JP3591454B2 - 車体前部構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、衝突時のエネルギー吸収を積極的に行わせるようにした車体前部構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に自動車の車体前部構造は、車体前部の車幅方向両側に車体前後方向に配設されたフロントサイドメンバやこのフロントサイドメンバの下側に位置してパワーユニットを搭載するサブフレームなどが設けられる。そして、例えば特開2000−16327号公報に開示されるように、サブフレームをフロントサイドメンバに直接結合し、これらサブフレームとフロントサイドメンバの変形モードコントロールによって前面衝突時における車体前部の潰れストロークを確保するようにしたものが知られている。
【0003】
つまり、衝突により車両前方から大きな荷重が入力された際に、フロントサイドメンバは、その軸方向(長さ方向)に潰れ変形するとともに、パワーユニットを搭載したサブフレームは、その中間部が下方に屈曲変形するようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の車体前部構造にあっては、車両前方からの荷重が作用したときに、サブフレームに搭載されたパワーユニットは、このサブフレームの屈曲変形のみをもって後方かつ下方移動されることになる。このため、パワーユニットを大きく下方に移動させることが難しく、このパワーユニットが後方移動した際に万一ダッシュパネルに干渉するとパワーユニットのそれ以上の後方移動が阻止されフロントサイドメンバの潰れ変形が規制されてしまう。
【0005】
また、前記車両前方からの入力荷重に対するエネルギー吸収は、前記フロントサイドメンバの潰れ変形以外にも、前記サブフレームの変形によっても吸収されるが、このサブフレームでのエネルギー吸収は、前記中間部の屈曲変形のみに限定されてしまう。
【0006】
そこで、本発明は前面衝突時におけるサブフレームの屈曲変形に伴うパワーユニットの下方移動量を増大でき、もって、衝突時にパワーユニットがダッシュパネルに干渉するのを防止して、フロントサイドメンバの潰れストロークを稼いで入力荷重のエネルギー吸収効率を高めるようにした車体前部構造を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明にあっては、車体前部の車幅方向両側に車体前後方向に配設されたフロントサイドメンバと、これら両フロントサイドメンバの前端に跨って結合したファーストクロスメンバとによって車体前部骨格メンバを構成し、かつ、この車体前部骨格メンバの下側に、前端連結部と、この前端連結部の両端部から後方に向かって延在するフレーム本体部分とによって構成されるサブフレームを配置し、このサブフレームの両フレーム本体部分に跨ってパワーユニットが搭載される車体前部構造であって、前記フロントサイドメンバは、車両前方から入力される所定以上の荷重により軸方向に潰れ変形可能な構造とし、かつ、前記サブフレームは、前記荷重により中間部分が下方に屈曲変形可能な構造とするとともに前記車体前部骨格メンバよりも小さい曲げ剛性に設定し、かつ、前記サブフレームの前端位置を前記車体前部骨格メンバの前端位置よりも後方に設定し、該サブフレームの後端部を前記車体前部骨格メンバに結合するとともに、このサブフレームの前端部を、所定長さを有する第1連結部材を介して前記車体前部骨格メンバの前端部に結合して、該第1連結部材をこの第1連結部材と前記サブフレームとの下方結合点と、前記車体前部骨格メンバとの上方結合点とを結ぶ線分上に後方に向けて傾斜配置し、
前記第1連結部材に、前記フロントサイドメンバの潰れ変形に伴うモーメント入力により、伸展方向に変形して後方への回転挙動を促す屈曲部を設けたことを特徴としている。
【0009】
請求項2の発明にあっては、請求項1に記載の車体前部構造において、前記サブフレームの前端面の最外側端を、前記フロントサイドメンバの前端部の車幅方向位置よりも内側に配置したことを特徴としている。
【0010】
請求項3の発明にあっては、請求項1または2に記載の車体前部構造において、前記サブフレームに、前記車両前方からの荷重入力により、フレーム本体部分を車幅方向外側に押し出す方向の屈曲を促す複数の屈曲部を設けたことを特徴としている。
【0011】
請求項4の発明にあっては、請求項1〜3に記載の車体前部構造において、前記サブフレームの前端を、前記第1連結部材の下方結合点よりも前方に突出させたことを特徴としている。
【0012】
請求項5の発明にあっては、請求項1〜4に記載の車体前部構造において、前記サブフレームの後端部を、前方に向かって傾斜する所定長さの第2連結部材を介して前記車体前部骨格メンバに結合したことを特徴としている。
【0013】
請求項6の発明にあっては、請求項5に記載の車体前部構造において、前記第2連結部材の後方に、この第2連結部材の後方変位量を規制するストッパーを設けたことを特徴としている。
【0014】
【発明の効果】
請求項1に記載の本発明によれば、衝突などにより車両前方から所定以上の荷重が入力されると、フロントサイドメンバが軸方向に潰れ変形し、これに伴って第1連結部材の上方結合点が後方移動する。
【0015】
この第1連結部材は、車体前部骨格メンバに結合された上方結合点とサブフレームに結合された下方結合点とを結ぶ線分上に後方に向けて傾斜配置されているため、前記上方結合点の後方移動により、第1連結部材は後方へ回転して上方結合点と下方結合点とを結ぶ線分を起立させる方向に移動する。
【0016】
このとき、車体前部骨格メンバの曲げ剛性よりサブフレームの後端部の曲げ剛性が小さいため、第1連結部材は車体前部骨格メンバに支持された状態で、サブフレームの前端部を大きく下方に押下げる。その後、前記荷重がサブフレームに入力され、このサブフレームが中間部分で下方に屈曲変形する。
【0017】
このため、サブフレームに搭載されたパワーユニットは、前記第1連結部による下方への押下げとサブフレームの屈曲変形とによって大きく下方に移動させることができる。
【0018】
従って、前方から衝突などによる荷重が入力された場合に、パワーユニットをダッシュパネルとの干渉を防止しつつ車体フロアの下方に潜り込ませることができるため、前記フロントサイドメンバの潰れストロークを大きく稼ぐことができ、これによって前記入力荷重に対するエネルギーの吸収効率を高めることができる。
【0019】
また、前記サブフレームの前端位置を前記車体前部骨格メンバの前端位置より後方に配置したので、フロントサイドメンバの潰れ変形の開始時期とサブフレームの屈曲変形の開始時期とに時間差を設定できるため、それぞれの初期衝撃入力時期をずらせて、衝突初期の衝撃を緩和することができる。
【0020】
更に、車両前方からの荷重入力によりフロントサイドメンバが潰れ変形すると、これに伴って第1連結部材に設けた屈曲部が伸展方向に変形して後方への回転挙動をスムーズに行わせることができると共に、この第1連結部材の絶対長さが伸長してサブフレームの下方への押下げ量を更に増大することができ、これによってパワーユニットの下方移動量を更に大きくすることができる。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、前記サブフレームの前端面の最外側端を、前記フロントサイドメンバの前端部の車幅方向位置よりも内側に配置したので、車両前方からの荷重が車体前部骨格メンバおよびサブフレームに入力される際、それぞれの荷重入力点を車幅方向でずらせて、車両前端での荷重反力を分散して均一化できるため、前記フロントサイドメンバの潰れ変形および前記サブフレームの屈曲変形が確実に達成されて、衝突時のエネルギー吸収特性を更に向上することができる。
【0022】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1,2の発明の効果に加えて、前記サブフレームに複数の屈曲部を設けて、車両前方からの荷重入力に対して、フレーム本体部分を車幅方向外側に押し出す方向に屈曲を促すようにしたので、サブフレームに入力された荷重は、フレーム本体部分を屈曲変形させるのみならず、複数の屈曲部を局所的に折れ曲がり変形させることができるため、変形箇所の増加によりサブフレームでのエネルギー吸収量を増大することができる。
【0023】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3の発明の効果に加えて、前記サブフレームの前端が、前記第1連結部材の下方結合点より前方に突出されるので、フロントサイドメンバに荷重入力される時期、つまり、第1連結部材を介してサブフレームを下方に押下げる時期と、サブフレームに荷重が直接入力されて、これが屈曲変形される時期とのタイムラグを少なくして、パワーユニットの下方かつ後方への移動案内をスムーズに行うことができる。
【0024】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜4の発明の効果に加えて、前記サブフレームの後端部を、下端部を前方に向かって傾斜させた所定長さの第2連結部材を介して前記車体前部骨格メンバに結合したので、サブフレームに前記荷重が入力されると、前記第1連結部材の後方回転挙動によりサブフレームの前端部が下方に押下げられるのに伴って、下端部が前方に傾斜された前記第2連結部材を後方回転させ、これによってサブフレームの後端部も下方移動させることができる。このため、パワーユニットの下方移動量を更に増大できるとともに、前記第2連結部材の長さや回転量を調節することにより、パワーユニットの下方移動挙動をコントロールすることができる。
【0025】
請求項6に記載の発明によれば、請求項5の発明の効果に加えて、前記第2連結部材の後方にストッパーを設け、この第2連結部材の後方変位量を規制するようにしたので、このストッパーの位置を予め調整しておくことにより、第2連結部材の後方回転量が規制されることに伴って、サブフレームの後方移動量を精度良くコントロールすることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0027】
図1から図11は本発明にかかる車体前部構造の第1実施形態を示し、図1は車体全体構造の斜視図、図2は車体前部構造の要部を示す斜視図、図3は車体前部構造の要部を示す側面図、図4は車体前部構造を正面図と平面図をもって示す説明図、図5から図7は車体前部構造の衝突時の初期段階の挙動を示し、図5はその要部側面図、図6はその要部平面図、図7はその要部拡大側面図、図8から図10は車体前部構造の衝突時の最終段階の挙動を示し、図8はその要部側面図、図9はその要部平面図、図10はその要部拡大側面図、図11は衝突時に車体前部に作用する反力特性図である。
【0028】
この第1実施形態の車体前部構造は、図1に示す車体1の前部、つまり、図示省略したエンジンやモータなどの動力源が収納されるフロントコンパートメント2部分に相当し、このフロントコンパートメント2はダッシュパネル3によって車室4と隔成されている。
【0029】
フロントコンパートメント2の車幅方向両側には、図2に示すように、前後方向を指向して1対のフロントサイドメンバ10、10が配設されるとともに、1対のフロントサイドメンバ10、10の前方端間に跨ってファーストクロスメンバ11が結合され、これらフロントサイドメンバ10とファーストクロスメンバ11とによって車体前部骨格メンバ12が構成される。
【0030】
前記フロントサイドメンバ10は、これが前記ダッシュパネル3に至る部分で傾斜部分10aをもって下方に屈曲し、この屈曲した先が車体フロア5(図1参照)の下側両側に配置されるエクステンションサイドメンバ13となっている。
【0031】
前記車体前部骨格メンバ12の下側には、前記フロントサイドメンバ10および前記ファーストクロスメンバ11にほぼ沿った形状でサブフレーム14が配置される。
【0032】
このサブフレーム14は、ファーストクロスメンバ11に沿った前端連結部14aと、フロントサイドメンバ10に沿った左右1対のフレーム本体部分14b、14bとによって平面視でほぼコ字状に形成され、各フレーム本体部分14b、14bは、それぞれの前端部14cおよび後端部14dで前記車体前部骨格メンバ12に結合される。
【0033】
また、前記1対のフレーム本体部分14b、14bは、図3に示すように、折曲部14eをもって前後方向の中間部分14fが下方に落ち込む形状で折曲され、その落ち込んだ中間部分14f、14f間にパワーユニット20がマウント部材21を介して搭載される。
【0034】
そして、このように構成された車体前部構造では、前記フロントサイドメンバ10が閉断面構造として、車両前方から入力される所定以上の衝突荷重Fにより図5に示すように軸方向に潰れ変形可能となっており、この潰れ変形により衝突荷重Fのエネルギーを吸収するようになっている。
【0035】
また、前記サブフレーム14は、前記衝突荷重Fの入力により、図8に示すように、前記フロントサイドメンバ10の潰れ変形に伴って中間部分14fが下方に屈曲変形可能となっている。
【0036】
ここで、本実施形態では図3に示すように、前記サブフレーム14は、その前端T2位置を前記車体前部骨格メンバ12の前端T1位置より所定距離L1だけ後方に配置する。
【0037】
また、車体前部骨格メンバ12に結合されるサブフレーム14の前端部14cは、所定長さを有する第1連結部材15を介して前記車体前部骨格メンバ12の前端部、本実施形態ではファーストクロスメンバ11の両端部に結合するとともに、サブフレーム14の後端部14dは、フロントサイドメンバ10に連なるエクステンションサイドメンバ13の前端部間に跨って連結されるセカンドクロスメンバ11aの両端部に結合してある。
【0038】
また、前記サブフレーム14の後端部14dの曲げ剛性は、車体前部骨格メンバ12の曲げ剛性よりも小さく設定される。
【0039】
前記第1連結部材15は、図3に示すように、中間部分に屈曲部H1を設けてほぼ逆くの字状に形成される。
【0040】
この屈曲部H1は、前記フロントサイドメンバの潰れ変形に伴ってモーメントM(図5参照)が入力された際に、伸展方向に変形して後方への回転挙動を促す機能を有する。
【0041】
この第1連結部材15は、サブフレーム14との下方結合点Aが、ファーストクロスメンバ11との上方結合点Bより所定距離L2だけ後方に配置されるようになっており、これら両結合点A、Bを結ぶ線分C上に後方に向けて傾斜して配置される。
【0042】
また、図3に示すように、前記第1連結部材15がサブフレーム14に結合される箇所はフレーム本体部分14bの前端部14cであり、このフレーム本体部分14bの前端に前端連結部14aが存在しているため、サブフレーム14の前端T2は、前記第1連結部材15の下方結合点AよりL3だけ前方に突出した構造となっている。
【0043】
ところで、ほぼコ字状に形成される前記サブフレーム14は、図4(b)に示すように、複数(本実施形態では6箇所)の屈曲部H2が形成される。
【0044】
これら屈曲部H2は、前記車両前方からの荷重Fの入力により両側のフレーム本体部分14b、14bを車幅方向外側に押し出す方向の屈曲を促すもので、フレーム本体部分14b、14bの前端部14cおよび後端部14dは、それぞれ幅狭方向に折曲した形状となっている。
【0045】
特に、本実施形態では、図4(a)にも示すように、サブフレーム14の前端T2面の最外側端D、Eを、前記フロントサイドメンバ10、10の前端部F、Gの車幅方向位置よりも内側に配置してある。
【0046】
以上の構成により、本実施形態の車体前部構造の作用を以下述べると、車両前端部が障害物に前面衝突して、図5から図7に示すように、車体前端部から前後方向の衝突荷重Fが入力されると、この荷重Fはファーストクロスメンバ11からエネルギー吸収部材であるフロントサイドメンバ10に入力して、このフロントサイドメンバ10が軸方向に潰れ変形(軸圧壊変形)することにより、前記衝突荷重Fによるエネルギーが吸収される。
【0047】
また、このフロントサイドメンバ10の潰れ変形によって、その前端部が後退することに伴って第1連結部材15の上方結合点Bが後方移動される。
【0048】
このとき、図3に示すように、前記第1連結部材15の上方結合点Bよりサブフレーム14の下方結合点AがL2だけ後方に配置されているため、上方結合点Bが後方移動されることにより、図5に示すように、第1連結部材15は後方へ回転して上方結合点Bと下方結合点Aとを結ぶ線分Cが起立され、遂いには、図8に示すように、直立状態に到達する。
【0049】
このとき、車体前部骨格メンバ12の曲げ剛性よりサブフレーム14の後端部14dの曲げ剛性が小さいため、第1連結部材15は車体前部骨格メンバ12に支持された状態で、サブフレーム14の前端部14cを大きく下方に押下げる。
【0050】
その際、第1連結部材15によるサブフレーム14の下方押下げ量Wは、図10に示すように、上方結合点Bと下方結合点Aとを結ぶ線分Cの長さをL、回転角をθとすると、W=L(1−cosθ)となる。
【0051】
その後、フロントサイドメンバ10の潰れ変形により、前記荷重Fがサブフレーム14の前端T2に入力され、このサブフレーム14が中間部14fに設けた前側の折曲部14eで下方に屈曲変形する。
【0052】
このため、サブフレーム14に搭載されたパワーユニット20は、前記第1連結部材15による下方への押下げとサブフレーム14の屈曲変形とが相俟って大きく下方に移動させることができる。
【0053】
また、本実施形態では前記第1連結部材15に屈曲部H1を設けたので、前記後方への回転挙動がスムーズに行われ、また、フロントサイドメンバ10の潰れ変形に伴って、この第1連結部材15に発生するモーメントMによって屈曲部H1が伸展することによって、第1連結部材15の絶対長さが伸長するため、サブフレーム14の下方への押下げ量を増大することができ、これによってパワーユニット20の下方移動量を更に大きくすることができる。
【0054】
従って、前面衝突時などにあって前方から荷重Fが入力された場合に、パワーユニット20をダッシュパネル3(図1参照)との干渉を防止しつつ車体フロア5(図1参照)の下方に潜り込ませることができるため、前記フロントサイドメンバ10の潰れストロークを大きく稼ぐことができ、これによって前記入力荷重に対するエネルギーの吸収効率を高めることができる。
【0055】
ところで、図5に示すように、第1連結部材15によってサブフレーム14の前端部14cが下方移動されることに伴い、前記モーメントMがサブフレーム14の下方結合点A近傍に発生し、それと同時に、サブフレーム14の前端部14cに前記荷重Fが軸方向に入力されるため、図8に示すようにサブフレーム14を折曲部14eからスムーズに屈曲変形させることができる。
【0056】
また、図3に示すように、前記サブフレーム14の前端T2位置を前記車体前部骨格メンバ12の前端T1位置よりL1だけ後方に配置したので、フロントサイドメンバ10の潰れ変形の開始時期とサブフレーム14の屈曲変形の開始時期とに時間差を設定できるため、図11に示すように、フロントサイドメンバ10の初期衝撃のピーク値P1と、サブフレーム14の初期衝撃のピーク値P2とのそれぞれの入力時期t1、t2がずれて、衝突初期の衝撃を緩和することができる。
【0057】
更に、図3に示すように、前記サブフレーム14の前端T2が、第1連結部材15の下方結合点AよりもL3だけ前方に突出されるので、フロントサイドメンバ10に荷重F入力される時期、つまり、第1連結部材15を介してサブフレーム14を下方に押下げる時期と、サブフレーム14に荷重Fが直接入力されて、これが屈曲変形される時期とのタイムラグを少なくして、パワーユニットの下方かつ後方への移動案内をスムーズに行うことができる。
【0058】
更にまた、前記サブフレーム14の前端T2面の最外側端D、Eが、フロントサイドメンバ10、10の前端部F、Gの車幅方向位置より内側に配置されているので、車両前方からの荷重Fが車体前部骨格メンバ12およびサブフレーム14に作用した際、前記サブフレーム14の最外側端D、Eおよび前記フロントサイドメンバ10、10の前端部F、Gがそれぞれ荷重入力点となるが、それぞれの荷重入力点D、E、F、Gを車幅方向でずらせることができる。
【0059】
従って、車両前端での荷重反力を分散して均一化できるため、前記フロントサイドメンバ10の潰れ変形および前記サブフレーム14での屈曲変形が確実に達成されて、衝突時のエネルギー吸収特性を更に向上することができる。
【0060】
また、前記サブフレーム14は、図4に示すように、平面視でほぼコ字状に形成されるが、このサブフレーム14には複数の屈曲部H2を設けて、フレーム本体部分14b、14bの前端部14cおよび後端部14dを、それぞれ幅狭方向に折曲した形状としたので、サブフレーム14に入力された荷重は、フレーム本体部分14bを屈曲変形させるのみならず、図9に示すように前記複数の第2屈曲部H2が局所的に折れ曲がり、フレーム本体部分14bを車幅方向外方に押し出す方向に変形させる。
【0061】
従って、サブフレーム14は、変形箇所が大幅に増加するため、このサブフレーム14でのエネルギー吸収量を増大することができる。
【0062】
図12から図14は本発明の第2実施形態を示し、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べる。
【0063】
図12は車体前部構造の要部を示す側面図、図13は車体前部構造の衝突時の初期段階の挙動を示す要部側面図、図14は車体前部構造の衝突時の最終段階の挙動を示す要部側面図である。
【0064】
この実施形態の車体前部構造は、図12に示すように、サブフレーム14の後端部14dを、前方に向かって傾斜する所定長さの第2連結部材16を介して車体前部骨格メンバ12に結合するとともに、この第2連結部材16の後方に、この第2連結部材16の後方変位量を規制するストッパー17を設けてある。
【0065】
勿論、この実施形態にあってもサブフレーム14の前端部14cは、第1連結部材15を介して車体前部骨格メンバ12に結合されている。
【0066】
従って、この第2実施形態の車体前部構造の作用を以下述べると、図13に示すように、車体前端部からの荷重F入力によるフロントサイドメンバ10の潰れ変形により、第1連結部材15の上方結合点Bの後方移動によってサブフレーム14の下方結合点Aが下方移動されると、このサブフレーム14の後端部14dに大きなモーメントM1が発生し、このモーメントM1により第2連結部材16は後方に回転しようとする。
【0067】
このとき、第2連結部材16が前方に向かって傾斜しているため、その回転量に応じてサブフレーム14の後端部14dは下方に移動する。
【0068】
このため、第1連結部材15による下方移動と第2連結部材16による下方移動とが、サブフレーム14の折曲部14eの屈曲変形に加わるため、パワーユニット20の下方移動量を更に増大して、ダッシュパネル3との干渉をより高い確率で避けることができる。
【0069】
また、第2連結部材16の後方にストッパー17を設けたことにより、このストッパー17の位置を予め調整しておくことにより、この第2連結部材16の後方回転量が規制されることに伴って、サブフレーム14の後方移動量を精度良くコントロールすることができる。
【0070】
ところで、この実施形態では第2連結部材16の形状やストッパー部17の位置および形状を適宜変えることにより、サブフレーム14の前端部14cの下方移動量K1に対して後端部14dの下方移動量K2を調整することで、パワーユニット20の挙動を精度良くコントロールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる車体前部構造が適用される車体全体構造を示す斜視図である。
【図2】本発明にかかる車体前部構造の第1実施形態を示す要部斜視図である。
【図3】本発明にかかる車体前部構造の第1実施形態を示す要部側面図である。
【図4】本発明にかかる車体前部構造の第1実施形態を正面図(a)と平面図(b)をもって示す説明図である。
【図5】本発明にかかる車体前部構造の第1実施形態を示す衝突時の初期段階の要部側面図である。
【図6】本発明にかかる車体前部構造の第1実施形態を示す衝突時の初期段階の要部平面図である。
【図7】本発明にかかる車体前部構造の第1実施形態を示す衝突時の初期段階の要部拡大側面図である。
【図8】本発明にかかる車体前部構造の第1実施形態を示す衝突時の最終段階の要部側面図である。
【図9】本発明にかかる車体前部構造の第1実施形態を示す衝突時の最終段階の要部平面図である。
【図10】本発明にかかる車体前部構造の第1実施形態を示す衝突時の最終段階の要部拡大側面図である。
【図11】本発明にかかる車体前部構造の第1実施形態を示す衝突時に車体前部に作用する反力特性図である。
【図12】本発明にかかる車体前部構造の第2実施形態を示す要部側面図である。
【図13】本発明にかかる車体前部構造の第2実施形態を示す衝突時の初期段階の要部側面図である。
【図14】本発明にかかる車体前部構造の第2実施形態を示す衝突時の最終段階の要部側面図である。
【符号の説明】
10 フロントサイドメンバ
11 ファーストクロスメンバ
12 車体前部骨格メンバ
14 サブフレーム
14b フレーム本体部分
14c 前端部
14d 後端部
14f 中間部分
15 第1連結部材
16 第2連結部材
17 ストッパー
20 パワーユニット
A 下方結合点
B 上方結合点
H1 第1連結部材の屈曲部
H2 サブフレームの屈曲部
Claims (6)
- 車体前部の車幅方向両側に車体前後方向に配設されたフロントサイドメンバと、これら両フロントサイドメンバの前端に跨って結合したファーストクロスメンバとによって車体前部骨格メンバを構成し、かつ、この車体前部骨格メンバの下側に、前端連結部と、この前端連結部の両端部から後方に向かって延在するフレーム本体部分とによって構成されるサブフレームを配置し、このサブフレームの両フレーム本体部分に跨ってパワーユニットが搭載される車体前部構造であって、前記フロントサイドメンバは、車両前方から入力される所定以上の荷重により軸方向に潰れ変形可能な構造とし、かつ、前記サブフレームは、前記荷重により中間部分が下方に屈曲変形可能な構造とするとともに前記車体前部骨格メンバよりも小さい曲げ剛性に設定し、かつ、前記サブフレームの前端位置を前記車体前部骨格メンバの前端位置よりも後方に設定し、該サブフレームの後端部を前記車体前部骨格メンバに結合するとともに、このサブフレームの前端部を、所定長さを有する第1連結部材を介して前記車体前部骨格メンバの前端部に結合して、該第1連結部材をこの第1連結部材と前記サブフレームとの下方結合点と、前記車体前部骨格メンバとの上方結合点とを結ぶ線分上に後方に向けて傾斜配置し、
第1連結部材に、前記フロントサイドメンバの潰れ変形に伴うモーメント入力により、伸展方向に変形して後方への回転挙動を促す屈曲部を設けたことを特徴とする車体前部構造。 - サブフレームの前端面の最外側端を、前記フロントサイドメンバの前端部の車幅方向位置よりも内側に配置したことを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
- サブフレームに、前記車両前方からの荷重入力により、フレーム本体部分を車幅方向外側に押し出す方向の屈曲を促す複数の屈曲部を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の車体前部構造。
- サブフレームの前端を、前記第1連結部材の下方結合点よりも前方に突出させたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の車体前部構造。
- サブフレームの後端部を、前方に向かって傾斜する所定長さの第2連結部材を介して前記車体前部骨格メンバに結合したことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の車体前部構造。
- 第2連結部材の後方に、この第2連結部材の後方変位量を規制するストッパーを設けたことを特徴とする請求項5に記載の車体前部構造。
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