JP3585536B2 - 天然ゴム及びその製造方法、並びに天然ゴム用添加剤、その添加剤を含むゴム組成物及びその添加剤による天然ゴムの粘度上昇抑制方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、加工性及び物性が共に良好となる天然ゴム及びその製造方法、並びに、恒粘度効果を有する天然ゴム用添加剤、その添加剤を含有したゴム組成物、その添加剤による天然ゴムの粘度上昇抑制方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、天然ゴムは、タイ・マレーシア・インドネシアなどの熱帯諸国で産出されている。天然ゴムは、その優れた物理的性質のため、ゴム産業、タイヤ産業界において幅広く、かつ、大量に使用されている。
産出された直後の天然ゴムは、ムーニー粘度が60〜70と低いが、日本などに貯蔵・輸送される数カ月間にムーニー粘度が90〜100近くまで上昇(ゲル化)してしまう(これを貯蔵硬化〔storage hardening〕という)。
【0003】
天然ゴムが貯蔵硬化する原因として、イソプレン鎖中の異種結合(アルデヒド基など)が天然ゴム中のタンパク質、アミノ酸と反応することによって架橋しゲル化が起こるとされている(文献等でもそのメカニズムははっきりと解明されていない)。
天然ゴムにおけるゲル化(ゲル量の増加)は、加工性を悪化させることとなる。また、一般に、天然ゴムは、物性面より分子量が大きい方が好ましく、分子量の低下は天然ゴムの物性に悪影響を及ぼすこととなる。
この分子量やゲル量は、天然ゴムラテックスからのゴム凝固、水洗後の乾燥条件で大きく左右される。
【0004】
天然ゴムの製造工程における乾燥条件として、下記の2つの方法が代表的である。すなわち、天然ゴム各種等級品の国際品質包装標準(通称グリーンブック)における格付けによるリブド・スモーク・シート(RSS)では、約60℃で5〜7日間のスモーキングを行っている。また、技術的格付けゴム(TSR)では、約120℃で数時間の熱風乾燥を行っている。
【0005】
しかしながら、RSS製造時の乾燥条件では、ゲル化が促進される点に問題点があり、また、TSR製造時の乾燥条件では、分子量が低下する点に問題点がある。さらに、RSS、TSRともゲル化(貯蔵硬化等)により粘度の上昇が起こるので、分子量の低下を招く素練りが必要となる点に問題点がある。
ここで、英国特許1472064号公報には、天然ゴムに恒粘度剤を加えると効果があることが述べられており、さらに恒粘度剤として炭素数8〜30のヒドラジド化合物が効果的である旨が開示されている。しかしながら、上記公報では、恒粘度剤は凝固した乾燥後の天然ゴムに添加されるのではなく、産出直後のゴムラテックス状態の天然ゴムに添加されており、通常の製造工程を考慮すれば実用的ではない。また、上記公報には、加硫後の物性がどのように変化するのかについては言及されていない。さらに、上述したような炭素数の多いヒドラジド化合物を添加した場合、ヒステリシスロスが増大する等の加硫物性の低下が見られるという問題がある。
【0006】
上述したように、従来の技術では、分子量が高く、ゲル分の少ない天然ゴムを得ることは二律背反となり、両方を満足することはできないのが現状である。
さらにまた、前記貯蔵硬化を防ぐためにマレーシアゴム研究所(RRM)では、天然ゴムラテックスを0.08wt%〜0.30wt%程度の硫酸ヒドロキシルアミン(NH2OH・H2SO4)で処理して恒粘度天然ゴムとしている。また、同じ硫酸ヒドロキシルアミンを用いて、乾燥後の天然ゴムにその溶液を混入するタイプ(SMR−GP)も開発されている。
【0007】
しかしながら、硫酸ヒドロキシルアミンを用いてなる恒粘度天然ゴムは、下記(1)〜(5)の問題点を有している。
(1) 硫酸ヒドロキシルアミンは日本では劇物指定のため使用することが困難 である。
(2) 貯蔵初期では粘度上昇が認められる。
(3) 過酷な状態(60℃程度のオーブン中)では恒粘度効果が低い。
(4) ゴムとの相溶性が悪く分散性が悪い懸念がある。
(5) 分解温度が低く、高温での練りではその効果を十分得ることができない。
【0008】
一方、恒粘度効果を有する天然ゴム用添加剤のスクリーニングの結果を示した文献(B.C.Sekhar, J. PolymerScience,Vol.XLVIII, 133(1960))には、セミカルバジド(NH2NHCONH2)が記載されている。恒粘度効果のありそうな天然ゴム用添加剤としては、ヒドロキシルアミン、セミカルバジド、ジメドン(1,1−ジメチルシクロヘキサン−3,5−ジオン)が開示されている。
【0009】
しかしながら、各化合物とも下限より少ない量だとバラツキはあるものの基本的には恒粘度効果が初期から低いか、ある期間から粘度上昇することが確認されている。
この原因として、
a) ゲル化を引き起こすとされているアルデヒド基等をブロックするためにある程度の量が必要なため、
b) 少量添加のため十分分散性がとれない、
等が考えられる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の天然ゴムの製造工程における乾燥条件の問題点、すなわち、RSS製造時又はTSR製造時の乾燥条件の問題点を解決しようとするものであり、ゲル化の抑制及び分子量低下の防止を図り、加工性及び物性が共に良好となる天然ゴム及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、さらに、上記従来の恒粘度剤の問題点を解決しようとするものであり、安全に取り扱うことができ、恒粘度効果が大きく、しかも長期間に亘ってその恒粘度効果が持続する天然ゴム用添加剤を提供すること、さらに、その添加剤を含有したゴム組成物及びその添加剤による天然ゴムの粘度上昇抑制方法を提供することも目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の天然ゴムは、乾燥前後のゲル変化率が10%以下で、かつ、分子量保持率が85%以上で乾燥処理されたことを特徴とする。上記乾燥処理された天然ゴムには、恒粘度剤が含有されている。
また、本発明の天然ゴムの製造方法は、天然ゴムの製造工程において、乾燥前後のゲル変化率が10%以下で、かつ、分子量保持率が85%以上で天然ゴムを乾燥処理することを特徴とする。
上記天然ゴムの製造方法において、天然ゴムに恒粘度剤を配合する。
さらに、上記天然ゴム及びその製造方法において、恒粘度剤は下記一般式で表されるヒドラジド化合物からなる。
R−CONHNH2
(ただし、式中のRは、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数3〜5のシクロアルキル基を示す。)
【0012】
また、本発明の天然ゴム用添加剤は下記一般式で表されるヒドラジド化合物からなるものである。
R−CONHNH2
(ただし、式中のRは、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数3〜5のシクロアルキル基を示す。)
本発明のゴム組成物は下記一般式で表されるヒドラジド化合物を含有する天然ゴムからなるものである。
R−CONHNH2
(ただし、式中のRは、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数3〜5のシクロアルキル基を示す。)
上記ヒドラジド化合物の含有量は、天然ゴム100重量部に対して0.001重量部以上であることが好ましい。
本発明の天然ゴムの粘度上昇抑制方法は、天然ゴムに下記一般式で表されるヒドラジド化合物を添加して天然ゴムの粘度上昇を抑制するものである。
R−CONHNH2
(ただし、式中のRは、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数3〜5のシクロアルキル基を示す。)
上記ヒドラジド化合物の含有量は、天然ゴム100重量部に対して0.001重量部以上であることが好ましい。
【0013】
【作用】
本発明の天然ゴム及びその製造方法においては、乾燥前後のゲル変化率を10%以下で、かつ、分子量保持率を85%以上で天然ゴムを処理するので、ゲル化の抑制及び分子量低下の防止が図られることとなる。また、前記乾燥条件で処理された天然ゴムに恒粘度剤を配合した恒粘度剤含有天然ゴムでは、さらに、ゲル化の抑制及び分子量低下の防止が図られることになる。この点に関しては、後述する実施例において更に詳しく説明する。
【0014】
また、本発明の天然ゴム用添加剤は、天然ゴムに添加されると、イソプレン鎖中の異種結合(アルデヒド基など)に反応してブロックすることによって、天然ゴム中のタンパク質等とのゲル化反応を阻害し、粘度上昇を抑制するものとなる。この点に関しては、更に後記する実施例において詳しく説明する。
本発明のゴム組成物は、長期間にわたって天然ゴムの粘度上昇を抑制するゴム組成物となる。
さらに、本発明の天然ゴムの粘度上昇抑制方法は、天然ゴムの粘度上昇を抑制するものとなる。
【0015】
以下本発明の内容を説明する。
本発明の乾燥条件による天然ゴムの製造方法は、天然ゴムの製造工程、すなわち、タッピング−凝固−洗浄(水洗い)−脱水−乾燥−パッキングの順で生産されている天然ゴムの製造工程において、乾燥前後のゲル変化率が10%以下で、かつ、分子量保持率が85%以上、好ましくは、ゲル変化率が5%以下で、かつ、分子量保持率が90%以上で天然ゴムを乾燥処理したものである。
【0016】
また、本発明の乾燥条件による天然ゴムは、乾燥前後でゲル変化率を10%以下で、かつ、分子量保持率を85%以上、好ましくは、ゲル変化率を5%以下で、かつ、分子量保持率を90%以上で処理したものである。
【0017】
ゲル変化率を10%以下で、かつ、分子量保持率を85%以上にする乾燥条件としては、使用する(産出される)天然ゴムの種類・グレードにより異なるがゲル化の抑制及び分子量低下の防止の両面から考慮して、乾燥温度は90〜120℃、好ましくは90〜110℃で、できるだけ短時間が望ましい。具体的には、乾燥時間は2〜3時間が好ましい。
乾燥温度は90〜120℃であるのが好ましいとしたのは、2〜3時間の乾燥の場合には、分子鎖の切断が120℃を超えると著しくなるからである。また、乾燥温度を90℃より低くすると、長期間にわたって乾燥しなければならず、高温の場合と較べゲル生成量が多くなる。この乾燥条件により処理された天然ゴムは、ゲル化の抑制及び分子量低下の防止が図られる。
【0018】
また、本発明では、前記乾燥条件で処理された天然ゴムに恒粘度剤を配合して恒粘度剤含有天然ゴムとすることができる。
この乾燥処理した恒粘度剤含有天然ゴムは、前記乾燥条件で処理された天然ゴムにできるだけ早く恒粘度剤を添加して混練りすることにより作製される。乾燥後の天然ゴムは、室温放置でもゲル化(貯蔵硬化等)が進行するため、長期にわたって保存する場合、前記乾燥条件で処理された天然ゴムにできるだけ早く恒粘度剤を添加する必要がある。
【0019】
前記天然ゴムの製造工程において、通常の乾燥後又は前記乾燥条件による乾燥後の天然ゴムに恒粘度剤をミキサー、押出機等により混合した後、ストレーナー処理をしてもよい。これにより、分子量が高く、ゴミ分のない天然ゴムが得られる。
ここでいうストレーナー処理とは、恒粘度剤含有天然ゴム中に含まれるゴミ分を除去する処理をいう。ストレーナー処理の具体例としては、押出機の先端に設けられるメッシュ状部材に恒粘度剤含有天然ゴムを通過させることによりゴミ分を除去する処理を挙げることができる。メッシュのサイズは、ASTM E11に規定された0.355mm(N0.45)相当のものが好ましいが、産出される天然ゴム及び天然ゴム中に含まれるゴミ分の大きさ等により適宜メッシュのサイズを変えることができる。
【0020】
恒粘度剤を十分に混入するためには、練る必要があり、また、ストレーナーにゴムを通すためには、練り及び加温(約120℃)が必要である。かかる観点から、恒粘度剤混入とストレーナー処理は同時に行うのが効率的である。さらに、ゴム加温時のゲル化を防ぐためには、ストレーナー処理前に恒粘度剤を入れる必要がある。以上の理由により、恒粘度剤を混入した後、すぐにストレーナー処理するのが望ましい。
【0021】
上記乾燥条件による天然ゴムの製造の際に用いる恒粘度剤としては、例えば、硫酸ヒドロキシルアミン、セミカルバジド、ジメドン(1,1−ジメチルシクロヘキサンー3、5−ジオン)及び本発明の天然ゴム用添加剤として用いる下記一般式(I)で表されるヒドラジド化合物からなるものを使用することができる。
R−CONHNH2 (I)
(ただし、式中のRは、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数3〜5のシクロアルキル基を示す。)
これらの恒粘度剤は、上記乾燥条件で処理された天然ゴム、または、通常の天然ゴムに配合されると、イソプレン鎖中の異種結合(アルデヒド基など)に反応してブロックすることにより貯蔵硬化の原因となる天然ゴム中のゲル化反応を阻害して、ゲル量の増加を抑制するものとなる。
【0022】
上記一般式(I)で表されるヒドラジド化合物において、炭素数1〜5のアルキル基のついた脂肪族ヒドラジド化合物としては、例えば、酢酸ヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、酪酸ヒドラジド、カプロン酸ヒドラジド等が挙げられる。
また、上記一般式(I)で表されるヒドラジド化合物において、炭素数3〜5のシクロアルキル基のついた環式ヒドラジド化合物としては、例えば、シクロプロピルヒドラジド等が挙げられる。
上述したヒドラジド化合物のなかでは、脂肪族ヒドラジド化合物がより好ましい。
なお、上記脂肪族ヒドラジド化合物を天然ゴムに添加すると、天然ゴムの臭気濃度が1/10程度に低減することが判明し、この脂肪族ヒドラジド化合物が天然ゴム臭気防止剤として有効であることが確認された。
【0023】
前記硫酸ヒドロキシルアミン、セミカルバジド、ジメドンは、恒粘度剤として既に知られているが、前記乾燥条件で処理された天然ゴムに配合すること又は前記乾燥条件で処理され、かつ、恒粘度剤を含有する天然ゴムをストレーナー処理することは、今まで全く知られておらず、本発明者らによって新たに発明されたものである。この恒粘度剤と前記乾燥条件により、ゲル量の増加の抑制及び分子量低下の防止を図ることが初めて実現できるのである。
上記一般式(I)で表されるヒドラジド化合物は、安全に取り扱うことができ、上記乾燥条件で処理された天然ゴム、または、通常の天然ゴムに使用した場合には、添加した時点から恒粘度効果を発揮し、しかも長期間に亘ってその恒粘度効果が持続するものであり、さらに加硫物の物性を低下させることもない。
【0024】
また、上記一般式(I)で表されるヒドラジド化合物を天然ゴム用添加剤として使用する態様としては、例えば、貯蔵硬化等を防止するために産出された天然ゴムに添加する場合、あるいは、素練りゴムの段階で添加する場合などである。本発明のゴム組成物は、天然ゴムに上記一般式(I)で表されるヒドラジド化合物を含有してなるものである。
前記乾燥条件で処理された天然ゴムに用いる場合の恒粘度剤、すなわち、硫酸ヒドロキシルアミン、セミカルバジド、ジメドン、上記一般式(I)で表される各々のヒドラジド化合物の含有量は、天然ゴム100重量部に対して、0.001重量部以上であるのが好ましい。なお、上記一般式(I)で表される各々のヒドラジド化合物は二種以上併用されてもよく、さらに上記一般式(I)で表されるヒドラジド化合物は硫酸ヒドロキシルアミン、セミカルバジド、ジメドン等と併用されてもよい。
また、本発明のゴム組成物に用いる場合の上記一般式(I)で表されるヒドラジド化合物からなる恒粘度剤の含有量も、天然ゴム100重量部に対して、0.001重量部以上であるのが好ましい。
【0025】
前記乾燥条件で処理された天然ゴム、または、ゴム組成物に用いる場合の各々の恒粘度剤の含有量が0.001重量部未満であると、恒粘度効果を達成することができないことがある。使用する(産出される)天然ゴムの種類及び使用する恒粘度剤の種類によりその含有量は、若干変動する。さらに好ましい範囲としては、0.01〜3.0重量部である。
例えば、前記乾燥条件で用いられる硫酸ヒドロキシルアミン、セミカルバジド、ジメドンでは、含有量は0.01〜2.0重量部であることが好ましい。
【0026】
また、上記一般式(I)において、Rが炭素数1〜5の各ヒドラジド化合物では、含有量は0.01〜1.0重量部であることが好ましく、さらに好ましくは、0.03〜0.5重量部であり、炭素数1の酢酸ヒドラジドの場合には、下限値は0.04重量部以上が望ましい。なお、上記恒粘度剤は上記含有量の範囲内で単独に、又は併用して天然ゴム及びゴム組成物に含有される。
本発明の乾燥条件により処理される天然ゴム、又はゴム組成物には、上記恒粘度剤の他に、必要に応じて、充填剤、補強剤、軟化剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、老化防止剤等の任意成分を含有させることができる。
【0027】
本発明の天然ゴムの粘度上昇抑制方法は、天然ゴムに上記一般式(I)で表されるヒドラジド化合物を添加して天然ゴムの粘度の上昇を抑制するものである。
ヒドラジド化合物の添加量は、天然ゴム100重量部に対して、0.001重量部以上である。
このヒドラジド化合物の添加量が0.001重量部未満であると、天然ゴムの粘度の上昇を抑制することができない。使用する(産出される)天然ゴムの種類及び使用するヒドラジド化合物の種類により上記ヒドラジド化合物の添加量は、若干変動する。好ましい範囲としては、0.01〜3.0重量部である。
各々のヒドラジド化合物の添加量の好ましい範囲は、前記天然ゴムと同様の範囲となる。
【0028】
【実施例】
以下に、実施例、比較例により、本発明を更に具体的かつ詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜11、比較例1〜8)
【0029】
アンスモークドシートを下記表1及び表2に示される乾燥条件に従い天然ゴムを作製した。
この天然ゴムの乾燥前、乾燥直後のゲル量、分子量を測定すると共に、カーボンブラック分散性及び加硫後のゴムの引張強力を測定した。また、上記天然ゴムを60℃下で所定日数放置した後のゲル量、分子量、カーボンブラック分散性及び加硫後のゴムの引張強力を測定した。
これらの結果を下記表1及び表2に示す。
【0030】
なお、ゲル量、分子量、カーボンブラック分散性及び加硫後のゴムの引張強力は、下記方法により測定した。
(1) ゲル量
ゴム片0.2gをトルエン1級(60cc)に溶解し、遠心分離法でゲル分を分離し、それを乾燥した後、ゲル量を測定した。
(2) 分子量
ゲル浸透クロマトグラフィー法により分子量を測定し、測定装置には、東ソー(株)製のゲルパーミエイションクロマトグラフ(Gel Permeation Chromatograph)HCL−8020、カラムには東ソー(株)製のGMHXL、較正には東ソー(株)製の標準ポリスチレン、溶媒にはTHF1級、溶液には0.01gサンプル/30ccTHFをそれぞれ用いた。
(3) カーボンブラック分散性
ASTM D2663B法に準拠して顕微鏡で分散度を測定した。数値が大きい程良好なことを示す。
(4) 加硫後のゴムの引張強力
(加硫ゴムの作製)
配合については、ASTM D3184に基づくテスト法により行い、標準配合処方(Standard Formula)2Aを使用した。
また、引張試験は、ASTM D1278法に準拠して行った。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
上記表1及び表2から下記のことが判明した。
実施例1〜4は、本発明の乾燥条件で処理されたものである。本発明の乾燥条件で処理することにより、乾燥直後のゲル量の増加及び分子量の低下は抑制され、しかも、カーボンブラック分散性も良好であり、加硫後のゴムの引張強力も良好となることが判った。
実施例5〜7は、実施例1〜4と同様な条件で乾燥処理されたものであり、恒粘度剤が含有された場合である。恒粘度剤の添加により、29日間放置後でも、良好な諸物性を示すことが判った。
また、実施例8は、実施例1〜4と同様な条件で乾燥処理されたものであるが、恒粘度剤が含有されていない場合である。1日放置後では、良好な諸物性を示しているが、29日放置後では、諸物性の低下が著しくなっている。
【0034】
これに対して比較例1〜4は、本発明の範囲外となるものであり、比較例1及び3は、従来のRSSの乾燥条件であり、比較例2及び4は、従来のTSRの乾燥条件である。
比較例1及び3は、乾燥後のゲル量の増加が著しく、しかも、カーボンブラック分散性も劣り、加硫後のゴムの引張強力も劣ることが判った。また、比較例2及び4は、乾燥後のゲル量の増加は抑制されているが分子量の低下が著しく、しかも、カーボンブラック分散性も劣り、加硫後のゴムの引張強力も劣ることが判った。
【0035】
下記表3に、各種天然ゴム用添加剤を投入した実施例、比較例について、ムーニー粘度の経時変化及びレジリエンスの測定結果を示す。
なお、実施例9〜11、比較例5〜8で使用した天然ゴム用添加剤を含有したゴム組成物(素練りゴム)の調製及びムーニー粘度の測定方法は下記のとおりである。
実施例9〜11、比較例5〜8のゴム組成物は、実施例1〜4と同様な条件で乾燥処理された天然ゴムに所定の薬品を所定量投入し、120℃で2分間素練りすることによって調製された。
【0036】
〔ムーニー粘度の測定方法〕
恒粘度化しているか検討するために60℃オーブン中に上記実施例9〜11、比較例5〜8の素練りゴムを放置して硬化促進状態にして、ムーニー粘度(60℃測定)の経時変化が測定された。
〔レジリエンスの測定方法〕
レジリエンスの測定は、ダンロップトリプソメーター(東洋精機製)を用いて、DIN規格53512に準拠して行われた。
【0037】
【表3】
【0038】
上記表3から明らかなように、本発明の天然ゴム用添加剤が用いられている実施例9〜11は、比較例5〜8に較べてムーニー粘度の経時変化が少なく、長期間に亘って恒粘度効果を有することが判った。
また、実施例9〜11のゴム組成物のレジリエンスは、比較例5〜8のものと比較して、良好である。
【0039】
【発明の効果】
本発明の乾燥条件による天然ゴム及びその製造方法によれば、乾燥後でも分子量の低下及びゲル量の増加が少ないので、加工性及び物性が共に良好となる。また、恒粘度剤を本発明で規定するヒドラジド化合物にすれば、更に加工性及び物性が共に良好となる天然ゴム及びその製造方法とすることができる。この発明で得られる天然ゴムは、特に、寸法安定性など高度の精度を要求される、例えば、航空機用タイヤ、ビードインフレーションゴムの原料に好適に用いることができる。
【0040】
本発明の天然ゴム用添加剤は、炭素数が少ないためにゴムとの相溶性がよく、イソプレン鎖中の異種結合(アルデヒド基など)と反応してブロックするので、天然ゴム中のゲル化反応を阻害し、粘度上昇を長期間に亘って抑制するものとなる。従って、産出された天然ゴムに添加した場合には、貯蔵硬化を防止することができ、また、素練りゴムの段階で添加した場合には、添加時点から恒粘度効果を発揮する。
【0041】
本発明のゴム組成物は、長期間に亘って天然ゴムの粘度上昇を抑制できるゴム組成物となるので、粘度が低い状態で維持されるため使用時に素練りが不要となり、国内でのバンバリー不足をある程度解決できること、それによって生産性が大幅に向上することが期待でき、大幅なコストダウンが可能となる。
本発明の天然ゴムの粘度上昇抑制方法は、長期間に亘って天然ゴムの粘度上昇を抑制できる。
Claims (7)
- 乾燥前後のゲル変化率が10%以下で、かつ、分子量保持率が85%以上で乾燥処理された天然ゴムであって、該乾燥処理された天然ゴムに恒粘度剤として下記一般式で表されるヒドラジド化合物を含有してなる天然ゴム。
R−CONHNH 2 (ただし、式中のRは、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数3〜5のシクロアルキル基を示す。) - 請求項1記載の天然ゴムからなるゴム組成物。
- 上記のヒドラジド化合物の含有量が、天然ゴム100重量部に対して0.001重量部以上である請求項2記載のゴム組成物。
- 天然ゴムの製造工程において、乾燥前後のゲル変化率が10%以下で、かつ、分子量保持率が85%以上で天然ゴムを乾燥処理し、乾燥処理された天然ゴムに恒粘度剤として下記一般式で表されるヒドラジド化合物を配合してなる天然ゴムの製造方法。
R−CONHNH 2 (ただし、式中のRは、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数3〜5のシクロアルキル基を示す。) - 乾燥前後のゲル変化率が10%以下で、かつ、分子量保持率が85%以上で乾燥処理された天然ゴムに下記一般式で表されるヒドラジド化合物を添加して天然ゴムの粘度上昇を抑制する天然ゴムの粘度上昇抑制方法。
R−CONHNH2(ただし、式中のRは、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数3〜5のシクロアルキル基を示す。) - ヒドラジド化合物の添加量が、天然ゴム100重量部に対して、0.001重量部以上である請求項5記載の天然ゴムの粘度上昇抑制方法。
- 天然ゴムからなるゴム組成物に使用される、下記一般式で表されるヒドラジド化合物からなる天然ゴム用添加剤。
R−CONHNH2(ただし、式中のRは、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数3〜5のシクロアルキル基を示す。)
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