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JP3599876B2 - 蒸気乾燥方法 - Google Patents

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JP3599876B2
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  • Cleaning By Liquid Or Steam (AREA)
  • Cleaning And De-Greasing Of Metallic Materials By Chemical Methods (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、機械部品、電気電子部品、光学素子、半導体部品およびそれらを加工する際に用いられる治工具類などの精密部品から、加工油、加工屑、グリース、ワックス、フラックス、ピッチおよび手脂などの汚れ成分を洗浄剤によって洗浄した後、この洗浄剤を乾燥する際に使用する乾燥方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、機械部品はトリクロロエタン、トリクロロエチレン、メチレンクロライドなどの塩素系溶剤、あるいはケロシン、ベンゼン、キシレンなどの炭化水素系溶剤を用いて浸漬、超音波、バレルなどの方法で汚れ成分を除去してきた。一方、電気電子部品および光学素子は主にトリクロロエタン、フロン113などの塩素系溶剤あるいはフロン系溶剤を用いて汚れ成分を除去してきた。
【0003】
しかし、近年の地球環境問題あるいは安全指向から、これらの洗浄剤に替えた洗浄剤が使用されている。例えば、機械部品の洗浄には、水系洗浄剤やグリコールエーテル類を主成分とする洗浄剤など様々な種類の洗浄剤が用いられている。一方、電気電子部品、特に電気実装基板用としては上述したグリコールエーテル類あるいはリモネンなどのテルペン類を主成分とする洗浄剤などが使用されている。さらに、特開平5−171481号公報には炭化水素系有機溶剤を減圧下で加熱噴霧する洗浄方法が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところでトリクロロエタン、フロンなどの塩素系およびフロン系溶剤は、オゾン層破壊の問題からモントリオール議定書締結により1996年以降の使用ができなくなる。また、トリクロロエチレン、メチレンクロライドも地下汚染の問題があり、環境汚染の観点からその使用は好ましくない。
【0005】
ケロシン、ベンゼンなどの炭化水素系溶剤は、洗浄性が優れ、乾燥性にも優れているが、有機溶剤予防規則における規制の対象であり、発癌性が大きく、人体安全性に問題を有していると共に、臭いが強い問題がある。
【0006】
グリコールエーテル類を主成分とする洗浄剤は、洗浄性が優れるのにつれて臭いが強くなる問題を有していると共に、多くのものが乾燥性に劣る問題点を有している。又、リモネンなどのテルペン類を主成分とする洗浄剤は安全性および洗浄性に優れるが、臭いが強いという問題点を有しており、しかも天然物由来であるため品質安定性に欠け、しかも高価になる問題点を有している。
【0007】
一方、水系洗浄剤は安全性およびコストに優れているが、この洗浄剤を用いる洗浄方法ではリンス水の処理方法、乾燥方法を考慮すると共に、被洗浄物が金属の場合には、錆の発生を考慮する必要があり、設備的及び適用できる被洗浄物の種類に大きな制約があることが問題点になっている。
【0008】
特開平5−171481号公報に記載されている炭化水素系溶剤噴霧方法は、洗浄した切削油等が混入した溶剤を同時に噴霧することになり、被洗浄物表面に切削油成分が残留し、洗浄品質に影響を及ぼす。これを防ぐためには定期的な液交換が必要となり、ランニングコストが増大する問題を有している。
【0009】
本発明はこのような問題点を考慮してなされたものであり、洗浄後の乾燥について、環境汚染がなく、安価に、さらには高品質に乾燥できる蒸気乾燥方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、95%留出温度が初留点から5℃以内で、かつ99%留出温度が初留点から10℃以内である炭素数8以上12以下の飽和炭化水素の蒸気により物品を乾燥させることを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、処理室に物品を搬入した後、処理室内を減圧する工程と、95%留出温度が初留点から5℃以内で、かつ99%留出温度が初留点から10℃以内である炭素数8以上12以下の飽和炭化水素の蒸気を前記処理室内に供給する工程と、この処理室内を再度減圧する工程と、処理室内を大気圧とする工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
この場合において、再度の減圧工程を複数回繰り返しても良い。
【0013】
以上の本発明に使用する飽和炭化水素は、95%留出温度が初留点から5℃以内で、かつ99%留出温度が初留点から10℃以内である炭素数8以上12以下の高純度の炭化水素である。本発明はこの炭化水素を加熱し蒸気化した蒸気を被洗浄物に当てて乾燥に必要な熱量を与えるものである。
【0014】
一般の炭化水素系洗浄剤は、石油留分を抽出、蒸留することで製造しているため、蒸留される温度範囲が20〜30℃程度あり、乾燥させた場合も高沸点留分が乾燥にしくく、被洗浄物表面に残留することがある。また、加熱して蒸気化させる場合も低沸点留分は積極的に蒸気化するが、高沸点留分は残留し、経時変化で液組成が変化する。これに対して上述した高純度の飽和炭化水素は95%留出温度が初留点から5℃以内で、かつ99%留出温度が初留点から10℃以内であるため、高沸点物の残留あるいは低沸点成分の浪費がなく高品質な蒸気乾燥に適した溶剤となっている。
【0015】
請求項2の発明において、上述した高純度の飽和炭化水素は−700mmHg程度まで減圧した蒸気発生槽内で加熱される。この蒸気発生槽内の圧力は気液平衡により加熱温度における飽和炭化水素の蒸気圧となる。この場合、沸点以下で加熱を行うことにより、蒸気発生槽内は負圧となり周囲に溶剤蒸気が漏洩することはない。
【0016】
溶剤蒸気の被洗浄物への供給手段としては、溶剤が供給される気密状態の洗浄槽等の処理槽の内部圧力を蒸気発生槽より−100mmHg程度低い負圧に減圧し、この状態で行う。この100mmHgの圧力差分が供給蒸気として最初に供給される。また、このときの全体圧力は当初の蒸気発生槽内より若干、下回る。これにより飽和炭化水素は当初の平衡状態に復帰させるために、蒸気化が進み蒸気供給が行われる。
【0017】
これに対し、一般の炭化水素溶剤を用いた場合は、蒸留される温度範囲が20〜30℃と大きく、気液平衡状態における気相と液相の液組成が大きく異なる。従って、同一温度で加熱を行った場合、気相側は低沸点成分の割合が多い状態となり、液相側は高沸点成分が多い状態となる。このために新液状態での気液平衡と時間経過した後の気液平衡とを比較すると、新液状態の方が蒸気圧が高く、蒸気量が多い。しかし、この状態では低沸点蒸気による加熱となるために、被洗浄物を乾燥させるために十分な熱量を与えられず、乾燥できないことがある。また、時間経過により低沸点成分は揮発して損失し、高沸点成分が多い状態となるため全体の蒸気圧が下がる。このため一般の炭化水素溶剤では、気密状態の処理槽対する減圧度の制御が必要となると共に、熱量も増加しなければ一定圧を保てない。
【0018】
本発明に使用する飽和炭化水素は、95%留出温度が初留点から5℃以内で、かつ99%留出温度が初留点から10℃以内である。これにより気液平衡状態において、気相、液相の組成が等しくなるために、時間経過による平衡状態変化が少ない。一般の炭化水素系溶剤は含有成分種が多いため、液相と気相での組成が異なり、気相は低沸点成分に富んだ組成となり、液相は高沸点成分に富んだ組成となる。かかる炭化水素では蒸気化される組成が一定とはなり得ず、時間経過により液相組成はより高沸点へ変化し、溶剤を蒸気化させるための熱量を多く必要とし、同一条件での運用が不可能になる。本発明に用いる高純度の飽和炭化水素は、このような気液平衡変化が少ないため、安定して使用することができる。
【0019】
蒸気供給で被洗浄物に熱供給を行った後に、真空ポンプによって処理槽内を減圧する。この減圧によって被洗浄物に付着している溶剤の蒸発が促進される。熱供給により与えられる熱は、炭素数8の高純度飽和炭化水素で110℃程度、炭素数12の高純度飽和炭化水素で180℃程度である。また、溶剤の蒸発過程では、気化熱が必要となるが、この気化熱は蒸気供給で与えられた熱を利用し、これにより溶剤を蒸発させることができる。その後、一定時間経過後にリークして大気圧に戻すことで工程が終了する。
【0020】
本発明に使用する高純度の飽和炭化水素は、プロピレンやブテンからの重合により製造されたもので、95%留出温度が初留点から5℃以内で、かつ99%留出温度が初留点から10℃以内である炭素数8以上12以下の炭化水素である。この場合、95%留出温度が初留点から3℃以内で、かつ99%留出温度が初留点から5℃以内である炭素数8以上12以下の炭化水素がさらに好ましい。
【0021】
この場合における測定方法及び用語の意味はJIS K2254に規定されている。すなわち飽和炭化水素100ミリリットルを平均留出量5ミリリットル/分となるような昇温速度で加熱した後に、最初の1滴が留出する温度が初留点、95ミリリットルが留出する温度が95%留出温度、99ミリリットルが留出する温度が99%留出温度である。
【0022】
通常、被洗浄物に付着している洗浄液を気化させて除去するのに際し、洗浄液の全成分の気化する速度が全て同一であれば、被洗浄物に付着している洗浄液の膜が均一に薄くなって、最終的には全て気化するため、シミがない高品質に仕上げることができる。しかし洗浄液の全成分の気化する速度が異なる場合は、気化し易い成分が先に気化し、気化しにくい成分が島状に取り残された部分に塵埃等が凝集するため、シミが発生して高品質に仕上げることができない。このようなことから乾燥工程の直前に用いられる非水溶性溶剤では気化する速度を支配する蒸留性状、すなわち蒸留温度の温度範囲を制御する必要がある。
【0023】
本発明者が検討した結果、95%留出温度が初留点から5°C以内で、かつ99%留出温度が初留点から10°C以内である蒸留性状の炭素数8以上12以下である高純度の飽和炭化水素であることが良好であることを見いだした。上記した温度範囲より広い場合は気化しにくい成分が多く、均一に乾燥しないため、シミが発生して高品質に仕上げることができない。さらに炭素数が8より小さい場合は、極端に引火性が増加して取扱い上の安全性が低下するので好ましくない。逆に、炭化水素が12より大きい場合は極端に乾燥速度が遅く、乾燥させることが困難になり、シミ発生率も大きくなるため好ましくない。
【0024】
以上のように本発明では、蒸留される温度領域を狭く限定しているため、高沸点成分が減少して主成分の純度が向上し、不飽和炭化水素や芳香族炭化水素を含むことが防止できる。このため臭気、安定性および人体安全性を向上させることができる。また、乾燥後の残渣となる高沸点成分が実質的に含まれていないため、高品質な乾燥が可能である。さらに主原料がプロピレン、ブテンであり、安価であると共に、合成が簡単であることから、安定して供給することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に使用される装置の断面図を示す。101は蒸気乾燥槽であり、底部に加熱部102が挿入されている。この加熱部102は蒸気ボイラーによって加熱されており、圧力調整バルブ104により加熱温度が制御される。蒸気乾燥槽101上部にはチラーコイル105が備えられ、溶剤蒸気を冷却液化させる。液化した溶剤は回収管103を介して回収タンク106に回収される。回収タンク106は結露して混入した水を分離させるものであり、水が分離された溶剤は回収タンク106からオーバーフローし、この溶剤のオーバーフロー分を蒸気乾燥槽101へ回収する。
【0026】
この実施の形態では、溶剤として表1に示す飽和炭化水素の内、初留点が113℃、95%留出温度が115℃、99%留出温度が116℃の高純度イソオクタンを使用した。
【0027】
上記装置において、蒸気乾燥槽101に高純度イソオクタンを入れ、ボイラー投入蒸気圧力を1.8kgf/cmとした。このときの加熱温度は117℃であり、高純度イソオクタンが蒸気化するには十分な温度である。被洗浄物として銅製のプレス部品を積層させた状態で蒸気乾燥槽101のベーパーゾーンに搬入した。プレス部品の表面で熱供給を行い、液化した高純度イソオクタンは蒸気乾燥槽101へ回収される。2分後プレス部品を引き上げたところ、外観上シミ等は付着していなかった。
【0028】
このような本実施の形態では、高純度イソオクタンの蒸気乾燥により、積層部品の重なり合い部を乾燥させることができ、しかも簡単な構造の装置で上記乾燥を行うことができるため、ランニングコストを低減させることができる。
【0029】
(実施の形態2)
図2は実施の形態2に使用される装置の構成を示す。201は気密洗浄槽であり、被洗浄物の搬入、搬出、蒸気乾燥が行われる。この気密洗浄槽201は二重構造となっており、外側部分に蒸気を通すことで内部を加熱するようになっている。又気密洗浄槽201には槽内を大気圧戻すためのリークバルブ218が連結されている。
【0030】
この気密洗浄槽201には蒸気供給バルブ203を介して蒸気発生槽202が連結されている。蒸気発生槽202は内部にU字伝熱管を備え、溶剤を加熱し、蒸気化させる。蒸気供給バルブ203は気密洗浄槽201内に導入された被洗浄物に対して供給する溶剤の蒸気量を制御する。この被洗浄物への蒸気供給終了後、減圧バルブ204を開放して真空ポンプ205で減圧して被洗浄物を乾燥させる。
【0031】
減圧バルブ204と真空ポンプ205の間には冷却部206が挿入されており、この冷却部206によって、真空ポンプ205へ流入する蒸気を冷却し液化させる。207は真空ポンプ205に連結された溶剤回収タンク、208は気密洗浄槽201に連結された溶剤回収タンクである。被洗浄物に蒸気を供給している間はバルブ209を開け、液化した溶剤を溶剤回収タンク208に回収する。
【0032】
蒸気供給終了後はバルブ209を閉じ、バルブ210、211を開けて蒸気発生槽202へ溶剤を回収する。この蒸気発生槽202には液面センサー212が備えられ、下限検知で供給ポンプ213を稼働すると共に、バルブ214を開けて溶剤回収タンク207から溶剤を供給する。
【0033】
この実施の形態では、真空ポンプ205として液封ポンプを使用する。液封ポンプはポンプ内部のインペラーとケーシングのシールを使用溶剤を用いて行うものであり、これにより真空維持と真空下から溶剤の取り出しを同時に行うものである。気密洗浄槽201及び蒸気発生槽202に対する加熱は、蒸気ボイラー215によって行うものであり、この加熱は圧力制御弁216、217によって制御している。
【0034】
この実施の形態では、溶剤として表1に示す飽和炭化水素の内、初留点が133℃、95%留出温度が137℃、99%留出温度が138℃の高純度イソノナンを用いた。
【0035】
この実施の形態による洗浄及び乾燥の工程は、被洗浄物の洗浄槽201への搬入→気密洗浄槽201の減圧→気密洗浄槽201への蒸気導入→真空乾燥→気密洗浄槽201を大気圧に戻すリーク→被洗浄物の取り出しの手順で行う。
【0036】
まず、稼働前に蒸気発生槽202内を減圧して高純度イソノナンの気液平衡状態を形成させた。真空ポンプ205を稼働させて装置内全体を−700mmHgまで減圧した後、蒸気供給バルブ203と減圧バルブ204を閉じ、リークバルブ218を開いて、気密洗浄槽201内を大気圧とした。
【0037】
次に、蒸気ボイラー215を稼働させて蒸気発生槽202内の溶剤を加熱した。加熱蒸気圧力は2.5kgf/cmである。蒸気発生槽202内は加熱され蒸気圧が上昇していくため、蒸気発生槽202内圧力は−200mmHgまで上昇して一定状態を保っている。蒸気発生槽202内の液温は127℃を示している。
【0038】
この温度は高純度イソノナンの蒸気圧および温度と一致している。従って、加熱蒸気圧を上げることで蒸気発生槽202内の圧力及び温度は上昇し、逆に加熱蒸気圧を下げることで蒸気圧及び温度は低下する。これは、被洗浄物の熱伝導度、形状によって供給熱量を変更することが可能である。また、気密洗浄槽201は投入蒸気1.0kgf/cmで加熱している。この加熱により溶剤蒸気が気密洗浄槽201に供給された際における内壁での結露による蒸気消費を抑え、被洗浄物に対する熱供給効率を向上させる作用を行う。
【0039】
気密洗浄槽201内に水系水洗浄剤による洗浄→水リンス→IPA置換の工程の後に高純度イソノナンに浸漬させたガラスレンズを搬入した。このガラスレンズはコーティング処理前のレンズである。減圧バルブ204を開いて気密洗浄槽201内を−350mmHgまで減圧させ、減圧バルブ204を閉じ、蒸気供給バルブ203を開け、高純度イソノナン蒸気を供給した。
【0040】
供給中の圧力は気密洗浄槽201と蒸気発生槽202の平衡により−230mmHgに維持され、蒸気発生槽202の圧力低下により、通常圧力への復帰のために蒸気発生が促進されてイソノナン蒸気が気密洗浄槽201へ供給される。蒸気温度は蒸気発生槽202内の液温と同じく127℃付近である。この高純度イソノナン蒸気が気密洗浄槽201内のレンズに熱供給を行い、レンズ温度を上昇させる。この工程を60秒行った。
【0041】
設定した60秒は特に限定されるものではなく、被洗浄物が金属等の熱伝導度の高い部材の場合は時間を短縮することができる。また、蒸気供給時の気密洗浄槽201と蒸気発生槽202の圧力差により蒸気供給量を変更することも可能である。しかしながら、圧力差があまりにも大きい場合、突沸現象が起こり、蒸気以外にミストが舞い上がり、精密乾燥において悪影響を及ぼす因子となる。このため気密洗浄槽201と蒸気発生槽202の圧力差は100〜200mmHgが好ましい。この間バルブ209を開き、液化した高純度イソノナンを回収し、蒸気の供給終了後バルブを閉じた。
【0042】
一定時間経過後、蒸気供給バルブ203を閉じ、減圧バルブ204を開いて気密洗浄槽201内を−730mmHgまで減圧させ、90秒維持した。これにより被洗浄物に付着している高純度イソノナンは、雰囲気圧力の低下に伴い沸点が低下して蒸発が促進され、急速に乾燥する。一定時間経過後、減圧バルブ204を閉じ、リークバルブ218を開いて、気密洗浄槽201内を大気圧に戻し、工程終了とした。また、溶剤回収タンク207内の高純度イソノナンはバルブ209、210を開き、蒸気発生槽202へ戻した。
【0043】
以上の工程を50回行ったが、蒸気発生槽内の圧力変化は見られず、安定した蒸気供給が行われた。各工程とバルブの開閉プログラムと気密洗浄槽201内の圧力変化を図3、図4に示す。乾燥終了後のガラスレンズは液残りなく乾燥されており、品質上問題はなかった。
【0044】
なお、この実施の形態では被洗浄物を真空乾燥する場合、気密洗浄槽201内を1度だけ減圧しているが、減圧とリークとを複数回繰り返しても良い。これにより、止まり穴や小さな隙間などの乾燥しにくい部位を高速で乾燥することができる。
【0045】
このような実施の形態では、沸点範囲の狭い高純度イソノナンを用いることにより、時間経過による蒸気供給量に変化がなく、安定した蒸気供給ができ、かつシミ残りのない清浄な精密乾燥が可能となる。また液組成変化がないため、液交換頻度が少なくなり、操作が簡単で、しかもランニングコスト低減を行うことができる。さらに真空ポンプ205として液封ポンプを使用することにより、油回転ポンプのようにオイル等に溶剤が混入することがなく、装置が密閉系となるために引火性蒸気の漏洩が少なく安全である。
【0046】
(実施の形態3)
図5実施の形態3に使用する装置の構成を示す。301は気密洗浄槽で被洗浄物の搬入、搬出、蒸気乾燥が行われる。この気密洗浄槽301にはリークバルブ311が連結されている。302は蒸気発生槽であり、溶剤用間接加熱電気ヒーターによって溶剤を蒸気化させる。303は気密洗浄槽301と蒸気発生槽302の間に挿入された蒸気供給バルブで、気密洗浄槽301内の被洗浄物に対して供給する溶剤蒸気量を制御する。
【0047】
被洗浄物への蒸気供給終了後、減圧バルブ304を開け真空ポンプ305で減圧して被洗浄物を乾燥させる。冷却部307は真空ポンプ305へ流入する蒸気を冷却し液化させる。また、蒸気発生槽302には液面センサー310が備えられ、下限検知で供給ポンプ308を稼働、バルブ309を開放するように制御する。これにより分離タンク306内の溶剤が蒸気発生槽302に供給される。
【0048】
真空ポンプ305としては水封ポンプを使用する。水封ポンプはポンプ内部のインペラーとケーシングのシールに水を用いて行うものであり、分離タンク306へ水と溶剤を同時に吐出する。溶剤として使用する飽和炭化水素は水と相溶しないため、分離タンク306の上層に飽和炭化水素が、下層に水が分離し、下層の水は水封水としてポンプ305に循環される。この上層と下層の分離を促進するため、油水分離フィルターを使用することも可能である。
【0049】
この実施の形態では、溶剤として表1に示す高純度飽和炭化水素の内、初留点が169℃、95%留出温度が172℃、99%留出温度が173℃の高純度ノルマルデカンを用いた。
【0050】
上述した装置の稼働準備として、水封ポンプ305を稼働させて装置内全体を減圧させた後、蒸気供給バルブ303と減圧バルブ304を閉じ、リークバルブ311を開いて、気密洗浄槽301内を大気圧とした。ヒーターに電源を入れて蒸気発生槽302内の溶剤を加熱させた。蒸気発生槽302内は減圧されているために、加熱された温度の蒸気圧分の蒸気で満たされる。蒸気発生槽302内の高純度ノルマルデカンは約160℃を示し、蒸気発生槽内の圧力は−200mmHgに維持されている。
【0051】
次に、洗浄後に高純度ノルマルデカンに浸漬させた金属研磨部品を気密洗浄槽301内に搬入した。減圧バルブ304を開いて、気密洗浄槽301内を−350mmHgまで減圧し、減圧バルブ204を閉じ、蒸気供給バルブ303を開け、高純度ノルマルデカンの蒸気を気密洗浄槽301内に供給した。
【0052】
この供給中の圧力は−220mmHgに維持され、圧力差と蒸気発生槽302内の加熱により蒸気が気密洗浄槽301へ供給され、同槽内の金属研磨部品に熱供給を行い、金属研磨部品の温度を上昇させる。この工程を30秒行った。
【0053】
一定時間経過後、蒸気供給バルブ303を閉じ、減圧バルブ304を開いて気密洗浄槽301内を−730mmHgまで減圧させ、90秒維持した。減圧することにより高純度ノルマルデカンの沸点が低下して乾燥が促進される。乾燥に必要な気化熱は、蒸気供給で与えられた熱が活用される。
【0054】
一定時間経過後、減圧バルブ304を閉じ、リークバルブ311を開いて、気密洗浄槽301内を大気圧に戻して工程終了とした。以上の工程を20回行ったが、蒸気発生槽302内の圧力に変化は見られず、安定した蒸気供給が可能であった。乾燥終了後の金属研磨部品は液残りなく乾燥されており、目視検査でシミ等の発生はなかった。
【0055】
このような実施の形態では、沸点範囲の狭い高純度ノルマルデカンを用いることにより、時間経過による蒸気供給量に変化がなく安定した蒸気供給ができ、かつシミ残りのない清浄な精密乾燥が可能となっている。また、装置が密閉系となるために引火性蒸気の漏洩が少なく安全である。さらに水封ポンプを使用することにより水を介して溶剤中に蓄積する静電気を放出できる効果がある。
【0056】
表1は以上の実施の形態に使用した高純度飽和炭化水素及び実施の形態以外に本発明に使用できる高純度飽和炭化水素を列記するものである。なお、以上の実施の形態における各工程での圧力、温度、時間については被洗浄物の材質、形状、大きさ、設置方法により任意の設定を行うことが可能である。
【0057】
【表1】
Figure 0003599876
【0058】
【発明の効果】
請求項1の発明は、95%留出温度が初留点から5℃以内で、かつ99%留出温度が初留点から10℃以内である炭素数8以上12以下の高純度飽和炭化水素を用いて蒸気乾燥を行うことで、安定した蒸気量で精密な乾燥を行うことができる。
【0059】
請求項2の発明は、95%留出温度が初留点から5℃以内で、かつ99%留出温度が初留点から10℃以内である炭素数8以上12以下の高純度飽和炭化水素を用いることで、密閉容器中でも経時変化による気液平衡変化が少なく、また減圧下で処理できるため、低温で精密な乾燥を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1に使用する装置の断面図である。
【図2】実施の形態2に使用する装置の断面図である。
【図3】実施の形態2におけるバルブ開閉のプログラムである。
【図4】実施の形態2における気密洗浄槽内部の圧力変化を示す特性図である。
【図5】実施の形態3に使用する装置の断面図である。

Claims (3)

  1. 95%留出温度が初留点から5℃以内で、かつ99%留出温度が初留点から10℃以内である炭素数8以上12以下の飽和炭化水素の蒸気により物品を乾燥させることを特徴とする蒸気乾燥方法。
  2. 処理室に物品を搬入した後、処理室内を減圧する工程と、95%留出温度が初留点から5℃以内で、かつ99%留出温度が初留点から10℃以内である炭素数8以上12以下の飽和炭化水素の蒸気を前記処理室内に供給する工程と、この処理室内を再度減圧する工程と、処理室内を大気圧とする工程と、を有することを特徴とする蒸気乾燥方法。
  3. 前記処理室内の再度の減圧工程を複数回繰り返すことを特徴とする請求項2記載の蒸気乾燥方法。
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