JP3526703B2 - 動圧軸受装置 - Google Patents
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Description
生させ、その動圧により軸と外筒とを相対的に回転自在
に支持するように構成した動圧軸受装置に関する。
に高速回転に対応し得るようにオイル等の潤滑剤の動圧
を利用した動圧軸受装置が種々検討され提案されてい
る。この動圧軸受装置においては、軸側の動圧面と、軸
の外周側に所定の隙間を介して嵌合された外筒側の動圧
面とが周状に対向配置されているとともに、これら両対
向動圧面のうちの少なくとも一方側に動圧発生用溝が形
成されており、上記軸と外筒との両対向面間に介在され
たオイル等の所定の潤滑剤が、回転時に動圧発生用溝の
ポンピング作用により昇圧され、当該潤滑剤の動圧によ
って両部材が相対的に回転可能に支持されるようになっ
ている。
潤滑剤(以下、単に潤滑剤という。)を軸受部内に有し
ているため、潤滑剤の外部漏れを防止するためのシール
構造が必要となる。その潤滑剤のシール構造として毛細
管力を利用したものが、例えば、特開昭58−5032
1号公報、特開昭63−167111号公報、米国特許
5112142号公報等において提案されている。これ
らに開示された毛細管力シール構造では、軸受部の外側
出口部分に、軸と外筒との間の隙間を外側に向って連続
的に拡大するようにシール傾斜壁面が設けられている。
た従来の各動圧軸受構造には以下のような問題がある。
まず、特開昭58−50321号公報及び米国特許51
12142号公報記載の装置では、外筒側に傾斜壁面が
設けられているため、特に、高速回転時等のように遠心
力が強く働いた場合には、シール傾斜壁面上にある潤滑
剤が当該シール傾斜壁面に沿って吹き飛ばされてしま
い、シール機能を果たさなくなることがある。特開昭5
8−50321号公報には、フッ素系の樹脂等からなる
撥油剤をシール傾斜面に塗布することが開示されている
が、傾斜面に対して位置精度良く塗布を行うことは困難
であり、また密着力が弱いため耐久性に問題があり、さ
らに高価になってしまう。
号公報記載の装置のように、軸側にシール傾斜面を設け
るようにすれば、上述した遠心力対策とはなるが、一般
に軸は、焼き入れSUS等のような硬質材料から形成さ
れるため、軸側にシール傾斜面を形成することは容易で
なく、また最近のように小径の軸を用いる場合には、軸
の剛性不足が顕著となって採用することができないこと
もある。
で、潤滑剤漏れを良好に防止することができるようにし
た動圧軸受装置を提供することを目的とする。
るために、請求項1記載の発明では、軸の外周側に所定
の隙間を介して外筒が嵌合され、これら軸と外筒との間
の隙間に潤滑剤が介在されて動圧軸受部が形成され、当
該動圧軸受部により上記軸と外筒とが相対的に回転可能
に支持される動圧軸受装置において、上記軸と外筒との
間の隙間における前記動圧軸受部の軸方向外側部位に、
上記隙間を軸方向外側に向って連続的に拡大してなる毛
細管シール部が設けられているとともに、前記動圧軸受
部から毛細管シール部にかけて潤滑剤が連続的に充填さ
れて該潤滑剤の気液界面が上記毛細管シール部内に形成
され、かつ、前記隙間を画成する軸及び外筒の少なくと
も一方側における上記気液界面より軸方向外側の部位
に、撥油機能を有する第1の角部が全周に設けられてい
るとともに、その第1の角部の軸方向外側に撥油機能を
有する第2の角部が全周に設けられたものであって、前
記第1の角部の内角をθ(e) 、前記軸の外周面と第1の
角部との間における半径方向の距離をa、前記軸の半径
をr、前記軸と外筒との相対回転角速度をωとしたと
き、上記第1の角部が、(50/a2 )・(1+ cos
θ(e) )>r・ω2を満足するように形成されている。
毛細管シール部に設けられた第1および第2の角部の表
面張力作用によって、毛細管シール部の傾斜壁面に沿っ
て流出しようとする潤滑剤が角部において保持され、毛
細管シール部のシール機能が良好に維持されるようにな
っている。また、このように第1の角部に対して第2の
角部が併用されることによって、第1の角部を潤滑剤が
通過してしまった場合でも、第2の角部で潤滑剤の漏れ
が防止されるようになっている。
は次式で表される。 θ=θ(f) +(180°−θ(e) ) ここでθ(f) は、平面での潤滑剤と、角部を構成する部
材との接触角であり、θ(e) は、角部の内角である。θ
(f) は、停止時の強い毛細管力を得るために小さい方が
好ましく、従って液面は大きな曲率の凹形状となること
が好ましい。一方、一般に用いられる金属材料は、潤滑
剤に対して良く濡れるため、上式中における第1項θ
(f) は、第2項(180°−θ(e) )に比して小さくな
り計算上0として差し支えない。また、θ(e) は、理想
的なエッジを有する角部と工業的に実際に得られる角部
との間に差異があるものの、種々の加工条件を試した結
果、バリ取り工程を経て若干の丸みを帯びた角部であっ
ても、実用上支障がないことが確認された。むしろ、シ
ャープなエッジを得ようとすると、円周上の一部にチッ
ピングを起こし、そこから油漏れを生じるおそれがあ
る。
ば、簡単な構造で見掛け上の接触角を上げることがで
き、遠心力による油膜の拡散が防止され、上述したよう
な撥油剤を塗布する手段における、コスト、信頼性、作
業性等の問題点は全て解消される。
求項1記載の第1および第2の角部は、軸及び外筒の両
側にそれぞれ設けられ、これら両角部どうしが半径方向
に対向するように設けられている。
が対向するように設けられていれば、特に停止時におけ
る潤滑剤の拡散等による滲み出しが防止されるととも
に、同じく停止時における強い衝撃力や潤滑剤の膨張等
により液面が外側に移動してきた場合に対しても有効な
漏れ防止が可能となる。
記載の第1および第2の角部の軸方向外側に、潤滑剤を
捕獲するための吸収布が配置されている。
るための吸収布が配置されていれば、万一の場合であっ
ても、潤滑剤の最終捕獲が吸収布でおこなわれるため、
潤滑剤の外部飛散が確実になくなる。
1記載の第1および第2の角部と、軸の外周面との間の
半径方向の距離aが、0.5mm以下に設定されてい
る。
求項2記載の軸側の第1および第2の角部が、軸の外周
部に凹設された環状溝の開口部の縁部から形成されてい
る。
記載の軸側の第1の角部が、環状溝の開口部における一
方側の縁部から形成されているとともに、第2の角部
が、上記環状溝における開口部における他方側の縁部か
ら形成されている。
固定型のHDDスピンドルモータに適用した実施形態に
ついて図面により詳細に説明する。まず、図1に示めさ
れたHDDスピンドルモータの全体構造を説明すると、
このHDDスピンドルモータは、固定部材としてのステ
ータ組1と、このステータ組1に対して図示上側から組
み付けられた回転部材としてのロータ組2とから構成さ
れている。このうちステータ組1は、図示省略した固定
基台側にネジ止めされるフレーム11を有しているとと
もに、このフレーム11の略中央部分に立設された固定
軸12が、図示上方に向かって延びている。この固定軸
12の先端部(図示上端部)は、図示を省略した固定基
台に対してネジ止めされる。
支持ホルダー13を有しており、この支持ホルダー13
の外周にステータコア14が嵌着されており、当該ステ
ータコア14の突極部に対して巻線15が巻回されてい
る。
所定の記録媒体を支持するためのハブ21を有してお
り、このハブ21は、当該ハブ21の中心部分に配置さ
れた一対のラジアル動圧軸受部22a,22bを介して
上記固定軸12の外周側に回転自在に支承されている。
録媒体を外周部に装着する略円筒形状の胴部21aを有
しているとともに、この胴部21aの内周側に、バック
ヨーク21bを介して駆動マグネット21cが環状に装
着されている。この駆動マグネット21cは、前述した
ステータコア14の外周端面に対して環状に対向するよ
うに近接配置されている。
a,22bは、ハブ21の内周側に固定された外筒とし
ての軸受スリーブ22の内周面と、固定軸12の外周面
との間の隙間に形成されており、軸方向に所定間隔離し
て並列するように配置されている。これらの各ラジアル
動圧軸受部22a,22bを構成する部位における軸受
スリーブ22の内周面と固定軸12の外周面とは、数μ
mの隙間を介して対向配置されている。
a,22bを構成する軸受スリーブ22と固定軸12と
の間の隙間内には、オイルや磁性流体等からなる所定の
潤滑剤(図示省略)が介在されているとともに、軸受ス
リーブ22と固定軸12との両対向面のうち、少なくと
も一方側には、図示されているようなヘリンボーン形状
のラジアル動圧発生用溝23a,23bが環状に並列す
るように凹設されており、前記ハブ21の回転時に、ラ
ジアル動圧発生用溝23a,23bのポンピング作用に
よって潤滑剤が昇圧されて動圧が生じ、この潤滑剤に生
じさせられた動圧によって、ハブ21がラジアル方向に
軸支持されるように構成されている。
当該潤滑剤の寿命と良好な軸受特性とを両立し得るよう
に、トリメチロールプロパン(TMP)又はペンタエリ
スリトール(PE)と、炭素数5〜18の直鎖又は分岐
脂肪酸とをエステル化した構造のオイルが使用されてお
り、その中でも、特に、蒸発率が10-7g/h・cm2(at
40 ℃)以下で、粘度が30cP(at 40 ℃)以下のオ
イルが用いられている。
するにあたっては、組立が完了したモータを一旦真空室
内に入れ、その真空引きした状態で毛細管力又は外部大
気圧を利用して行う。このようにすれば、含有空気率が
低い状態で軸受内部全体に潤滑剤を満たすことが可能と
なる。
端側)の途中部分には、2つのスラスト動圧軸受部16
a,16bを構成するリング状のスラスト板16が固着
されている。このスラスト板16により構成される2つ
のスラスト動圧軸受部16a,16bは、図示上側に配
置されたラジアル動圧軸受部22aの図示上側に隣接す
るように配置されている。
側は、軸受スリーブ22の図示上側端面に対面するよう
に配置されているとともに、スラスト板16の図示上端
面は、前記ハブ21の中央部分にネジ止めされたスラス
ト押え板25の図示下端面に対面するように配置されて
おり、当該スラスト動圧軸受部16a,16bを構成す
るスラスト板16の軸方向両端面には、図示を省略した
ヘリンボーン形状のスラスト動圧発生用溝がそれぞれ環
状に形成されている。
22との対向面どうしの間、及びスラスト板16とスラ
スト押え板25と対向面どうし間における各隙間部分に
は、上述したラジアル動圧軸受部22a,22b内に充
填された潤滑剤が連続するようにして充填されており、
上記ハブ21の回転時に、スラスト動圧発生用溝のポン
ピング作用によって潤滑剤が昇圧されて動圧が生じ、こ
の潤滑剤に生じさせられた動圧によってハブ21がスラ
スト方向に軸支持されるように構成されている。
述した各動圧軸受部の組付後にハブ21に対して接合さ
れるが、前記潤滑剤の充填部分に臨む接合部は、このス
ラスト押え板25による接合部のみであって、潤滑剤の
充填部分に対するその他の部位は一体に成形されて密閉
性を確保している。
合部は、潤滑剤の注入前に、接着剤によって完全密閉構
造となるように接合され、これによって潤滑剤に対する
密閉性が良好に確保されている。この接合部に充填され
る接着剤は、当該接合部に形成された環状案内溝(図示
省略)の毛細管力によって、接合部全周にわたって切れ
目なく連続的に充填されるようになっており、これによ
って密閉構造が完全化される。
リーブ22には、外側(図示上側及び下側)から吸収布
26を介して薄板状のストッパー板27が設けられてお
り、これら吸収布26及びストッパー板27によって、
最悪の場合でも、潤滑剤の外部飛散が防止されるように
なっている。
a,22b、及び2つのスラスト動圧軸受部16a,1
6bは、軸方向に延びる一連の軸受空間を画成するよう
に並設されており、これら4つの動圧軸受部16a,1
6b,22a,22bを含む軸受空間の軸方向両端部
分、すなわち最外端部分には、前記固定軸12と回転側
の部材22b,25との隙間を狭小にしてなる2箇所の
毛細管シール部31a,31bが、前記4つの動圧軸受
部16a,16b,22a,22bを軸方向両側から挟
むように設けられている。
のうち、図示下側の毛細管シール部31bは、軸受スリ
ーブ22の軸方向外端部分(図示下端部分)に設けられ
ており、より具体的には、当該軸受スリーブ22の図示
下端部分の内周壁と、前記固定軸12の外周面との隙間
を狭小にすることによって形成されている。従って、こ
の図示下側の毛細管シール部31bを構成する狭小隙間
は、図示下側のラジアル動圧軸受部22bを構成する隙
間に連通されているとともに、この毛細管シール部31
bとラジアル動圧軸受部22bとの連通部分には、隙間
を拡大するような凹部は設けられていない。
は、スラスト動圧軸受部16bを構成するスラスト押え
板25と固定軸12との間の隙間により形成されてお
り、前述したスラスト押え板25の内周壁と固定軸12
の外周面との間の隙間を狭小にすることによって形成さ
れている。
1a,31bは、当該毛細管シール部31a,31bを
構成する狭小隙間が図示上下の外方に開口するように軸
方向に沿って設けられている。そして、これらの各毛細
管シール部31a,31bの狭小隙間を構成するように
固定軸12側に各々対面しているスラスト押え板25の
内周壁、及び軸受スリーブ22の図示下側の内周壁は、
軸方向外方に向かって上記隙間の寸法を連続的に拡大す
るように傾斜壁Aに形成されており、この連続的に拡大
している狭小隙間の寸法が、20μmから300μmと
なっている部位を毛細管シール部31a,31bとして
いる。
a,16b,22a,22bを含む上記2箇所の毛細管
シール部31a,31bどうしの間の軸受空間部分に
は、潤滑剤が連続して充填されているが、潤滑剤の図示
上下端における各液面、すなわち気液界面の位置が、各
毛細管シール部31a,31bの内部所定位置となるよ
うに設定されている。
細管シール部31aにおいては、図示上側のラジアル動
圧軸受部22aから毛細管シール部31aにかけて潤滑
剤32が連続的に充填されており、該潤滑剤32の気液
界面32aが上記毛細管シール部31aの内部途中位置
に配置されている。
画成しているスラスト押え板25の傾斜壁Aには、撥油
機能を有する第1の角部25aが全周にわたって設けら
れている。この第1の角部25aは、上述した潤滑剤3
2の気液界面32aより外側部位、すなわち図示上側の
部位に設けられているとともに、当該第1の角部25a
の内角θ(e) は、90°ないし160°の範囲内に設定
されている。
(e) (deg) に対して、固定軸12の外周面と、第1の角
部25aとの間の半径方向における距離をa(mm)とする
とともに、固定軸12の半径をr(mm)とし、固定軸12
に対するロータ組2の回転角速度をω(rad/sec) とした
とき、上記第1の角部25aは、 50/a2 ・(1+ cosθ(e) )>r・ω2 ・・・ を満足するように形成されている。
基づいた演算により導き出されたものであって、上記第
1の角部25aの表面張力により潤滑剤32を支える力
と、潤滑剤32に加わる遠心力とを関連付けたものであ
る。すなわち、第1の角部25aで潤滑剤32を表面張
力によって支えている状態から、毛細管シール部31a
内の潤滑剤32に回転による遠心力が加わると、その遠
心力の大きさに比例して潤滑剤32は、第1の角部25
aにおいて盛り上がった形状となる。そして、その極限
状態(盛り上がりの最大状態)は、第1の角部25aに
おける盛り上がり厚さが角部25aと固定軸12との隙
間寸法に一致する状態である。従って、この極限状態に
おいて、第1の角部25aで潤滑剤32を支えているよ
う設定すれば潤滑剤32の外部漏れは完全に防止される
こととなる。
は、潤滑剤32の表面張力γと接触角θとの積で表すこ
とができ、上記第1の角部25aの内角をθ(e)(≒1
80°−θ)としたとき、(2γ/a)(cosθ+ cos
θ(e))となる。また上述した極限状態での潤滑剤32
に加わる遠心力は、回転角速度をω、軸径r、隙間寸法
a、潤滑剤の比重ρの関数で表すことができる(ρ・a
・r・ω 2 )。このとき、一般的な潤滑剤の表面張力γ
は、およそ25mNないし30mN/mの範囲にあるこ
とから、安全をみて低い側の値25mN/mを代表値と
して考えれば、得られた結果はほとんど全ての潤滑剤に
適用することができることとなる。比重ρについても同
様であって、多くの潤滑剤が0.8ないし1.0の値を
とることから1.0で代表させることができる。
aの内角θ(e) (≒180°−θ)及び隙間aと、軸受
条件r及びω2 との関係を調べ、実験及び演算によって
図3に示されているような線図を求め、これから上述し
た上式を導き出した。つまり図3は、上述した極限状
態におけるロータの回転数(横軸:rpm )と、第1の角
部25aの内角θ(e) (縦軸:deg )との関係を、軸径
rをパラメータとして求めたものであって、例えば、隙
間aを0.1mmとし、第1の角部25aの内角θ(e)
を90°程度に設定したとすれば、軸径rが4mm、回
転数ωが15000rpmの軸受条件でも油漏れは起こ
さないことが判る。なお、本実施形態においては、第1
の角部25aと固定軸12の外周面との間の半径方向の
距離aは、0.5mm以下に設定されている。
を画成している軸受スリーブ22の下端部分にも、同様
な構成を有する第1の角部25bが、潤滑剤の気液界面
より外側部位、すなわち図示下側の部位に設けられてい
る。
は、他の傾斜溝A’を介してさらに別の第2の角部25
c,25dが全周に設けられている。この第2の角部2
5c,25dは前述した式を満足するものではないが、
万一、上述した第1の角部25a,25bによって潤滑
剤を持ちこたえられなかった場合でも、傾斜壁面A’を
伝わって来た潤滑剤が、第2の角部25c,25dの表
面張力によって外部漏れが防止されるように構成されて
いる。
角部25aの内角θ(e) は、隙間aや軸径rの設定によ
って多くの場合90°以上の鈍角に設定することがで
き、これによって上記第2の角部25c,25dを設け
ることができる。第1の角部25aの内角θ(e) が正し
く設定されれば、潤滑剤の外部漏れは本来なら起きるこ
とはないが、潤滑剤の初期注入量が適正でなかった場合
や、本来のスペックを越えた大きな衝撃力が加わった場
合等には外部漏れを生じるおそれがある。特に、ハード
ディスクの駆動用に用いる場合には、微量の潤滑剤であ
ってもモータ外に漏れると、ディスクを汚すこととなっ
て動作不能招来することがあるため、たとえスペック以
上の外力が加わった場合であっても、このような第2の
角部25c,25dを設けることによって潤滑剤の外部
漏れを防止する構造とすることが好ましい。
5dは設けられているが、この第2の角部25c,25
dに漏れ出す潤滑剤は少量と考えられるため、この第2
の角部25c,25dには強い制約条件を与える必要は
なく、従って、第2の角部25c,25dの内角は比較
的大きな角度に設定することができる。
わちスラスト押え板25及び軸受スリーブ22側に設け
られた第1の角部25a,25b及び第2の角部25
c,25dに加えて、固定軸12側にも第1の角部12
a,12b及び第2の角部12c,12dが設けられて
いる。これら固定軸12側の第1の角部12a,12b
及び第2の角部12c,12dは、固定軸12の外周部
に凹設された環状溝12eの開口縁により形成されてい
る。
12a,12b及び第2の角部12c,12dは、スラ
スト押え板25及び軸受スリーブ22側に設けられた第
1の角部25a,25b及び第2の角部25c,25d
のそれぞれと略同一の高さ位置に配置されており、これ
によって各々が半径方向に対向するようにして設けられ
ている。
管シール部31a,31bに設けられた第1の角部25
a,25bの表面張力作用によって、毛細管シール部3
1a,31bの傾斜壁面に沿って流出しようとする潤滑
剤32が上記第1の角部25a,25bにおいて保持さ
れ、毛細管シール部31a,31bのシール機能が良好
に維持されるようになっている。
いて、シール部を構成する傾斜面に角部と類似のものが
記載されているものがある。例えば、特開昭58−50
321号公報には、シール部の傾斜面に隣接して小溝が
形成されており、その小溝の縁部によって傾斜面の端部
に角状部位が形成されている。しかしながら当該公報中
の説明によれば、この小溝は、潤滑剤の溜り部を構成す
るものであって、傾斜面への潤滑剤供給機能を有してい
る。従って、この小溝における角状縁部は、本願発明の
角部のように潤滑剤流れを阻止するものではなく、しか
も式で表した内角θ(e) を満足するものでもない。
に設けられた第1の角部25a,25bは、前述した式
を満足するように設定されることによって、容易かつ
適正に形成される。
部25a,25bの外側に第2の角部25c,25dが
配置されていれば、第1の角部25a,25bを潤滑剤
32が通過してしまった場合でも、第2の角部25c,
25dで潤滑剤の漏れが確実に防止される。
角部25a,25b及び第2の角部25c,25dに対
向するようにして、固定軸12側にも、第1の角部12
a,12b及び第2の角部12c,12dが設けられて
いるので、特に停止時における潤滑剤32の拡散等によ
る滲み出しが防止されるとともに、同じく停止時におけ
る強い衝撃力や潤滑剤の膨張等により潤滑剤32の液面
が外側に移動してきた場合に対しても有効な漏れ防止が
可能となる。この場合、上記第2の角部12c,12d
は、環状溝12eの底部と軸表面の2個所に形成されて
いるため、これら2個所の角部によって、第1の角部を
通過してしまった潤滑剤の漏れが、まず底部側の角部に
より防止された後、さらに軸表面側の角部により良好に
防止されるようになっている。
ジを備えるように形成することは容易ではない。潤滑剤
の接触角を高めるためには角部の仕上げはシャープな方
が好ましいが、図4(a)に示されているようなバリ4
1や、欠け等があると、その部位に強い毛細管力が作用
してかえって逆効果になる。安定的に量産でき、かつ効
果的な接触角を得ることができる加工例としては以下の
ようなものが考えられる。
合には、バリ取りが不可欠となる。この場合のバリ取り
手段としては、バレル、面取りなどがあるが、図4
(b)に示されているように面取り42を施した場合に
は、見掛けの角度θ1 に対して有効角度θ2 は小さくな
ってしまう。また、図4(c)に示されているようにバ
レル処理43を施した場合には、角部は丸みを帯びてし
まい、有効角度の数値化が難しくなる。この場合には、
角部を構成する面の粗度にも影響を受けるが、曲率半径
が0.1mm程度なら、見掛けの角度との差異は小さ
く、実用上問題はないことが確認された。また、射出成
形、鍛造など金型を用いて成形する場合にも同様に、金
型側の曲率半径を0.1mm以下に仕上げれば良い。
25a,25b,25c,25d,12a,12b,1
2c,12dに加えて、潤滑剤32を最終捕獲するため
の吸収布26が配置されているので、万一の場合であっ
ても、潤滑剤32の最終捕獲が吸収布26でおこなわれ
るため、潤滑剤32の外部飛散が確実になくなる。
外筒側すなわちスラスト押え板25の傾斜壁Bに環状溝
25eが形成されており、この環状溝25eの両開口縁
によって、第1の角部25f及び第2の角部25gが形
成されている。また、前述した実施形態と同様に、固定
軸12側にも環状溝12eが形成されており、その環状
溝12eの両開口縁によって第1の角部12a及び第2
の角部12cが形成されており、これらの各第1の角部
25f,12a及び第2の角部25g,12cは、略同
一の高さにおいて半径方向に対向するように配置されて
いる。このような実施形態装置においても、上記実施形
態と同様な作用・効果を得ることができ、このとき第2
の角部25g,12cは、図2において既に説明した作
用を有する。
ラスト軸受に対して本発明を適用したものであって、軸
42に固定されたスラスト板45が、スラスト受板46
に対して軸方向に対面するように配置されており、これ
ら両部材45,46の隙間にスラスト動圧軸受部が形成
されている。このスラスト動圧軸受部を構成する部位に
おけるスラスト板45とスラスト受板46とは、数μm
の隙間を介して対向配置されており、当該隙間内には、
オイルや磁性流体等からなる所定の潤滑剤52が介在さ
れているとともに、スラスト板45とスラスト受板46
との両対向面のうち、少なくとも一方側には、所定形状
のスラスト動圧発生用溝が環状に凹設されている。そし
て、回転時にスラスト動圧発生用溝のポンピング作用に
よって潤滑剤52が昇圧されて動圧が生じ、この潤滑剤
に生じさせられた動圧によってスラスト方向の軸支持が
行われるように構成されている。
最外端部分には、前記スラスト板45とスラスト受板4
6との隙間を狭小にしてなる毛細管シール部41aが設
けられている。この毛細管シール部41aを構成してい
るスラスト板45は、傾斜壁Cを有しており、この傾斜
壁Cによって、上記隙間の寸法が半径方向外方に向かっ
てを連続的に拡大されている。潤滑剤52の液面、すな
わち気液界面は52aは、上記毛細管シール部41aの
内部所定位置に設定されている。
しているスラスト受板46の壁面には、環状溝46aが
凹設されており、この環状溝46aの両開口縁により、
第1の角部46b及び第2の角部46cが形成されてい
る。
シール部41aに設けられた第1の角部46b及び第2
の角部46cの表面張力作用によって、毛細管シール部
41aの傾斜壁面に沿って流出しようとする潤滑剤52
が上記第1の角部46a及び第2の角部46cにおいて
保持され、毛細管シール部41aのシール機能が良好に
維持されるようになっている。
施形態を具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に
限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で
種々変形可能であるというのはいうまでもない。
部の隙間を画成する軸及び外筒の両側に角部を設けてい
るが、いずれか一方側にのみ設けることも可能である。
定型のモータに対して本発明を適用したものであるが、
軸回転型のモータに対しても本発明は同様に適用するこ
とができる。
タ以外に用いられる動圧軸受装置に対しても同様に適用
することができる。
の隙間を画成する軸及び外筒の少なくとも一方側に、撥
油機能を有する第1および第2の角部を潤滑剤の気液界
面より外側部位に設け、この第1および第2の角部の表
面張力作用によって毛細管シール部の傾斜壁面に沿って
流出しようとする潤滑剤を角部において保持し、毛細管
シール部のシール機能を良好に維持するように構成した
ものであるから、簡易で低コストな構造で、潤滑剤漏れ
を良好に防止しつつ長寿命化を図ることができ、しかも
動圧軸受装置の適用性を拡大することができ、動圧軸受
装置の信頼性を飛躍的に向上させることができる。さら
に、第1の角部の外側に、撥油作用を有する第2の角部
を併用していることから、第1の角部を潤滑剤が通過し
てしまった場合でも、第2の角部で潤滑剤の漏れが確実
に防止され、上述した効果をさらに向上させることがで
きる。
に、軸及び外筒の両側に第1および第2の角部を対向す
るように設ければ、特に停止時における潤滑剤の拡散等
による滲み出しを防止するとともに、同じく停止時にお
ける強い衝撃力や潤滑剤の膨張等により液面が外側に移
動してきた場合に対しても有効な漏れ防止が可能とな
り、上述した請求項1にかかる発明の効果をさらに向上
させることができる。
した第1および第2の角部に加えて、潤滑剤を捕獲する
ための吸収布が配置されていれば、万一の場合であって
も、潤滑剤の最終捕獲が吸収布でおこなわれるため、潤
滑剤の外部飛散が確実になくなる。
えたHDDスピンドルモータの一例を表した横断面説明
図である。
ある。
滑剤に加わる遠心力とを関連付けて、角部の内角θ(e)
と軸受条件との関係を調べた実験結果を表した線図であ
る。
る。
要部を表した図2相当の横断面説明図である。
装置の要部を表した図2相当の横断面説明図である。
1の角部 12c,12d,25c,25d,25g,46c 第
2の角部 26 吸収布 31a,31b,41a 毛細管シール部 32,52 潤滑剤 32a,52a 気液界面
Claims (6)
- 【請求項1】 軸の外周側に所定の隙間を介して外筒が
嵌合され、これら軸と外筒との間の隙間に潤滑剤が介在
されて動圧軸受部が形成され、当該動圧軸受部により上
記軸と外筒とが相対的に回転可能に支持される動圧軸受
装置において、 上記軸と外筒との間の隙間における前記動圧軸受部の軸
方向外側部位に、上記隙間を軸方向外側に向って連続的
に拡大してなる毛細管シール部が設けられているととも
に、 前記動圧軸受部から毛細管シール部にかけて潤滑剤が連
続的に充填されて該潤滑剤の気液界面が上記毛細管シー
ル部内に形成され、かつ、 前記隙間を画成する軸及び外筒の少なくとも一方側にお
ける上記気液界面より軸方向外側の部位に、撥油機能を
有する第1の角部が全周に設けられているとともに、そ
の第1の角部の軸方向外側に撥油機能を有する第2の角
部が全周に設けられたものであって、 前記第1の角部の内角をθ(e) 、前記軸の外周面と第1
の角部との間における半径方向の距離をa、前記軸の半
径をr、前記軸と外筒との相対回転角速度をωとしたと
き、上記第1の角部が、 (50/a2 )・(1+ cosθ(e) )>r・ω2 を満足するように形成されていることを特徴とする動圧
軸受装置。 - 【請求項2】 請求項1記載の第1および第2の角部
は、軸及び外筒の両側にそれぞれ設けられ、これら両角
部どうしが半径方向に対向するように設けられているこ
とを特徴とする動圧軸受装置。 - 【請求項3】 請求項1記載の第1および第2の角部の
軸方向外側に、潤滑剤を捕獲するための吸収布が配置さ
れていることを特徴とする動圧軸受装置。 - 【請求項4】 請求項1記載の第1および第2の角部
と、軸の外周面との間の半径方向の距離aが、0.5m
m以下に設定されていることを特徴とする動圧軸受装
置。 - 【請求項5】 請求項2記載の軸側の第1および第2の
角部が、軸の外周部に凹設された環状溝の開口部の縁部
から形成されていることを特徴とする動圧軸受装置。 - 【請求項6】 請求項5記載の軸側の第1の角部が、環
状溝の開口部における一方側の縁部から形成されている
とともに、第2の角部が、上記環状溝における開口部に
おける他方側の縁部から形成されていることを特徴とす
る動圧軸受装置。
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