JP3579227B2 - 薄形二次電池 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄形二次電池に関し、ガス放出機構を設けた薄形二次電池に係わる。
【0002】
【従来の技術】
近年、例えばポリマーリチウムイオン二次電池のような0.5mm程度の厚さを有する薄形二次電池は、小型、軽量を重視する携帯パソコンのようなコードレス機器の電源として注目され、その開発が活発に進められている。
【0003】
前記薄形二次電池の実用化にあたっての重要な要素技術は、正極、負極の活物質の選択、電池の構成技術の他に、外装材による薄形発電要素池の密封技術が挙げられる。前記外装材による前記薄形発電要素の密封性が低下すると、前記発電要素を構成する電解液が揮発、漏洩して電池反応を低減させるばかりか、外部から湿気が容易に侵入して性能低下を招く。
【0004】
このようなことから、従来の前記薄形二次電池は、内面に熱融着性樹脂フィルムが配された外装材内に正極、セパレータおよび負極を有する薄形発電要素を前記正負極の集電体に接続された外部端子が前記外装材の開口縁部から延出するように収納し、かつ前記開口縁部で前記熱融着性樹脂フィルムを互いに熱融着して前記発電要素を前記外装材内に密封した構造を有する。前記外装材は、例えば熱融着性樹脂フィルム、アルミニウム箔のようなバリアフィルムおよびポリエチレンテレフタレートフィルムのような剛性を有する樹脂フィルムを少なくともこの順序で積層した積層フィルムからなる。
【0005】
しかしながら、前記薄形二次電池において過充電等により内部にガスが発生した場合、内圧が上昇する。このため、外装材である積層フィルムが膨張して最終的に破裂する。薄型二次電池が破裂すると、その内容物(特に電解液)が飛散し、機器に直接搭載した場合には機器が損傷し、電池パックの場合にはケースが破損し、同様に搭載された機器の損傷を招く。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、過充電時等においてガスが発生して内圧が上昇した際に、そのガスを外部に容易に逃散させて破裂に至るのを未然に防止することが可能な薄形二次電池を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る薄型二次電池は、内面に熱融着性樹脂が配された外装材内に正極、セパレータ、負極および非水電解質を有する薄型発電要素を前記正負極にそれぞれ電気的に接続された外部端子が前記外装材の開口縁部から延出するように収納した薄型二次電池であって、
前記開口縁部全てで前記熱融着性樹脂フィルムを互いに熱融着し、その熱融着部により前記発電要素を前記外装材内に密封し、かつ
孔または切り込み部は、前記外装材の前記熱融着部を除く一部に、前記外装材の内面から外面に亘って設けられ、かつ金属箔は前記外装材内面の前記熱融着性樹脂フィルムに前記孔または切り込み部を塞ぐように配置されていると共にその周縁部が前記熱融着性樹脂フィルムに熱融着されていることを特徴とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係わる薄形二次電池、例えば薄形ポリマー電解質二次電池を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係わる薄形ポリマー電解質二次電池を示す斜視図、図2は図1の二次電池の展開斜視図、図3は図1のIII −III 線に沿う断面図である。内面に熱融着性樹脂フィルムが配された例えば積層フィルムからなる外装材1内には、薄形発電要素2が収納され、前記外装材1の例えば3側辺でその内面の熱融着性樹脂フィルムを互いに熱融着したシール部3a,3b,3cにより前記発電要素2を密封している。前記発電要素2は、図3に示すように正極4、セパレータであるポリマー電解質層5および負極6がこの順序で積層した構造を有する。
【0009】
前記正極4は、アルミニウム製の集電体7の両面に正極層8が担持された構造を有する。前記集電体7は、帯状アルミニウム箔からなる端子部9を有し、この端子部9にはアルミニウム製の外部正極リード10が超音波溶接によって接続されている。この外部リード10は、前記外装材1のシール部3bから外部に延出されている。
【0010】
前記負極6は、銅製の集電体11の両面に負極層12が担持された構造を有する。前記集電体11は、帯状銅箔からなる端子部13を有し、この端子部13には外部負極リード14が超音波溶接等によって接続されている。この外部リード14は、前記外装材1のシール部3bから外部に延出されている。
【0011】
切り込み部、例えば十字状切り込み部15は、前記発電要素2の表面に対応する前記外装材1に設けられている。金属箔、例えば円形の金属箔16は前記外装材1内面の熱融着性樹脂フィルムに前記十字状切り込み部15を塞ぐように配置されていると共にその環状周縁部17が熱融着性樹脂フィルムに熱融着されている。
【0012】
このような薄形ポリマー電解質二次電池は、例えば次のような方法により製造される。まず、図2に示すように帯状積層フィルム18の所定部分にそのシール面となる熱融着性樹脂フィルム側から例えばカッター等により十字状の切り込み部15を形成し、この切り込み部15を含む前記熱融着性樹脂フィルムに円形の金属箔16を配置すると共に、その環状周縁部17を前記熱融着性樹脂フィルムに熱融着して貼り付ける。つづいて、正負極の外部端子10,14が取付けられた薄形発電要素2を短辺に平行な中央部に位置する折り曲げ線19を境にして金属箔16が貼着されていない前記積層フィルム18部分に前記外部端子10,14がフィルム18の短辺の端面から延出するように載せた後、前記積層フィルム18を前記折り曲げ線19で前記発電要素2を包むように折り曲げる。その後、前記折り曲げ部を除く3つの側辺を熱シールして前記発電要素2を密封することにより図1に示す二次電池を製造する。
【0013】
前記外装材1、正極4、負極6および電解質層5は、次のような構成になっている。
1)外装材1
この外装材1は、シール面に熱融着性樹脂が配され、中間にアルミニウム(Al)のような金属薄膜を介在させた積層フィルムからなることが好ましい。具体的には、シール面側から外面に向けて積層したポリエチレン(PE)/ポリエチレンテレフタレート(PET)/Al箔/PETの積層フィルム;PE/ナイロン/Al箔/PETの積層フィルム;アイオノマー/Ni箔/PE/PETの積層フィルム;エチレンビニルアセテート(EVA)/PE/Al箔/PETの積層フィルム;アイオノマー/PET/Al箔/PETの積層フィルム等を用いることができる。ここで、シール面側のPE、アイオノマー、EVA以外のフィルムは防湿性、耐通気性、耐薬品性を担っている。
【0014】
なお、前記外装材は積層フィルムをその内面(シール面)に熱融着性樹脂フィルムが位置するように折り曲げ、その折り曲げ線と平行な端部を熱シールして筒状物を作製し、この中に前述した薄形発電要素をその正極と電気的に接続された外部端子が一方の開口から延出し、その負極と電気的に接続された外部端子が他方の開口から延出するように収納し、前記2つの開口部を熱シールして前記発電要素を密封した構造にしてもよい。
【0015】
2)正極4
この正極4は、アルミニウム製の集電体7の両面に活物質、非水電解液及びこの電解液を保持するポリマーを含む正極層8が担持された構造を有する。
【0016】
前記活物質としては、種々の酸化物(例えばLiMn2 O4 などのリチウムマンガン複合酸化物、二酸化マンガン、例えばLiNiO2 などのリチウム含有ニッケル酸化物、例えばLiCoO2 などのリチウム含有コバルト酸化物、リチウム含有ニッケルコバルト酸化物、リチウムを含む非晶質五酸化バナジウムなど)や、カルコゲン化合物(例えば、二硫化チタン、二硫化モリブテンなど)等を挙げることができる。中でも、リチウムマンガン複合酸化物、リチウム含有コバルト酸化物、リチウム含有ニッケル酸化物を用いるのが好ましい。
【0017】
前記非水電解液は、非水溶媒に電解質を溶解することにより調製される。
前記非水溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、γ−ブチロラクトン(γ−BL)、スルホラン、アセトニトリル、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン等を挙げることができる。前記非水溶媒は、単独で使用しても、2種以上混合して使用しても良い。
【0018】
前記電解質としては、例えば過塩素酸リチウム(LiClO4 )、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )、ホウ四フッ化リチウム(LiBF4 )、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6 )、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム[LiN(CF3 SO3 )2 ]等のリチウム塩を挙げることができる。
【0019】
前記電解質の前記非水溶媒に対する溶解量は、0.2mol/L〜2mol/Lとすることが望ましい。
前記非水電解液を保持するポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキサイド誘導体、ポリプロピレンオキサイド誘導体、前記誘導体を含むポリマー、ビニリデンフロライド(VdF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)との共重合体等を用いることができる。前記HFPの共重合割合は、前記共重合体の合成方法にも依存するが、通常、最大で20重量%前後である。
【0020】
前記正極層は、導電性を向上する観点から導電性材料を含んでいてもよい。この導電性材料としては、例えば、人造黒鉛、カーボンブラック(例えばアセチレンブラックなど)、ニッケル粉末等を挙げることができる。
【0021】
前記集電体としては、例えばアルミニウム製エキスパンドメタル、アルミニウム製メッシュ、アルミニウム製パンチドメタル等を用いることができる。
なお、前記正極は集電体の片面に正極層を担持させた構造にしてもよい。
【0022】
3)負極6
この負極6は、銅製の集電体11の両面に活物質、非水電解液及びこの電解液を保持するポリマーを含む負極層12が担持された構造を有する。
【0023】
前記活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出する炭素質材料を挙げることができる。かかる炭素質材料としては、例えば、有機高分子化合物(例えば、フェノール樹脂、ポリアクリロニトリル、セルロース等)を焼成することにより得られるもの、コークスや、メソフェーズピッチを焼成することにより得られるもの、人造グラファイト、天然グラファイト等に代表される炭素質材料を挙げることができる。中でも、500℃〜3000℃の温度で、常圧または減圧下にて前記メソフェーズピッチを焼成して得られる炭素質材料を用いるのが好ましい。
【0024】
前記非水電解液及び前記ポリマーとしては、前述した正極で説明したものと同様なものが用いられる。
前記負極層は、人造グラファイト、天然グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ニッケル粉末、ポリフェニレン誘導体等の導電性材料、オレフィン系ポリマーや炭素繊維等のフィラーを含むことを許容する。
【0025】
前記集電体としては、例えば銅製エキスパンドメタル、銅製メッシュ、銅製パンチドメタル等を用いることができる。
なお、前記負極は集電体の片面に正極層を担持させた構造にしてもよい。
【0026】
4)ポリマー電解質層5
この電解質層5は、非水電解液及びこの電解液を保持するポリマーを含む。
前記非水電解液及び前記ポリマーとしては、前述した正極で説明したものと同様なものが用いられる。
【0027】
前記電解質層は、圧縮強度を向上させるためにSiO2 粉末のような無機フィラーを添加してもよい。
前記発電要素は、1層に限らず、2層以上前記外装材内に収納してもよい。
【0028】
前記外装材に設ける切り込み部は、十字状に限らず、線状でもよい。また、図4に示すように切り込み部の代わりに円形等の孔20を外装材1に開口してもよい。特に、外装材として中間にAl箔のような金属箔を介在させた積層フィルムから形成した場合には、前記切り込み部または孔は前記外装材の内面から外面に向けて例えばカッターやパンチングにより形成することが望ましい。この手法により切り込み部または孔を形成すれば、前記積層フィルムの金属箔に起因するバリが外装材の外面に生じ、内面にバリが生じないため、前記外装材内面に金属箔を熱融着する際に前記バリによって前記金属箔が損傷されるのを防止することができる。
【0029】
前記外装材に貼り付ける金属箔としては、例えばアルミニウム箔を用いることができる。この金属箔は、円形に限らず、四角形、多角形等任意である。
前記金属箔の厚さは、その性質(特に延伸性)により一概に規定できないが、Al箔の場合には3〜50μmにすることが好ましい。
【0030】
なお、薄形二次電池の体積エネルギー密度を高めるために図1または図4の外部端子10,14が延出されるシール部3bを除く互いに平行するシール部3a,3c表面側に折り曲げて固定してもよい。
【0031】
以上説明した本発明によれば、薄形発電要素2が収納された外装材1に例えば十字状の切り込み部15を設け、かつ金属箔16を前記外装材1内面の前記熱融着性樹脂フィルムに切り込み部15を塞ぐように配置すると共にその周縁部17を前記熱融着性樹脂フィルムに熱融着することによって、過充電等により前記発電要素2からガスが発生して内圧が上昇しても、前記金属箔16の箇所で破断されて外装材1自体が破裂する前にガスを逃散することができる。
【0032】
すなわち、図5に示すように外装材1の内部にガスが発生して外装材1が膨張すると、金属箔16が外側に湾曲され、それに伴って前記金属箔16と未融着状態の外装材1部分が前記切り込み部15に沿って外側に開き、穴が形成される。その結果、前記金属箔16に対してさらにその穴に向かって外側に湾曲する力が働くため、最後にはその力に抗しきれずに破断される。
【0033】
一方、図4に示すように外装材1に孔20を開口し、金属箔16を外装材1内面の前記熱融着性樹脂フィルムに前記孔20を塞ぐように配置すると共にその周縁部を前記熱融着性樹脂フィルムに熱融着することによって、過充電等によりガスが発生して外装材1が膨張すると、前記金属箔16は前記孔20に向かって外側に湾曲する力が働くため、最後にはその力に抗しきれずに破断される。
【0034】
したがって、過充電時等においてガスが発生して内圧が上昇した際に、そのガスを前記金属箔の破断により外部に容易に逃散させて外装材が破裂に至るのを未然に防止することが可能な薄形二次電池を提供できる。このため、外装材の破裂に伴う内容物(特に電解液)の飛散を回避して、機器に直接搭載した場合における機器の損傷等を防止することができる。
【0035】
また、積層フィルムからなる外装材を用いた場合において、金属箔16を外装材1の内面には位置して貼り付けることによって、切り込み部15(または孔20)の形成によるその破断面に発電要素2等に含まれる電解液が直接接触するのを前記金属箔16により防止できる。その結果、前記積層フィルの間への電解液の侵入に伴うデラミネーションを防止することができる。
【0036】
【実施例】
以下、本発明の好ましい実施例を前述した図面を参照して詳細に説明する。
(実施例1)
<正極の作製>
アセトンにビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン(VdF−HFP)の共重合体(エルファトケム社製商品名;KYNAR2801、共重合比[VdF:HFP]が88:12)粉末を溶解した後、このアセトン溶液にジブチルフタレート(DBP)と、活物質として組成式がLiCoO2 で表されるリチウム含有コバルト酸化物(日本重化学工業製)とを添加して正極用ペーストを調製した。つづいて、アルミニウム製メッシュからなる多孔質集電体に前記組成の正極用ペーストをナイフコータを用いて塗工し、乾燥空気で乾燥することにより前記多孔質集電体の両面に電解液未含浸正極層が形成された正極素材を作製した。
【0037】
<負極の作製>
前記正極に用いられたのと同様なビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレンの共重合体をアセトンに溶解させてアセトン溶液を調製した後、このアセトン溶液にジブチルフタレート(DBP)を添加後、活物質としてメソフェーズピッチ系炭素繊維(株式会社ペトカ社製)を添加し、混合することにより負極用ペーストを調製した。この負極用ペーストを銅製メッシュからなる多孔質集電体にナイフコータを用いて塗工し、乾燥空気により乾燥するして前記多孔質集電体の両面に電解液未含浸負極層が形成された負極素材を作製した。
【0038】
<固体ポリマー電解質層の作製>
前記正極に用いられたのと同様なビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレンとの共重合体をアセトンに溶解させてアセトン溶液を調製した後、このアセトン溶液にジブチルフタレート(DBP)を添加後、混合することによって電解質層用ペーストを調製した。前記ペーストを平滑なガラス板上に塗布した後、正負極と同様に乾燥し、前記ガラス板から剥し、電解液未含浸固体ポリマー電解質素材を作製した。
【0039】
<非水電解液の調製>
エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)が体積比で1:1の割合で混合された非水溶媒に電解質としてのLiPF6 をその濃度が1mol/lになるように溶解させて非水電解液を調製した。
【0040】
得られた正極素材、固体ポリマー電解質素材および負極素材をこの順序で重ね、これらを130℃に加熱した剛性ロールにて加熱圧着して積層して厚さ1.0mm、外形寸法40mm×60mmの積層体を作製した。つづいて、この積層体をメタノール中に浸漬することにより前記正極素材、前記負極素材および前記ポリマー電解質素材中のDBPを溶出してそれら部材を多孔質構造の電解液未含浸発電要素とした。ひきつづき、この発電要素の正負極の多孔質集電体の帯状端子部に外部端子をそれぞれ超音波溶接等により接続した。
【0041】
次いで、内面側からアイオノマー樹脂フィルム/Alフィルム/PETフィルムを積層した3層からなり、厚さ0.1mm、外形寸法70mm×153mmの帯状積層フィルムを用意し、前記積層フィルムの長辺より内側35mm、短辺より内側43mmの箇所にアイオノマー樹脂フィルム側からカッターにより縦横5mmの十字状の切り込み部を形成し、この切り込み部を含む前記アイオノマー樹脂フィルムに外径10mm、厚さ0.01mmの円形状Al箔を配置すると共、そのAl箔の幅2mmに亘る周縁部(環状部)を熱融着して貼り付けた。つづいて、正負極の外部端子が取付けられた前記電解液未含浸発電要素を前記外部端子が前記積層フィルムの短辺から延出するように載せた後、前記積層フィルムを中央でその短辺と平行に前記電解液未含浸発電要素を包むように折り曲げた。ひきつづき、前記折り曲げ部を除く幅10mmの3つの側辺を熱シールした。ただし、前記外部端子が延出される側辺を除く2側辺のうちの一方の側辺の一部を未シール部として残した。その後、前記未シール部を通して前記非水電解液を内部に注入し、未シールを再度、熱融着することにより前述した図1に示す前記積層フィルムからなる外装材1内に薄形発電要素2が密封して収納され、前記発電要素2の表面に対応する箇所に十字状の切り込み部15が設けられ、Al箔16を内面から前記切り込み部15を塞ぐように貼り付けた厚さ1.2mm、外部端子を除く外形寸法70mm×75mm、電気容量100mAhの100個の薄形ポリマー電解質二次電池を製造した。
【0042】
(実施例2)
切り込み部の代わりに円形孔(外径5mm)を外装材に開口した以外、実施例1と同様な構成で、前述した図4に示す100個の薄形ポリマー電解質二次電池を製造した。
【0043】
(比較例1)
積層フィルムに切り込み部を形成せず、かつAl箔を貼り付けない以外、実施例1と同様な寸法、電気容量を有する100個の薄形ポリマー電解質二次電池を製造した。
【0044】
得られた実施例1,2および比較例1の二次電池を内部スペースが72mm×77mm×4.0mmで外形寸法が75mm×80mm×6.0mmの外部接続端子付きポリプロピレン製ケースに各電池の正負極の外部端子が前記外部接続端子に接続されるように収納してパック型電池を組み立て。
【0045】
前記各パック型電池について、1C、3時間の条件で過充電試験を行い、電池パックのケースの厚さ方向の変形量を測定した。その結果を下記表1に示す。
前記表1から明らかなように実施例1,2の薄形二次電池はパック型電池とした時、全てケースの変形が認められなかった。これに対し、比較例1のの薄形二次電池はパック型電池とした時、100個中100個において変形が認められた。なお、実施例1,2のパック型電池を分解してケース内部の薄形ポリマー電解質二次電池を調べたところ、全ての二次電池は切り込み部、円形孔に貼り付けたAl箔での破断が認められた。
【0046】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、過充電時等においてガスが発生して内圧が上昇した際に、そのガスを外部に容易に逃散させて破裂に至るのを未然に防止することが可能な安全性の高い薄形二次電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる薄形ポリマー電解質二次電池を示す斜視図。
【図2】図2は図1の二次電池の展開斜視図。
【図3】図1のIII −III 線に沿う断面図。
【図4】本発明に係わる別の薄形ポリマー電解質二次電池を示す斜視図。
【図5】本発明に係わる薄形ポリマー電解質二次電池の作用を説明するための部分断面図。
【符号の説明】
1…外装材、
2…薄形発電要素、
4…正極、
5…ポリマー電解質層、
6…負極、
10,14…外部端子、
15…切り込み部、
16…金属箔、
20…円形孔。
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄形二次電池に関し、ガス放出機構を設けた薄形二次電池に係わる。
【0002】
【従来の技術】
近年、例えばポリマーリチウムイオン二次電池のような0.5mm程度の厚さを有する薄形二次電池は、小型、軽量を重視する携帯パソコンのようなコードレス機器の電源として注目され、その開発が活発に進められている。
【0003】
前記薄形二次電池の実用化にあたっての重要な要素技術は、正極、負極の活物質の選択、電池の構成技術の他に、外装材による薄形発電要素池の密封技術が挙げられる。前記外装材による前記薄形発電要素の密封性が低下すると、前記発電要素を構成する電解液が揮発、漏洩して電池反応を低減させるばかりか、外部から湿気が容易に侵入して性能低下を招く。
【0004】
このようなことから、従来の前記薄形二次電池は、内面に熱融着性樹脂フィルムが配された外装材内に正極、セパレータおよび負極を有する薄形発電要素を前記正負極の集電体に接続された外部端子が前記外装材の開口縁部から延出するように収納し、かつ前記開口縁部で前記熱融着性樹脂フィルムを互いに熱融着して前記発電要素を前記外装材内に密封した構造を有する。前記外装材は、例えば熱融着性樹脂フィルム、アルミニウム箔のようなバリアフィルムおよびポリエチレンテレフタレートフィルムのような剛性を有する樹脂フィルムを少なくともこの順序で積層した積層フィルムからなる。
【0005】
しかしながら、前記薄形二次電池において過充電等により内部にガスが発生した場合、内圧が上昇する。このため、外装材である積層フィルムが膨張して最終的に破裂する。薄型二次電池が破裂すると、その内容物(特に電解液)が飛散し、機器に直接搭載した場合には機器が損傷し、電池パックの場合にはケースが破損し、同様に搭載された機器の損傷を招く。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、過充電時等においてガスが発生して内圧が上昇した際に、そのガスを外部に容易に逃散させて破裂に至るのを未然に防止することが可能な薄形二次電池を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る薄型二次電池は、内面に熱融着性樹脂が配された外装材内に正極、セパレータ、負極および非水電解質を有する薄型発電要素を前記正負極にそれぞれ電気的に接続された外部端子が前記外装材の開口縁部から延出するように収納した薄型二次電池であって、
前記開口縁部全てで前記熱融着性樹脂フィルムを互いに熱融着し、その熱融着部により前記発電要素を前記外装材内に密封し、かつ
孔または切り込み部は、前記外装材の前記熱融着部を除く一部に、前記外装材の内面から外面に亘って設けられ、かつ金属箔は前記外装材内面の前記熱融着性樹脂フィルムに前記孔または切り込み部を塞ぐように配置されていると共にその周縁部が前記熱融着性樹脂フィルムに熱融着されていることを特徴とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係わる薄形二次電池、例えば薄形ポリマー電解質二次電池を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係わる薄形ポリマー電解質二次電池を示す斜視図、図2は図1の二次電池の展開斜視図、図3は図1のIII −III 線に沿う断面図である。内面に熱融着性樹脂フィルムが配された例えば積層フィルムからなる外装材1内には、薄形発電要素2が収納され、前記外装材1の例えば3側辺でその内面の熱融着性樹脂フィルムを互いに熱融着したシール部3a,3b,3cにより前記発電要素2を密封している。前記発電要素2は、図3に示すように正極4、セパレータであるポリマー電解質層5および負極6がこの順序で積層した構造を有する。
【0009】
前記正極4は、アルミニウム製の集電体7の両面に正極層8が担持された構造を有する。前記集電体7は、帯状アルミニウム箔からなる端子部9を有し、この端子部9にはアルミニウム製の外部正極リード10が超音波溶接によって接続されている。この外部リード10は、前記外装材1のシール部3bから外部に延出されている。
【0010】
前記負極6は、銅製の集電体11の両面に負極層12が担持された構造を有する。前記集電体11は、帯状銅箔からなる端子部13を有し、この端子部13には外部負極リード14が超音波溶接等によって接続されている。この外部リード14は、前記外装材1のシール部3bから外部に延出されている。
【0011】
切り込み部、例えば十字状切り込み部15は、前記発電要素2の表面に対応する前記外装材1に設けられている。金属箔、例えば円形の金属箔16は前記外装材1内面の熱融着性樹脂フィルムに前記十字状切り込み部15を塞ぐように配置されていると共にその環状周縁部17が熱融着性樹脂フィルムに熱融着されている。
【0012】
このような薄形ポリマー電解質二次電池は、例えば次のような方法により製造される。まず、図2に示すように帯状積層フィルム18の所定部分にそのシール面となる熱融着性樹脂フィルム側から例えばカッター等により十字状の切り込み部15を形成し、この切り込み部15を含む前記熱融着性樹脂フィルムに円形の金属箔16を配置すると共に、その環状周縁部17を前記熱融着性樹脂フィルムに熱融着して貼り付ける。つづいて、正負極の外部端子10,14が取付けられた薄形発電要素2を短辺に平行な中央部に位置する折り曲げ線19を境にして金属箔16が貼着されていない前記積層フィルム18部分に前記外部端子10,14がフィルム18の短辺の端面から延出するように載せた後、前記積層フィルム18を前記折り曲げ線19で前記発電要素2を包むように折り曲げる。その後、前記折り曲げ部を除く3つの側辺を熱シールして前記発電要素2を密封することにより図1に示す二次電池を製造する。
【0013】
前記外装材1、正極4、負極6および電解質層5は、次のような構成になっている。
1)外装材1
この外装材1は、シール面に熱融着性樹脂が配され、中間にアルミニウム(Al)のような金属薄膜を介在させた積層フィルムからなることが好ましい。具体的には、シール面側から外面に向けて積層したポリエチレン(PE)/ポリエチレンテレフタレート(PET)/Al箔/PETの積層フィルム;PE/ナイロン/Al箔/PETの積層フィルム;アイオノマー/Ni箔/PE/PETの積層フィルム;エチレンビニルアセテート(EVA)/PE/Al箔/PETの積層フィルム;アイオノマー/PET/Al箔/PETの積層フィルム等を用いることができる。ここで、シール面側のPE、アイオノマー、EVA以外のフィルムは防湿性、耐通気性、耐薬品性を担っている。
【0014】
なお、前記外装材は積層フィルムをその内面(シール面)に熱融着性樹脂フィルムが位置するように折り曲げ、その折り曲げ線と平行な端部を熱シールして筒状物を作製し、この中に前述した薄形発電要素をその正極と電気的に接続された外部端子が一方の開口から延出し、その負極と電気的に接続された外部端子が他方の開口から延出するように収納し、前記2つの開口部を熱シールして前記発電要素を密封した構造にしてもよい。
【0015】
2)正極4
この正極4は、アルミニウム製の集電体7の両面に活物質、非水電解液及びこの電解液を保持するポリマーを含む正極層8が担持された構造を有する。
【0016】
前記活物質としては、種々の酸化物(例えばLiMn2 O4 などのリチウムマンガン複合酸化物、二酸化マンガン、例えばLiNiO2 などのリチウム含有ニッケル酸化物、例えばLiCoO2 などのリチウム含有コバルト酸化物、リチウム含有ニッケルコバルト酸化物、リチウムを含む非晶質五酸化バナジウムなど)や、カルコゲン化合物(例えば、二硫化チタン、二硫化モリブテンなど)等を挙げることができる。中でも、リチウムマンガン複合酸化物、リチウム含有コバルト酸化物、リチウム含有ニッケル酸化物を用いるのが好ましい。
【0017】
前記非水電解液は、非水溶媒に電解質を溶解することにより調製される。
前記非水溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、γ−ブチロラクトン(γ−BL)、スルホラン、アセトニトリル、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン等を挙げることができる。前記非水溶媒は、単独で使用しても、2種以上混合して使用しても良い。
【0018】
前記電解質としては、例えば過塩素酸リチウム(LiClO4 )、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )、ホウ四フッ化リチウム(LiBF4 )、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6 )、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム[LiN(CF3 SO3 )2 ]等のリチウム塩を挙げることができる。
【0019】
前記電解質の前記非水溶媒に対する溶解量は、0.2mol/L〜2mol/Lとすることが望ましい。
前記非水電解液を保持するポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキサイド誘導体、ポリプロピレンオキサイド誘導体、前記誘導体を含むポリマー、ビニリデンフロライド(VdF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)との共重合体等を用いることができる。前記HFPの共重合割合は、前記共重合体の合成方法にも依存するが、通常、最大で20重量%前後である。
【0020】
前記正極層は、導電性を向上する観点から導電性材料を含んでいてもよい。この導電性材料としては、例えば、人造黒鉛、カーボンブラック(例えばアセチレンブラックなど)、ニッケル粉末等を挙げることができる。
【0021】
前記集電体としては、例えばアルミニウム製エキスパンドメタル、アルミニウム製メッシュ、アルミニウム製パンチドメタル等を用いることができる。
なお、前記正極は集電体の片面に正極層を担持させた構造にしてもよい。
【0022】
3)負極6
この負極6は、銅製の集電体11の両面に活物質、非水電解液及びこの電解液を保持するポリマーを含む負極層12が担持された構造を有する。
【0023】
前記活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出する炭素質材料を挙げることができる。かかる炭素質材料としては、例えば、有機高分子化合物(例えば、フェノール樹脂、ポリアクリロニトリル、セルロース等)を焼成することにより得られるもの、コークスや、メソフェーズピッチを焼成することにより得られるもの、人造グラファイト、天然グラファイト等に代表される炭素質材料を挙げることができる。中でも、500℃〜3000℃の温度で、常圧または減圧下にて前記メソフェーズピッチを焼成して得られる炭素質材料を用いるのが好ましい。
【0024】
前記非水電解液及び前記ポリマーとしては、前述した正極で説明したものと同様なものが用いられる。
前記負極層は、人造グラファイト、天然グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ニッケル粉末、ポリフェニレン誘導体等の導電性材料、オレフィン系ポリマーや炭素繊維等のフィラーを含むことを許容する。
【0025】
前記集電体としては、例えば銅製エキスパンドメタル、銅製メッシュ、銅製パンチドメタル等を用いることができる。
なお、前記負極は集電体の片面に正極層を担持させた構造にしてもよい。
【0026】
4)ポリマー電解質層5
この電解質層5は、非水電解液及びこの電解液を保持するポリマーを含む。
前記非水電解液及び前記ポリマーとしては、前述した正極で説明したものと同様なものが用いられる。
【0027】
前記電解質層は、圧縮強度を向上させるためにSiO2 粉末のような無機フィラーを添加してもよい。
前記発電要素は、1層に限らず、2層以上前記外装材内に収納してもよい。
【0028】
前記外装材に設ける切り込み部は、十字状に限らず、線状でもよい。また、図4に示すように切り込み部の代わりに円形等の孔20を外装材1に開口してもよい。特に、外装材として中間にAl箔のような金属箔を介在させた積層フィルムから形成した場合には、前記切り込み部または孔は前記外装材の内面から外面に向けて例えばカッターやパンチングにより形成することが望ましい。この手法により切り込み部または孔を形成すれば、前記積層フィルムの金属箔に起因するバリが外装材の外面に生じ、内面にバリが生じないため、前記外装材内面に金属箔を熱融着する際に前記バリによって前記金属箔が損傷されるのを防止することができる。
【0029】
前記外装材に貼り付ける金属箔としては、例えばアルミニウム箔を用いることができる。この金属箔は、円形に限らず、四角形、多角形等任意である。
前記金属箔の厚さは、その性質(特に延伸性)により一概に規定できないが、Al箔の場合には3〜50μmにすることが好ましい。
【0030】
なお、薄形二次電池の体積エネルギー密度を高めるために図1または図4の外部端子10,14が延出されるシール部3bを除く互いに平行するシール部3a,3c表面側に折り曲げて固定してもよい。
【0031】
以上説明した本発明によれば、薄形発電要素2が収納された外装材1に例えば十字状の切り込み部15を設け、かつ金属箔16を前記外装材1内面の前記熱融着性樹脂フィルムに切り込み部15を塞ぐように配置すると共にその周縁部17を前記熱融着性樹脂フィルムに熱融着することによって、過充電等により前記発電要素2からガスが発生して内圧が上昇しても、前記金属箔16の箇所で破断されて外装材1自体が破裂する前にガスを逃散することができる。
【0032】
すなわち、図5に示すように外装材1の内部にガスが発生して外装材1が膨張すると、金属箔16が外側に湾曲され、それに伴って前記金属箔16と未融着状態の外装材1部分が前記切り込み部15に沿って外側に開き、穴が形成される。その結果、前記金属箔16に対してさらにその穴に向かって外側に湾曲する力が働くため、最後にはその力に抗しきれずに破断される。
【0033】
一方、図4に示すように外装材1に孔20を開口し、金属箔16を外装材1内面の前記熱融着性樹脂フィルムに前記孔20を塞ぐように配置すると共にその周縁部を前記熱融着性樹脂フィルムに熱融着することによって、過充電等によりガスが発生して外装材1が膨張すると、前記金属箔16は前記孔20に向かって外側に湾曲する力が働くため、最後にはその力に抗しきれずに破断される。
【0034】
したがって、過充電時等においてガスが発生して内圧が上昇した際に、そのガスを前記金属箔の破断により外部に容易に逃散させて外装材が破裂に至るのを未然に防止することが可能な薄形二次電池を提供できる。このため、外装材の破裂に伴う内容物(特に電解液)の飛散を回避して、機器に直接搭載した場合における機器の損傷等を防止することができる。
【0035】
また、積層フィルムからなる外装材を用いた場合において、金属箔16を外装材1の内面には位置して貼り付けることによって、切り込み部15(または孔20)の形成によるその破断面に発電要素2等に含まれる電解液が直接接触するのを前記金属箔16により防止できる。その結果、前記積層フィルの間への電解液の侵入に伴うデラミネーションを防止することができる。
【0036】
【実施例】
以下、本発明の好ましい実施例を前述した図面を参照して詳細に説明する。
(実施例1)
<正極の作製>
アセトンにビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン(VdF−HFP)の共重合体(エルファトケム社製商品名;KYNAR2801、共重合比[VdF:HFP]が88:12)粉末を溶解した後、このアセトン溶液にジブチルフタレート(DBP)と、活物質として組成式がLiCoO2 で表されるリチウム含有コバルト酸化物(日本重化学工業製)とを添加して正極用ペーストを調製した。つづいて、アルミニウム製メッシュからなる多孔質集電体に前記組成の正極用ペーストをナイフコータを用いて塗工し、乾燥空気で乾燥することにより前記多孔質集電体の両面に電解液未含浸正極層が形成された正極素材を作製した。
【0037】
<負極の作製>
前記正極に用いられたのと同様なビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレンの共重合体をアセトンに溶解させてアセトン溶液を調製した後、このアセトン溶液にジブチルフタレート(DBP)を添加後、活物質としてメソフェーズピッチ系炭素繊維(株式会社ペトカ社製)を添加し、混合することにより負極用ペーストを調製した。この負極用ペーストを銅製メッシュからなる多孔質集電体にナイフコータを用いて塗工し、乾燥空気により乾燥するして前記多孔質集電体の両面に電解液未含浸負極層が形成された負極素材を作製した。
【0038】
<固体ポリマー電解質層の作製>
前記正極に用いられたのと同様なビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレンとの共重合体をアセトンに溶解させてアセトン溶液を調製した後、このアセトン溶液にジブチルフタレート(DBP)を添加後、混合することによって電解質層用ペーストを調製した。前記ペーストを平滑なガラス板上に塗布した後、正負極と同様に乾燥し、前記ガラス板から剥し、電解液未含浸固体ポリマー電解質素材を作製した。
【0039】
<非水電解液の調製>
エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)が体積比で1:1の割合で混合された非水溶媒に電解質としてのLiPF6 をその濃度が1mol/lになるように溶解させて非水電解液を調製した。
【0040】
得られた正極素材、固体ポリマー電解質素材および負極素材をこの順序で重ね、これらを130℃に加熱した剛性ロールにて加熱圧着して積層して厚さ1.0mm、外形寸法40mm×60mmの積層体を作製した。つづいて、この積層体をメタノール中に浸漬することにより前記正極素材、前記負極素材および前記ポリマー電解質素材中のDBPを溶出してそれら部材を多孔質構造の電解液未含浸発電要素とした。ひきつづき、この発電要素の正負極の多孔質集電体の帯状端子部に外部端子をそれぞれ超音波溶接等により接続した。
【0041】
次いで、内面側からアイオノマー樹脂フィルム/Alフィルム/PETフィルムを積層した3層からなり、厚さ0.1mm、外形寸法70mm×153mmの帯状積層フィルムを用意し、前記積層フィルムの長辺より内側35mm、短辺より内側43mmの箇所にアイオノマー樹脂フィルム側からカッターにより縦横5mmの十字状の切り込み部を形成し、この切り込み部を含む前記アイオノマー樹脂フィルムに外径10mm、厚さ0.01mmの円形状Al箔を配置すると共、そのAl箔の幅2mmに亘る周縁部(環状部)を熱融着して貼り付けた。つづいて、正負極の外部端子が取付けられた前記電解液未含浸発電要素を前記外部端子が前記積層フィルムの短辺から延出するように載せた後、前記積層フィルムを中央でその短辺と平行に前記電解液未含浸発電要素を包むように折り曲げた。ひきつづき、前記折り曲げ部を除く幅10mmの3つの側辺を熱シールした。ただし、前記外部端子が延出される側辺を除く2側辺のうちの一方の側辺の一部を未シール部として残した。その後、前記未シール部を通して前記非水電解液を内部に注入し、未シールを再度、熱融着することにより前述した図1に示す前記積層フィルムからなる外装材1内に薄形発電要素2が密封して収納され、前記発電要素2の表面に対応する箇所に十字状の切り込み部15が設けられ、Al箔16を内面から前記切り込み部15を塞ぐように貼り付けた厚さ1.2mm、外部端子を除く外形寸法70mm×75mm、電気容量100mAhの100個の薄形ポリマー電解質二次電池を製造した。
【0042】
(実施例2)
切り込み部の代わりに円形孔(外径5mm)を外装材に開口した以外、実施例1と同様な構成で、前述した図4に示す100個の薄形ポリマー電解質二次電池を製造した。
【0043】
(比較例1)
積層フィルムに切り込み部を形成せず、かつAl箔を貼り付けない以外、実施例1と同様な寸法、電気容量を有する100個の薄形ポリマー電解質二次電池を製造した。
【0044】
得られた実施例1,2および比較例1の二次電池を内部スペースが72mm×77mm×4.0mmで外形寸法が75mm×80mm×6.0mmの外部接続端子付きポリプロピレン製ケースに各電池の正負極の外部端子が前記外部接続端子に接続されるように収納してパック型電池を組み立て。
【0045】
前記各パック型電池について、1C、3時間の条件で過充電試験を行い、電池パックのケースの厚さ方向の変形量を測定した。その結果を下記表1に示す。
前記表1から明らかなように実施例1,2の薄形二次電池はパック型電池とした時、全てケースの変形が認められなかった。これに対し、比較例1のの薄形二次電池はパック型電池とした時、100個中100個において変形が認められた。なお、実施例1,2のパック型電池を分解してケース内部の薄形ポリマー電解質二次電池を調べたところ、全ての二次電池は切り込み部、円形孔に貼り付けたAl箔での破断が認められた。
【0046】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、過充電時等においてガスが発生して内圧が上昇した際に、そのガスを外部に容易に逃散させて破裂に至るのを未然に防止することが可能な安全性の高い薄形二次電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる薄形ポリマー電解質二次電池を示す斜視図。
【図2】図2は図1の二次電池の展開斜視図。
【図3】図1のIII −III 線に沿う断面図。
【図4】本発明に係わる別の薄形ポリマー電解質二次電池を示す斜視図。
【図5】本発明に係わる薄形ポリマー電解質二次電池の作用を説明するための部分断面図。
【符号の説明】
1…外装材、
2…薄形発電要素、
4…正極、
5…ポリマー電解質層、
6…負極、
10,14…外部端子、
15…切り込み部、
16…金属箔、
20…円形孔。
Claims (1)
- 内面に熱融着性樹脂が配された外装材内に正極、セパレータ、負極および非水電解質を有する薄型発電要素を前記正負極にそれぞれ電気的に接続された外部端子が前記外装材の開口縁部から延出するように収納した薄型二次電池であって、
前記開口縁部全てで前記熱融着性樹脂フィルムを互いに熱融着し、その熱融着部により前記発電要素を前記外装材内に密封し、かつ
孔または切り込み部は、前記外装材の前記熱融着部を除く一部に、前記外装材の内面から外面に亘って設けられ、かつ金属箔は前記外装材内面の前記熱融着性樹脂フィルムに前記孔または切り込み部を塞ぐように配置されていると共にその周縁部が前記熱融着性樹脂フィルムに熱融着されていることを特徴とする薄型二次電池。
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