対して親基地局となる基地局が、他の移動局に対して子基地局となることもある。
【0045】
次に、仮想基地局は、例えば、図19に示す手順に従って、結成される。この例は、上記のようにして決定された移動局31に対する親基地局19と子基地局15、20、24(図13参照)が仮想基地局として結成される場合を示している。
図19において、移動局31は、親基地局19に対して子基地局15、20、24が使う無線チャネルのリストを含む仮想基地局結成要求信号を送信する。この仮想基地局結成要求信号は、例えば、図20に示すように構成される。図20(a)は、仮想基地局結成要求信号のフォーマットを示し、同図(b)は、移動局31から親基地局19に実際に送信される仮想基地局要求信号の構成を示す。
【0046】
親基地局19は、移動局31からの仮想基地局結成要求信号を受信すると、その受信した仮想基地局結成要求信号に含まれる移動局番号が子基地局管理テーブル(図8参照)に含まれているかチェックする。含まれている場合、該当するレコードの子基地局数、参加子基地局数、子基地局IPアドレスリスト、子基地局有効期限を更新する(S21)。具体的には、子基地局数を仮想基地局結成要求信号に含まれる子基地局数に更新すると共に、参加子基地局数を0に、子基地局アドレスリストを空きに、子基地局有効期限を空きにそれぞれ更新する。
【0047】
一方、受信した仮想基地局結成要求信号に含まれる移動局番号が子基地局管理テーブルに含まれない場合、子基地局管理テーブルに新しいレコードを追加する。具体的には、移動局番号として仮想基地局結成要求信号に含まれている移動局番号を設定すると共に、子基地局数として仮想基地局結成要求信号に含まれている子基地局数を、参加子基地局数として0を、子基地局IPアドレスリストを空きに、子基地局有効期限を空きにそれぞれ設定して、新しいレコードを作成する。
【0048】
上記のようにして更新あるいは追加された子基地局管理テーブルにおける当該移動局31(移動局番号1)に対応したレコードは、例えば、図21に示すように構成される。
親基地局19は、更に、受信した仮想基地局結成要求信号に含まれている各子基地局の無線チャネル情報と周辺基地局管理テーブル(図7参照)を参照して、各子基地局のIPアドレスを検索する(S22)。そして、親基地局19は、全ての子基地局、即ち、基地局15(IPアドレス5)、基地局20(IPアドレス10)及び基地局24(IPアドレス14)に対して順次仮想基地局参加要求メッセージを送信する。この仮想基地局参加要求メッセージは、例えば、図22に示すように構成される。図22(a)は、仮想基地局参加要求メッセージのフォーマットを示し、同図(b)は、親基地局19から子基地局15に送信される具体的な仮想基地局参加要求メッセージの構成を示す。この仮想基地局参加要求メッセージは、親基地局19が使用する無線チャネル情報CH4と、移動局31の移動局番号1を含み、親基地局19から各子基地局宛てのIPパケットとして伝送される。
【0049】
各子基地局15、20、24は、親基地局19から仮想基地局参加要求メッセージを受信すると、親基地局管理テーブル(図9参照)における当該移動局31(移動局番号1)に対応するレコードを、例えば、図23に示すように更新する(S31、S41、S51)。まず、仮想基地局参加要求メッセージに含まれる移動局番号が親基地局管理テーブルに含まれているかどうかをチェックする。その移動局番号と一致する移動局番号に対応したレコードが親基地局管理テーブルに存在する場合、子基地局は、そのレコードの無線チャネル情報、親基地局IPアドレス及び親基地局有効期限を更新する。具体的には、無線チャンネル情報を、仮想基地局参加要求メッセージに含まれる親基地局19の無線チャネル情報CH4に更新すると共に、親基地局IPアドレスを、仮想基地局参加要求メッセージを含むIPパケットの送信元IPアドレスに更新する。また、親基地局有効期限として現在時刻に所定の仮想基地局有効時間を加算して得られる期限が設定される。ここで、仮想基地局有効時間とは、仮想基地局が有効な期間であり、全ての移動局や基地局が保有する予め定められた値である。
【0050】
一方、仮想基地局要求メッセージに含まれる移動局番号と一致する移動局番号に対応したレコードが親基地局管理テーブルに存在しない場合、子基地局では、親基地局管理テーブルに新たなレコードが追加される。この場合、子基地局は、仮想基地局参加要求メッセージに含まれる移動局番号、親基地局19の無線チャンネル情報CH4、仮想基地局参加要求メッセージを含むIPパケットの送信元アドレス、現在時刻に所定の仮想基地局有効時間を加算して得られる親基地局有効期限をそれぞれ設定した新たなレコードを親基地局管理テーブルに追加する。そして、各子基地局15、20、24は、現在受信している無線チャネルのほかに、親基地局19の無線チャネル情報CH4にて特定される無線チャネルの受信も開始する(S32、S42、S52)。
【0051】
上記のようにして、親基地局管理テーブルの更新、レコードの追加を行った各子基地局15、20、24は、親基地局19に仮想基地局参加応答メッセージを送信する。この仮想基地局参加応答メッセージは、例えば、図24に示すように構成される。図24(a)は、仮想基地局参加応答メッセージのフォーマットを示し、同図(b)は、子基地局15(IPアドレス5)から親基地局19(IPアドレス9)に対して実際に送信される仮想基地局参加応答メッセージの構成を示す。
【0052】
親基地局19は、各子基地局15、20、24から仮想基地局参加応答メッセージを受信すると、仮想基地局参加応答メッセージに含まれる移動局番号に対応した子基地局管理テーブルにおけるレコード(図21参照)の参加子基地局数、子基地局IPアドレスリスト及び子基地局有効期限を更新する(S23、S24、S25)。親基地局19は、各子基地局15、20、24から仮想基地局参加メッセージを受信する毎に、参加子基地局数を1ずつインクリメントし、子基地局IPアドレスに仮想基地局参加応答メッセージを含むIPパケットの送信元IPアドレスを追加する。また、現在時刻と仮想基地局有効時間との合計時間が子基地局有効期限として設定される。
【0053】
上記のようにして各子基地局15、20、24から順次受信した移動局31(移動局番号1)に対する仮想基地局参加応答メッセージを受信した親基地局34では、例えば、図25に示すような子基地局管理テーブルのレコードが作成される。
親基地局19は、上記のようにして仮想基地局参加要求メッセージを送信した全ての子基地局15、20、24から仮想基地局参加応答メッセージを受信すると、移動局31(IPアドレス20)に対して仮想基地局結成応答信号を送信する。この仮想基地局結成応答信号は、例えば、図26に示すように構成される。図26(a)は、仮想基地局結成応答信号のフォーマットを示し、同図(b)は、親基地局19(IPアドレス9)から移動局31に実際に送信される仮想基地局結成応答信号の構成を示す。
【0054】
移動局31は、親基地局19から仮想基地局結成応答信号を受信すると、内部のタイマに仮想基地局有効時間を設定し、該タイマを始動させる。移動局31は、そのタイマがタイムアウトすると、先に送信した仮想基地局結成要求信号を親基地局に送信し、タイマに仮想基地局有効時間を再設定する。
親基地局19は、子基地局管理テーブルの全レコードの子基地局有効期限を常にチェックしており、現在時刻と一致する子基地局有効期限を持つレコードを子基地局管理テーブルから削除する。また、各子基地局15、20、24は、親基地局管理テーブルの全レコードにおける親基地局有効期限をチェックしており、現在時刻と一致する親基地局有効期限を持つレコードを親基地局管理テーブルから削除する。
【0055】
上記のようにして移動局31に対して基地局19、15、20、24にて仮想基地局が結成されると、この仮想基地局の各基地局19、15、20、24は、例えば、図27に示す手順に従って、移動局31と通信を行う。この例では、移動局31が固定端末機41にパケットを送信した場合の動作を示している。
移動局31は、固定端末機41宛てのIPパケットを含むパケット信号を送信する。このパケット信号は、例えば、図28、図29に示すように構成される。図28は、パケット信号のフォーマットを示し、図29は、移動局31(IPアドレス20、移動局番号1)から実際に固定端末機41(IPアドレス23)に宛てて送信されるパケット信号の構成を示す。このパケット信号は、移動局番号、シーケンス番号、信号種別及びIPパケットにて構成される。移動局31から送信されたパケット信号は、親基地局19だけでなく、各子基地局15、20、24でも受信される。
【0056】
親基地局19は、自局に割当てられた無線チャネルにてパケット信号を受信すると、そのパケット信号に含まれる移動局番号に対応したレコードが子基地局管理テーブルに存在しているかどうかをチェックする。パケット信号に含まれている移動局番号に対応したレコードが子基地局管理テーブルに存在する場合、親基地局19は、更に、パケット信号に含まれている移動局番号とシーケンス番号の組に対応したレコードが受信信号管理テーブル(図10参照)に存在するか否かをチェックする。この受信信号管理テーブルのレコードは、例えば、図31に示すように構成される。
【0057】
親基地局19にて受信されたパケット信号に含まれる移動局番号とシーケンス番号の組に対応したレコードが受信信号管理テーブルに存在する場合、親基地局19は、そのレコードの受信信号数と受信信号リストを更新する(S61)。即ち、受信信号数を1だけインクリメントし、受信信号リストに受信したパケット信号を追加する。一方、親基地局19にて受信されたパケット信号に含まれる移動局番号とシーケンス番号の組に対応したレコードが受信信号管理テーブルに存在しない場合、親基地局19は、受信信号管理テーブルに、当該移動局番号とシーケンス番号の組に対応した新たなレコードを追加し、そのレコードに各フィールドに値を設定する(S61)。即ち、移動局番号とシーケンス番号のフィールドに、受信したパケット信号に含まれる移動局番号とシーケンス番号が設定され、受信待ち期限のフィールドに現在時刻と受信待ち時間の加算値が設定され、受信信号数のフィールドに1が設定され、更に、受信信号リストに受信したパケット信号が設定される。
【0058】
各子基地局15、20、24は、親基地局19の無線チャネルにてパケット信号を受信すると、その受信したパケット信号に含まれている移動局番号に対応したレコードが親基地局管理テーブル(図9参照)に存在するか否かをチェックする。そのレコードが存在する場合、各基地局15、20、24は、親基地局管理テーブルから親基地局19のIPアドレス9を検索し、受信信号転送メッセージを作成する。そして、各基地局15、20、24は、作成した受信信号転送メッセージを親基地局19に送信する。上記受信信号転送メッセージは、例えば、図30に示すように構成される。図30(a)は、受信信号転送メッセージのフォーマットを示し、同図(b)は、子基地局15(IPアドレス5)から親基地局19(IPアドレス9)に実際に送信される受信信号転送メッセージの構成を示す。
【0059】
一方、各基地局15、20、24は、受信したパケット信号に含まれる移動局番号に対応したレコードが親基地局管理テーブルに存在しない場合、その受信したパケット信号を破棄する。
更に、親基地局19は、各基地局15、20、24から上記受信信号転送メッセージを受信すると、そのメッセージに含まれる移動局番号に対応したレコードが子基地局管理テーブルに存在するか否かをチェックする。そのレコードが存在しない場合、親基地局19は、受信した受信信号転送メッセージを破棄する。
【0060】
一方、その受信信号転送メッセージに含まれる移動局番号に対応したレコードが子基地局管理テーブル(図31参照)に存在する場合、更に、受信信号転送メッセージに含まれる移動局番号とシーケンス番号の組に対応したレコードが受信信号管理テーブルに存在するか否かがチェックされる。そのレコードが存在する場合、親基地局19は、そのレコードの受信信号数と受信信号リストを更新する(S62、S63、S64)。即ち、受信信号数のフィールドが1だけインクリメントされ、受信信号リストのフィールドに受信信号転送メッセージに含まれていたパケット信号が追加される。
【0061】
また、一方、受信信号転送メッセージに含まれる移動局番号とシーケンス番号の組に対応したレコードが受信信号管理テーブルに存在しない場合、親基地局19は、新たなレコードを受信信号管理テーブルに追加する(S62)。即ち、そのレコードの移動局番号とシーケンス番号の各フィールドに受信信号転送メッセージに含まれる移動局番号とシーケンス番号が設定され、受信待ち期限のフィールドに現在時刻と受信待ち時間の加算値が設定され、受信信号数のフィールドに1が設定され、更に、受信信号リストに上記受信信号転送メッセージに含まれるパケット信号が設定される。なお、上記受信待ち時間は、予め定められた値である。
【0062】
親基地局19は、上記のようにして移動局31からのパケット信号を直接受信すると共に、子基地局15、20、24から転送されるそのパケット信号を受信して、上記受信信号管理テーブルの対応するレコードの作成、更新が終了すると、子基地局管理テーブル(図25参照)の参加子基地局数と上記のように作成、更新した受信信号管理テーブルの対応するレコードにおける受信信号数を比較する。それらが一致する場合、親基地局19は、受信信号管理テーブルの当該レコードにおける受信信号リストに蓄積されたパケット信号を合成する(S65)。例えば、図32に示すように、親基地局19にて直接受信したパケット信号、各子基地局15、20、24から転送されたパケット信号のそれぞれから誤りの無い符号ブロックを探す。そして、その誤りの無い符号ブロックからもとのパケット信号が再生できる場合、親基地局19は、受信信号管理テーブルからそのレコードを削除し、その再生されたパケット信号からIPパケットを取り出して(図28、図29参照)パケット通信網100に送信する。一方、元のパケット信号が再生できない場合、IPパケットを送信することなく、そのレコードを受信信号管理テーブルから削除する。
【0063】
上記のようにして各移動局に対して結成される仮想基地局は、次のようにして解消される。
親基地局は、子基地局管理テーブルの全レコードにおける子基地局有効期限を常時チェックしており、現在時刻と一致する子基地局有効期限をもつレコードを削除する。また、各子基地局は、親基地局管理テーブルの全レコードにおける親基地局有効期限を常時チェックしており、現在時刻と一致する親基地局有効期限を持つレコードを削除する。これにより、仮想基地局を構成する親基地局と子基地局との関係が解消される。つまり、移動局が親基地局に対して仮想基地局要求信号を送信しない限り、仮想基地局は自動的に解消される。
【0064】
また、仮想基地局の再結成は、次のようにして行われる。
移動局は、親基地局から仮想基地局結成応答信号を受信すると、内部タイマに仮想基地局有効時間を設定し、その内部タイマを始動させる。そして、移動基地局は、内部タイマがタイムアウトすると、仮想基地局結成要求信号を再度親基地局に送信し、内部タイマに仮想基地局有効時間を再設定する。この仮想基地局結成要求信号を契機に、親基地局から各子基地局に仮想基地局参加メッセージが送信され、親基地局及び子基地局において仮想基地局結成の処理(図19参照)が行われる。その結果、今まで構成されていた仮想基地局が維持される。
【0065】
また、移動局は移動中に各無線チャネルのレベルを測定しており、その無線チャネルの受信レベルが所定の閾値以上となる無線チャネルに対応した基地局を仮想基地局として選択する(図14)。そして、仮想基地局となる基地局の選択が行われる毎に、最大受信レベルとなる親基地局に対して仮想基地局結成要求信号を送信することにより、仮想基地局が結成される(図19参照)。従って、移動局の移動と共に、各無線チャネルの受信レベルが変化し、その受信レベルに応じて仮想基地局を構成する基地局が動的に変化する。例えば、移動局が図33に示す位置から図34に示す位置に移動する場合、その移動に伴って、当該移動局に対する仮想基地局を構成する基地局が変化する。
【0066】
上述した例は、移動局31から固定端末機41に対するパケット信号(上り信号)の伝送の例であるが、逆に、固定端末機41から移動局31に対するパケット信号(下り信号)の伝送は、例えば、図35に示す手順に従って行われる。なお、以下の手順においても、移動局31に対して基地局19を親基地局として基地局15、20、24を子基地局とした仮想基地局が構成される場合を想定する。
【0067】
固定端末機41は、自局のIPアドレス23を送信元IPアドレスとし、移動局31のIPアドレス20を宛先IPアドレスとしたパケット信号をパケット通信網100に送信する。パケット通信網100は、各基地局と移動局との関係を常時管理しており、固定端末機41から受信したパケット信号をその宛先となる移動局31に対する親基地局19に送信する。
【0068】
図35において、上記のようにしてパケット通信網100から送信される固定端末機41からのパケット信号を親基地局19が受信すると、親基地局19は、その受信したパケットを配下の移動局31に所定の無線チャネルにて送信する。また、固定端末機41からのパケットを複製し、その複製パケットを子基地局15、20、24にパケット通信網100を介して順次転送する。
【0069】
この親基地局19からの複製パケットを受信した各子基地局15、20、24は、その複数パケットの宛先が移動局31であることを確認して、所定の無線チャネルにて送信する。
移動局31は、仮想基地局を構成する各基地局19、15、20、24からパケット信号を受信すると、それらの送信元IPアドレス、宛先IPアドレス、シーケンス番号などを確認して、固定端末機41から自局に宛てられたパケット信号であるか否かを判定する。そして、受信した各パケット信号が固定端末機41から自局に宛てられた信号であると判定されると、それらのパケット信号が、例えば、前述したような手順に従って合成される(図32参照)。その結果、移動局31は、その合成により得られたパケット信号を固定端末機41からの信号として処理する。
【0070】
上述したような移動通信システムでは、移動する移動局の位置に応じて複数の基地局で構成される仮想基地局の結成、解消が、その構成する基地局を変化させながら、繰り返し行われる(図33、図34参照)。その過程で、移動局から送信されたパケット信号は、仮想基地局を構成する複数の基地局で同時的に受信され、その各基地局で受信されたパケット信号が親基地局において合成される。そして、その合成されたパケット信号が親基地局からパケット通信網を介して他の端末(固定端末機や当該移動通信システム内の他の移動局、他の移動通信システム内の移動局等)に伝送される。また、他の端末からの移動局宛てのパケット信号は、その移動局に対して結成された仮想基地局の親基地局に転送され、親基地局から更に、複製されたパケット信号が各子基地局に伝送される。そして、その移動局宛てのパケット信号が仮想基地局を構成する親基地局及び子基地局から順次移動局に送信される。移動局では、各基地局から送信された当該移動局宛てのパケット信号が合成される。
【0071】
このように、移動局からのパケット信号が仮想基地局を構成する複数の基地局にて同時的に受信され、各基地局にて受信されたパケット信号を合成して宛先の端末に伝送するようにしたので、当該宛先端末に伝送されるパケット信号の誤り率の低減が図れる。また、移動局宛てのパケット信号も仮想基地局を構成する複数の基地局から当該移動局に送信されるので、移動局にて得られるパケット信号の誤り率の低減も図れる。
【0072】
更に、上記のように移動局と仮想基地局を構成する複数の基地局との間の通信を実現するための処理は、当該仮想基地局内にて定めらた親基地局にてなされるので、通信サービスエリア内の移動局が増大しても、複数基地局と各移動局との間の通信に関する処理が、対応する親基地局に分散される。従って、複数基地局と移動局との間の通信に関する処理が特定の通信ノードに集中することがない。
【0073】
また、各基地局が非階層的にパケット通信網にて接続されているので、移動局が広い範囲で移動しても、当該移動局と複数の基地局との通信を安定的に維持することができる。 更に、また、CDMA方式の移動通信システムを想定した場合、単一の無線チャネル( 拡散コード) にて複数の基地局が移動局から同時的にパケット信号を受信できる。従って、限られた資源となる無線チャネル( 拡散コード) を有効に利用できる。
【0074】
また、非階層的にパケット通信網にて接続された基地局のいずれかが故障したとしても、その故障した基地局が除かれた状態で、仮想基地局が結成されるので、移動通信システムの耐障害性が向上する。
なお、上述した例では、移動局とパケット通信網に接続される固定端末機との間の通信について説明したが、上述した上り信号の通信手法及び下り信号の通信手法を用いて、当該移動通信システム内の移動局間にて通信を行うこともできる。
【0075】
また、パケット信号の合成の手法は、上述したもの(図32参照)に限られず、例えば、従来から知られる軟判定情報を用いて最大比合成を行う手法であってもよい。
上記例では、各基地局の無線チャネルの受信レベルに基づいて仮想基地局を構成すべき基地局を決定しているが、仮想基地局を構成すべき基地局を決定するための手法はこれに限られない。例えば、各基地局から信号の誤り率等、移動局と基地局との間の無線伝送路の状態を表す他の情報に基づいて、移動局との間の無線伝送路がより良好となる基地局を仮想基地局として決めることもできる。
【0076】
【発明の効果】
以上、説明してきたように、請求項1乃至10記載の本願発明によれば、通信サービスエリアに設置された複数の基地局が非階層的に所定の網にて接続され、移動局が通信サービスエリア内を移動する際に、仮想基地局を構成すべき基地局に対する制限がないので、移動する移動局と複数の基地局との間の通信を安定的に実現することができる。また、通信相手との通信に係る処理(合成、伝送)を当該移動局に対応する仮想基地局内の1つの基地局が負担するので、通信サービスエリア内の移動局の数が増加しても、通信相手との通信に係る処理が当該移動通信システムの単一の通信ノードに集中することがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明の実施の一形態に係る移動通信システムの構成例を示す図である。
【図2】図1に示す移動通信システムにおける各通信ノードのIPアドレス及び各基地局にて用いられる無線チャネルを表す図である。
【図3】IPパケットのフォーマットの一例を示す図である。
【図4】移動局と基地局との間で送受信される信号のフォーマットの一例を示す図である。
【図5】基地局間で交わされるメッセージのフォーマットの一例を示す図である。
【図6】移動通信システムにおける各基地局及び移動局の構成例を示す図である。
【図7】周辺基地局管理テーブルを示す図である。
【図8】子基地局管理テーブルを示す図である。
【図9】親基地局管理テーブルを示す図である。
【図10】受信信号管理テーブルを示す図である。
【図11】無線チャネル情報管理テーブルを示す図である。
【図12】周辺基地局受信レベル管理テーブルを示す図である。
【図13】移動通信システム内における移動局と該移動局と通信を行う複数の基地局との関係の一例を示す図である。
【図14】移動局が周辺基地局からの受信レベルを測定するための手順の一例を示すシーケンス図である。
【図15】無線チャネル情報管理テーブルの状態の一例を示す図である。
【図16】周辺基地局管理テーブルの状態の一例を示す図である。
【図17】基地局から送信される報知情報信号の構成例を示す図である。
【図18】周辺基地局受信レベル管理テーブルの状態の一例を示す図である。
【図19】仮想基地局を結成するための処理手順の一例を示すシーケンス図である。
【図20】仮想基地局結成要求信号の構成例を示す図である。
【図21】子基地局管理テーブルにおけるレコードの一例を示す図である。
【図22】仮想基地局参加要求メッセージの構成例を示す図である。
【図23】親基地局管理テーブルにおけるレコードの一例を示す図である。
【図24】仮想基地局参加応答メッセージの構成例を示す図である。
【図25】更新された状態の子基地局管理テーブルにおけるレコードの一例を示す図である。
【図26】仮想基地局結成応答信号の構成例を示す図である。
【図27】仮想基地局でのパケット信号の合成順の一例を示すシーケンス図である。
【図28】IPパケットを含むパケット信号のフォーマットの一例を示す図である。
【図29】移動局から固定端末機に送信されるパケット信号の構成例を示す図である。
【図30】受信信号転送メッセージの構成例を示す図である。
【図31】受信信号管理テーブルにおけるレコードの一例を示す図である。
【図32】複数のパケット信号の合成の手法の一例を示す図である。
【図33】移動局に対して構成される仮想基地局の例を示す図である。
【図34】移動した移動局に対して再構成される仮想基地局の例を示す図である。
【図35】固定端末機から移動局宛てにパケット信号が伝送される場合の処理手順の一例を示すシーケンス図である。
【図36】従来の移動通信システムの構成例を示す図である。
【図37】従来の移動通信システムにおいて移動局と複数の基地局との間でなされる通信の状態を示す図である。
【符号の説明】
11〜29 基地局
31、32、33 移動局
41 固定端末機
100 パケット通信網
101 有線受信ユニット
102 有線送信ユニット
103 無線送信ユニット
104 無線受信ユニット
105 制御ユニット
201 無線受信ユニット
202 無線送信ユニット
203 制御ユニット

Claims (10)

  1. 通信サービスエリアに設置されると共に所定の網に接続された複数の基地局を有し、移動局と通信相手との間の通信が上記所定の網と基地局とを介して行われるようにした移動通信システムにおいて、
    上記所定の網は、非階層的に上記複数の基地局を接続し、
    移動局と各基地局との間の無線伝送路の状態に基づいて、当該移動局と情報通信を行うべき複数の基地局の集合体となる仮想基地局を決定する仮想基地局決定手段と、
    仮想基地局決定手段にて決定れた仮想基地局に属する各基地局にて受信された移動局からの情報を、該仮想基地局内の1つの基地局において合成する情報合成手段とを有し、
    該情報合成手段にて合成された情報を該1つの基地局から通信相手宛ての情報として上記所定の網に送信するようにした移動通信システム。
  2. 請求項1記載の移動通信システムにおいて、
    上記仮想基地局決定手段は、移動局との間の無線伝送路の状態が所定の状態より良好な基地局を上記仮想基地局を構成すべき基地局として決定するようにした移動無線通信システム。
  3. 請求項2記載の移動通信システムにおいて、
    上記仮想基地局決定手段にて決定された仮想基地局を構成すべき各基地局のうち、移動局との間の無線伝送路の状態が最も良好な基地局を親基地局とし、該親基地局において上記情報合成手段が上記仮想基地局に属する各基地局にて受信された移動局からの情報を合成するようにした移動通信システム。
  4. 請求項2記載の移動通信システムにおいて、
    上記仮想基地局決定手段は、移動局にて各基地局の無線チャネルの受信レベルを無線伝送路の状態として測定する受信レベル測定手段を有し、
    該受信レベル測定手段にて測定された受信レベルのうち所定レベル以上の受信レベルとなる無線チャネルの基地局を仮想基地局として構成されるべき基地局として決定するするようにした移動通信システム。
  5. 請求項4記載の移動通信システムにおいて、
    上記仮想基地局決定手段にて決定された仮想基地局を構成すべき各基地局のうち、受信レベルの最大となる無線チャネルの基地局を親基地局とし、該親基地局において上記情報合成手段が上記仮想基地局に属する各基地局にて受信された移動局からの情報を合成するようにした移動通信システム。
  6. 請求項1乃至5いずれか記載の移動通信システムにおいて、
    上記仮想基地局決定手段にて仮想基地局を構成すべき基地局として決定された複数の基地局は、同一の無線チャネルにて移動局と通信を行うようにした移動通信システム。
  7. 請求項1乃至6いずれか記載の移動通信システムにおいて、
    上記所定の網は、パケット通信網となる移動通信システム。
  8. 請求項1乃至7いずれか記載の移動通信システムにおいて、
    上記仮想基地局決定手段にて決定された仮想基地局としての各基地局の関係を所定時間後に解消する仮想基地局解消手段を有する移動通信システム。
  9. 請求項8記載の移動通信システムにおいて、
    上記仮想基地局解消手段は、仮想基地局に属する上記1つの基地局において当該仮想基地局に属する他の基地局を管理する第一の管理手段と、
    該仮想基地局に属する当該他の基地局のそれぞれにおいて上記1つの基地局を管理する第二の管理手段とを有し、
    上記仮想基地局決定手段にて仮想基地局を構成すべき基地局が決定されてから所定時間後に上記第一の管理手段と上記第二の管理手段での管理を終了させることにより、上記仮想基地局としての各基地局の関係を解消するようにした移動通信システム。
  10. 請求項1乃至9いずれか記載の移動通信システムにおいて、通信相手から移動局宛ての情報を上記仮想基地局を構成する基地局のうちの1つの基地局が受信したときに、該1つの基地局にてその受信した情報を複製して当該仮想基地局に属する他の基地局に上記所定の網を介して転送する複製情報転送手段を有し、
    上記1つの基地局及び、複製された情報を受信した当該他の基地局それぞれから上記移動局に対して情報を送信するようにした移動通信システム。
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